(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】使い捨て着用物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/505 20060101AFI20240118BHJP
A61F 13/494 20060101ALI20240118BHJP
A61F 5/44 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
A61F13/505 100
A61F13/494 100
A61F5/44 H
(21)【出願番号】P 2020056599
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大島 彩
【審査官】西尾 元宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-160843(JP,A)
【文献】国際公開第01/039714(WO,A1)
【文献】特開2009-095636(JP,A)
【文献】実開平07-000329(JP,U)
【文献】特開2018-153571(JP,A)
【文献】特開平09-075385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収体が内蔵された使い捨て着用物品であって、
前記吸収体が前後方向の中間部分にその前後両側よりも幅の狭い括れ部分を有する形状であるか、又は前記吸収体は前後方向に沿う長方形状であるとともに、前記使い捨て着用物品が前後方向の中間部分にその前後両側よりも幅の狭い括れ部分を有する形状であり、
前記括れ部分を有する前後方向の範囲を前後方向に三等分したときの中間の領域であって、かつ前後方向中央を含む股間領域と、前記股間領域よりも前側に位置する前側領域と、前記股間領域よりも後側に位置する後側領域とを有し、
表面の両側部に、前後方向に延びる遮断位置に沿って設けられた立体ギャザーをそれぞれ有し、
前記立体ギャザーは、前記遮断位置の幅方向の外側に取り付けられた付根部と、前記付根部から幅方向の中央側に延び出た主部とを有し、
前記主部は、
前後方向に間隔を空けて複数設けられた、幅方向の中央側に開口するポケットを形成するポケット部と、
各前記ポケット部の前後両側にそれぞれ隣接して設けられた倒伏部と、
各前記ポケット部の入口部分に取り付けられたギャザー弾性部材とを有し、
前記ポケット部は、裏側に対向する部分に固定されていない部分であるとともに、前記倒伏部は、裏側に対向する部分に固定された部分であり、
前記主部の前端部及び後端部は、前記倒伏部となっており、
前記主部における前記前側領域及び後側領域の少なくとも一方に位置する部分は、前記ポケット部、その裏側に位置する裏側部分、及びそれらの前後両側に隣接する前記倒伏部により形成される耳部ポケットを有し、
前記主部における前記股間領域に位置する部分の全体が、前記倒伏部ではなく前記ポケット部となっており、
前記股間領域における前記ポケット部の幅は、前記股間領域以外で最も狭い前記ポケット部の幅以上である、
ことを特徴とする使い捨て着用物品。
【請求項2】
前記主部の前端部及び後端部の少なくとも一方の前記倒伏部は、前記耳部ポケットを構成するウエスト側の倒伏部である、
請求項1記載の使い捨て着用物品。
【請求項3】
前記裏側部分における、前記耳部ポケットの入口側に位置する部分に、ポケット部側に突出した凸部を有している、
請求項1又は2記載の使い捨て着用物品。
【請求項4】
前記
耳部ポケットを構成するポケット部の前側に隣接する倒伏部と、前記
耳部ポケットを構成するポケット部の後側に隣接する倒伏部との前後方向の間隔は、入口から少なくとも一定距離奥側に向かうにつれて、連続的又は段階的に
長くなっている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の使い捨て着用物品。
【請求項5】
前記ポケット部の股間領域側に隣接する倒伏部は、ウエスト側の縁が、幅方向中央側に向かうにつれてウエスト側に位置するように延びている、
請求項1~4のいずれか1項に記載の使い捨て着用物品。
【請求項6】
前記前側領域及び後側領域のいずれか一方のみに、前記耳部ポケットが設けられている、
請求項1~5のいずれか1項に記載の使い捨て着用物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッドタイプのインナー使い捨ておむつを装着して使用する使い捨て着用物品に関する。
【背景技術】
【0002】
テープタイプ使い捨ておむつ等の使い捨て着用物品においては、少量排泄時等におむつ全体を交換せずに済むように、アウター使い捨ておむつの表面に、パッドタイプのインナー使い捨ておむつを敷いて使用することがある。このような利用形態は、成人向けの使い捨ておむつに多いものである。(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このような使用形態では、使用中や装着作業の際にインナー使い捨ておむつがアウター使い捨ておむつに対してズレないことが重要である。このようなズレを防止するために、一部の小型のインナー使い捨ておむつでは、アウター使い捨ておむつに対する固定手段として裏面にフック材や粘着剤層等のズレ止め手段を設けたものが知られている。また、アウター使い捨ておむつのトップシートの表面や、立体ギャザーにおけるトップシート対向面に、インナー使い捨ておむつの固定手段としてフック材や粘着剤層等のズレ止め手段を設けたものも知られている。
【0004】
しかしながら、このような固定手段はコストが嵩むだけでなく、製品の硬質化をもたらしたり、肌を傷つけたりするおそれもある。
【0005】
これに対して、特許文献1では、前部及び後部に両側方に張り出した前耳部及び後耳部を有するインナー使い捨ておむつの利用を想定し、幅方向の中央側に向かって開口する一対のポケットを形成する立体ギャザーを表面の両側部に備えたアウター使い捨ておむつにおいて、前側領域及び後側領域におけるポケットの深さを、股間領域におけるポケットの深さよりも相対的に深くして、インナー使い捨ておむつの前耳部及び後耳部がポケットに嵌合するようにした使い捨ておむつが提案されている。
【0006】
しかしながら、既存製品(既存設計)への応用を考えた場合、立体ギャザーにより形成されるポケットを深くすることは、影響を受ける設計要素が多いため簡単なことではない。したがって、特許文献1記載のものは既存製品に応用しにくいという問題点がある。
【0007】
また、既存製品において、股間領域におけるポケットの深さを、前側領域及び後側領域におけるポケットの深さよりも浅くすることも不可能ではないが、その場合、漏れ防止を図る上で特に重要な股間領域における立体ギャザーの起き上がり高さ(ポケットの深さ)が、その前後よりも低くなるため好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明の主たる課題は、立体ギャザーのポケットによるインナー使い捨ておむつのズレ防止技術を、既存製品に応用しやすいものとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決した使い捨て着用物品は以下のとおりである。
<第1の態様>
吸収体が内蔵された使い捨て着用物品であって、
前記吸収体が前後方向の中間部分にその前後両側よりも幅の狭い括れ部分を有する形状であるか、又は前記吸収体は前後方向に沿う長方形状であるとともに、前記使い捨て着用物品が前後方向の中間部分にその前後両側よりも幅の狭い括れ部分を有する形状であり、
前記括れ部分を有する前後方向の範囲を前後方向に三等分したときの中間の領域であって、かつ前後方向中央を含む股間領域と、前記股間領域よりも前側に位置する前側領域と、前記股間領域よりも後側に位置する後側領域とを有し、
表面の両側部に、前後方向に延びる遮断位置に沿って設けられた立体ギャザーをそれぞれ有し、
前記立体ギャザーは、前記遮断位置の幅方向の外側に取り付けられた付根部と、前記付根部から幅方向の中央側に延び出た主部とを有し、
前記主部は、前後方向に間隔を空けて複数設けられた、幅方向の中央側に開口するポケットを形成するポケット部と、各前記ポケット部の前後両側にそれぞれ隣接して設けられた倒伏部と、各前記ポケット部の入口部分に取り付けられたギャザー弾性部材とを有し、
前記ポケット部は、裏側に対向する部分に固定されていない部分であるとともに、前記倒伏部は、裏側に対向する部分に固定された部分であり、
前記主部の前端部及び後端部は、前記倒伏部となっており、
前記主部における前記前側領域及び後側領域の少なくとも一方に位置する部分は、前記ポケット部、その裏側に位置する裏側部分、及びそれらの前後両側に隣接する前記倒伏部により形成される耳部ポケットを有し、
前記主部における前記股間領域に位置する部分の全体が、前記倒伏部ではなく前記ポケット部となっており、
前記股間領域における前記ポケット部の幅は、前記股間領域以外で最も狭い前記ポケット部の幅以上である、
ことを特徴とする使い捨て着用物品。
【0011】
(作用効果)
本使い捨て着用物品は、製品外周の前部及び後部に両側方に張り出した前耳部及び後耳部を有するものインナー使い捨ておむつ、さらに好ましくは吸収体の前部及び後部にも両側方に張り出した前耳部及び後耳部を有するインナー使い捨ておむつの利用を予定したアウター製品である。
本使い捨て着用物品の特徴は、立体ギャザーの前後端部に通常設けられる倒伏部以外に、漏れ防止性に影響の少ない部位に倒伏部を追加し、インナー使い捨ておむつの前耳部及び後耳部の少なくとも一方を挿入する耳部ポケットを形成したところにある。
すなわち、本使い捨て着用物品では、インナー使い捨ておむつの耳部(前耳部及び後耳部の少なくとも一方)を、耳部ポケットに挿入することにより、本使い捨て着用物品及びインナー使い捨ておむつを一体として取り扱って装着作業を行う際や、装着後において、両者の一体性を向上させる(ズレを防止する)ことができる。しかも、本使い捨て着用物品は、一般的な構造に対して特定の位置に倒伏部(つまり接合箇所)を追加するだけで構成することができ、既存製品に対して極めて応用しやすいものである。さらに、倒伏部を追加する部位は、股間領域以外であるため、股間領域の大部分において立体ギャザーの起き上がり高さ(ポケットの深さ)は制限を受けず、漏れ防止性の低下は抑制される。
【0012】
<第2の態様>
前記主部の前端部及び後端部の少なくとも一方の前記倒伏部は、前記耳部ポケットを構成するウエスト側の倒伏部である、
第1の態様の使い捨て着用物品。
【0013】
(作用効果)
本態様のように、立体ギャザーの前後端部に通常設けられる倒伏部を、耳部ポケットを構成する倒伏部の一方として利用すると、追加の倒伏部の数が少なくて済むため好ましい。
【0014】
<第3の態様>
前記裏側部分における、前記耳部ポケットの入口側に位置する部分に、ポケット部側に突出した凸部を有している、
第1又は2の態様の使い捨て着用物品。
【0015】
(作用効果)
本態様の場合、耳部ポケットの入口側における隙間が厚み方向に狭くなり、インナー使い捨ておむつの耳部がより強く挟まれるため、インナー使い捨ておむつが本使い捨て着用物品からより外れ難くなる。
【0016】
<第4の態様>
前記耳部ポケットを構成するポケット部の前側に隣接する倒伏部と、前記耳部ポケットを構成するポケット部の後側に隣接する倒伏部との前後方向の間隔は、入口から少なくとも一定距離奥側に向かうにつれて、連続的又は段階的に長くなっている、
第1~3のいずれか1つの態様の使い捨て着用物品。
【0017】
(作用効果)
本態様の場合、耳部ポケットの入口部分が前後方向に狭くなり、これよりも前後方向の寸法が短い耳部を有するインナー使い捨ておむつを使用する場合、耳部がより強く耳部ポケットの入口に挟まれるため、インナー使い捨ておむつが本使い捨て着用物品からより外れ難くなる。
【0018】
<第5の態様>
前記ポケット部の股間領域側に隣接する倒伏部は、ウエスト側の縁が、幅方向中央側に向かうにつれてウエスト側に位置するように延びている、
第1~4のいずれか1つの態様の使い捨て着用物品。
【0019】
(作用効果)
本態様の場合、インナー使い捨ておむつが耳部ポケットを有する側と反対側に移動しようとしたとき、特に耳部が倒伏部に引っ掛かりやすくなるため好ましい。
【0020】
<第6の態様>
前記前側領域及び後側領域のいずれか一方のみに、前記耳部ポケットが設けられている、
第1~5のいずれか1つの態様の使い捨て着用物品。
【0021】
(作用効果)
本使い捨て着用物品は、前後方向の寸法が異なる複数種のインナー使い捨ておむつの利用に適している。しかし、前側領域及び後側領域の両方に耳部ポケットを有する場合、インナー使い捨ておむつの種類や寸法によっては前後の耳部の位置が適合しない可能性がある。また、耳部ポケットを有することは倒伏部の追加を意味し、この追加の倒伏部は立体ギャザーの起き上がり高さが制限されることを意味する。よって、インナー使い捨ておむつに対する適合性、及び立体ギャザーの漏れ防止性の確保を重視するのであれば、本態様のように前後いずれか一方にのみ耳部ポケットを設けることが望ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、立体ギャザーのポケットによるインナー使い捨ておむつのズレ防止性を維持しつつ、既存製品に応用しやすいものとなる、等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】展開状態のテープタイプ使い捨ておむつの表側を示す平面図である。
【
図2】展開状態のテープタイプ使い捨ておむつの裏側を示す平面図である。
【
図4】(a)
図1のiv-iv断面図、(b)
図1のv-v断面図、(c)
図1のvi-vi断面図、及び(d)
図1のvii-vii断面図である。
【
図5】インナー使い捨ておむつの展開状態の内面側を示す平面図である。
【
図6】テープタイプ使い捨ておむつにインナー使い捨ておむつを重ねて配置した状態の要部のみを示す平面図である。
【
図8】展開状態のテープタイプ使い捨ておむつの表側の要部を示す平面図である。
【
図9】展開状態のテープタイプ使い捨ておむつの表側を示す平面図である。
【
図10】展開状態のテープタイプ使い捨ておむつの表側を示す平面図である。
【
図11】展開状態のテープタイプ使い捨ておむつの表側を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<アウター使い捨て着用物品の例>
図1~
図4には、使い捨て着用物品の一例として、テープタイプ使い捨ておむつが示されている。なお、ホットメルト接着剤による接着箇所のうち説明上必要な箇所については、平面図及び断面図中に点模様をそれぞれ付している。ホットメルト接着剤は、スロット塗布、連続線状又は点線状のビード塗布、スパイラル状、Z状等のスプレー塗布、又はパターンコート(凸版方式でのホットメルト接着剤の転写)等、公知の手法により塗布することができる。これに代えて又はこれとともに、弾性部材の固定部分では、ホットメルト接着剤を弾性部材の外周面に塗布し、弾性部材を隣接部材に固定することができる。ホットメルト接着剤としては、例えばEVA系、粘着ゴム系(エラストマー系)、オレフィン系、ポリエステル・ポリアミド系などの種類のものが存在するが、特に限定無く使用できる。各構成部材を接合する接合手段としてはヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段を用いることもできる。
【0025】
このテープタイプ使い捨ておむつは、前後方向LDの中央LCを含む股間領域Cと、股間領域Cよりも前側に位置する前側領域Fと、股間領域Cよりも後側に位置する後側領域Bとを有している。また、このテープタイプ使い捨ておむつは、股間領域Cを含む範囲に内蔵された吸収体3と、吸収体3の表側を覆う液透過性のトップシート2と、吸収体3の裏側を覆う液不透過性シート1と、液不透過性シート1の裏側を覆い、製品外面を構成する外装不織布12とを有するものである。
【0026】
股間領域Cは装着者の股間に位置することとなる部分である。吸収体3の形状が、前後方向LDの中間部分でその前後両側よりも幅の狭い括れ形状(砂時計形状)である場合、股間領域Cは、吸収体3の括れ部分を有する前後方向LDの範囲3Nを前後方向LDに三等分したときの中間の領域とすることができる。また、吸収体3は長方形状で、かつ製品外形が前後方向LDの中間部分でその前後両側よりも幅の狭い括れ形状(砂時計形状)である場合、股間領域Cは、製品外形の括れ部分を有する前後方向LDの範囲を前後方向LDに三等分したときの中間の領域とすることができる。また、前側領域F及び後側領域Bの前後方向LDの寸法は同一とすることもできるし、前後いずれか一方を他方より長くすることもできる(図示例は後側領域Bが前側領域Fよりも長くなっている)。
【0027】
以下、各部の素材及び特徴部分について順に説明する。
【0028】
(吸収体)
吸収体3は、パルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、あるいは不織布からなる繊維集合層を単層又は複数層有する基本構造を有するものである。吸収体3は、必要に応じて粒子状などの高吸収性ポリマーを繊維集合層中に混合したり、繊維集合層中又は繊維集合層の表面に固着したり、繊維集合層間に層状に介在させたりすることができる。吸収体3は、必要に応じてクレープ紙等の包装シート(図示省略)により包むことができる。また、吸収体3の形状は適宜定めることができるが、図示のように前後方向LDの中間部分の幅がその前後両側よりも狭い砂時計形状(括れ形状)の他、長方形等のように、股間領域Cの前側から後側まで延在する形状が好適である。吸収体3における繊維目付けは100~500g/m2程度、厚みは1~15mm程度とすることができる。また、吸収体3における高吸収性ポリマーの目付けは0~300g/m2程度とすることができる。
【0029】
(液不透過性シート)
液不透過性シート1は、排泄物の裏面への浸み出しを遮断するものである。液不透過性シート1としては、ポリエチレンフィルム等のプラスチックフィルムの他、ムレ防止の点から遮水性を損なわずに透湿性を備えたシートも用いることができる。この遮水・透湿性シートは、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸又は二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートを用いることができる。
【0030】
液不透過性シート1は、前後方向LD及び幅方向WDにおいて吸収体3と同じか又はより広範囲にわたり延びていることが望ましいが、他の遮水手段が存在する場合等、必要に応じて、前後方向LD及び幅方向WDにおいて吸収体3の端部を覆わない構造とすることもできる。
【0031】
おむつ外面を布のような外観及び肌触りとするために、液不透過性シート1の裏面全体を外装不織布12で覆うことができる。外装不織布12は省略することもでき、その場合には、液不透過性シート1が製品外面を形成することになる。
【0032】
(トップシート)
トップシート2は液透過性を有するものであり、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを用いることができる。
【0033】
トップシート2は、前後方向LDでは製品前端から後端まで延び、幅方向WDでは吸収体3よりも側方に延びているが、例えば後述する立体ギャザー4の起点が吸収体3の側縁よりも幅方向WDの中央側に位置する場合等、必要に応じて、トップシート2の幅を吸収体3の全幅より短くする等、適宜の変形が可能である。
【0034】
(エンドフラップ)
本テープタイプ使い捨ておむつは、吸収体3の前側及び後側にそれぞれ延出する、吸収体3を有しない一対のエンドフラップEFを有している。エンドフラップEFの構成材はおむつの構造によって変化する。図示例では、エンドフラップEFは、液不透過性シート1、外装不織布12、トップシート2及び後述するギャザーシート4sのうち、吸収体3の前側及び後側に延びて積層され、かつ互いに接合された部分により形成されているが、これに限定されるものではない。エンドフラップEFを形成するための専用のシートを、吸収体3の前側又は後側に継ぎ足して、エンドフラップEFを形成してもよい。
【0035】
通常の場合、エンドフラップEFの前後方向LDの寸法は、おむつ全体の前後方向LDの寸法の20~25%程度とすることができる。
【0036】
(サイドフラップ)
図示例のテープタイプ使い捨ておむつは、吸収体3の側方にそれぞれ延出する、吸収体3を有しない一対のサイドフラップSFを有している。サイドフラップSFは、図示例のように、吸収体3を有する部分から連続する素材(外装不織布12等)からなるものであっても、他の素材を取り付けて形成してもよい。
【0037】
(平面ギャザー)
サイドフラップSFの前後方向LDの中間部には、液不透過性シート1と外装不織布12との間に細長状の脚周り弾性部材7が前後方向LDに沿って伸長状態でホットメルト接着剤等により固定されており、この脚周り弾性部材7の収縮によりサイドフラップSFにはいわゆる平面ギャザーが形成されている。この平面ギャザーにより、おむつの側部が弾性伸縮して脚周りにフィットするようになる。脚周り弾性部材7は脚周りに沿うようにカーブしていてもよい。
【0038】
左右各側における脚周り弾性部材7の本数は適宜定めることができるが、1~10本程度、より好ましくは3~8本程度が適当であり、複数本とする場合には、その間隔は2~15mm程度、特に6~10mm程度とするのが好ましい。また、各脚周り弾性部材7としては、糸状、紐状、帯状等に形成された、スチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコーン、ポリエステル等、通常使用される素材を用いることができ、太さとしては500~1500dtex程度、天然ゴムの場合0.1~3mm程度、特に0.5~3mm程度が好ましい。また、各脚周り弾性部材7の固定時の伸長率は150~250%程度であるのが好ましい。
【0039】
(ウイング部分)
本テープタイプ使い捨ておむつでは、後側領域Bは股間領域Cよりも幅方向WD外側に延び出たウイング部分を有している。同様に、前側領域Fも股間領域Cよりも幅方向WD外側に延び出たウイング部分を有している。これらウイング部分は、それ以外の部分と別の部材により形成することもできる。しかし、図示例のようにサイドフラップSFを有する構造において、サイドフラップSFの側部における前後方向LD中間を切断することにより、股間領域Cの側縁からウイング部分の下縁まで続く凹状の脚周り縁Leが形成され、その結果としてウイング部分が形成されていると、製造が容易であるため好ましい。
【0040】
(連結テープ)
後側領域Bの両側部(図示例ではサイドフラップSFのウイング部分)には、その側縁からそれぞれ突出する連結テープ5が取り付けられるとともに、前側領域Fの胴周り部表面に幅方向WDに沿ってターゲットシート6が貼着されており、身体への装着に際しては、おむつ100を身体にあてがった状態で、両側の連結テープ5を腰の各側から腹側外面に回してターゲットシート6に止着する。ターゲットシート6は省略することもでき、その場合には連結テープ5はおむつ外面(図示例の場合外装不織布12)に直に止着される。
【0041】
図3に示されるように、連結テープ5は、後側領域BのサイドフラップSFにおけるシート間にホットメルト接着剤等の手段により固定された固定部5fと、サイドフラップSFの側縁のシート間から幅方向WDの外側に突出する突出部5eとを有しており、この突出部5eは先端部5pと、この先端部5pよりも基端側の本体部5bとを有している。連結テープ5の先端部5pの内面には、ターゲットシート6との連結のための連結部9として、表面にフック状突起を多数有するメカニカルファスナーのフック材(面ファスナーの雄材)がそれぞれ取り付けられている。また、ターゲットシート6として、前側領域Fの外面に、フック状突起が着脱可能に掛止される表面を有するもの(メカニカルファスナー(面ファスナー)の雌材)6が取り付けられている。おむつ外面の素材自体をターゲットシート6の代わりに用いたり、フック材に代えて粘着剤層を連結部9として用いるとともに、ターゲットシート6として粘着性に富むような表面が平滑な樹脂テープを用いたりすることができる。
【0042】
また、
図1に示されるように、連結テープ5には、前後方向LDの中間部における幅方向WDの外側縁から本体部5b内まで幅方向WDに沿うミシン目10が設けられており、このミシン目10を切り離すことにより、各々が固定部、本体部、先端部及び連結部9を備えた上段部及び下段部に分離することができるものである。ミシン目10に代えて、予め切断等により分離されていても良い。このような連結テープ5は、上段部と下段部とを交差させた状態で、前側領域Fのターゲットシート6に着脱自在に連結することができる。もちろん、このような上下2段分割タイプに限られず、2段分割しないタイプ等、他の公知の連結テープに応用することもできる。
【0043】
(立体ギャザー)
図1及び
図4に示されるように、トップシート2上を伝わって横方向に移動する排泄物を阻止し、いわゆる横漏れを防止するために、表面の幅方向WDの両側には、前後方向に延びる遮断位置に沿って立体ギャザー4が設けられている。
【0044】
より詳細には、この立体ギャザー4は、サイドフラップSFを含む領域に固定された付根部4xと、付根部4xから延び出た主部4cとを有する。主部4cは、その裏側に対向する部分(図示例ではトップシート2の表面)に固定されておらず、幅方向WDの中央側に開口するポケットを形成するポケット部4f,4pと、このポケット部4f,4pの前後両側に隣接し、裏側に対向する部分に固定された倒伏部4b,4d,4eと、ポケット部4f,4pの入口部分に取り付けられたギャザー弾性部材4Gとを有している。倒伏部4b,4d,4eは、基本的に主部4cの前端部及び後端部に設けられるとともに、後述する耳部ポケット40を形成するために、左右各側に少なくとも1つ追加される。
【0045】
図示例の立体ギャザー4の各部は、ギャザーシート4sにより形成されており、このギャザーシート4sが、主部4cの先端(付根部65側と反対側の端)で二つ折りされることにより、主部が二層構造となっている。ギャザー弾性部材4Gは、この二層構造の部分の層間に挟まれている。ギャザー弾性部材4Gの収縮力によりポケット部4f,4pが前後方向に収縮しつつ起き上がるとともに、前後方向に伸長可能となり、身体表面に密着するようになる。ギャザー弾性部材4Gはポケット部4f,4pにのみ設けることもできるが、図示例のように、最も前側の倒伏部4bにおける後端部から、最も後側の倒伏部4eにおける前端部まで固定されていると、ギャザー弾性部材4Gの収縮力が立体ギャザーのほぼ全体にわたり作用するため好ましい。
【0046】
ギャザーシート4sの内面は、トップシート2の側部上に幅方向WDの接合始端を有し、この接合始端から幅方向WDの外側の部分は各サイドフラップSFの内面、つまり図示例では液不透過性シート11の側部及びその幅方向WDの外側に位置する外装不織布12の側部にホットメルト接着剤などにより接合されている。なお、平面図中の点模様部分は立体ギャザー4の固着部分を示している。
【0047】
図示しないが、よく知られているように、立体ギャザー4の主部4cを、幅方向WDの外側の部分から幅方向WDの内側に延在する基端側部分とこの基端側部分の幅方向WDの中央側の端縁から身体側に折り返され幅方向WDの外側に延在する先端側部分とを有する二つ折りした状態で、主部4cの前後方向LDの両端部を固定して倒伏部を形成することもできる。
【0048】
ギャザーシート4sの種類は特に限定されないが、通常の場合、液遮断性を確保するために撥水性のものが用いられる。特に、肌触り及び液遮断性を両立できる点で、スパンボンド層間にメルトブローン層を有する不織布(SMS不織布、SMMS不織布、SSMS不織布、SSMMS不織布)が好適である。不織布は一枚で使用する他、複数枚重ねて使用することもできる。後者の場合、不織布相互をホットメルト接着剤等により接着するのが好ましい。
【0049】
ギャザー弾性部材4Gとしては、糸状、紐状、帯状等に形成された天然ゴム又は合成ゴム、具体的にはスチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコーン、ポリエステル等、通常使用される素材を用いることができる。ギャザー弾性部材4Gは、
図1及び
図2に示すように各複数本間隔を空けて設ける他、各1本設けることができる。展開状態におけるギャザー弾性部材4Gの伸長率は適宜定めることができるが、例えば太さ420~1120dtex程度のスパンデックス糸ゴムの場合、230~270%程度とすることができる。
【0050】
特に
図1~
図4に示す例では、
図8に拡大して示すように、主部4cにおける前側領域Fに位置する部分は、ポケット部4p、その裏側に位置する裏側部分2p、及びそれらの前後両側に隣接する倒伏部4b,4dにより形成される耳部ポケット40を有する。さらに、主部4cにおける股間領域Cに位置する部分の全体が、倒伏部4b,4d,4eではなくポケット部4fとなっており、股間領域Cにおけるポケット部4fの幅は、股間領域C以外で最も狭いポケット部4f,4pの幅以上(図示例ではすべてのポケット部が同じ幅)となっている。また、耳部ポケット40を構成する股間側の倒伏部4d、主部4cの後端部に位置する倒伏部4e、及びこれらにわたるポケット部4fにより、股間領域C及び後側領域Bの全体を含む主ポケット41が形成される。
【0051】
使用に際しては、
図6に示すように本テープタイプ使い捨ておむつ100の上にインナー使い捨ておむつ200(例については後述する)を配置し、インナー使い捨ておむつ200の前部の両側方に張り出した前耳部201を、
図7(a)に示すように、左右の立体ギャザー4に形成された耳部ポケット40に挿入する。この際、インナー使い捨ておむつ200の吸収体3の前部に両側方に張り出した前耳部3Fを有するのであれば、この吸収体3の前耳部3Fまで耳部ポケット40に挿入するとより好ましい。また、インナー使い捨ておむつ200の前耳部201よりも後側の部分は主ポケット41に挿入することができる。例えば、インナー使い捨ておむつ200の吸収体3の後部に両側方に張り出した後耳部3Bを有するのであれば、この吸収体3の後耳部3Bまで主ポケット41に挿入するとより好ましい。
【0052】
これにより、本テープタイプ使い捨ておむつ100及びインナー使い捨ておむつ200を一体として取り扱って装着作業を行う際や、装着後において、両者の一体性を向上させる(ズレを防止する)ことができる。特に、本例の場合、インナー使い捨ておむつ200が後方に移動しようとしても、前耳部201,3Fが倒伏部4dに引っ掛かり、移動が防止される。また、ギャザー弾性部材4Gによりポケット部4pが起き上がることにより耳部ポケット40の入口が開口するため、前耳部201,3Fの挿入は容易である。しかも、本テープタイプ使い捨ておむつ100は、一般的な構造に対して特定の位置に倒伏部4d(つまり接合箇所)を追加するだけで構成することができ、既存製品に対して極めて応用しやすいものである。さらに、倒伏部4dを追加する部位は、股間領域C以外であるため、股間領域Cの大部分において立体ギャザー4の起き上がり高さ(ポケットの深さ)は制限を受けず、漏れ防止性の低下は抑制される。
【0053】
なお、
図6には、インナー使い捨ておむつ200のサイドフラップSFが展開した状態で図示されているが、同図の例において、
図7(a)に示すように、インナー使い捨ておむつ200の吸収体3の前耳部3Fまで耳部ポケット40に挿入する場合、実際にはインナー使い捨ておむつ200のサイドフラップSFのうち吸収体3の前耳部3Fの側方に位置する部分及びその近傍の部分は、予め表側(図示例)若しくは裏側に折り曲げておくか、又は挿入力により勝手に折り曲げられる。同様に、インナー使い捨ておむつ200の吸収体3の後耳部3Bまで主ポケット41に挿入する場合、インナー使い捨ておむつ200のサイドフラップSFのうち吸収体3の後耳部3Bの側方に位置する部分及びその近傍の部分は、予め表側若しくは裏側に折り曲げておくか、又は挿入力により勝手に折り曲げられる。
【0054】
図示しないが、インナー使い捨ておむつ200のサイドフラップSFのみが耳部ポケット40及び主ポケット41に挿入されるだけで、吸収体3の耳部3F,3Bが挿入されなくてもよい(つまり、インナー使い捨ておむつ200の吸収体3の全幅3wが、テープタイプ使い捨ておむつ100の立体ギャザー4の左右の倒伏部間距離4wより短くてもよい)。
【0055】
耳部ポケット40を構成する倒伏部4b,4dのうち、股間側の倒伏部4dは、主部4cの前端部及び後端部の倒伏部4b,4eとは別に設ける必要がある。これに対して、耳部ポケット40を構成する倒伏部4b,4dのうち、ウエスト側の倒伏部4bについては、耳部ポケット40の位置や寸法等によっては、立体ギャザー4の基本となる主部4cの前端部及び後端部の倒伏部4bとは別に設けることもできるが、図示例のように、立体ギャザー4の前端部に通常設けられる倒伏部4bを、耳部ポケット40を構成する倒伏部4bの一方として利用すると、追加の倒伏部4dの数が少なくて済むため好ましい。
【0056】
耳部ポケット40を構成する倒伏部4b,4dの形状は、
図1に示すような長方形の他、三角形、円形等、特に限定されるものではない。
【0057】
倒伏部4b,4d,4e(固定部)の寸法は特に限定されるものではないが、一例を述べると以下のとおりである。すなわち、主部4cの前端部及び後端部に位置する倒伏部4b,4eの幅方向WDの寸法W1は、主部4cの幅方向WDの寸法の90%以上であることが好ましく、倒伏部4b,4eは付根部4xから連続していることが好ましい。それ以外の倒伏部4dの幅方向WDの寸法W2は、主部4cの幅方向WDの寸法の30%以上であることが好ましく、倒伏部4dは付根部4xから連続していてもよいが、ある程度(主部4cの幅方向WDの寸法の50%程度)離間していると、この離間部を通じて耳部ポケット40及び主ポケット41の内部の排泄物が移動可能であるため好ましい。また、主部4cの前端部及び後端部以外の倒伏部4b,4eは、前後方向LDの寸法L2が10~30mm程度であると好ましい。
【0058】
ポケット部4f,4pの幅方向WDの寸法は主部4cの幅方向WDの寸法に等しく、立体ギャザー4に要求される基本的な漏れ防止性や、インナー使い捨ておむつ200の耳部の幅方向WDの寸法に応じて定めることができる。通常の場合、ポケット部4f,4pの幅方向WDの寸法は製品全長Y1の1/20~1/10倍程度とすることができる。一方、耳部ポケット40のポケット部4pの前後方向LDの寸法L1は、ポケット部4pの前後に隣接する倒伏部4b,4dの前後方向LDの間隔に等しく、インナー使い捨ておむつ200の耳部の前後方向LDの寸法に応じて適宜定めることができる。通常の場合、この寸法L1は50~100mm程度とすることができる。
【0059】
図9及び
図10に示す例のように、耳部ポケット40を構成するポケット部4pの前側に隣接する倒伏部4b、及び
耳部ポケット40を構成するポケット部4pの後側に隣接する倒伏部4dは、それらの前後方向LDの間隔が、入口から少なくとも一定距離奥側に向かうにつれて連続的又は段階的に
長くなるような形状を有しているのは好ましい。この場合、耳部ポケット40の入口部分が前後方向LDに狭くなり、これよりも前後方向の寸法が短い前耳部201,3Fを有するインナー使い捨ておむつ200を使用する場合、前耳部201,3Fがより強く耳部ポケット40の入口に挟まれるため、インナー使い捨ておむつ200が本テープタイプ使い捨ておむつ100からより外れ難くなる。より詳細には、
図9に示す例では、耳部ポケット40を構成するポケット部4pの股間領域C側に隣接する倒伏部4dは、ウエスト側の縁が、幅方向WD中央側に向かうにつれてウエスト側に位置するように延びていることにより、耳部ポケット40の入口が狭くなっている。また、
図10に示す例では、耳部ポケット40を倒伏部4b,4dの、対向縁が、幅方向WD中央側に向かうにつれてウエスト側に位置するように階段状(図示例と異なり直線状や曲線状でもよい)に延びていることにより、耳部ポケット40の入口が狭くなっている。
【0060】
図9に示すように、耳部ポケット40を構成するポケット部4pの股間領域C側に隣接する倒伏部4dは、ウエスト側の縁が、幅方向WD中央側に向かうにつれてウエスト側に位置するように延びていると、インナー使い捨ておむつ200が耳部ポケット40を有する側と反対側に移動しようとしたとき、特に耳部が倒伏部4dに引っ掛かりやすくなるため好ましい。
【0061】
また、
図7(b)及び
図9に示すように、裏側部分2pにおける、耳部ポケット40の入口側に位置する部分に、ポケット部4p側に突出した凸部2cを有していると、耳部ポケット40の入口側における隙間が厚み方向に狭くなり、インナー使い捨ておむつ200の耳部がより強く挟まれるため好ましい。このような局所的な凸部2cは、図示例のように吸収体3に局所的に厚い部分3c(幅方向WDの両側の部分よりも厚い部分)を形成する他、厚み方向の一部の部材(例えばトップシート2や吸収体3)のみにエンボス加工を施したり、厚み方向の全体にわたりエンボス加工を施したりすることにより、形成することができる。凸部2cの寸法は適宜定めることができ、耳部ポケット40の内外にわたり設けられていてもよいし、耳部ポケット40内にのみ設けられていてもよい。また、凸部2cは、耳部ポケット40内の全体にわたっていてもよいし、耳部ポケット40内の一部のみを含むように設けられていてもよい。また、凸部2cは一つだけ設けても、間隔を空けて複数設けてもよい。
【0062】
図示例では、前側領域Fにのみ耳部ポケット40が形成されているが、インナー使い捨ておむつ200が製品外周の後部に両側方に張り出した後耳部202,3Bを有する場合には、これとともに(又はこれに代えて)、
図11に示すように後側領域Bに耳部ポケット40が形成されていてもよい。ただし、前側領域F及び後側領域Bの両方に耳部ポケット40を有する場合、インナー使い捨ておむつ200の種類や寸法によっては前後の耳部の位置が適合しない可能性がある。また、耳部ポケット40を有することは倒伏部4dの追加を意味し、この追加の倒伏部4dは立体ギャザー4の起き上がり高さが制限されることを意味する。よって、インナー使い捨ておむつ200に対する適合性、及び立体ギャザー4の漏れ防止性の確保を重視するのであれば、
図1に示す例のように前後いずれか一方にのみ耳部ポケット40を設けることが望ましい。
【0063】
<併用可能なインナー使い捨ておむつの例>
上述のテープタイプ使い捨ておむつ100(以下、アウター使い捨ておむつともいう)で併用を想定しているインナー使い捨ておむつ200は、製品外形及び吸収体3外形の少なくとも一方において、
図5に示すように前部及び後部に両側方に張り出した前耳部201,3F及び後耳部202,3Bを有するものであり、アウター使い捨ておむつの立体ギャザー4の間に嵌めることが可能な寸法のものである。
【0064】
したがって、インナー使い捨ておむつ200の吸収体3の全幅3wは、アウター使い捨ておむつの左右の立体ギャザー4の付根部4xの幅方向WDの間隔4z以下であることが好ましい。また、吸収体3の前耳部3F及び後耳部3Bの張り出し長さ(吸収体3の全幅3wと股間領域Cにおける吸収体3の最短幅3xとの差の半分)は、主部4cの幅(ポケット部4f,4pの深さ)以下、特に主部4cの幅の1/2~1倍程度であることが好ましい。
【0065】
図示例のインナー使い捨ておむつ200は、上述のテープタイプ使い捨ておむつ100の連結テープ5を省略し、寸法形状を変更したものとほぼ同様であるため、部材については上述のテープタイプ使い捨ておむつ100と同様の符号を使用し、敢えて説明を省略する。インナー使い捨ておむつ200の部材構成はこれに限定されるものではなく、公知のあらゆる部材構成を採用することができる。例えば、図示しないが、立体ギャザー4を有しないインナー使い捨ておむつ200も好適に用いることができる。
【0066】
また、インナー使い捨ておむつ200には、裏面に粘着剤層やフック材等のズレ止め手段を有しているものと、有していないものがあり、上述の使い捨ておむつはどちらも使用可能であるが、どちらかといえばズレ止め手段を有しないインナー使い捨ておむつ200を使用する際に技術的意義が大きいものである。
【0067】
<その他>
上記説明における不織布としては、部位や目的に応じて公知の不織布を適宜使用することができる。不織布の構成繊維としては、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維(単成分繊維の他、芯鞘等の複合繊維も含む)の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維等、特に限定なく選択することができ、これらを混合して用いることもできる。不織布の柔軟性を高めるために、構成繊維を捲縮繊維とするのは好ましい。また、不織布の構成繊維は、親水性繊維(親水化剤により親水性となったものを含む)であっても、疎水性繊維若しくは撥水性繊維(撥水剤により撥水性となった撥水性繊維を含む)であってもよい。また、不織布は一般に繊維の長さや、シート形成方法、繊維結合方法、積層構造により、短繊維不織布、長繊維不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、サーマルボンド(エアスルー)不織布、ニードルパンチ不織布、ポイントボンド不織布、積層不織布(スパンボンド層間にメルトブローン層を挟んだSMS不織布、SMMS不織布等)等に分類されるが、これらのどの不織布も用いることができる。
【0068】
<明細書中の用語の説明>
明細書中の以下の用語は、明細書中に特に記載が無い限り、以下の意味を有するものである。
【0069】
・「前後方向」とは図中に符号LDで示す方向(縦方向)を意味し、「幅方向」とは図中にWDで示す方向(左右方向)を意味し、前後方向と幅方向とは直交するものである。
【0070】
・「MD方向」及び「CD方向」とは、製造設備における流れ方向(MD方向)及びこれと直交する横方向(CD方向)を意味し、製品の部分によっていずれか一方が前後方向となるものであり、他方が幅方向となるものである。不織布のMD方向は、不織布の繊維配向の方向である。繊維配向とは、不織布の繊維が沿う方向であり、例えば、TAPPI標準法T481の零距離引張強さによる繊維配向性試験法に準じた測定方法や、前後方向及び幅方向の引張強度比から繊維配向方向を決定する簡易的測定方法により判別することができる。
【0071】
・「表側」とは、着用した際に着用者の肌に近い方を意味し、「裏側」とは、着用した際に着用者の肌から遠い方を意味する。
【0072】
・「表面」とは部材の、着用した際に着用者の肌に近い方の面を意味し、「裏面」とは部材の、着用した際に着用者の肌から遠い方の面を意味する。
【0073】
・「伸長率」は、自然長を100%としたときの値を意味する。例えば、伸長率が200%とは、伸長倍率が2倍であることと同義である。
【0074】
・「ゲル強度」は次のようにして測定されるものである。人工尿(尿素:2wt%、塩化ナトリウム:0.8wt%、塩化カルシウム二水和物:0.03wt%、硫酸マグネシウム七水和物:0.08wt%、及びイオン交換水:97.09wt%を混合したもの)49.0gに、高吸収性ポリマーを1.0g加え、スターラーで攪拌させる。生成したゲルを40℃×60%RHの恒温恒湿槽内に3時間放置したあと常温にもどし、カードメーター(I.techno Engineering社製:Curdmeter-MAX ME-500)でゲル強度を測定する。
【0075】
・「目付け」は次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を温度100℃の環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から、試料採取用の型板(100mm×100mm)を使用し、100mm×100mmの寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、100倍して1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
【0076】
・「厚み」は、自動厚み測定器(KES-G5 ハンディ圧縮計測プログラム)を用い、荷重:0.098N/cm2、及び加圧面積:2cm2の条件下で自動測定する。有孔不織布の厚みは、孔及びその周囲の突出部以外の部分で測定する。
【0077】
・吸水量は、JIS K7223-1996「高吸水性樹脂の吸水量試験方法」によって測定する。
【0078】
・吸水速度は、2gの高吸収性ポリマー及び50gの生理食塩水を使用して、JIS K7224‐1996「高吸水性樹脂の吸水速度試験法」を行ったときの「終点までの時間」とする。
【0079】
・不織布の繊維配向の方向とは、不織布の繊維が沿う方向であり、例えば、TAPPI標準法T481の零距離引張強さによる繊維配向性試験法に準じた測定方法や、前後方向及び幅方向の引張強度比から繊維配向方向を決定する簡易的測定方法により判別することができる。
【0080】
・「展開状態」とは、収縮や弛み無く平坦に展開した状態を意味する。
【0081】
・各部の寸法は、特に記載が無い限り、自然長状態ではなく展開状態における寸法を意味する。
【0082】
・試験や測定における環境条件についての記載が無い場合、その試験や測定は、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内で行うものとする。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、上記例のテープタイプ使い捨ておむつの他、パンツタイプ使い捨ておむつ等、使い捨て着用物品全般に適用できるものである。
【符号の説明】
【0084】
1…液不透過性シート、10…ミシン目、100…テープタイプ使い捨ておむつ、2…トップシート、200…インナー使い捨ておむつ、201,3F…前耳部、202,3B…後耳部、2c…凸部、3…吸収体、4…立体ギャザー、40…耳部ポケット、41…主ポケット、4G…ギャザー弾性部材、4b,4d,4e…倒伏部、4c…主部、4f,4p…ポケット部、4x…付根部、5…連結テープ、6…ターゲットシート、9…連結部、B…後側領域、C…股間領域、EF…エンドフラップ、F…前側領域、LD…前後方向、SF…サイドフラップ、WD…幅方向。