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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】基板収納容器
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/673 20060101AFI20240118BHJP
   B65D 85/30 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
H01L21/68 T
B65D85/30 500
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020013479
(22)【出願日】2020-01-30
(65)【公開番号】P2021120970
(43)【公開日】2021-08-19
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】福永 司
【審査官】三浦 みちる
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-170969(JP,A)
【文献】特開2017-147372(JP,A)
【文献】国際公開第2009/008047(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/203524(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/673
B65D 85/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収納可能な基板収納容器であって、
前記基板を収納し、前記基板を出し入れする開口が形成された容器本体と、
前記容器本体の前記開口を閉止する蓋体と、
前記容器本体の内部に気体を供給する気体供給部と、
前記気体供給部から供給される前記気体の流速を減少させる気流制御部と、
を少なくとも備え
前記容器本体の底面には、前記気体供給部から前記容器本体の内部に前記気体を導入する気体導入部が設けられ、
垂直方向において、前記気流制御部の断面視における垂直方向における中心線が、前記容器本体の前記底面の内表面よりも低くなるように、前記気流制御部が前記気体導入部に接続されている、基板収納容器。
【請求項2】
直方向において、前記気流制御部の上表面が、前記容器本体の前記底面の内表面よりも低くなるように、前記気流制御部が前記気体導入部に接続されている、
請求項1に記載の基板収納容器。
【請求項3】
基板を収納可能な基板収納容器であって、
前記基板を収納し、前記基板を出し入れする開口が形成された容器本体と、
前記容器本体の前記開口を閉止する蓋体と、
前記容器本体の内部に気体を供給する気体供給部と、
前記気体供給部から供給される前記気体の流速を減少させる気流制御部と、
を少なくとも備え
前記容器本体の底面には、前記気体供給部から前記容器本体の内部に前記気体を導入する気体導入部が設けられ、
垂直方向において、前記気流制御部の上表面が、前記容器本体の前記底面の内表面よりも低くなるように、前記気流制御部が前記気体導入部に接続されている、基板収納容器。
【請求項4】
前記気体供給部は、前記容器本体の底面から上方に向けて前記気体を供給し、
前記気流制御部は、少なくとも、前記気体の垂直方向の流速を減少させる、
請求項1~3のいずれか一項に記載の基板収納容器。
【請求項5】
前記気流制御部は、前記気体の垂直方向の流速を1~60%減少させる、
請求項1~4のいずれか一項に記載の基板収納容器。
【請求項6】
前記気流制御部は、多孔質部材を含み、前記気体供給部から供給される前記気体が、前記多孔質部材に当たることにより、少なくとも、前記気体の垂直方向の流速を減少させる、
請求項1~5のいずれか一項に記載の基板収納容器。
【請求項7】
記気体供給部は、ハウジングと、前記ハウジングに格納された弁座体と、前記弁座体に接離し、前記気体の逆流を防止するよう作動する逆止弁体と、を少なくとも備え、
前記気流制御部は、前記多孔質部材が、前記逆止弁体の上方に配置されるように、前記気体導入部に接続されている、請求項6に記載の基板収納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネル用ガラス基板等を扱う半導体の製造工程では、基板(例えば、ウェーハー、パネル等)を所定の工程から別の工程に移送する際や、基板を保管する際に、基板収納容器が用いられている。基板収納容器には、その内部に複数の基板を一定の間隔を置いて上下方向に重ねて収納するもの等がある。そして、半導体の製造工程では、空気中の微粒子(パーティクル)等から基板を保護するために、基板を外気に接触させずに自動搬送装置等によって搬送する。また、ロボットアーム等によって基板を容器内から搬出入する。このように、半導体製造では、基板収納容器を用いたオートメーション化が行われている。かかる基板収納容器としては、例えば、密閉型の前開式基板収納容器(FOUP;Front Opening Unify Pod)が用いられている(例えば、特許文献1~3)。
【0003】
基板収納容器は、容器内部を低湿度に維持する目的等のために、窒素ガス等の不活性ガス、又はドライエア等によって容器内を置換する(ガスパージ)。通常、このようなガスパージは、基板収納容器の底面に気体導入ポートを設け、そこから容器本体の内部に置換ガスを導入することによって行われる。ガスパージは、上述した空気中の微粒子等から基板を保護する観点からも重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5524093号公報
【文献】特許第5960078号公報
【文献】特許第6165653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したガスパージを行う場合、気体導入ポートから容器内部に導入された置換ガスが、容器内部に収納されている基板に当たることにより、基板が浮き上がったり、基板が振動したりする場合がある。これにより、微粒子の発塵や基板の位置ずれ等を引き起こしてしまう。かかる不具合は、半導体製品について製品不良の原因となる。そして、かかる不具合は、基板収納容器の最下層のスロットに収納されている基板(最下位に位置する基板)に顕著である。
【0006】
このような不具合を防止するために、例えば、特許文献1の前面開放ウェーハーコンテナは、少なくとも1つの細長い管状制御要素を含み、その長さは上壁部と底壁部との間の距離で十分に伸びており、細長い管状制御要素は直立の軸を有し、及び細長い管状制御要素はオフセット部を経てパージポートにおいてコンテナ部の底部に接続されて、パージポートは管状制御要素の軸から外れて配置され、よって細長い管状制御要素はパージポートよりも閉鎖背面の近くに位置している。しかしながら、かかる管状制御要素は、容器内で占める割合が大きく、ロボットアームの搬送モーション時等に搬送装置と機械的干渉を起こしてしまうため、実用的ではない。あるいは、かかる機械的干渉を回避するために、基板収納容器の収納枚数を少なくしたり、収納可能な基板のサイズを小さくしたりする必要がある。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、容器内部への気体の導入による基板の浮き上がりや振動に起因する不具合を抑制でき、かつ、搬送装置等との干渉も緩和された、基板収納容器を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者が、上述した課題を解決すべく、以下の本発明を完成させるに至った。
【0009】
(1)
基板を収納可能な基板収納容器であって、前記基板を収納し、前記基板を出し入れする開口が形成された容器本体と、前記容器本体の前記開口を閉止する蓋体と、前記容器本体の内部に気体を供給する気体供給部と、前記気体供給部から供給される前記気体の流速を減少させる、前記気体供給部から供給される前記気体の供給方向を変更させる、又は、その両方を行う、気流制御部と、を少なくとも備える基板収納容器。
(2)
前記気体供給部は、前記容器本体の底面から上方に向けて前記気体を供給し、前記気流制御部は、少なくとも、前記気体の垂直方向の流速を減少させる、(1)の基板収納容器。
(3)
前記気流制御部は、多孔質部材を含み、前記気体供給部から供給される前記気体が、前記多孔質部材に当たることにより、少なくとも、前記気体の垂直方向の流速を減少させる、(1)又は(2)の基板収納容器。
(4)
前記気流制御部は、前記気体の垂直方向の流速を1~60%減少させる、(1)~(3)のいずれかの基板収納容器。
(5)
前記気体供給部は、前記容器本体の底面から上方に向けて前記気体を供給し、前記気流制御部は、前記気体の供給方向を、少なくとも水平方向に拡散させる、(1)の基板収納容器。
(6)
前記気流制御部は、偏向板又は多孔質部材を含み、前記気体供給部から供給される前記気体が、前記偏向板又は前記多孔質部材に当たることにより、前記気体の供給方向を、少なくとも水平方向に拡散させる、(5)の基板収納容器。
(7)
前記容器本体の底面には、前記気体供給部から前記容器本体の内部に前記気体を導入する気体導入部が設けられ、垂直方向において、前記気流制御部の断面視における垂直方向における中心線が、前記容器本体の前記底面の内表面よりも低くなるように、前記気流制御部が前記気体導入部に接続されている、(1)~(6)のいずれかの基板収納容器。
(8)
前記容器本体の底面には、前記気体供給部から前記容器本体の内部に前記気体を導入する気体導入部が設けられ、垂直方向において、前記気流制御部の上表面が、前記容器本体の前記底面の内表面よりも低くなるように、前記気流制御部が前記気体導入部に接続されている、(1)~(7)のいずれかの基板収納容器。
(9)
前記容器本体の底面には、前記気体供給部から前記容器本体の内部に前記気体を導入する気体導入部が設けられ、前記気体供給部は、ハウジングと、前記ハウジングに格納された弁座体と、前記弁座体に接離し、前記気体の逆流を防止するよう作動する逆止弁体と、を少なくとも備え、前記気流制御部は、多孔質部材又は偏向板が、前記逆止弁体の上方に配置されるように、前記気体導入部に接続されている、
(3)、(4)、及び(6)~(8)のいずれかの基板収納容器。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、容器内部への気体の導入による基板の浮き上がりや振動に起因する不具合を抑制でき、かつ、搬送装置等との干渉も緩和された、基板収納容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る基板収納容器の斜視図である。
図2】本実施形態に係る基板収納容器の開口状態を示す斜視図である。
図3】本実施形態に係る基板収納容器の底面図であり、バルブを取り付けていない状態である。
図4】本実施形態に係る基板収納容器の底面図であり、バルブを取り付けている状態である。
図5】本実施形態に係る基板収納容器の気流制御を説明するための模式図である。
図6】本実施形態に係る気体供給部として用いる給気バルブの第一の例の断面図である。
図7】本実施形態に係る気体供給部として用いる給気バルブの第二の例の断面図である。
図8】本実施形態に係る基板収納容器の気流制御を説明するための模式図である。
図9】本実施形態に係る気体供給部として用いる給気バルブの第三の例の断面図である。
図10】本実施形態に係る気体供給部として用いる給気バルブの第四の例の断面図である。
図11】本実施形態に係る気体供給部として用いる給気バルブの取り付けの別の一例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0013】
なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0014】
さらに、本明細書において、「略」を付した用語は、当業者の技術常識の範囲内でその「略」を除いた用語の意味を示すものであり、「略」を除いた意味自体をも含むものとする。
【0015】
図1は、本実施形態に係る基板収納容器の斜視図であり、図2は、本実施形態に係る基板収納容器の開口状態を示す斜視図である。
【0016】
基板収納容器1は、1枚以上の基板Wを収納可能な容器であり、正面に開口14が形成されている容器本体10と、この開口14をシール可能に閉止する着脱自在の蓋体20とを備えている。蓋体20が、容器本体10の開口14付近に設けられたシール部15と密接することにより、シール可能となる。そして、容器本体10の内部には、例えば、開口14から複数の半導体ウェーハー等の基板Wが収納され、基板Wは所定の間隔を有して略水平状態で容器本体10の内部に重ねられる。また、容器本体10の外部側面には、グリップ部11が設けられていてもよい。
【0017】
基板Wが、このような半導体ウェーハーである場合、例えば、半導体部品の製造工程で各種の加工又は処理が適宜施され、基板収納容器1の容器本体10の内部に複数枚が略水平に挿入されて収納されるとともに、容器本体10の垂直方向に整列されている。そして、基板Wの出し入れの際には、蓋体開閉装置(図示せず)に容器本体10が搭載されたりする。
【0018】
基板Wの形状としては、特に限定されず、例えば、矩形状、円形状等が挙げられる。
【0019】
基板Wが矩形状である場合、その大きさは特に限定されないが、例えば、250mm×250mm~650mm×650mmのものが挙げられる。例えば、キャリアパネルの寸法である625mm×615mmや、封止パネルの寸法である600mm×600mm等のものも挙げられる。このような矩形状の基板Wである場合、図2に示すように、後述する気体供給部17の上方に基板Wが配置されるため、気体供給部17から容器本体10の内部に導入される置換ガスが当たりやすくなり、基板の浮き上がりや基板の振動といった問題が顕著である。
【0020】
基板Wが円形状である場合、その大きさは特に限定されないが、例えば、775μmの厚さを有するφ300mmのシリコンウェーハー等が挙げられる。
【0021】
容器本体10は、基板Wを収納し、基板Wを出し入れする開口14が形成されている。容器本体10には、その天面(上面)に搬送用のトップフランジ12が設けられていてもよい。また、ここでは図示はしないが、底面13(下面)には、オプションとして板状のボトムプレートが設けられていてもよい。
【0022】
ボトムプレートを設ける場合、ボトムプレートには、例えば、複数の気体供給部17及び気体排出部18が取り付けられている。例えば、気体供給部17として給気バルブ30を、気体排出部18として排気バルブ40を、それぞれ用いることができる。給気バルブ30を介して、基板収納容器1の内部に置換ガス(例えば、窒素ガス等の不活性ガス、又はドライエア等)を導入することができる。そして、排気バルブ40を介して、基板収納容器1の内部に存在するガスを外部に排出することができる。図1では、底面13に取り付けられる給気バルブ30及び排気バルブ40を、それぞれ図中下方側に取り出し、さらに分解した状態を模式的に示している。
【0023】
容器本体10、蓋体20、並びに給気バルブ30及び排気バルブ40は、樹脂組成物を含有する成形材料により構成することができる。例えば、射出成形により部品が成形され、これらの部品の組み合わせから構成されてもよい。樹脂組成物の樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、液晶ポリマー等の熱可塑性樹脂、及びこれらのアロイ等が挙げられる。
【0024】
樹脂組成物は、必要に応じて、カーボン繊維、カーボンパウダー、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー等の導電物質、アニオン系、カチオン系、非イオン系等の各種帯電防止剤等を含有していてもよい。また、樹脂組成物は、必要に応じて、ベンゾトリアゾール系、サリシレート系、シアノアクリレート系、オキザリックアシッドアニリド系、ヒンダードアミン系等の紫外線吸収剤を含有していてもよい。さらに、樹脂組成物は、剛性を向上させる目的で、ガラス繊維、炭素繊維等を含有していてもよい。
【0025】
容器本体10は、正面が開口したフロントオープンボックスタイプであり、正面の開口14を略水平横方向に向けた状態で半導体製造工場の天井搬送機構等に把持して工程間を搬送させてもよい。あるいは、半導体加工装置に付属するロードポート上に位置決めして搭載させてもよい。
【0026】
容器本体10は、その内部表面のうち対向する1対の表面に、基板Wを支持する支持部16を有する。例えば、容器本体10の対向する内部の側壁に、基板Wを略水平に支持する左右一対の支持片がそれぞれ対設される。左右一対の支持片は、垂直方向に所定のピッチ間隔で配列されている。これにより、基板Wを垂直方向において所定の間隔で重ね合わせるように収納することができる。
【0027】
続いて、給気バルブ30及び排気バルブ40について説明する。
【0028】
給気バルブ30は、容器本体10の底面13における複数の取り付け部17J(図3参照)にそれぞれ嵌着されて、気体供給部17を構成する。給気バルブ30は、容器本体10の底面13に配置される。例えば、蓋体開閉装置に容器本体10が搭載されると、給気バルブ30は、蓋体開閉装置に併設されたパージ装置の給気ポートに接続され、容器本体10の内部に置換ガスを供給する。ここでは、図1において、給気バルブ30は、容器本体10の底面に矢印F1の方向より接続した場合を、一例として例示したが、接続形態はこれに限定されない。例えば、矢印F1の逆方向、さらには上下からの両方向から接続する構成であってもよい。例えば、第一のハウジング33を容器内側から挿入し、それ以外の部材を矢印F1の方向から嵌合する構成であってもよい。
【0029】
排気バルブ40は、容器本体10の底面13における複数の取り付け部18J(図3参照)にそれぞれ嵌着されて、気体排出部18を構成する。排気バルブ40は、容器本体10の底面13に配置される。例えば、蓋体開閉装置に容器本体10が搭載されると、排気バルブ40は、蓋体開閉装置に併設されたパージ装置の排気ポートに接続され、容器本体10の内部から外部にガスを排出する。ここでは、図1において、排気バルブ40は、容器本体10の底面に矢印F2の方向より接続する場合を、一例として例示したが、接続形態はこれに限定されない。例えば、矢印F2の逆方向、さらには上下からの両方向から接続する構成であってもよい。例えば、第一のハウジング43を容器内側から挿入し、それ以外の部材を矢印F2の方向から嵌合する構成であってもよい。
【0030】
給気バルブ30は、逆止弁体31、弾性体32、第一のハウジング33、リブ34、及びOリング35を少なくとも有しており、これらはスライド可能に嵌入される。給気バルブ30は、逆止弁体31が弾性体32の背圧により逆流を防止するよう作動する逆止弁機構を備えていてもよい。この弾性体32としては、例えば、コイルバネ等を用いることができる。
【0031】
排気バルブ40は、逆止弁体41、弾性体42、第一のハウジング43、リブ44、及びOリング45を少なくとも有しており、これらはスライド可能に嵌入される。排気バルブ40は、逆止弁体41が弾性体42の背圧により逆流を防止するよう作動する逆止弁機構を備えていてもよい。この弾性体42としては、例えば、コイルバネ等を用いることができる。
【0032】
そして、給気バルブ30及び排気バルブ40は、部品点数を増減変更することなく、給気バルブ30としても、排気バルブ40としても利用することができる。両者は、バルブの機能(給排気)に応じて逆止弁体31,41及び弾性体32,42の向きを変更すればよい(図1参照)。例えば、基板収納容器1の外部から内部に置換ガスを供給する給気バルブ30として機能する場合には、逆止弁体31が弾性体32の上方に位置する。一方、基板収納容器1の内部から外部に置換ガスを排出する排気バルブ40として機能する場合には、弾性体42が逆止弁体41の上方に位置する。
【0033】
上述した構成において、例えば、基板収納容器1の内部を窒素ガス等の置換ガスに置換し、容器本体10内を低湿度に維持する場合には、蓋体開閉装置に容器本体10を搭載し、蓋体開閉装置のパージ装置の給気ポートに給気バルブ30を接続するとともに、パージ装置の排気ポートに排気バルブ40を接続し、その後、給気ポートから給気バルブ30に置換ガスを導入すればよい。
【0034】
そして、置換ガスは、給気バルブ30内に充満し、弾性体32を圧縮しながら逆止弁体31を押し上げ、流路を形成する。置換ガスは、給気バルブ30の内部を流通して容器本体10の内部に導入され、容器本体10の内部に存在するガスを排気バルブ40の方向に押し出す。
【0035】
排気バルブ40の方向に押し出されたガスは、排気バルブ40の内部を流通して、弾性体42を圧縮しながら逆止弁体41を押し下げ、流路を形成する。こうして流路が形成されると、ガスはこの流路を介して基板収納容器1の外部に流出され、排気される。
【0036】
図3は、本実施形態に係る基板収納容器の底面図であり、バルブを取り付けていない状態であり、図4は、本実施形態に係る基板収納容器の底面図であり、バルブを取り付けている状態である。
【0037】
図3は、基板収納容器1を底面13側から見た図であり、各給気バルブ30の取り付け部17J及び排気バルブ40の取り付け部18Jを示している。すなわち、図3は、給気バルブ30及び排気バルブ40が取り付けられていない基板収納容器1を示している。各取り付け部17J,18Jは、蓋体20側(図面の上側)の両脇に1対(1個ずつ)、奥行き後部側(図面の下側)の両脇に1対(1個ずつ)取り付けられている。各取り付け部17J,18Jは、底面13に形成された取り付け孔17H,18Hによって露出されている。なお、底面13における取り付け部17J,18Jの配置場所は、特に限定されず、装置構成等を考慮して、適宜好適な場所に取り付けることもできる。
【0038】
図4は、図3と対応する図であり、給気バルブ30の取り付け部17Jに、給気バルブ30を取り付けた気体供給部17と、排気バルブ40の取り付け部18Jに排気バルブ40を取り付けた気体排出部18を示している。すなわち、蓋体20側に1個の給気バルブ30と1個の排気バルブ40が取り付けられており、奥行き後部側の両脇に1個の給気バルブ30と1個の排気バルブ40が取り付けられている。なお、図3及び図4では、気体供給部17及び気体排出部18を、底面13に2対(2個×2)配置した場合を例示したが、気体供給部17及び気体排出部18の個数及び配置は、これらに限定されない。例えば、気体供給部17を容器本体の底面13に3箇所設け、気体排出部18を底面13に1箇所設ける態様等でもよい。また、基板Wとの配置関係等を考慮して、置換ガスが基板Wに当たりにくい好適な箇所に配置することもできる。
【0039】
底面13の給気バルブ30の取り付け部17Jを露出させる取り付け孔17Hには、リブが形成されていてもよい。このリブは、取り付け孔17Hを中心として半径の異なる円筒状又は円弧状のリブとしてもよい。同様に、底面13の排気バルブ40の取り付け部18Jを露出させる取り付け孔18Hには、リブが形成されていてもよい。このリブは、取り付け孔18Hを中心として半径の異なる円筒状又は円弧状としてもよい。
【0040】
なお、図示はしないが、底面13には、基板収納容器1を加工装置(図示せず)に配置する際の位置決めを行うための位置決め部材が設けられていてもよい。位置決め部材は、例えば、略V字状の傾斜面を有し、加工装置のピンと嵌合可能な形状であってもよい。位置決め部材は、少なくとも3箇所設けられることが好ましい。
【0041】
(気流制御部)
【0042】
基板収納容器1は、容器本体10の内部に気体(例えば、置換ガス)を供給する気体供給部17(例えば、給気バルブ30)と、気体供給部17から供給される気体の流速を減少させる、気体供給部17から供給される気体の供給方向を変更させる、又は、その両方を行う、気流制御部(例えば、後述する多孔質部材331や偏向板340)と、を有する。基板収納容器1は、かかる気流制御部を有することで、置換ガスが、容器本体10の内部に収納されている基板Wに当たる勢いを緩和できる。
【0043】
気流制御部としては、例えば、置換ガスの流速を減少させる機構、置換ガスの供給方向を変更する機構、又は、その両方を備える機構を有するものが挙げられる。これらの機構は、いずれも、置換ガスが基板Wに直接当たることを緩和するものであり、これにより基板Wの浮き上がり及び振動を防止できる。そして、後述するように、気流制御部は、基板収納容器1の構造上の制約にならないよう簡便かつ省スペースな構造とすることができるため、搬送装置等との干渉もなく、基板収納容器1の基板Wの収納枚数を減らす必要もない。
【0044】
気体供給部17は、容器本体10の底面から上方に向けて置換ガスを供給し、気流制御部は、少なくとも、置換ガスの垂直方向の流速を減少させる構成であることが好ましい。このような構成をとることによって、容器本体10の内部に導入された置換ガスが、収納されている基板W(特に、最下位に収納されている基板W)に当たることにより、基板が浮き上がったり、基板が振動したりすることを効果的に防止できる。
【0045】
あるいは、気体供給部17は、容器本体10の底面から上方に向けて置換ガスを供給し、気流制御部は、置換ガスの供給方向を、少なくとも水平方向に拡散させる構成であることが好ましい。このような構成をとることによっても、容器本体10の内部に導入された置換ガスが収納されている基板W(特に、最下位に収納されている基板W)に当たることにより、基板が浮き上がったり、基板が振動したりすることを効果的に防止できる。
【0046】
以下、上述した各構成の具体例について説明する。
【0047】
図5は、本実施形態に係る基板収納容器の気流制御を説明するための模式図である。
【0048】
図5は、気体供給部17から供給される置換ガスの垂直方向の流速を減少させる、気流制御部の周辺領域を模式的に示している。この気流制御部は、底面13の開口に接続されており、パージポートケース19の内側に、逆止弁体31と、この逆止弁体31の上方に配置されたエアフィルター332と、エアフィルター332の上方に配置された多孔質部材331と、を備えている。多孔質部材331は、細孔が多く形成された部材であり、この細孔に置換ガスが導入されることで置換ガスの流速が低下する。
【0049】
気流制御部は、多孔質部材331を備え、気体供給部17(給気バルブ30)から供給される置換ガスが、多孔質部材331に当たることにより、置換ガスの流速を減少させる構成であることが好ましい。置換ガスは、容器本体10の下方から容器本体10の内部に向けて導入され(矢印F3参照)、容器本体10の内部に導入された後、上方に送られる(矢印F4参照)。そして、多孔質部材331に当たることにより、少なくとも、置換ガスの垂直方向の流速を減少させることができる。垂直方向の流速が減少すると、基板収納容器1の内部に上下方向に沿って収納されている基板Wに当たる置換ガスの勢いが減勢されるため、置換ガスの供給速度を一定に維持しつつ、基板Wの浮き上がり及び振動を一層効果的に抑えられる。
【0050】
気流制御部は、置換ガスの垂直方向の流速を1~60%減少させることが好ましい。この割合の下限は、より好ましくは10%以上であり、更に好ましくは20%以上である。また、この割合の上限は、より好ましくは50%以下であり、更に好ましくは40%以下である。置換ガスの垂直方向の流速をこのような範囲に減少させることで、置換ガスの供給速度を一定に維持しつつ、基板Wの浮き上がり及び振動を一層効果的に抑えられる。この割合は、気流制御部に供給される置換ガス(矢印F3参照)の垂直方向の流速に対する、気流制御部から排出される置換ガス(矢印F4参照)の垂直方向の流速の減少率をいう。
【0051】
多孔質部材331の種類については、特に限定されず、置換ガスの流速及び流量、基板収納容器1の形状、大きさ及びその他の部材の配置、並びに基板Wの形状及び大きさ等を考慮して、適宜好適なものを選択することができる。例えば、多孔質部材331としては、ミクロポーラス材料、メソポーラス材料、マクロポーラス材料等が挙げられる。その具体例としては、例えば、ミクロポーラスシリカ、メソポーラスシリカ、マクロポーラスシリカ、シリカゲル、活性炭、ゼオライト、プラスチック焼結多孔質体、セラミック材等が挙げられる。プラスチック焼結多孔質体としては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)等のオレフィン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂等が挙げられる。セラミック材としては、例えば、アルミナ、ジルコニア、チタン酸バリウム等が挙げられる。これらの中でも、置換ガスの流速制御、耐熱性、強度、及び材料安定性等の観点から、プラスチック焼結多孔質体、及びセラミック材が好ましい。プラスチック焼結多孔質体の中でも、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)がより好ましい。セラミック材の中でも、ジルコニア等がより好ましい。
【0052】
多孔質部材331の気孔率は、特に限定されないが、20~75体積%であることが好ましい。気孔率の下限は、より好ましくは25体積%以上であり、更に好ましくは30体積%以上である。また、気孔率の上限は、より好ましくは60体積%以下であり、更に好ましくは50体積%以下である。ここでいう気孔率は、多孔質部材331の材料部分及び気孔部分を含む外形全体の体積に対する、気孔部分の体積の割合をいう。
【0053】
また、本実施形態によれば、必要に応じて、エアフィルター332を設けてもよい。エアフィルター332を設けることにより、空気中の微粒子(パーティクル)が基板収納容器1の内部に侵入することを防止できる。エアフィルター332の材質は特に限定されず、公知のものを採用することができる。例えば、四フッ化エチレン、ポリエステル繊維、フッ素系樹脂、ガラス繊維、活性炭繊維等が挙げられる。
【0054】
ここでは、逆止弁体31と多孔質部材331との間にエアフィルター332が設けられた場合を例示したが、エアフィルター332は必ずしも設けなくてもよい。また、エアフィルター332以外にも、必要に応じて、その他の部品を更に設けてもよい。
【0055】
容器本体10の底面13には、気体供給部17(例えば、給気バルブ30)から容器本体10の内部に置換ガスを導入する気体導入部(例えば、底面13の取り付け部17J)が設けられ、垂直方向において、気流制御部の断面視における垂直方向における中心線Lが、容器本体10の底面13の内表面13sよりも低くなるように、気流制御部が気体導入部に接続されていることが好ましい。例えば、気流制御部を底面13の内表面13sよりも低い位置に配置することで、基板W(特に、最下位に位置する基板W)に当たる気流の勢いを一層効果的に減殺することができる。例えば、図5の場合、多孔質部材331の中心線Lが、底面13の内表面13sよりも低い位置にあればよい。なお、ここでいう中心線Lは、例えば、気流制御部が、多孔質部材331である場合、その中心線Lは、多孔質部材331の重心を通る水平な線をいう。
【0056】
また、容器本体10の底面13には、気体供給部17(給気バルブ30)から容器本体10の内部に置換ガスを導入する気体導入部(例えば、底面13の取り付け部17J)が設けられ、垂直方向において、気流制御部の上表面331sが、容器本体10の底面13の内表面13sよりも低くなるように、気流制御部が気体導入部に接続されていることが好ましい。気流制御部の上表面331sを、底面13の内表面13sよりも低い位置に配置することで、基板W(特に、最下位に位置する基板W)に当たる気流の勢いを一層効果的に減殺することができる。
【0057】
続いて、気体供給部17として給気バルブ30を用いる場合の具体例を説明する。
【0058】
図6は、本実施形態に係る気体供給部として用いる給気バルブの第一の例の断面図である。
【0059】
給気バルブ30aは、容器本体10の底面13の取り付け部17Jに接続される第一のハウジング33と、この第一のハウジング33に嵌入される取り付け壁335と、第一のハウジング33に螺嵌される第二のハウジング334と、を有している。そして、第一のハウジング33の上部に多孔質部材331aが配置されている。給気バルブ30aは、多孔質部材331aがハウジング(例えば、第一のハウジング33、又は第二のハウジング334)の上部表面に露出している構成である。
【0060】
なお、図6ではエアフィルター332を設けた場合を例示したが、エアフィルター332は、必ずしも設けなくてもよく、必要に応じて、例えば、多孔質部材331aの下方に配置してもよい。
【0061】
さらに、取り付け壁335と第二のハウジング334により形成された空間内部には、弁座体333に接離する逆止弁体31が弾性体32の背圧により逆流を防止するよう作動する、逆止弁機構を備えている。
【0062】
そして、取り付け壁335の外周面の上方には、第一のハウジング33の内周面に密接する密封用のOリング336が嵌合されている。また、第一のハウジング33の外周面の上方には、容器本体10の底面13及びブロック132に嵌合係止する密封用のOリング35が嵌合されている。
【0063】
給気バルブ30aは、第一のハウジング33に設けられた突起338及び第二のハウジング334に設けられた突起339が、ブロック132を挟持することで、容器本体10の底面13に接続されている。ブロック132は、底面13とボトムプレート131との間に形成されている。
【0064】
このような構成を備える給気バルブ30aは、給気バルブ30aの下方に形成されている開口337から置換ガスが導入され(矢印F5参照)、給気バルブ30aの内部にある逆止弁機構を通過し、エアフィルター332を経て、多孔質部材331aへと導かれる。そして、多孔質部材331aに置換ガスが当たることにより置換ガスの流速が減勢されて、基板収納容器1の容器本体10の内部に向けて上方に供給される(矢印F6参照)。この際、少なくとも垂直方向における置換ガスの勢いが減勢されている(垂直方向の置換ガスの流速が減少されている)ので、基板収納容器1に収納されている基板Wが置換ガスによって浮き上がったり、振動したりすることがない。
【0065】
さらに、給気バルブ30aは、多孔質部材331aが第一のハウジング33の表面に設けられたコンパクトなものであり、大がかりな部品ではないため、給気バルブ30aを基板収納容器1に装着しても、ロボットアーム等の搬送装置との機械的干渉がない。
【0066】
多孔質部材331aによって置換ガスの流速を制御する基板収納容器1は、その構成部品の省スペース化においても優れている。よって、基板収納容器1に収納できる基板Wの枚数も多く、基板Wの搬送効率に優れている。
【0067】
さらに、多孔質部材331aは、空孔を部材全体に形成することにより、置換ガスの流速を減少させるだけでなく、置換ガスの供給方法を変更させることもできる。例えば、置換ガスの垂直方向の流速を減少し、かつ、置換ガスの供給方向を、少なくとも水平方向に、更には四方に、拡散させることができる。
【0068】
図7は、本実施形態に係る気体供給部として用いる給気バルブの第二の例の断面図である。
【0069】
給気バルブ30bは、図6の給気バルブ30aとは多孔質部材331bの配置が異なるものである。図7の給気バルブ30bは、第一のハウジング33の内部に多孔質部材331bが格納されている。すなわち、給気バルブ30bは、容器本体10の底面13の取り付け部17Jに接続される第一のハウジング33と、この第一のハウジング33に嵌入される取り付け壁335と、第一のハウジング33に螺嵌される第二のハウジング334と、を有している。そして、第一のハウジング33と取り付け壁335により形成された空間内部には、多孔質部材331bが配置されている。さらに、取り付け壁335と第二のハウジング334により形成された空間内部には、弁座体333に接離する逆止弁体31が、弾性体32の背圧により逆流を防止するよう作動する逆止弁機構が配置されている。
【0070】
給気バルブ30bは、多孔質部材331bを第一のハウジング33と第二のハウジング334の内部に配置している構成であるため、よりコンパクトであり、これを備える基板収納容器1は、ロボットアーム等の搬送装置との機械的干渉が一層抑制される。すなわち、多孔質部材331bの上表面が、容器本体10の底面13の内表面よりも低くなるように位置されている状態である。
【0071】
このような構成を備える給気バルブ30bは、給気バルブ30bの下方に形成されている開口337から置換ガスが導入され(矢印F7参照)、給気バルブ30bの内部にある逆止弁機構を通過し、エアフィルター332を経て、多孔質部材331bへと導かれる。そして、多孔質部材331bに置換ガスが当たることにより置換ガスの流速が減勢されて、基板収納容器1の容器本体10の内部に向けて上方に供給される(矢印F8参照)。この際、少なくとも垂直方向における置換ガスの勢いが減勢されている(垂直方向の置換ガスの流速が減少されている)ので、基板収納容器1に収納されている基板Wが置換ガスによって浮き上がったり、振動したりすることがない。
【0072】
なお、図7ではエアフィルター332を設けた場合を例示したが、エアフィルター332は、必ずしも設けなくてもよく、必要に応じて、例えば、多孔質部材331bの下方に配置してもよい。
【0073】
図8は、本実施形態に係る基板収納容器の気流制御を説明するための模式図である。
【0074】
図8は、気体供給部17(給気バルブ30)から供給される置換ガスの供給方向を、容器本体10の内部の水平方向に拡散させる気流制御部を模式的に示している。この気流制御部は、偏向板340を用いることにより置換ガスの気流の方向を変更させている点で、図5の気流制御部と異なるものである。
【0075】
この気流制御部は、底面13の開口に接続されており、パージポートケース19の内側に、逆止弁体31と、この逆止弁体31の上方に配置されたエアフィルター332と、エアフィルター332の上方に配置された偏向板340と、を備えている。偏向板340は、断面視において水平方向に延設されたガイドを有している。
【0076】
本実施形態では、偏向板340のガイドの延設方向は、水平方向に限定されず、装置構成等を考慮して、変形してもよい。例えば、ガイドの延設方向が、水平方向に対して45°以下となるようにしてもよい。すなわち、偏向板340は、水平方向に対して45°以下の角度となるよる延設されたガイドを有する構造であってもよい。水平方向に対する角度が45°以下であれば、置換ガスの気流の多くを水平成分に拡散することができる。このような観点から、ガイドの水平方向に対する角度は、好ましくは45°以下であり、より好ましくは40°以下であり、更に好ましくは30°以下であり、より更に好ましくは0°(水平方向)である。水平方向とすることで、気流制御部の構造を省スペース化することができるため、搬送装置等との干渉の抑制、及び基板収納容器1の基板Wの収納枚数の点で好適である。
【0077】
気流制御部は、偏向板340を含み、気体供給部17(給気バルブ30)から供給される置換ガスが、偏向板340に当たることにより、置換ガスの供給方向を、少なくとも水平方向に拡散させることが好ましい。置換ガスは、容器本体10の下方から容器本体10の内部に向けて導入され(矢印F9参照)、容器本体10の内部に導入された後、上方に送られる(矢印F10参照)。その際、偏向板340に衝突した置換ガスの気流が、水平方向に分岐され、底面13の水平方向(図面の左方向及び右方向)に向けて送り出される(矢印F11参照)。そして、置換ガスの供給方向を容器本体10の内部の水平方向に拡散させることができる。このような構成をとることによっても、容器本体10の内部に導入された置換ガスが収納されている基板W(特に、最下位に収納されている基板W)に当たることを抑制できるため、基板が浮き上がったり、基板が振動したりすることを効果的に防止できる。なお、このような水平方向への拡散は、偏向板340の替わりに、多孔質部材331を用いることでも行うことができる。例えば、多孔質部材331に形成されている細孔から、置換ガスを四方に向けて噴射することができる。
【0078】
偏向板340の材質については、特に限定されず、適宜好適な材料を選択することができる。例えば、樹脂製であってもよいし、金属製であってもよい。樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、これらのアロイ等が挙げられる。また、必要に応じて、カーボン繊維、カーボンパウダー、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー等の導電性材料や、アニオン系、カチオン系、非イオン系等の帯電防止剤等を配合してもよい。金属としては、特に限定されず、成形容易性や安定性等を考慮して適宜好適な種類を選択することができる。さらに、偏向板340の形状については、特に限定されず、装置の構成等を考慮して適宜好適な形状を選択することができる。
【0079】
ここでは、逆止弁体31と偏向板340との間にエアフィルター332が設けられた場合を例示したが、エアフィルター332は必ずしも設けなくてもよい。また、図示はしないが、気流制御部は、必要に応じて、その他の部品を更に備えていてもよい。
【0080】
図9は、本実施形態に係る気体供給部として用いる給気バルブの第三の例の断面図である。
【0081】
給気バルブ30cは、容器本体10の底面13の取り付け部17Jに接続される第一のハウジング33と、この第一のハウジング33に嵌入される取り付け壁335と、第一のハウジング33に螺嵌される第二のハウジング334と、を有している。そして、第一のハウジング33の上面には、置換ガスの流速方向を垂直方向から水平方向に変更させる偏向板340aが設けられている。すなわち、給気バルブ30cは、偏向板340aが第一のハウジング33の上部表面に設けられている構成である。そして、偏向板340aは、その外周部を支持する支持部が設けられており、その端部の一部が閉じられた形状であるため、置換ガスの供給方向を高い精度で制御することができる。
【0082】
偏向板340aの形状及び大きさは、上述した形状に限定されず、置換ガスの流速及び流量、基板収納容器1に収納する基板Wの収納枚数、形状及び大きさ、並びに基板収納容器1の構造等を考慮して、適宜好適な形状及び大きさに決定することができる。
【0083】
給気バルブ30cを構成するその他の部材については、必要に応じて、適宜好適な部材を採用することができる。
【0084】
このような構成を備える給気バルブ30cは、給気バルブ30cの下方に形成されている開口337から置換ガスが導入され(矢印F12参照)、給気バルブ30cの内部にある逆止弁機構を通過し、エアフィルター332を経て、偏向板340aへと導かれる。そして、偏向板340aのガイドに置換ガスが当たることにより置換ガスの供給方向が水平方向に分岐され、底面13の水平方向(図面の左方向及び右方向)に向けて送り出される(矢印F13参照)。そして、置換ガスの供給方向を容器本体10の内部の水平方向に拡散させることができる。これにより、置換ガスが基板W(特に、最下位に収納されている基板W)に当たることを抑制できるため、基板が浮き上がったり、基板が振動したりすることを効果的に防止できる。
【0085】
なお、図9ではエアフィルター332を設けた場合を例示したが、エアフィルター332は、必ずしも設けなくてもよく、必要に応じて、例えば、偏向板340aの下方に配置してもよい。
【0086】
図10は、本実施形態に係る気体供給部として用いる給気バルブの第四の例の断面図である。
【0087】
給気バルブ30dの偏向板340bは、図9の給気バルブ30cの偏向板340aと形状が異なるものである。図10の給気バルブ30dは、第一のハウジング33の上部表面に偏向板340bが設けられている。偏向板340bは、偏向板340bの外周部を支持する支持部が形成されておらず、ガイドの端部が解放されている。偏向板340bは、ガイドの端部が解放されているため、水平方向に対するガイドの角度を容易に調節することができる。
【0088】
このような構成を備える給気バルブ30dは、給気バルブ30dの下方に形成されている開口337から置換ガスが導入され(矢印F14参照)、給気バルブ30dの内部にある逆止弁機構を通過し、エアフィルター332を経て、偏向板340bへと導かれる。そして、偏向板340bのガイドに置換ガスが当たることにより置換ガスの供給方向が水平方向に分岐され、底面13の水平方向(図面の左方向及び右方向)に向けて送り出される(矢印F15参照)。そして、置換ガスの供給方向を容器本体10の内部の水平方向に拡散させることができる。これにより、置換ガスが基板W(特に、最下位に収納されている基板W)に当たることを抑制できるため、基板が浮き上がったり、基板が振動したりすることを効果的に防止できる。
【0089】
なお、図10ではエアフィルター332を設けた場合を例示したが、エアフィルター332は、必ずしも設けなくてもよく、必要に応じて、例えば、偏向板340bの下方に配置してもよい。
【0090】
図11は、本実施形態に係る気体供給部として用いる給気バルブの取り付けの別の一例の断面図である。
【0091】
これまで説明してきた給気バルブ30a,30b,30c,30dは、いずれも底面13、底面13の下部に設けられたブロック132及びボトムプレート131を有する容器本体10において、ブロック132を第一のハウジング33の突起338と第二のハウジング334の突起339とで挟持することによって取り付けられている場合を例示したものであるが、給気バルブ30a,30b,30c,30dの取り付け方法はこれに限定されない。
【0092】
例えば、図11に示すように、容器本体10がボトムプレート131を備えていない場合、ブロック133を第一のハウジング33の突起338及び第二のハウジング334の突起339によって挟持するようにしてもよい。あるいは、図示はしないが、ボトムプレート131又はブロック133をねじ等で固定してもよい。
【0093】
ボトムプレート131及びブロック132の材質は、特に限定されず、適宜好適な材料を選択することができる。例えば、樹脂製であってもよいし、金属製であってもよい。
【0094】
なお、図11ではエアフィルター332を設けた場合を例示したが、エアフィルター332は、必ずしも設けなくてもよく、必要に応じて、例えば、多孔質部材331aの下方に配置してもよい。
【0095】
以上説明してきたように、気体供給部17として上述した給気バルブ30a,30b,30c,30dを備える場合、容器本体10の底面には、気体供給部17から容器本体10の内部に置換ガスを導入する気体導入部(例えば、取り付け部17J)が設けられ、気体供給部17は、ハウジング(例えば、第一のハウジング33、又は第二のハウジング334)と、ハウジングに格納された弁座体333と、弁座体333に接離し、気体の逆流を防止するよう作動する逆止弁体31と、を少なくとも備え、気流制御部は、多孔質部材331,331a,331b又は偏向板340,340a,340bが、逆止弁体31の上方に配置されるように、気体導入部(例えば、取り付け部17J)に接続されていることが好ましい。なお、気流制御部は、気体供給部17とともに気体導入部に接続されていてもよい。また、上述したように、多孔質部材331,331a,331b又は偏向板340,340a,340bは、ハウジング内に格納されていてもよい。
【0096】
そして、本実施形態に係る基板収納容器1は、半導体パッケージ用等に使用されるFOUP等として好適に使用できる。例えば、関連装置を含めたシステム及びSEMI規格(Semiconductor Equipment and Materials International)においては、とりわけ、置換ガスのパージ等に関する改善要望は多いところ、本実施形態によれば、簡便な装置構成でありながら、容器内部への置換ガスの導入による基板Wの浮き上がりや振動に起因する不具合を抑制でき、かつ、搬送装置等との干渉も緩和される。よって、かかる改善要望に応え得るものである。さらに、機械的干渉が少ないため、容器本体10の内部のスペースを有効に活用することができ、基板Wの収納枚数を増やすこともできる。そして、300mmウェーハーから450mmウェーハーへの大口径化の流れにも対応できる技術としても期待できるものである。
【符号の説明】
【0097】
1:基板収納容器、10:容器本体、11:グリップ部、12:トップフランジ、13:底面、13s:内表面、131:ボトムプレート、132,133:ブロック、14:(容器本体の)開口、15:シール部、16:支持部、17:気体供給部、18:気体排出部、17H,18H:取り付け孔、17J,18J:取り付け部、19:パージポートケース、20:蓋体、30,30a,30b,30c,30d:給気バルブ、40:排気バルブ、31,41:逆止弁体、32,42:弾性体、33,43:第一のハウジング、34,44:リブ、35,45,336:Oリング、331,331a,331b:多孔質部材、331s:上表面、332:エアフィルター、333:弁座体、334:第二のハウジング、335:取り付け壁、337:開口、338,339:突起、340,340a,340b:偏向板、W:基板、L:中心線、F1,F2,F3,F4,F5,F6,F7,F8,F9,F10,F11,F12,F13,F14,F15:矢印
図1
図2
図3
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