(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】放熱構造体、放熱構造体の製造方法およびバッテリー
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6554 20140101AFI20240118BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20240118BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20240118BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240118BHJP
H01M 10/6568 20140101ALI20240118BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20240118BHJP
H01M 10/653 20140101ALI20240118BHJP
【FI】
H01M10/6554
H01L23/36 D
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/6568
H01M10/6556
H01M10/653
(21)【出願番号】P 2020035516
(22)【出願日】2020-03-03
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【氏名又は名称】長谷川 洋
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】安藤 均
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/261641(WO,A1)
【文献】特開2017-183679(JP,A)
【文献】国際公開第2019/244882(WO,A1)
【文献】特開2006-303240(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0057279(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/6554
H01L 23/36
H01M 10/615
H01M 10/625
H01M 10/6568
H01M 10/6556
H01M 10/653
H01M 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源から冷却部材に熱を伝導させて前記熱源からの放熱を可能とする放熱構造体であって、
前記熱源と前記冷却部材との間に配置され、一方向に向かって連続した凹凸を繰り返す形状を有する熱伝導シートと、
前記熱伝導シートに固定され、前記熱伝導シートを保持する機能を有する弾性部材と、
を備え、
前記熱伝導シートは、その厚さ方向に
少なくとも一枚のグラファイトのシートを含み、前記グラファイトのシートがグラフェンの多層構造を有するシートであり、前記熱源と対向する面に形成される1若しくは複数の第1峰部および1若しくは複数の第1谷部と、前記冷却部材と対向する面に形成される1若しくは複数の第2峰部および1若しくは複数の第2谷部と、を備え、
前記弾性部材は、前記第1谷部および前記第2谷部の少なくとも一方に備えられ、
少なくとも1つの前記第1峰部は、前記熱伝導シートの多層断面を露出している部位を有することを特徴とする放熱構造体。
【請求項2】
少なくとも1つの前記第2峰部は、前記熱伝導シートの多層断面を露出している部位を有することを特徴とする請求項
1に記載の放熱構造体。
【請求項3】
前記熱伝導シートは、前記第1峰部および前記第2峰部の内の少なくとも前記第1峰部において前記熱伝導シートの厚さ方向に貫通する貫通スリットを備え、
前記貫通スリットの周囲に前記多層断面を露出していることを特徴とする請求項1
または2に記載の放熱構造体。
【請求項4】
前記弾性部材は、前記第1谷部および前記第2谷部の少なくとも一方に沿う長尺状の部材であって、その長さ方向に沿う中空部を備えることを特徴とする請求項1から
3のいずれか1項に記載の放熱構造体。
【請求項5】
前記弾性部材は、弾性ゴムに、当該弾性ゴムより熱伝導性の高いフィラーを分散させて構成されることを特徴とする請求項1から
4のいずれか1項に記載の放熱構造体。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれかに記載の放熱構造体を製造する方法であって、
前記熱伝導シートを成形する前のプレシートを、前記熱源と対向する面に形成される1若しくは複数の第1峰部および1若しくは複数の第1谷部と、前記冷却部材と対向する面に形成される1若しくは複数の第2峰部および1若しくは複数の第2谷部と、から構成される連続した凹凸を繰り返す形状に成形する成形ステップと、
前記第1谷部および前記第2谷部の少なくとも一方に前記弾性部材を配置する配置ステップと、
を含み、
少なくとも1つの前記複数の第1峰部は、前記熱伝導シートの多層断面を露出している部位を有す
ることを特徴とする放熱構造体の製造方法。
【請求項7】
前記成形ステップは、
前記熱伝導シートを成形する前のプレシートを、当該プレシートの面方向に直交する断面形状が略逆V字形状の1若しくは複数の凸部と、当該断面形状が略V字形状の1若しくは複数の凹部と、から構成される連続した凹凸を繰り返す形状に成形する第1成形ステップと、
前記プレシートの前記熱源と対向する面に形成される少なくとも1つの前記第1峰部の頂部を切断して多層断面を露出している部位を形成する切断ステップと、
を含むことを特徴とする請求項
6に記載の放熱構造体の製造方法。
【請求項8】
前記成形ステップは、
前記プレシートの前記熱源に対向する面から前記プレシートの厚さの途中まで切断する切込みを1若しくは複数形成する切込み形成ステップと、
前記プレシートを、前記切込みが少なくとも1つの前記第1峰部の頂部の位置となるように前記連続した凹凸を繰り返す形状に成形して前記多層断面を露出させる第2成形ステップと、
を含むことを特徴とする請求項
6に記載の放熱構造体の製造方法。
【請求項9】
前記第2成形ステップは、さらに、前記切込みが少なくとも1つの前記第2峰部の頂部の位置となるように前記連続した凹凸を繰り返す形状に成形して前記多層断面を露出させることを特徴とする請求項
8に記載の放熱構造体の製造方法。
【請求項10】
前記成形ステップは、
前記プレシートの前記熱源に対向する面から前記プレシートの厚さ方向に貫通する貫通スリットを、直線的に間隔をおいて形成する貫通スリット形成ステップと、
前記プレシートを、前記貫通スリットが少なくとも1つの前記第1峰部の頂部の位置となるように前記連続した凹凸を繰り返す形状に成形して前記多層断面を露出させる第3成形ステップと、
を含むことを特徴とする請求項
6に記載の放熱構造体の製造方法。
【請求項11】
前記第3成形ステップは、さらに、前記貫通スリットが少なくとも1つの前記第2峰部の頂部の位置となるように前記連続した凹凸を繰り返す形状に成形して前記多層断面を露出させることを特徴とする請求項
10に記載の放熱構造体の製造方法。
【請求項12】
冷却部材を接触させる筐体内に、1または2以上の熱源としてのバッテリーセルを備えたバッテリーであって、
請求項1から
5のいずれか1項に記載の放熱構造体が、前記バッテリーセルと前記冷却部材との間に介在することを特徴とするバッテリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱構造体、放熱構造体の製造方法およびバッテリーに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、航空機、船舶あるいは家庭用若しくは業務用電子機器の制御システムは、より高精度かつ複雑化してきており、それに伴って、回路基板上の小型電子部品の集積密度が増加の一途を辿っている。この結果、回路基板周辺の発熱による電子部品の故障や短寿命化を解決することが強く望まれている。
【0003】
回路基板からの速やかな放熱を実現するには、従来から、回路基板自体を放熱性に優れた材料で構成し、ヒートシンクを取り付け、あるいは冷却ファンを駆動するといった手段を単一で若しくは複数組み合わせて行われている。これらの内、回路基板自体を放熱性に優れた材料、例えばダイヤモンド、窒化アルミニウム(AlN)、立方晶窒化ホウ素(cBN)等から構成する方法は、回路基板のコストを極めて高くしてしまう。また、冷却ファンの配置は、ファンという回転機器の故障、故障防止のためのメンテナンスの必要性や設置スペースの確保が難しいという問題を生じる。これに対して、放熱フィンは、熱伝導性の高い金属(例えば、アルミニウム)を用いた柱状あるいは平板状の突出部位を数多く形成することによって表面積を大きくして放熱性をより高めることのできる簡易な部材であるため、放熱部品として汎用的に用いられている(特許文献1を参照)。
【0004】
ところで、現在、世界中で、地球環境への負荷軽減を目的として、従来からのガソリン車あるいはディーゼル車を徐々に電気自動車に転換しようとする動きが活発化している。特に、フランス、オランダ、ドイツをはじめとする欧州諸国の他、中国でも、電気自動車の普及が進行してきている。電気自動車の普及には、高性能バッテリーの開発の他、多数の充電スタンドの設置等の課題がある。特に、リチウム系の自動車用バッテリーの充放電機能を高めるための技術開発が必要とされている。上記自動車バッテリーは、摂氏60度以上の高温下では充放電の機能を十分に発揮できないことが良く知られている。このため、先に説明した回路基板と同様、バッテリーにおいても、放熱性を高めることが重要視されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
熱源からの放熱効率をより高めるには、熱伝導の経路が多く、高強度かつ形態復元性の高い放熱構造体が求められている。また、放熱構造体の軽量化も重要なファクタとなる。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するべく、熱伝導の経路が多く、高強度で、形態復元性が高く、かつ放熱構造体の軽量化を図ることのできる放熱構造体、放熱構造体の製造方法、およびバッテリーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係る放熱構造体は、熱源から冷却部材に熱を伝導させて前記熱源からの放熱を可能とする放熱構造体であって、
前記熱源と前記冷却部材との間に配置され、一方向に向かって連続した凹凸を繰り返す形状を有する熱伝導シートと、
前記熱伝導シートに固定され、前記熱伝導シートを保持する機能を有する弾性部材と、
を備え、
前記熱伝導シートは、その厚さ方向に多層構造を有するシートであり、前記熱源と対向する面に形成される1若しくは複数の第1峰部および1若しくは複数の第1谷部と、前記冷却部材と対向する面に形成される1若しくは複数の第2峰部および1若しくは複数の第2谷部と、を備え、
前記弾性部材は、前記第1谷部および前記第2谷部の少なくとも一方に備えられ、
少なくとも1つの前記第1峰部は、前記熱伝導シートの多層断面を露出している部位を有する。
(2)別の実施形態に係る放熱構造体において、好ましくは、前記熱伝導シートは、その厚さ方向に多層構造を有するグラファイトのシートを含んでも良い。
(3)別の実施形態に係る放熱構造体において、好ましくは、少なくとも1つの前記第2峰部は、前記熱伝導シートの多層断面を露出している部位を有していても良い。
(4)別の実施形態に係る放熱構造体において、好ましくは、前記熱伝導シートは、前記第1峰部および前記第2峰部の内の少なくとも前記第1峰部において前記熱伝導シートの厚さ方向に貫通する貫通スリットを備え、前記貫通スリットの周囲に前記多層断面を露出していても良い。
(5)別の実施形態に係る放熱構造体において、好ましくは、前記弾性部材は、前記第1谷部および前記第2谷部の少なくとも一方に沿う長尺状の部材であって、その長さ方向に沿う中空部を備えていても良い。
(6)別の実施形態に係る放熱構造体において、好ましくは、前記弾性部材は、弾性ゴムに、当該弾性ゴムより熱伝導性の高いフィラーを分散させて構成されていても良い。
(7)一実施形態に係る放熱構造体の製造方法は、上述のいずれかの放熱構造体を製造する方法であって、
前記熱伝導シートを成形する前のプレシートを、前記熱源と対向する面に形成される1若しくは複数の第1峰部および1若しくは複数の第1谷部と、前記冷却部材と対向する面に形成される1若しくは複数の第2峰部および1若しくは複数の第2谷部と、から構成される連続した凹凸を繰り返す形状に成形する成形ステップと、
前記第1谷部および前記第2谷部の少なくとも一方に前記弾性部材を配置する配置ステップと、を含み、
少なくとも1つの前記複数の第1峰部は、前記熱伝導シートの多層断面を露出している部位を有する。
(8)別の実施形態に係る放熱構造体の製造方法において、好ましくは、
前記成形ステップは、
前記熱伝導シートを成形する前のプレシートを、当該プレシートの面方向に直交する断面形状が略逆V字形状の1若しくは複数の凸部と、当該断面形状が略V字形状の1若しくは複数の凹部と、から構成される連続した凹凸を繰り返す形状に成形する第1成形ステップと、
前記プレシートの前記熱源と対向する面に形成される少なくとも1つの前記第1峰部の頂部を切断して多層断面を露出している部位を形成する切断ステップと、
を含んでいても良い。
(9)別の実施形態に係る放熱構造体の製造方法において、好ましくは、
前記成形ステップは、
前記プレシートの前記熱源に対向する面から前記プレシートの厚さの途中まで切断する切込みを1若しくは複数形成する切込み形成ステップと、
前記プレシートを、前記切込みが少なくとも1つの前記第1峰部の頂部の位置となるように前記連続した凹凸を繰り返す形状に成形して前記多層断面を露出させる第2成形ステップと、
を含んでいても良い。
(10)別の実施形態に係る放熱構造体の製造方法において、好ましくは、
前記第2成形ステップは、さらに、前記切込みが少なくとも1つの前記第2峰部の頂部の位置となるように前記連続した凹凸を繰り返す形状に成形して前記多層断面を露出させるようにしても良い。
(11)別の実施形態に係る放熱構造体の製造方法において、好ましくは、
前記成形ステップは、
前記プレシートの前記熱源に対向する面から前記プレシートの厚さ方向に貫通する貫通スリットを、直線的に間隔をおいて形成する貫通スリット形成ステップと、
前記プレシートを、前記貫通スリットが少なくとも1つの前記第1峰部の頂部の位置となるように前記連続した凹凸を繰り返す形状に成形して前記多層断面を露出させる第3成形ステップと、
を含んでいても良い。
(12)別の実施形態に係る放熱構造体の製造方法において、好ましくは、
前記第3成形ステップは、さらに、前記貫通スリットが少なくとも1つの前記第2峰部の頂部の位置となるように前記連続した凹凸を繰り返す形状に成形して前記多層断面を露出させるようにしても良い。
(13)一実施形態に係るバッテリーは、冷却部材を接触させる筐体内に、1または2以上の熱源としてのバッテリーセルを備えたバッテリーであって、上述のいずれかの放熱構造体が前記バッテリーセルと前記冷却部材との間に介在する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、熱伝導の経路が多く、高強度で、形態復元性が高く、かつ放熱構造体の軽量化を図ることのできる放熱構造体、放熱構造体の製造方法、およびバッテリーを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る放熱構造体の斜視図を示す。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る放熱構造体の平面図およびその一部Aの拡大図をそれぞれ示す。
【
図3】
図3は、
図2におけるB-B線断面図およびその一部Cの拡大図をそれぞれ示す。
【
図4】
図4は、第2実施形態に係る放熱構造体の
図3と同視の断面図およびその一部Dの拡大図をそれぞれ示す。
【
図5】
図5は、第3実施形態に係る放熱構造体の斜視図、当該放熱構造体の一部Eの拡大図および当該拡大図の一部Fの走査型電子顕微鏡による写真を示す。
【
図6】
図6は、
図5の放熱構造体の平面図、正面図および右側面図を示す。
【
図7】
図7は、
図6の平面図における一部G1、G2およびG3の各拡大図を示す。
【
図8】
図8は、
図5の放熱構造体の変形例の一部を拡大した写真を示す。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係る製造方法の主なステップを含むフローチャートを示す。
【
図10】
図10は、第1実施形態に係る製造方法の主な工程を斜視図にて示す。
【
図11】
図11は、第1実施形態に係る製造方法の主な工程を
図3と同視の断面図にて示す。
【
図12】
図12は、第2実施形態に係る製造方法の主なステップを含むフローチャートを示す。
【
図13】
図13は、第2実施形態に係る製造方法の主な工程を
図10におけるH-H線断面図と同視の断面図にて示す。
【
図15】
図15は、第3実施形態に係る製造方法の主なステップを含むフローチャートを示す。
【
図16】
図16は、第3実施形態に係る製造方法の主な工程を示す。
【
図18】
図18は、本発明の第1実施形態に係るバッテリーを組み立てる状況の縦断面図を示す。
【
図19】
図19は、本発明の第1実施形態に係るバッテリーを組み立てた後の状態の縦断面図を示す。
【
図20】
図20は、本発明の第2実施形態に係るバッテリーを組み立てる状況の縦断面図を示す。
【
図21】
図21は、本発明の第2実施形態に係るバッテリーを組み立てた後の状態の縦断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の各実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、各実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0012】
1.放熱構造体
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る放熱構造体の斜視図を示す。
図2は、第1実施形態に係る放熱構造体の平面図およびその一部Aの拡大図をそれぞれ示す。
図3は、
図2におけるB-B線断面図およびその一部Cの拡大図をそれぞれ示す。
【0013】
(1)放熱構造体の概略構成
この実施形態に係る放熱構造体1は、熱源と冷却部材との間にあって、熱源から冷却部材に熱を伝導させて熱源からの放熱を可能とする放熱構造体である。放熱構造体1は、熱伝導シート10と、弾性部材20とを備える。熱伝導シート10は、熱源と冷却部材との間に配置され、一方向に向かって連続した凹凸を繰り返す形状を有する。弾性部材20は、熱伝導シート10に固定され、熱伝導シート10を保持する機能を有する部材である。この実施形態において、熱源は、
図1の紙面上方に配置され、冷却部材は、
図1の紙面下方に配置されるものとする。熱伝導シート10は、その厚さ方向に多層構造を有するシートである。また、熱伝導シート10は、熱源と対向する面に形成される複数の第1峰部12および複数の第1谷部14と、冷却部材と対向する面に形成される複数の第2峰部16および複数の第2谷部18と、を備える。弾性部材20は、第1谷部14および第2谷部18の少なくとも一方に備えられる。また、第1峰部12と第2峰部16は、熱伝導シートの多層断面MLを露出している部位を有する。
【0014】
次に、放熱構造体1の各構成要素について説明する。
【0015】
(2)熱伝導シート
熱伝導シート10は、一方向(
図1では、紙面右方向)に第1峰部12(または第2峰部16)と第1谷部14(または第2谷部18)とが交互に繰り返された蛇腹状のシート(ジグザグ型のシートともいう)である。熱伝導シート10は、その厚さ方向に多層構造を有するシートであり、好ましくは、その厚さ方向に多層構造を有するグラファイトのシートである。熱伝導シート10は、面方向の熱伝導率が厚さ方向の熱伝導率よりも高いシートである。熱伝導シート10の面方向は、凹凸を繰り返す形状を成形する前のプレシート80(後述の
図6のa参照)の平面に水平な方向である。また、熱伝導シート10の厚さ方向は、プレシート80の平面の直交方向、すなわち、プレシート80の厚さ方向である。熱伝導シート10は、この実施形態では、グラファイトから主に構成される可撓性に富むシートとすることができる。なお、熱伝導シート10は、グラファイトに加え、樹脂を含んでいても良い。より詳細には、熱伝導シート10は、グラフェンが多層積層されたシートを複数備え、各シート間を樹脂によって埋めた構造を有していても良い。さらに、熱伝導シート10は、グラファイト以外の材料、例えば、単結晶シリコンを積層したシート、アルミニウムやセラミックスのフィルムを多層にして、各層間に樹脂を挟んだシートであっても良い。熱伝導シート10は、その厚さ方向の熱伝導率よりも、面方向の熱伝導率の方が高い。上述の熱伝導シート10の構造および材料の変形例は、以後の各実施形態における熱伝導シート10a,10bについても同様である。
【0016】
第1峰部12は、熱伝導シート10の多層断面MLを露出している部位である。第1峰部12は、頂部13を平坦面とする平坦状峰部であって、熱伝導シート10の多層断面MLが熱源と対向するように配置されている。第2峰部16は、熱伝導シート10の多層断面MLを露出している部位である。第2峰部16は、頂部17を平坦面とする平坦状峰部であって、熱伝導シート10の多層断面MLが冷却部材と対向するように配置されている。第1谷部14は、底部15を先鋭形状とする尖鋭状谷部である。第2谷部18は、底部19を先鋭形状とする尖鋭状谷部である。すなわち、第1峰部12および第2峰部16の頂部13,17は、平坦面を形成しているのに対し、第1谷部14および第2谷部18の底部15,19は、平坦面を形成していない。ここで、「尖鋭状」は、微視的には湾曲状または平坦状であっても良いが、平坦状峰部に比べて尖っている形状を意味する。以後の実施形態でも同様である。なお、第1峰部12および第2峰部16は、熱伝導シート10の多層断面MLを露出していれば、その形態上の制約はされない。例えば、頂部13,17は、多層断面MLを備えていて、かつ非平坦面であっても良い。
【0017】
第1峰部12および第2峰部16の頂部13,17は、弾性部材20の長さ方向に沿うグラファイト層が複数積層された多層断面MLを有する(
図2の一部Aの拡大図参照)。また、熱伝導シート10は、第1峰部12(または第2谷部18)と第2峰部16(または第1谷部14)とを繋ぐ斜面に平行となるように複数のグラファイト層が積層されている(
図3参照)。よって、熱源と冷却部材とを繋ぐ熱伝導シート10の斜面(第1峰部12と第2峰部16とを繋ぐ斜面)は、熱伝導シート10の熱伝導率の高い方向(面方向)に略平行となる。また、熱源および冷却部材と対向する第1峰部12および第2峰部16の頂部13,17は、複数のグラファイト層の端面を露出した多層断面MLを有する。このため、熱源からの熱は、第1峰部12に露出されている多層断面MLから複数のグラファイト層(熱伝導シート10の熱伝導率の高い方向)に沿って熱伝導シート10内を伝わり、第2峰部16に露出されている多層断面MLから冷却部材へ伝達される。このような多層断面MLを露出した部位を熱源および冷却側の部位の内の少なくとも熱源に接触可能とすることにより、熱の伝達経路を増やすことができる。したがって、熱伝導シート10は、熱源から冷却部材への伝熱効率を高めることができる。
【0018】
熱伝導シート10の熱伝導率は、好ましくは200W/mK以上である。この実施形態では、熱伝導シート10は、グラファイトシートであるため、熱伝導性と導電性に優れる。熱伝導シート10は、湾曲性(若しくは屈曲性)に優れるシートであるのが好ましく、その厚さに制約はないが、0.05~5mmが好ましく、0.2~1.0mmがより好ましい。ただし、熱伝導シート10は、その厚さが増加するほど熱伝導率を高くできるが、屈曲性が低下する。このため、シートの強度、可撓性および熱伝導性を総合的に考慮して、その厚さを決定するのが好ましい。
【0019】
(3)弾性部材
この実施形態において、弾性部材20は、第2谷部18に固定されている。固定方法は、不問であるが、好ましくは接着である。よって、熱伝導シート10と弾性部材20との隙間には、接着層23が存在する。弾性部材20は、好ましくは、熱伝導シート10が備える複数の第2谷部18のすべてに備えられている。弾性部材20は、第1谷部14および第2谷部18の少なくとも一方に沿う長尺状の部材である。また、弾性部材20は、その長さ方向に沿う中空部22を備える。中空部22は、放熱構造体1のより軽量化に寄与すると共に、弾性部材20のより柔軟な変形にも寄与する。中空部22は、この実施形態では、弾性部材20の長さ方向に貫通する貫通路である。ただし、中空部22は、その長さ方向の両端の少なくとも一方を閉塞されていても良い。また、中空部22は、その長さ方向に直交する断面形状に制約はなく、例えば、円形、楕円形、矩形、多角形等であっても良い。弾性部材20は、その長さ方向に中空部22を備えず、中実の形状(柱状形状ともいう)を有していても良い。また、弾性部材20は、熱伝導シート10が備える複数の第2谷部18の内の少なくとも1以上の谷部に備えられていれば良い。また、弾性部材20は、熱伝導シート10が備える複数の第1谷部14の内の少なくとも1以上の谷部に備えられていても良い。
【0020】
弾性部材20の重要な機能は、放熱構造体1に対して、強度と回復力とを付与すること、さらには、熱伝導シート10の屈曲部分の多くの部分を下方に向かせることである。強度は、蛇腹状の熱伝導シート10の形状を保持するのに必要である。回復力は、弾性部材20の弾性変形性を担保するのに必要である。
【0021】
弾性部材20は、熱源からの熱伝導シート10に加わる荷重によって熱伝導シート10が破損等しないようにする保護部材としての機能も有する。弾性部材20は、熱伝導シート10に比べて、熱源からの押圧およびその開放に起因して弾性変形しやすい。このため、弾性部材20は、熱伝導シート10に亀裂が生じる事態を抑制することができる。なお、弾性部材20は、この実施形態では、熱伝導シート10に比べて低熱伝導性の部材である。
【0022】
弾性部材20は、好ましくは、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ニトリルゴム(NBR)あるいはスチレンブタジエンゴム(SBR)等の熱硬化性エラストマー; ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、ブタジエン系、フッ素系等の熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの複合物等を含むように構成される。弾性部材20は、熱伝導シート10を伝わる熱によって溶融あるいは分解等せずにその形態を維持できる程度の耐熱性の高い材料から構成されるのが好ましい。この実施形態では、弾性部材20は、より好ましくは、ウレタン系エラストマー中にシリコーンを含浸したもの、あるいはシリコーンゴムにより構成される。弾性部材20は、その熱伝導性を少しでも高めるために、ゴム中にAl2O3、AlN、cBN、hBN、ダイヤモンドの粒子等に代表されるフィラーを分散して構成されていても良い。弾性部材20は、その内部に気泡を含むものの他、気泡を含まないものでも良い。また、「弾性部材」は、柔軟性に富み、熱源の表面に密着可能に弾性変形可能な部材を意味し、かかる意味では「ゴム状弾性体」あるいは「クッション部材」と読み替えることもできる。さらに、弾性部材20の変形例としては、上記ゴム状弾性体ではなく、金属を用いて構成することもできる。弾性部材20は、樹脂やゴム等から形成されたスポンジあるいはソリッド(スポンジのような多孔質ではない構造のもの)で構成することも可能である。
【0023】
放熱構造体1は、厚さ方向(
図3の紙面上下方向)に圧縮力を受けると、
図3の一部拡大
図Cの右図に示す状態になる。すなわち、熱伝導シート10の凹凸が浅くなり、第2谷部18内の弾性部材20が扁平状になる。第1峰部12および第2峰部16は、頂部13,17が平坦面を形成しているため、熱源および冷却部材との接触面積が大きくなり、伝熱効率を高めることができる。また、弾性部材20は、厚さ方向の圧縮力が加えられなくなった場合に、熱伝導シート10の凹凸構造を元の状態(
図3の一部拡大
図Cの左図の状態)に復元する役割を持つ。
【0024】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る放熱構造体について説明する。前述の実施形態と共通する部分については同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0025】
図4は、第2実施形態に係る放熱構造体の
図3と同視の断面図およびその一部Dの拡大図をそれぞれ示す。
【0026】
第2実施形態に係る放熱構造体1aは、第1実施形態に係る放熱構造体1と類似の構造を有するが、熱伝導シート10に代えて熱伝導シート10aを備える点において、第1実施形態に係る放熱構造体1と異なる。
【0027】
熱伝導シート10aは、所定方向に第1峰部12(または第2峰部16)と第1谷部14(または第2谷部18)とが交互に繰り返された蛇腹状のシートである。第1峰部12は、頂部13を平坦面とする平坦状峰部であって、熱伝導シート10の多層断面MLを露出している部位である。一方、第2峰部16は、頂部17aを尖鋭形状とする尖鋭状峰部であって、熱伝導シート10の多層断面MLを露出していない。第1谷部14は、底部15を尖鋭形状とする尖鋭状谷部である。第2谷部18は、底部19を先鋭形状とする尖鋭状谷部である。熱伝導シート10aにおいて、頂部17aの形状以外については、先述の実施形態に係る熱伝導シート10と同様の構成であるため、詳細な説明は省略する。このように構成された放熱構造体1aにおいても、先述の各実施形態と同様の効果を奏する。なお、熱伝導シート10aは、熱伝導シート10aが備える複数の第2峰部16の内の少なくとも1以上の峰部が尖鋭状峰部であれば良く、例えば、平坦状峰部と尖鋭状峰部とが混在していても良い。
【0028】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る放熱構造体について説明する。前述の実施形態と共通する部分については同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0029】
図5は、第3実施形態に係る放熱構造体の斜視図、当該放熱構造体の一部Eの拡大図および当該拡大図の一部Fの走査型電子顕微鏡による写真を示す。
図6は、
図5の放熱構造体の平面図、正面図および右側面図を示す。
図7は、
図6の平面図における一部G1、G2およびG3の各拡大図を示す。
図8は、
図5の放熱構造体の変形例の一部を拡大した写真を示す。
【0030】
この実施形態に係る放熱構造体1bは、熱源と冷却部材との間にあって、熱源から冷却部材に熱を伝導させて熱源からの放熱を可能とする放熱構造体である。放熱構造体1bは、熱伝導シート10bと、弾性部材20とを備える。熱伝導シート10bは、熱源と冷却部材との間に配置され、一方向に向かって連続した凹凸を繰り返す形状を有する。弾性部材20は、熱伝導シート10bに固定され、熱伝導シート10bを保持する機能を有する部材である。熱伝導シート10は、その厚さ方向に多層構造を有するシートである。また、熱伝導シート10は、熱源と対向する面に形成される複数の第1峰部12および複数の第1谷部14と、冷却部材と対向する面に形成される複数の第2峰部16および複数の第2谷部18と、を備える。弾性部材20は、全ての第1谷部14および全ての第2谷部18に備えられている。ただし、弾性部材20は、一部若しくは全部の第1谷部14、一部若しくは全部の第2谷部18、一部の第1谷部14と全部の第2谷部18、全部の第1谷部14と一部の第2谷部18に、備えられていても良い。一例を挙げるなら、
図8の変形例に係る放熱構造体1cのように、弾性部材20を、第2谷部18のみに備えることもできる。
【0031】
第1峰部12と第2峰部16は、熱伝導シートの多層断面MLを露出している部位を有する。多層断面MLは、第1峰部12および第2峰部16の各長さ方向において、これら峰部12,16の各全長ではなく、断続的に存在する。
【0032】
熱伝導シート10bは、一方向(
図5では、紙面右方向)に第1峰部12(または第2峰部16)と第1谷部14(または第2谷部18)とが交互に繰り返された蛇腹状のシート(ジグザグ型のシートともいう)である。熱伝導シート10bは、その厚さ方向に多層構造を有するシートであり、好ましくは、その厚さ方向に多層構造を有するグラファイトのシートである。熱伝導シート10bは、面方向の熱伝導率が厚さ方向の熱伝導率よりも高いシートである。なお、熱伝導シート10bは、第1実施形態に係る放熱構造体1の熱伝導シート10と同様、グラファイトに加え、樹脂を含んでいても良い。また、熱伝導シート10bは、グラフェンが多層積層されたシートを複数備え、各シート間を樹脂によって埋めた構造を有していても良い。さらに、熱伝導シート10bは、グラファイト以外の材料、例えば、単結晶シリコンを積層したシート、アルミニウムやセラミックスのフィルムを多層にして、各層間に樹脂を挟んだシートであっても良い。
【0033】
熱伝導シート10bは、第1峰部12および第2峰部16の両峰部において、熱伝導シート10bの厚さ方向に貫通する貫通スリット30を備える。また、熱伝導シート10bは、貫通スリット30の周囲に多層断面MLを露出している。
図5では、第1峰部12のみが現れているが、第2峰部16においても同様に、貫通スリット30の周囲に多層断面MLが露出している。
【0034】
図5の走査型電子顕微鏡写真(SEM写真)に示すように、熱伝導シート10bの多層断面MLは、グラフェンシートが多層に重なった構造の断面である。熱源からの熱はグラフェンの積層方向(熱伝導シート10bの厚さ方向)の熱伝導率よりも、グラフェンの面方向(熱伝導シート10bの面に平行の方向)の熱伝導率の方が高い。熱源が熱伝導シート10bの外表面のみに接していると、熱源からの熱は、熱伝導シート10bの表面に沿う経路と、グラフェンの積層方向の経路を伝わる。しかし、熱伝導シート10bの多層断面MLと熱源(さらには、冷却部材側)とを接触させると、熱は、熱伝導シート10bの表面に沿う経路と、熱伝導シート10b内部の多数の層の経路とを伝わりやすくなる。このため、熱源の放熱効果を極めて高くすることができる。
【0035】
図7に示すように、多層断面MLは、第1峰部12(および第2峰部16)の貫通スリット30の周囲に形成されている。貫通スリット30は、第1峰部12(および第2峰部16)において、直線的に間隔をおいて形成されている。このため、多層断面MLも、また、第1峰部12(および第2峰部16)において、間隔をおいて形成されている。このように、熱源(および冷却部材側の部材)と接する峰部12,16の全面ではなく、一部に多層断面MLが形成されていても、熱伝導シート10bの内部に存在する多数の層を熱経路として利用可能である。また、多層断面MLを峰部12,16の一部に形成しているので、熱伝導シート10bを熱源で押圧して使用しても、熱伝導シート10bが峰部12,16で切断するリスクを低減できる。
【0036】
2.放熱構造体の製造方法
次に、本発明の各実施形態に係る放熱構造体の好適な製造方法の一例を説明する。放熱構造体の製造方法の実施形態は、熱伝導シート10,10a,10bを成形する前のプレシート80を、熱源と対向する面に形成される1若しくは複数の第1峰部12および1若しくは複数の第1谷部14と、冷却部材と対向する面に形成される1若しくは複数の第2峰部16および1若しくは複数の第2谷部18と、から構成される連続した凹凸を繰り返す形状に成形する成形ステップと、第1谷部14および第2谷部18の少なくとも一方に弾性部材20を配置する配置ステップと、を含む。
【0037】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係る製造方法について説明する。
【0038】
図9は、第1実施形態に係る製造方法の主なステップを含むフローチャートを示す。
図10は、第1実施形態に係る製造方法の主な工程を斜視図にて示す。
図11は、第1実施形態に係る製造方法の主な工程を
図3と同視の断面図にて示す。なお、
図11は、
図3と同視の断面図である。
【0039】
この実施形態に係る放熱構造体の製造方法は、先に説明した第1実施形態に係る放熱構造体1を製造する方法である。この実施形態に係る放熱構造体1の製造方法は、第1成形ステップ(S110)と、配置ステップ(S120)と、第1峰部切断ステップ(S130)と、第2峰部切断ステップ(S140)と、を含む。第1成形ステップ、第1峰部切断ステップおよび第2峰部切断ステップは、いずれも、成形ステップに含まれる。以下、各ステップについて説明する。なお、この実施形態において、熱源は、
図10の紙面上方に配置され、冷却部材は、
図10の紙面下方に配置されるものとする。以後の実施形態においても同様である。
【0040】
(1)第1成形ステップ(S110)
第1成形ステップは、熱伝導シート10を成形する前のプレシート80を、当該プレシート80の面方向に直交する断面形状が略逆V字形状の複数の凸部(後述の第1峰部82または第2峰部86)と、当該断面形状が略V字形状の複数の凹部(後述の第1谷部84または第2谷部88)と、から構成される連続した凹凸を繰り返す形状に成形するステップである(
図10のaおよびb参照)。このように成形されたプレシート80は、熱源と対向する面に形成される複数の第1峰部82(「プレシート80の第1峰部82」ともいう)および複数の第1谷部84(「プレシート80の第1谷部84」ともいう)と、冷却部材と対向する面に形成される複数の第2峰部86(「プレシート80の第2峰部86」ともいう)および複数の第2谷部88(「プレシート80の第2谷部88」ともいう)と、を備える。プレシート80の第1峰部82および第2峰部86の頂部83,87は、尖鋭形状を有する。すなわち、プレシート80の第1峰部82及び第2峰部86は、熱伝導シート10の多層断面MLを露出していない。また、プレシート80の第1谷部84および第2谷部88の底部85,89は、尖鋭形状を有する。プレシート80の成形方法は、特に制約はなく、例えば、プレシート80を山折りおよび谷折りを繰り返して折り曲げることにより凹凸形状に成形することができる。なお、この実施形態において、プレシート80は、
図1に示す放熱構造体1が備える熱伝導シート10を成形する前段階の状態のシートを示すものとする。すなわち、この実施形態において、熱伝導シート10は、第1峰部82および第2峰部86が熱伝導シート10の多層断面MLを露出しているよう成形されたシート(後述の
図11のg参照)を示す。また、この実施形態において、プレシート80は、例えば、平面状のシート(
図10のa参照)や第1峰部82および/または第2峰部86が尖鋭状峰部であるシート(
図10のcおよび
図11のf参照)等の当該熱伝導シート10が成形される前段階の状態のシートを総称して示すものとする。以後の実施形態でも同様である。
【0041】
(2)配置ステップ(S120)
配置ステップは、プレシート80の第2谷部88に弾性部材20を配置するステップである(
図10のcおよび
図11のd参照)。配置ステップは、好ましくは、接着剤23aを用いてプレシート80の第2谷部88に弾性部材20を固定する。なお、第1谷部84のみに、あるいは、第1谷部84および第2谷部88に、弾性部材20を配置しても良い。接着剤23aは、その後、接着層23となる。接着剤23aは、少なくとも熱源からの放熱による温度上昇に耐え得るような耐熱性に優れたものを用いることが好ましい。また、接着剤23aは、熱伝導性に優れている方が好ましいが、熱伝導性の低いものでも良い。接着剤23aの塗布方法は、接着剤23aを介してプレシート80の第2谷部88に弾性部材20が固定されれば、特に制約はない。例えば、接着剤23aは、プレシート80の第2谷部88の両側面に接触する弾性部材20の両側面に塗布されても良いし、第2谷部88の両側面に塗布されても良い。また、接着剤23aは、例えば、プレシート80の第2谷部88の底部に塗布されても良いし、第2谷部88と接触する弾性部材20の側面に塗布されても良い。
【0042】
(3)第1峰部切断ステップ(S130)
第1峰部切断ステップ(切断ステップの一例)は、プレシート80の第1峰部82の頂部83を切断して多層断面MLを露出している部位を形成するステップである(
図11のe参照)。第1峰部切断ステップは、頂部83の内、第2谷部88に貫通しない所定の領域を水平に切断する。これにより、第1峰部82の頂部83に多層断面MLが形成され、且つ、第2谷部88の底部89が尖鋭形状となる。こうして、プレシート80の第1峰部82は、プレシート80(熱伝導シート10)の多層断面MLを露出する。すなわち、プレシート80の第1峰部82および第2谷部88は、熱伝導シート10の第1峰部12および第2谷部18と同じ形態となる。なお、頂部83を切断する方法は、特に制約はないが、例えば、レーザー加工、切削等の機械的加工が用いられる。
【0043】
(4)第2峰部切断ステップ(S140)
第2峰部切断ステップ(切断ステップの一例)は、プレシート80の第2峰部86の頂部87を切断して多層断面MLを露出している部位を形成するステップである(
図11のfおよびg参照)。第2峰部切断ステップは、頂部87の内、第1谷部84に貫通しない所定の領域を切断する。これにより、第2峰部86の頂部87に多層断面MLが形成され、且つ、第1谷部84の底部85が尖鋭形状となる。こうして、プレシート80の第2峰部86は、プレシート80(熱伝導シート10)の多層断面MLを露出する。すなわち、第1峰部12および第2峰部16は、熱伝導シート10の多層断面MLを露出している平坦状峰部である。なお、頂部87を切断する方法は、第1峰部切断ステップ(S130)と同様に、特に制約はないが、例えば、レーザー加工、切削等の機械的加工が用いられる。
【0044】
このように、放熱構造体1は、凹凸形状に成形されたプレシート80の第1峰部82および第2峰部86を切断し、且つ、第2谷部88に弾性部材20を配置するという簡易な方法で製造可能であり、生産性を高めることができる。なお、配置ステップ(S120)は、第1峰部切断ステップ(S130)および第2峰部切断ステップ(S140)が行われた後に実行されても良い。また、第1峰部切断ステップ(S130)は、第2峰部切断ステップ(S140)が行われた後に実行されても良い。
【0045】
第2実施形態に係る放熱構造体1aは、上述の第1実施形態の製造方法(
図10参照)と同様の方法により製造することができる。この場合、放熱構造体1aは、第2峰部切断ステップ(S140)を省略することにより製造される。
【0046】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る製造方法について説明する。前述の実施形態と共通する部分については同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0047】
図12は、第2実施形態に係る製造方法の主なステップを含むフローチャートを示す。
図13は、第2実施形態に係る製造方法の主な工程を
図10におけるH-H線断面図と同視の断面図にて示す。
図14は、第2実施形態に係る製造方法の主な工程を
図13と同視の断面図にて示す。なお、
図13は、iの一部Iの拡大図およびjの一部Jの拡大図を含む。また、
図14は、kの一部Kの拡大図を含む。
【0048】
この実施形態に係る放熱構造体の製造方法は、先に説明した第1実施形態に係る放熱構造体1を製造する別の方法である。この実施形態に係る放熱構造体1の製造方法は、第1切込み形成ステップ(S210)と、第2切込み形成ステップ(S220)と、第2成形ステップ(S230)と、配置ステップ(S240)と、を含む。第1切込み形成ステップ、第2切込み形成ステップおよび第2成形ステップは、いずれも、成形ステップに含まれる。以下、各ステップについて説明する。
【0049】
(1)第1切込み形成ステップ(S210)
第1切込み形成ステップ(切込み形成ステップの一例)は、平面状のプレシート80の熱源に対向する面からプレシート80の厚さの途中まで切断する切込み90を複数形成するステップである(
図13のhおよびi参照)。第1切込み形成ステップは、好ましくは、プレシート80の熱源に対向する面から反対側の面(冷却部材に対向する面)まで貫通しない所定の長さの切込み(例えば、ハーフカット)90を、当該熱源に対向する面からプレシート80の厚さ方向に形成する。第1切込み形成ステップは、好ましくは、後述の第2成形ステップ(S230)において熱伝導シート10に形成される第1峰部12の個数と同数の切込み90を形成する。なお、切込み90を形成する方法は、特に制約はないが、例えば、レーザー加工等の機械的加工が用いられる。以後の実施形態においても同様である。
【0050】
(2)第2切込み形成ステップ(S240)
第2切込み形成ステップ(切込み形成ステップの一例)は、熱源に対向する面に切込み90が形成されたプレシート80の冷却部材に対向する面からプレシート80の厚さの途中まで切断する切込み90を複数形成するステップである(
図13のj参照)。第2切込み形成ステップは、好ましくは、プレシート80の冷却部材に対向する面から反対側の面(熱源に対向する面)まで貫通しない所定の長さの切込み(例えば、ハーフカット)90を、当該冷却部材に対向する面からプレシート80の厚さ方向に形成する。第2切込み形成ステップは、好ましくは、後述の第2成形ステップ(S230)において熱伝導シート10に形成される第2峰部16の個数と同数の切込み90を形成する。
【0051】
(3)第2成形ステップ(S230)
第2成形ステップは、切込み90が形成されたプレシート80を、熱源に対向する面に形成された切込み90が第1峰部12の頂部13の位置となるように、熱源と対向する面に形成される複数の第1峰部12および複数の第1谷部14と、冷却部材と対向する面に形成される複数の第2峰部16および複数の第2谷部18と、から構成される連続した凹凸を繰り返す形状に成形するステップである(
図14のk参照)。第2成形ステップは、好ましくは、切込み90が形成されたプレシート80を、冷却部材に対向する面に形成された切込み90が第2峰部16の頂部17の位置となるように、当該連続した凹凸を繰り返す形状に成形する。このようにプレシート80を成形することにより、第1峰部12および第2峰部16が熱伝導シート10の多層断面MLを露出している部分となる。第1谷部14および第2谷部18は、尖鋭状谷部である。第1峰部12および第2峰部16は、第2成形ステップにおいて切込み90を開いて凹凸形状を成形することにより、頂部13,17が多層断面MLを露出している部分となる。なお、プレシート80の成形方法は、特に制約はなく、例えば、プレシート80を山折りおよび谷折りを繰り返して折り曲げることにより凹凸形状に成形することができる。
【0052】
(4)配置ステップ(S240)
配置ステップ(S240)は、第2谷部18に弾性部材20を配置するステップである(
図14のl参照)。配置ステップは、好ましくは、接着剤23aを介して第2谷部18に弾性部材20を固定する。接着剤23aは、その後、接着層23となる。なお、第1谷部14のみに、あるいは、第1谷部14および第2谷部18に、弾性部材20を配置しても良い。接着剤23aおよびその塗布方法については、第1実施形態における配置ステップ(S120)と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0053】
このように、放熱構造体1は、平面状のプレシート80の両面に切込み90を形成した状態で凹凸形状に成形して熱伝導シート10を形成し、かつ第2谷部18に弾性部材20を配置するという簡易な方法で製造可能であり、生産性を高めることができる。なお、第1切込み形成ステップ(S210)は、第2切込み形成ステップ(S220)が行われた後に実行されても良い。また、第2成形ステップ(S230)が実行された後に、第1切込み形成ステップ(S210)および第2切込み形成ステップ(S220)が実行されても良い。この場合、第2成形ステップ(S230)は、第1成形ステップ(S110)と同様に、プレシート80を、当該プレシート80の面方向に直交する断面形状が略逆V字形状の複数の凸部と、当該断面形状が略V字形状の複数の凹部と、から構成される連続した凹凸を繰り返す形状に成形するステップとすれば良い(
図10のaおよびb参照)。そして、第1切込み形成ステップ(S210)は、プレシート80の第1峰部82の頂部83からプレシート80の厚さの途中までに切込みを形成するステップとすれば良い。また、第2切込み形成ステップ(S220)は、プレシート80の第2峰部86の頂部87からプレシート80の厚さの途中までに切込みを形成するステップとすれば良い。
【0054】
第2実施形態に係る放熱構造体1aは、上述の第2実施形態の製造方法(
図12参照)と同様の方法により製造することができる。この場合、放熱構造体1aは、第2切込み形成ステップ(S220)を省略することにより製造される。
【0055】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る製造方法について説明する。前述の各実施形態と共通する部分については同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0056】
図15は、第3実施形態に係る製造方法の主なステップを含むフローチャートを示す。
図16は、第3実施形態に係る製造方法の主な工程を示す。
図17は、
図16に続く工程を
図3と同視の断面図にて示す。
【0057】
この実施形態に係る放熱構造体の製造方法は、先に説明した第3実施形態に係る放熱構造体1bを製造する方法である。この実施形態に係る放熱構造体1bの製造方法は、第1貫通スリット形成ステップ(S310)と、第2貫通スリット形成ステップ(S320)と、第3成形ステップ(S330)と、配置ステップ(S340)と、を含む。第1貫通スリット形成ステップ、第2貫通スリット形成ステップおよび第3成形ステップは、いずれも、成形ステップに含まれる。以下、各ステップについて説明する。
【0058】
(1)第1貫通スリット形成ステップ(S310)および第2貫通スリット形成ステップ(S320)
第1貫通スリット形成ステップ(貫通スリット形成ステップの一例)および第2貫通スリット形成ステップ(貫通スリット形成ステップの一例)は、プレシート80の熱源に対向する面からプレシート80の厚さ方向に貫通する貫通スリット30を、直線的に間隔をおいて形成するステップである。第1貫通スリット形成ステップでは、熱源に対向する第1峰部12の位置に貫通スリット30が形成される。第2貫通スリット形成ステップでは、冷却部材に対向する第2峰部16の位置に貫通スリット30が形成される(
図16のm参照)。なお、貫通スリット30を形成する方法は、特に制約はないが、例えば、レーザー加工等の機械的加工が用いられる。第2貫通スリット形成ステップを行わずに、第1峰部12のみに貫通スリット30を形成しても良い。また、全ての第1峰部12と全ての第2峰部16ではなく、第1峰部12および第2峰部16の内の一部のみに貫通スリット30を形成しても良い。
【0059】
(2)第3成形ステップ(S330)
第3成形ステップは、プレシート80を、貫通スリット30が第1峰部12の頂部の位置となるように連続した凹凸を繰り返す形状に成形して多層断面MLを露出させるステップである。この実施形態において、第3成形ステップは、さらに、貫通スリット30が第2峰部16の頂部の位置となるように連続した凹凸を繰り返す形状に成形して多層断面MLを露出させるステップでもある(
図16のn参照)。かかるステップを経て、全ての第1峰部12および第2峰部16は、その長さ方向に貫通スリット30が断続的に配置され、かつ貫通スリット30の周囲に多層断面MLが存在する峰部となる。多層断面MLは、プレシート80を折り曲げた際に、貫通スリット30の周囲が裂けて表に露出した部分である。
【0060】
(3)配置ステップ(S340)
配置ステップ(S340)は、第1谷部14および第2谷部18に弾性部材20を配置するステップである(
図16のoおよびp参照)。配置ステップは、好ましくは、接着剤23aを介して第1谷部14および第2谷部18に弾性部材20を固定する。接着剤23aは、その後、接着層23となる。なお、第1谷部14のみに、あるいは、第2谷部18のみに、弾性部材20を配置しても良い。接着剤23aおよびその塗布方法については、第1実施形態における配置ステップ(S120)と同様であるため、詳細な説明を省略する。放熱構造体1c(
図8参照)の場合には、弾性部材20は、第2谷部18のみに備えられる。
【0061】
このように、放熱構造体1bは、平面状のプレシート80に貫通スリット30を形成した状態で凹凸形状に成形して熱伝導シート10bを形成し、第1谷部14および/または第2谷部18に弾性部材20を配置するという簡易な方法で製造可能であり、生産性を高めることができる。なお、第1貫通スリット形成ステップ(S310)および第2貫通スリット形成ステップ(S320)は、第3成形ステップ(S330)が行われた後、あるいは配置ステップ(S340)が行われた後に、実行されても良い。
【0062】
3.バッテリー
次に、本発明に係るバッテリーの好適な各実施形態について説明する。
【0063】
(第1実施形態)
図18は、本発明の第1実施形態に係るバッテリーを組み立てる状況の縦断面図を示す。
図19は、本発明の第1実施形態に係るバッテリーを組み立てた後の状態の縦断面図を示す。ここで、「縦断面図」は、バッテリーの筐体内部のバッテリーセルの長さ方向にバッテリーを切断する図を意味する。
【0064】
この実施形態において、バッテリー40は、例えば、電気自動車用のバッテリーであって、多数のバッテリーセル(熱源の一例)50を備える。バッテリー40は、一方に開口する有底型の筐体41を備える。筐体41は、好ましくは、アルミニウム若しくはアルミニウム基合金から成る。バッテリーセル50は、筐体41の内部44に配置される。バッテリーセル50の上方には、電極(不図示)が突出して設けられている。複数のバッテリーセル50は、好ましくは、筐体41内において、その両側からネジ等を利用して圧縮する方向に力を与えられて、互いに密着するようになっている(不図示)。筐体41の底部42には、冷却部材45の一例である冷却水を流すために、1または複数の水冷パイプ43が備えられている。放熱構造体1は、熱源であるバッテリーセル50と、筐体41の底部(冷却部材の接する部材)42との間に挟まれて、筐体41内に配置される。
【0065】
バッテリー40は、冷却部材45を流す構造を持つ筐体41内に、1または2以上の熱源としてのバッテリーセル50を備える。放熱構造体1は、バッテリーセル50と対向する面に複数の第1峰部12および複数の第1谷部14を有し、且つ、冷却部材45と対向する面に複数の第2峰部16および複数の第2谷部18を有するように、バッテリーセル50と冷却部材45との間に介在する。このような構造のバッテリー40では、バッテリーセル50は、熱を、放熱構造体1から筐体41に伝え、水冷によって効果的に除熱される。なお、冷却部材45は、「冷却媒体」あるいは「冷却剤」と読み替えても良い。冷却部材45は、冷却水に限定されず、液体窒素、エタノール等の有機溶剤も含むように解釈される。冷却部材45は、冷却に用いられる状況下にて、液体であるとは限らず、気体あるいは固体でも良い。これは、以後の第2実施形態でも同様である。
【0066】
バッテリーセル50を筐体41内にセットした状態では(
図19参照)、放熱構造体1は、バッテリーセル50と、水冷パイプ43を備える底部42との間において、放熱構造体1の厚さ方向に圧縮される。熱伝導シート10は、弾性部材20を有する第2谷部18を倒し、若しくは第2谷部18を潰す形態で底部42に接触する。この結果、バッテリーセル50からの熱は、熱伝導シート10、底部42、水冷パイプ43、冷却部材45へと伝わりやすくなる。バッテリーセル50および底部42と対向する第1峰部12および第2峰部16は、熱伝導シート10の多層断面MLを露出している。また、第1峰部12と第2峰部16とを繋ぐ熱伝導シート10の斜面は、熱伝導シート10の熱伝導率の高い方向(面方向)に略平行となる。このため、バッテリーセル50からの熱は、第1峰部12に露出されている多層断面MLから熱伝導シート10の面方向に沿って熱伝導シート10内を伝わり、第2峰部16に露出されている多層断面MLから底部42へ伝達される。よって、熱伝導シート10をこのように構成することにより、バッテリーセル50から熱が熱伝導シート10を介して底部42へより伝わりやすくなる。弾性部材20は、バッテリーセル50同士に段差があっても、バッテリーセル50が熱伝導シート10に接触させやすくするのに寄与する。また、弾性部材20は、バッテリーセル50による厚さ方向の圧縮力が加えられなくなった場合に(
図18参照)、熱伝導シート10の崩れた凹凸構造を元の状態(
図1の状態)に復元するのにも寄与する。なお、バッテリー40は、放熱構造体1に代えて、先述の放熱構造体1aを備えていても良い。
【0067】
(第2実施形態)
図20は、本発明の第2実施形態に係るバッテリーを組み立てる状況の縦断面図を示す。
図21は、本発明の第2実施形態に係るバッテリーを組み立てた後の状態の縦断面図を示す。
【0068】
この実施形態に係るバッテリー40は、第1実施形態と同様、例えば、電気自動車用のバッテリーであって、多数のバッテリーセル(熱源の一例)50を備える。バッテリー40は、一方に開口する有底型の筐体41を備える。筐体41は、好ましくは、アルミニウム若しくはアルミニウム基合金から成る。バッテリーセル50は、筐体41の内部44に配置される。バッテリーセル50の上方には、電極(不図示)が突出して設けられている。複数のバッテリーセル50は、好ましくは、筐体41内において、その両側からネジ等を利用して圧縮する方向に力を与えられて、互いに密着するようになっている(不図示)。筐体41の底部42には、冷却部材45の一例である冷却水を流すために、1または複数の水冷パイプ43が備えられている。放熱構造体1bは、熱源であるバッテリーセル50と、筐体41の底部(冷却部材の接する部材)42との間に挟まれて、筐体41内に配置される。
【0069】
放熱構造体1bは、バッテリーセル50と対向する面に複数の第1峰部12および複数の第1谷部14を有し、且つ、冷却部材45と対向する面に複数の第2峰部16および複数の第2谷部18を有する。第1峰部12の長さ方向および第2峰部16の長さ方向には、断続的に貫通スリット30が形成されている。貫通スリット30の周囲には、多層断面MLが存在する。バッテリーセル50の熱は、放熱構造体1bの第1峰部12の多層断面MLから第2峰部16の多層断面MLへと伝わり、底部42、冷却部材45へと伝わる。なお、放熱構造体1bに代えて、放熱構造体1cをバッテリー40に備えても良い。
【0070】
バッテリーセル50を筐体41内にセットした状態では(
図21参照)、放熱構造体1は、バッテリーセル50と、水冷パイプ43を備える底部42との間において、放熱構造体1bの厚さ方向に圧縮される。熱伝導シート10bは、弾性部材20を有する第1谷部14および第2谷部18を倒し、若しくは第1谷部14および第2谷部18を潰す形態で底部42に接触する。この結果、バッテリーセル50からの熱は、熱伝導シート10b、底部42、水冷パイプ43、冷却部材45へと伝わりやすくなる。バッテリーセル50および底部42と対向する第1峰部12および第2峰部16は、熱伝導シート10bの多層断面MLを露出している。また、第1峰部12と第2峰部16とを繋ぐ熱伝導シート10bの斜面は、熱伝導シート10bの熱伝導率の高い方向(面方向)に略平行となる。このため、バッテリーセル50からの熱は、第1峰部12に露出されている多層断面MLから熱伝導シート10bの面方向に沿って熱伝導シート10b内を伝わり、第2峰部16に露出されている多層断面MLから底部42へ伝達される。弾性部材20は、バッテリーセル50同士に段差があっても、バッテリーセル50が熱伝導シート10bに接触させやすくするのに寄与する。また、弾性部材20は、バッテリーセル50による厚さ方向の圧縮力が加えられなくなった場合に(
図20参照)、熱伝導シート10bの崩れた凹凸構造を元の状態(
図5の状態)に復元するのにも寄与する。
【0071】
4.その他の実施形態
上述のように、本発明の好適な各実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されることなく、種々変形して実施可能である。
【0072】
放熱構造体1,1aは、熱伝導シート10,10aが備える複数の第2谷部18すべてに弾性部材20を備えていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、放熱構造体1,1aは、複数の第2谷部18の内、弾性部材20を備える第2谷部18と、弾性部材20を備えない第2谷部18と、が隣接するよう配置されていても良い。別の形態表現を用いるなら、放熱構造体1,1aは、複数の第2谷部18に1つ飛ばしで弾性部材20が配置されていても良い。
【0073】
また、放熱構造体1,1aは、第2谷部18に代えて、熱伝導シート10,10aが備える複数の第1谷部14,14の全てに弾性部材20を備えていても良い。また、放熱構造体1,1aは、複数の第1谷部14,14の内、弾性部材20を備える第1谷部14,14と、弾性部材20を備えない第1谷部14,14と、が隣接するよう配置されていても良い。言い換えるなら、放熱構造体1,1aは、複数の第1谷部14,14に1つ飛ばしで弾性部材20が配置されていても良い。このような放熱構造体1,1aは、先述の製造方法(
図10および
図12参照)の配置ステップ(S120)において、第1谷部14,14に弾性部材20を配置することにより製造可能となる。
【0074】
また、放熱構造体1,1aは、第2谷部18に代えて、熱伝導シート10,10aが備える複数の第1谷部14,14および複数の第2谷部18に弾性部材20を備えていても良い。このような放熱構造体1,1aは、先述の製造方法(
図10および
図12参照)の配置ステップ(S120)において、第1谷部14,14および第2谷部18に弾性部材20を配置することにより製造可能となる。
【0075】
また、放熱構造体1bは、第2谷部18のみ(放熱構造体1cを参照)、または第1谷部14のみに弾性部材20を備えていても良い。また、放熱構造体1bは、複数並ぶ第1谷部14の一つおきに、および/または複数並ぶ第2谷部18の一つおきに弾性部材20を備えても良い。このような放熱構造体1bは、先述の製造方法(
図15参照)の配置ステップ(S340)において、特定の第1谷部14および/または特定の第2谷部18に弾性部材20を配置することにより製造可能となる。
【0076】
複数の第1峰部12の内の少なくとも1つの第1峰部12が多層断面MLを露出している部位を有していても良い。同様に、複数の第2峰部16の内の少なくとも1つの第2峰部16が多層断面MLを露出している部位を有していても良い。また、熱伝導シート10,10a,10bは、1つのみの第1峰部12および/または1つのみの第2峰部16を備えていても良い。また、熱伝導シート10,10a,10bは、1つのみの第1谷部14および/または1つのみの第2谷部18を備えていても良い。
【0077】
熱源は、バッテリーセル50のみならず、回路基板や電子機器本体等の熱を発する対象物を全て含む。例えば、熱源は、キャパシタおよびICチップ等の電子部品であっても良い。同様に、冷却部材45は、冷却用の水のみならず、有機溶剤、液体窒素、冷却用の気体であっても良い。また、放熱構造体1,1aは、バッテリー40以外の構造物、例えば、電子機器、家電、発電装置等に配置されていても良い。
【0078】
また、上述の各実施形態の複数の構成要素は、互いに組み合わせ不可能な場合を除いて、自由に組み合わせ可能である。例えば、放熱構造体1aは、バッテリー40に備えられていても良い。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明に係る放熱構造体は、例えば、自動車用バッテリーの他、自動車、工業用ロボット、発電装置、PC、家庭用電化製品等の各種電子機器にも利用することができる。また、本発明に係るバッテリーは、自動車用のバッテリー以外に、家庭用の充放電可能なバッテリー、PC等の電子機器用のバッテリーにも利用できる。
【符号の説明】
【0080】
1,1a,1b,1c・・・放熱構造体、10,10a,10b・・・熱伝導シート、12・・・第1峰部、13・・・頂部、14・・・第1谷部、16・・・第2峰部、17,17a・・・頂部、18・・・第2谷部、20・・・弾性部材、22・・・中空部、30・・・貫通スリット、40・・・バッテリー、41・・・筐体、45・・・冷却部材、50・・・バッテリーセル(熱源の一例)、80・・・プレシート、90・・・切込み、ML・・・多層断面。