IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ センクシア株式会社の特許一覧

特許7421922耐火被覆材保持構造、耐火構造の構築方法
<>
  • 特許-耐火被覆材保持構造、耐火構造の構築方法 図1
  • 特許-耐火被覆材保持構造、耐火構造の構築方法 図2
  • 特許-耐火被覆材保持構造、耐火構造の構築方法 図3
  • 特許-耐火被覆材保持構造、耐火構造の構築方法 図4
  • 特許-耐火被覆材保持構造、耐火構造の構築方法 図5
  • 特許-耐火被覆材保持構造、耐火構造の構築方法 図6
  • 特許-耐火被覆材保持構造、耐火構造の構築方法 図7
  • 特許-耐火被覆材保持構造、耐火構造の構築方法 図8
  • 特許-耐火被覆材保持構造、耐火構造の構築方法 図9
  • 特許-耐火被覆材保持構造、耐火構造の構築方法 図10
  • 特許-耐火被覆材保持構造、耐火構造の構築方法 図11
  • 特許-耐火被覆材保持構造、耐火構造の構築方法 図12
  • 特許-耐火被覆材保持構造、耐火構造の構築方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】耐火被覆材保持構造、耐火構造の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
E04B1/94 F
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019228842
(22)【出願日】2019-12-19
(65)【公開番号】P2021095799
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】323005120
【氏名又は名称】センクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】望月 久智
(72)【発明者】
【氏名】冨田 拓
(72)【発明者】
【氏名】林 郁実
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-249937(JP,A)
【文献】特開2007-198029(JP,A)
【文献】実開平07-021819(JP,U)
【文献】特開2004-346657(JP,A)
【文献】特開2009-041236(JP,A)
【文献】特開2019-019629(JP,A)
【文献】特開2018-111940(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0148660(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/94
E04C 3/08
E04F 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火被覆材保持構造であって、
耐火被覆材が、梁に形成された貫通孔の内面側の、略全周に亘って配置され、
耐火被覆保持部材は、前記耐火被覆材を拡径する方向へ押さえて、前記耐火被覆材を前記梁に対して保持し、
前記耐火被覆保持部材は、
前記耐火被覆材を押さえる押圧部と、
前記押圧部に接合されて、前記貫通孔の近傍の梁、又は、前記貫通孔に固定された梁補強金具に固定するための磁石または吸盤を有し、
前記磁石又は前記吸盤によって、前記耐火被覆保持部材が梁に固定され、前記押圧部によって、前記耐火被覆材の内面側を、拡径する方向へ押圧して、前記耐火被覆材を前記梁に対して保持することを特徴とする耐火被覆材保持構造。
【請求項2】
前記磁石又は前記吸盤は、前記押圧部の端部近傍において、前記押圧部の幅方向に突出する腕部に配置されることを特徴とする請求項記載の耐火被覆材保持構造。
【請求項3】
耐火被覆材保持構造であって、
耐火被覆材が、梁に形成された貫通孔の内面側の、略全周に亘って配置され、
耐火被覆保持部材は、前記耐火被覆材を拡径する方向へ押さえて、前記耐火被覆材を前記梁に対して保持し、
前記耐火被覆保持部材は、
前記耐火被覆材を押さえる一対の押圧部と、
一対の前記押圧部同士を連結し、前記押圧部同士の間隔を変更可能な伸縮部と、
を具備し、
前記押圧部同士の間隔を縮めた状態で、前記耐火被覆保持部材が前記耐火被覆材の内面側に挿入され、前記押圧部同士の間隔を広げることによって前記耐火被覆材の内面側を、拡径する方向へ押圧して、前記耐火被覆材を前記梁に対して保持することを特徴とする耐火被覆材保持構造。
【請求項4】
耐火被覆材保持構造であって、
耐火被覆材が、梁に形成された貫通孔の内面側の、略全周に亘って配置され、
耐火被覆保持部材は、前記耐火被覆材を拡径する方向へ押さえて、前記耐火被覆材を前記梁に対して保持し、
前記耐火被覆保持部材は、前記耐火被覆材に接合されており、前記耐火被覆保持部材と前記耐火被覆材は、一部が切れた略環状の部材であり、
前記耐火被覆材の断面形状が、一部に開口部を有する略筒形状であり、
前記耐火被覆保持部材は、前記耐火被覆材とともに前記貫通孔の内面側、又は、前記貫通孔に固定された梁補強金具の内面側に配置されて、弾性変形によって縮径させた状態からの復元力によって前記耐火被覆材を拡径する方向へ押圧して、前記耐火被覆材が前記梁に対して保持されることを特徴とする耐火被覆材保持構造。
【請求項5】
前記耐火被覆保持部材が、前記耐火被覆材の内部に配置されることを特徴とする請求項4記載の耐火被覆材保持構造。
【請求項6】
耐火被覆保持部材を用いた、耐火被覆構造の構築方法であって、
梁に形成された貫通孔の内面、又は、前記貫通孔に固定された梁補強金具の内面を覆うように耐火被覆材を配置し、前記耐火被覆保持部材によって、前記耐火被覆材を拡径する方向へ押さえて固定する工程と、
前記梁の外周面に耐火材を吹き付ける工程と、
を具備し、
前記耐火材を吹き付ける前に、前記耐火被覆保持部材を取り外すことを特徴とする耐火構造の構築方法。
【請求項7】
前記耐火被覆保持部材は、一部が切れた略環状の部材であり、弾性変形によって縮径させた状態で、前記耐火被覆材の内面側に挿入し、復元力によって前記耐火被覆材の内面側を、拡径する方向へ押圧して、前記耐火被覆材を前記梁に対して保持することを特徴とする請求項記載の耐火構造の構築方法。
【請求項8】
耐火被覆保持部材を用いた、耐火被覆構造の構築方法であって、
梁に形成された貫通孔の内面、又は、前記貫通孔に固定された梁補強金具の内面を覆うように耐火被覆材を配置し、前記耐火被覆保持部材によって、前記耐火被覆材を拡径する方向へ押さえて固定する工程と、
前記梁の外周面に耐火材を吹き付ける工程と、
を具備し、
前記耐火被覆保持部材は、前記耐火被覆材に接合されており、前記耐火被覆保持部材と前記耐火被覆材は、一部が切れた略環状の部材であり、
前記耐火被覆材の断面形状が、一部に開口部を有する略筒形状であり、
前記耐火被覆保持部材を前記耐火被覆材とともに弾性変形によって縮径させた状態で、前記貫通孔の内面側、又は、前記梁補強金具の内面側に挿入し、復元力によって拡径させて、前記耐火被覆材を前記梁に対して保持することを特徴とする耐火構造の構築方法。
【請求項9】
前記耐火被覆保持部材が、前記耐火被覆材の内部に配置されることを特徴とする請求項8記載の耐火構造の構築方法。
【請求項10】
耐火被覆保持部材を用いた、耐火被覆構造の構築方法であって、
梁に形成された貫通孔の内面、又は、前記貫通孔に固定された梁補強金具の内面を覆うように耐火被覆材を配置し、前記耐火被覆保持部材によって、前記耐火被覆材を拡径する方向へ押さえて固定する工程と、
前記梁の外周面に耐火材を吹き付ける工程と、
を具備し、
前記耐火被覆保持部材は、
前記耐火被覆材を押さえる押圧部と、
前記押圧部に接合されて、前記貫通孔の近傍の梁、又は、前記貫通孔に固定された梁補強金具に固定するための磁石または吸盤を有し、
前記磁石又は前記吸盤によって、前記耐火被覆保持部材を梁に固定し、
前記押圧部によって、前記耐火被覆材の内面側を、拡径する方向へ押圧して、前記耐火被覆材を前記梁に対して保持することを特徴とする耐火構造の構築方法。
【請求項11】
前記押圧部の端部近傍において、前記押圧部の幅方向に突出する腕部に配置された前記磁石又は前記吸盤によって、前記耐火被覆保持部材を梁に固定し、
前記押圧部によって、前記耐火被覆材の内面側を、拡径する方向へ押圧して、前記耐火被覆材を前記梁に対して保持することを特徴とする請求項10記載の耐火構造の構築方法。
【請求項12】
耐火被覆保持部材を用いた、耐火被覆構造の構築方法であって、
梁に形成された貫通孔の内面、又は、前記貫通孔に固定された梁補強金具の内面を覆うように耐火被覆材を配置し、前記耐火被覆保持部材によって、前記耐火被覆材を拡径する方向へ押さえて固定する工程と、
前記梁の外周面に耐火材を吹き付ける工程と、
を具備し、
前記耐火被覆保持部材は、
前記耐火被覆材を押さえる一対の押圧部と、
一対の前記押圧部同士を連結し、前記押圧部同士の間隔を変更可能な伸縮部と、
を具備し、
前記押圧部同士の間隔を縮めた状態で、前記耐火被覆保持部材を前記耐火被覆材の内面側に挿入し、前記押圧部同士の間隔を広げることによって前記耐火被覆材の内面側を、拡径する方向へ押圧して、前記耐火被覆材を前記梁に対して保持することを特徴とする耐火構造の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫通孔を有する梁に耐火被覆材が保持された耐火被覆材保持構造と、これを用いた耐火構造の構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築構造物の鉄骨梁は、火災等により高温となると耐力が低下するため、これを避けるために、梁に、所定の厚みのロックウール等の耐火材を吹き付けて被覆する必要がある。
【0003】
このような耐火被覆がなされた鉄骨梁としては、例えば、フランジ部の一部に熱膨張性耐火材が配置され、他の部位が吹付耐火材で覆われた鉄骨梁が提案されている(特許文献1)。
【0004】
一方、梁には、一般的には配管や配線等を通すために貫通孔が形成されることがある。貫通孔が形成された梁に耐火材を吹き付ける場合には、貫通孔の内周面も耐火材で覆う必要があるため、配設される配管等の外径に対して、耐火材の被覆厚み分だけ貫通孔のサイズを大きくしておく必要がある。
【0005】
図13は、従来の耐火構造100を示す断面図である。梁103のウェブ103aには配管105が挿通される貫通孔109が形成される。なお、配管に代えて配線の場合もある。梁103のフランジ103bとウェブ103aは、吹付耐火材107によって被覆される。吹付耐火材107は、耐火性能を得るために所定の厚みを確保する必要があるため、貫通孔109は、配管105の外径に対して、吹付耐火材107の厚み分だけ大きく設定される。このため、梁の強度低下のおそれがある。
【0006】
これに対し、貫通孔を有する梁の耐火構造として、貫通孔の内周面に熱膨張性シートを配置する方法が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-128844号公報
【文献】特開2007-198029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、吹付耐火材を用いて耐火構造を構築する際に、一部に他の耐火被覆材を予め配置することで、当該部位に吹付耐火材を設けた場合と比較して、耐火構造の厚みを薄くすることができる。このため、耐火材の厚みを薄くしたい場所には、吹付耐火材に代えて、他の耐火被覆材を用いる方法は有益である。
【0009】
しかし、所望の場所に耐火被覆材を配置しても、吹付耐火材を吹き付ける準備の間に、脱落や位置ずれが生じるおそれがある。耐火被覆材の脱落や位置ずれが生じると、再度、耐火被覆材を所定の場所に配置し直す作業が必要となるなど作業性が悪い。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、梁の貫通孔に耐火被覆材を配置する際に、確実に耐火被覆材を保持し、良好な作業性を得ることが可能な耐火被覆材保持構造と、これを用いた耐火構造の構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、耐火被覆材保持構造であって、耐火被覆材が、梁に形成された貫通孔の内面側の、略全周に亘って配置され、耐火被覆保持部材は、前記耐火被覆材を拡径する方向へ押さえて、前記耐火被覆材を前記梁に対して保持し、前記耐火被覆保持部材は、前記耐火被覆材を押さえる押圧部と、前記押圧部に接合されて、前記貫通孔の近傍の梁、又は、前記貫通孔に固定された梁補強金具に固定するための磁石または吸盤を有し、前記磁石又は前記吸盤によって、前記耐火被覆保持部材が梁に固定され、前記押圧部によって、前記耐火被覆材の内面側を、拡径する方向へ押圧して、前記耐火被覆材を前記梁に対して保持することを特徴とする耐火被覆材保持構造である。
【0014】
前記磁石又は前記吸盤は、前記押圧部の端部近傍において、前記押圧部の幅方向に突出する腕部に配置されてもよい。
【0015】
第2の発明は、耐火被覆材保持構造であって、耐火被覆材が、梁に形成された貫通孔の内面側の、略全周に亘って配置され、耐火被覆保持部材は、前記耐火被覆材を拡径する方向へ押さえて、前記耐火被覆材を前記梁に対して保持し、前記耐火被覆保持部材は、前記耐火被覆材を押さえる一対の押圧部と、一対の前記押圧部同士を連結し、前記押圧部同士の間隔を変更可能な伸縮部と、を具備し、前記押圧部同士の間隔を縮めた状態で、前記耐火被覆保持部材が前記耐火被覆材の内面側に挿入され、前記押圧部同士の間隔を広げることによって前記耐火被覆材の内面側を、拡径する方向へ押圧して、前記耐火被覆材を前記梁に対して保持することを特徴とする耐火被覆材保持構造である
【0016】
第3の発明は、耐火被覆材保持構造であって、耐火被覆材が、梁に形成された貫通孔の内面側の、略全周に亘って配置され、耐火被覆保持部材は、前記耐火被覆材を拡径する方向へ押さえて、前記耐火被覆材を前記梁に対して保持し、前記耐火被覆保持部材は、前記耐火被覆材に接合されており、前記耐火被覆保持部材と前記耐火被覆材は、一部が切れた略環状の部材であり、前記耐火被覆材の断面形状が、一部に開口部を有する略筒形状であり、前記耐火被覆保持部材は、前記耐火被覆材とともに前記貫通孔の内面側、又は、前記貫通孔に固定された梁補強金具の内面側に配置されて、弾性変形によって縮径させた状態からの復元力によって前記耐火被覆材を拡径する方向へ押圧して、前記耐火被覆材が前記梁に対して保持されることを特徴とする耐火被覆材保持構造である
前記耐火被覆保持部材が、前記耐火被覆材の内部に配置されてもよい。
【0017】
第1-3の発明によれば、耐火被覆保持部材によって、耐火被覆材を貫通孔の内面側から押さえることができるため、耐火被覆材の脱落やずれを抑制することができる。このため、少なくとも耐火材を吹き付ける作業までの間において、耐火被覆材を確実に所定の位置に保持することができる。
【0018】
この際、耐火被覆保持部材が、一部が切れた略環状の弾性部材であれば、構造が簡易である。また、弾性変形によって縮径させた状態で、耐火被覆材の内面側に容易に挿入することができるとともに、復元力によって耐火被覆材を内面側から確実に押圧して耐火被覆材を梁に対して保持することができる。
【0019】
また、耐火被覆保持部材が、ウェブ又は梁補強金具に固定するための磁石または吸盤を有すれば、磁石又は吸盤によって、耐火被覆保持部材を梁に容易に固定することができる。また、この場合でも、押圧部によって、耐火被覆材を内面側から確実意押圧して耐火被覆材を梁に対して保持することができる。
【0020】
この際、押圧部の側方に突出する腕部に配置された磁石等によって耐火被覆保持部材を梁に固定することで、取り付け作業が容易である。
【0021】
また、耐火被覆保持部材が、耐火被覆材を押さえる一対の押圧部と、押圧部同士の間隔を変更可能な伸縮部とを有すれば、押圧部同士の間隔を縮めた状態で、耐火被覆保持部材を耐火被覆材の内面側に容易に挿入することができるとともに、押圧部同士の間隔を広げることによって確実に耐火被覆材を内面側から押圧して耐火被覆材を梁に対して保持することができる。このため、複数の貫通孔のサイズにも適用可能である。
【0022】
また、耐火被覆保持部材と耐火被覆材とが一体化されていれば、取り付け作業が容易である。
【0023】
の発明は、耐火被覆保持部材を用いた、耐火被覆構造の構築方法であって、梁に形成された貫通孔の内面、又は、前記貫通孔に固定された梁補強金具の内面を覆うように耐火被覆材を配置し、前記耐火被覆保持部材によって、前記耐火被覆材を拡径する方向へ押さえて固定する工程と、前記梁の外周面に耐火材を吹き付ける工程と、を具備し、前記耐火材を吹き付ける前に、前記耐火被覆保持部材を取り外すことを特徴とする耐火構造の構築方法である。
【0024】
前記耐火被覆保持部材は、一部が切れた略環状の部材であり、弾性変形によって縮径させた状態で、前記耐火被覆材の内面側に挿入し、復元力によって前記耐火被覆材の内面側を拡径する方向へ押圧して、前記耐火被覆材を前記梁に対して保持してもよい。
【0025】
第5の発明は、耐火被覆保持部材を用いた、耐火被覆構造の構築方法であって、梁に形成された貫通孔の内面、又は、前記貫通孔に固定された梁補強金具の内面を覆うように耐火被覆材を配置し、前記耐火被覆保持部材によって、前記耐火被覆材を拡径する方向へ押さえて固定する工程と、前記梁の外周面に耐火材を吹き付ける工程と、を具備し、前記耐火被覆保持部材は、前記耐火被覆材に接合されており、前記耐火被覆保持部材と前記耐火被覆材は、一部が切れた略環状の部材であり、前記耐火被覆材の断面形状が、一部に開口部を有する略筒形状であり、前記耐火被覆保持部材を前記耐火被覆材とともに弾性変形によって縮径させた状態で、前記貫通孔の内面側、又は、前記梁補強金具の内面側に挿入し、復元力によって拡径させて、前記耐火被覆材を前記梁に対して保持することを特徴とする耐火構造の構築方法である
前記耐火被覆保持部材が、前記耐火被覆材の内部に配置されてもよい。
【0026】
第6の発明は、耐火被覆保持部材を用いた、耐火被覆構造の構築方法であって、梁に形成された貫通孔の内面、又は、前記貫通孔に固定された梁補強金具の内面を覆うように耐火被覆材を配置し、前記耐火被覆保持部材によって、前記耐火被覆材を拡径する方向へ押さえて固定する工程と、前記梁の外周面に耐火材を吹き付ける工程と、を具備し、前記耐火被覆保持部材は、前記耐火被覆材を押さえる押圧部と、前記押圧部に接合されて、前記貫通孔の近傍の梁、又は、前記貫通孔に固定された梁補強金具に固定するための磁石または吸盤を有し、前記磁石又は前記吸盤によって、前記耐火被覆保持部材を梁に固定し、前記押圧部によって、前記耐火被覆材の内面側を、拡径する方向へ押圧して、前記耐火被覆材を前記梁に対して保持することを特徴とする耐火構造の構築方法である
【0027】
前記押圧部の端部近傍において、前記押圧部の幅方向に突出する腕部に配置された前記磁石又は前記吸盤によって、前記耐火被覆保持部材を梁に固定し、前記押圧部によって、前記耐火被覆材の内面側を拡径する方向へ押圧して、前記耐火被覆材を前記梁に対して保持してもよい。
【0028】
第7の発明は、耐火被覆保持部材を用いた、耐火被覆構造の構築方法であって、梁に形成された貫通孔の内面、又は、前記貫通孔に固定された梁補強金具の内面を覆うように耐火被覆材を配置し、前記耐火被覆保持部材によって、前記耐火被覆材を拡径する方向へ押さえて固定する工程と、前記梁の外周面に耐火材を吹き付ける工程と、を具備し、前記耐火被覆保持部材は、前記耐火被覆材を押さえる一対の押圧部と、一対の前記押圧部同士を連結し、前記押圧部同士の間隔を変更可能な伸縮部と、を具備し、前記押圧部同士の間隔を縮めた状態で、前記耐火被覆保持部材を前記耐火被覆材の内面側に挿入し、前記押圧部同士の間隔を広げることによって前記耐火被覆材の内面側を、拡径する方向へ押圧して、前記耐火被覆材を前記梁に対して保持することを特徴とする耐火構造の構築方法である
【0029】
4-7の発明によれば、第1-3の発明と同様の効果を得ることができ、容易に耐火構造を得ることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、梁の貫通孔に耐火被覆材を配置する際に、確実に耐火被覆材を保持し、良好な作業性を得ることが可能な耐火被覆材保持構造と、これを用いた耐火構造の構築方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】耐火被覆材保持構造10を示す正面図。
図2】耐火被覆材5を示す図で、(a)は平面図、(b)は、(a)のB-B線断面図。
図3】(a)は、耐火被覆保持部材13を示す斜視図であり、(b)は、耐火被覆保持部材13を縮径した状態を示す図。
図4】(a)は、耐火被覆材保持構造10の断面図であり、図1のA-A線断面図、(b)は、耐火構造1の断面図。
図5】(a)は、耐火被覆保持部材13dを示す斜視図であり、(b)は、耐火被覆材保持構造10eを示す図。
図6】耐火被覆材保持構造10aを示す正面図。
図7】(a)は、耐火被覆材保持構造10aの断面図であり、図5のC-C線断面図、(b)は、耐火構造1aの断面図。
図8】(a)は、耐火被覆材5aを示す斜視図であり、(b)は、(a)のD-D線断面図。
図9】耐火被覆材保持構造10fを示す断面図。
図10】(a)は、耐火被覆材保持構造10bの断面図、(b)は、耐火被覆保持部材13aを示す図。
図11】(a)は、耐火被覆材保持構造10cの断面図、(b)は、耐火被覆保持部材13bを示す図。
図12】耐火被覆材保持構造10dを示す図。
図13】耐火構造100を示す断面図。
【0032】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は、第1の実施形態にかかる耐火被覆材保持構造10を示す正面図である。耐火被覆材保持構造10は、梁3に形成された貫通孔9の内面側に、耐火被覆保持部材13によって耐火被覆材5が保持されたものである。
【0033】
梁3は、一対のフランジ3bがウェブ3aによって連結された、いわゆるH形鋼で構成される。ウェブ3aには、配管等が挿通される貫通孔9が形成される。貫通孔9の内周面には、貫通孔9の内面を覆うように、略全周に亘って耐火被覆材5が配置される。
【0034】
図2(a)は、耐火被覆材5の平面図であり、図2(b)は、図2(a)のB-B線断面図である。図2(b)に示すように、耐火被覆材5は、芯材6aと、芯材6aを覆う被覆材6bとを有する。芯材6aは、可撓性を有する難燃材又は不燃材によって構成される。芯材6aとしては、例えばガラスウールなどの耐火ウール材や、熱膨張性部材などを適用可能である。また、被覆材6bは、ある程度の強度と耐火性を有するシート状の部材であれば適用可能であるが、例えば、アルミニウム被覆ガラスクロスシートなどを適用することで、耐火被覆材5のある程度の形状保持性を得ることができる。しかしながら、本態様に限らず、貫通孔等の内面を覆うように、略全周に亘って配置できる耐火被覆材であればいかなる態様でも構わない。例えば、芯材6aのみで構成された耐火被覆材であってもよい。
【0035】
図3(a)は、耐火被覆保持部材13を示す斜視図である。耐火被覆保持部材13は、一部が切れた略環状の部材であり、例えば金属製や樹脂製である。図3(b)に示すように、耐火被覆保持部材13は、弾性変形によって縮径させることが可能である。
【0036】
図4(a)は、耐火被覆材保持構造10の断面図であり、図1のA-A線断面図である。前述したように、貫通孔9の内周面には、耐火被覆材5が配置され、耐火被覆材5は、耐火被覆保持部材13によって保持されている。
【0037】
前述したように、耐火被覆保持部材13は縮径可能であるため、耐火被覆材5の内面側に挿入する際には、縮径させることで容易に耐火被覆材5の内面側に挿入することができる。また、縮径させた耐火被覆保持部材13は、復元力によって元の形状に戻ろうとする。このため、耐火被覆保持部材13は、耐火被覆材5の内面側を拡径する方向に押圧して、梁3(貫通孔9内面)に対して耐火被覆材5を保持することができる。
【0038】

次に、耐火被覆保持部材13を用いた耐火構造の構築方法を説明する。まず、梁3に形成された貫通孔9の内周面を覆うように耐火被覆材5を丸めて貫通孔9の内部に配置する。この際、耐火被覆材5の長さを、貫通孔9の内周長と略同一とすることで、貫通孔9の内周面の略全周に亘って耐火被覆材5を配置することができる。次に、耐火被覆保持部材13を縮径させた状態で、耐火被覆材5の内面側に挿入する。
【0039】
その後、縮径させた耐火被覆保持部材13を復元力によって元の径に戻すことで、耐火被覆保持部材13によって耐火被覆材5の内面側を拡径する方向に押さえて、耐火被覆材5を梁3(貫通孔9の内面側)に対して仮固定することができる。すなわち、縮径させていない状態の耐火被覆保持部材13の外径は、設置された状態の耐火被覆材5の内径よりも大きい。以上により、耐火被覆材保持構造10を得ることができる。このため、その後の耐火材の吹付作業等の準備の際に、貫通孔9からの耐火被覆材5の脱落やずれを抑制することができる。
【0040】
次に、耐火材の吹付準備が完了した後、耐火被覆保持部材13を取り外す。最後に、梁3の外周面に吹付耐火材を吹き付ける。
【0041】
図4(b)は、梁3の外周に吹付耐火材7を吹き付けた耐火構造1を示す断面図である。耐火構造1では、耐火被覆材5が配置されるため、貫通孔9の内周面には吹付耐火材7は不要である。また、吹付耐火材7と比較して、耐火被覆材5の耐火性能を高めることができるため、貫通孔9の内周面に吹付耐火材7を形成した場合(点線)と比較して、耐火構造の厚みを薄くすることができる。このため、貫通孔9に挿通される配管等の外径に対して、貫通孔9のサイズを小さくすることができる。
【0042】
なお、図示した例では、耐火被覆保持部材13を取り外して吹付耐火材7の施工を行ったが、耐火被覆保持部材13を取り付けたまま吹付耐火材7の施工を行い、吹付耐火材7の施工後に取り外してもよい。また、吹付耐火材7後に、耐火被覆保持部材13をそのまま残してもよく、さらに、耐火被覆保持部材13の少なくとも一部を吹付耐火材7に埋設してもよい。例えば、前述したように、耐火被覆材5は、ある程度の形状保持性を有するため、耐火被覆保持部材13を取り外しても、直ちに脱落や位置ずれが生じることはない。このため、耐火材の吹付作業準備中における耐火被覆材5の保持のみを目的とする場合には、吹付耐火材7の施工の直前に、耐火被覆保持部材13を取り外せばよい。しかし、吹付耐火材7の施工中における耐火被覆材5の脱落や位置ずれを抑制するためには、耐火被覆保持部材13を取り付けたまま吹付耐火材7の施工を行ってもよい。
【0043】
また、前述した例では、耐火被覆保持部材13は、耐火被覆材5の内径よりも短いものであったが、これには限られない。例えば、図5(a)に示す耐火被覆保持部材13dのように、一部が切れた略円形形状であって、周方向の両端がラップしてもよい。
【0044】
図5(b)は、耐火被覆保持部材13dを用いた耐火被覆材保持構造10eを示す図である。耐火被覆保持部材13dを弾性変形により縮径させて、耐火被覆材5の内周面に配置して、復元力によって拡径させることで、耐火被覆保持部材13dで耐火被覆材5の内面側を拡径する方向に押さえて、耐火被覆材5を梁3に対して固定することができる。
【0045】
以上、第1の実施の形態によれば、耐火被覆保持部材13を用いるため、耐火被覆材5の内面側に耐火被覆保持部材13を設置するだけで、梁3の貫通孔9の内面側へ、容易に耐火被覆材5を固定することができる。このため、作業性も良好である。また、構造が簡易であるため、低コストである。
【0046】
このように、耐火被覆保持部材13を用いて耐火被覆材5を保持した耐火被覆材保持構造10は、その後の吹付耐火材7の施工準備作業時における耐火被覆材5の脱落や、ずれを抑制することができる。このため、容易に耐火構造1を得ることができる。
【0047】
また、耐火被覆材5は、芯材6aが被覆材6bで覆われているため、例えば芯材6aが耐火ウール材などの場合に、取り扱い時におけるウール材の破損や粉塵などの発生を抑制することができ、また、細かな繊維屑により作業者に生じる痒みを抑制することができる。このため、取り扱い性が良好である。また、被覆材6bが金属被覆ガラスクロスなどであれば、多少の形状保持性を有するため、耐火被覆材5を変形させた際に、その形態が保持される。このため、例えば貫通孔9の内面に丸めて配置した場合にも、耐火被覆材5自体が丸めた形状を維持し、より確実に位置ずれや脱落を抑制することができる。
【0048】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。図6は、耐火被覆材保持構造10aを示す図であり、図7(a)は、図6のC-C線断面図である。なお、以下の説明において、耐火被覆材保持構造10及び耐火構造1と同様の構成には、図1図5と同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0049】
第2の実施形態では、ウェブ3aに貫通孔9が形成された梁3を補強するための梁補強金具11が用いられる。前述したように、梁3に貫通孔9を形成すると、貫通孔9により、梁3の曲げ耐力が低下する。梁補強金具11は、この梁3の曲げ耐力低下を防ぐための部材である。
【0050】
貫通孔9の内部及び/又は外部には、梁3を補強するための梁補強金具11が溶接等によって固定される。梁補強金具11は、例えば鋼材やステンレス鋼などの金属製の部材である。梁補強金具11は、全体としてリング状の部材であり、配管等が貫通する配管孔を有している。梁補強金具11の内周面には、梁補強金具11の内面を覆うように略全周に亘って耐火被覆材5が配置される。
【0051】
梁補強金具11を用いる場合には、まず、梁3に形成された貫通孔9に、梁補強金具11を配置して固定する。次に、梁補強金具11の内周面を覆うように耐火被覆材5を丸めて配置する。次に、耐火被覆保持部材13を縮径させて、貫通孔9(耐火被覆材5)の内面側に挿入する。
【0052】
この状態から、縮径させた耐火被覆保持部材13を復元力によって元の径に戻すことで、耐火被覆保持部材13によって耐火被覆材5を内面側から押さえて、耐火被覆材5を梁3(貫通孔9の内面側)に対して固定することができる。以上により、耐火被覆材保持構造10aを得ることができる。
【0053】
この状態で、耐火材の吹付準備が完了した後、耐火被覆保持部材13を取り外す。最後に、梁3の外周面に吹付耐火材を吹き付ける。
【0054】
図7(b)は、梁3等の外周に吹付耐火材7を吹き付けた耐火構造1aを示す断面図である。耐火構造1aでは、耐火被覆材5が配置されるため、貫通孔9の内周面(梁補強金具11の内周面)には吹付耐火材7は不要である。なお、前述したように、耐火被覆保持部材13を取り付けたまま吹付耐火材7の施工を行ってもよく、また、吹付耐火材7の施工後に耐火被覆保持部材13を残してもよい。
【0055】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。このように、梁補強金具11を用いることで、梁3を補強することができる。この際、梁補強金具11の内面に耐火被覆材5を設けることで、容易に耐火構造1aを得ることができる。
【0056】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。図8(a)は、耐火被覆保持部材13eを示す図であり、図8(b)は、図8(a)のD-D線断面図である。また、図9は、耐火被覆保持部材13eを用いた耐火被覆材保持構造10fを示す断面図である。なお、以下の実施形態では、梁補強金具11が用いられる例について説明するが、梁補強金具11を用いずに、耐火被覆材を貫通孔9の内面(ウェブ3a)に直接固定してもよい。
【0057】
耐火被覆材5aは、全体として略円形の一部が切断された略C字状の形状であり、さらに、その断面形状も、略円形の一部が切断されて開口部12が形成された形状である。なお、断面形状は、略円形に限られず、略多角形等、他の形状でもよい。この際、開口部12は、耐火被覆材5aの外周側に向けて全周にわたって形成される。
【0058】
耐火被覆材5aの内部には、耐火被覆保持部材13eが配置されて一体化される。なお、耐火被覆保持部材13eは、耐火被覆材5aの外部(開口部12とは逆側の外周面)に配置されてもよい。耐火被覆保持部材13eは、耐火被覆保持部材13と同様に、例えば金属製や樹脂製であり、弾性変形によって縮径させることができ、復元力によって拡径させることが可能である。なお、耐火被覆保持部材13eは、板状であってもよく、棒状であってもよく、耐火被覆材5aの内外の一部であって、開口部12とは逆側に配置されればよい。すなわち、耐火被覆保持部材13eは、耐火被覆材5aよりも幅の狭い部材であってもよい。
【0059】
次に、耐火被覆材5aの使用方法について説明する。まず、耐火被覆材5aとともに耐火被覆保持部材13eを弾性変形によって縮径し、貫通孔9に内部に挿入する。次に、耐火被覆材5aとともに耐火被覆保持部材13eを復元力によって拡径する。この際、耐火被覆材5aの開口部12に貫通孔9の縁部(貫通孔9の縁部に固定された梁補強金具11)を挿入する。
【0060】
耐火被覆材5aの長さを貫通孔9の内径と略一致させることで、貫通孔9の縁部(貫通孔9の縁部に固定された梁補強金具11)の全周にわたって耐火被覆材5aを配置することができる。また、耐火被覆保持部材13eの復元力によって、耐火被覆材5aが押し広げられているため、耐火被覆材5aが確実に貫通孔9へ固定することができる。
【0061】
その後、梁3の外周面に吹付耐火材を吹き付けることで、耐火構造を得ることができる。この場合には、耐火被覆保持部材13eは、耐火被覆材5aとともに、吹付耐火材に埋設される。
【0062】
第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、耐火被覆材5aと耐火被覆保持部材13eとを一体化することで、取り付けが容易である。また、耐火被覆材5aの断面形状が一部に開口部12を有する略筒形状であるため、貫通孔9の縁部や梁補強金具11を確実に覆うことができる。
【0063】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。図10(a)は、耐火被覆材保持構造10bを示す断面図である。
【0064】
耐火被覆材保持構造10bは、耐火被覆材保持構造10aと略同様の構造であるが、耐火被覆保持部材13aが用いられる点で異なる。
【0065】
図10(b)は、耐火被覆保持部材13aを示す図である。耐火被覆保持部材13aは、耐火被覆保持部材13と略同様の構成であるが、形状が異なる。耐火被覆保持部材13aは、耐火被覆材5を押さえる押圧部14aと、押圧部14aの端部近傍に設けられた腕部14bと、腕部14bに設けられた磁石14cを有する。
【0066】
押圧部14aは、前述した耐火被覆保持部材13と同様に、一部が切れた略環状の部材であり、縮径させることが可能である。押圧部14aの両端部近傍には、押圧部14aの幅方向に突出する腕部14bがそれぞれ設けられる。なお、図示した例では、腕部14bは、押圧部14aの外周側に折り曲げられており、押圧部14aのそれぞれの端部近傍において、一対の腕部14b同士が互いに対向する。腕部14bの対向面には、それぞれ磁石14cが配置される。すなわち、磁石14cは、腕部14bを介して押圧部14aに接合される。磁石14cは、貫通孔9の近傍の梁、又は、貫通孔9に固定された梁補強金具11に固定される部位である。
【0067】
この場合には、まず、梁3に形成された貫通孔9に、梁補強金具11を配置して固定する。次に、梁補強金具11の内周面を覆うように耐火被覆材5を丸めて配置する。次に、耐火被覆保持部材13aを縮径させて、貫通孔9(耐火被覆材5)の内面側に挿入する。次に、縮径させた耐火被覆保持部材13aを元の径に戻して、耐火被覆保持部材13aによって耐火被覆材5を内面側から押さえた状態とする。この状態で、腕部14bを押圧部14aの外側に折り曲げて、磁石14cをウェブ3a又は梁補強金具11の側面へ固定する。以上により、耐火被覆保持部材13aが梁に固定され、押圧部14aによって、耐火被覆材5が内面側から押圧されて、耐火被覆材5が梁3に対して保持された耐火被覆材保持構造10bを得ることができる。
【0068】
この状態で、耐火材の吹付準備が完了した後、耐火被覆保持部材13aを取り外す。最後に、梁3の外周面に吹付耐火材を吹き付けることで、耐火構造を得ることができる。なお、前述したように、耐火被覆保持部材13aを取り付けたまま吹付耐火材7の施工を行ってもよく、この場合には、耐火被覆保持部材13aの一部は、吹付耐火材7に埋設される。
【0069】
第4の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、磁石14cによって、耐火被覆保持部材13aが、梁3へ固定されるため、より確実に、耐火被覆材5を梁3へ保持することができる。
【0070】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。図11(a)は、耐火被覆材保持構造10cを示す断面図である。耐火被覆材保持構造10cは、耐火被覆材保持構造10bと略同様の構造であるが、耐火被覆保持部材13bが用いられる点で異なる。
【0071】
図11(b)は、耐火被覆保持部材13bを示す図である。耐火被覆保持部材13bは、耐火被覆保持部材13aと略同様の構成であるが、磁石14cに代えて吸盤14dが設けられる点で異なる。耐火被覆保持部材13aは、耐火被覆材5を押さえる押圧部14aと、押圧部14aの端部近傍に設けられた腕部14bと、腕部14bに設けられた吸盤14dを有する。
【0072】
耐火被覆保持部材13bの両端部近傍には、押圧部14aの幅方向に突出する腕部14bがそれぞれ設けられる。なお、図示した例では、腕部14bは、押圧部14aの外周側に折り曲げられており、押圧部14aのそれぞれの端部近傍に腕部14bが一つずつ配置されるが、耐火被覆保持部材13aと同様に、一対の腕部14bを設けてもよい。腕部14bの内面側には、吸盤14dが配置される。すなわち、吸盤14dは、腕部14bを介して押圧部14aに接合される。吸盤14dは、貫通孔9の近傍の梁、又は、貫通孔9に固定された梁補強金具11に固定される部位である。
【0073】
この場合も、耐火被覆保持部材13aと同様の手順で耐火被覆保持部材13bを梁に固定することができる。すなわち、押圧部14aによって、耐火被覆材5が内面側から押圧されて、耐火被覆材5が梁3に対して保持された耐火被覆材保持構造10cを得ることができる。
【0074】
第5の実施形態によれば、第4の実施形態と同様の効果を得ることができる。このように耐火被覆保持部材の梁3への固定は、磁石や吸盤を用いることができる。
【0075】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態について説明する。図12は、耐火被覆材保持構造10dを示す断面図である。耐火被覆材保持構造10dは、耐火被覆材保持構造10等と略同様の構造であるが、耐火被覆保持部材13cが用いられる点で異なる。
【0076】
耐火被覆保持部材13cは、耐火被覆材5を押さえる一対の押圧部14fと、一対の押圧部14f同士を連結し、押圧部14f同士の間隔を変更可能な伸縮部14eとを有する。押圧部14fは、例えば、貫通孔9(梁補強金具11)の内面形状に対応した円弧状の外形を有する。図示した伸縮部14eは、ターンバックルであり、ターンバックルを回転させることで、押圧部14f同士の間隔を変化させることができる。なお、伸縮部14eは、押圧部14f同士の間隔を変更可能であれば、他の形態でもよい。例えば、伸縮部14eとして伸縮可能な弾性体を用いてもよい。
【0077】
この場合には、耐火被覆材5を貫通孔9又は梁補強金具11の内面を覆うように配置した後、押圧部14f同士の間隔を縮めた状態で、耐火被覆保持部材を耐火被覆材5の内面側に挿入する。その後、伸縮部14eによって押圧部14f同士の間隔を広げることで、耐火被覆材5を内面側から押圧する。以上により、耐火被覆材5が梁3に対して保持された耐火被覆材保持構造10dを得ることができる。この後、耐火材の吹付作業準備が完了した後、耐火被覆保持部材13cを取り外して吹付耐火材の施工が行われる。
【0078】
第6の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。このように、押圧部14f同士の間隔の変化する耐火被覆保持部材13cを用いることで、耐火被覆材5の仮固定を容易に行うことができる。また、一つの耐火被覆保持部材13cによって、複数のサイズの貫通孔9(梁補強金具11)に適用させることができる。
【0079】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0080】
例えば、上述した各構成は互いに組み合わせることができることは言うまでもない。例えば、耐火被覆保持部材13、13a、13b、13dは、耐火被覆材5とは別体である例を示したが、耐火被覆材5と一体化して、耐火被覆材5と耐火被覆保持部材とを同時に設置可能としてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1、1a………耐火構造
3………梁
3a………ウェブ
3b………フランジ
5、5a………耐火被覆材
6a………芯材
6b………被覆材
7………吹付耐火材
9………貫通孔
10、10a、10b、10c、10d、10e………耐火被覆材保持構造
11………梁補強金具
12………開口部
13、13a、13b、13c、13d、13e………耐火被覆保持部材
14a、14f………押圧部
14b………腕部
14c………磁石
14d………吸盤
14e………伸縮部
100………耐火構造
103………梁
103a………ウェブ
103b………フランジ
105………配管
107………吹付耐火材
109………貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13