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  • 特許-感染症対応ブース 図1
  • 特許-感染症対応ブース 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】感染症対応ブース
(51)【国際特許分類】
   A61G 10/00 20060101AFI20240118BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20240118BHJP
   F24F 7/007 20060101ALI20240118BHJP
   F24F 7/003 20210101ALI20240118BHJP
【FI】
A61G10/00 C
F24F7/06 C
F24F7/007 B
F24F7/003
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020020682
(22)【出願日】2020-02-10
(65)【公開番号】P2021126135
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000163660
【氏名又は名称】ケンブリッジフィルターコーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003579
【氏名又は名称】弁理士法人山崎国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【弁理士】
【氏名又は名称】朴 志恩
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 千裕
(72)【発明者】
【氏名】杉山 訓樹
(72)【発明者】
【氏名】木崎原 稔郎
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-229696(JP,A)
【文献】特開2011-234929(JP,A)
【文献】特開2011-083305(JP,A)
【文献】特開2010-252965(JP,A)
【文献】特開2010-101545(JP,A)
【文献】特開2011-031019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 10/00 - A61G 10/04
F24F 7/06
F24F 7/007
F24F 7/003
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の人間と第2の人間とが対面できる閉鎖空間を形成する覆いと;
前記閉鎖空間内で対面する前記第1の人間と前記第2の人間との間に上方より延在する透明な垂れ壁であって、前記対面する第1の人間と第2の人間の顔面より下方に延在可能な垂れ壁と;
前記垂れ壁の下方に、前記閉鎖空間の底より上方に延在する下方仕切りであって、前記垂れ壁との間に間隙を生ずる高さを有する下方仕切りと;
前記垂れ壁より前記第1の人間側の前記閉鎖空間内に給気する第1の給気口と;
前記垂れ壁より前記第2の人間側の前記閉鎖空間内に給気する第2の給気口と;
前記垂れ壁より前記第2の人間側の前記閉鎖空間内から排気する排気口とを備え;
前記第1の給気口からの給気量は、前記第2の給気口からの給気量より大きくでき
前記第1の給気口と前記第2の給気口は、前記覆いの天井に設けられ;
前記下方仕切りは、通気可能な板で形成される;
感染症対応ブース。
【請求項2】
前記排気口からの排気量は、前記第1の給気口からの給気量と前記第2の給気口からの給気量の合計より大きい;
請求項1に記載の感染症対応ブース。
【請求項3】
前記排気口からの排気は、ファンフィルターユニットで行われる;
請求項1に記載の感染症対応ブース。
【請求項4】
前記第1の給気口からの給気と前記第2の給気口からの給気は、ファンフィルターユニットで行われる;
請求項1に記載の感染症対応ブース。
【請求項5】
前記垂れ壁は、下方に延在する長さが可変であり;
前記下方仕切りは、前記高さが可変である;
請求項1に記載の感染症対応ブース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感染症患者からの細菌やウイルスが他の人を汚染するのを防止するためのブースに関する。
【背景技術】
【0002】
突発的な新型のインフルエンザウイルスやコロナウイルスの発生時においては、短期間での感染確認、ふるいわけ(トリアージ)は難しく、また発症者への適正な治療薬投与やワクチンの投与までに感染拡大が起こり、ときには国をまたいで感染者が広まってしまうことがある。これら感染拡大の防止処置の一環として、医療従事者自身が安心して患者を診察、診療の行える、簡易設置型診察・診療空間が必要となる。そこで、通常の部屋に個別診察用空気清浄ブースを設置する方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されたブースでは、医師の背後から患者へ向かって水平方向に流れる空気流を形成し、患者の背後に設置された排気口からブース外に排気する。この空気流により、患者から飛散するウイルスを含む粒子が医師側に流れることを防止する。
【0004】
また、非特許文献1に開示されたブースでは、医師だけがブースに入り、医師と患者の間に透明なカーテンを垂れ下げ、医師の背後から空気を流す。このような構成により、医師の頭部から顔、胸、腹部へと流れる空気流を作り、患者からの細菌・ウイルスを含むしぶき等をカーテンで防ぐとともに、空気流によりしぶき等の医師への接近を防ぐようにしている。
【0005】
しかし、特許文献1に開示されたブースでは、医師と患者が直接対面するため、患者がくしゃみをすると、細菌やウイルスを含むしぶきが医師に掛かってしまう恐れがある。さらに、空気流により患者から飛散するウイルスを含む粒子が医師側に流れることを防止するためには空気流の流速を速めることが必要になり、速い空気流は医師に当たることにより乱され、医師の患者側で渦を生じる。その結果、患者側から医師側への逆流を生じ、医師がウイルス等により汚染される危険がある。
【0006】
非特許文献1に開示されたブースでも、空気流は医師に当たることにより乱され、カーテン下部の医師のひざ元付近で乱流を生じる。その結果、患者側の空気が医師側に流れ、医師がウイルス等により汚染される危険がある。さらに、医師はブース内に居ることで患者のウイルス等からの守られるとしても、医師の背後からの空気流だけで、患者の周囲で層流を保つことは難しく、ブースが設置された環境内で患者からのウイルス等が拡散し、例えば、ブースの近傍で診療待ちをする患者などへのウイルス等による汚染を生じる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2010-17225号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】三和 護「気流で感染防御を実現したクリーンブース」平成21年3月5日、日経メディカル[令和2年2月4日検索]、インターネット<URL: https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/special/pandemic/topics/200903/509695.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、患者からの細菌やウイルスの汚染から医師、検疫官等を守ると共に、患者間での細菌やウイルスの汚染を防止する、簡易設置可能なブースを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る感染症対応ブース10は、例えば図1に示すように、第1の人間1と第2の人間2とが対面できる閉鎖空間60を形成する覆い20と、閉鎖空間60内で対面する前記第1の人間1と前記第2の人間2との間に上方より延在する透明な垂れ壁30であって、対面する第1の人間1と第2の人間2の顔面より下方に延在可能な垂れ壁30と、垂れ壁30の下方に、閉鎖空間60の底28より上方に延在する下方仕切り34であって、垂れ壁30との間に間隙66を生ずる高さを有する下方仕切り34と、垂れ壁30より第1の人間1側の閉鎖空間61内に給気する第1の給気口41と、垂れ壁30より第2の人間2側の閉鎖空間62内に給気する第2の給気口42と、垂れ壁30より第2の人間2側の閉鎖空間62内から排気する排気口50とを備え、第1の給気口41からの給気量は、第2の給気口42からの給気量より大きくできる。
【0011】
このように構成すると、閉鎖空間内を垂れ壁と下方仕切りで2つに仕切り、それぞれの仕切られた空間に第1の人間と第2の人間が入る。第1の人間と第2の人間が対面すると、間の垂れ壁は透明であるので、互いに視認することができる。そして、垂れ壁と下方仕切りの間には間隙が形成されるので、両者の間での接触あるいは物品の引き渡しを行うことができる。また、第1の人間が入る空間には、第2の人間が入る空間より多くの給気量の空気が供給されて第1の人間が入る空間の方が圧が高くなり、かつ、第2の人間が入る空間から排気するので、空気は第1の人間が入る空間から第2の人間が入る空間に流れる。両者の間で乱流を生じやすいひざ元には、下方仕切りが設けられるので、乱流による逆流を防止することができる。したがって、第2の人間が感染症患者であるとしても、その細菌やウイルスが第1の人間が入る空間に入り込まず、第1の人間が細菌やウイルスに汚染されることを防止できる。
【0012】
本発明の第2の態様に係る感染症対応ブース10では、排気口50からの排気量は、第1の給気口41からの給気量と第2の給気口42からの給気量の合計より大きい。このように構成すると、総給気量より排気量の方が大きく、閉鎖空間内が負圧となる。したがって、閉鎖空間内の空気が外部に漏出することを防止でき、第2の人間が感染症患者であるとしても、その細菌やウイルスがブース外に拡散することを防止できる。
【0013】
本発明の第3の態様に係る感染症対応ブース10では、例えば図1に示すように、排気口50からの排気は、ファンフィルターユニット54で行われる。このように構成すると、構成が簡単になり、製作が容易になる。さらに、排気中の細菌やウイルスをフィルターで捕捉し、感染症対応ブース内の細菌やウイルスが、排気を介してブース外に拡散することを防止できる。
【0014】
本発明の第4の態様に係る感染症対応ブース10では、例えば図1に示すように、第1の給気口41からの給気と第2の給気口42からの給気は、ファンフィルターユニット44で行われる。このように構成すると、構成が簡単になり、製作が容易になる。さらに、吸気中の細菌やウイルスをフィルターで捕捉し、感染症対応ブース外の細菌やウイルスが、ブース内に入ることを防止できる。
【0015】
本発明の第5の態様に係る感染症対応ブース10では、例えば図1に示すように、下方仕切り34は、板で形成される。このように構成すると、構成が簡単になり、製作が容易になる。
【0016】
本発明の第6の態様に係る感染症対応ブース10では、例えば図1に示すように、板34は、通気可能な板である。このように構成すると、空気は、第1の人間が入る空間から第2の人間が入る空間に下方仕切りを通じても流れ、第1の人間や第2の人間の足元に空気がよどむことがなくなく、外部に排出される。
【0017】
本発明の第7の態様に係る感染症対応ブース10では、例えば図1に示すように、垂れ壁30は、下方に延在する長さが可変であり、下方仕切り34は、高さが可変である。このように構成すると、人間の大きさに合わせて、間隙の高さを調整することができ、また、必要な高さの間隙を確保することができる。
【0018】
本発明の第8の態様に係る感染症対応ブース12では、例えば図2に示すように、下方仕切り36は、吸気デスクである.このように構成すると、下方仕切りからも排気されるので、第1の人間と第2の人間との間で乱流を生じやすいひざ元での乱流による逆流を防止することができる。また、間隙にデスクが位置することになり、間隙での作業が行いやすくなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の感染症対応ブースによれば、閉鎖空間内を垂れ壁と下方仕切りで2つに仕切られ、仕切られた空間に第1の人間と第2の人間が入る。第1の人間と第2の人間が対面すると、互いに視認することができる。そして、垂れ壁と下方仕切りの間には間隙が形成されるので、両者の間での接触あるいは物品の引き渡しを行うことができる。また、第1の人間が入る空間には、第2の人間が入る空間より多くの給気量が供給されて第1の人間が入る空間の方が圧が高くなり、かつ、第2の人間が入る空間から排気するので、空気は第1の人間が入る空間から第2の人間が入る空間に流れる。両者の間で乱流を生じやすいひざ元には、下方仕切りが設けられるので、乱流による逆流を防止することができる。したがって、第2の人間が感染症患者であるとしても、その細菌やウイルスが第1の人間が入る空間に入り込まず、第1の人間が細菌やウイルスに汚染されることを防止できる簡易設置可能なブースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、感染症対応ブースの一実施の形態を模式的に示す水平方向に見た断面図である。
図2図2は、感染症対応ブースの図1とは別の実施の形態を模式的に示す水平方向に見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において、互いに同一または相当する装置には同一符号を付し、重複した説明は省略する。 図1は、一実施の形態としての感染症対応ブース10を模式的に示す水平方向に見た断面図である。
【0022】
感染症対応ブース10は、第1の人間としての医師、検疫官等の、患者、ウイルス保持者等と接触する必要のある人1(以下、単に「医師1」という)と、第2の人間としての患者、検疫を受ける人等の医師1と接触する人2(以下、単に「患者2」という)が対面できる閉鎖空間を形成する覆い20を有する。
【0023】
覆い20は、例えば、フレームとビニールシートを用いて床上に閉鎖空間60を形成してもよい。ここで、閉鎖空間60とは、外部との空気の出入りが阻害されている空間であって、厳密に気密でなくてもよい。例えば、上記のようにビニールシート等のシートで覆われた空間であってもよい。覆い20は、他の公知の構成でよく、底面を有していても、有していなくても(この場合には、床が底面となる)よい。フレーム、特にアルミフレームとビニールシートで構成すると、軽量で組立てが容易で好ましい。透明なビニールシートを用いることにより、照明がなくても、閉鎖空間60を明るくすることができる。また、覆い20として仮設ハウスを用いてもよく、屋外でも、簡単に閉鎖空間60を形成することができる。覆い20は、典型的には、略直方体形状で、天井24と4つの側壁26を有し、床、すなわち底28、とで閉鎖空間60を形成する。しかし、覆い20は、かまぼこ形状、半球形状、テント形状等、他の形状であってもよい。
【0024】
感染症対応ブース10は、医師1と患者2の間に、上方から延在する垂れ壁30を有する。垂れ壁30は、例えば透明なビニールシートで形成されるが、板材等の他の材料で形成されてもよい。垂れ壁30が透明なので、医師1と患者2は対面することにより、互いに視認できる。ここで、透明とは、医師1と患者2が対面することにより、互いに視認できればよく、多少の色や濁りがあってもよく、また、医師1と患者2が対面するときに互いに視認するための部分だけが透明で、他の部分が不透明であってもよい。
【0025】
垂れ壁30は、覆い20の天井24から垂下され、対面する医師1と患者2の顔面より下方にまで延在する。ここで、対面する医師1と患者2が通常座っている場合には、座ったときの顔面の位置より下方、通常立っている場合には、立っているときの顔面の位置より下方まで延在する。胸の位置辺り、あるいは腹部の位置辺りまで、延在してもよい。垂れ壁30の幅方向(図1の紙面直交方向)は、覆い20の側壁26まで達する長さとして、閉鎖空間60の医師1側の空間61と患者2側の空間62で垂れ壁30の幅方向端部と覆い20との間の空気の流れが生じないようにする。そのために、垂れ壁30の両端が側壁26と固定されてもよいし、レール機構等を用いてスライドしつつも封止されるようにしてもよいし、あるいは、単に接触する若しくはほぼ接触するだけでもよい。
【0026】
垂れ壁30は、下方に延在する長さが可変であることが好ましい。長さを可変にするため構造は、複数枚の板がスライドする構造、端部が折りたたまれた構造等、公知の構造でよい。
【0027】
垂れ壁30の延長上の下方に、底28から下方仕切り34が上方に延在する。下方仕切り34を、医師1と患者2のひざ元辺りまでの高さとして、垂れ壁30と下方仕切り34との間に間隙66を形成する。下方仕切り34は、任意の板で形成されてもよく、透明である必要はない。また、下方仕切り34を多孔板あるいはスリットが形成された板などの通気可能な板で形成してもよい。多孔板あるいはスリットが形成された板としては、均一に孔あるいはスリットが設けられているものでも、不均一で、例えば底付近に多数の孔あるいはスリットが形成されたものでもよい。
【0028】
下方仕切り34は、上方に延在する長さ、すなわち高さ、が可変であることが好ましい。高さを可変にするため構造は、複数枚の板がスライドする構造、端部が折りたたまれた構造等、公知の構造でよい。
【0029】
感染症対応ブース10は、医師1側の空間61に空気を供給する第1の給気口41と、患者2側の空間62に空気を供給する第2の給気口42とを有する。すなわち、覆い20に第1の給気口41と第2の給気口42が形成される。第1の給気口41と第2の給気口42とは、天井24の垂れ壁30を挟んだ位置に設けられるのが好ましいが、これには限られない。第1の給気口41と第2の給気口42とは、実際には1つの穴が、垂れ壁30の位置で区切られていてもよい。
【0030】
第1の給気口41および第2の給気口42からの給気は、ファンフィルターユニット44により行われることが好ましい。ファンフィルターユニット44は、ファン46の下流側にフィルター48を設けたユニットである。特に、第1の給気口41および第2の給気口42にファンフィルターユニット44を直接つなげると、感染症対応ブース10の構造が簡単になり好ましい。この場合には、第1の給気口41および第2の給気口42が、ファンフィルターユニット44の吐出口で形成されてもよい。図1では、1つのファンフィルターユニット44が、第1の給気口41と第2の給気口42につながっているが、第1の給気口41用のファンフィルターユニットと第2の給気口42用のファンフィルターユニットの2つを備えてもよい。また、ファンフィルターユニット44を第1の給気口41、第2の給気口42から離れた場所に設置し、ダクト等で第1の給気口41、第2の給気口42とつないでもよい。なお、ファンフィルターユニット44では、ファン46の上流側にフィルター48を設けてもよい。
【0031】
感染症対応ブース10は、患者2側の空間62から排気する排気口50を有する。すなわち、覆い20に排気口50が形成される。排気口50は、患者2の背後の側壁26の下部に設けられるのが好ましいが、これには限定されない。排気口50からの排気は、ファンフィルターユニット54により行われることが好ましい。ファンフィルターユニット54は、ファン56の下流側にフィルター58を設けたユニットである。特に、排気口50にファンフィルターユニット54を直接つなげると、感染症対応ブース10の構造が簡単になり好ましい。この場合には、排気口50が、ファンフィルターユニット54の吐出口で形成されてもよい。また、ファンフィルターユニット54を排気口50から離れた場所に設置し、ダクト等で排気口50とつないでもよい。なお、ファンフィルターユニット54では、ファン56の上流側にフィルター58を設けてもよい。
【0032】
なお、給気用ファンフィルターユニット44および排気用ファンフィルターユニット54のフィルター48、58は、HEPAフィルターとするのが好ましい、HEPAフィルターとすることにより、外気中の細菌やウイルスが閉鎖空間60内に混入することを防止でき、また、閉鎖空間60内の細菌やウイルスが大気中の飛散することを防止できる。さらに、溶菌酵素固定化HEPAフィルターとすると、フィルターで捕捉した細菌やウイルスを、分解し、死滅させることができるので、好ましい。なお、溶菌酵素固定化HEPAフィルターとは、フィルターの繊維に溶菌酵素を固定化したHEPAフィルターである。なお、フィルター48、58は、対象とする細菌やウイルスを捕捉できる準HEPAフィルターなどでもよい。
【0033】
第1の給気口41からの給気量を第2の給気口42からの給気量より大きくする。供給量を増減するのは、任意の方法でよく、第1の給気口41と第2の給気口42とにつながる2つのファンフィルターユニットの風量を変えても、それぞれの流路面積を変えてもよい。1つのファンフィルターユニット44の吐出口で、第1の給気口41側の面積を大きく、第2の給気口42側の面積を小さく区切ってもよい。第1の給気口41からの給気量を第2の給気口42からの給気量より大きくすることにより、患者2側の空間62より医師1側の空間61の圧が高くなる。
【0034】
排気口50からの排気量は、第1の給気口41と第2の給気口42からの給気量の合計より大きくするのが好ましい。排気口50からの排気量を、第1の給気口41と第2の給気口42からの総給気量より大きくすることで、閉鎖空間60内が陰圧となる。
【0035】
続いて、感染症対応ブース10の作用について説明する。医師1が空間61に、患者2が空間62に入り、対面する。なお、覆い20には、空間61と空間62とに出入り用の扉(不図示)が設置される。対面しても、患者2と医師1との顔面の間には垂れ壁30が存在するので、患者からの細菌・ウイルスを含むしぶき等が、医師1に掛かったり医師1に接近したりすることが防止される。また、垂れ壁30が透明であるので、互いに視認することができる。そして、垂れ壁30と下方仕切り34との間に間隙66が形成されているので、医師1が診察したり診療したりするために、患者2に接触したり、器具を受け渡すことができる。また、間隙66が形成されるので、医師1と患者2との会話も円滑に行われる。そして、垂れ壁30の長さが可変であり、下方仕切り34の高さが可変であると、医師1と患者2毎に間隙66の位置を調整でき、また作業によって間隙66の高さを調整できるので、好ましい。
【0036】
患者2側の空間62より医師1側の空間61の圧が高いので、空間61から空間62への空気流が形成される。すなわち、患者2から細菌やウイルスが飛散したとしても、医師1側へ流れることがない。そして、医師1と患者2とが座ることにより接近する両者の膝の辺りでは、下方仕切り34がないと空気の流れが乱れて乱流を生じやすいが、下方仕切り34が設置されるので、乱流が生じることによる空間62から空間61への空気の流れの逆流が防止される。
【0037】
特に、第1の給気口41と第2の給気口42が天井24の垂れ壁30を挟んで両側に設けられると、垂れ壁30に沿って下降する空気流が形成される。すなわち、患者2の頭上から顔面、胸、腹部、そして足元へと空気が流れる。そのために、患者2の鼻や口から細菌やウイルスを含む空気が吐き出されても、空気流により足元に運ばれる。そのため、医師1を汚染することがない。すなわち、第1の給気口41と第2の給気口42が、天井24の垂れ壁30の両側に設置されないとしても、医師1と患者2の上方に設置されて、下方向きの空気流を形成できることが好ましい。第2の給気口42だけが患者2の上方に設置されて患者2の頭から足元への空気流を形成することでもよい。
【0038】
さらに、下方仕切り34が多孔板あるいはスリットが形成された板などの通気可能な板で形成されると、下方仕切り34の孔を通って空間61から空間62へ空気が流れる。すなわち、患者2の足元の空気は患者2から流れて離れる。したがって、患者2の足元に細菌やウイルスを含む空気が送られても、細菌やウイルスを患者2から離すことができる。
【0039】
排気口50が患者2の後方の側壁26の下部に設置されると、患者2の足元の空気が排気口50に吸い込まれ、よどむことなく、外部に排出されるので好ましい。排気口50は、患者2側の空間62の下部に設置されれば、患者2の足元の空気を排気できるので好ましい。なお、患者2の後方の側壁26に設置されると、医師1側の空間61から患者2側の空間62への平行流を生じることになり、空間62から空間61への逆流を防止する効果も得られるので、さらに好ましい。
【0040】
また、排気口50からの排気量が、第1の給気口41と第2の給気口42からの総給気量より大きく、閉鎖空間60内が陰圧になると、閉鎖空間60から外部に漏出する空気をなくすことができる。すなわち、閉鎖空間60内に細菌やウイルスがあっても、外部に拡散することが防止でき、好ましい。また、閉鎖空間60に人が出入りする際に扉が開放されても、閉鎖空間60内から外部に漏れる空気が少なく、細菌やウイルスの拡散を防止できる。
【0041】
このように、感染症対応ブース10によれば、患者2から細菌やウイルスが飛散しても、医師1を汚染することを防止でき、かつ、外部へ拡散することも防止できる。そして、感染症対応ブース10は構造的にシンプルであり、汎用のファンフィルターユニットを用いることができ、簡易設置可能である。
【0042】
次に、図2を参照して、別の実施の形態としての感染症対応ブース12について説明する。感染症対応ブース12では、板等で形成された下方仕切り34に代えて、下方仕切りとしての吸気デスク36を用いる点で、感染症対応ブース10と異なる。以下では、感染症対応ブース10と異なる点のみを説明し、同じ構成および作用・効果については説明を省略する。
【0043】
吸気デスク36は、吸気流路を提供すると共に、上面が机のように平面となっている。上面には吸気のための小孔が多数形成され、上面から吸引された空気は内部を下がって、底部に連結された吸引ダクト38を介して、ファンフィルターユニット54により排気される。図2では、吸気デスク36で吸引した空気も排気口50から排気するファンフィルターユニット54で排気されるように示されるが、ファンフィルターユニット54とは別の排気用ファンフィルターユニットにより排気されてもよい。
【0044】
吸気デスク36は、垂れ壁30の延長上の下方で底28上に設置される。吸気デスク36を医師1と患者2のひざ元辺りまでの高さとして、垂れ壁30と吸気デスク36との間に間隙66を生ずるとともに、両者の間に作業スペースを提供する。例えば、検査キットを受け渡す際の台として使うことができる。
【0045】
下方仕切りを吸気デスク36として空気を吸引すると、医師1と患者2との間の間隙66の空気を吸引して排気するので、間隙66を通って、患者2側の空間62から医師1側の空間61へ空気が逆流することが確実に防止される。さらに、患者2の鼻や口から細菌やウイルスを含む空気が吐き出されても、患者2の上方に設置された第2の給気口42により患者2の頭から顔面、胸、腹部への空気流が形成されていると、細菌やウイルスを含む空気は顔面付近から下方に流れて吸気デスク36により吸引され排気されるので、細菌やウイルスが飛散することを防止できる。
【0046】
吸気デスク36で吸引された空気に含まれる細菌やウイルスは、ファンフィルターユニット54のフィルター58あるいは別の排気用ファンフィルターユニットのフィルターに捕捉されて、外部に拡散することが防止される。
【0047】
これまでの説明では、医師1と患者2として説明したが、本発明による感染症対応ブースは、検疫官と感染症の疑いのある人とで検査キットを受け渡すときなど、多様な人により多くの場面で用いることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 第1の人間(医師)
2 第2の人間(患者)
10、12 感染症対応ブース
20 覆い
24 天井
26 側壁
28 底
30 垂れ壁
34 下方仕切り(板)
36 下方仕切り(吸気デスク)
38 吸引ダクト
41 第1の給気口
42 第2の給気口
44 (給気用)ファンフィルターユニット
46 ファン
48 フィルター
50 排気口
54 (排気用)ファンフィルターユニット
56 ファン
58 フィルター
60 閉鎖空間
61 医師側の空間
62 患者側の空間
66 間隙
図1
図2