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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】断線検知装置および断線検知方法
(51)【国際特許分類】
   F02D 41/22 20060101AFI20240118BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
F02D41/22
F02D45/00 370
F02D45/00 368Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019235750
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021105336
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】高柳 恒
(72)【発明者】
【氏名】北村 陽昌
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-144681(JP,A)
【文献】特開2007-321597(JP,A)
【文献】特開2002-357156(JP,A)
【文献】特開2013-119263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/22
F02D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に設置された振動センサの信号線の断線を検知するための断線検知装置であって、
前記信号線の断線検知用の対象クランク角範囲における前記振動センサの検出結果である対象検出結果を取得するよう構成された取得部と、
前記対象検出結果に基づいて、前記信号線に対する断線判定を実行するよう構成された断線判定部と、を備え、
前記断線判定部は、
前記振動センサのシールド線に設けられたスイッチのオンとオフとの切り替えを実行するよう構成されたスイッチ制御部と、
前記スイッチのオフによって前記シールド線が開放状態にされている時の前記対象検出結果に基づいて、前記信号線の断線の有無を判定するよう構成された判定実行部と、を有するとともに、
前記断線判定部は、
前記対象検出結果に基づいて前記断線判定に用いる特徴量であって前記振動センサのセンサ信号の振動レベルの大きさに応じて算出される特徴量を算出するよう構成された特徴量算出部をさらに有し、
前記判定実行部は、前記スイッチがオフの時の前記対象検出結果に基づいて算出される前記特徴量が所定の第1閾値以下である場合に、前記信号線が断線していると判定するよう構成されている
断線検知装置。
【請求項2】
前記断線判定部は、
前記スイッチがオンの時の前記対象検出結果に基づいて、前記信号線の断線の仮判定を実行するよう構成された仮判定部をさらに有し、
前記仮判定部は、前記スイッチがオンの時の前記対象検出結果に基づいて算出された仮判定用特徴量であって前記振動センサのセンサ信号の振動レベルの大きさに応じて算出される仮判定用特徴量が、前記第1閾値よりも大きな値を有する所定の第2閾値以下である場合に、前記信号線が断線していると仮判定するよう構成されており、
前記スイッチ制御部は、前記仮判定によって前記断線が有りと判定された場合に前記スイッチをオフに切り替えるように構成され、
前記判定実行部は、前記スイッチ制御部によって前記スイッチがオフに切り替えられた後の前記対象検出結果に基づいて、前記信号線の断線の有無を判定するように構成されている請求項に記載の断線検知装置。
【請求項3】
前記断線判定部は、
所定のエンジンサイクル毎に得られる前記仮判定用特徴量の変化の低周波数成分に基づく値を抽出するよう構成されたローパスフィルタ部と、
前記内燃機関の負荷値を取得するよう構成された負荷値取得部と、をさらに有し、
前記仮判定部は、前記仮判定用特徴量についての前記低周波数成分に基づく値が、前記第2閾値以下であり、かつ、前記負荷値が前記内燃機関の高負荷状態を判定するための閾値である負荷閾値以上である場合に、前記断線が有ると仮判定するよう構成されている請求項に記載の断線検知装置。
【請求項4】
前記断線判定部は、
前記振動センサの検出結果に基づいて算出される、ノックの発生を監視するためのノックレベルを取得するよう構成されたノックレベル取得部をさらに有し、
前記仮判定部は、前記仮判定用特徴量の前記低周波数成分に基づく値が前記第2閾値以下で、前記負荷値が前記負荷閾値以上で、かつ、前記ノックレベルが前記ノックの発生を判定するための閾値であるノック閾値以下の場合に、前記断線が有ると仮判定するよう構成されている請求項に記載の断線検知装置。
【請求項5】
前記断線判定部は、
前記仮判定用特徴量の標準偏差を算出するよう構成された標準偏差算出部をさらに有し、
前記仮判定部は、前記仮判定用特徴量の前記低周波数成分に基づく値が前記第2閾値以下で、前記負荷値が前記負荷閾値以上で、かつ、前記仮判定用特徴量の標準偏差が前記信号線の断線を判定するための閾値である偏差閾値以下の場合に、前記断線が有ると仮判定するよう構成されている請求項に記載の断線検知装置。
【請求項6】
前記スイッチ制御部は、前記スイッチをオフに切り替えた後、規定時間が経過した場合に、前記スイッチをオンに切り替えるよう構成されている請求項1~のいずれか1項に記載の断線検知装置。
【請求項7】
前記内燃機関は、燃焼室内の燃料の点火を行うための点火装置を含み、
前記断線判定部は、
前記スイッチ制御部によって前記スイッチがオフに切り替えられた時には点火時期の進角を禁止するように、前記点火装置を制御することにより前記点火時期を制御するように構成された点火時期制御部に対して指令を送信するように構成される禁止部をさらに有する
請求項1~のいずれか1項に記載の断線検知装置。
【請求項8】
前記内燃機関は、燃焼室内の燃料の点火を行うための点火装置を含み、
前記断線判定部は、
前記判定実行部において前記信号線が断線していると判定された前記振動センサの検出結果に基づいて点火時期が制御される気筒に対する前記点火時期を、所定量だけリタードさせるように、前記点火装置を制御することにより前記点火時期を制御するように構成された点火時期制御部に対して指令を送信するように構成された点火時期指示部をさらに有する請求項1~のいずれか1項に記載の断線検知装置。
【請求項9】
内燃機関に設置された振動センサの信号線の断線を検知するための断線検知方法であって、
前記信号線の断線検知用の対象クランク角範囲における前記振動センサの検出結果である対象検出結果を取得するステップと、
前記対象検出結果に基づいて、前記信号線に対する断線判定を実行するステップと、を備え、
前記断線判定を実行するステップは、
前記振動センサのシールド線に設けられたスイッチをオンからオフに切り替えるステップ、
前記スイッチのオフによって前記シールド線が開放状態にされている時の前記対象検出結果に基づいて、前記信号線の断線の有無を判定するステップと、を有するとともに、
前記断線判定を実行するステップは、
前記対象検出結果に基づいて前記断線判定に用いる特徴量であって前記振動センサのセンサ信号の振動レベルの大きさに応じて算出される特徴量を算出するステップをさらに有し、
前記断線の有無を判定するステップは、前記スイッチがオフの時の前記対象検出結果に基づいて算出される前記特徴量が所定の第1閾値以下である場合に、前記信号線が断線していると判定する
断線検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エンジンに設置された振動センサの配線の断線の検知技術に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料にガソリンやガスなどを用いる火花点火式エンジンでは、効率や性能の向上のために点火時期の制御がなされている。例えば点火時期を進角すれば効率等が上がるが、その反面、ノック(ノッキング)と呼ばれる異常燃焼が生じ易くなる。そして、ノックが発生すると、ピストンなどが破損するなど重大な事故が生じる可能性がある。このため、ノックセンサ(加速度センサ)を用いてノックレベルを監視することによって、ノックレベルが限界を超えないようにしつつ、その限界近くになるように点火時期が制御される。これによって、ノックの発生の抑制と、エンジンの効率等の向上が図られている。
【0003】
しかしながら、ノックセンサの配線(信号線)が断線すると、断線していない場合よりもノックレベルが低くなる。よって、この断線時に上述した点火時期の制御が継続されると、点火時期が限界を超えて進角されることにより機関損傷に至る危険性がある。このような場合に備えて、通常、エンジンコントロールユニット(ECU)には上記の断線に対するフェイルセーフ機能が設けられている。具体的には、ノックセンサは振動が発生した時だけに電圧が出力される仕組みであり、振動が発生しないと断線検知ができないことから、例えばバルブの着座時の振動などのセンサ信号に基づいて断線検知を行う。例えば、ノックセンサのセンサ信号から特徴量を抽出し、正常時と異常時の比較を行う信号処理方式(例えば特許文献1~3)や、ECUに断線検知用の回路を設け、その回路からの信号を使って正常時と異常時の比較を行う入力回路方式がある(例えば特許文献4~5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-265757号公報
【文献】特開昭60-017336号公報
【文献】特許第4920092号公報
【文献】特許第4420213号公報
【文献】特許第3438312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した入力回路方式ではECUのハードウェアの改良を行う必要があるため、信号処理方式の方がコスト面で有利である。この信号処理方式は、断線検知用の特徴量が閾値を下回ると断線と判定する。これは、例えばノックセンサの信号線が入力されるECU側の入力回路がプラス、マイナスの電荷の変化量を電圧に変換する差動チャージアンプ回路の場合、その2線のうちの片側断線が発生すると、ECUが認識するセンサ信号が例えば約半分程度に低下することによる。しかし、ノックセンサの配線上の断線位置に応じて特徴量が変化するため、特徴量のばらつきが大きく、閾値を機種、号機、気筒などで同じ値にすると誤検知や未検知が発生する虞がある。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、振動センサの信号線の断線を適切に検知することが可能な断線検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の少なくとも一実施形態に係る断線検知装置は、
内燃機関に設置された振動センサの信号線の断線を検知するための断線検知装置であって、
前記信号線の断線検知用の対象クランク角範囲における前記振動センサの検出結果である対象検出結果を取得するよう構成された取得部と、
前記対象検出結果に基づいて、前記信号線に対する断線判定を実行するよう構成された断線判定部と、を備え、
前記断線判定部は、
前記振動センサのシールド線に設けられたスイッチのオンとオフとの切り替えを実行するよう構成されたスイッチ制御部と、
前記スイッチのオフによって前記シールド線が開放状態にされている時の前記対象検出結果に基づいて、前記信号線の断線の有無を判定するよう構成された判定実行部と、を有するとともに、
前記断線判定部は、
前記対象検出結果に基づいて前記断線判定に用いる特徴量であって前記振動センサのセンサ信号の振動レベルの大きさに応じて算出される特徴量を算出するよう構成された特徴量算出部をさらに有し、
前記判定実行部は、前記スイッチがオフの時の前記対象検出結果に基づいて算出される前記特徴量が所定の第1閾値以下である場合に、前記信号線が断線していると判定するよう構成されている
【0008】
本発明の少なくとも一実施形態に係る断線検知方法は、
内燃機関に設置された振動センサの信号線の断線を検知するための断線検知方法であって、
前記信号線の断線検知用の対象クランク角範囲における前記振動センサの検出結果である対象検出結果を取得するステップと、
前記対象検出結果に基づいて、前記信号線に対する断線判定を実行するステップと、を備え、
前記断線判定を実行するステップは、
前記振動センサのシールド線に設けられたスイッチをオンからオフに切り替えるステップ、
前記スイッチのオフによって前記シールド線が開放状態にされている時の前記対象検出結果に基づいて、前記信号線の断線の有無を判定するステップと、を有するとともに、
前記断線判定を実行するステップは、
前記対象検出結果に基づいて前記断線判定に用いる特徴量であって前記振動センサのセンサ信号の振動レベルの大きさに応じて算出される特徴量を算出するステップをさらに有し、
前記断線の有無を判定するステップは、前記スイッチがオフの時の前記対象検出結果に基づいて算出される前記特徴量が所定の第1閾値以下である場合に、前記信号線が断線していると判定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、振動センサの配線の断線を適切に判定可能な断線検知装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る振動センサの断線検知システムの構成を概略的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る振動センサの配線を概略的に示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る断線検知装置の機能を概略的に示す図である。
図4】本発明の他の一実施形態に係る断線検知装置の機能を概略的に示す図である。
図5】本発明のその他の一実施形態に係る断線検知装置の機能を概略的に示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る振動センサの信号線の断線の前後における仮判定用特徴量の標準偏差の変化を示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係る断線検知方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る振動センサ9の断線検知システム7の構成を概略的に示す図である。図2は、本発明の一実施形態に係る振動センサ9の配線を概略的に示す図である。図3は、本発明の一実施形態に係る断線検知装置1の機能を概略的に示す図である。図4は、本発明の他の一実施形態に係る断線検知装置1の機能を概略的に示す図である。また、図5は、本発明のその他の一実施形態に係る断線検知装置1の機能を概略的に示す図である。
【0013】
図1に示すように、断線検知システム7は、燃料にガソリンやガスなどを用いる火花点火式エンジンなどの内燃機関(以下、エンジン8)に設置された振動センサ9と、この振動センサ9により検出される振動の検出結果を伝送先に伝送するための信号線L(配線)の断線を検知するための断線検知装置1と、備える。この伝送先は、例えばエンジンコントロールユニット(以下、ECU6)など、振動センサ9の検出結果を利用する装置であり、振動センサ9と伝送先とは信号線Lで接続される。
【0014】
図1に示す実施形態では、エンジン8は複数の気筒8s(シリンダ)を備えた多気筒のガスエンジンであり、断線検知システム7は複数の振動センサ9を備えている。これらの複数の振動センサ9の各々は、ノックセンサとして各気筒8sの上部のシリンダヘッド8hにそれぞれ設置されている。そして、複数の振動センサ9はECU6の入力回路61(差動チャージアンプ回路)に信号線L(配線)でそれぞれ接続されており、各振動センサ9による振動の検出結果がリアルタイムにECU6に入力されるようになっている。そして、ECU6は、各振動センサ9による振動の検出結果に基づいて、点火時期の制御などのエンジン8の制御を行うようになっている。
【0015】
具体的には、エンジン8は、エンジン本体を構成するシリンダヘッド8hに設けられた点火プラグ82pを用いて、シリンダヘッド8hと気筒8sを摺動するピストン8pとの間に形成される燃焼室内の燃料の点火を行うための点火装置82を備えている。そして、ECU6は、この点火装置82を制御することにより点火時期制御を実行するよう構成された機能部である点火時期制御部62を有している。上記の点火プラグ82pは各気筒8sに設けられており、上記の点火装置82は複数の点火プラグ82pを操作可能に構成されている。また、点火時期制御部62は、点火装置82に接続されており、点火装置82に対して気筒8s毎に点火タイミングを指示することが可能であり、各々の気筒8sの点火時期をそれぞれ個別に制御することが可能に構成されている。
【0016】
また、上記の点火時期制御部62には、各気筒8sにおけるノックの発生を監視するためのノック監視部63が接続されている。このノック監視部63は、上記の入力回路61に接続されており、各振動センサ9の検出結果を取得することで、各々の気筒8sにおけるノックの発生を監視する。例えば、ノック監視部63は、ノックが生じる可能性のあるクランク角範囲(ノック検知用ウィンドウ)における各振動センサ9の検出結果(ノック判定用検出結果Vk)に基づいてノックレベルKを算出すると共に、算出したノックレベルKが所定の閾値(ノック閾値Tk)を超える場合には、ノックが発生したと判定しても良い。そして、点火時期制御部62は、ノック監視部63からノックの発生が検知された旨が入力されない間は、効率等の向上のための所定のロジックに従って点火時期を進角あるいは維持する。逆に、ノック監視部63からノックの発生が検知された旨が入力されると、ノックの発生が検知された気筒8sに対して点火時期のリタード(遅角)を行う。
【0017】
上記のノックレベルKは、ノックの発生を監視するための指標であり、その大きさは、振動の大きさに正の相関を有するため、ノック閾値Tkよりも大きい(K>Tk)ことを検知することによって、ノックの発生を検知することが可能となる。ノックレベルKは、周知ないずれの手法を用いて算出されても良いが、例えば、ノック判定用検出結果Vkに対してフーリエ変換を行うことで得られる特定の周波数成分に基づいてノックレベルKが算出されても良い。
【0018】
また、振動センサ9は例えば圧電型や静電容量型などの加速度センサであり、加速度に比例した電圧が振動センサ9からECU6の入力回路61に信号線Lを介して入力されるようになってる。図2に示すように、各振動センサ9は、上記の信号線Lの少なくとも一部を構成する配線と共に、センサ信号に対するノイズ対策のためのシールド線Lsを有している。この各振動センサ9が備えるシールド線Lsは、アンカーボルトなどに接続されることで、フレームグランドFGなどのグランドに接続されている。
【0019】
ここで、以下で説明する断線検知のために、図2に示すように、上記の振動センサ9のシールド線Lsには、スイッチ92(リレースイッチ)が設けられており、各振動センサ9とグランドとの接続状態が切り替わるようになっている。具体的には、スイッチ92がオンの時には各振動センサ9がグランド(FG)に接続された状態(接地状態)になる。逆に、スイッチ92がオフの時には、シールド線Lsが開放状態(オープン)になることで、各振動センサ9がグランド(FG)に接続されていない状態になるようになる。そして、このスイッチ92のオン、オフの切り替えは、断線検知装置1による制御が可能に構成される。
【0020】
図2に示す実施形態では、複数の振動センサ9の各々のシールド線Lsが、1本の配線に束ねられており、この1本の配線にスイッチ92が設置されることで、全てのシールド線Lsが1つのスイッチ92により一括して接続状態が切り替えられるように構成されている。ただし、本実施形態に本発明は限定されない。他の幾つかの実施形態では、1または一部のスイッチ92のシールド線Ls毎にスイッチ92が設けられることで、複数のスイッチ92が設けられても良い。
【0021】
上述した構成を備える断線検知システム7において、断線検知装置1は、各振動センサ9の信号線Lの断線を個別に検知することが可能に構成される。このため、図3図5に示すように、断線検知装置1は、取得部12と、断線判定部2と、を備える。
上述した断線検知装置1が備える機能部について、それぞれ説明する。
【0022】
なお、断線検知装置1は、コンピュータで構成されていても良い。すなわち、図示しないCPU(プロセッサ)や、ROMやRAMなどの記憶部6mを備えており、メモリ(主記憶装置)にロードされたファームウェアなどのプログラム(断線検知プログラム)の命令に従ってCPUが動作(データの演算など)することで、上記の各機能部を実現する。換言すれば、上記のプログラムは、コンピュータに後述する各機能部を実現させるためのソフトウェアであり、コンピュータによる読み込みが可能な記憶媒体に記憶されても良い。また、図1図2に示す実施形態では、断線検知装置1はECU6の一機能として設けられているが、他の幾つかの実施形態では、断線検知装置1はECU6とは別のデバイスに設けられても良い。
【0023】
取得部12は、振動センサ9の信号線Lの断線検知用のクランク角範囲として定められた対象クランク角範囲Rt(断線検知用のウィンドウ)における振動センサ9による振動の検出結果(以下、対象検出結果V)を取得するよう構成された機能部である。上記の対象クランク角範囲Rtは、振動センサ9によって監視する事象(例えばノック)が発生しないタイミングとなるクランク角の範囲である。対象検出結果Vには、対象クランク角範囲Rtの幅や、その範囲いおける振動のサンプリング周期などに応じて、1以上のセンサ信号の検出値が含まれる。
【0024】
具体的には、取得部12は、クランク角を検出可能なクランク角センサ(不図示)の検出結果に基づいて、各気筒8sにおける上記の対象検出結果Vを取得しても良い。例えば、気筒8s毎に設けられたクランク角センサ(不図示)がECU6に接続されており、各クランク角センサ(不図示)の検出結果に基づいて対象クランク角範囲Rtが識別されても良い。なお、この識別は、取得部12によって行われても良いし、入力回路61によって行われても良い。
【0025】
図1図5に示す実施形態では、図1に示すように、複数の振動センサ9によって気筒8s毎にノックの発生が監視されている。また、上記の対象クランク角範囲Rtは、ノックが発生することのないタイミングであって、エンジンサイクル毎に必ず振動が発生するタイミングとなるクランク角の範囲となっている。例えば、上記の対象クランク角範囲Rtは、気筒8s毎に設けられた排気バルブあるいは給気バルブの着座時が含まれるクランク角の範囲などであっても良い。
【0026】
断線判定部2は、上述した取得部12によって取得された対象検出結果Vに基づいて、振動センサ9の信号線Lの断線の有無の判定(以下、断線判定)を実行するよう構成された機能部である。より詳細には、断線判定部2は、振動センサ9のシールド線Lsに設けられた上述したスイッチ92のオンとオフとの切り替えを実行するよう構成されたスイッチ制御部4と、上記のスイッチ92がオフの時の対象検出結果Vに基づいて、振動センサ9の信号線Lの断線の有無を判定するよう構成された判定実行部5と、を有する。すなわち、断線判定部2は、断線判定にあたって、それ以外の通常時はオンにされているスイッチ92をオフに切り替えることで、シールド線Lsを接地状態から開放状態に切り替える。その後、スイッチ92がオフの時に得られる対象検出結果Vに基づいて、断線判定を行う。
【0027】
ここで、上記のECU6と振動センサ9とを接続する信号線Lが断線すると、ECU6で検出されるセンサ信号は実際よりも小さくなる。そして、本発明者らは、鋭意研究により、振動センサ9のシールド線Lsが接地されている場合には、信号線Lにおける断線位置に応じてセンサ信号の低下の程度が異なると共に、上記の断線時において振動センサ9のシールド線Lsを開放状態にすると、信号線Lにおける断線位置にかかわらず、センサ信号や断線検知用の特徴量F(後述)がほぼ0にまで低下することを見出した。よって、スイッチ92をオフにすることで、シールド線Lsが開放状態である際の信号レベルがほぼ0になるかを確認することにより、より正確な断線判定が可能となる。
【0028】
なお、上述したようにシールド線Lsの接地時における断線位置に応じたセンサ信号の信号レベルのばらつきが生じるのは、断線した信号線Lと、接地された状態のシールド線Lsとの間に生じる静電結合によるものであると考えられる。そして、シールド線Lsを開放状態にすることで、上記の静電結合の発生を防止している。
【0029】
例えば幾つかの実施形態では、上記の断線判定は、対象検出結果Vに基づいて算出(抽出)可能な断線判定用の特徴量Fに基づいて行っても良い。図3図5に示す実施形態では、断線判定部2は、対象検出結果Vに基づいて、上記の断線判定に用いる特徴量Fを算出するよう構成された特徴量算出部21をさらに有している。そして、上記の判定実行部5は、スイッチ92がオフの時の対象検出結果Vに基づいて算出される上記の特徴量Fが所定の第1閾値T1以下である場合(F≦T1)には、信号線Lが断線していると判定し、F>T1である場合には、信号線Lが断線していないと判定するようになっている。
【0030】
なお、上記の特徴量Fは周知な手法により算出すれば良い。例えば、対象クランク角範囲Rtにおけるセンサ信号のサンプリング数をN、サンプリングされた各センサ信号の信号レベルをx(i=1、2、・・・、N)とした場合に、特徴量Fを、これらの積分処理により算出しても良いし、そのうちのピーク値(最大値)としても良い。その他の方法により特徴量Fを算出しても良い。上記の積分処理では、サンプリングされた各信号レベルの平均値の平方根が算出され、特徴量Fとされる(F=√{Σx/N})。また、上記の第1閾値T1については、信号線Lの断線時には、その断線位置や、エンジンの機種、号機、気筒8sにかかわらず信号レベルはほぼ0にまで低下するので、例えば上記の断線時においてスイッチ92がオフされた際に取り得るセンサ信号や特徴量F(後述)の最大値など、0や0付近の値に設定すれば良い。
【0031】
図3図5に示す実施形態について説明すると、上記のスイッチ制御部4は、上記の判定実行部5に接続されている。そして、後述する仮判定部3の結果に基づくなど、判定実行部5による断線判定を行う必要がある場合に、スイッチ制御部4はスイッチ92をオンからオフに切り替えるようになっている。その後、スイッチ制御部4から判定実行部5に対する実行指示が入力されると、判定実行部5による処理が実行されるようになっている。また、判定実行部5は、点火時期指示部52に接続されており、信号線Lが断線していると判定した場合には、その旨が点火時期指示部52に入力されるようになっている。
【0032】
この点火時期指示部52は、判定実行部5によって信号線Lの断線が有ると判定された場合に、信号線Lが断線していると判定された振動センサ9の検出結果に基づいて点火時期が制御される気筒8sに対する点火時期を所定量だけリタードさせるよう構成された機能部である。上記の所定量は、例えば遅角が可能な最大限までリタードさせる量であって良いし、例えば上死点となるクランク角などの予め定めたリタード位置、あるいは、例えば予め定めたα°などのリタード量だけリタードさせるのに必要となる量であっても良い。このリタード量は0あっても良く、この場合には点火時期がそれ以上進角されず、維持される。これによって、信号線Lが断線している振動センサ9によってノックの発生が監視されている気筒8sに対する点火時期が進角され続けることで実際にノックが生じ、機関損傷などが発生するのを回避することが可能となる。
【0033】
上記の構成によれば、例えばノックセンサなどとなる振動センサ9のシールド線Lsにはスイッチ92が設けられており、スイッチ92のオン、オフの切り替えによって、シールド線Lsを介した振動センサ9とグランドとの間が接続された状態(オン時)と、切り離された状態(オフ時)とに切り替えられるようになっている。そして、断線検知装置1は、スイッチ92をオフにした上で、断線検知用の対象クランク角範囲Rtにおける振動センサ9による振動の検出結果(対象検出結果V)を取得し、この検出結果に基づいて、振動センサ9とECU6などとを接続する信号線Lが断線している否かの断線判定を実行する。
【0034】
このように、上記のスイッチ92のオフ時(シールド線Lsが開放状態)における対象検出結果Vに基づいて断線判定を実行することにより、断線が生じていた場合には信号線L上の断線位置にかかわらず断線検知用の特徴量がほぼ0にまで低下することを利用して、上記の断線の有無を適切に判定することができる。すなわち、エンジン8の機種、号機、気筒8sなどに応じて、断線判定用の閾値(第1閾値T1)を調整することなく、断線の有無を適切に判定することができる。また、ノックの発生など、振動センサ9で検出しようとする事象の検知に際しては、スイッチ92をオンにした状態で行うことによって、シールド線Lsをグランドに接続した状態で取得したセンサ信号に基づいて判定することで、ノイズの影響を抑えつつ、適切な検知を行うことができる。
【0035】
また、幾つかの実施形態では、図3図5に示すように、上述した断線判定部2は、上記のスイッチ92がオフの時には点火時期の進角を禁止(停止)するよう構成される禁止部42をさらに有しても良い。スイッチ92がオフにされることによって、シールド線Lsが開放状態にされると、ノックレベルKが実際よりも小さくなり、実際の値から乖離するため、ノックレベルKに基づいて行われる点火時期制御における少なくとも点火時期の進角を禁止させる。
【0036】
この点火時期の進角の禁止は、スイッチ92がオンからオフに切り替えられる直前に行われても良いし、その直後に行われても良い。また、この禁止によってノックの発生の監視の意味がなくなる場合などには、禁止部42は、ノックの発生の監視も停止させても良い。
【0037】
図3図5に示す実施形態では、禁止部42は、スイッチ制御部4に接続されることで、連動して動作するようになっている。また、禁止部42は、点火時期制御部62やノック監視部63に接続されることで、上述した点火時期制御やノックの発生の監視の禁止を行うことが可能になっている。
【0038】
上記の構成によれば、シールド線Lsが開放されている間は、点火時期制御による進角を禁止する。シールド線Lsを開放状態にするとノックレベルKが実際よりも小さくなる。よって、シールド線Lsの開放に伴って小さくなっているノックレベルKに基づいて、点火時期が進角され続けることによって実際にノックが生じ、機関損傷などが発生するのを回避することができる。
【0039】
次に、上述したスイッチ92がオフ(シールド線Lsが開放状態)の時間を短縮するための構成について説明する。
上述したようにスイッチ92をオフに切り替えると、振動センサ9はノイズの影響を受け易くなるため、スイッチ92のオフへの切り替えの頻度やオフの時間は少ない方が望ましい。そこで、幾つかの実施形態では、上記の判定実行部5による断線判定を本判定として、この本判定の前に、振動センサ9の信号線Lの断線の有無の仮判定を実行し、仮判定によって断線の可能性があると判定された場合に、スイッチ92をオフに切り替えた上での本判定を実行しても良い。
【0040】
すなわち、幾つかの実施形態では、図3図5に示すように、上述した断線判定部2は、上述したスイッチ92がオンの時の対象検出結果Vに基づいて、振動センサ9の信号線Lの断線の有無の仮判定を実行するよう構成された仮判定部3をさらに有しても良い。この場合において、上述したスイッチ制御部4は、上記の仮判定部3による仮判定によって、上記の信号線Lに断線が有りと判定された場合にスイッチ92をオフに切り替えるように構成されている。また、判定実行部5は、上記の仮判定により上記の断線が有りと判定され、かつ、スイッチ92がオフに切り替えられた後に、上述したように信号線Lの断線の有無を判定するように構成されている。つまり、上述したシールド線Ls上のスイッチ92のオフへの切り替え、および上述した断線判定は、断線の有無の仮判定により断線の可能性があると判定された場合に行われる。
【0041】
この仮判定部3による断線の仮判定は、スイッチ92がオンの時に振動センサ9から得られる例えばエンジンサイクル毎の対象検出結果Vに基づいて特徴量F(既出)を算出し、算出した特徴量Fと所定の閾値(第2閾値T2)との比較に基づいて行っても良い。具体的には、幾つかの実施形態では、図3図5に示すように、断線判定部2は、上述した特徴量算出部21をさらに有している。この場合において、上述した判定実行部5は、特徴量算出部21により、スイッチ92がオンの時の対象検出結果Vに基づいて算出された特徴量F(以下、仮判定用特徴量Fp)が所定の閾値(第2閾値T2)以下である場合(F≦T2)に、振動センサ9の断線が有ると仮判定する。この第2閾値T2は、スイッチ92がオンの時に信号線Lが断線した可能性の有無を判定可能な値に設定されるため、上述した第1閾値T1よりも大きな値を有する。
【0042】
ここで、仮判定用特徴量Fp(特徴量F)は、上記の信号線Lが断線していない場合にはエンジンサイクル毎に上下に変動(変化)するため、あるエンジンサイクルにおける特徴量Fが、上記の信号線Lが断線していないにもかかわらず、たまたま第2閾値T2以下になる場合があり得る。よって、これによる仮判定への影響を抑制するために、仮判定部3による断線の仮判定は、特徴量算出部21によって算出された仮判定用特徴量Fpの変動の低周波成分を抽出し、この低周波成分に基づいて得られる値Fp´と第2閾値T2との比較に基づいて、仮判定を行っても良い。
【0043】
具体的には、幾つかの実施形態では、図3図5に示すように、断線判定部2は、上述した特徴量算出部21と、この特徴量算出部21によって算出された、例えば毎サイクルなどの所定のエンジンサイクル毎に得られる仮判定用特徴量Fpの変化(時間変化)の低周波数成分を抽出するよう構成されたローパスフィルタ部22と、をさらに有しても良い。この場合において、上述した仮判定部3は、このローパスフィルタ部22による処理を通して得られる仮判定用特徴量Fpの低周波成分に基づく値Fp´が第2閾値T2以下である場合(Fp´≦T2)に、振動センサ9の断線が有ると仮判定する。この値Fp´は、例えば、仮判定用特徴量Fpの所定期間における時間推移をフーリエ変換し、所定の周波数値以下の成分を抽出し、抽出した成分を逆フーリエ変換することで求めても良い。伝達関数によるフィルタ処理で求めても良い。
【0044】
さらに、上記の仮判定部3による断線の仮判定にあたっては、上記の仮判定用特徴量Fpあるいはその低周波数成分に基づく値Fp´に関する条件を満たすことに加えて、他の条件を加重しても良い。具体的には、エンジン8の負荷値Dが、エンジン8の高負荷状態を判定するための所定の閾値(負荷閾値Td)以上との条件(D≧Td)を加重しても良い。ノックが起こるのはエンジン8が例えば70~100%などの高負荷時であり、高負荷時に断線の仮判定を実行することで、その判定精度を高めることが可能となる。
【0045】
このため、幾つかの実施形態では、図3図5に示すように、断線判定部2は、上述した特徴量算出部21と、ローパスフィルタ部22とに加えて、エンジン8の負荷値Dを取得するよう構成された負荷値取得部23をさらに有する。この場合において、上述した判定実行部5は、負荷値Dが負荷閾値Td以上(D≧Td)である場合であって、仮判定用特徴量Fpなどのスイッチ92がオフ時の対象検出結果Vに基づく条件が満たされる場合に、信号線Lに断線が有ると仮判定する。なお、負荷値Dは、ECU6に設けられた各気筒8sに対する燃料の供給量を制御するよう構成された機能部である燃料制御部などから取得しても良いし、エンジン8に駆動(接続)される発電機などの出力(電圧、電流)や、インテークマニホールドの圧力などの信号値に基づいて取得しても良い。
【0046】
図3図5に示す実施形態について説明すると、断線判定部2は、上述した、特徴量算出部21と、ローパスフィルタ部22と、負荷値取得部23と、をさらに有している。そして、仮判定部3は、上述した仮判定用特徴量Fpの変化の低周波数成分に基づく値Fp´が第2閾値T2以下(Fp´≦T2)であり、かつ、上記の負荷値取得部23によって取得された負荷値Dが負荷閾値Td以上(D≧Td)である場合に、信号線Lに断線が有ると仮判定するようになっている。そして、仮判定部3によって、振動センサ9の信号線Lに断線が有ると仮判定した旨がスイッチ制御部4に入力されるのに応じて、スイッチ制御部4はスイッチ92をオンからオフに切り替えるようになっている。
【0047】
このように、仮判定用特徴量Fpの低周波数成分に基づく値Fp´を用いて仮判定をする行うことにより、例えばエンジンサイクル毎の仮判定用特徴量Fpの上下の変動の影響を抑えつつ、ノックが生じる高負荷(例えば負荷値が70%以上)時の状況に基づいて仮判定を行うことができ、仮判定の精度を高めることができる。
【0048】
また、幾つかの実施形態では、上記の仮判定における断線の有無の判定条件は、ノックレベルKに関する条件を含んでも良い。具体的には、図4に示すように、断線判定部2は、上記の振動センサ9による振動の検出結果に基づいて算出される、ノックの発生を監視するための上述したノックレベルKを取得するよう構成されたノックレベル取得部24をさらに有する。この場合において、仮判定部3は、仮判定用特徴量Fpの低周波数成分に基づく値Fp´が第2閾値T2以下(Fp´≦T2)で、負荷値Dが負荷閾値Td以上(D≧Td)で、かつ、ノックレベルKがノック閾値Tk以下(K≦Tk)の場合に、振動センサ9の信号線Lの断線が有ると仮判定する。つまり、エンジン8が高負荷時において、ノックレベルKが想定よりも過度に小さい場合には、信号線Lの断線の可能性が高くなると考えられるので、これを仮判定の条件に加重している。
【0049】
図4に示す実施形態では、ECU6は、上述したノック監視部63を有している(図1参照)。そして、図4に示すように、ノックレベル取得部24には、ノック監視部63によって算出されたノックレベルKが入力されるようになっている。また、ノックレベル取得部24は仮判定部3に接続されており、取得したノックレベルKを仮判定部3に入力するようになっている。
【0050】
上記の構成によれば、ノックレベルKの状況を考慮して仮判定を行う。ノックレベルKは負荷値Dが高いほど大きくなる。このため、仮判定用特徴量Fpの低周波数成分に基づく値Fp´が第2閾値T2以下で、かつ、負荷値Dが負荷閾値Td以上であるにもかかわらず、ノックレベルKがノック閾値Tkよりも小さい場合は、振動センサ9の断線が有ると仮判定する。よって、仮判定の精度を高めることができ、スイッチ92をオフにする頻度や時間を低減することができる。
【0051】
また、幾つかの実施形態では、上記の仮判定における断線の有無の判定条件は、仮判定用特徴量Fpの標準偏差σに関する条件を含んでも良い。具体的には、他の幾つかの実施形態では、図5に示すように、断線判定部2は、特徴量算出部21によって算出された仮判定用特徴量Fpの標準偏差σを算出するよう構成された標準偏差算出部25をさらに有しても良い。この場合において、仮判定部3は、仮判定用特徴量Fpの低周波数成分に基づく値Fp´が第2閾値以下(Fp´≦T2)で、負荷値Dが負荷閾値Td以上(D≧Td)で、かつ、上記の標準偏差σが偏差閾値Tσ以下(σ≦Tσ)の場合に、振動センサ9の信号線Lの断線が有ると仮判定する。
【0052】
本発明者は、図6に示すように、振動センサ9の信号線Lが断線すると、特徴量Fの標準偏差σが断線前よりも小さくなることを見出しており、この条件を仮判定の条件に加重したものである。図6は、本発明の一実施形態に係る振動センサ9の信号線Lの断線の前後における仮判定用特徴量Fpの標準偏差σの変化を示す図である。図6の破線は振動センサ9の信号線Lの断線時(片側断線時)を示し、実線はこの信号線Lが断線していない場合を示している。図6から、断線時の仮判定用特徴量Fpの標準偏差σaは、断線前の仮判定用特徴量Fpの標準偏差σbよりも小さくなっていることが分かる。
【0053】
上記の構成によれば、仮判定用特徴量Fpそのものの標準偏差σを求め、この標準偏差σの状況を考慮して仮判定を行う。振動センサ9の信号線Lが断線すると、仮判定用特徴量Fpの標準偏差σは断線前よりも小さくなる。よって、仮判定の条件に仮判定用特徴量の標準偏差σに関する条件を加えることで、仮判定の精度を高めることができる。したがって、スイッチ92をオフにする頻度や時間を低減することができる。
【0054】
また、幾つかの実施形態では、上述したスイッチ制御部4は、スイッチ92をオフに切り替えた後、予め定められた条件が成立した場合に、スイッチ92をオンに切り替えるように構成されても良い。この条件は、例えば、スイッチ92をオフに切り替えてから経過時間が規定時間を経過したことであっても良い。
【0055】
上記の構成によれば、例えばスイッチ92をオフに切り替え後に一定時間が経過した場合などの条件が成立した場合には、例え断線判定の結果が得られていなくても、スイッチ92をオンに切り替える。これによって、スイッチ92がオフにされている時間の低減を図ることができる。
【0056】
以下、上述した断線検知装置1の処理に対応した断線検知方法を、図7を用いて説明する。図7は、本発明の一実施形態に係る断線検知方法を示す図である。図7に示す断線検知方法は、例えば1エンジンサイクルといった所定のエンジンサイクル毎など、周期的に行われても良い。
【0057】
断線検知方法は、エンジン8に設置された振動センサ9の信号線Lの断線を検知するための方法である。図7に示すように、断線検知方法は、上述した対象検出結果Vを取得する取得ステップ(S1)と、取得された対象検出結果Vに基づいて、振動センサ9の信号線Lに対する断線判定を実行する断線判定ステップ(S2)と、を備える。そして、この断線判定ステップ(S2)は、振動センサ9のシールド線Lsに設けられたスイッチ92をオンからオフに切り替える切替ステップ(S22)と、スイッチ92がオフに切り替えられることによって、スイッチ92がオフの時の対象検出結果Vに基づいて、信号線Lの断線の有無を判定する判定実行ステップ(S24)と、を有する。
【0058】
幾つかの実施形態では、図7に示すように、上記の断線判定ステップ(S2)は、スイッチ92がオンの時の対象検出結果Vに基づいて、上記の信号線のLsの断線の仮判定を実行する仮判定ステップ(S21)を、さらに有しても良い。そして、仮判定ステップ(S21)による仮判定によって、信号線Lの断線が有りと判定された場合に、上記の切替ステップ(S22)および判定実行ステップ(S24)をこの順番で行っても良い。
【0059】
上記の取得ステップ(S1)、断線判定ステップ(S2)、およびこの断線判定ステップ(S2)で行われる仮判定ステップ(S21)、切替ステップ(S22)、判定実行ステップ(S24)は、それぞれ、既に説明した取得部12、断線判定部2、仮判定部3、スイッチ制御部4、判定実行部5がそれぞれ実行する処理内容と同様であるため、詳細は省略する。
【0060】
また、幾つかの実施形態では、断線検知方法は、図7に示すように、上記の切替ステップ(S22)によってスイッチ92がオフの時には点火時期の進角を禁止する禁止ステップ(S23)をさらに備えても良い。また、幾つかの実施形態では、断線検知方法は、図7に示すように、上記の判定実行ステップ(S24)によって、信号線Lの断線が有ると判定された場合にエンジン8の点火時期を所定量だけリタードさせる点火時期指示ステップ(S25)を、さらに備えても良い。この禁止ステップ(S23)、点火時期指示ステップ(S25)は、それぞれ、既に説明した禁止部42、点火時期指示部52がそれぞれ実行する処理内容と同様であるため、詳細は省略する。
【0061】
図7に示す実施形態では、ステップS1において取得ステップを実行し、スイッチ92がオンである場合の信号線Lの接地状態において上記の対象検出結果Vを取得する。ステップS21において仮判定ステップを実行し、上記のステップS1で取得した対象検出結果Vに基づいて、各振動センサ9の信号線のLsの断線の仮判定を実行する。そして、このステップS21の仮判定の結果、断線の可能性があると仮判定された信号線Lがなかった場合には、他のステップ(S22~S26)を実行することなく、処理を終了する。逆に、ステップS21において、断線の可能性があると仮判定された信号線Lがあった場合には、ステップS22において切替ステップを実行し、スイッチ92をオンからオフに切り替える。また、ステップS23において禁止ステップを実行し、断線有りと仮判定された振動センサ9が監視している気筒8sにおける点火時期が進角されるのを停止する。より具体的には、ステップS23では全気筒8sの点火時期の進角を停止する。
【0062】
その上で、ステップS24において判定実行ステップを実行し、上記のステップS22によってスイッチ92がオフにされた状態(開放状態)で新たに取得された、断線していると仮判定されている信号線Lに接続されている振動センサ9の対象検出結果Vに基づいて、その信号線Lが断線しているか否かを判定(本判定)する。その結果、断線していると判定された場合には、ステップS25において点火時期指示ステップを実行し、その振動センサ9が設置されている気筒8sの点火時期を所定量だけリタードさせる。その後、ステップS26において、スイッチ92をオンに戻すことでシールド線Lsをグランドに接地した後、処理を終了する。逆に、ステップS24において信号線Lが断線していないと判定された場合には、上記のステップS25を実行することなく、上記のステップS26を実行した後、処理を終了する。
【0063】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
(付記)
【0064】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る断線検知装置(1)は、
内燃機関に設置された振動センサ(9)の信号線(L)の断線を検知するための断線検知装置(1)であって、
前記信号線(L)の断線検知用の対象クランク角範囲(Rt)における前記振動センサ(9)の検出結果である対象検出結果(V)を取得するよう構成された取得部(12)と、
前記対象検出結果(V)に基づいて、前記信号線(L)に対する断線判定を実行するよう構成された断線判定部(2)と、を備え、
前記断線判定部(2)は、
前記振動センサ(9)のシールド線(Ls)に設けられたスイッチ(92)のオンとオフとの切り替えを実行するよう構成されたスイッチ制御部(4)と、
前記スイッチ(92)のオフによって前記シールド線(Ls)が開放状態にされている時の前記対象検出結果(V)に基づいて、前記信号線(L)の断線の有無を判定するよう構成された判定実行部(5)と、を有する。
【0065】
例えばノッキングの発生を検知するためのノックセンサといった振動センサ(9)(加速度センサ)は、ノイズ対策のためにシールド線(Ls)を有している。この種の振動センサ(9)は、その検出信号(センサ信号)を伝送先に伝送するための配線(信号線(L))が断線すると、伝送先で検出されるセンサ信号は実際よりも小さくなる。そして、本発明者らは、鋭意研究により、振動センサ(9)のシールド線(Ls)が接地されている場合には、信号線(L)における断線位置に応じてセンサ信号の低下の程度が異なると共に、上記の断線時において振動センサ(9)のシールド線(Ls)をオープン(開放状態)にすると、信号線(L)における断線位置にかかわらず、センサ信号などがほぼ0にまで低下することを見出した。よって、スイッチ(92)をオフにした際の振動センサ(9)の信号レベルがほぼ0になるかを確認することにより、より正確な断線判定が可能となる。
【0066】
上記(1)の構成によれば、例えばノックセンサなどとなる振動センサ(9)のシールド線(Ls)にはスイッチ(92)が設けられており、スイッチ(92)のオン、オフの切り替えによって、シールド線(Ls)を介した振動センサ(9)とグランドとの間が接続された状態(オン時)と、切り離され状態(オフ時)とに切り替えられるようになっている。そして、断線検知装置(1)は、例えば排気バルブあるいは給気バルブの着座時などのノックが発生することのないタイミングであって、内燃機関のエンジン(8)サイクル毎に必ず振動が発生するタイミングとなるクランク角範囲(対象クランク角範囲(Rt))において、スイッチ(92)をオフにした上で、振動センサ(9)による振動の検出結果(対象検出結果(V))を取得し、この検出結果に基づいて、振動センサ(9)とECU(6)などとを接続する信号線(L)が断線している否かの判定(断線判定)を実行する。
【0067】
このように、上記のスイッチ(92)がオフ時(シールド線(Ls)が開放状態)における振動センサ(9)の対象検出結果(V)に基づいて断線判定を実行することにより、断線が生じていた場合には信号線(L)上の断線位置にかかわらず断線検知用の特徴量(F)がほぼ0にまで低下することを利用して、上記の断線の有無を適切に判定することができる。すなわち、内燃機関の機種、号機、気筒(8s)などに応じて、断線判定用の閾値(T1)を調整することなく、断線の有無を適切に判定することができる。また、ノックの発生など、振動センサ(9)で検出しようとする事象の検知に際しては、スイッチ(92)をオンにすることでシールド線(Ls)をグランドに接続した状態で取得したセンサ信号に基づいて判定することで、ノイズの影響を抑えつつ、適切な検知を行うことができる。
【0068】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記断線判定部(2)は、
前記対象検出結果(V)に基づいて前記断線判定に用いる特徴量(F)を算出するよう構成された特徴量算出部(21)をさらに有し、
前記判定実行部(5)は、前記スイッチ(92)がオフの時の前記対象検出結果(V)に基づいて算出される前記特徴量(F)が所定の第1閾値(T1)以下である場合に、前記信号線(L)が断線していると判定するよう構成されている。
【0069】
上記(2)の構成によれば、スイッチ(92)がオフの時の対象検出結果(V)に基づいて得られる特徴量(F)が閾値(T1)以下である場合に、上記の断線が発生していると判定する。上述したように、スイッチ(92)がオフの時の対象検出結果(V)に基づいて得られる特徴量(F)は、信号線(L)の断線時には、その断線位置やエンジン(8)の機種、号機、気筒(8s)にかかわらずほぼ0にまで低下することを利用することで、より正確な断線判定を行うことができる。
【0070】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、
前記断線判定部(2)は、
前記スイッチ(92)がオンの時の前記対象検出結果(V)に基づいて、前記信号線(L)の断線の仮判定を実行するよう構成された仮判定部(3)をさらに有し、
前記スイッチ制御部(4)は、前記仮判定によって前記断線が有りと判定された場合に前記スイッチ(92)をオフに切り替えるように構成され、
前記判定実行部(5)は、前記仮判定により前記断線が有りと判定され、かつ、前記スイッチ(92)がオフに切り替えられた後に、前記信号線(L)の断線の有無を判定するように構成されている。
【0071】
上記(3)の構成によれば、上述したシールド線(Ls)上のスイッチ(92)のオフへの切り替え、および上述した断線判定は、断線の有無の仮判定により断線の可能性があると判定された場合に行われる。ここで、上記のスイッチ(92)をオフに切り替えると、振動センサ(9)はノイズの影響を受け易くなるため、スイッチ(92)のオフへの切り替えの頻度やオフの少ない方が望ましい。よって、仮判定により断線の可能性があると判定された場合に、スイッチ(92)のオフへの切り替えた上での断線判定(本判定)を実行することにより、スイッチ(92)をオフにする頻度や時間を低減することができる。
【0072】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、
前記断線判定部(2)は、
所定のエンジン(8)サイクル毎に得られる前記特徴量(F)の変化の低周波数成分を抽出するよう構成されたローパスフィルタ部(22)と、
前記内燃機関の負荷値(D)を取得するよう構成された負荷値取得部(23)と、をさらに有し、
前記仮判定部(3)は、前記スイッチ(92)がオンの時の前記対象検出結果(V)に基づいて算出された前記特徴量(F)である仮判定用特徴量(Fp)についての前記低周波数成分に基づく値(Fp´)が、前記第1閾値(T1)よりも大きな値を有する第2閾値(T2)以下であり、かつ、前記負荷値(D)が負荷閾値(Td)以上である場合に、前記断線が有ると仮判定するよう構成されている。
【0073】
上記(4)の構成によれば、仮判定用特徴量(Fp)の変動の低周波数成分に基づく値(Fp´)が閾値(第2閾値(T2))以下であり、かつ、負荷値(D)が閾値(Td)以上である場合には、信号線(L)の断線の可能性があると仮判定する。通常、仮判定用特徴量(Fp)はエンジン(8)サイクル毎に上下する。よって、仮判定用特徴量(Fp)の変動の低周波数成分に基づく値(Fp´)を用いていて仮判定を行うことにより、例えばエンジン(8)サイクル毎の仮判定用特徴量(Fp)の上下の変動の影響を抑えつつ、例えばノックが生じる高負荷(例えば負荷値(D)が70%以上)時の状況に基づいて仮判定を行うことができ、仮判定の精度を高めることができる。
【0074】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)の構成において、
前記断線判定部(2)は、
前記振動センサ(9)の検出結果に基づいて算出される、ノックの発生を監視するためのノックレベル(K)を取得するよう構成されたノックレベル取得部(24)をさらに有し、
前記仮判定部(3)は、前記仮判定用特徴量(Fp)の前記低周波数成分に基づく値(Fp´)が前記第2閾値(T2)以下で、前記負荷値(D)が前記負荷閾値(Td)以上で、かつ、前記ノックレベル(K)がノック閾値(Tk)以下の場合に、前記断線が有ると仮判定するよう構成されている。
【0075】
上記(5)の構成によれば、ノックレベル(K)の状況を考慮して仮判定を行う。ノックレベル(K)は負荷値(D)が高いほど大きくなる。このため、仮判定用特徴量(Fp)の低周波数成分に基づく値(Fp´)が第2閾値(T2)以下で、かつ、負荷値(D)が負荷閾値(Td)以上であるにもかかわらず、ノックレベル(K)がノック閾値(Tk)よりも小さい場合は、振動センサ(9)の断線が有ると仮判定する。よって、仮判定の精度を高めることができ、スイッチ(92)をオフにする頻度や時間を低減することができる。
【0076】
(6)幾つかの実施形態では、上記(4)の構成において、
前記断線判定部(2)は、
前記仮判定用特徴量(Fp)の標準偏差を算出するよう構成された標準偏差算出部(25)をさらに有し、
前記仮判定部(3)は、前記仮判定用特徴量(Fp)の前記低周波数成分に基づく値(Fp´)が前記第2閾値(T2)以下で、前記負荷値(D)が前記負荷閾値(Td)以上で、かつ、前記仮判定用特徴量(Fp)の標準偏差が偏差閾値(T)以下の場合に、前記断線が有ると仮判定するよう構成されている。
【0077】
上記(6)の構成によれば、仮判定に用いる仮判定用特徴量(Fp)そのものの標準偏差を求め、この標準偏差の状況を考慮して仮判定を行う。振動センサ(9)の信号線(L)が断線すると、仮判定用特徴量(Fp)の標準偏差は断線前よりも小さくなる。よって、仮判定の条件に、仮判定用特徴量(Fp)の標準偏差に関する条件を加えることで、仮判定の精度を高めることができる。したがって、スイッチ(92)をオフにする頻度や時間を低減することができる。
【0078】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)~(6)の構成において、
前記スイッチ制御部(4)は、前記スイッチ(92)をオフに切り替えた後、予め定められた条件が成立した場合に、前記スイッチ(92)をオンに切り替えるよう構成されている。
【0079】
上記(7)の構成によれば、例えばスイッチ(92)をオフに切り替え後に一定時間が経過した場合などの条件が成立した場合には、例え断線判定の結果が得られていなくても、スイッチ(92)をオンに切り替える。これによって、スイッチ(92)がオフにされている時間の低減を図ることができる。
【0080】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)~(7)の構成において、
前記断線判定部(2)は、
前記スイッチ(92)がオフの時には点火時期の進角を禁止するよう構成される禁止部(42)をさらに有する。
【0081】
上記(8)の構成によれば、シールド線(Ls)が開放されている間は、点火時期制御による進角を禁止する。シールド線(Ls)を開放状態にするとノックレベル(K)が実際よりも小さくなる。よって、シールド線(Ls)の開放に伴って小さくなっているノックレベル(K)に基づいて、点火時期が進角され続けることによって実際にノックが生じ、機関損傷などが発生するのを回避することができる。
【0082】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)~(8)の構成において、
前記信号線(L)が断線していると判定された前記振動センサ(9)の検出結果に基づいて点火時期が制御される気筒(8s)に対する前記点火時期を、所定量だけリタードさせるよう構成された点火時期指示部(52)をさらに備える。
【0083】
上記(9)の構成によれば、振動センサ(9)の信号線(L)の断線が有ると判定された場合には、その振動センサ(9)によって監視されている気筒(8s)に対する点火時期が所定量だけリタードされる。これによって、信号線(L)が断線している振動センサ(9)によってノックの発生が監視されている気筒(8s)に対する点火時期が進角され続けることによって実際にノックが生じ、機関損傷などが発生するのを回避することができる。
【0084】
(10)本発明の少なくとも一実施形態に係る断線検知方法は、
内燃機関に設置された振動センサ(9)の信号線(L)の断線を検知するための断線検知方法であって、
前記信号線(L)の断線検知用の対象クランク角範囲(Rt)における前記振動センサ(9)の検出結果である対象検出結果(V)を取得するステップと、
前記対象検出結果(V)に基づいて、前記信号線(L)に対する断線判定を実行するステップと、を備え、
前記断線判定を実行するステップは、
前記振動センサ(9)のシールド線(Ls)に設けられたスイッチ(92)をオンからオフに切り替えるステップ、
前記スイッチ(92)のオフによって前記シールド線(Ls)が開放状態にされている時の前記対象検出結果(V)に基づいて、前記信号線(L)の断線の有無を判定するステップと、を有する。
上記(10)の構成によれば、上記(1)と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0085】
1 断線検知装置
12 取得部
2 断線判定部
21 特徴量算出部
22 ローパスフィルタ部
23 負荷値取得部
24 ノックレベル取得部
25 標準偏差算出部
3 仮判定部
4 スイッチ制御部
42 禁止部
5 判定実行部
52 点火時期指示部
6 ECU
6m 記憶部
61 入力回路
62 点火時期制御部
63 ノック監視部
7 断線検知システム
8 エンジン
8s 気筒
8h シリンダヘッド
8p ピストン
82 点火装置
82p 点火プラグ
9 振動センサ
92 スイッチ

L 信号線
Ls シールド線
Rt 対象クランク角範囲
V 対象検出結果
Vk ノック判定用検出結果
F 特徴量
Fp 仮判定用特徴量
Fp´ 仮判定用特徴量の低周波成分に基づく値
D 負荷値
K ノックレベル
T1 第1閾値
T2 第2閾値
Td 負荷閾値
Tk ノック閾値
T 偏差閾値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7