IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本クロージャー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-打栓式合成樹脂キャップ 図1
  • 特許-打栓式合成樹脂キャップ 図2
  • 特許-打栓式合成樹脂キャップ 図3
  • 特許-打栓式合成樹脂キャップ 図4
  • 特許-打栓式合成樹脂キャップ 図5
  • 特許-打栓式合成樹脂キャップ 図6
  • 特許-打栓式合成樹脂キャップ 図7
  • 特許-打栓式合成樹脂キャップ 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】打栓式合成樹脂キャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 41/48 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
B65D41/48 BRH
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019210965
(22)【出願日】2019-11-22
(65)【公開番号】P2021080004
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 有友
(72)【発明者】
【氏名】熊田 光雄
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-205750(JP,A)
【文献】特開2005-313906(JP,A)
【文献】特開平11-147550(JP,A)
【文献】実公昭44-020315(JP,Y1)
【文献】米国特許第04811857(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第02133281(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0259966(US,A1)
【文献】独国実用新案第000029800210(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 41/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天面壁と、
前記天面壁の周縁から垂下するとともに、下端から上方に向かって延在する間欠部が周方向に沿って複数形成されたスカート壁と、を含み、
前記間欠部を挟むように前記スカート壁において脚部が複数延出され、
前記スカート壁の径方向内側へ突き出るように、前記脚部の下端が曲げ返されて容器口部と篏合可能な屈曲部が設けられ
前記間欠部は、前記スカート壁の下端が間欠状となるように、前記周方向に沿って前記スカート壁で断続的に設けられ、
前記間欠部の上方には、隣り合う前記脚部の間にそれぞれ対応して配置される薄肉部が形成されている、ことを特徴とする打栓式合成樹脂キャップ。
【請求項2】
前記スカート壁の外周面のうち前記屈曲部よりも上方には、径方向外方に突出する鍔部が形成されてなる、請求項1に記載の打栓式合成樹脂キャップ。
【請求項3】
前記鍔部の下方において前記スカート壁から前記脚部が延出されていない、請求項1又は2に記載の打栓式合成樹脂キャップ。
【請求項4】
前記スカート壁の内側で前記天面壁から垂下するインナーリングをさらに有し、
前記インナーリングの下端は、前記スカート壁の屈曲部よりも上方に配置されてなる、請求項1~のいずれか一項に記載の打栓式合成樹脂キャップ。
【請求項5】
前記脚部のうち前記屈曲部における板厚t2は、前記スカート壁の屈曲部以外の板厚t1よりも薄い、請求項1~のいずれか一項に記載の打栓式合成樹脂キャップ。
【請求項6】
融点が230℃~270℃のポリエステル樹脂である、請求項1~のいずれか一項に記載の打栓式合成樹脂キャップ。
【請求項7】
前記容器と同材質である、請求項1~のいずれか一項に記載の打栓式合成樹脂キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牛乳瓶など比較的に広口の容器に嵌め込まれて使用される打栓式合成樹脂キャップに関するものであり、より詳細には容器とまとめて廃棄可能としつつ高い開栓容易性を兼ね備えた構造のキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば牛乳などの乳飲料を保存する容器として、注出口が比較的大径の瓶(以下、かような瓶を「広口ボトル」とも称する)が知られている。かような広口ボトルを封止するキャップとしては、例えば特許文献1に例示されるごとき構造のキャップが用いられている。
【0003】
上記した広口ボトルを構成する材料として従来からガラスが好適に用いられてきたが、近年では軽量化などの観点からPETなどのポリエステル樹脂も用いられるようになってきた。また、これと並行して昨今では、リサイクルの観点から使用済のポリエステル樹脂製ボトルの回収が進められている。
【0004】
これに対して特許文献2では、上記したリサイクルにおいて、ポリエステル樹脂製ボトルと同種の材料でキャップを構成することで、回収したボトルとキャップとを分別せず再生工程を簡素化することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-223933号公報
【文献】特開2000-256472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した広口ボトルに限らず容器を封止するキャップとしては、密封時における高密封性と開栓時における開栓容易性という特性がともに求められる。この点、上記した特許文献1では、キャップを構成する材料としてポリエチレンなど比較的軟質のオレフィン樹脂を用いて上記特性を実現しているものの、容器とは異種の材料でキャップが構成されていることから分別回収が必要となってしまう。
【0007】
他方、特許文献2に例示されるように、広口ボトルと同種の材料でキャップを構成することで上記した分別回収は不要となるものの、比較的硬質のポリエステル材料で容器が構成されている場合には高密封性と開栓容易性は悪化してしまう。
【0008】
このように上記特許文献を含む従来技術では未だに改善の余地はあり、したがって本発明が有する目的の一例としては、分別回収の煩を不要としつつも高い密封性と開栓容易性とを兼ね備えた構造の打栓式合成樹脂キャップを提供することが挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の一形態における打栓式合成樹脂キャップは、(1)天面壁と、前記天面壁の周縁から垂下するとともに、下端から上方に向かって延在する間欠部が周方向に沿って複数形成されたスカート壁と、を含み、前記間欠部を挟むように前記スカート壁において脚部が複数延出され、前記スカート壁の径方向内側へ突き出るように、前記脚部の下端が曲げ返されて容器口部と篏合可能な屈曲部が設けられ、前記間欠部は、前記スカート壁の下端が間欠状となるように、前記周方向に沿って前記スカート壁で断続的に設けられ、前記間欠部の上方には、隣り合う前記脚部の間にそれぞれ対応して配置される薄肉部が形成されていることを特徴とする。
【0010】
なお上記した(1)に記載の打栓式合成樹脂キャップにおいては、(2)前記スカート壁の外周面のうち前記屈曲部よりも上方には、径方向外方に突出する鍔部が形成されてなることが好ましい。
【0011】
また上記した(1)又は(2)に記載の打栓式合成樹脂キャップにおいては、(3)前記鍔部の下方において前記スカート壁から前記脚部が延出されていないことが好ましい。
【0013】
また上記した(1)~(4)のいずれかに記載の打栓式合成樹脂キャップにおいては、(5)前記スカート壁の内側で前記天面壁から垂下するインナーリングをさらに有し、前記インナーリングの下端は、前記スカート壁の屈曲部よりも上方に配置されてなることが好ましい。
【0014】
そして上記した(1)~(5)のいずれかに記載の打栓式合成樹脂キャップにおいては、(6)前記脚部のうち前記屈曲部における板厚t2は、前記スカート壁の屈曲部以外の板厚t1よりも薄いことが好ましい。
【0015】
また上記した(1)~(6)のいずれかに記載の打栓式合成樹脂キャップは、(7)融点が230℃~270℃のポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0016】
また上記した(1)~(7)のいずれかに記載の打栓式合成樹脂キャップは、(8)前記容器と同材質であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の打栓式キャップによれば、容器とキャップとを分別せずリサイクルできることに加え、さらに高い密封性と開栓容易性も実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態における打栓式合成樹脂キャップの外観斜視図である。
図2】打栓式合成樹脂キャップを上方から見た上面図である。
図3】打栓式合成樹脂キャップを下方から見た底面図である。
図4】打栓式合成樹脂キャップをX方向とY方向からそれぞれ見た側面図である。
図5図2および3におけるA-Aで切った状態を示す断面図である。
図6】打栓式合成樹脂キャップの閉栓時と開栓時の状態を示す模式図である。
図7】容器の口部に打栓式合成樹脂キャップが嵌合された際の断面図である。
図8】打栓式合成樹脂キャップの脚部を成形するときの状態遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を好適に実施するための実施形態について説明する。
なお本実施形態においては、説明の便宜上、図を用いた説明においてX、Y及びZ方向を適宜設定したが、説明の便宜上であって本発明を何ら過度に限定するものではない。
【0020】
≪打栓式合成樹脂キャップ100≫
まず図1~7を参照しつつ、本実施形態に係る打栓式合成樹脂キャップ100の構造について説明する。
図1などに示すとおり、本実施形態の打栓式合成樹脂キャップ100は、後述する容器200の容器口部201に対して打栓によって嵌合する機能を有し、天面壁10と、この天面壁10の周縁から軸方向(図示ではZ方向)に沿って垂下するスカート壁20とを少なくとも含んで構成されている。
【0021】
ここで、本実施形態に好適な容器200としては、例えば図6に示すような注出口が比較的広い広口ボトルが例示できる。なお容器200としては、上記した広口ボトルに限られず清涼飲料水やお茶などを保存する一般的な口径のボトルを適用してもよい。また、容器200の材質としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂などのポリエステル樹脂が好ましい。
【0022】
容器200に保存される内容物は、特に制限はなく、例えば牛乳などの乳飲料、お茶など清涼飲料水など公知の種々の液体が適用できる。また、容器200に保存される内容物としては、上記した各種の液体に代えて、錠剤などの薬剤や食品など公知の固体材料あるいはゲル状の公知の半固体材料を適用してもよい。
【0023】
そして本実施形態の打栓式合成樹脂キャップ100は、上記したリサイクルの利便性向上の観点から、容器200と同材質であることが好ましい。例えば容器200の材質として融点が230℃~270℃であるPET樹脂(ポリエステル樹脂)が適用されている場合には、同じPET樹脂(ポリエステル樹脂)からなる打栓式合成樹脂キャップ100で構成されていることが好ましい。
【0024】
なお飲料容器としてはPET樹脂が好適であるが、例えば容器200が飲料用途以外に用いられる場合にはPET樹脂以外の汎用樹脂またはエンジニアリングプラスチックが適用され得る。この場合においても、いわゆる単一材として、かような容器200に対して同材質の打栓式合成樹脂キャップ100が適用されることで、リサイクルの利便性を向上させることができる。
【0025】
図3及び4などから理解されるとおり、本実施形態のスカート壁20には、その下端が間欠状となるように、下端から上方に向かって延在する間欠部23が周方向(θz方向)に沿って断続的に複数設けられている。また図3に示すとおり、断続的に形成された間欠部23の周方向における長さは、本実施形態では後述する薄肉部24にほぼ対応させて異なるように構成されている。
【0026】
しかしながら間欠部23の周方向における長さは、必要な開栓力や薄肉部24などに応じて適宜設定可能であり、例えば断続的に形成された間欠部23の周方向における長さを互いに等しくさせてもよいし、薄肉部24の周方向における長さよりも短くするなど当該薄肉部24とは無関係に設定してもよい。
【0027】
また、図3および4などに示すとおり、本実施形態の打栓式合成樹脂キャップ100においては、前記した間欠部23を挟むようにスカート壁20から脚部21が複数延出されている。本実施形態では、打栓式合成樹脂キャップ100の周方向に沿って合計8個形成されているが、8個以外の任意の個数であってもよい。
【0028】
このように本実施形態では、打栓式合成樹脂キャップ100の軸周り(θz)に沿って複数の脚部21が設けられている。これらの脚部21の周方向における長さL1は、互いにほぼ等しくしてもよいし、周方向における長さが異なる脚部21が含まれていてもよい。例えば上記した複数の脚部21の周方向におけるそれぞれ長さL1を、鍔部30に近づくに従って変化させる(例えば鍔部30に近づくにつれて短くなる)ようにしてもよい。これにより、打栓式合成樹脂キャップ100の容器200に対する嵌合力を周方向で変化させることができる。
【0029】
また、間欠部23を挟むようにスカート壁20において延出した脚部21は、本実施形態ではすべてスカート壁の径方向内側へ突き出るように曲げ返されているが、この態様に限定されない。すなわち上記延出した脚部21のうち少なくとも1つを曲げ返されないようにしてもよいし、この部分を省略して延出しないこととしてもよい。
【0030】
また、脚部21の軸方向における高さh2は、打栓式合成樹脂キャップ100のスカート壁20全体の軸方向における高さh1に応じて適宜設定してもよい。
例えば容器口部201の形状を考慮すると、上記した脚部21の高さh2は、スカート壁20全体の高さh1の半分以下であることが好ましい。これによりキャップ全体の軸方向高さ(h1)の過半数で容器口部201の比較的多くの部位をカバーできることから、閉栓時における容器口部201の衛生面でより効果を発揮できる。
【0031】
図3及び4との対比などから明らかなとおり、鍔部30(後述)の下方においてはスカート壁20から脚部21が延出されていない。これにより、容器200の使用者が鍔部30に指などを引っ掛けやすくするとともに、容器口部201との嵌合力が過剰になることを防止することが可能となっている。したがって本実施形態では、鍔部30の下方においても間欠部23が設けられていると言える。
【0032】
この鍔部30の下方に位置する間欠部23は、他の間欠部23(隣り合う脚部21の間に位置する間欠部23)よりも周方向における長さが長くなるように(大きくなるように)構成されている。
なお間欠部23の軸方向(Z方向)における長さは、開栓時の打栓式合成樹脂キャップ100における撓りに影響するため、必要な開栓力に応じて適宜設定してもよい。
【0033】
また、図4などに示すとおり、本実施形態の打栓式合成樹脂キャップ100においては、上記した間欠部23の上方には薄肉部24が形成されている。この薄肉部24は、スカート壁20の外周面20aにおいて周方向に沿って断続的に設けられるとともに、隣り合う脚部21の間に対応するように配置されている。
かような薄肉部24は、スカート壁20のうち他の部位よりも板厚が薄い領域であり、上記した開栓時における打栓式合成樹脂キャップ100の撓りを生じさせる機能を有している。すなわち、図5及び7に示すとおり、薄肉部24における板厚t3は、スカート壁20の他の部位における通常の板厚t1よりも薄くなるように形成されている。
【0034】
図2に示すとおり、スカート壁20に設けられる複数の薄肉部24の周方向における長さL2は、本実施形態ではすべて同じではなく異なるように構成されている。すなわち、鍔部30の隣に位置する薄肉部24における上記長さL2は、鍔部30と隣り合わない位置の薄肉部24における上記長さL2よりも短くなるように設定されている。これにより、上記した開栓時の開栓力が過大に大きくなってしまうことが抑制される。
なお複数の薄肉部24の周方向における上記長さL2は一例であって、例えば複数の薄肉部24の上記長さL2が互いにほぼ等しく設定されていてもよい。
【0035】
<屈曲部22>
次に本実施形態の打栓式合成樹脂キャップ100に設けられる屈曲部22について詳述する。図6および7などに示すとおり、本実施形態の打栓式合成樹脂キャップ100には、スカート壁20から延出する脚部21の下端21aが曲げ返されることで、容器口部201と篏合可能な屈曲部22が設けられている。
【0036】
屈曲部22は、図6に示すとおり、容器口部201に形成された係合段部202と係合する機能を有している。なお屈曲部22は、上記した脚部21の下端21aが径方向内側(スカート壁20の内周面20b側)に曲げ返されて形成されているが、この屈曲部22の形状に関しては上記した形態には限定されない。
【0037】
すなわち、本実施形態の屈曲部22は、上記した係合段部202と係合する機能を有する限りにおいて種々の変形が可能である。例えば屈曲部22は、脚部21の下端21aが径方向外側(スカート壁20の外周面20a側)に曲げ返されるとともに、この曲げ返された部位が径方向内側へ傾斜されていてもよい。
【0038】
また、屈曲部22の他の形態としては、脚部21の下端21aが必ずしも上方へ曲げ返される必要はなく、例えば脚部21のうち下端21aより上方に位置する部位が径方向内側または径方向外側へ湾曲して係合段部202と係合可能なように構成されていてもよい。このとき上記と同様に、下端21aより上方に位置する脚部21の部位が径方向外側へ湾曲するケースでは、この湾曲した部位が径方向内側へさらに傾斜されることとなる。
【0039】
図6図7に示すとおり、本実施形態の屈曲部22は、上記した脚部21の下端21aが上方へ向かってカールしたカール状(曲げ返しされた部位が全体的に緩やかに湾曲された形状)となっていることが好ましい。しかしながら本実施形態では、屈曲部22は、必ずしも上記したカール状である必要はなく、脚部21の下端21aが上方へ向かって内側又は外側に折り返される形態であってもよい。なおこのとき、上方へ向かってカールした上記下端21aの軸方向における位置は、後述する鍔部30よりも下方に位置することが好ましい。
【0040】
また図7に示すとおり、前記した脚部21のうち屈曲部22における板厚t2は、スカート壁20の屈曲部22以外の板厚t1よりも薄いことが好ましい。これにより屈曲部22を効率良く成形することが可能となっている。なお、屈曲部22は、上記した係合段部202と係合して容器口部201を密封可能な程度の強度も要するため、上記した薄肉部24の板厚t3よりも屈曲部22における板厚t2の方が厚いことが望ましい。
【0041】
<鍔部30>
次に本実施形態の打栓式合成樹脂キャップ100に設けられる鍔部30について詳述する。図1、2および5などに示すとおり、本実施形態の打栓式合成樹脂キャップ100においては、径方向外方に突出する鍔部30がスカート壁20に形成されている。
【0042】
これらの図から明らかなとおり、本実施形態の鍔部30は、スカート壁20の外周面20aのうち屈曲部22よりも軸方向に関して上方に設けられることが好ましい。これにより、使用者は過大な開栓力を要せず打栓式合成樹脂キャップ100を容器口部201から外すことができる。
【0043】
なお鍔部30の軸方向における位置は、上記した開栓力の設計値に応じて適宜変更してもよい。図5などに示すとおり、打栓式合成樹脂キャップ100は、スカート壁20の内側で天面壁10の底面10bから垂下するインナーリング11をさらに有して構成されている。このインナーリング11は、閉栓時に容器口部201の内周面側と係合して容器200の内容物を密封する機能を有している。
【0044】
したがって本実施形態の打栓式合成樹脂キャップ100においては、密封性と開栓容易性とを鑑みると、インナーリング11の下端11aは、前記したスカート壁20の屈曲部22よりも軸方向において上方に配置されていることが好ましい。このとき、図5に示すように、底面10bからのインナーリング11の高さh3は、脚部21の軸方向における高さh2以下であることが更に好ましい。
【0045】
<閉栓時と開栓時の状態>
次に図6を用いて、容器200に対して打栓式合成樹脂キャップ100が閉栓したときの状態と、容器200から打栓式合成樹脂キャップ100を取り外す開栓時の状態と、について説明する。
【0046】
まず容器200の内容物を密封する際には、容器口部201に対して打栓式合成樹脂キャップ100を打栓する。すなわち、本実施形態のスカート壁の内周面20b側には螺子などは形成されておらず、容器口部201の上面に打栓式合成樹脂キャップ100を載置した状態で天面壁10の上面10aを押圧する。
【0047】
そして周方向に沿って複数形成された屈曲部22の内接円は、容器口部201の外径よりも小さいため、上記押圧動作によって屈曲部22が容器口部201を乗り越える形で径方向外側に弾性変形する。その後、屈曲部22が容器口部201を乗り越えた後で係合段部202と係合する。このとき天面壁10の底面10bに形成されたインナーリング11が容器口部201の内周面側と係合して内容物が密封される。
【0048】
このとき、図示されるとおり、本実施形態の打栓式合成樹脂キャップ100においては、スカート壁20の外周面20aには薄肉部24が形成されており、間欠部23が天面壁10付近まで形成されていない。これにより、容器口部201の上端部分を薄肉部24がカバーすることで、当該上端部分を外気や埃などから保護することが可能となっている。
【0049】
一方で開栓時においては、例えば使用者は打栓式合成樹脂キャップ100の鍔部30に対して指などを引っ掛けることで、容器口部201から打栓式合成樹脂キャップ100をめくり上げる動作を行う。ここで、例えば打栓式合成樹脂キャップ100が容器200と同材質の樹脂(PET樹脂など)で構成されていた場合、オレフィン樹脂を用いたキャップに比して高剛性であることから多くの開栓力を要することが想定される。
【0050】
これに対して本実施形態の打栓式合成樹脂キャップ100によれば、上記した複数の薄肉部24および複数の屈曲部22によって比較的容易に脚部21が径方向外側へ弾性変形することが可能となっている。図6に示すように、本実施形態においては、使用者が開栓時に鍔部30を持ち上げた際に周方向の引張力が作用する薄肉部24xは、他の薄肉部24に比して、周方向における長さが長くなるよう幅広に設定されていることが好ましい。これにより、上記した開栓の際に、幅広の薄肉部24xが周方向に伸びやすくなっており、スムーズな開栓が実現できる。
【0051】
これにより、容器口部201から打栓式合成樹脂キャップ100をめくり上げた際に、幅広の薄肉部24が弾性変形しやすくなることで、脚部21が径方向外側へ向けて変位(弾性変形)し易くなっている。
また図3及び4からも明らかなとおり、本実施形態では、鍔部30の底面側には凸部31が形成されていてもよい。これにより使用者は、鍔部30の凸部31を介して指を引っ掛ける動作などが容易となっている。
【0052】
<屈曲部22の形成方法>
次に図8を用いて、屈曲部22の形成方法の一例を説明する。
上述したとおり、打栓式合成樹脂キャップ100の屈曲部22は、係合段部202と係合する機能を有する限りにおいてカール状となっておらずともよい。
【0053】
すなわち同図の「カール前」に示すとおり、まず一次成形として射出成形などで屈曲部22以外を成形する。このときスカート壁20の下端側には軸方向の下方に沿って延在する長脚部25が周方向に沿って断続的に設けられている。なお、この長脚部25の間には上記した間欠部23がすでに設けられている。
【0054】
次いで二次成形として、図示されるとおり、例えばそれぞれの長脚部25をスカート壁20の内周面20b側に向けてカールさせることができる。かようなカール手法としては、例えば参考として特表昭63-502265号に開示される公知のカール成形機を用いることができる。すなわち、まず長脚部25を加熱して軟化させた後に、上記した公知のカール成形機などを用いることで複数の屈曲部22を一括して成形することができる。なお上記は一例であって、かようなカール成形機を用いずに長脚部25に対して予熱しつつ個別に変形して屈曲部22をそれぞれ形成してもよい。
【0055】
以上説明した本実施形態は、特に容器とキャップが単一材のPET樹脂などのポリエステル樹脂で構成されている場合に特に有効となる。
すなわち、容器とキャップが嵌合する際には従来構造のごときアンダーカット(容器と嵌合するための突起)をインナーリング11やスカート壁20の内周面20bなどに形成することが好ましいが、PET樹脂などのポリエステル樹脂で射出成形する場合には離型が困難になるか金型を複雑化せねばならない。
【0056】
また、PET樹脂(ポリエステル樹脂)は射出成形金型における樹脂の流れ込みがオレフィン樹脂に比して悪いため、金型中に樹脂がうまく行き届かず成形不良が起きてしまう可能性も想定できる。このように容器200と同材質のポリエステル樹脂で打栓式キャップも構成しようとした場合、コストなども考慮すると射出成形の容易性や成形不良抑制の観点も考慮に入れねばならない。
【0057】
そして本実施形態の打栓式合成樹脂キャップ100によれば、第一に、容器200と同材質とすることで容器とキャップとを分別せずリサイクルすることができる。第二に、この打栓式合成樹脂キャップ100によれば、スカート壁20の外周面20aに薄肉部24を複数設けるとともにスカート壁20の下端は屈曲部22を有する脚部21となっているため、高い密封性と開栓容易性も同時に実現することが可能となっている。
【0058】
なお上記した実施形態は一例であって、本願の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変形が可能である。例えば打栓式合成樹脂キャップ100の天面壁10にはインナーリング11を設けたが、これに代えて又は加えて、公知のパッキンなどのゴム部材を天面壁10の底面10bに配設してもよい。
【0059】
また、上述したインナーリング11の高さh2は一例であって、容器200との嵌合力を鑑みた開栓力の設計値などに応じて適宜変更してもよい。また、容器200と接触するインナーリング11の外側壁に、上記した射出成形時の安全な離型が可能な程度のアンダーカットをさらに形成してもよい。
【0060】
また、上記した実施形態では、間欠部23に対して軸方向上方には薄肉部24が配置され、軸方向における高さが薄肉部24の方が間欠部23よりも長くなるように構成されていた。しかしながらこの形態に限られず、間欠部23の軸方向における高さh2が、薄肉部24の軸方向における高さ以上となるように設定されていてもよい。
【0061】
また、本実施形態ではスカート壁20の外周面20aには薄肉部24が周方向に沿って形成されていたが、この薄肉部24が形成されず、例えばスカート壁20の他の部位と同じ板厚t1となって薄肉部24が省略されていてもよい。あるいは、容器口部201の衛生面やキャップ製造時の射出成形面で許容できれば、薄肉部24が省略されて間欠部23が天面壁10の上端付近まで設けられていてもよい。
【0062】
また、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、上記した実施形態に対して公知の要素を適宜組み合わせて合成樹脂キャップを構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、リサイクルの利便性を向上させつつ高い密封性と開栓容易性も備えた打栓式キャップを実現するのに好適である。
【符号の説明】
【0064】
100:打栓式合成樹脂キャップ
10:天面壁
20:スカート壁
21:脚部
22:屈曲部
23:間欠部
30:鍔部
200:容器
201:容器口部
202:係合段部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8