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  • 特許-親油性成分を含有する眼科組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】親油性成分を含有する眼科組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/10 20170101AFI20240118BHJP
   A61K 31/045 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240118BHJP
   A61J 1/05 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
A61K47/10
A61K31/045
A61P27/02
A61J1/05 313B
A61J1/05 315A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019182715
(22)【出願日】2019-10-03
(65)【公開番号】P2020059704
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2018189034
(32)【優先日】2018-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000177634
【氏名又は名称】参天製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】松原 唯
(72)【発明者】
【氏名】河畑 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】柿内 剛
【審査官】新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/099861(WO,A1)
【文献】実公昭33-014885(JP,Y1)
【文献】実公昭44-026538(JP,Y1)
【文献】特開2016-185940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
A61J 1/05
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
親油性成分を含有する眼科組成物であって、眼科組成物と接する樹脂の一部又は全部が非結晶性プラスチック樹脂で形成された二重中栓を有する容器に収容されていることを特徴とし、前記親油性成分がl-メントールであり、前記非結晶性プラスチック樹脂がABS樹脂、AES樹脂又は環状オレフィンポリマーである、眼科組成物(但し、眼科用組成物と接触する面の一部又は全部がポリブチレンテレフタレートを含有する樹脂で成形された容器に収容してなる眼科用組成物を除く)
【請求項2】
二重中栓が、眼科組成物と全く接しない又は僅かに接する外筒と眼科組成物と接する内筒からなる二重中栓であり、眼科組成物と全く接しない又は僅かに接する外筒が軟質の樹脂で形成され、眼科組成物と接する内筒が非結晶性プラスチック樹脂で形成されている、請求項1に記載の眼科組成物。
【請求項3】
さらに、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、環状オレフィンポリマー及び環状オレフィンコポリマーからなる群から選択される少なくとも1つで形成された容器本体を有する容器に収容されている、請求項1又は2に記載の眼科組成物。
【請求項4】
親油性成分を含有する眼科組成物であって、眼科組成物と接する樹脂の一部又は全部が非結晶性プラスチック樹脂で形成された二重中栓と、容器本体とを有する容器に収容され、
二重中栓が、眼科組成物と接しない外筒と眼科組成物と接する内筒からなる二重中栓であり、眼科組成物と接しない外筒が軟質の樹脂で形成され、眼科組成物と接する内筒が非結晶性プラスチック樹脂で形成され、
軟質の樹脂がポリエチレンであり、
非結晶性プラスチック樹脂がABS樹脂であり、
容器本体がポリエチレンテレフタレートで形成され、
親油性成分がl-メントールである、眼科組成物(但し、眼科用組成物と接触する面の一部又は全部がポリブチレンテレフタレートを含有する樹脂で成形された容器に収容してなる眼科用組成物を除く)
【請求項5】
親油性成分を含有する眼科組成物であって、眼科組成物と接する樹脂の一部又は全部が非結晶性プラスチック樹脂で形成された二重中栓と、容器本体とを有する容器に収容され、
二重中栓が、眼科組成物と全く接しない又は僅かに接する外筒と眼科組成物と接する内筒からなる二重中栓であり、眼科組成物と全く接しない又は僅かに接する外筒が軟質の樹脂で形成され、眼科組成物と接する内筒が非結晶性プラスチック樹脂で形成され、
軟質の樹脂がポリエチレンであり、
非結晶性プラスチック樹脂がABS樹脂であり、
容器本体がポリエチレンテレフタレートで形成され、
親油性成分がl-メントールである、眼科組成物(但し、眼科用組成物と接触する面の一部又は全部がポリブチレンテレフタレートを含有する樹脂で成形された容器に収容してなる眼科用組成物を除く)
【請求項6】
さらに、清涼化成分、薬理活性成分、安定剤、防腐剤、pH調節剤及び溶解剤のみを含有し、pHが5.0~6.5である、請求項1~のいずれか一項に記載の眼科組成物。
【請求項7】
眼科組成物が点眼薬又は洗眼薬である、請求項1~のいずれか一項に記載の眼科組成物。
【請求項8】
眼科組成物中の親油性成分の含量低下の抑制方法であって、親油性成分を含有する眼科組成物を、眼科組成物と接する樹脂の一部又は全部が非結晶性プラスチック樹脂で形成された二重中栓を有する容器に収容することを含み、前記親油性成分がl-メントールであり、前記非結晶性プラスチック樹脂がABS樹脂、AES樹脂又は環状オレフィンポリマーである、方法(但し、眼科用組成物と接触する面の一部又は全部がポリブチレンテレフタレートを含有する樹脂で成形された容器に収容してなる眼科用組成物を除く)
【請求項9】
二重中栓を有する容器に収容された親油性成分の二重中栓への吸着抑制方法であって、親油性成分を含有する眼科組成物を、眼科組成物と接する樹脂の一部又は全部が非結晶性プラスチック樹脂で形成された二重中栓を有する容器に収容することを含み、前記親油性成分がl-メントールであり、前記非結晶性プラスチック樹脂がABS樹脂、AES樹脂又は環状オレフィンポリマーである、方法(但し、眼科用組成物と接触する面の一部又は全部がポリブチレンテレフタレートを含有する樹脂で成形された容器に収容してなる眼科用組成物を除く)
【請求項10】
眼科組成物と接する樹脂の一部又は全部が非結晶性プラスチック樹脂で形成された二重中栓を有する容器に、親油性成分を含有する眼科組成物が収容された、眼科用製品であって、前記親油性成分がl-メントールであり、前記非結晶性プラスチック樹脂がABS樹脂、AES樹脂又は環状オレフィンポリマーである、眼科用製品(但し、眼科用組成物と接触する面の一部又は全部がポリブチレンテレフタレートを含有する樹脂で成形された容器に収容してなる眼科用組成物を除く)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親油性成分を含有する眼科組成物であって、非結晶性プラスチック樹脂で形成された中栓を有する容器に収容された眼科組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、点眼薬などの眼科組成物を収容する容器は、一般に、容器本体、中栓(ノズル)、キャップなどの複数の部材で構成されている。容器本体は中空成形された眼科組成物の収容部の上部に首部を有し、その首部の先端には開口部が形成されている。また、眼科組成物を適量注出するため、容器本体の開口部には中栓が嵌合されている。さらに、この中栓の先端からの眼科組成物の漏出を抑制するため、開口部全体はキャップで覆われている。このような容器において、通常、容器本体はポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンなどの結晶性プラスチック樹脂を原料として用い、ブロー成形、インジェクション成形、インジェクションブロー成形などにより製造されている。また、中栓は容器本体との嵌合の容易さ等の観点から、ポリエチレンなどの軟質の結晶性プラスチック樹脂で製造され、キャップはポリスチレンなどの非結晶性樹脂で製造されている。
【0003】
一方、容器に収容される眼科組成物には、メントール、ビタミンE、ビタミンA等の親油性成分が配合され、それらの成分の配合濃度を繊細にコントロールすることで製品の特徴付けをして、他の製品と差別化した製品が多数存在する。しかしながら、これらの親油性成分はポリエチレン、ポリプロピレンといった樹脂に吸着しやすいため、ポリエチレン製容器やポリプロピレン製容器に収容した場合、眼科組成物の保存中に親油性成分が容器に吸着して、親油性成分の含有量が大幅に低下して、眼科組成物の使用感や品質に大きな影響を与える場合がある。例えば、メントールは、眼科組成物に清涼感を付与する為に配合されるが、繊細な配合量の変化でもさし心地に大きな影響を与えるので、メントールの含有量の低下は、製品を特徴付ける上で大きな問題となる。
【0004】
このような問題を回避するため、容器本体に開口部を有する既存の容器を用いる場合、容器本体として、ポリエチレンテレフタレートなどの親油性成分の吸着の少ない樹脂製容器を使用して、容器本体との嵌合を容易にするため、中栓には柔軟性の高いポリエチレン等の軟質合成樹脂を用いる方法が知られている。
【0005】
また、特許文献1には、薬液に全く接しない又は僅かに接するポリエチレン等からなる外筒と薬液に接するポリエチレンテレフタレート等からなる内筒とからなる二重中栓とすることで、薬液の一部がポリエチレンに吸着することによる薬液の変質を防止することが開示されている。
【0006】
さらに、メントール等の親油性成分のプラスチック樹脂製容器への吸着を抑制するアプローチとして、眼科組成物に種々の添加剤を配合する方法が知られている。例えば、特許文献2には、メントールを含有する眼科組成物に界面活性剤を配合することで、メントールのプラスチック樹脂製容器への吸着を抑制する方法が開示されている。
【0007】
一方、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合合成樹脂)は、汎用プラスチックに分類される非結晶性プラスチック樹脂であり、家電製品の外装や筐体、自動車パネル、リコーダー等の楽器やプラスチック製玩具製品と、さまざまな用途で使用されている。
【0008】
しかしながら、特許文献1及び2には、親油性成分を含有する眼科組成物であって、一部又は全部が非結晶性プラスチック樹脂で形成された中栓を有する容器に収容された眼科組成物において、メントール等の親油性成分の中栓への吸着抑制効果については記載も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】実公平1-18529号公報
【文献】特開2002-003364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、親油性成分を含有する眼科組成物において、長期間保存した時の親油性成分の含量低下を抑制した眼科組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、どのような材質の中栓を有する容器に、親油性成分を含有する眼科組成物を収容して長期間保存した場合に、眼科組成物中の親油性成分の含量低下が抑制できるかを鋭意研究した。その結果、眼科組成物と接する部分が、ABS樹脂等の非結晶性プラスチック樹脂製の中栓を有する容器に、親油性成分を含有する眼科組成物を収容することで、親油性成分の含量低下が大幅に抑制できることを見出して本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明は下記の通りである。
[1]親油性成分を含有する眼科組成物であって、非結晶性プラスチック樹脂で形成された中栓を有する容器に収容されていることを特徴とする、眼科組成物。
[2]眼科組成物と接する樹脂の一部又は全部が非結晶性プラスチック樹脂で形成された中栓である、[1]に記載の眼科組成物。
[3]非結晶性プラスチック樹脂がABS樹脂、AES樹脂又は環状オレフィンポリマーである、[1]又は[2]に記載の眼科組成物。
[4]親油性成分がメントール、ボルネオール及びカンフルからなる群から選択される少なくとも1つの清涼化成分である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の眼科組成物。
[5]中栓が、眼科組成物と全く接しない又は僅かに接する外筒と眼科組成物と接する内筒からなる二重中栓であり、眼科組成物と接する内筒が非結晶性プラスチック樹脂で形成されている、[1]~[4]のいずれか一項に記載の眼科組成物。
[6]さらに、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、環状オレフィンポリマー及び環状オレフィンコポリマーからなる群から選択される少なくとも1つで形成された容器本体を有する容器に収容されている、[1]~[5]のいずれか一項に記載の眼科組成物。
[7]親油性成分を含有する眼科組成物であって、非結晶性プラスチック樹脂で形成された中栓と、容器本体とを有する容器に収容され、
中栓が、眼科組成物と接しない外筒と眼科組成物と接する内筒からなる二重中栓であり、眼科組成物と接する内筒が非結晶性プラスチック樹脂で形成され、
非結晶性プラスチック樹脂がABS樹脂であり、
容器本体がポリエチレンテレフタレートで形成され、
親油性成分がメントール、ボルネオール及びカンフルからなる群から選択される少なくとも1つの清涼化成分である、眼科組成物。
[8]親油性成分を含有する眼科組成物であって、非結晶性プラスチック樹脂で形成された中栓と、容器本体とを有する容器に収容され、
中栓が、眼科組成物と全く接しない又は僅かに接する外筒と眼科組成物と接する内筒からなる二重中栓であり、眼科組成物と接する内筒が非結晶性プラスチック樹脂で形成され、
非結晶性プラスチック樹脂がABS樹脂であり、
容器本体がポリエチレンテレフタレートで形成され、
親油性成分がメントール、ボルネオール及びカンフルからなる群から選択される少なくとも1つの清涼化成分である、眼科組成物。
[9]親油性成分、薬理活性成分、安定剤、防腐剤、pH調節剤及び溶解剤のみを含有し、pHが5.0~6.5である、[1]~[8]のいずれか一項に記載の眼科組成物。
[10]眼科組成物が点眼薬又は洗眼薬である、[1]~[9]のいずれか一項に記載の眼科組成物。
[11]眼科組成物中の親油性成分の含量低下の抑制方法であって、親油性成分を含有する眼科組成物を、非結晶性プラスチック樹脂で形成された中栓を有する容器に収容することを含む、方法。
[12]中栓を有する容器に収容された親油性成分の中栓への吸着抑制方法であって、親油性成分を含有する眼科組成物を、非結晶性プラスチック樹脂で形成された中栓を有する容器に収容することを含む、方法。
[13]非結晶性プラスチック樹脂で形成された中栓を有する容器に、親油性成分を含有する眼科組成物が収容された、眼科用製品。
尚、前記[1]~[13]を任意に選択して組み合わせること又は準用することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、ABS樹脂等の非結晶性プラスチック樹脂製の中栓を有する容器に、親油性成分を含有する眼科組成物を収容することで、親油性成分の含量低下が大幅に抑制できるので、眼科組成物の使用感や品質をコントロールすることができ、親油性成分の配合濃度をコントロールすることにより特徴付された、高品質の製品(眼科組成物)を使用者に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】各種プラスチック樹脂製中栓を使用した場合の眼科組成物中のメントールの残存率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。尚、本発明において「%(w/v)」は、本発明の組成物100mL中に含まれる対象成分の質量(g)を意味する(以下、特に断りがない限り同様である)。
【0016】
本発明の眼科組成物とは、親油性成分を含有する眼科組成物であれば特に制限されない。例えば、点眼薬、洗眼薬、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズケア用液(コンタクトレンズ洗浄液、コンタクトレンズ保存液、コンタクトレンズ消毒液、コンタクトレンズマルチパーパスソリューション等が含まれる)が挙げられ、点眼薬及び/又は洗眼薬が好ましい。
【0017】
本発明の眼科組成物に含有される親油性成分としては、医薬として許容され、親油性を示す成分であれば、特に制限されない。例えば、清涼化剤(清涼化成分)、親油性ビタミン類、植物油、動物油、鉱物油、エステル構造やエーテル構造を有する化合物が挙げられ、清涼化剤及び/又は親油性ビタミン類が好ましい。
【0018】
清涼化剤としては、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、ユーカリ油、ベルガモット油、ペパーミント油、ウイキョウ油、ローズ油、ケイヒ油、スペアミント油、樟脳油、クールミント、ハッカ油等のテルペノイドを含有する精油、メントール、メントン、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、ネロール、シネオール、シトロネロール、カルボン、アネトール、オイゲノール、リモネン、リナロール、酢酸リナリル等のテルペノイドが挙げられ、メントール、カンフル、ボルネオール及びゲラニオールが好ましく、メントール、カンフル、ボルネオールがより好ましく、メントールが特に好ましい。また、テルペノイドはd体、l体及びdl体のいずれであってもよく、例えば、l-メントール、d-メントール、dl-メントール、dl-カンフル、d-カンフル、dl-ボルネオール、d-ボルネオール等が挙げられ、l-メントール、dl-カンフル及びd-ボルネオールが好ましい。
【0019】
本発明の眼科組成物に含有される清涼化剤は、1種のみを単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、清涼化剤の含有量は、清涼化剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該眼科組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0020】
本発明の眼科組成物において、例えば、清涼化剤の総含有量(濃度)は、0.001~0.5%(w/v)が好ましく、0.001~0.1%(w/v)がより好ましく、0.005~0.05%(w/v)が特に好ましい。
【0021】
親油性ビタミン類としては、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、レチノール、β-カロテン、α-カロテン、β-クリプトキサンチン等のビタミンA類、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール等のビタミンD類、トコフェロール、トコトリエノール等のビタミンE類、フィロキノン、メナキノン等のビタミンK類が挙げられ、ビタミンA類、ビタミンE類が好ましい。
【0022】
本発明の眼科組成物に含有される親油性ビタミン類は、1種のみを単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、親油性ビタミン類の含有量は、親油性ビタミン類の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該眼科組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0023】
本発明の眼科組成物において、例えば、親油性ビタミン類の総含有量(濃度)は、0.001~0.5%(w/v)が好ましく、0.001~0.2%(w/v)がより好ましく、0.005~0.1%(w/v)が特に好ましい。
【0024】
植物油としては、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、ゴマ油、ヒマシ油、ダイズ油、ラッカセイ油、アルモンド油、小麦胚芽油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ヒマワリ油、綿実油、オリーブ油及びそれらの誘導体等が挙げられ、ヒマシ油が好ましい。
【0025】
本発明の眼科組成物に含有される植物油は、1種のみを単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、植物油の含有量は、植物油の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該眼科組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0026】
本発明の眼科組成物において、例えば、植物油の総含有量(濃度)は、0.001~1.0%(w/v)が好ましく、0.001~0.5%(w/v)がより好ましく、0.005~0.2%(w/v)が特に好ましい。
【0027】
動物油としては、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、スクワラン、ラノリン、オレンジラフィー油、馬油、鯨油、肝油、ミンク油、卵黄油、牛脂、乳脂、豚油及びそれらの誘導体等が挙げられ、スクワラン、ラノリンが好ましい。
【0028】
本発明の眼科組成物に含有される動物油は、1種のみを単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、動物油の含有量は、動物油の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該眼科組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0029】
本発明の眼科組成物において、例えば、動物油の総含有量(濃度)は、0.001~1.0%(w/v)が好ましく、0.001~0.5%(w/v)がより好ましく、0.005~0.2%(w/v)が特に好ましい。
【0030】
鉱物油としては、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、パラフィン、流動パラフィン、ワセリン及びセレシン等が挙げられ、流動パラフィン、ワセリンが好ましい。
【0031】
本発明の眼科組成物に含有される鉱物油は、1種のみを単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、鉱物油の含有量は、鉱物油の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該眼科組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0032】
本発明の眼科組成物において、例えば、鉱物油の総含有量(濃度)は、0.001~1.0%(w/v)が好ましく、0.001~0.5%(w/v)がより好ましく、0.005~0.2%(w/v)が特に好ましい。
【0033】
エステル構造やエーテル構造を有する化合物としては、エステル構造及び/又はエーテル構造を有する化合物であって、親油性を有し、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、ラタノプロスト、ビマトプロスト、トラボプロスト等のプロスタグランジン類等が挙げられ、ラタノプロスト、ビマトプロストが好ましい。
【0034】
本発明の眼科組成物に含有されるエステル構造やエーテル構造を有する化合物は、1種のみを単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、エステル構造やエーテル構造を有する化合物の含有量は、エステル構造やエーテル構造を有する化合物の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該眼科組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0035】
本発明の眼科組成物において、例えば、エステル構造やエーテル構造を有する化合物の総含有量(濃度)は、0.001~0.5%(w/v)が好ましく、0.001~0.1%(w/v)がより好ましく、0.0015~0.05%(w/v)が特に好ましい。
【0036】
本発明の容器の種類としては、眼科分野で一般的に使用されている容器であれば特に制限されない。例えば、点眼薬容器、洗眼薬容器、コンタクトレンズ装着液収容容器、コンタクトレンズケア用液収容容器(コンタクトレンズ洗浄液収容容器、コンタクトレンズ保存液収容容器、コンタクトレンズ消毒液収容容器、コンタクトレンズマルチパーパスソリューション収容容器等が含まれる)等が挙げられ、点眼薬容器又は洗眼薬容器が好ましい。
【0037】
また、これらの容器の形態は、眼科分野で一般的に使用されている中栓を有する容器であれば特に制限されない。例えば、3ピースからなる容器(キャップ、中栓、容器本体)、4ピース以上からなる容器等が挙げられるが、3ピース(キャップ、中栓、容器本体)からなる容器が好ましい。
【0038】
本発明において、中栓は、一部又は全部が非結晶性プラスチック樹脂で形成された中栓である。中栓の種類としては、穴の開いていない中栓でも、穴あき中栓でもよく、単なる中栓(一重中栓)でも、二重中栓でもよく、穴あき二重中栓が好ましい。また、本発明の眼科組成物と接する樹脂の一部又は全部が非結晶性プラスチック樹脂で形成された中栓であることが好ましい。また、本発明において、中栓が二重中栓である場合、中栓は、眼科組成物と全く接しない又は僅かに接する外筒と眼科組成物と接する内筒から形成されていることが好ましく、眼科組成物と接する内筒が非結晶性プラスチック樹脂で形成された中栓であることがより好ましい。
【0039】
本発明において、中栓が二重中栓である場合の眼科組成物と全く接しない又は僅かに接する外筒の材質は、容器本体との嵌合の観点から軟質の樹脂が好ましく、具体的には、ポリエチレン(PE)が好ましく、低密度ポリエチレン(LDPE)がより好ましい。また、ここで、眼科組成物と僅かに接するとは、眼科組成物の内筒への接触面積を1とした場合、眼科組成物の外筒への接触面積が1/3以下で接することを意味し、好ましくはその接触面積が1/5以下であり、より好ましくはその接触面積が1/10である。眼科組成物が外筒へ全く接しない場合が特に好ましい。
【0040】
本発明における中栓は、ブロー成形、インジェクション成形、インジェクションブロー成形などの一般的な製法により製造でき、その製法については特に限定されない。
【0041】
本発明の非結晶性プラスチック樹脂としては、非結晶性プラスチック樹脂に分類されるものであれば特に制限されない。例えば、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、AES樹脂(アクリロニトリルエチレンプロピレンジエンスチレン樹脂)、AS樹脂(アクリロニトリルスチレン樹脂)、ポリスチレン(PS)等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネイト(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)、環状オレフィンポリマー(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)及びそれらの誘導体が挙げられ、ABS樹脂、AES樹脂及び環状オレフィンポリマーが好ましく、ABS樹脂及びAES樹脂がより好ましい。
【0042】
本発明における容器の容器本体の樹脂の種類については、特に制限されないが、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、環状オレフィンポリマー(COP)及び環状オレフィンコポリマー(COC)等が挙げられ、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0043】
本発明における容器のキャップの樹脂の種類については、特に制限されないが、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)が挙げられ、ポリプロピレンが好ましい。
【0044】
本発明の眼科組成物は、本発明の効果を妨げない限り、前記の親油性成分以外に薬理活性成分(生理活性成分又は有効成分)を配合することができ、薬理活性成分(生理活性成分又は有効成分)は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、イプシロン-アミノカプロン酸、アラントイン、べルベリン類(塩化ベルべリン、硫酸ベルべリン)、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、亜鉛類(硫酸亜鉛、乳酸亜鉛)、塩化リゾチーム等の消炎・収斂成分、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン等の抗ヒスタミン剤、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、レチノール類(酢酸レチノール、パルチミン酸レチノール)、塩酸ピリドキシン、パントテン酸類(パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム)、酢酸トコフェロール等のビタミン類、アスパラギン酸塩類(L-アスパラギン酸カリウム、L-アスパラギン酸マグネシウム、L-アスパラギン酸マグネシウム・カリウム(等量混合物))、アミノエチルスルホン酸(タウリン)、コンドロイチン硫酸ナトリウム等のアミノ酸類、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、乾燥炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム等の無機塩類、アルキルポリアミノエチルグリシン等が挙げられ、イプシロン-アミノカプロン酸、パンテノール、L-アスパラギン酸カリウム又はアミノエチルスルホン酸(タウリン)が好ましい。
【0045】
前記薬理活性成分は、1種のみを単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよく、これらの薬理活性成分の含有量は薬理活性成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて、医薬品製造販売指針 別冊 要指導・一般用医薬品製造販売承認基準・申請実務の手引き 2017」に記載の(2)眼科用薬製造販売承認基準に基づき、適宜設定することができる。
【0046】
例えば、上記一般用医薬品製造販売承認基準に従えば、本発明の眼科組成物は、上記薬理活性成分を表1に示す最大濃度(%(w/v))で含有できる。
【0047】
【表1】
【0048】
本発明の眼科組成物は、例えば、表1に示すAグループの薬理活性成分を含有する場合、3種までを含有し、さらにBグループの薬理活性成分を1種まで、CグループとDグループの薬理活性成分をそれぞれ3種まで含有することが好ましい。また、Bグループの薬理活性成分を含有する場合、1種のみ含有し、さらにAグループの薬理活性成分を3種まで、CグループとDグループの薬理活性成分をそれぞれ3種まで含有することが好ましい。また、E又はFグループの薬理活性成分を含有する場合、1種のみ含有することが好ましい。なお、各グループ内にサブグループが存在する場合、同一のサブグループからは1種のみ含有することが好ましい。
【0049】
本発明の眼科組成物は、本発明の効果を妨げない限り、前述の成分の以外に、次の医薬として許容される薬理活性成分(生理活性成分又は有効成分)を適当量含有することもできる。具体的には、エピネフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、硝酸ナファゾリン、塩酸フェニレフリン、dl-塩酸メチルエフェドリン等の充血除去成分(血管収縮成分)、メチル硫酸ネオスチグミン、トロピカミド、ヘレニエン、硫酸アトロピン等の眼筋調節成分(ピント調節成分)、硫酸亜鉛水和物、プラノプロフェン、サリチル酸、トラネキサム酸、甘草等の消炎・収斂成分、クロモグリク酸又はその塩(クロモグリク酸ナトリウム)、アンレキサノクス、イブジラスト、スプラタスト、ペミロラスト又はその塩(ぺミロラストカリウム、ぺミロラストナトリウム)、トラニラスト、オロパタジン又はその塩(塩酸オロパタジン)、レボカバスチン又はその塩(塩酸レボカバスチン)、アシタザノラスト、ケトチフェン又はその塩(フマル酸ケトチフェン)、エピナスチン又はその塩(塩酸エピナスチン)等の抗ヒスタミン剤又は抗アレルギー剤、ビタミンB12(ヒドロキソコバラミン、メチルコバラミン及びアデノシルコバラミン)、ビタミンB(ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミン)、ビタミンE(酢酸-d-αトコフェロール)、ビタミンB(チアミン、チアミン塩酸塩)、ナイアシン(ニコチン酸及びニコチン酸アミド)、ビオチン、葉酸等のビタミン類、アスパラギン酸、グリシン、アラニン、γ-アミノ酪酸、グルタミン酸、アルギニン、リジン等のアミノ酸類、スルファメトキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム、スルフイソキサゾール、スルフイソキサゾールナトリウム等のサルファ剤、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ブドウ糖等の粘稠化成分、アクリノール、セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジン、ポリヘキサメチレンビグアニド、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等の殺菌剤、ヒアルロン酸ナトリウム等の角膜保護、角膜障害治療成分等が挙げられる。
【0050】
本発明の眼科組成物に使用できる薬理活性成分(生理活性成分又は有効成分)は、1種のみを単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、薬理活性成分の含有量は、薬理活性成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0051】
本発明の眼科組成物は、本発明の効果を妨げない限り、前記の親油性成分以外の添加剤を適当量含有することができる。該添加剤としては、医薬として許容されるものであれば、特に制限されず、例えば、界面活性剤(可溶化剤)、緩衝剤、防腐剤、粘稠剤、等張化剤、安定剤、pH調節剤、溶解剤等が使用できる。
【0052】
本発明の眼科組成物に使用できる界面活性剤(可溶化剤)は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤等が好ましく、非イオン性界面活性剤がより好ましい。
【0053】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、モノラウリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)等のPOEソルビタン脂肪酸エステル、POE(40)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40)及びPOE(60)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60)等のPOE硬化ヒマシ油、POE(10)ヒマシ油(ポリオキシエチレンヒマシ油10)、POE(35)ヒマシ油(ポリオキシエチレンヒマシ油35)等のPOEヒマシ油、POE(9)ラウリルエーテル等のPOEアルキルエーテル、POE(20)POP(4)セチルエーテル等のPOE-POPアルキルエーテル、POE(54)POP(39)グリコール、POE(120)POP(40)グリコール、POE(160)POP(30)グリコール、POE(196)POP(67)グリコール(ポロクサマー407、プルロニックF127)、POE(200)POP(70)グリコール等のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ステアリン酸ポリオキシル40等のモノステアリン酸ポリエチレングリコール等が挙げられ、モノラウリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)等のPOEソルビタン脂肪酸エステルが好ましく、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)がより好ましい。
【0054】
両性界面活性剤としては、例えば、N-[2-[[2-(アルキルアミノ)エチル]アミノ]エチル]グリシン及びその塩等が挙げられる。
【0055】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、α-スルホ脂肪酸エステル塩、α-オレフィンスルホン酸等が挙げられる。
【0056】
陽イオン性界面活性剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン等が挙げられる。
【0057】
本発明の眼科組成物に使用できる界面活性剤は、1種のみを単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、界面活性剤の含有量は、界面活性剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該眼科組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0058】
本発明の眼科組成物において、例えば、界面活性剤の総含有量(濃度)は、0.01~5%(w/v)が好ましく、0.01~1%(w/v)がより好ましく、0.05~0.5%(w/v)がさらに好ましい。
【0059】
本発明の眼科組成物に使用できる緩衝剤は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂等のホウ酸又はその塩、リン酸、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム等のリン酸又はその塩、炭酸、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム等の炭酸又はその塩、クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸二ナトリウム等のクエン酸又はその塩、酢酸、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸ナトリウム等の酢酸又はその塩、アスパラギン酸、アスパラギン酸ナトリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸カリウム等のアスパラギン酸又はその塩、エチレンジアミン二酢酸(EDDA)、エチレンジアミン三酢酸、エチレンジアミン四酢酸(エデト酸、EDTA)、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム水和物(エデト酸ナトリウム水和物)、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)等のエチレンジアミン酢酸類又はその塩、ε-アミノカプロン酸等のアミノ酸等が挙げられ、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂等のホウ酸又はその塩、リン酸、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム等のリン酸又はその塩及びε-アミノカプロン酸等のアミノ酸が好ましく、ホウ酸、ホウ砂、又はε-アミノカプロン酸がより好ましい。
【0060】
本発明の眼科組成物に使用できる緩衝剤は、1種のみを単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、緩衝剤の含有量は、緩衝剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該眼科組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0061】
本発明の眼科組成物において、例えば、緩衝剤の総含有量(濃度)は、0.001~5%(w/v)が好ましく、0.005~3%(w/v)がより好ましく、0.01~2%(w/v)が特に好ましい。
【0062】
本発明の眼科組成物に使用できる防腐剤は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、ポリヘキサメチレンビグアニド、塩酸ポリヘキサニド等のビグアニド化合物、塩化亜鉛、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、安息香酸ナトリウム、エタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、グローキル(ローディア社製 商品名)、ホウ酸、ホウ砂、亜塩素酸等が挙げられ、塩化ベンザルコニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、ソルビン酸、フェネチルアルコール、ホウ酸、ホウ砂、亜塩素酸が好ましく、塩化ベンザルコニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、フェネチルアルコール、ホウ酸、ホウ砂、亜塩素酸がより好ましい。
【0063】
本発明の眼科組成物に使用できる防腐剤は、1種のみを単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、防腐剤の含有量は、防腐剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該眼科組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0064】
本発明の眼科組成物において、例えば、防腐剤の総含有量(濃度)は、0~1%(w/v)が好ましく、0.0005~0.5%(w/v)がより好ましく、0.001~0.2%(w/v)がさらに好ましいが、防腐剤を含有しない場合も本発明の範囲である。
【0065】
本発明の眼科組成物に使用できる粘稠剤は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、ポリビニルピロリドンK25、ポリビニルピロリドンK30、ポリビニルピロリドンK90等のポリビニルピロリドン類、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2906、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ニトロセルロース又はそれらの塩等のセルロース誘導体、マクロゴール300、マクロゴール400、マクロゴール1500、マクロゴール4000、マクロゴール6000等のポリエチレングリコール、デキストラン40、デキストラン70等のデキストラン類、ヒアルロン酸ナトリウム(精製ヒアルロン酸ナトリウム等)、架橋ヒアルロン酸等のヒアルロン酸誘導体、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム等のアルギン酸誘導体、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、コンドロイチン硫酸ナトリウム、アラビアゴム、ジェランガム、トラガント等が挙げられ、ポリビニルピロリドンK25、ポリビニルピロリドンK30、ポリビニルピロリドンK90等のポリビニルピロリドン類、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2906、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ニトロセルロース又はそれらの塩等のセルロース誘導体、ヒアルロン酸ナトリウム(精製ヒアルロン酸ナトリウム等)、架橋ヒアルロン酸等のヒアルロン酸誘導体、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム等のアルギン酸誘導体が好ましく、ポリビニルピロリドンK30がより好ましい。
【0066】
本発明の眼科組成物に使用できる粘稠剤は、1種のみを単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、粘稠剤の含有量は、粘稠剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該眼科組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0067】
本発明の眼科組成物において、粘稠剤の総含有量(濃度)は、例えば、0.005~1.0%(w/v)が好ましく、0.01~0.5%(w/v)がより好ましく、0.3~0.5%(w/v)が特に好ましい。
【0068】
本発明の眼科組成物に使用できる等張化剤は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、塩化カリウム、酢酸カリウム等のカリウム塩、塩化カルシウム等のカルシウム塩、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、乾燥炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等のナトリウム塩、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等のマグネシウム塩等の無機塩、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、トロメタモール等の多価アルコール等が挙げられ、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、乾燥炭酸ナトリウム又は硫酸マグネシウムが好ましく、塩化カリウム、塩化ナトリウムがより好ましい。
【0069】
本発明の眼科組成物に使用できる等張化剤は、1種のみを単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、等張化剤の含有量は、等張化剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該眼科組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0070】
本発明の眼科組成物において、等張化剤の総含有量(濃度)は、例えば、0.05~5%(w/v)が好ましく、0.1~1.8%(w/v)がより好ましく、0.3~0.7%(w/v)が特に好ましい。
【0071】
本発明の眼科組成物に使用できる安定剤は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、トロメタモール、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、トコフェロール、ピロ亜硫酸ナトリウム、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリン、ジブチルヒドロキシトルエン、エデト酸、エデト酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム水和物、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等が挙げられ、ジブチルヒドロキシトルエン、エデト酸、エデト酸ナトリウム又はエデト酸ナトリウム水和物が好ましく、エデト酸ナトリウム水和物がより好ましい。
【0072】
本発明の眼科組成物に使用できる安定剤は、1種のみを単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、安定剤の含有量は、安定剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該眼科組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0073】
本発明の眼科組成物において、安定剤の総含有量(濃度)は、例えば、0.0001~1%(w/v)が好ましく、0.001~0.5%(w/v)がより好ましく、0.005~0.1%(w/v)が特に好ましい。
【0074】
本発明の眼科組成物に使用できるpH調節剤は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、希塩酸、酢酸、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられ、希塩酸、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0075】
本発明の眼科組成物に使用できるpH調節剤は、1種のみを単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、pH調節剤の含有量は、pH調節剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該眼科組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0076】
本発明の眼科組成物においてpH調節剤を使用する場合、pH調節剤の総含有量(濃度)は、例えば、0.001~5%(w/v)が好ましく、0.005~1%(w/v)がより好ましく、0.01~0.5%(w/v)が特に好ましい。
【0077】
本発明の眼科組成物に使用できる溶解剤(溶媒及び/又は分散媒)は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、水(蒸留水、常水、精製水、滅菌精製水、注射用水、注射用蒸留水等)、含水エタノール等の水性溶解剤等が挙げられ、水(蒸留水、常水、精製水、滅菌精製水、注射用水、注射用蒸留水等)が好ましい。
【0078】
本発明の眼科組成物に使用できる溶解剤は、1種のみを単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、溶解剤の含有量は、溶解剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該眼科組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0079】
本発明の眼科組成物において、例えば、溶解剤が水の場合、組成物の総量に対して、90%(w/v)以上が好ましく、95%(w/v)以上がより好ましく、97%(w/v)以上が特に好ましい。
【0080】
本発明の眼科組成物の粘度は、点眼液として許容される粘度であれば特に制限されない。具体的には、粘度の上限は10mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以下がより好ましく、3mPa・s以下がさらにより好ましく、1mPa・s以下が特に好ましい。また、粘度の下限は0mPa・s超であれば特に制限はないが、0.01mPa・s以上が好ましく、0.1mPa・s以上がより好ましく、0.3mPa・s以上が特に好ましい。また、前記の粘度の上限と下限は、各々適宜組み合わせて、範囲とすることができる。例えば、0mPa・s超10mPa・s以下が好ましく、0.01mPa・s以上5mPa・s以下がより好ましく、0.1mPa・s以上3mPa・s以下がさらに好ましく、0.3mPa・s以上1mPa・s以下が特に好ましい。
【0081】
また、本発明の眼科組成物の粘度は、例えば、第十七改正日本薬局方に記載された粘度測定法で測定することができる。具体的な測定方法として、毛細管粘度計法、回転粘度計法等が挙げられ、好ましくは、回転粘度計法である。より具体的には、コーンプレート型粘度計を用いて、ずり速度100s-1、測定温度25.0℃での各製剤の粘度を測定できる。さらに、本発明の眼科組成物の粘度の測定時期に制限はないが、好ましくは、本発明の眼科組成物の調製後直ちに、本発明の眼科組成物の使用直前に、又は本発明の眼科組成物の使用期限(有効期間)に、測定すればよく、より好ましくは、本発明の眼科組成物の調製後直ちに、又は本発明の眼科組成物の使用直前に測定すればよい。
【0082】
本発明の眼科組成物の浸透圧は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、浸透圧比が、0.2~2が好ましく、0.7~1.5がより好ましく、0・9~1.1が特に好ましい。
【0083】
尚、浸透圧比は、第十七改正日本薬局方に基づき、286mOsm(0.9%(w/v)塩化ナトリウム水溶液の浸透圧)に対する試料の浸透圧の比とし、浸透圧は日本薬局方記載の浸透圧測定法(氷点降下法)を参考にして測定でき、また、浸透圧比測定用標準液(0.9%(w/v)塩化ナトリウム水溶液)については、塩化ナトリウム(日本薬局方標準試薬)を500~650℃で40~50分間乾燥した後、デシケーター(シリカゲル)中で放冷し、その0.900gを正確に量り、精製水に溶かし正確に100mLとして調製するか、市販の浸透圧比測定用標準液(0.9%(w/v)塩化ナトリウム水溶液)を用いることができる。
【0084】
本発明の眼科組成物のpHは、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、その上限は9.0以下が好ましく、8.0以下がより好ましく、6.5以下が特に好ましい。また、その下限は4.0以上が好ましく.4.5以上がより好ましく、5.0以上が特に好ましい。また、前記のpHの上限と下限は、各々適宜組み合わせて、範囲とすることができ、例えば、pHが4.0以上9.0以下、好ましくはpHが4.5以上8.0以下、特に好ましくは、5.0以上6.5以下である。本発明の眼科組成物のpHは、pH調節剤や緩衝剤(医薬として許容されるものであれば、特に制限されない)を使用して調節することができる。
【0085】
尚、pHは、例えば、第十七改正日本薬局方に記載されたpH測定法に準じて、測定できる。
【0086】
本発明の眼科組成物を点眼薬として使用する場合は、適切な有効成分を配合することができ、目のかすみ(目やにの多いときなど)、目の疲れ、結膜充血、目のかゆみ、眼病予防(水泳のあと、ほこりや汗が目に入ったときなど)、眼瞼炎(まぶたのただれ)、紫外線その他の光線による眼炎(雪目など)、コンタクトレンズ(ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズ等)を装着及び/又は装用しているときの不快感等、の症状を緩和・改善・抑制に使用できる。また、角膜の保護・保水に使用することもできる。
【0087】
本発明の眼科組成物を点眼薬として使用する場合、その所望の効果を奏するのに十分であれば用法用量(使用回数、点眼滴数、点眼回数等)に特に制限はない。例えば、使用回数は、1~6回/日が好ましく、1~3回/日がより好ましい。また点眼滴数は、1回1~3滴/眼が好ましく、1回1~2滴/眼がより好ましく、1回1滴/眼が特に好ましい。点眼回数は、1~6回/日が好ましく、3~6回/日がより好ましく、5~6回/日が特に好ましい。点眼1滴量は、20~60μLが好ましく、25~50μLがより好ましく、30~40μLが特に好ましい。
【0088】
本発明の眼科組成物を洗眼薬として使用する場合は、適切な有効成分を配合することができ、目の洗浄、眼病予防(水泳のあと,ほこりや汗が目に入ったときなど)に使用することもできる。
【0089】
本発明の眼科組成物を洗眼薬として使用する場合、その所望の効果を奏するのに十分であれば用法用量(使用回数、使用量、点眼滴数等)に特に制限はなく、カップ式洗眼薬、点眼型洗眼薬のいずれにおいても使用できる。例えば、カップ式洗眼薬であれば、使用回数は、1~6回/日が好ましく、1~3回/日がより好ましい。また、使用量は、1回あたり5~10mLが好ましく、5mLが特に好ましい。洗眼回数は、1~6回/日が好ましく、3~6回/日がより好ましい。点眼型洗眼薬であれば、使用回数は、1~6回/日が好ましく、3~6回/日がより好ましいが、点眼型洗眼薬は、携帯性に優れるため、眼に異物が入ったと自覚した際には、直ちに、使用することもでき、点眼滴数の下限は、1回3滴以上/眼が好ましく、1回4滴以上/眼がより好ましい。また、その上限は1回8滴以下/眼が好ましく、1回6滴以下/眼がより好ましく、点眼1滴量は、30~50μLが好ましく、35~50μLがより好ましい。さらに点眼後の瞬目については特に制限はないが、具体的には、1滴点眼毎に瞬目してもよく、複数滴点眼後に瞬目してもよく、瞬目しなくてもよい。尚、洗眼効果の観点から1又は2滴点眼毎に瞬目することが好ましく、1滴点眼毎に瞬目することがさらに好ましい。また、瞬目の回数は特に制限はないが、1滴点眼毎又は複数滴点眼後に1~3回が好ましく、1~2回がより好ましい。
【0090】
本発明の眼科組成物をコンタクトレンズ装着液やコンタクトレンズケア用液として使用する場合、その所望の効果を奏するのに十分であれば用法用量に特に制限はない。
【0091】
本発明の眼科組成物は、コンタクトレンズ用の、眼科組成物として使用でき、ハードコンタクトレンズ及び/又はソフトコンタクトレンズを含む、市販されているあらゆるコンタクトレンズに適用でき、コンタクトレンズを装用した状態(コンタクトレンズが眼表面に装着された状態)でも使用できる。尚、ここで、ソフトコンタクトレンズは、例えば、イオン性及び非イオン性の双方を包含し、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ及び非シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの双方を包含する。また、グループI~IVとして分類される全てのソフトコンタクトレンズを包含する。
【0092】
本発明の眼科組成物は、「コンタクトレンズ(ハードコンタクトレンズ・ソフトコンタクトレンズ)装用時にも使用できる」、「コンタクトレンズ(ハードコンタクトレンズ・ソフトコンタクトレンズ)装用時用」などと表示をすることもでき、さらにそれらに類似する表示をすることもできる。また、その表示は、直接的又は間接的にすることができ、直接的な表示の例としては、商品自体、パッケージ、容器、ラベル、タグなどの包装への記載が挙げられ、間接的な表示の例としては、取引書類、取扱説明書、添付文書、カタログ、ウェブサイト、店頭、展示会、看板、掲示板、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、電子メールなどによる、広告・宣伝・医師への説明等の活動が挙げられる。
【0093】
以下に本発明の別態様を記載するが、それらの態様については、前述した本発明の定義や条件をすべて準用できる。
【0094】
本発明の別の態様は、眼科組成物中の親油性成分の含量低下の抑制方法であって、親油性成分を含有する眼科組成物を、非結晶性プラスチック樹脂で形成された中栓を有する容器に収容することを含む、方法である。
【0095】
本発明の別の態様は、中栓を有する容器に収容された親油性成分の中栓への吸着抑制方法であって、親油性成分を含有する眼科組成物を、非結晶性プラスチック樹脂で形成された中栓を有する容器に収容することを含む、方法である。
【0096】
本発明の別の態様は、非結晶性プラスチック樹脂で形成された中栓を有する容器に、親油性成分を含有する眼科組成物が収容された、眼科用製品である。ここで、眼科用製品としては、例えば、点眼薬、洗眼薬などの製品が挙げられる。なお、眼科用製品は、眼科用医薬製品とも言う。
【実施例
【0097】
<製剤例>
以下に本発明の眼科組成物の製剤例を表2に示すが、これらの製剤例は本発明をより良く理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。尚、下記の製剤例において各成分の配合量は製剤100mL中に含まれる成分の質量(g)を意味し、その単位は「%(w/v)」で示される(但し、レチノールパルチミン酸エステルの単位は、「IU」である)。また、それらの製剤例は、点眼薬、洗眼薬、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズケア用液(コンタクトレンズ洗浄液、コンタクトレンズ保存液、コンタクトレンズ消毒液、コンタクトレンズマルチパーパスソリューション等が含まれる)に適用できる。
【0098】
【表2】
【0099】
尚、前記製剤例1~10における薬理活性成分、添加剤の種類や配合量及び粘度を適宜調整して、所望の眼科組成物を得ることができる。
【0100】
<実施例>
実施例として、各プラスチック樹脂製中栓を使用した場合の眼科組成物1中の親油性成分の残存率確認試験の結果を以下に示す。尚、この例示は本発明をより良く理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0101】
1.各プラスチック樹脂製中栓を使用した場合の眼科組成物1中の親油性成分(メントール)の残存率確認試験
【0102】
1)眼科組成物1の調製
最終調整量の約90%相当量の水を55-60℃に加温し、クロロブタノールを投入して撹拌溶解後、液温を38-42℃に冷却した。次いで、クロルヘキシジングルコン酸塩、l-メントール、dl-カンフル、d-ボルネオール、エデト酸ナトリウム水和物、イプシロン-アミノカプロン酸、パンテノール、タウリン、L-アスパラギン酸カリウムを投入し、攪拌溶解後、室温まで冷却した。さらに、希塩酸/塩化ナトリウムを加えてpH5.8に調整し、水を加えて全量調整することで、以下の表3に示す眼科組成物1を調製した。
【0103】
【表3】
【0104】
2)試験方法
ポリエチレンテレフタレート製の容器本体に前記眼科組成物1(12mL)を入れ、容器本体に各プラスチック樹脂製中栓(低密度ポリエチレン(LDPE)製の一重中栓(参考例1)、内筒の材質がポリブチレンテレフタレート(PBT)製で、外筒が低密度ポリエチレン(LDPE)製の二重中栓(参考例2)、内筒の材質がアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合合成樹脂(ABS樹脂)製で、外筒が低密度ポリエチレン(LDPE)製の二重中栓(実施例1)、内筒の材質がアクリロニトリルエチレンプロピレンジエンスチレン共重合合成樹脂(AES樹脂)製で、外筒が低密度ポリエチレン(LDPE)製の二重中栓(実施例2)、内筒の材質が環状オレフィンコポリマー樹脂(COC)製で、外筒が低密度ポリエチレン(LDPE)製の二重中栓(実施例3))を取り付けた後、ポリプロピレン製のキャップをし、プラスチックピロー包装を行った。
次いで、前記容器を横向きで静置し、50℃で21日間放置した。
21日目に前記眼科組成物1中の親油性成分(メントール)の量をガスクロマトグラフィーにて定量した。
尚、眼科組成物1中の親油性成分(メントール)の残存率を下記式1に従い算出した。
[式1]
眼科組成物1中の親油性成分の残存率(%)={(試験開始21日目の眼科組成物1中の親油性成分(メントール)の量}/(試験開始前の眼科組成物1中の親油性成分(メントール)の量}}×100
【0105】
3)試験結果
試験結果を表4及び図1に示す。ここで、図1は各プラスチック樹脂製中栓を使用した場合の眼科組成物1中の親油性成分(メントール)の残存率を示す。
【0106】
【表4】
【0107】
4)考察
表4及び図1から明らかなように非結晶性プラスチック樹脂であるABS樹脂製中栓、AES樹脂製中栓又はCOC製中栓を使用した場合、結晶性プラスチック樹脂であるLDPE製中栓、PBT製中栓を使用した場合と比較して、眼科組成物中の親油性成分(メントール)の残存率は明らかに高い値であった。すなわち、ABS等の非結晶性プラスチック樹脂製の中栓を有する容器にメントール等の親油性成分を含有する眼科組成物を収容することで、メントール等の親油性成分の容器への吸着が大幅に抑制できることを見出した。
【産業上の利用可能性】
【0108】
以上のように、本発明の眼科組成物は、ABS樹脂等の非結晶性プラスチック樹脂製の中栓を有する容器に、親油性成分を含有する眼科組成物を収容することで、親油性成分の含量低下を大幅に抑制できる。このため、本発明によれば、眼科組成物の使用感や品質をコントロールすることができ、親油性成分の配合濃度をコントロールすることにより特徴付された、高品質の製品(例えば、点眼薬、洗眼薬等)を使用者に提供できる。
図1