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特許7421963管の切断加工装置およびこれを使用する管の切断加工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】管の切断加工装置およびこれを使用する管の切断加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 7/00 20060101AFI20240118BHJP
   B23K 7/10 20060101ALI20240118BHJP
   B23K 37/02 20060101ALI20240118BHJP
   B23K 31/00 20060101ALN20240118BHJP
【FI】
B23K7/00 507C
B23K7/00 501D
B23K7/00 501F
B23K7/00 503C
B23K7/00 503D
B23K7/00 505B
B23K7/10 501C
B23K37/02 E
B23K31/00 P
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020043565
(22)【出願日】2020-03-13
(65)【公開番号】P2021142549
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 安弘
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-157772(JP,U)
【文献】特開昭61-027177(JP,A)
【文献】国際公開第2015/006805(WO,A1)
【文献】特開2000-024775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 7/00-7/10
B23K 9/00
B23K 9/013
B23K 37/02
B23K 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部を有する管に切断加工を施す管の切断加工装置であって、
本体部と、
前記本体部を管の一方の端部に沿って走行させる走行部と、
前記管の一方の端部に沿った走行の際に当該管を切断することで切断面を形成する切断加工部と、
前記切断面が水平面に対して一定の角度になるように本体部に対する切断加工部の角度を制御する角度制御部とを備え
前記走行部が、転がる方向を管の一方の端部側から他方の端部側に傾斜させた駆動輪を有するものであることを特徴とする管の切断加工装置。
【請求項2】
切断加工部が、噴出する熱により管の一方の端部を切断するトーチを有し、
角度制御部が、
本体部の傾斜を検出する傾斜センサと、
前記傾斜センサで検出された傾斜に応じて本体部に対するトーチの角度を制御する制御アクチュエータとを有することを特徴とする請求項1に記載の管の切断加工装置。
【請求項3】
角度制御部が、
切断加工部に連結された連結部材と、
円弧の形状であるとともに当該円弧の中心軸が切断加工部により切断される位置に相当する円弧状案内部材と、
前記連結部材に接続されて円弧状案内部材に案内され得る被案内部材とを有し、
前記切断加工部が水平面に対して一定の角度で管を切断するように円弧状案内部材に対する被案内部材の位置を制御するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の管の切断加工装置。
【請求項4】
両端部を有する管が、斜円柱状管であり、
前記斜円柱状管の開先面が形成される一方の端部の接合面を略水平にする工程と、
前記接合面が水平にされた斜円柱状管に、請求項1乃至のいずれか一項に記載の管の切断加工装置を使用することで、前記斜円柱状管に切断面を形成する工程とを備えることを特徴とする管の切断加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管の切断加工装置およびこれを使用する管の切断加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
管を切断加工する目的は、様々であるが、例えば、溶接で必要になる母材への開先加工がある。このような開先加工は、例えば、管同士の接合面で施される。管同士が接合面で溶接されることで、例えば、図19に示すように、マイターベンド管Mが構成される。
【0003】
マイターベンド管Mを構成する個々の管Oは、図19に示すように、斜円柱の形状を有する。すなわち、マイターベンド管Mを構成する管O(以下、斜円柱状管と称する)は、一方の側面sで短く、他方の側面lで長くなる。
【0004】
前記斜円柱状管Oは、図20に示すように、直状管を斜めに切り落した形状O1であれば、隣り合う斜円柱状管に接合する面である接合面Jに対して管端が平行である。このため、図20に示す斜円柱状管O1において、接合面Jに一定の開先角度θで開先面gを形成するには、端部Eを管端eに対して一定の角度θで切断すればよい。管端に対して一定の角度で切断する従来の開先加工装置として、管端に位置決めローラが押し付けられるように移動しながら、管の端部を切断する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-024775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、マイターベンド管Mを構成する管Oである斜円柱状管Oは、図20に示すような直状管を斜めに切り落した形状O1ではなく、図21に示すような板材を巻いて形成された形状O2である場合が多い。このような斜円柱状管O2は、図21に示すように、接合面Jに対して管端eが平行でない。このため、図21に示す斜円柱状管O2において、接合面Jに一定の開先角度θで開先面gを形成するには、端部Eを管端eに対して変動させた角度α~βで切断しなければならない。具体的には、側面が短い方sの端部では浅く(小さい角度αで)切断し、側面が長い方lの端部では深く(大きい角度βで)切断する必要がある。
【0007】
したがって、現状、図21に示す斜円柱状管O2に開先面gを形成するには、特許文献1に記載されたような開先加工装置ではなく、人手により角度を変動させながら端部Eを切断することになるので、作業者の負担となっていた。
【0008】
そこで、本発明は、作業者の負担を軽減し得る管の切断加工装置およびこれを使用する管の切断加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、第1の発明に係る管の切断加工装置は、両端部を有する管に切断加工を施す管の切断加工装置であって、
本体部と、
前記本体部を管の一方の端部に沿って走行させる走行部と、
前記管の一方の端部に沿った走行の際に当該管を切断することで切断面を形成する切断加工部と、
前記切断面が水平面に対して一定の角度になるように本体部に対する切断加工部の角度を制御する角度制御部とを備え
前記走行部が、転がる方向を管の一方の端部側から他方の端部側に傾斜させた駆動輪を有するものである。
【0011】
さらに、第の発明に係る管の切断加工装置は、第1の発明に係る切断加工装置における切断加工部が、噴出する熱により管の一方の端部を切断するトーチを有し、
角度制御部が、
本体部の傾斜を検出する傾斜センサと、
前記傾斜センサで検出された傾斜に応じて本体部に対するトーチの角度を制御する制御アクチュエータとを有するものである。
【0012】
加えて、第の発明に係る管の切断加工装置は、第1または第2の発明に係る切断加工装置における角度制御部が、
切断加工部に連結された連結部材と、
円弧の形状であるとともに当該円弧の中心軸が切断加工部により切断される位置に相当する円弧状案内部材と、
前記連結部材に接続されて円弧状案内部材に案内され得る被案内部材とを有し、
前記切断加工部が水平面に対して一定の角度で管を切断するように円弧状案内部材に対する被案内部材の位置を制御するものである。
【0013】
また、第の発明に係る管の切断加工方法は、両端部を有する管が、斜円柱状管であり、
前記斜円柱状管の開先面が形成される一方の端部の接合面を略水平にする工程と、
前記接合面が水平にされた斜円柱状管に、1乃至第3のいずれかの発明の管の切断加工装置を使用することで、前記斜円柱状管に切断面を形成する工程とを備えるものである。
【発明の効果】
【0014】
前記管の切断加工装置およびこれを使用する管の切断加工方法によると、作業者の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係る開先加工装置で端部に開先加工が施される斜円柱状管の鋼板材を示す図である。
図2】同斜円柱状管の展開図である。
図3図2の横断面図であり、(a)が図2のA-A断面、(b)が図2のB-B断面を示す。
図4】同斜円柱状管の側面図である。
図5】同斜円柱状管の平面図である。
図6図2のC-C断面(中央縦断面)を示す縦断面図である。
図7図2のD-D断面(縦断面)を示す縦断面図である。
図8】同斜円柱状管とこれに隣り合う斜円柱状管との接合を示す中央縦断面図である。
図9】同開先加工装置の概略斜視図である。
図10】同開先加工装置における走行部の詳細な構成を示す背面図である。
図11】同走行部の詳細な構成を示す側面図である。
図12】同開先加工装置における切断加工部の詳細な構成を示す斜視図である。
図13】同開先加工装置における角度制御部の詳細な構成を示す斜視図である。
図14】同開先加工装置における本体部が一方に傾斜した際の角度制御部の機能を説明する背面図である。
図15】同本体部が他方に傾斜した際の角度制御部の機能を説明する背面図である。
図16】本発明の実施の形態に係る開先加工方法を説明する図である。
図17】同斜円柱状管における長い方の側面を走行する開先加工装置の背面図である。
図18】同斜円柱状管における短い方の側面を走行する開先加工装置の背面図である。
図19】複数の斜円柱状管で構成されるマイターベンド管の一部切欠き平面図である。
図20】マイターベンド管を構成する斜円柱状管の一例であり、直状管を斜めに切り落して形成される斜円柱状管の中央縦断面図である。
図21】マイターベンド管を構成する斜円柱状管の一例であり、板材を巻いて形成される斜円柱状管の中央縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係る管の切断加工装置およびこれを使用する管の切断加工方法について図面に基づき説明する。
【0017】
本実施の形態では、管の切断加工装置の一例として開先加工装置について説明し、管の切断加工方法として開先加工方法について説明する。まず、前記開先加工装置および開先加工方法で端部に開先加工が施される管について説明する。
【0018】
前記管は、例えば、背景技術の欄で説明した通り、図19に示すようなマイターベンド管Mを構成する斜円柱状管Oであり、板材を巻いて形成される。当該斜円柱状管Oの材質は、溶接が可能なものであれば特に限定されないが、本実施の形態では鋼とする。また、前記斜円柱状管Oの板厚は、本発明の特徴を分かりやすくするために、現実的でない大きさで図示するが、当然ながらこの大きさに限定されるものではない。
【0019】
前記斜円柱状管Oを形成するには、まず、鋼板材S(図1を参照)から、必要な部分Cを鋼板材Sの面に対して垂直に切り抜く(図2を参照)。これにより、切り抜かれた鋼板材Cの横断面は、図3(a)および(b)に示すように、長方形となる。そして、図2に示す切り抜かれた鋼板材Cを長辺方向で巻いて、その両短辺cを接合することにより、図4に示す斜円柱状管O2が形成される。この斜円柱状管O2は、横断面が長方形の鋼板材Sを巻いて形成されたものであるから、図5のC-C断面(中央縦断面)およびD-D断面(中央縦断面)を一例として示す図6および図7から明らかなように、縦断面LSが長方形になる。すなわち、図8に示すように、前記斜円柱状管O2は、隣り合う斜円柱状管O’に接合する面である接合面Jに対して管端eが平行でない。このため、前記斜円柱状管O2を隣り合う斜円柱状管O’に突合せ溶接するための開先加工として、前記接合面Jに対して一定の角度θで開先面g(切断面の一例)を形成するには、前記斜円柱状管O2の端部Eを、側面が短い方sでは浅く(小さい角度αで)切断し、側面が長い方lでは深く(大きい角度βで)切断する必要がある。
【0020】
前記開先加工装置は、前記接合面Jに対して管端eが平行でない斜円柱状管O2(図8および図21を参照)に対して、前記接合面Jに対して一定の角度θで開先面gを自動的に形成する装置である。この開先加工装置は、前記接合面Jに対して管端eが平行である斜円柱状管O1(図20を参照)に対しても、前記接合面Jに対して一定の角度θで開先面gを自動的に形成することが可能であり、斜円柱状管O1,O2以外の管に対しても使用することが可能である。
【0021】
次に、前記開先加工装置の構成について図9図15に基づき説明する。
【0022】
図9に示すように、前記開先加工装置1は、本体部2と、当該本体部2を斜円柱状管O2の端部Eに沿って走行させる走行部3とを備える。また、前記開先加工装置1は、前記本体部2が斜円柱状管O2の端部Eに沿って走行する際に、当該端部Eを切断することで開先面gを形成する、切断加工部4を備える。さらに、前記開先加工装置1は、前記開先面gが水平面に対して一定の角度θになるように、前記本体部2に対する切断加工部4の角度を制御する、角度制御部5を備える。
【0023】
図10に示すように、前記走行部3は、斜円柱状管O2の端部Eにおける外面/内面に接する駆動輪31と、当該駆動輪31を駆動させる駆動モータ32と、斜円柱状管O2の端部Eにおける内面/外面に接する従動輪33とを有する。前記走行部3は、前記駆動輪31と従動輪33とで斜円柱状管O2の端部Eを挟み込めるように、前記駆動輪31と従動輪33との間隔を調整する間隔調整機構34を有する。この間隔調整機構34は、図示しないが、例えば、前記間隔を微調整する調整ナット、および/または、前記間隔を固定/解除するクランプアームなどである。図11に示すように、前記駆動輪31は、その転がる方向Dを、管端eに平行ではなく、斜円柱状管O2の奥側に傾斜させたものであることが好ましい。これにより、前記駆動軸が斜円柱状管O2の端部Eにおける外面/内面を転がることによる駆動力Pは、管端eに平行な成分Psと、斜円柱状管O(O1,O2)の奥側に向く成分Pcとに分けられる。このため、前記駆動力Pのうち、管端eに平行な成分Psは本体部2を走行させる力となり、斜円柱状管O2の奥側に向く成分Pcは走行部3を管端eに押し付ける力となる。したがって、前記駆動輪31が斜円柱状管O2の端部Eにおける外面/内面を転がることにより、前記走行部3が管端eに押し付けられるように本体部2を走行させるので、当該走行に伴う走行部3の浮き上がりが抑えられて、前記走行が安定する。さらに、走行部3が管端eに押し付けられても一層安定して本体部2を走行させるために、当該走行部3は、管端eに接しながら回転する倣いローラ35を有することが好ましい。
【0024】
図12に示すように、前記切断加工部4は、噴出する熱により斜円柱状管O2の端部Eを切断するトーチ41と、このトーチ41を保持する縦部材42と、この縦部材42に連結された横部材44とを有する。前記縦部材42は、前記トーチ41の縦位置を調整する縦調整機構43を有し、前記横部材44は、前記トーチ41の横位置を調整する横調整機構45を有する。また、前記切断加工部4は、前記縦部材42(または前記横部材44)に対するトーチ41の角度を調整する角度調整機構46を有する。ここで、前記トーチ41から噴出される熱は、例えば、当該トーチ41から噴出される火炎またはアークによるものである。前記トーチ41は、火炎を噴出するものである場合、例えば、燃料となるガスを供給するガス供給ホース47と、このガスの燃焼を助ける酸素を供給する酸素供給ホース48とが接続されている。なお、前記トーチ41からの熱による開先加工装置1への悪影響を抑えるために、前記切断加工部4は、前記トーチ41と角度制御部5との間に保護パネル49を有することが好ましい。
【0025】
図13に示すように、前記角度制御部5は、前記本体部2に固定されてラック52を具備する円弧状レール51(円弧状案内部の一例)と、この円弧状レール51のラック52に噛み合うピニオン53(被案内部材の一例)とを有する。前記円弧状レール51は、その円弧の中心軸が切断加工部4により切断する位置に相当するように、曲率が設定されている。また、前記角度制御部5は、前記ピニオン53に連結された制御モータ54(制御アクチュエータの一例)と、前記ピニオン53を回転自在に支持するとともに切断加工部4に連結された連結部材55と、この連結部材55に設けられた傾斜センサ56とを有する。すなわち、前記角度制御部5は、前記傾斜センサ56で検出された本体部2の傾斜に応じて、前記制御モータ54によりピニオン53を回転させ、この回転により円弧状レール51に沿って連結部材55が移動する。言い換えれば、前記角度制御部5は、本体部2の傾斜に応じて、前記連結部材55に連結された切断加工部4を円弧状に移動させる(つまり切断加工部4による切断の角度を変動させる)ものである。具体的には、本体部2が図13に示す位置から図14または図15に示す位置に傾斜した場合、この傾斜が傾斜センサ56により検出される。そして、当該傾斜により水平面に対する切断加工部4の角度が変動しないように、前記切断加工部4に連結された連結部材55が円弧状レール51に沿って移動する。例えば、図13に示す連結部材55の位置が円弧状レール51の最上部であれば、図14および図15に示す連結部材55の位置も前記傾斜に関わらず円弧状レール51の最上部であり、この最上部の位置を維持するために、前記連結部材55が円弧状レール51に沿って移動する。
【0026】
以下、前記開先加工装置1を使用する開先加工方法について説明する。
【0027】
図16に示すように、前記開先加工方法は、斜円柱状管O2の開先面が形成される端部Eの接合面J(開先面の基準となる仮想面)を略水平にする工程を備える。この工程では、前記接合面Jを略水平にするために、例えば、前記斜円柱状管O2の接合面Jとは反対側である底bに、枕木Wなどの台座を敷く。ここで、略水平とは、厳密な水平に限定されるものではなく、前記底bに台座など敷くなどして接合面Jを水平にしようとした際の現実的な誤差までを含む。また、前記開先加工方法は、前記接合面Jが水平にされた斜円柱状管O2に、前記開先加工装置1を使用することで、前記斜円柱状管O2の端部Eに開先面を形成する工程を備える。
【0028】
次に、前記開先加工装置1の使用について詳細に説明する。
【0029】
まず、図9に示すように、前記開先加工装置1を斜円柱状管O2の開先面gが形成される端部Eに設置する。具体的には、図10に示す間隔調整機構34により、駆動輪31と従動輪33との間隔を斜円柱状管O2の板厚よりも大きくしてから、管端eに倣いローラ35を載置する。次いで、間隔調整機構34により、斜円柱状管O2の端部Eを駆動輪31と従動輪33とで挟み込んで固定する。
【0030】
そして、図12に示す横調整機構45、縦調整機構43および角度調整機構46により、所望の開先角度θおよびルート面rが得られるようにトーチ41の位置および角度を調整する。また、この調整では、トーチ41の熱により切断される位置が円弧状レール51における円弧の中心軸に相当するように設定する。
【0031】
その後、本体部2を走行させるとともに、トーチ41から火炎またはアークを噴出させる。図17および図18に示すように、前記端部Eの切断する角度α~βを変動させる必要があるが、この切断により形成される開先面gは接合面J(水平面)から一定の角度θである。前記角度制御部5により、水平面に対する切断加工部4の角度は一定に維持されるので、接合面Jに対して一定の角度θを有する開先面gが形成されることになる。すなわち、前記開先加工装置1により、接合面Jに対して一定の開先角度θを有する開先加工が自動的に施されることになる。
【0032】
このように、前記開先加工装置1およびこれを使用する開先加工方法によると、切断加工部4が接合面Jに対して一定の角度θで斜円柱状管O2の端部Eを切断するので、接合面Jに対して一定の開先角度θを有する開先加工が自動的に施され、その結果、作業者の負担を軽減することができる。
【0033】
また、前記走行部3の駆動輪31が転がる方向Dを斜円柱状管O2の奥側に傾斜させたことにより、走行に伴う走行部3の浮き上がりが抑えられて、前記走行が安定するので、開先加工の精度を向上させることができる。
【0034】
さらに、前記切断加工部4がトーチ41を有し、前記角度制御部5が傾斜センサ56および制御モータ54を有することにより、切断加工部4により切断される角度が一層安定するので、開先加工の精度を向上させることができる。
【0035】
加えて、前記角度制御部5が連結部材55、円弧状レール51およびピニオン53を有するとともに、前記円弧状レール51における円弧の中心軸が切断加工部4により切断される位置に相当するので、ルート面rが一定に維持されることになり、その結果、開先加工の精度を向上させることができる。
【0036】
ところで、前記実施の形態では、端部Eに開先加工が施される管の一例として斜円柱状管O(O1,O2)について説明したが、管であればよい。この管は、マイターベンド管Mを構成する管に限定されず、円筒形の構造物であればよい。また、前記実施の形態では、管の端部Eに開先加工を施す開先加工装置1および開先加工方法について説明したが、これに限定されるものではなく、管の切断加工装置および切断加工方法であればよい。また、管の切断加工装置および切断加工方法であれば、切断加工を施す部分は、管の端部Eに限定されず、管のどこでもよい。
【0037】
さらに、前記実施の形態では、円弧状案内部材の一例として円弧状レール51について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば円弧状の切欠きなど円弧の中心軸が切断加工部4により切断される位置に相当する案内部材であればよい。
【0038】
加えて、前記実施の形態では、被案内部材の一例としてピニオン53について説明したが、これに限定されるものではなく、連結部材55に接続されて円弧状案内部材に案内され得るものであればよい。
【0039】
また、前記実施の形態では、制御アクチュエータの一例として制御モータ54について説明したが、これに限定されるものではなく、傾斜センサ56で検出された傾斜に応じて本体部2に対するトーチ41の角度を制御するものであればよい。
【0040】
また、前記実施の形態では、開先加工方法として、前記開先加工装置1が設置される斜円柱状管O2の位置について説明しなかったが、管端eが水平となる位置、すなわち、側面が最も短い位置sと側面が最も長い位置lとの中間となる位置が好ましい。なぜなら、横調整機構45、縦調整機構43および角度調整機構46による、トーチ41の位置および角度を調整が容易になるからである。
【0041】
また、前記実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は、前述した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。前記実施の形態および実施例で説明した構成のうち「課題を解決するための手段」での第1の発明として記載した構成以外については、任意の構成であり、適宜削除および変更することが可能である。
【符号の説明】
【0042】
M マイターベンド管
O 斜円柱状管
J 接合面
e 管端
E 端部
1 開先加工装置
2 本体部
3 走行部
4 切断加工部
5 角度制御部
31 駆動輪
34 間隔調整機構
35 倣いローラ
41 トーチ
43 縦調整機構
45 横調整機構
49 保護パネル
51 円弧状レール
53 ピニオン
54 制御モータ
55 連結部材
56 傾斜センサ
図1
図2
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