(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】レーザ加工装置及びレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
H01S 5/06 20060101AFI20240118BHJP
B23K 26/0622 20140101ALI20240118BHJP
H01S 3/00 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
H01S5/06
B23K26/0622
H01S3/00 B
(21)【出願番号】P 2020030762
(22)【出願日】2020-02-26
【審査請求日】2022-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】栗田 隆史
(72)【発明者】
【氏名】川合 一希
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-503856(JP,A)
【文献】特開2010-082672(JP,A)
【文献】特開2017-064747(JP,A)
【文献】国際公開第2018/110222(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/105082(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0336208(US,A1)
【文献】特開2015-037808(JP,A)
【文献】特開2006-263754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00 - 3/02
H01S 3/04 - 3/0959
H01S 3/098 - 3/102
H01S 3/105 - 3/131
H01S 3/136 - 3/213
H01S 3/23 - 5/50
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体レーザ素子と、
入力波形データを出力する波形出力部と、
前記入力波形データに応じた時間波形を有する駆動電流を生成し、該駆動電流を前記半導体レーザ素子に供給するドライバ回路と、
前記半導体レーザ素子から出力されたレーザ光を被加工物に照射する光学系と、
を備え、
前記半導体レーザ素子は、一又は複数の光パルスを含む二以上の光パルス群が互いに時間間隔をあけて並ぶ前記レーザ光を出力し、
前記二以上の光パルス群のうち少なくとも二つ
の光パルス群の時間波形は互いに異なり、
前記時間波形には、前記一又は複数の光パルスそれぞれの時間波形、前記一又は複数の光パルスそれぞれの時間幅、及び前記複数の光パルスの時間間隔のうち少なくとも一つが含ま
れ、
前記少なくとも二つの光パルス群のうち一の光パルス群における前記一又は複数の光パルスの時間幅が、前記少なくとも二つの光パルス群のうちの別の光パルス群における前記一又は複数の光パルスの時間幅の10倍以上であり、
前記別の光パルス群における前記一又は複数の光パルスの時間幅は1ナノ秒以下である、レーザ加工装置。
【請求項2】
前記一の光パルス群における前記一又は複数の光パルスそれぞれの時間幅が、1ナノ秒以上1マイクロ秒以下である、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記一の光パルス群と前記別の光パルス群との時間間隔は、前記別の光パルス群における前記複数の光パルスの時間間隔よりも大きい、請求項1または2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記ドライバ回路は、
ディジタルの前記入力波形データをアナログの駆動信号に変換するD/A変換部と、
前記駆動信号を前記駆動電流に変換する電流変換部と、
を有し、
前記D/A変換部は、前記入力波形データの時間波形を分割してなる連続する複数の区間波形データを、時間差を与えながら前記駆動信号に順次変換する、請求項1
~3のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記二以上の光パルス群における前記一又は複数の光パルスそれぞれの時間幅が1マイクロ秒以下である、請求項1
~4のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記二以上の光パルス群同士の時間間隔が200マイクロ秒以下である、請求項1~
5のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記波形出力部は、前記二以上の光パルス群のうち少なくとも一つの前記光パルス群の前記時間波形を前記被加工物の加工途中に変更する、請求項1~
6のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
前記半導体レーザ素子と前記光学系との間の光路上に配置された空間光変調器を更に備え、
前記空間光変調器は、前記二以上の光パルス群に含まれる第1の前記光パルス群に対応する前記レーザ光を第1の照射位置に照射するためのホログラムと、第2の前記光パルス群に対応する前記レーザ光を前記第1の照射位置とは異なる第2の照射位置に照射するためのホログラムとを順次呈示する、請求項1~
7のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項9】
入力波形データに応じた時間波形を有する駆動電流を生成し、前記駆動電流を半導体レーザ素子に供給する電流供給ステップと、
前記半導体レーザ素子から出力されたレーザ光を被加工物に照射する光照射ステップと、
を含み、
前記光照射ステップにおいて、一又は複数の光パルスを含む二以上の光パルス群が互いに時間間隔をあけて並ぶ前記レーザ光を前記半導体レーザ素子が出力し、
前記二以上の光パルス群のうち少なくとも二つ
の光パルス群の時間波形は互いに異なり、
前記時間波形には、前記一又は複数の光パルスそれぞれの時間波形、前記一又は複数の光パルスそれぞれの時間幅、及び前記複数の光パルスの時間間隔のうち少なくとも一つが含ま
れ、
前記少なくとも二つの光パルス群のうち一の光パルス群における前記一又は複数の光パルスの時間幅を、前記少なくとも二つの光パルス群のうちの別の光パルス群における前記一又は複数の光パルスの時間幅の10倍以上とし、
前記別の光パルス群における前記一又は複数の光パルスの時間幅を1ナノ秒以下とする、レーザ加工方法。
【請求項10】
前記一の光パルス群における前記一又は複数の光パルスそれぞれの時間幅を、1ナノ秒以上1マイクロ秒以下とする、請求項9に記載のレーザ加工方法。
【請求項11】
前記一の光パルス群と前記別の光パルス群との時間間隔を、前記別の光パルス群における前記複数の光パルスの時間間隔よりも大きくする、請求項9または10に記載のレーザ加工方法。
【請求項12】
前記電流供給ステップは、
ディジタルの前記入力波形データをアナログの駆動信号に変換するD/A変換ステップと、
前記駆動信号を前記駆動電流に変換する電流変換ステップと、
を含み、
前記D/A変換ステップでは、前記入力波形データの時間波形を分割してなる連続する複数の区間波形データを、時間差を与えながら前記駆動信号に順次変換する、請求項
9~11のいずれか1項に記載のレーザ加工方法。
【請求項13】
前記二以上の光パルス群における前記一又は複数の光パルスそれぞれの時間幅を1マイクロ秒以下とする、請求項
9~12のいずれか1項に記載のレーザ加工方法。
【請求項14】
前記二以上の光パルス群同士の時間間隔を200マイクロ秒以下とする、請求項
9~
13のいずれか1項に記載のレーザ加工方法。
【請求項15】
前記二以上の光パルス群のうち少なくとも一つの前記光パルス群の前記時間波形を前記被加工物の加工途中に変更する、請求項
9~
14のいずれか1項に記載のレーザ加工方法。
【請求項16】
前記光照射ステップにおいて、空間光変調器を介して前記レーザ光を前記被加工物に照射し、前記二以上の光パルス群に含まれる第1の前記光パルス群に対応する前記レーザ光を第1の照射位置に照射するためのホログラムと、第2の前記光パルス群に対応する前記レーザ光を前記第1の照射位置とは異なる第2の照射位置に照射するためのホログラムとを前記空間光変調器に順次呈示する、請求項
9~
15のいずれか1項に記載のレーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ加工装置及びレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レーザ加工方法に関する技術が開示されている。この方法では、10ピコ秒~100ピコ秒のパルス幅をそれぞれ有する少なくとも2つの光パルス(バースト)を組み合わせることにより、材料除去レートを増大させる。時間差を有する2つの光パルスを生成するために、レーザ発振器からのレーザ光の光路をビームスプリッタにより二分岐し、互いに異なる光路長を有する2つの光路を伝搬させた後、ビームコンバイナによってこれらの光路を結合している。
【0003】
特許文献2には、レーザ加工方法及びレーザ加工装置に関する技術が開示されている。この方法及び装置では、パルス幅が互いに異なる2種類の光パルスを被加工物に照射する。その為に、一実施例において、一方の光パルスを出力するレーザ光源と、他方の光パルスを出力する別のレーザ光源とを設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2005-511314号公報
【文献】特開2013-128088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、ナノ秒やピコ秒といったオーダーの時間幅を有する光パルスを用いてレーザ加工を行う技術が研究されている。このようなレーザ加工においては、複数の光パルスを時間差をあけて照射することにより、レーザ加工における種々の効果を得ることができる。例えば、上述した特許文献1には、2つの光パルスを時間差をあけて照射することにより、材料除去レートを増大することが記載されている。加えて、光パルスの時間波形を複数の光パルス間で異ならせることにより、更に付加的な効果を奏することができる場合がある。例えば上述した特許文献2には、時間幅の異なる2つの光パルスを照射することにより、非加工領域の損傷を回避できることが記載されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された方法においては、2つの光パルスの時間差を2つの光路の光路長差により実現しているので、所望の時間間隔に対応する大きさの光路長差が必要となる。例えば、時間差を5ナノ秒とする場合、光路長差は約1.5mとなる。また、時間差を5マイクロ秒とする場合、光路長差は約1500mとなる。したがって、装置規模が大きくなり過ぎるという課題がある。また、このような長い光路をレーザ光が伝搬する間に大きな損失が生じるので、エネルギー効率が低いという課題もある。特許文献2に一実施例として記載された装置及び方法においては、時間幅の異なる複数の光パルスのそれぞれに対応する複数のレーザ光源を必要とするので、光パルスの種類が増すほどレーザ光源の個数が増し、レーザ加工装置の小型化及び低コスト化を妨げる要因となる。
【0007】
本開示は、時間波形が異なる複数の光パルスを被加工物に照射する構成を小型化することが可能なレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態に係るレーザ加工装置は、半導体レーザ素子と、入力波形データを出力する波形出力部と、入力波形データに応じた時間波形を有する駆動電流を生成し、該駆動電流を半導体レーザ素子に供給するドライバ回路と、半導体レーザ素子から出力されたレーザ光を被加工物に照射する光学系と、を備える。半導体レーザ素子は、一又は複数の光パルスを含む二以上の光パルス群が互いに時間間隔をあけて並ぶレーザ光を出力する。二以上の光パルス群のうち少なくとも二つの光パルス群の時間波形は互いに異なる。時間波形には、一又は複数の光パルスそれぞれの時間波形、一又は複数の光パルスそれぞれの時間幅、及び複数の光パルスの時間間隔のうち少なくとも一つが含まれる。
【0009】
一実施形態に係るレーザ加工方法は、入力波形データに応じた時間波形を有する駆動電流を生成し、駆動電流を半導体レーザ素子に供給する電流供給ステップと、半導体レーザ素子から出力されたレーザ光を被加工物に照射する光照射ステップと、を含む。光照射ステップにおいて、一又は複数の光パルスを含む二以上の光パルス群が互いに時間間隔をあけて並ぶレーザ光を半導体レーザ素子が出力する。二以上の光パルス群のうち少なくとも二つの光パルス群の時間波形は互いに異なる。時間波形には、一又は複数の光パルスそれぞれの時間波形、一又は複数の光パルスそれぞれの時間幅、及び複数の光パルスの時間間隔のうち少なくとも一つが含まれる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、時間波形が異なる複数の光パルスを被加工物に照射する構成を小型化することが可能なレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の一実施形態に係るレーザ加工装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【
図2】半導体レーザ素子2、光増幅器3、ドライバ回路4、及び波形出力部6の周辺構造を示すブロック図である。
【
図3】半導体レーザ素子2、光増幅器3、ドライバ回路4、及び波形出力部6の周辺構造の具体例を示すブロック図である。
【
図4】ドライバ回路4の詳細な構成例を示すブロック図である。
【
図5】波形タイミング調整部43の機能を模式的に示す図である。
【
図6】レーザ加工装置1Aの動作を示すフローチャートである。
【
図7】(a)部~(d)部は、光パルス波形を模式的に示す図である。
【
図8】(a)部は、増幅前のレーザ光Laの時間波形を示すグラフである。(b)部は、増幅後のレーザ光Lbの時間波形を示すグラフである。
【
図9】(a)部は、増幅前のレーザ光Laの時間波形を示すグラフである。(b)部は、増幅後のレーザ光Lbの時間波形を示すグラフである。
【
図10】光増幅器3から出力されるレーザ光Lbの時間波形の例を示すグラフである。(a)部は、FWHMが4ナノ秒のガウス波形を示している。(b)部は、FWHMが32ナノ秒のガウス波形を示している。
【
図11】光増幅器3から出力されるレーザ光Lbの時間波形の例を示すグラフである。(a)部は、FWHMが120ナノ秒の矩形波を示している。(b)部は、FWHMが4ナノ秒のランプ波形を示している。
【
図12】一実施形態のレーザ加工装置1Aにおいてレーザ光Lbとして生成された、パルス幅23.7ns(FWHM)のガウシアンパルスPaの時間波形を示すグラフである。
【
図13】(a)部は、SEMにより観察された穴あけ加工後の被加工物Bの表面画像である。(b)部は、SEMにより観察された穴あけ加工後の被加工物Bの裏面画像である。
【
図14】一実施形態のレーザ加工装置1Aにおいてレーザ光Lbとして生成された、複数の超短光パルスPbaを含む光パルス列である光パルス群Pbの時間波形を示すグラフである。
【
図15】(a)部は、SEMにより観察された穴あけ加工後の被加工物Bの表面画像である。(b)部は、SEMにより観察された穴あけ加工後の被加工物Bの裏面画像である。
【
図16】(a)部は、一実施形態のレーザ加工装置1Aにおいてレーザ光Lbとして生成された光パルス群Pc及び光パルスPdの時間波形を示すグラフである。(b)部は、SEMにより観察された穴あけ加工後の被加工物Bの表面画像である。
【
図17】レーザ光Lbの時間波形の実施例を示すグラフである。
【
図18】レーザ光Lbの時間波形の実施例を示すグラフである。(a)部は、複数の超短光パルスPfaを含む光パルス群Pf1と、単一の光パルスPfbを含む光パルス群Pf2とを示す。(b)部は、複数の超短光パルスPgaを含む光パルス群Pg1と、単一の光パルスPgbを含む光パルス群Pg2と、単一の光パルスPgcを含む光パルス群Pg3とを示す。
【
図19】レーザ光Lbの時間波形の実施例を示すグラフであって、単一の光パルスPhaを含む光パルス群Ph1と、単一の光パルスPhbを含む光パルス群Ph2とを示す。
【
図20】(a)部~(c)部は、一実施形態のレーザ加工装置1Aから出力可能な種々の時間波形を概念的に示す図である。
【
図21】(a)部~(c)部は、一実施形態のレーザ加工装置1Aから出力可能な種々の時間波形を概念的に示す図である。
【
図22】(a)部~(c)部は、一実施形態のレーザ加工装置1Aから出力可能な種々の時間波形を概念的に示す図である。
【
図23】(a)部~(c)部は、一実施形態のレーザ加工装置1Aから出力可能な種々の時間波形を概念的に示す図である。
【
図24】(a)部~(c)部は、一実施形態のレーザ加工装置1Aから出力可能な種々の時間波形を概念的に示す図である。
【
図25】複数の加工プロセスにそれぞれ対応する複数の光パルス群Pi,Pj,Pyを組み合わせた例を示すグラフである。
【
図26】一実施形態のレーザ加工装置1Aを用いて、複数の加工プロセスを短時間の間に連続して行う場合の加工プロセスを示す。(a)部は、互いに構成材料が異なる複数の層B1~B3を有する被加工物Bと、被加工物Bに照射されるレーザ光Lbとを示す。(b)部は、レーザ光Lbの時間波形を示す。
【
図27】一実施形態のレーザ加工装置1Aを用いて、複数の加工プロセスを短時間の間に連続して行う場合の加工プロセスを示す。(a)部は、互いに構成材料が異なる複数の層B1~B3を有する被加工物Bと、被加工物Bに照射されるレーザ光Lbとを示す。(b)部は、レーザ光Lbの時間波形を示す。
【
図28】一実施形態のレーザ加工装置1Aを用いて、複数の加工プロセスを短時間の間に連続して行う場合の加工プロセスを示す。(a)部は、互いに構成材料が異なる複数の層B1~B3を有する被加工物Bと、被加工物Bに照射されるレーザ光Lbとを示す。(b)部は、レーザ光Lbの時間波形を示す。
【
図29】一実施形態のレーザ加工装置1Aを用いて、複数の加工プロセスを短時間の間に連続して行う場合の加工プロセスを示す。(a)部は、互いに構成材料が異なる複数の層B1~B3を有する被加工物Bと、被加工物Bに照射されるレーザ光Lbとを示す。(b)部は、レーザ光Lbの時間波形を示す。
【
図30】(a)部は、或る加工プロセスに対応する光パルス群Pi,Py,Pkの組み合わせを示すグラフである。(b)部は、次の加工プロセスに対応する光パルス群Pjを示すグラフである。(c)部は、更に次の加工プロセスに対応する光パルス群Pi,Pi,Pmを示すグラフである。
【
図31】一実施例において照射されたレーザ光Lbの時間波形を示すグラフである。
【
図32】被加工物Bに形成された孔のSEM画像を示す図である。
【
図33】被加工物Bに形成された孔のSEM画像を示す図である。
【
図35】一変形例において被加工物Bに照射される複数の光パルス群の例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
一実施形態に係るレーザ加工装置は、半導体レーザ素子と、入力波形データを出力する波形出力部と、入力波形データに応じた時間波形を有する駆動電流を生成し、該駆動電流を半導体レーザ素子に供給するドライバ回路と、半導体レーザ素子から出力されたレーザ光を被加工物に照射する光学系と、を備える。半導体レーザ素子は、一又は複数の光パルスを含む二以上の光パルス群が互いに時間間隔をあけて並ぶレーザ光を出力する。二以上の光パルス群のうち少なくとも二つの光パルス群の時間波形は互いに異なる。時間波形には、一又は複数の光パルスそれぞれの時間波形、一又は複数の光パルスそれぞれの時間幅、及び複数の光パルスの時間間隔のうち少なくとも一つが含まれる。
【0013】
一実施形態に係るレーザ加工方法は、入力波形データに応じた時間波形を有する駆動電流を生成し、駆動電流を半導体レーザ素子に供給する電流供給ステップと、半導体レーザ素子から出力されたレーザ光を被加工物に照射する光照射ステップと、を含む。光照射ステップにおいて、一又は複数の光パルスを含む二以上の光パルス群が互いに時間間隔をあけて並ぶレーザ光を半導体レーザ素子が出力する。二以上の光パルス群のうち少なくとも二つの光パルス群の時間波形は互いに異なる。時間波形には、一又は複数の光パルスそれぞれの時間波形、一又は複数の光パルスそれぞれの時間幅、及び複数の光パルスの時間間隔のうち少なくとも一つが含まれる。
【0014】
上記のレーザ加工装置及びレーザ加工方法では、波形出力部が入力波形データを出力し、入力波形データに応じた時間波形を有する駆動電流をドライバ回路が半導体レーザ素子に供給する。したがって、任意の時間波形を入力波形データに含めることにより、任意の時間波形を有する光パルスを半導体レーザ素子から出力させることができる。また、時間差を有する複数のパルス群を入力波形データに含めることにより、時間差を有する複数の光パルス群を半導体レーザ素子から出力させることができる。すなわち、これらの装置及び方法によれば、時間波形が異なる複数の光パルス群を時間差をあけて被加工物に照射することができる。加えて、単一の半導体レーザ素子から単一の光路上に複数の光パルス群を出力させるので、特許文献1,2に記載された各方法と比較して、装置構成を小型化することが可能になる。
【0015】
上記のレーザ加工装置において、ドライバ回路は、ディジタルの入力波形データをアナログの駆動信号に変換するD/A変換部と、駆動信号を駆動電流に変換する電流変換部と、を有し、D/A変換部は、入力波形データの時間波形を分割してなる連続する複数の区間波形データを、時間差を与えながら駆動信号に順次変換してもよい。同様に、上記のレーザ加工方法において、電流供給ステップは、ディジタルの入力波形データをアナログの駆動信号に変換するD/A変換ステップと、駆動信号を駆動電流に変換する電流変換ステップと、を含み、D/A変換ステップでは、入力波形データの時間波形を分割してなる連続する複数の区間波形データを、時間差を与えながら駆動信号に順次変換してもよい。これらの装置及び方法によれば、駆動信号をより高速化して光パルスの時間波形の時間分解能を高めることができる。
【0016】
上記のレーザ加工装置及びレーザ加工方法において、各光パルス群における一又は複数の光パルスそれぞれの時間幅が1マイクロ秒以下であってもよい。このように時間幅が短い光パルスを被加工物に照射することにより、被加工領域の周辺への熱的な影響を制御しつつレーザ光の光強度を大きくすることができ、加工精度を高めることができる。
【0017】
上記のレーザ加工装置及びレーザ加工方法において、二以上の光パルス群同士の時間間隔が200マイクロ秒以下であってもよい。この場合、二以上の光パルス群を短時間で被加工物に照射することができ、加工に要する時間を短縮することができる。
【0018】
上記のレーザ加工装置において、波形出力部は、二以上の光パルス群のうち少なくとも一つの光パルス群の時間波形を被加工物の加工途中に変更してもよい。同様に、上記のレーザ加工方法において、二以上の光パルス群のうち少なくとも一つの光パルス群の時間波形を被加工物の加工途中に変更してもよい。上記の装置及び方法では、このように、光パルス群の時間波形を被加工物の加工途中に変更することが容易にできる。したがって、レーザ光に求められる時間波形がそれぞれ異なる複数段階の加工を短時間のうちに連続して行うことができ、加工に要する時間を短縮することができる。
【0019】
上記のレーザ加工装置及びレーザ加工方法において、少なくとも二つの光パルス群のうち一の光パルス群における一又は複数の光パルスのパルス幅が、別の光パルス群における一又は複数の光パルスのパルス幅の10倍以上であってもよい。上記の装置及び方法によれば、例えばこのようにパルス幅が大きく異なる光パルスを短時間のうちに連続して出力することができ、様々な加工条件に適応することができる。
【0020】
上記のレーザ加工装置は、半導体レーザ素子と光学系との間の光路上に配置された空間光変調器を更に備え、空間光変調器は、二以上の光パルス群に含まれる第1の光パルス群に対応するレーザ光を第1の照射位置に照射するためのホログラムと、第2の光パルス群に対応するレーザ光を第1の照射位置とは異なる第2の照射位置に照射するためのホログラムとを順次呈示してもよい。同様に、上記のレーザ加工方法の光照射ステップにおいて、空間光変調器を介してレーザ光を被加工物に照射し、二以上の光パルス群に含まれる第1の光パルス群に対応するレーザ光を第1の照射位置に照射するためのホログラムと、第2の光パルス群に対応するレーザ光を第1の照射位置とは異なる第2の照射位置に照射するためのホログラムとを空間光変調器に順次呈示してもよい。この場合、複数の被加工部位に対するレーザ光の照射を短時間のうちに連続して行うことができ、加工に要する時間を短縮することができる。
【0021】
以上に説明した本開示のレーザ加工装置及びレーザ加工方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0022】
図1は、本開示の一実施形態に係るレーザ加工装置の構成を概略的に示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態のレーザ加工装置1Aは、半導体レーザ素子2と、光増幅器3と、ドライバ回路4と、加工光学系5と、波形出力部6とを備える。波形出力部6は、電子回路によって構成され、ドライバ回路4と電気的に接続されている。波形出力部6は、光増幅器3から出力される光パルスの時間波形を目標波形に近づけるための入力波形データDaを演算して生成し、その入力波形データDaをドライバ回路4に提供する。ドライバ回路4の入力端は、波形出力部6と電気的に接続されており、波形出力部6から入力波形データDaを受け取る。ドライバ回路4は、入力波形データDaに応じた時間波形を有する駆動電流idを生成する。ドライバ回路4の出力端は、半導体レーザ素子2と電気的に接続されており、生成した駆動電流idを半導体レーザ素子2に供給する。なお、駆動電流idには、時間変化がなく大きさ一定のバイアス電流が重畳される場合もある。
【0023】
半導体レーザ素子2は、レーザダイオードであって、ドライバ回路4と電気的に接続されている。ドライバ回路4は、半導体レーザ素子2のカソード及びアノードのいずれかに対して駆動電流idを供給する。半導体レーザ素子2は、駆動電流idを受けてレーザ光Laを発生する。このレーザ光Laは、光増幅器3による増幅前の光であって、入力波形データDaに応じた時間波形を有する。一例では、半導体レーザ素子2は分布帰還型(DFB)レーザダイオードである。半導体レーザ素子2がDFBレーザダイオードであることにより、光増幅器3の利得の波長特性にあわせた最適化が容易にできる。半導体レーザ素子2の出力パワーは例えば数ナノジュールである。
【0024】
光増幅器3の光入力端は、半導体レーザ素子2と光学的に結合されており、半導体レーザ素子2から出力されたレーザ光Laを増幅する。光増幅器3は、レーザ光Laを電気信号に変換せず、光のまま直接増幅する。光増幅器3は、例えば光ファイバ増幅器、固体レーザ増幅器、或いはそれらの組み合わせによって構成され得る。光ファイバ増幅器は、例えばEr、Ybなどの不純物を添加したガラスからなる光ファイバを有し、レーザ光Laとともに或いは先立って励起光が該光ファイバに入力されることによってレーザ光Laを増幅する。また、固体レーザ増幅器は、例えばNdなどの不純物を添加した、ガラス、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)、或いはネオジウム・イットリウム・四酸化バナジウム(YVO4)によって構成され得る。固体レーザ増幅器は、レーザ光Laとともに或いは先立って励起光が入力されることによってレーザ光Laを増幅する。光増幅器3の利得は、例えば3dB~30dBの範囲内である。
【0025】
加工光学系5は、光増幅器3の出力端から延びる光路と、該光路上に設けられた集光光学系とを含んで構成される。光増幅器3から出力された増幅後のレーザ光Lbは、加工光学系5の光路を伝搬して集光光学系に達し、集光光学系により集光されつつ被加工物Bに照射される。
【0026】
図2は、半導体レーザ素子2、光増幅器3、ドライバ回路4、及び波形出力部6の周辺構造を示すブロック図である。なお、図中の波形Aは、半導体レーザ素子2から出力されるレーザ光Laの時間波形を模式的に示している。
図2に示されるように、波形出力部6は、コンピュータ31と、波形調整部32と、比較部33とを有する。コンピュータ31は、CPU及びメモリを有し、メモリに記憶されたプログラムに従って動作する。コンピュータ31のメモリは、本実施形態における記憶部であって、所望(任意)の時間波形、すなわち目標波形を表すデータ(以下、目標波形データという)を予め記憶している。この目標波形データは、レーザ加工装置1Aの動作前に、コンピュータ31のデータ入力端子を通じて、操作者により予めメモリに記憶される。或いは、コンピュータ31が、波形設計部として、目標波形を自ら設計してもよい。すなわち、外部より与えられた光照射条件(加工条件、観察条件)を実現するための目標波形を、コンピュータ31が算出してもよい。算出された目標波形を表す目標波形データは、コンピュータ31のメモリに記憶される。
【0027】
比較部33は、後述する光検出部14と電気的に接続されており、光検出部14から得られた検出信号(光強度信号Sc)に基づいて、レーザ光Lbの時間波形を取得する。また、比較部33は、コンピュータ31と電気的に接続されており、目標波形データDbをコンピュータ31から取得する。比較部33は、レーザ光Lbの時間波形と目標波形とを比較し、その差分を示す差分データDcを波形調整部32に送る。なお、比較部33は、CPU及びメモリを有するコンピュータによって構成されてもよい。その場合、比較部33は、コンピュータ31とは別体であってもよいし、コンピュータ31と共通のコンピュータ内に実現されてもよい。
【0028】
波形調整部32は、コンピュータ31と電気的に接続されており、目標波形データDbをコンピュータ31から取得する。また、波形調整部32は、比較部33と電気的に接続されており、比較部33から出力された差分データDcを取得する。波形調整部32は、これらのデータDb,Dcに基づいて、レーザ光Lbの時間波形が目標波形に近づくように(すなわち差分が小さくなるように)入力波形データDaを生成する。なお、波形調整部32もまた、CPU及びメモリを有するコンピュータによって構成されてもよい。その場合、波形調整部32は、コンピュータ31及び比較部33とは別体であってもよいし、コンピュータ31及び比較部33のうち少なくとも一方と共通のコンピュータ内に実現されてもよい。
【0029】
図2に示されるレーザ加工装置1Aは、光アイソレータ12、光分岐部13及び光検出部14を更に備える。光アイソレータ12の光入力端は、半導体レーザ素子2のレーザ光出力端と光学的に結合されている。また、光アイソレータ12の光出力端は、光増幅器3の光入力端と光学的に結合されている。すなわち、光アイソレータ12は、半導体レーザ素子2と光増幅器3との間の光路上に介在している。光アイソレータ12は、光増幅器3によって増幅された光が半導体レーザ素子2に戻ることを防ぐ。
【0030】
光分岐部13及び光検出部14は、光波形検出部15を構成する。光波形検出部15は、光増幅器3から出力された増幅後のレーザ光Lbの時間波形を検出する。光分岐部13は、光増幅器3の光出力端と光学的に結合されている。光分岐部13は、光増幅器3から出力された増幅後のレーザ光Lbの一部Lb1を反射(若しくは透過)することにより、増幅後のレーザ光Lbの一部Lb1をレーザ光Lbから分岐する。光分岐部13は、例えばガラス板によって構成され得る。レーザ光Lbの一部Lb1の強度P1と残部の強度P2との比(分岐比)P1/P2は、例えば0.005~0.01の範囲内である。光検出部14は、光分岐部13と光学的に結合されており、増幅後のレーザ光Lbの一部Lb1を受ける。なお、レーザ光Lbの残部は、
図1に示された加工光学系5を介して被加工物Bに照射される。
【0031】
光検出部14は、レーザ光Lbの一部Lb1の光強度に応じた電気信号である光強度信号Scを生成し、この光強度信号Scを比較部33に提供する。一例では、光検出部14は、フォトダイオードと、フォトダイオードを流れる光電流を電圧信号に変換する回路とを含んで構成され得る。光検出部14は、生成した電圧信号を光強度信号Scとして出力してもよく、生成した電圧信号をディジタル信号に変換し、該ディジタル信号を光強度信号Scとして出力してもよい。光強度信号Scが電圧信号である場合、比較部33においてディジタル信号に変換される。なお、光検出部14は、フォトダイオードに代えて、光電管(例えばバイプラナ光電管)を含んでもよい。
【0032】
図3は、半導体レーザ素子2、光増幅器3、ドライバ回路4、及び波形出力部6の周辺構造の具体例を示すブロック図である。
図3に示される具体例において、レーザ加工装置1Aは、
図2に示された光アイソレータ12としての光アイソレータ21,23,27,及び29と、光増幅器3としての光ファイバ増幅器22、固体レーザ増幅器28及び30を備えている。このように、本具体例では光増幅器3が多段に構成されている。更に、レーザ加工装置1Aは、バンドパスフィルタ24、光ファイバコネクタ25、及びコリメータレンズ26を備えている。
【0033】
光ファイバ増幅器22の光入力端と半導体レーザ素子2とは、光ファイバF1を介して光学的に結合されている。光ファイバ増幅器22と半導体レーザ素子2との間には、光アイソレータ21が介在している。光アイソレータ21は、光ファイバ増幅器22から半導体レーザ素子2へ光(レーザ光La及び励起光)が戻ることを防ぐ。これにより、半導体レーザ素子2の損傷を防止できる。光ファイバ増幅器22の光出力端とバンドパスフィルタ24とは、光ファイバF2を介して光学的に結合されている。光ファイバ増幅器22とバンドパスフィルタ24との間には、光アイソレータ23が介在している。光アイソレータ23は、バンドパスフィルタ24より後段の光が光ファイバ増幅器22に戻ることを防ぐ。光ファイバ増幅器22は、第1段の光増幅器であって、半導体レーザ素子2から出力されたレーザ光Laを増幅する。光ファイバ増幅器22の利得は、例えば20dB~30dBの範囲内である。光ファイバ増幅器22は、例えばイッテルビウム添加ファイバ(YDF)である。バンドパスフィルタ24は、光ファイバ増幅器22から出力された光に含まれる、蛍光の波長成分を遮断する。バンドパスフィルタ24は、例えば誘電体多層膜によって構成され得る。
【0034】
バンドパスフィルタ24は、光ファイバF3を介して光ファイバコネクタ25と光学的に結合されている。光ファイバコネクタ25は、光ファイバF3を終端する。すなわち、バンドパスフィルタ24を通過した光は、光ファイバF3を伝搬して光ファイバコネクタ25に達した後、空間に出力される。コリメータレンズ26は、空間を介して光ファイバコネクタ25と光学的に結合されており、光ファイバコネクタ25から放射状に出力された光を平行化(コリメート)する。後述する固体レーザ増幅器28及び30によって増幅された光の強度は大きいので、ガラス等の光学材料のレーザによる損傷を回避するため、このように光ファイバコネクタ25より後段においては光ファイバではなく空間中を伝搬させる。なお、
図3では、空間中を伝搬する光を破線で示している。
【0035】
固体レーザ増幅器28は、光アイソレータ27を介してコリメータレンズ26と光学的に結合されている。光アイソレータ27は、固体レーザ増幅器28の光が固体レーザ増幅器28より前段に戻ることを防ぐ。これにより、光ファイバ増幅器22の損傷を防止できる。固体レーザ増幅器28は、第2段の光増幅器であって、光ファイバ増幅器22から出力された増幅後のレーザ光を更に増幅する。固体レーザ増幅器28の利得は、例えば3dB~20dBの範囲内である。
【0036】
固体レーザ増幅器30は、光アイソレータ29を介して固体レーザ増幅器28と光学的に結合されている。すなわち、光ファイバ増幅器22、固体レーザ増幅器28及び30は、互いに直列に結合されている。光アイソレータ29は、固体レーザ増幅器30の光が固体レーザ増幅器30より前段に戻ることを防ぐ。これにより、固体レーザ増幅器28の損傷を防止できる。固体レーザ増幅器30は、第3段の光増幅器であって、固体レーザ増幅器28から出力された増幅後のレーザ光を更に増幅する。固体レーザ増幅器30の利得は、例えば3dB~10dBの範囲内である。固体レーザ増幅器28によって増幅された光は、増幅後のレーザ光Lbとして出力される。
【0037】
図4は、ドライバ回路4の詳細な構成例を示すブロック図である。
図4に示されるように、ドライバ回路4は、コントロール基板41、波形データ格納部42、波形タイミング調整部43、波形信号生成部44、及び電流変換部45を有する。また、コントロール基板41は、CPU41aと、高速DACインターフェース41bとを含んで構成される。このうち、高速DACインターフェース41b、波形データ格納部42、波形タイミング調整部43、及び波形信号生成部44は、D/A変換部46を構成する。D/A変換部46は、電子回路であって、ディジタルの入力波形データDaをアナログの駆動信号Sdに変換する。
【0038】
コントロール基板41は、波形出力部6とのインターフェースを担う回路基板である。CPU41aは、波形出力部6の波形調整部32(
図2を参照)と通信回線を介して電気的に接続され、波形調整部32から入力波形データDaを受け取る。CPU41aは、この入力波形データDaを、適切なタイミングで高速DACインターフェース41bに送信する。高速DACインターフェース41bは、入力波形データDaを波形データ格納部42に一時的に記憶させる。波形データ格納部42は、高速DACインターフェース41bと電気的に接続され、例えば揮発性の記憶素子によって構成される。本実施形態の波形調整部32は、入力波形データDaを、入力波形データDaの時間波形を分割してなる連続する複数の区間波形データとして出力する(詳しくは後述)。これらの区間波形データは、2以上の区間波形データ毎に並列且つ同時に出力される。そして、波形データ格納部42は、この複数の区間波形データを記憶するとともに、要求に応じて複数の区間波形データを出力する。
【0039】
波形タイミング調整部43は、波形データ格納部42と電気的に接続されており、波形データ格納部42から入力波形データDaが出力されるタイミングを調整(制御)する。
図5は、波形タイミング調整部43の機能を模式的に示す図である。
図5に示されるように、波形タイミング調整部43は、波形データ格納部42から読み出した複数の区間波形データDD1~DD4を、適切な時間差を与えながら順次出力する。ここで、適切な時間差とは、例えば各区間波形データの時間幅である。この時間幅は、出力波形の時間分解能を規定し、一実施例では1ナノ秒である。波形信号生成部44は、波形タイミング調整部43から出力された複数の区間波形データDD1~DD4を順次入力し、これらの区間波形データDD1~DD4をアナログ信号(電圧信号)である駆動信号Sdに順次変換する。このとき、区間波形データDD1~DD4の変換タイミングの時間差は、波形タイミング調整部43によって付与された時間差と略一致する。
【0040】
再び
図4を参照する。電流変換部45は、波形タイミング調整部43と電気的に接続されており、駆動信号Sdを駆動電流idに変換する。すなわち電流変換部45は、トランジスタを含むアナログ回路によって構成され、電圧信号である駆動信号Sdを、電流信号である駆動電流idに変換する。このとき生成される駆動電流idの時間波形は、駆動信号Sdの時間波形と略同一である。なお、電流変換部45には、更にバイアス電流制御部11が接続されている。バイアス電流制御部11は、駆動電流idに含まれるバイアス成分の大きさを制御する。半導体レーザ素子2は電流変換部45の電流出力端と電気的に接続されており、電流変換部45から駆動電流idを受けてレーザ光Laを出力する。レーザ光Laの時間波形は、駆動電流idの時間波形と略同一である。
【0041】
図6は、レーザ加工装置1Aの動作を示すフローチャートである。また、
図7の(a)部~(d)部は、光パルス波形を模式的に示す図である。これらの図では、光パルスの時間波形を、連続する複数の単位区間の波高値(光強度)の集合として示している。必要に応じて遅延時間TAが設定され、光パルスの時間波形の始点は基準時間から遅延時間TAだけ遅れる。
図7の(a)部~(d)部において、縦軸は光強度を表し、横軸は時間を表す。
図6及び
図7を参照しつつ、レーザ加工装置1Aの動作及び本実施形態に係るレーザ加工方法について説明する。
【0042】
まず、波形調整部32は、初期の入力波形データDaを設定する(ステップST1)。この初期の入力波形データDaは、目標波形データDbに基づいて設定される。一例では、目標波形データDbがそのまま初期の入力波形データDaとして用いられる。次に、この初期の入力波形データDaに基づいてドライバ回路4が駆動電流idを半導体レーザ素子2に供給し、半導体レーザ素子2がレーザ光Laを出力する(電流供給ステップST2)。
図7の(a)部は、初期の入力波形データDaに基づいて生成されたレーザ光Laの時間波形を模式的に示している。このレーザ光Laは光増幅器3によって増幅される(光増幅ステップST3)。
【0043】
なお、電流供給ステップST2は、D/A変換ステップST21と、電流変換ステップST22とを含む。D/A変換ステップST21では、D/A変換部46が、ディジタルの入力波形データDaをアナログの駆動信号Sdに変換する。このとき、前述したように、入力波形データDaの時間波形を分割してなる連続する複数の区間波形データDD1~DD4(
図5を参照)を、時間差を与えながら駆動信号Sdに順次変換する。電流変換ステップST22では、電流変換部45が駆動信号Sdを駆動電流idに変換する。
【0044】
続いて、光検出部14を通じて、増幅後のレーザ光Lbの時間波形を検出する(光波形検出ステップST4)。
図7の(b)部は、検出された時間波形を模式的に示している。多くの場合、増幅後のレーザ光Lbの時間波形は、増幅前のレーザ光Laの時間波形と異なる。一つの原因としては、光増幅器3における励起状態が時間経過に応じて変化することが挙げられる。すなわち、レーザ光Laの入射直後においては光増幅器3が強く励起されており、高い利得でもってレーザ光Laを増幅する。しかし、レーザ光Laの入射開始から時間が経過すると、次第に光増幅器3の励起強度が低下し、それに伴ってレーザ光Laの増幅利得も低下する。
【0045】
図8及び
図9は、実際に測定された、増幅前のレーザ光La及び増幅後のレーザ光Lbの各時間波形を示すグラフである。
図8の(a)部は、増幅前のレーザ光Laの時間波形(矩形波)を示し、
図8の(b)部は、
図8の(a)部に示された時間波形を有するレーザ光Laを増幅した後のレーザ光Lbの時間波形を示す。また、
図9の(a)部は、増幅前のレーザ光Laの時間波形(ランプ波)を示し、
図9の(b)部は、
図9の(a)部に示された時間波形を有するレーザ光Laを増幅した後のレーザ光Lbの時間波形を示す。なお、縦軸は光強度(任意単位)を表し、横軸は時間(単位:ナノ秒)を表す。これらの図に示されるように、増幅後のレーザ光Lbの時間波形は、増幅前のレーザ光Laの時間波形と大きく異なる。
【0046】
再び
図7を参照する。波形調整ステップST5では、まず、比較部33が、検出されたレーザ光Lbの時間波形と、目標波形データDbに示される目標波形(
図7の(c))とを比較し、その差分(誤差)を出力する(ステップST51)。次に、波形調整部32は、この差分に基づいて入力波形データDaの時間波形を調整する。すなわち、波形調整部32は、この差分がより小さくなるように(すなわち0に近づくように)、新たな入力波形データDaを演算する(ステップST52)。この新たな入力波形データDaに基づいてドライバ回路4が駆動電流idを半導体レーザ素子2に供給し、半導体レーザ素子2がレーザ光Laを出力する(電流供給ステップST2)。
図7の(d)部は、新たな入力波形データDaに基づいて生成されたレーザ光Laの時間波形を模式的に示している。このレーザ光Laは光増幅器3によって増幅される(光増幅ステップST3)。上記のステップST2~ST5を繰り返すことによって、増幅後のレーザ光Lbの時間波形が目標波形に近づく。こうして生成されたレーザ光Lbが、
図1に示された加工光学系5を経て被加工物Bに照射される(光照射ステップST6)。
【0047】
図10及び
図11は、光増幅器3から出力されるレーザ光Lbの時間波形の例を示すグラフである。なお、縦軸は光強度(任意単位)を表し、横軸は時間(単位:ナノ秒)を表す。
図10の(a)部は、半値全幅(Full Width at Half Maximum:FWHM)が4ナノ秒のガウス波形を示している。
図10の(b)部は、FWHMが32ナノ秒のガウス波形を示している。
図11の(a)部は、FWHMが120ナノ秒の矩形波を示している。
図11の(b)部は、FWHMが4ナノ秒のランプ波形を示している。これらのように、本実施形態のレーザ加工装置1Aによれば、任意の様々な時間波形を生成することができる。
【0048】
レーザ光Lbの好適な時間波形について更に検討する。
図12は、本実施形態のレーザ加工装置1Aにおいてレーザ光Lbとして生成された、パルス幅23.7ns(FWHM)のガウシアンパルスPaの時間波形(実測値)を示すグラフである。
図12において、縦軸は規格化強度(任意単位)を表し、横軸は時間(単位:ナノ秒)を表す。このレーザ光Lbを被加工物Bに照射して穴あけ加工を行った。なお、レーザ光Lbの波長を1064nmとし、光パルスPaの繰り返し周波数を300Hzとして3秒間照射し(すなわち光パルスPaの照射回数は900回)、光パルスPaのパルスエネルギーを40μJとし、加工光学系5の集光レンズとして焦点距離40mmの平凸レンズを用いた。また、被加工物Bを厚み50μmのステンレス鋼(SUS304)とし、被加工物Bにおけるレーザ光Lbの集光径を10μmとした。
図13の(a)部は、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy:SEM)により観察された穴あけ加工後の被加工物Bの表面(レーザ照射面)の画像である。
図13の(b)部は、SEMにより観察された穴あけ加工後の被加工物Bの裏面の画像である。
図13を参照すると、被加工物Bに略円形の貫通孔が形成されていることがわかる。被加工物Bの表面における孔の直径を計測したところ、紙面の左右方向の幅dxは19.1μm、紙面の上下方向の幅dyは21.4μmであった。すなわち、レーザ光Lbの集光径の約2倍の大きさの孔が形成された。
【0049】
図14は、本実施形態のレーザ加工装置1Aにおいてレーザ光Lbとして生成された、複数の超短光パルスPbaを含む光パルス列である光パルス群Pbの時間波形(実測値)を示すグラフである。
図14において、縦軸は規格化強度(任意単位)を表し、横軸は時間(単位:ナノ秒)を表す。このレーザ光Lbを被加工物Bに照射して穴あけ加工を行った。なお、この光パルス群Pbを構成する各超短光パルスPbaのパルス幅を70ps(FWHM)とし、パルス同士の時間間隔を2nsとし、超短光パルスPbaの数を10本とした。また、光パルス群Pbの繰り返し周波数を300Hzとして3秒間照射し(すなわち光パルス群Pbの照射回数は900回)、各超短光パルスPbaのパルスエネルギーを40μJとした。レーザ光Lbの波長、加工光学系5の集光レンズ、被加工物Bの材質、及びレーザ光Lbの集光径は上記と同様とした。
図15の(a)部は、SEMにより観察された穴あけ加工後の被加工物Bの表面(レーザ照射面)の画像である。
図15の(b)部は、SEMにより観察された穴あけ加工後の被加工物Bの裏面の画像である。
図15を参照すると、この実施例においても、被加工物Bに略円形の貫通孔が形成されていることがわかる。被加工物Bの表面における孔の直径を計測したところ、紙面の左右方向の幅dxは28.6μm、紙面の上下方向の幅dyは25.4μmであった。すなわち、
図12に示されたガウシアンパルスPaの場合よりも大きな孔が形成された。
【0050】
図12に示されるガウシアンパルスPaのピーク出力は2.15GW/cm
2であった。一方、
図14に示される複数の超短光パルスPbaはガウシアンパルスPaよりもパルス幅が小さいため、そのピーク出力は、ガウシアンパルスPaのピーク出力の約30倍(60GW/cm
2)となった。故に、
図15ではアブレーションがより促進され、加工レートが速くなったことにより孔の径が大きくなったと推測される。
【0051】
図16の(a)部は、本実施形態のレーザ加工装置1Aにおいてレーザ光Lbとして生成された光パルス群Pc及び光パルスPdの時間波形(実測値)を示すグラフである。
図16の(a)部において、縦軸は規格化強度(任意単位)を表し、横軸は時間(単位:ナノ秒)を表す。このレーザ光Lbを被加工物Bに照射して穴あけ加工を行った。なお、光パルス群Pcは、複数の超短光パルスPcaを含み、
図14に示された光パルス群Pbにおいて超短光パルスPbaの本数を半分の5本としたものと同じである。光パルスPdは、パルス幅71nsの単一パルスである。光パルス群Pcと光パルスPdとの時間間隔Δtは260.1nsである。レーザ光Lbの波長、パルスエネルギー、加工光学系5の集光レンズ、被加工物Bの材質、及びレーザ光Lbの集光径は上記と同様とした。
図16の(b)部は、SEMにより観察された穴あけ加工後の被加工物Bの表面(レーザ照射面)の画像である。なお、この実施例では、孔は被加工物Bの裏面まで貫通しなかった。
図16の(b)部を参照すると、被加工物Bの表面に略円形の小さな凹部が形成されていることがわかる。被加工物Bの表面における凹部の直径を計測したところ、紙面の左右方向の幅dxは2.5μm、紙面の上下方向の幅dyは2.4μmであった。すなわち、レーザ光Lbの集光径よりも直径が格段に小さい凹部が形成された。
【0052】
このような、レーザ光Lbの集光径よりも格段に小さな直径を有する凹部は、ピコ秒オーダーの時間幅を有する複数の超短光パルスPcaを含む光パルス群Pcによる加工と、ナノ秒オーダーの時間幅を有する光パルスPdによる加工とが複合的になされた結果として得られたものと考えられる。より詳細には、高いピーク出力を有する光パルス群Pcにより孔加工が進む一方で、低いピーク出力を有する光パルスPdを通じた長時間のエネルギー照射による熱的な加工が進むことにより、被加工物B(SUS304)が適度に溶融し、小さな直径を有する凹部が形成されたものと推測される。
【0053】
図16に示された実施例は、一又は複数の光パルスをそれぞれ含む二以上の光パルス群を互いに時間間隔Δtをあけて被加工物Bに照射し、且つ、二以上の光パルス群のうち少なくとも二つの光パルス群の時間波形を互いに異ならせることにより、従来は困難とされていた様々な加工を可能にし得ることを示唆している。そして、このような照射態様は、一又は複数のパルスを含む二以上のパルス群が互いに時間間隔Δtをあけて並び、且つ、二以上のパルス群のうち少なくとも二つのパルス群の時間波形が互いに異なる駆動電流idを、電流供給ステップST2においてドライバ回路4から半導体レーザ素子2に提供することにより実現される。なお、ここでいう時間波形とは、各パルス群における一又は複数のパルスそれぞれの時間波形、各パルス群における一又は複数のパルスそれぞれの時間幅、及び各パルス群における複数のパルスの時間間隔のうち少なくとも一つを含む概念である。時間間隔Δtは、例えば200マイクロ秒以下であり、より好適には1マイクロ秒以下である。
【0054】
図17は、そのような照射態様のレーザ光Lbの時間波形の別の実施例を示すグラフ(実測値)である。
図17において、縦軸は規格化強度(任意単位)を表し、横軸は時間(単位:ナノ秒)を表す。この実施例では、単一の光パルスPeaを含む光パルス群Pe1と、単一の光パルスPebを含む光パルス群Pe2とを光増幅器3から出力している。光パルスPea,Pebは共にガウシアンパルスであり、時間幅(FWHM)はそれぞれ62ps及び15nsである。光パルス群Pe1と光パルス群Pe2との時間間隔Δtは25.8nsである。本実施形態のレーザ加工装置1Aによれば、このように一の光パルス群Pe2に含まれる光パルスPebのパルス幅を、別の光パルス群Pe1に含まれる光パルスPeaのパルス幅の10倍以上とすることも可能である。この場合、光パルス群Pe1に対応するパルス群と、光パルス群Pe2に対応するパルス群とが時間間隔Δtをあけて並ぶ駆動電流idを、電流供給ステップST2においてドライバ回路4から半導体レーザ素子2に提供するとよい。
【0055】
図18及び
図19は、更に別の実施例を示すグラフ(実測値)である。
図18の(a)部は、複数の超短光パルスPfaを含む光パルス群Pf1と、単一の光パルスPfbを含む光パルス群Pf2とを示す。超短光パルスPfa及び光パルスPfbは共にガウシアンパルスであり、時間幅(FWHM)はそれぞれ62ps及び15nsであり、複数の超短光パルスPfaの時間間隔は10nsである。光パルス群Pf1と光パルス群Pf2との時間間隔Δtは37.4nsである。また、
図18の(b)部は、複数の超短光パルスPgaを含む光パルス群Pg1と、単一の光パルスPgbを含む光パルス群Pg2と、単一の光パルスPgcを含む光パルス群Pg3とを示す。超短光パルスPga及び光パルスPgbは共にガウシアンパルスであり、光パルスPgcの時間波形は三角波である。超短光パルスPga及び光パルスPgbの時間幅(FWHM)はそれぞれ62ps及び15nsであり、光パルスPgcの時間幅は36nsである。複数の超短光パルスPgaの時間間隔は、前半が5ナノ秒、後半が10ナノ秒である。光パルス群Pg1と光パルス群Pg2との時間間隔Δt1は58.2nsであり、光パルス群Pg2と光パルス群Pg3との時間間隔Δt2は49.9nsである。また、
図19は、単一の光パルスPhaを含む光パルス群Ph1と、単一の光パルスPhbを含む光パルス群Ph2とを示す。光パルスPha,Phbは共にガウシアンパルスであり、時間幅(FWHM)はそれぞれ62ps及び12nsである。光パルス群Ph1と光パルス群Ph2との時間間隔Δtは40.9nsである。なお、
図18及び
図19に示された各波形は、各光パルス群Pf1,Pf2(Pg1~Pg3またはPh1,Ph2)に対応するパルス群が時間間隔Δt(またはΔt1,Δt2)をあけて並ぶ駆動電流idを、電流供給ステップST2においてドライバ回路4から半導体レーザ素子2に提供するとよい。
【0056】
図20~
図24の(a)部~(c)部は、本実施形態のレーザ加工装置1Aから出力可能な種々の時間波形を概念的に示す図である。これらの図において、縦軸は光強度を表し、横軸は時間を表す。
図20の(a)部及び(b)部は、複数の超短光パルスを含む光パルス列である光パルス群Piと、単一のガウシアンパルスを含む光パルス群Pjとを組み合わせた例を示す。
図20の(a)部は光パルス群Piの後に光パルス群Pjが照射される例を示し、(b)部は光パルス群Pjの後に光パルス群Piが照射される例を示す。なお、光パルス群Piに含まれる超短光パルスの本数は任意であって、図示例では、超短光パルスの本数は3である。また、光パルス群Piに含まれる各超短光パルスのピーク強度は、互いに等しくてもよく、少なくとも1つが他と異なってもよい。また、
図20の(a)部及び(b)部と同様に、以下に説明する各例においても、光パルス群の順序は適宜入れ替わってよい。
【0057】
図20の(c)部は、光強度が単調に増加する三角波状の時間波形を有する単一の光パルスを含む光パルス群Pkと、単一のガウシアンパルスを含む光パルス群Pjとを組み合わせた例を示す。
図21の(a)部は、光パルス群Piと、単一の超短光パルスを含む光パルス群Pmと、光パルス群Pkとを組み合わせた例を示す。図示例では、光パルス群Piを構成する超短光パルスの本数は2であり、各超短光パルスのピーク強度は互いに等しい。
図21の(b)部は、複数の超短光パルスを含む光パルス列であって各超短光パルスのピーク強度が単調に増加する光パルス群Pnと、光強度が階段状に増加する単一の光パルスを含む光パルス群Ppとを組み合わせた例を示す。光パルス群Pnに含まれる超短光パルスの本数は任意であって、図示例では、超短光パルスの本数は5である。また、光パルス群Ppを構成する光パルスの段数は任意であって、図示例では、光パルスの段数は2である。
図21の(c)部は、複数の超短光パルスを含む光パルス列であって各超短光パルスのピーク強度が単調に減少する光パルス群Pqと、光強度が階段状に減少する単一の光パルスを含む光パルス群Prとを組み合わせた例を示す。光パルス群Pqに含まれる超短光パルスの本数は任意であって、図示例では、超短光パルスの本数は5である。また、光パルス群Prを構成する光パルスの段数は任意であって、図示例では、光パルスの段数は4である。
【0058】
図22の(a)部は、光強度が一定である平坦な区間を含む時間波形を有する単一の光パルスを含む光パルス群Psと、2つの光パルス群Pmとを組み合わせた例を示す。
図22の(b)部は、光パルス群Pkと、複数の光パルスを含む光パルス列であって光強度が単調に増加する三角波状の時間波形を各光パルスが有する光パルス群Ptとを組み合わせた例を示す。光パルス群Ptに含まれる三角波状の光パルスの本数は任意であって、図示例では、光パルスの本数は4である。また、光パルス群Ptに含まれる各光パルスのピーク強度は、互いに等しくてもよく、少なくとも1つが他と異なってもよい。
図22の(c)部は、ガウシアンパルスのピーク強度が互いに異なる2つの光パルス群Pjと、光パルス群Piとを組み合わせた例を示す。図示例では、最初の光パルス群Pjのガウシアンパルスのピーク強度が、2番目の光パルス群Pjのガウシアンパルスのピーク強度よりも大きい。また、光パルス群Piを構成する超短光パルスの本数は2であり、各超短光パルスのピーク強度は互いに等しい。
【0059】
図23の(a)部は、複数の超短光パルスを含む光パルス列であって、各超短光パルスのピーク強度が単調に増加したのち単調に減少する光パルス群Puと、光パルス群Pjとを組み合わせた例を示す。光パルス群Puに含まれる超短光パルスの本数は任意であって、図示例では、光パルスの本数は11である。
図23の(b)部は、複数の超短光パルスを含む光パルス列であって、各超短光パルスのピーク強度が単調に減少したのち単調に増加する光パルス群Pvを示す。光パルス群Pvに含まれる超短光パルスの本数は任意であって、図示例では、光パルスの本数は10である。
図23の(c)部は、ゼロより大きい光強度から開始して光強度が単調に増加する時間波形を有する単一の光パルスを含む光パルス群Pwと、光パルス群Piとを組み合わせた例を示す。図示例では、光パルス群Piを構成する超短光パルスの本数は3であり、各超短光パルスのピーク強度は互いに等しい。
【0060】
図24の(a)部は、光強度が単調に増加する三角波状の時間波形を有する単一の光パルスを含む光パルス群Pxと、光パルス群Piとを組み合わせた例を示す。図示例では、光パルス群Piを構成する超短光パルスの本数は6であり、各超短光パルスのピーク強度は互いに等しい。
図24の(b)部は、光強度が一定である平坦な区間を含む時間波形を有する単一の光パルスを含む光パルス群Pyと、光パルス群Piと、光強度が単調に減少する三角波状の時間波形を有する単一の光パルスを含む光パルス群Pzとを組み合わせた例を示す。図示例では、光パルス群Piを構成する超短光パルスの本数は4であり、各超短光パルスのピーク強度は互いに等しい。
図24の(c)部は、複数の光パルス群Pjを等間隔で組み合わせた例を示す。各光パルス群Pjのガウシアンパルスのピーク強度は、互いに等しくてもよく、少なくとも1つが他と異なってもよい。
【0061】
図25は、複数の加工プロセスにそれぞれ対応する複数の光パルス群Pi,Pj,Pyを組み合わせた例を示すグラフである。
図25において、縦軸は光強度を表し、横軸は時間を表す。
図25に示されるように、或る加工プロセスに対応する光パルス群Piをまず照射し、その時間Δt3後に別の加工プロセスに対応する光パルス群Pjを照射し、その時間Δt4後に更に別の加工プロセスに対応する光パルス群Pyを照射する。この場合、従来は別個のレーザ加工装置を用いて行っていたこれらの加工プロセスを、短時間の間に連続して行うことが可能になる。光パルス群Piに含まれる各超短光パルスのパルス幅(FWHM)は、例えば1ピコ秒以上1ナノ秒以下である。光パルス群Pjに含まれるガウシアンパルスのパルス幅(FWHM)は、例えば1ナノ秒以上1マイクロ秒以下である。光パルス群Pyを構成する光パルスの平坦区間の時間幅は、例えば1マイクロ秒以上1ミリ秒以下である。時間間隔Δt3,Δt4は、例えば1ミリ秒以下であり、より好適には200マイクロ秒以下である。
【0062】
図26~
図29は、本実施形態のレーザ加工装置1Aを用いて、複数の加工プロセスを短時間の間に連続して行う場合の例を示す。
図26~
図29の各(a)部には、互いに構成材料が異なる複数(図では3つ)の層B1~B3を有する被加工物Bと、被加工物Bに照射されるレーザ光Lbとが示されている。
図26~
図29の各(b)部には、各加工プロセスにおけるレーザ光Lbの時間波形が示されている。この例では、まず
図26の(b)部に示される光パルス群Pyを最上層B1に照射することにより、被加工面のクリーニングを行う。光パルス群Pyを構成する光パルスにおいて、光強度が一定である平坦な区間の時間幅は例えば1ミリ秒である。次に、
図27の(b)部に示される光パルス群Piを最上層B1に照射することにより、
図27の(a)部に示されるように、最上層B1に孔B1aを形成する。光パルス群Piを構成する各光パルスの時間幅は例えば60ピコ秒である。
【0063】
続いて、
図28の(b)部に示される光パルス群Ppを層B2に照射することにより、
図28の(a)部に示されるように、層B2を部分的に改質して改質領域B2aを形成する。光パルス群Ppを構成する光パルスの時間幅は例えば30ナノ秒である。続いて、
図29の(b)部に示される光パルス群Piを層B2に照射し、その後に光パルス群Pjを層B3に照射することにより、
図29の(a)部に示されるように、層B2に孔B2b、層B3に孔B3aをそれぞれ形成する。光パルス群Piを構成する各光パルスの時間幅は例えば60ピコ秒であり、光パルス群Pjを構成するガウシアンパルスのFWHMは例えば30ナノ秒である。こうして、異種材料が積層されて成る被加工物Bにおいて短時間の間に貫通孔を形成することができる。
【0064】
なお、複数の加工プロセスに対応する複数の光パルス群の組み合わせは、次のような態様であってもよい。
図30の(a)部は、或る加工プロセスに対応する光パルス群Pi,Py,Pkの組み合わせを示すグラフである。
図30の(b)部は、次の加工プロセスに対応する光パルス群Pjを示すグラフである。
図30の(c)部は、更に次の加工プロセスに対応する光パルス群Pi,Pi,Pmを示すグラフである。この例のように、加工プロセス毎に複数の光パルス群を被加工物Bに照射してもよい。
【0065】
ここで、複数の加工プロセスのそれぞれに対応する複数の光パルス群を被加工物Bに照射した実施例について説明する。
図31は、この実施例において照射されたレーザ光Lbの時間波形を示すグラフである。
図31に示されるように、この実施例では、レーザ光Lbを、孔開け加工(前加工)に適した時間波形を有する複数の光パルス群Piと、その後に、バリ取り(後加工)に適した時間波形を有する複数の光パルス群Pjとを含むものとした。光パルス群Piの個数を300個とし、光パルス群Piに含まれる複数の光パルスの個数を10個とし、各光パルスのエネルギーを2μJとし、各光パルスの時間幅(FWDM)を80psとし、パルス同士の時間間隔を2nsとした。また、光パルス群Pjの個数を300個とし、光パルス群Pjを構成するガウシアンパルスのエネルギーを40μJとし、ガウシアンパルスの時間幅(FWDM)を137nsとした。また、光パルス群Piと光パルス群Pjとの時間間隔Δt5を、光パルス群Piの加工後に被加工物Bが定常状態となる時間として1sとし、光パルス群Pi同士の時間間隔を3.3msとし、光パルス群Pj同士の時間間隔を3.3msとした。
【0066】
図32及び
図33は、被加工物Bに形成された孔のSEM画像を示す図である。
図32は、光パルス群Piを照射した後且つ光パルス群Pjを照射する前における、被加工物Bの(a)表面(レーザ照射面)及び(b)裏面を示す。また、
図33は、光パルス群Pjを照射した後における、被加工物Bの(a)表面及び(b)裏面を示す。
図32の(a)部と
図33の(a)部とを比較すると、光パルス群Piの照射後に生じていた孔周辺のバリが、光パルス群Pjの照射により溶融して滑らかになったことがわかる。また、
図32の(b)部と
図33の(b)部とを比較すると、レーザ照射面とは反対側の孔径が、光パルス群Pjの照射による溶融によって小さくなったことがわかる。なお、被加工物Bの裏面における孔の直径を計測したところ、光パルス群Pjを照射する前(
図32の(b)部)では、紙面の左右方向の幅dxは8.3μm、紙面の上下方向の幅dyは8.1μm、平均幅は8.2μmであったのに対し、光パルス群Pjを照射した後(
図33の(b)部)では、紙面の左右方向の幅dxは2.9μm、紙面の上下方向の幅dyは2.7μm、平均幅は2.8μmであった。
【0067】
以上に説明した本実施形態のレーザ加工装置1A及びレーザ加工方法によって得られる効果について説明する。本実施形態のレーザ加工装置1A及びレーザ加工方法では、波形出力部6が入力波形データDaを出力し、入力波形データDaに応じた時間波形を有する駆動電流idをドライバ回路4が半導体レーザ素子2に供給する。したがって、任意の時間波形を入力波形データDaに含めることにより、任意の時間波形を有する光パルスを半導体レーザ素子2から出力させることができる。また、時間差を有する複数のパルス群を入力波形データDaに含めることにより、時間差を有する複数の光パルス群を半導体レーザ素子2から出力させることができる。すなわち、本実施形態によれば、時間波形が異なる複数の光パルス群を時間差をあけて被加工物Bに照射することができる。加えて、単一の半導体レーザ素子2から単一の光路上に複数の光パルス群を出力させるので、特許文献1,2に記載された各方法と比較して、装置構成を小型化することが可能になる。
【0068】
また、時間波形が異なる複数の光パルス群を短時間の間に(連続的に)被加工物Bに照射することにより、複数の光パルス群が被加工物Bに対して複合的に作用し、例えば
図16の(b)部に示されるような照射径未満の直径を有する凹部の形成といった、従来は困難とされていた様々な加工形状及び加工品質を可能にできる。
【0069】
また、従来のように、加工プロセスごとに適切な時間波形を有する光源を用意して各加工プロセスを実施すると、光源を入れ替えるための作業が必要となり、また光源を入れ替えたのちに光軸のズレを修正するための作業が更に必要になるなど、加工処理に要する時間が長くなる。これに対し、本実施形態によれば、例えば
図26~
図29及び
図31~
図33に示したように、複数の加工プロセスのそれぞれに適した時間波形を有する複数の光パルス群を単一の半導体レーザ素子2から短時間の間に(連続して)発生させることができ、加工処理に要する時間を大幅に短縮することができる。
【0070】
本実施形態のように、ドライバ回路4(電流供給ステップST2)は、ディジタルの入力波形データDaをアナログの駆動信号Sdに変換するD/A変換部46(D/A変換ステップST21)と、駆動信号Sdを駆動電流idに変換する電流変換部45(電流変換ステップST22)と、を有してもよい。そして、D/A変換部46(D/A変換ステップST21)は、入力波形データDaの時間波形を分割してなる連続する複数の区間波形データDD1~DD4を、時間差を与えながら駆動信号Sdに順次変換してもよい。これにより、駆動信号Sdをより高速化して光パルスの時間波形の時間分解能を高めることができる。
【0071】
本実施形態のように、各光パルス群における一又は複数のパルスそれぞれの時間幅は1マイクロ秒以下であってもよい。このように時間幅が短い光パルスを被加工物Bに照射することにより、被加工領域の周辺への熱的な影響を制御しつつレーザ光Lbの光強度を大きくすることができ、加工精度を高めることができる。
【0072】
本実施形態のように、光パルス群同士の時間間隔が200マイクロ秒以下であってもよい。この場合、二以上の光パルス群を含むレーザ光Lbを短時間で被加工物Bに照射することができ、加工に要する時間を短縮することができる。
【0073】
本実施形態のように、波形出力部6は(電流供給ステップST2において)、レーザ光Lbにおける二以上の光パルス群のうち少なくとも一つのパルス群の時間波形を被加工物Bの加工途中に変更してもよい。本実施形態では、このように、パルス群の時間波形を被加工物Bの加工途中に変更することが容易にできる。したがって、レーザ光に求められる時間波形がそれぞれ異なる複数段階の加工プロセスを短時間のうちに連続して行うことができ、加工に要する時間を短縮することができる。
【0074】
本実施形態のように、一の光パルス群における一又は複数のパルスのパルス幅が、別の光パルス群における一又は複数のパルスのパルス幅の10倍以上であってもよい。本実施形態によれば、例えばこのようにパルス幅が大きく異なる光パルスを短時間のうちに連続して出力することができ、様々な加工条件に適応することができる。
(変形例)
【0075】
図34は、上記実施形態の一変形例の構成を示すブロック図である。
図34に示されるように、本変形例のレーザ加工装置1Bは、上記実施形態のレーザ加工装置1Aの構成に加えて、空間光変調器7及び駆動部8を更に備える。空間光変調器7は、二次元状に配列された複数の画素を有し、各画素において入射光の位相を個別に変調する。空間光変調器7は、透過型及び反射型のいずれであってもよい。一例では、空間光変調器7は液晶型のLCOS-SLM(Liquid Crystal on Silicon - Spatial Light Modulator)である。空間光変調器7は、半導体レーザ素子2と加工光学系5との間の光路上(図示例では、光増幅器3と加工光学系5との間の光路上)に配置されている。空間光変調器7は、光増幅器3から出力されたレーザ光Lbの位相を空間的に変調し、変調後のレーザ光Lcを加工光学系5に出力する。このレーザ光Lcは、加工光学系5を介して被加工物Bに照射される。すなわち、
図6に示された光照射ステップST6において、レーザ光Lbが空間光変調器7を介して被加工物Bに照射される。駆動部8は、空間光変調器7を駆動するための電圧信号Svを空間光変調器7の各画素に印加するための回路である。各画素の電圧信号Svの大きさは、波形出力部6において生成される計算機生成ホログラム(CGH:Computer Generated Hologram)に基づいて決定される。
【0076】
図35は、本変形例において被加工物Bに照射される複数の光パルス群の例である。例えば、光パルス群Py1を被加工物Bに照射し、時間Δt6が経過した後、光パルス群Py2を被加工物Bに照射し、更に、時間Δt7が経過した後、光パルス群Py3を被加工物Bに照射する。このような照射態様は、ドライバ回路4からの駆動電流idに、光パルス群Py1,Py2,Py3に対応するパルス群を含めることによって実現される。
【0077】
ここで、本変形例では、各光パルス群Py1,Py2,Py3を照射する被加工物B上の位置を、光パルス群Py1,Py2,Py3毎に異ならせるか、或いは、少なくとも1つの光パルス群Py1,Py2,又はPy3の照射位置を他の光パルス群の照射位置と異ならせるためのCGHを空間光変調器7が呈示する。言い換えると、空間光変調器7は、第1の光パルス群Py1(又はPy2)を第1の照射位置に照射するためのCGHと、第2の光パルス群Py2(又はPy3)を第1の照射位置とは異なる第2の照射位置に照射するためのCGHとを順次呈示する。なお、上述した時間Δt6,Δt7は、空間光変調器7がCGHを変更するために必要な時間よりも大きい。
【0078】
本変形例によれば、少なくとも二箇所の被加工部位に対して異なる時間波形の光パルス群を照射することができ、且つ、これらの光パルス群の照射を短時間のうちに連続して行うことができる。したがって、従来のレーザ加工装置と比較して、加工に要する時間を格段に短縮することができる。
【0079】
本発明によるレーザ加工装置及びレーザ加工方法は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では目標波形データを波形出力部6において記憶しているが、目標波形データはレーザ加工装置1Aの外部から入力されてもよい。また、必要に応じて光増幅器3及び/又は光アイソレータ12を省いてもよい。また、上記実施形態では波形出力部6が波形調整部32及び比較部33を有し、レーザ光Lbの時間波形をフィードバックして入力波形データDaを生成しているが、このようなフィードバックのための構成を設けず、コンピュータ31からの目標波形データDbをそのまま用いてレーザ光Lbを生成してもよい。
【符号の説明】
【0080】
1A,1B…レーザ加工装置、2…半導体レーザ素子、3…光増幅器、4…ドライバ回路、5…加工光学系、6…波形出力部、7…空間光変調器、8…駆動部、11…バイアス電流制御部、12,21,23,27,29…光アイソレータ、13…光分岐部、14…光検出部、15…光波形検出部、22…光ファイバ増幅器、24…バンドパスフィルタ、25…光ファイバコネクタ、26…コリメータレンズ、28,30…固体レーザ増幅器、31…コンピュータ、32…波形調整部、33…比較部、41…コントロール基板、41a…CPU、41b…高速DACインターフェース、42…波形データ格納部、43…波形タイミング調整部、44…波形信号生成部、45…電流変換部、46…D/A変換部、B…被加工物、B1~B3…層、B1a,B2b,B3a…孔、B2a…改質領域、Da…入力波形データ、Db…目標波形データ、Dc…差分データ、DD1~DD4…区間波形データ、F1~F3…光ファイバ、id…駆動電流、La,Lb,Lc…レーザ光、Pa…光パルス(ガウシアンパルス)、Pb,Pc,Pe1,Pe2,Pf1,Pf2,Pg1,Pg2,Pg3,Ph1,Ph2,Pi~Pz,Py1,Py2,Py3…光パルス群、Pba,Pca,Pfa,Pga…超短光パルス、Pd,Pea,Peb,Pfb,Pgb,Pgc,Pha,Phb…光パルス、Sc…光強度信号、Sd…駆動信号、ST2…電流供給ステップ、ST5…波形調整ステップ、ST21…D/A変換ステップ、ST22…電流変換ステップ、Sv…電圧信号、TA…遅延時間、Δt,Δt1,Δt2,Δt5…時間間隔。