(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
H05B 45/50 20220101AFI20240118BHJP
H05B 47/10 20200101ALI20240118BHJP
B60Q 1/38 20060101ALI20240118BHJP
B60Q 1/34 20060101ALI20240118BHJP
B60Q 11/00 20060101ALI20240118BHJP
F21S 43/14 20180101ALI20240118BHJP
F21W 103/20 20180101ALN20240118BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240118BHJP
【FI】
H05B45/50
H05B47/10
B60Q1/38 B
B60Q1/34 A
B60Q11/00 605C
B60Q11/00 610D
B60Q11/00 625
F21S43/14
F21W103:20
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2020034643
(22)【出願日】2020-03-02
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 昌昭
(72)【発明者】
【氏名】ヴィシュワジット ババセヘブ ブガディー
【審査官】坂口 達紀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0085075(US,A1)
【文献】国際公開第2017/208787(WO,A1)
【文献】特開2015-020460(JP,A)
【文献】特開2011-000930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 39/00-39/10
45/00-45/58
47/00-47/29
B60Q 1/00-1/56
9/00-11/00
F21K 9/00-9/90
F21S 2/00-45/70
B62J 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力端子と、
前記出力端子への出力電流を生成するように構成されたトランジスタと、
所定の周期で前記トランジスタのオン/オフ制御を行うように構成された論理回路と、
前記出力電流を検出するように構成された電流検出回路と、
前記出力端子への定電流を生成するように構成された定電流源と、
前記出力端子に現れる出力電圧を検出するように構成された電圧検出回路と、
を有し、
前記電流検出回路は、前記トランジスタのオン期間に有効となり、
前記定電流源及び前記電圧検出回路は、前記トランジスタのオフ期間に有効となり、
前記論理回路は、前記オン期間に前記出力電流が第1閾値を下回ったとき
及び前記オフ期間に前記出力電圧がオフ閾値を上回ったときに前記オン/オフ制御を停止して前記周期をリセットする、駆動装置。
【請求項2】
前記定電流源及び前記電圧検出回路は、前記オン/オフ制御の停止中にも有効となり、
前記論理回路は、前記オン/オフ制御の停止中に現れる前記出力電圧がオン閾値を下回ったときに前記オン/オフ制御を開始する、請求項
1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記定電流は、前記出力電流よりも小さい、請求項
1又は
2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記論理回路は、前記オン期間に前記出力電流が第2閾値を上回ったときに前記トランジスタを強制オフする、請求項1~
3のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項5】
出力端子と、
前記出力端子への出力電流を生成するように構成されたトランジスタと、
所定の周期で前記トランジスタのオン/オフ制御を行うように構成された論理回路と、
前記出力電流を検出するように構成された電流検出回路と、
を有し、
前記電流検出回路は、前記トランジスタのオン期間に有効となり、
前記論理回路は、
前記オン期間に前記出力電流が第1閾値を下回ったときに前記オン/オフ制御を停止して前記周期をリセットし、前記オン期間に前記出力電流が第2閾値を上回ったときに前記トランジスタを強制オフする
、駆動回路。
【請求項6】
前記論理回路は、前記オン期間に前記出力電流が第3閾値を下回ったときに前記周期を短縮する、請求項1~5のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の駆動装置と、
前記駆動装置の出力端子に直列接続されたスイッチ及び少なくとも一つの発光素子と、
を有する、発光システム。
【請求項8】
前記スイッチは、オフリーク電流の導通経路を持つ、請求項7に記載の発光システム。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の発光システムを有し、
前記少なくとも一つの発光素子は、左側フラッシャランプ及び右側フラッシャランプをそれぞれ形成する、車両。
【請求項10】
前記スイッチは、前記出力端子と前記左側フラッシャランプとの間を導通して前記出力端子と前記右側フラッシャランプとの間を遮断する第1状態、前記出力端子と前記右側フラッシャランプとの間を導通して前記出力端子と前記左側フラッシャランプとの間を遮断する第2状態、及び、前記出力端子と前記左側フラッシャランプとの間及び前記出力端子と前記右側フラッシャランプとの間をいずれも遮断する第3状態を取り得るものであり、
前記第1状態から前記第2状態への切替時、並びに、前記第2状態から前記第1状態への切替時には、その途中に前記第3状態への切替が介在する、請求項9に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々のアプリケーションにおいて、発光素子等の負荷を駆動する駆動装置(例えば、自動二輪車用のLED[light emitting diode]ドライバIC)が用いられている。
【0003】
なお、上記に関連する従来技術の一例としては、本願出願人による特許文献1を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の駆動装置には、負荷に供給する出力電流を所定の周期で間欠駆動する機能(例えば、自動二輪車用のフラッシャランプ点滅機能)を備えたものがある。
【0006】
しかしながら、上記従来の駆動装置では、これに外付けされるスイッチの切替操作(例えばフラッシャスイッチの左右切替)に起因して出力電流の供給期間(例えばLEDフラッシャランプの初回点灯期間)が不定となるおそれがあった。
【0007】
本明細書中に開示されている発明は、本願の発明者らにより見出された上記の課題に鑑み、出力電流を適切に間欠駆動することのできる駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書中に開示されている駆動装置は、例えば、出力端子と、前記出力端子への出力電流を生成するように構成されたトランジスタと、所定の周期で前記トランジスタのオン/オフ制御を行うように構成された論理回路と、前記出力電流を検出するように構成された電流検出回路と、を有し、前記電流検出回路は、前記トランジスタのオン期間に有効となり、前記論理回路は、前記オン期間に前記出力電流が第1閾値を下回ったときに前記オン/オフ制御を停止して前記周期をリセットする。
【0009】
なお、本発明のその他の特徴、要素、ステップ、利点、及び、特性については、以下に続く実施の形態の詳細な説明やこれに関する添付の図面によって、さらに明らかとなる。
【発明の効果】
【0010】
本明細書中に開示されている発明によれば、出力電流を適切に間欠駆動することのできる駆動装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図4】発光素子駆動装置の一部構成(電圧検出回路周辺)を示す図
【
図8】発光素子駆動装置の一部構成(電流検出回路周辺)を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
<発光システム>
図1は、発光素子駆動装置を備えた発光システムの全体構成を示す図である。本構成例の発光システム1は、フラッシャランプ(日本ではウィンカランプと呼称される方向指示灯)の点滅制御手段として、自動二輪車(又はその他の車両)に搭載されるものであり、発光素子駆動装置100と、これに外付けされる種々のディスクリート部品を有する。
【0013】
なお、上記のディスクリート部品には、左側フラッシャランプLF及びLR(フロント/リア)、右側フラッシャランプRF及びRR(フロント/リア)、フラッシャスイッチSW、複数の抵抗(RCRT1、RCRT2、RSE、RSSE、RVOP1、RVOP2、RVSCP1、RVSCP2)、複数のキャパシタ(CCRT、CVIN、CVREG)、ダイオードDIN、並びに、ツェナダイオードZDが含まれている。
【0014】
発光素子駆動装置100は、バッテリ+Bから入力電圧VIN(例えば6~18V)の入力を受けて出力電流IOUT(例えば最大1.5A)を出力することにより、左側フラッシャランプLF及びLR、並びに、右側フラッシャランプRF及びRRをそれぞれ点滅駆動する半導体集積回路装置(いわゆるLEDドライバIC)である。
【0015】
なお、発光素子駆動装置100は、装置外部との電気的な接続を確立するために、複数の外部端子(SOURCEピン、SEピン、SSEピン、VINピン、VOPピン、OUTピン、OUTSピン、VREGピン、DISCピン、CRTピン、VSCPピン)を有する。もちろん、負荷駆動装置100には、上記以外の外部端子を設けても構わない。
【0016】
発光素子駆動装置100の外部接続について説明する。バッテリ+Bの正極端は、ダイオードDINのアノードに接続されている。ダイオードDIN及びツェナダイオードZDそれぞれのカソード、キャパシタCVINの第1端、並びに、抵抗RSE、RSSE及びRVOP1それぞれの第1端は、いずれもVINピン(=入力電圧VINの印加端)に接続されている。抵抗RSEの第2端は、SOURCEピンとSEピンに接続されている。抵抗RSSEの第2端は、SSEピンに接続されている。抵抗ROVP1の第2端と抵抗ROVP2の第1端は、いずれもVOPピンに接続されている。バッテリ+Bの負極端、ツェナダイオードZDのアノード、キャパシタCVIN及び抵抗RVOP2それぞれの第2端、並びに、GNDピンは、いずれも接地端に接続されている。
【0017】
フラッシャスイッチSWの入力端は、OUTピン及びOUTSピンに接続されている。フラッシャスイッチSWの第1出力端は、左側フラッシャランプLF及びLRにそれぞれ接続されている。フラッシャスイッチSWの第2出力端は、右側フラッシャランプRF及びRRにそれぞれ接続されている。なお、フラッシャスイッチSWは、その構造上、オフリーク電流が流れる導通経路を持つことが多い。
【0018】
左側フラッシャランプLFは、抵抗R1及び発光ダイオードLED1を含む。抵抗R1の第1端は、フラッシャスイッチSWの第1出力端に接続されている。抵抗R1の第2端は、発光ダイオードLED1のアノードに接続されている。発光ダイオードLED1のカソードは、接地端に接続されている。
【0019】
右側フラッシャランプRFは、抵抗R2及び発光ダイオードLED2を含む。抵抗R2の第1端は、フラッシャスイッチSWの第2出力端に接続されている。抵抗R2の第2端は、発光ダイオードLED2のアノードに接続されている。発光ダイオードLED2のカソードは、接地端に接続されている。
【0020】
左側フラッシャランプLRは、抵抗R3a及びR3bと、発光ダイオードLED3を含む。抵抗R3a及びR3bそれぞれの第1端は、いずれもフラッシャスイッチSWの第1出力端に接続されている。抵抗R3aの第2端は、発光ダイオードLED3のアノードに接続されている。抵抗R3bの第2端と発光ダイオードLED3のカソードは、いずれも接地端に接続されている。
【0021】
右側フラッシャランプRRは、抵抗R4a及びR4bと、発光ダイオードLED4を含む。抵抗R4a及びR4bそれぞれの第1端は、いずれもフラッシャスイッチSWの第2出力端に接続されている。抵抗R4aの第2端は、発光ダイオードLED4のアノードに接続されている。抵抗R4bの第2端と発光ダイオードLED4のカソードは、いずれも接地端に接続されている。
【0022】
抵抗RCRT1及びRVSCP1それぞれの第1端、並びに、キャパシタCVREGの第1端は、VREGピン(=定電圧VREGの印加端)に接続されている。抵抗RCRT1の第2端と抵抗RCRT2の第1端は、DISCピンに接続されている。抵抗RCRT2の第2端とキャパシタCCRTの第1端は、CRTピンに接続されている。抵抗RVSCP1の第2端と抵抗RVSCP2の第1端は、VSCPピンに接続されている。キャパシタCVREG及びCCRTそれぞれの第2端、並びに、抵抗RVSCP2の第2端は、接地端に接続されている。
【0023】
このように、本構成例の発光システム1は、発光素子駆動装置100と、そのOUTピンに直列接続されたフラッシャスイッチSW及び少なくとも一つの発光素子(本図では、4つの発光ダイオードLED1~LED4)と、を有する。
【0024】
なお、フラッシャスイッチSWは、例えば、車両のハンドル近傍に設けられており、運転者による車両進行方向の指示操作(=左点滅状態、右点滅状態、若しくは、オフ状態の切替操作)を受け付ける。
【0025】
より具体的に述べると、フラッシャスイッチSWは、OUTピンと左側フラッシャランプLF及びLRとの間を導通してOUTピンと右側フラッシャランプRF及びRRとの間を遮断する第1状態(=左点滅状態)、OUTピンと右側フラッシャランプRF及びRRとの間を導通してOUTピンと左側フラッシャランプLF及びLRとの間を遮断する第2状態(=右点滅状態)、及び、OUTピンと左側フラッシャランプLF及びLRとの間並びにOUTピンと右側フラッシャランプRF及びRRとの間をいずれも遮断する第3状態(=オフ状態)を取り得るものである。
【0026】
また、第1状態(=左点滅状態)から第2状態(=右点滅状態)への切替時、並びに、第2状態(=右点滅状態)から第1状態(=左点滅状態)への切替時には、その途中に第3状態(=オフ状態)への切替が介在する。
【0027】
<端子配置(20ピン)>
図2は、発光素子駆動装置100の端子配置(20ピン)を示す上面図である。本図の発光素子駆動装置100は、そのパッケージとして20ピンのHTSSOP[heat-sink thin shrink small outline package]を採用している。本パッケージでは、対向する2辺から2方向(=紙面左右方向)に10本ずつ、合計20本のピンが導出されている。
【0028】
SOURCEピン(1ピン)は、パワー入力端子である。SEピン(2ピン)は、出力電流検出入力端子である。SSEピン(4ピン)は、点滅Lモード用の出力電流検出入力端子である。VINピン(6ピン)は、電源端子である。VOPピン(9ピン)は、オープン検出閾値設定端子である。GNDピン(11ピン)は、接地端子である。VSCPピン(13)は、短絡検出閾値設定端子である。CRTピン(14ピン)及びDISC端子(15ピン)は、いずれもCRタイマ設定端子である。VREGピン(17ピン)は、定電圧端子である。OUTSピン(19ピン)は、センス出力端子である。OUTピン(20ピン)は、パワー出力端子である。また、破線で描写されたEXP-PAD端子は、パッケージの下面に設けられており、接地端子兼放熱パッドとして機能する。
【0029】
なお、上記以外のピン(3ピン、5ピン、7ピン、8ピン、10ピン、12ピン、16ピン、18ピン)は、いずれも不使用端子(N.C.)である。例えば、発光素子駆動装置100に機能を追加する場合には、これらのピンに任意の機能を割り当てるとよい。
【0030】
<発光素子駆動装置>
図3は、発光素子駆動装置100の内部構成を示す図である。本構成例の発光素子駆動装置100は、例えば、Pチャネル型MOS[metal-oxide-semiconductor]電界効果トランジスタ101H及び101Lと、ドライバ102H及び102Lと、基準電圧源103と、レギュレータ104と、電圧検出回路105と、CRタイマ106と、低電圧保護回路107と、温度保護回路108と、電流検出回路110と、論理回路120と、を集積化して成る。もちろん、発光素子駆動装置100は、上記以外の回路を含んでもよい。
【0031】
トランジスタ101Hのソースは、SOURCEピンに接続されている。トランジスタ101Lのソースは、SSEピンに接続されている。トランジスタ101H及び101Lそれぞれのドレインは、いずれもOUTピンに接続されている。トランジスタ101Hのゲートは、ドライバ102Hの出力端に接続されている。トランジスタ101Lのゲートは、ドライバ102Lの出力端に接続されている。
【0032】
ドライバ102Hは、論理回路120からの指示に基づいて、OUTピンへの出力電流IOUTを所定の点滅周期T(=Ton+Toff)で導通/遮断するように、トランジスタ101Hをオン/オフ駆動する(詳細は後述)。トランジスタ101Hのオン期間Tonには、SOURCEピンとOUTピンとの間が導通される。従って、トランジスタ101Hには出力電流IOUTが流れ得る状態となる。一方、トランジスタ101Hのオフ期間Toffには、SOURCEピンとOUTピンとの間が遮断される。従って、トランジスタ101Hには出力電流IOUTが流れなくなる。
【0033】
ドライバ102Lは、論理回路120からの指示に基づいて、OUTピンへの定電流IREF(ただしIREF<IOUT)を生成するように、トランジスタ101Lのゲート電圧をリニア制御する(詳細は後述)。
【0034】
すなわち、上記のトランジスタ101L及びドライバ102Lは、定電流IREFを生成する定電流源130の構成要素として理解することができる。定電流IREFの目標値は、例えば基準電圧VBGを用いて設定するとよい。なお、定電流源130は、トランジスタ101Hのオフ期間Toff(オン/オフ制御の停止中を含む)に有効となる。
【0035】
基準電圧源103は、入力電圧VINから所定の基準電圧VBGを生成する。なお、基準電圧源103としては、例えば、入力電圧依存性や温度依存性が比較的小さいバンドギャップ電源を好適に用いることができる。
【0036】
レギュレータ104は、入力電圧VINから所定の定電圧VREG(例えば5V)を生成してVREGピンに出力する。定電圧VREGは、例えば、発光素子駆動装置100の内部電源電圧として装置各部に供給されている。VREGピンには、位相補償用のキャパシタCVREG(例えば1~10μF)を外付けする必要がある。レギュレータ104としては、例えば、LDO[low drop out]レギュレータが好適である。定電圧VREGの目標値は、例えば基準電圧VBGを用いて設定するとよい。
【0037】
電圧検出回路105は、OUTSピン(=OUTピンと等価)に現れる出力電圧VOUTを検出し、その検出結果を論理回路120に伝達する。なお、電圧検出回路105は、先出の定電流源130と同じく、トランジスタ101Hのオフ期間Toff(オン/オフ制御の停止中を含む)に有効となる。電圧検出回路105としては、例えば、反転入力端(-)に入力される出力電圧VOUTと、非反転入力端(+)に入力される閾値電圧Vth0を比較して比較信号S0を生成するコンパレータを用いることができる。この場合、比較信号S0は、VOUT>Vth0であるときにローレベルとなり、VOUT<Vth0であるときにハイレベルとなる。なお、比較信号S0に基づく論理回路120の動作については、後ほど詳述する。
【0038】
CRタイマ106は、フラッシャランプ点滅制御用の内部クロック信号CLKを生成して論理回路120に出力する。なお、内部クロック信号CLKの発振周波数f(延いてはフラッシャランプの点滅周期T(=1/f))とオンデューティDon(=Ton/T)は、CRTピン及びDISCピンに外付けされるディスクリート部品(抵抗RCRT1及びRCRT2並びにキャパシタCCRT)を用いて設定することが可能である。なお、CRタイマ106は、分周機能を備えていてもよい。
【0039】
低電圧保護回路(いわゆるUVLO[under voltage lock-out]回路)107は、入力電圧VIN及び定電圧VREGを監視し、その監視結果を論理回路120に伝達する。例えば、低電圧保護回路107は、入力電圧VINがUVLO解除値(例えば5V)を上回ったときにUVLO動作を解除し、UVLO検出値(例えば4.5V)を下回ったときにUVLO動作を発動する。また、例えば、低電圧保護回路107は、定電圧VREGがUVLO解除値(例えば3.5V)を上回ったときにUVLO動作を解除し、UVLO検出値(例えば2.0V)を下回ったときにUVLO動作を発動する。なお、UVLO動作が発動すると、レギュレータ104を除く全ての回路ブロックがシャットダウンされる。UVLO解除値及びUVLO検出値は、例えば基準電圧VBGを用いて設定するとよい。
【0040】
温度保護回路(いわゆるTSD[thermal shut down]回路)108は、発光素子駆動装置100のチップ温度(ジャンクション温度)を監視し、その監視結果を論理回路120に伝達する。例えば、温度保護回路108は、チップ温度が異常検出値(例えば125℃)を上回ったときにTSD動作を発動する。上記の異常検出値は、例えば基準電圧VBGを用いて設定するとよい。
【0041】
電流検出回路110は、トランジスタ101Hのオン期間Tonに有効となり、SEピンに現れるセンス電圧VSE(=VIN-IOUT×RSE)を検出して、その検出結果を論理回路120に伝達する。なお、本構成例の電流検出回路110は、3つのコンパレータ111~113を含む。
【0042】
コンパレータ111は、フラッシャスイッチSWのオープン検出用コンパレータであって、反転入力端(-)に入力される閾値電圧(VIN-Vth1、例えばVth1=50mV)と、非反転入力端(+)に入力されるセンス電圧VSEとを比較して、比較信号S1を生成する。従って、比較信号S1は、IOUT<Ith1(=Vth1/RSE)であるときにハイレベル(=SWオープン検出時の論理レベル)となり、IOUT>Ith1であるときにローレベル(=SWオープン解除時の論理レベル)となる。なお、比較信号S1に基づく論理回路120の動作については、後ほど詳述する。
【0043】
コンパレータ112は、フラッシャランプのLEDショート検出用コンパレータであって、反転入力端(-)に入力される閾値電圧(VIN-Vth2、例えばVth2=1.0~1.2V)と、非反転入力端(+)に入力されるセンス電圧VSEを比較して、比較信号S2を生成する。従って、比較信号S2は、IOUT<Ith2(=Vth2/RSE)であるときにハイレベル(=LEDショート未検出時の論理レベル)となり、IOUT>Ith2であるときにローレベル(=LEDショート検出時の論理レベル)となる。
【0044】
論理回路120は、LEDショートを検出したときにトランジスタ101Hを強制オフする。従って、過電流による発熱や破壊を未然に抑制することができるので、発光素子駆動装置100の信頼性を高めることが可能となる。なお、閾値電圧Vth2は、VSCPピンに外付けされる抵抗RVSCP1及びRVSCP2を用いて設定することができる。
【0045】
コンパレータ113は、フラッシャランプのLEDオープン検出用コンパレータであって、反転入力端(-)に入力される閾値電圧(VIN-Vth3、例えばVth3>100mV)と、非反転入力端(+)に入力されるセンス電圧VSEを比較して、比較信号S3を生成する。従って、比較信号S3は、IOUT<Ith3(=Vth3/RSE)であるときにハイレベル(=LEDオープン検出時の論理レベル)となり、IOUT>Ith3であるときにローレベル(=LEDオープン未検出時の論理レベル)となる。
【0046】
論理回路120は、LEDオープンを検出したときに点滅周期Tを短縮(例えば通常時の1/2に設定)する。例えば、左側フラッシャランプLF及びLR(若しくは、右側フラッシャランプRF及びRR)のうち、一方にオープン異常が生じたときには、他方が通常時の2倍速で点滅する。従って、別途の報知手段を要することなく運転者にフラッシャランプの異常を知らせることができるので、発光素子駆動装置100の信頼性を高めることが可能となる。なお、閾値電圧Vth3は、VOPピンに外付けされる抵抗RVOP1及びRVOP2を用いて設定することができる。
【0047】
論理回路120は、発光素子駆動装置100の全体動作を統括的に制御する主体であって、内部クロック信号CLKのパルス数をカウントするカウンタ121を含む。例えば、論理回路120は、トランジスタ101Hのオン/オフ制御を行うとき、カウンタ121のカウント値に基づいて、トランジスタ101Hのオン期間Ton及びオフ期間Toff(延いては点滅周期T=Ton+Toff)をカウントする。
【0048】
<基本的な動作モード>
図4は、発光素子駆動装置100の一部構成(電圧検出回路105周辺)を示す図である。発光素子駆動装置100は、基本的な動作モードとして、フラッシャスイッチ監視モードと、点滅Hモード及び点滅Lモードを備えている。以下では、本図を参照しながら、各動作モードについて説明する。
【0049】
<フラッシャスイッチ監視モード>
フラッシャスイッチSWがオフ状態(オープン状態)であり、トランジスタ101Hのオン/オフ制御が停止されている間、発光素子駆動装置100は、フラッシャスイッチ監視モード(=出力電圧VOUTを監視してフラッシャスイッチSWのオン遷移を検出する動作状態)となる。
【0050】
具体的に述べると、出力電圧検出回路105及び定電流源130は、トランジスタ101Hのオン/オフ制御が停止されているときに有効となり、出力電圧VOUT(=IREF×(RSW+R3b//R4b))の監視が行われる。
【0051】
なお、上式中のスイッチ抵抗RSWは、フラッシャスイッチSWの抵抗成分(=オフリーク電流が流れる導通経路の抵抗成分を含む)に相当する。すなわち、フラッシャスイッチSWがオフ状態(オープン状態)であるときには、スイッチ抵抗RSWが高くなる。一方、フラッシャスイッチSWがオン状態(右点滅状態又は左点滅状態)であるときには、スイッチ抵抗RSWが低くなる。
【0052】
また、定電流源130では、SSEピンの端子電圧(=VIN-RSSE×IREF)と所定の参照電圧(=VIN-VREF)とが一致するように、ドライバ102によるトランジスタ101Lのゲート制御が行われる。その結果、OUTピンには、抵抗RSSEに応じた定電流IREF(=VREF/RSSE)が流れる。
【0053】
定電流IREFは、スイッチ抵抗RSWの両端間に検出可能な電圧差を発生させることができる程度の大きさを持っていれば足りる。従って、省電力化の観点から、定電流IREFは、出力電流IOUTよりも小さい電流値(例えば0.2A)に絞っておくとよい。
【0054】
上記のフラッシャスイッチ監視モードにおいて、論理回路120は、出力電圧VOUTがオン閾値Vth0L(例えばVth0L=0.95V)を下回っている状態が、所定のマスク期間(例えば8CLK)に亘って継続したときに、トランジスタ101Hのオン/オフ制御を開始する。
【0055】
すなわち、論理回路120は、フラッシャスイッチSWのオン遷移に伴う出力電圧VOUTの低下(=スイッチ抵抗RSWの減少)を検出して、トランジスタ101Hのオン/オフ制御を開始する。その結果、発光素子駆動装置100は、点滅Hモードと点滅Lモードが交互に繰り返される状態に移行する。
【0056】
<点滅Hモード>
発光素子駆動装置100がフラッシャスイッチ監視モードから点滅Hモードに移行すると、論理回路120は、基本的に、所定のオン期間Ton(例えば256CLK、約350ms)に亘ってトランジスタ101Hをオンさせることにより、OUTピンから出力電流IOUTを出力させる。
【0057】
このとき、出力電圧検出回路105及び定電流源130が無効とされる。なぜなら、トランジスタ101Hがオンしているときには、フラッシャスイッチSWの切替状態に関わらず、常にVOUT≒VINとなるので、出力電圧VOUTを監視してもフラッシャスイッチSWの切替状態を判定できないからである。
【0058】
一方、点滅Hモードでは、出力電流検出回路110が有効とされて、先述の各種保護動作(LEDのショート検出及びオープン検出)が行われる。また、点滅Hモードでは、出力電流監視によるフラッシャスイッチSWのオープン検出も行われる(詳細は後述)。
【0059】
なお、LEDのショート検出又はオープン検出、或いは、出力電流監視によるフラッシャスイッチSWのオープン検出が掛からないまま、トランジスタ101Hのオン期間Tonが経過すると、発光素子駆動装置100が点滅Hモードから点滅Lモードに移行する。
【0060】
<点滅Lモード>
発光素子駆動装置100が点滅Hモードから点滅Lモードに移行すると、論理回路120は、基本的に、所定のオフ期間Toff(例えば256CLK、約350ms)に亘ってトランジスタ101Hをオフさせることにより、出力電流IOUTの生成を停止する。
【0061】
このとき、出力電流検出回路110が無効とされる。なぜなら、トランジスタ101Hがオフしているときには、トランジスタ101Hに出力電流IOUTが流れないので、SEピンに現れるセンス電圧VSEを監視する意味がなくなるからである。
【0062】
一方、点滅Lモードでは、出力電圧検出回路105及び定電流源130が有効とされ、出力電圧監視によるフラッシャスイッチSWのオープン検出が行われる。
【0063】
具体的に述べると、上記の点滅Lモードにおいて、論理回路120は、出力電圧VOUTがオフ閾値Vth0H(例えばVth0H=1.0V)を上回ったときに、トランジスタ101Hのオン/オフ制御を停止する。
【0064】
すなわち、論理回路120は、フラッシャスイッチSWのオフ遷移(オープン遷移)に伴う出力電圧VOUTの上昇(=スイッチ抵抗RSWの増大)を検出して、トランジスタ101Hのオン/オフ制御を停止する。その結果、発光素子駆動装置100は、先述のフラッシャスイッチ監視モードに戻る。
【0065】
なお、出力電圧監視によるフラッシャスイッチSWのオープン検出が掛からないまま、トランジスタ101Hのオフ期間Toffが経過すると、発光素子駆動装置100は、点滅Lモードから点滅Hモードに移行する。
【0066】
<点滅制御>
図5は、発光素子駆動装置100による点滅制御の一例(基本動作)を示す図であり、上から順に、フラッシャスイッチSWの切替状態、トランジスタ101Hのオン/オフ状態、出力電圧検出回路105及び定電流源130の動作状態(=出力電圧VOUTの監視状態)、右側フラッシャランプRF及びRRの点消灯状態、並びに、左側フラッシャランプLF及びLRの点消灯状態を示している。
【0067】
時刻t11以前には、フラッシャスイッチSWがオフ状態(オープン状態)であり、トランジスタ101Hのオン/オフ制御が停止された状態(=トランジスタ101Hがオフされたままの状態)となっている。従って、右側フラッシャランプRF及びRR、並びに左側フラッシャランプLF及びLRは、いずれも消灯状態となっている。
【0068】
このとき、発光素子駆動装置100は、先述のフラッシャスイッチ監視モードとなっている。すなわち、出力電圧検出回路105及び定電流源130が有効(EN)となり、出力電圧VOUTの監視(より具体的には、出力電圧監視によるフラッシャスイッチSWのオン遷移検出)が行われている。
【0069】
時刻t11において、フラッシャスイッチSWがオフ状態から右点滅状態(オン状態)に切り替えられると、出力電圧VOUTの低下が検出されるので、トランジスタ101Hのオン/オフ制御が開始される。すなわち、発光素子駆動装置100は、所定の点滅周期T(=Ton+Toff)で点滅Hモードと点滅Lモードを交互に繰り返す状態に移行する。その結果、右側フラッシャランプRF及びRRには、出力電流IOUTが間欠的に流れるので、右側フラッシャランプRF及びRRが点滅駆動される。一方、左側フラッシャランプLF及びLRには、出力電流IOUTが流れないので、左側フラッシャランプLF及びLRが消灯状態に維持される。
【0070】
また、先にも述べたように、出力電圧検出回路105及び定電流源130は、点滅Hモードで無効(DIS)となり、点滅Lモードで有効(EN)となる。
【0071】
次に、時刻t12では、トランジスタ101Hのオフ期間Toffにおいて、フラッシャスイッチSWが右点滅状態からオフ状態に切り替えられている。
【0072】
このとき、発光素子駆動装置100は点滅Lモードであり、出力電圧検出回路105及び定電流源130は、有効(EN)となっている。従って、フラッシャスイッチSWのオフ遷移(オープン遷移)に伴い、出力電圧VOUTの上昇が検出されるので、トランジスタ101Hのオン/オフ制御が停止されて、発光素子駆動装置100が先述のフラッシャスイッチ監視モードに戻される。また、論理回路120では、内部のカウンタ121が初期化されて、点滅周期Tがリセットされる。
【0073】
その後、時刻t13において、フラッシャスイッチSWがオフ状態から左点滅状態に切り替えられると、再び出力電圧VOUTの低下が検出されるので、トランジスタ101Hのオン/オフ制御が開始される。
【0074】
このとき、点滅周期Tは、既にリセットされている。従って、点滅Hモードへの移行時には、オン期間Tonのカウントをゼロ値からインクリメントすることができる。その結果、左側フラッシャランプLF及びLRの点滅駆動を開始するときに、初回点灯期間が不定となることはない。
【0075】
このように、発光素子駆動装置100が点滅LモードであるときにフラッシャスイッチSWがオフ状態(オープン状態)に切り替えられた場合であれば、出力電圧監視によるフラッシャスイッチSWのオープン検出機能が働くので、フラッシャランプの点滅制御に不具合(=初回点灯期間の不定や消失)を生じることはない。
【0076】
しかしながら、発光素子駆動装置100が点滅HモードであるときにフラッシャスイッチSWがオフ状態(オープン状態)に切り替えられた場合には、出力電圧監視によるフラッシャスイッチSWのオープン検出機能が働かないので、フラッシャランプの点滅制御に不具合を生じ得る。
【0077】
そこで、発光素子駆動装置100には、上記の不具合を解消するための手段として、出力電流監視によるフラッシャスイッチSWのオープン検出機能(具体的には、SWオープン検出用のコンパレータ111)が新規に導入されている。
【0078】
以下では、上記した新機能(=出力電流監視によるSWオープン検出機能)の説明に先立ち、仮に当該新機能が導入されていなければ生じ得る不具合について、図面を参照しながら簡単に説明しておく。
【0079】
図6及び
図7は、それぞれ、出力電流監視によるSWオープン検出機能が未導入であると仮定した場合において、発光素子駆動装置100による点滅制御に不具合が生じる様子を示す図であり、先の
図5と同じく、上から順に、フラッシャスイッチSWの切替状態、トランジスタ101Hのオン/オフ状態、出力電圧検出回路105及び定電流源130の動作状態(=出力電圧VOUTの監視状態)、右側フラッシャランプRF及びRRの点消灯状態、並びに、左側フラッシャランプLF及びLRの点消灯状態を示している。
【0080】
時刻t21以前には、フラッシャスイッチSWがオフ状態(オープン状態)であり、トランジスタ101Hのオン/オフ制御が停止された状態(=トランジスタ101Hがオフされたままの状態)となっている。従って、右側フラッシャランプRF及びRR、並びに左側フラッシャランプLF及びLRは、いずれも消灯状態となっている。
【0081】
このとき、発光素子駆動装置100は、先述のフラッシャスイッチ監視モードとなっている。すなわち、出力電圧検出回路105及び定電流源130が有効(EN)となり、出力電圧VOUTの監視(より具体的には、出力電圧監視によるフラッシャスイッチSWのオン遷移検出)が行われている。
【0082】
時刻t21において、フラッシャスイッチSWがオフ状態から右点滅状態(オン状態)に切り替えられると、出力電圧VOUTの低下が検出されるので、トランジスタ101Hのオン/オフ制御が開始される。すなわち、発光素子駆動装置100は、所定の点滅周期T(=Ton+Toff)で点滅Hモードと点滅Lモードを交互に繰り返す状態に移行する。その結果、右側フラッシャランプRF及びRRには、出力電流IOUTが間欠的に流れるので、右側フラッシャランプRF及びRRが点滅駆動される。一方、左側フラッシャランプLF及びLRには、出力電流IOUTが流れないので、左側フラッシャランプLF及びLRが消灯状態に維持される。
【0083】
また、先にも述べたように、出力電圧検出回路105及び定電流源130は、点滅Hモードで無効(DIS)となり、点滅Lモードで有効(EN)となる。ここまでの動作については、先出の
図5と何ら変わらない。
【0084】
次に、時刻t22では、トランジスタ101Hのオン期間Tonにおいて、フラッシャスイッチSWが右点滅状態からオフ状態に切り替えられる。その結果、右側フラッシャランプRF及びRRへの電流供給経路が遮断されるので、右側フラッシャランプRF及びRRが消灯状態となる。
【0085】
このとき、発光素子駆動装置100は点滅Hモードであり、出力電圧検出回路105及び定電流源130が無効(DIS)となっている。従って、出力電圧監視によるSWオープン検出機能が働かないので、時刻t22以降も点滅周期Tがリセットされることはなくトランジスタ101Hのオン期間Tonが継続される。すなわち、時刻t22では、
図5の時刻t12と異なり、点滅Hモードからフラッシャスイッチ監視モードに復帰しない。
【0086】
その後、時刻t23において、フラッシャスイッチSWがオフ状態から左点滅状態に切り替えられると、左側フラッシャランプLF及びLRへの電流供給経路が導通するので、左側フラッシャランプLF及びLRが点灯状態となる。なお、この時点においても、点滅周期T(=オン期間Tonのカウント)がリセットされることはない。
【0087】
そして、時刻t24において、それまでリセットされることなくカウントが継続されてきたオン期間Tonが満了すると、トランジスタ101Hがオフ状態に切り替わる。
【0088】
このように、左側フラッシャランプLF及びLRの点滅駆動を開始する時点で、それまでのオン期間Tonがリセットされていなければ、左側フラッシャランプLF及びLRの初回点灯期間が本来よりも短い不定長(=時刻t23~t24)となってしまう。そのため、フラッシャランプの点滅駆動について、その最小点灯期間が法規で定められている場合には、これに違反してしまうおそれがある。
【0089】
また、
図7で示したように、オン期間Tonのカウントが満了する直前にフラッシャスイッチSWが左点滅状態に切り替えられた場合には、左側フラッシャランプLF及びLRの初回点灯期間(=時刻t23~t24)が非常に短くなる。
【0090】
そのため、人間の目視では、上記の初回点灯期間を認識することができないまま、トランジスタ101Hのオフ期間Toff(点滅Lモード)に移行してしまうおそれがある。この場合、見かけ上では、トランジスタ101Hが再びオン期間Ton(点滅Hモード)に移行するタイミング(=時刻t25)で、ようやく左側フラッシャランプLF及びLRが点灯したかのように認識される。言い換えると、左側フラッシャランプLF及びLRの点滅開始が遅れたように見えてしまう。
【0091】
なお、フラッシャスイッチSWをオンしてからフラッシャランプが点滅を開始するまでの所要時間は、法規で定められている(例えば0.15s以内)。従って、見かけ上とは言え、フラッシャランプの点滅開始が遅れると、法規違反となってしまうおそれがある。
【0092】
<出力電流監視によるSWオープン検出機能>
以下では、上記の不具合を解消する手段として、発光素子駆動装置100に導入された新機能(出力電流監視によるSWオープン検出機能)について詳細に説明する。
【0093】
図8は、発光素子駆動装置100の一部構成(電流検出回路110周辺)を示す図である。先にも述べたように、電流検出回路110は、出力電流監視によるSWオープン検出用のコンパレータ111を含む。
【0094】
なお、先出の
図3では、閾値電圧(VIN-Vth1)とセンス電圧VSEとをコンパレータ111で比較する例を挙げたが、例えば、本図で示すように、入力電圧VINとセンス電圧VSEとの差分電圧(VIN-VSE)を生成する減算器114を用意し、上記の差分電圧(VIN-VSE)と閾値電圧Vth1とをコンパレータ111で比較する構成としてもよい。
【0095】
いずれの構成を採用するにせよ、コンパレータ111で生成される比較信号S1は、IOUT<Ith1(=Vth1/RSE)であるときにハイレベル(=SWオープン検出時の論理レベル)となり、IOUT>Ith1であるときにローレベル(=SWオープン解除時の論理レベル)となる。
【0096】
論理回路120は、上記の比較信号S1に基づいてカウンタ121のリセット制御を行う。具体的に述べると、論理回路120は、トランジスタ101Hのオン期間TonにおけるフラッシャスイッチSWのオフ遷移(オープン遷移)に伴い、出力電流IOUTが減少して比較信号S1がハイレベルに立ち上がると、トランジスタ101Hのオン/オフ制御を停止するとともに、内部のカウンタ121を初期化して点滅周期Tをリセットする。
【0097】
図9は、出力電流監視によるSWオープン検出機能を新規に導入することで、発光素子駆動装置100による点滅制御の不具合が解消される様子を示す図であり、上から順に、フラッシャスイッチSWの切替状態、トランジスタ101Hのオン/オフ状態、出力電圧検出回路105及び定電流源130の動作状態(=出力電圧VOUTの監視状態)、出力電流検出回路110の動作状態(=出力電流IOUTの監視状態)、右側フラッシャランプRF及びRRの点消灯状態、並びに、左側フラッシャランプLF及びLRの点消灯状態を示している。
【0098】
時刻t31以前には、フラッシャスイッチSWがオフ状態(オープン状態)であり、トランジスタ101Hのオン/オフ制御が停止された状態(=トランジスタ101Hがオフされたままの状態)となっている。従って、右側フラッシャランプRF及びRR、並びに左側フラッシャランプLF及びLRは、いずれも消灯状態となっている。
【0099】
このとき、発光素子駆動装置100は、先述のフラッシャスイッチ監視モードとなっている。すなわち、出力電圧検出回路105及び定電流源130が有効(EN)となり、出力電圧VOUTの監視(より具体的には、出力電圧監視によるフラッシャスイッチSWのオン遷移検出)が行われている。一方、出力電流検出回路110は、無効(DIS)となっているので、出力電流IOUTの監視は行われていない。
【0100】
時刻t31において、フラッシャスイッチSWがオフ状態から右点滅状態(オン状態)に切り替えられると、出力電圧VOUTの低下が検出されるので、トランジスタ101Hのオン/オフ制御が開始される。すなわち、発光素子駆動装置100は、所定の点滅周期T(=Ton+Toff)で点滅Hモードと点滅Lモードを交互に繰り返す状態に移行する。その結果、右側フラッシャランプRF及びRRには、出力電流IOUTが間欠的に流れるので、右側フラッシャランプRF及びRRが点滅駆動される。一方、左側フラッシャランプLF及びLRには、出力電流IOUTが流れないので、左側フラッシャランプLF及びLRが消灯状態に維持される。
【0101】
また、先にも述べたように、出力電圧検出回路105及び定電流源130は、点滅Hモードで無効(DIS)となり、点滅Lモードで有効(EN)となる。一方、これとは相補的に、出力電流検出回路110は、点滅Hモードで有効(EN)となり、点滅Hモードで無効(DIS)となる。
【0102】
次に、時刻t32では、トランジスタ101Hのオン期間Tonにおいて、フラッシャスイッチSWが右点滅状態からオフ状態に切り替えられる。その結果、右側フラッシャランプRF及びRRへの電流供給経路が遮断されるので、右側フラッシャランプRF及びRRが消灯状態となる。
【0103】
このとき、発光素子駆動装置100は点滅Hモードであり、出力電流検出回路110が有効(EN)となっている。そのため、フラッシャスイッチSWのオフ遷移(オープン遷移)に伴い、出力電流IOUTの減少(LEDオープン時よりもさらに大幅な電流減少)が検出されるので、トランジスタ101Hのオン/オフ制御が停止されて、発光素子駆動装置100が先述のフラッシャスイッチ監視モードに戻される。また、論理回路120では、内部のカウンタ121が初期化されて、点滅周期Tがリセットされる。
【0104】
その後、時刻t33において、フラッシャスイッチSWがオフ状態から左点滅状態に切り替えられると、再び出力電圧VOUTの低下が検出されるので、トランジスタ101Hのオン/オフ制御が開始される。
【0105】
このとき、点滅周期Tは、既にリセットされている。従って、点滅Hモードへの移行時には、オン期間Tonのカウントをゼロ値からインクリメントすることができる。その結果、左側フラッシャランプLF及びLRの点滅駆動を開始するときに、初回点灯期間が不定となることはない。
【0106】
このように、出力電流監視によるSWオープン検出機能を新規に導入すれば、発光素子駆動装置100が点滅HモードであるときにフラッシャスイッチSWがオフ状態(オープン状態)に切り替えられた場合でも、フラッシャランプの点滅制御に不具合(=初回点灯期間の不定や消失)を生じることがなくなる。
【0107】
<変形例>
なお、上記実施形態では、フラッシャスイッチSWの切替操作として、右点滅状態→オフ状態(オープン状態)→左点滅状態という例を挙げたが、当然のことながら、これとは逆に、左点滅状態→オフ状態(オープン状態)→右点滅状態という切替操作を行う場合であっても、フラッシャランプの点滅制御に不具合を生じることはない。また、右点滅状態→オフ状態(オープン状態)→右点滅状態、若しくは、左点滅状態→オフ状態(オープン状態)→左点滅状態という切替操作を行う場合についても同様である。
【0108】
<車両(自動二輪車)>
図10は、自動二輪車の外観を示す図である。本図の自動二輪車Aは、いわゆる中型二輪(=日本の道路交通法において、排気量50cc超400cc以下の車両区分に属する普通自動二輪車に相当)と呼ばれる車両の一種であり、LEDランプA1~A3(より具体的には、LEDヘッドランプA1、LEDリアランプA2及びLEDフラッシャランプA3)と、それらの電源となるバッテリA4と、LEDフラッシャランプA3の駆動状態を切り替えるためのフラッシャスイッチA5と、を有する。
【0109】
ただし、本図におけるLEDランプA1~A3、バッテリA4、及び、フラッシャスイッチA5の搭載位置については、図示の便宜上、実際と異なる場合がある。
【0110】
なお、先出の左側フラッシャランプLF及びLR並びに右側フラッシャランプRF及びRRは、本図のフラッシャランプA3に相当する。また、先出のバッテリ+Bは、本図のバッテリA4に相当する。また、先出のフラッシャスイッチSWは、本図のフラッシャスイッチA5に相当する。
【0111】
このように、先出の発光システム1は、フラッシャランプA3の点滅制御手段として、自動二輪車A(若しくはその他の車両)に搭載することが可能である。
【0112】
<総括>
以下では、本明細書中に開示されている種々の実施形態について総括的に述べる。
【0113】
例えば、本明細書中に開示されている発光素子駆動装置は、出力端子と、前記出力端子への出力電流を生成するように構成されたトランジスタと、所定の周期で前記トランジスタのオン/オフ制御を行うように構成された論理回路と、前記出力電流を検出するように構成された電流検出回路を有し、前記電流検出回路は、前記トランジスタのオン期間に有効となり、前記論理回路は、前記オン期間に前記出力電流が第1閾値を下回ったときに前記オン/オフ制御を停止して前記周期をリセットする構成(第1の構成)とされている。
【0114】
なお、上記第1の構成から成る駆動装置は、前記出力端子への定電流を生成するように構成された定電流源と、前記出力端子に現れる出力電圧を検出するように構成された電圧検出回路と、をさらに有し、前記定電流源及び前記電圧検出回路は、前記トランジスタのオフ期間に有効となり、前記論理回路は、前記オフ期間に前記出力電圧がオフ閾値を上回ったときに前記オン/オフ制御を停止して前記周期をリセットする構成(第2の構成)にしてもよい。
【0115】
また、上記第2の構成から成る駆動装置において、前記定電流源及び前記電圧検出回路は、前記オン/オフ制御の停止中にも有効となり、前記論理回路は、前記オン/オフ制御の停止中に現れる前記出力電圧がオン閾値を下回ったときに前記オン/オフ制御を開始する構成(第3の構成)にしてもよい。
【0116】
また、上記第2又は第3の構成から成る駆動装置において、前記定電流は、前記出力電流よりも小さい構成(第4の構成)にしてもよい。
【0117】
また、上記第1~第4いずれかの構成から成る駆動装置において、前記論理回路は、前記オン期間に前記出力電流が第2閾値を下回ったときに前記周期を短縮する構成(第5の構成)にしてもよい。
【0118】
また、上記第1~第5いずれかの構成から成る駆動装置において、前記論理回路は、前記オン期間に前記出力電流が第3閾値を上回ったときに前記トランジスタを強制オフする構成(第6の構成)にしてもよい。
【0119】
また、例えば、本明細書中に開示されている発光システムは、上記第1~第6いずれかの構成から成る駆動装置と、前記駆動装置の出力端子に直列接続されたスイッチ及び少なくとも一つの発光素子と、を有する構成(第7の構成)とされている。
【0120】
なお、上記第7の構成から成る発光システムにおいて、前記スイッチは、オフリーク電流の導通経路を持つ構成(第8の構成)にしてもよい。
【0121】
また、例えば、本明細書中に開示されている車両は、上記第7又は第8の構成から成る発光システムを有し、前記少なくとも一つの発光素子は、左側フラッシャランプ及び右側フラッシャランプをそれぞれ形成する構成(第9の構成)とされている。
【0122】
なお、上記第9の構成から成る車両において、前記スイッチは、前記出力端子と前記左側フラッシャランプとの間を導通して前記出力端子と前記右側フラッシャランプとの間を遮断する第1状態、前記出力端子と前記右側フラッシャランプとの間を導通して前記出力端子と前記左側フラッシャランプとの間を遮断する第2状態、及び、前記出力端子と前記左側フラッシャランプとの間及び前記出力端子と前記右側フラッシャランプとの間をいずれも遮断する第3状態を取り得るものであって、前記第1状態から前記第2状態への切替時、並びに、前記第2状態から前記第1状態への切替時には、その途中に前記第3状態への切替が介在する構成(第10の構成)にしてもよい。
【0123】
<その他の変形例>
なお、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。例えば、駆動装置の駆動対象は、必ずしも発光素子には限らない。また、駆動装置の搭載先についても車両に限定されるものではない。このように、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本明細書中に開示されている発明は、例えば、自動二輪車用のLEDフラッシャランプを点滅駆動するLEDドライバICに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0125】
1 発光システム
100 点滅制御装置(LEDドライバIC)
101H、101L Pチャネル型MOS電界効果トランジスタ
102H、102L ドライバ
103 基準電圧源
104 レギュレータ
105 電圧検出回路(コンパレータ)
106 CRタイマ
107 低電圧保護回路
108 温度保護回路
110 電流検出回路(オープン/短絡保護回路)
111、112、113 コンパレータ
114 減算器
120 論理回路
121 カウンタ
130 定電流源
A 自動二輪車(車両)
A1 LEDヘッドランプ
A2 LEDリアランプ
A3 LEDフラッシャランプ
A4 バッテリ
A5 フラッシャスイッチ
+B バッテリ
CCRT、CVIN、CVREG キャパシタ
DIN ダイオード
LED1~LED4 発光ダイオード
LF、LR 左側フラッシャランプ(フロント、リア)
R1、R2、R3a、R3b、R4a、R4b 抵抗
RCRT1、RCRT2 抵抗
RF、RR 右側フラッシャランプ(フロント、リア)
RSE、RSSE 抵抗
RSW スイッチ抵抗
RVOP1、RVOP2 抵抗
RVSCP1、RVSCP2 抵抗
SW フラッシャスイッチ
ZD ツェナダイオード