IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ツガミの特許一覧

<>
  • 特許-工具折損検出装置及び工作機械 図1
  • 特許-工具折損検出装置及び工作機械 図2
  • 特許-工具折損検出装置及び工作機械 図3
  • 特許-工具折損検出装置及び工作機械 図4
  • 特許-工具折損検出装置及び工作機械 図5
  • 特許-工具折損検出装置及び工作機械 図6
  • 特許-工具折損検出装置及び工作機械 図7
  • 特許-工具折損検出装置及び工作機械 図8
  • 特許-工具折損検出装置及び工作機械 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】工具折損検出装置及び工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/09 20060101AFI20240118BHJP
   B23Q 11/08 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
B23Q17/09 C
B23Q11/08 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020057653
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021154445
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000133593
【氏名又は名称】株式会社ツガミ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】加藤 駿
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-117053(JP,U)
【文献】実開平06-036702(JP,U)
【文献】特開平11-216646(JP,A)
【文献】実開昭60-183137(JP,U)
【文献】特開平10-043904(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0065471(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q11/08
B23Q17/09
B23Q17/22
B23B 1/00-25/06
B23B49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを把持する主軸を軸回転させる主軸ユニットと一体的に移動可能に設けられ、前記主軸ユニットと一体的に移動することにより前記ワークを加工するための工具に接近又は接触した状態で前記工具の折損の有無を検出する検出部と、
記ワークの回転軸に沿って前記検出部を前記主軸に対して進出位置と前記進出位置よりも前記工具から遠い退避位置の間で移動させる駆動部と、
複数の前記工具を保持する工具台を有する工具ユニットと、
前記ワークを把持する前記主軸を軸回転させる前記主軸ユニットと、前記検出部と、を回転軸方向と、前記回転軸方向に交差する方向と、に移動し、複数の前記工具により前記ワークを加工し、前記検出部に複数の前記工具の折損の有無を検出させる主軸移動機構と、を備え
前記検出部は、5方向に前記工具に接触する接触検出面を有し、
前記駆動部は、前記退避位置に移動するときには、前記検出部を、前記主軸ユニットを移動可能に支持するベッドと前記主軸ユニットとの間であって、前記ワークの回転軸方向において前記主軸の端面よりも前記工具から遠い位置に移動し、前記工具により前記ワークが加工される際には前記検出部を前記退避位置に待機させ、前記工具の折損の有無を検出する時に前記検出部を前記退避位置から前記進出位置に移動させる、
工具折損検出装置。
【請求項2】
前記検出部の前記進出位置は、前記主軸の回転軸の下部に設けられる、
請求項1に記載の工具折損検出装置。
【請求項3】
前記検出部を支持する軸部と、
前記軸部に連結されたアーム部と、
前記検出部に向けてエアを突出するノズル部を有し、前記ノズル部が前記検出部より前記工具から離れた位置に配置されたエアブローユニットと、を備える
請求項1又は2に記載の工具折損検出装置。
【請求項4】
前記駆動部及び前記退避位置にある前記検出部が収容されるカバーを備え、
前記カバーは、前記ベッドに向けて開口する形状をなし、
前記進出位置にある前記検出部は前記カバーの外に位置する、
請求項1から3の何れか1項に記載の工具折損検出装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項に記載の工具折損検出装置と、
前記主軸ユニットと、を備える、
工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具折損検出装置及び工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の加工装置は、X方向及びY方向に移動するテーブルと、テーブル上に設けられたワークを位置決め固定する位置決め台と、テーブル上に設けられた加工工具の折損を検出する工具検出スイッチと、を備える。テーブルを移動させることにより工具検出スイッチを検出位置に位置づけて加工工具を降下させる。その際に工具検出スイッチが押下されたか否かにより加工工具の折損の有無が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-70295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の構成においては、加工工具によるワークの加工の伴い発生する切粉又はクーラント液等が工具検出スイッチに到達することを抑制するためには、ワークの加工位置から工具検出スイッチを離れた位置に設ける必要がある。このように加工位置と工具検出スイッチの間の距離を大きくすると、例えば、ワークの加工完了後に、迅速に、加工工具の折損の有無の検出を開始することが困難となる。
【0005】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、ワークの加工と工具の折損検出を迅速に切り替えることができる工具折損検出装置及び工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る工具折損検出装置は、ワークを把持する主軸を軸回転させる主軸ユニットと一体的に移動可能に設けられ、前記主軸ユニットと一体的に移動することにより前記ワークを加工するための工具に接近又は接触した状態で前記工具の折損の有無を検出する検出部と、前記ワークの回転軸に沿って前記検出部を前記主軸に対して進出位置と前記進出位置よりも前記工具から遠い退避位置の間で移動させる駆動部と、複数の前記工具を保持する工具台を有する工具ユニットと、前記ワークを把持する前記主軸を軸回転させる前記主軸ユニットと、前記検出部と、を回転軸方向と、前記回転軸方向に交差する方向と、に移動し、複数の前記工具により前記ワークを加工し、前記検出部に複数の前記工具の折損の有無を検出させる主軸移動機構と、を備え、前記検出部は、5方向に前記工具に接触する接触検出面を有し、前記駆動部は、前記退避位置に移動するときには、前記検出部を、前記主軸ユニットを移動可能に支持するベッドと前記主軸ユニットとの間であって、前記ワークの回転軸方向において前記主軸の端面よりも前記工具から遠い位置に移動し、前記工具により前記ワークが加工される際には前記検出部を前記退避位置に待機させ、前記工具の折損の有無を検出する時に前記検出部を前記退避位置から前記進出位置に移動させる。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る工作機械は、前記工具折損検出装
置と、前記主軸ユニットと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、工具折損検出装置及び工作機械において、ワークの加工と工具の折損検出を迅速に切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る工作機械の概略正面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る工作機械の概略平面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る工作機械の概略側面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る第2主軸ユニット及び工具折損検出装置の概略側面図である。
図5図4の5-5線の断面図である。
図6】本発明の一実施形態に係るワーク加工時における第2主軸ユニット、工具折損検出装置及び工具ユニットの概略正面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る工具折損検出時における第2主軸ユニット、工具折損検出装置及び工具ユニットの概略正面図である。
図8】本発明の一実施形態に係る工具折損検出時における工具折損検出装置及び工具ユニットの概略正面図である。
図9】本発明の一実施形態に係る加工処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態に係る工具折損検出装置及び工作機械について図面を参照して説明する。
図1に示すように、工作機械1は、ワークWを加工するNC(Numerical Control)旋盤である。詳しくは、工作機械1は、工作機械1の各構成を支持する台であるベッドSと、第1主軸ユニット10と、第1主軸移動機構13と、第2主軸ユニット20と、第2主軸移動機構23,24と、工具スピンドル30と、工具ユニット40と、工具ユニット移動機構43と、工具折損検出装置50と、制御部300と、を備える。
【0011】
図1に示すように、第1主軸ユニット10は、ワークWを把持し、把持したワークWをZ軸方向に沿う回転軸を中心に軸回転させる。第1主軸ユニット10は、ワークWを把持する第1主軸11と、第1主軸11を軸回転可能に支持する第1主軸台15と、を備える。第1主軸移動機構13は、制御部300による制御のもと、第1主軸ユニット10をZ軸方向に移動させる。
【0012】
第2主軸ユニット20は、第1主軸ユニット10にZ軸方向に対向して位置し、ワークWを把持し、把持したワークWをZ軸方向に沿う回転軸を中心に軸回転させる。第2主軸ユニット20は、ワークWを把持する第2主軸21と、第2主軸21を軸回転可能に支持する第2主軸台25と、を備える。
第2主軸移動機構24は、制御部300による制御のもと、第2主軸ユニット20及び工具折損検出装置50が固定されるスライド部29を、Z軸方向に直交し、高さ方向に沿うY軸方向に移動させる。第2主軸移動機構23は、制御部300による制御のもと、スライド部29を含む第2主軸移動機構24をZ軸方向に移動させる。第2主軸移動機構23,24により、第2主軸ユニット20及び工具折損検出装置50は一体的にY軸方向及びZ軸方向に移動可能となる。
上述した第1主軸移動機構13、第2主軸移動機構23,24は、それぞれボールねじ13a,23a,24aと、ボールねじ13a,23a,24aに螺合するナット13b,23b,24bと、制御部300による制御のもとボールねじ13a,23a,24aを軸回転させるモータ13c,23c,24cと、を備える。モータ13c,23c,24cが駆動されることで、ナット13bは第1主軸台15と一体的にボールねじ13aに沿って移動し、ナット23bは第2主軸移動機構24と一体的にボールねじ13aに沿って移動し、ナット24bはスライド部29と一体的にボールねじ24aに沿って移動する。
【0013】
図1に示すように、工具スピンドル30は、第1主軸ユニット10により把持されたワークWを加工する加工ユニットである。工具スピンドル30は、ドリル等の工具31を軸回転可能に保持する。工具スピンドル30は、図示しない支持機構により互いに直交するX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動可能に支持されている。また、工具スピンドル30は、図示しない支持機構によりX軸方向に沿うB軸方向を中心に回転可能に支持されている。
【0014】
工具ユニット40は、複数の工具41と、複数の工具41を保持する工具台42と、を備える。複数の工具41は、ドリル等からなり、X軸方向及びY軸方向に沿って並べられる。複数の工具41は、それぞれZ軸方向に沿って延び、工具41の刃先が第2主軸21により把持されたワークWに向かって延びる。本例では、複数の工具41として、図8に示すように、5つの工具41a,41b,41c,41d,41eがY軸方向に並べられる。
【0015】
図1に示すように、工具ユニット移動機構43は、ベッドSの上面に設けられ、制御部300による制御のもと、工具ユニット40をX軸方向に移動させる。工具ユニット40は、Y軸方向において、第1主軸11とベッドSの間に位置する。工具ユニット移動機構43は、第1主軸移動機構13の支持ベース13dの窪み13e内に位置する。窪み13eは、工具ユニット40の移動範囲にわたってX軸方向に沿って延びている。窪み13e内に工具ユニット移動機構43が位置することにより、工具41と第1主軸11の間の距離が小さくなるため、第2主軸21が第1主軸11からワークWを受け取った後に迅速に工具41を利用して加工を行うことができる。支持ベース13dは、ベッドSの上面に位置し、第1主軸移動機構13のボールねじ13aを回転可能に支持する部材である。
詳しくは、工具ユニット移動機構43は、図2に示すように、モータ43aと、一対の歯車43b,43cと、一対の歯車43b,43cの間に掛け渡される環状のベルト43dと、図1に示すように、歯車43cの回転により軸回転するボールねじ43eと、ボールねじ43eの軸回転により直線的に移動するナット43fと、工具台42が固定され、ナット43fと一体で移動するスライダ43gと、スライダ43gの移動をガイドするX軸方向に延びるガイドレール43hと、を備える。図2に示すように、モータ43aは、Z軸方向において工具ユニット40の工具41とは反対側の後方に位置する。モータ43aは、制御部300による制御のもと、歯車43bを回転させる。歯車43bの回転は、ベルト43dを介して歯車43c及びボールねじ43eに伝わり、ボールねじ43eの軸回転によりスライダ43gが工具ユニット40とともにX軸方向に移動する。
【0016】
図1に示すように、工具折損検出装置50は、工具ユニット40の工具41の折損の有無を検出する。工具折損検出装置50は、第2主軸ユニット20と一体的に移動可能となるように第2主軸ユニット20の下側に固定されている。図3に示すように、第2主軸ユニット20及び工具折損検出装置50は、第2主軸移動機構23のスライド部29に固定されている。スライド部29は、第2主軸ユニット20及び工具折損検出装置50をそれぞれの側方から支持する。
【0017】
詳しくは、工具折損検出装置50は、図5に示すように、センサユニット51と、駆動部の一例である流体シリンダ52と、エアブローユニット53と、スライド軸部54と、軸受部55と、カバー57と、支持板58と、エア調整バルブ56と、を備える。
【0018】
図5に示すように、流体シリンダ52は、例えば、エアシリンダ又は油圧シリンダである。流体シリンダ52は、制御部300による制御のもと、Z軸方向に進退するピストンロッド52aと、ピストンロッド52aをZ軸方向に移動可能に支持するシリンダ本体部52bと、を備える。シリンダ本体部52bは、図示しないコンプレッサーにより調圧される図示しない2つの調圧室を有し、2つの調圧室の圧力差によりピストンロッド52aを移動させる。シリンダ本体部52bはスライド部29に固定される。ピストンロッド52aはZ軸方向に延びる円柱状をなす。ピストンロッド52aの先端は支持板58の裏面に固定されている。
【0019】
スライド軸部54は、Z軸方向に延びる円柱状をなし、流体シリンダ52と平行をなすようにY軸方向に並べられる。スライド軸部54は、ピストンロッド52aよりも下側に位置している。スライド軸部54は、Z軸方向に移動可能に軸受部55により支持されている。軸受部55はスライド部29に固定される。軸受部55は、スライド軸部54のすべり軸受けとして機能する2つのブッシュ55a,55bと、ブッシュ55a,55bを保持する保持部材55cと、を備える。2つのブッシュ55a,55bは、保持部材55c内のZ軸方向の両端部に位置する。スライド軸部54の先端は支持板58の裏面に固定されている。スライド軸部54と軸受部55が設けられることにより、センサユニット51及びエアブローユニット53を支持する支持板58を安定的にスライドさせることができる。
【0020】
図3に示すように、カバー57は、ベッドSに向けて開口する断面コの字状に形成される。図5に示すように、カバー57は、退避位置Piに位置するセンサユニット51及びエアブローユニット53に加えて、流体シリンダ52、スライド軸部54、軸受部55、支持板58及びエア調整バルブ56を収容する。カバー57は、切粉又はクーラント液等からセンサユニット51及びエアブローユニット53等を保護するために設けられる。カバー57は下方向(本例では重力方向)に向けて開口しているため、カバー57内に切粉又はクーラント液等が溜まることが抑制される。
詳しくは、図4に示すように、カバー57は、上壁部57aと、上壁部57aのX軸方向の両端から上壁部57aに交わる方向にベッドS(図3参照)に向けて延びる2つの側壁部57b,57cと、を備える。2つの側壁部57b,57cは互いに対面し、2つの側壁部57b,57cの間にはセンサユニット51及びエアブローユニット53等が位置する。
【0021】
図5に示すように、センサユニット51及びエアブローユニット53は、支持板58の表面に設置されている。支持板58の表面は工具ユニット40(図6参照)を向く面である。図4に示すように、センサユニット51及びエアブローユニット53は、Y軸方向に並べられ、第2主軸21の中心軸AxとY軸方向に一致する位置に設けられる。図5に示すように、センサユニット51は、Z軸方向において、スライド軸部54に対向する位置に設けられる。エアブローユニット53は、Z軸方向において、流体シリンダ52に対向する位置に設けられる。センサユニット51及びエアブローユニット53は、流体シリンダ52のピストンロッド52aが進退することにより、支持板58とともにカバー57内の退避位置Piとカバー57外の進出位置Poの間で移動する。
【0022】
図5に示すように、センサユニット51は、検出部51aと、軸部51bと、アーム部51cと、支持部51dと、受け部51eと、を備える。受け部51eは、円柱状の支持部51dを収容する。支持部51dは、支持部51dの前面側に位置し、支持部51dの中心軸に沿う支持軸部51d1を備える。支持部51dの支持軸部51d1には、アーム部51cの一端部が連結される。アーム部51cは、支持部51dの径方向外側に向けて、本例では、下側に向けて延びる。アーム部51cの他端部には軸部51bの一端部が連結される。軸部51bはZ軸方向に沿って延びる円柱状をなす。軸部51bの他端部には検出部51aが設けられている。軸部51b及びアーム部51cが設けられることにより、検出部51aの周囲の空間を大きくすることができ、例えば、検出部51aとエアブローユニット53の後述するノズル部53aの間の距離を大きくすることができる。これにより、例えば、図8に示すように、検出部51aが工具41eに接触している際に、エアブローユニット53のノズル部53aが工具41dに接触することが抑制される。
検出部51aは、矩形、本例では正方形の板状をなし、工具41の接触の有無を検出し、その検出結果を制御部300に出力する。図4の下部に拡大して示すように、検出部51aは、工具41の接触の有無を検出する複数の接触検出面51a1~51a5を備える。
接触検出面51a1は、検出部51aの前面(工具ユニット40を向く面)に位置し、X軸方向及びY軸方向に沿う。接触検出面51a1は、工具41の刃先の接触の有無を検出するための面である。
接触検出面51a2~51a5は検出部51aの各側面に位置する。接触検出面51a2~51a5は、工具41の側面の接触の有無を検出するための面である。接触検出面51a2,51a4はそれぞれY軸方向及びZ軸方向に沿い、互いに対面する。接触検出面51a3,51a5はX軸方向及びZ軸方向に沿い、互いに対面する。
【0023】
図5に示すように、エアブローユニット53は、制御部300による制御のもと、図示しないコンプレッサーからの正圧のエアを検出部51aに向けて吐出する。エアブローユニット53は、管状をなすノズル部53aと、ノズル部53aを支持するエアブロー本体部53bと、を備える。エアブロー本体部53bは、受け部51eの上方に位置し、支持板58の表面に固定されている。ノズル部53aにおけるエアブロー本体部53bに近い基端部はZ軸方向に沿って延び、ノズル部53aの基端部からノズル部53aの先端部に向かうにつれて検出部51aに近づくように湾曲する。すなわち、ノズル部53aは湾曲した略L字状に沿って延びる。ノズル部53aの先端部からはエアが検出部51aに向けて吐出される。ノズル部53aの先端部は、センサユニット51の軸部51bの上側に設けられる。
図4に示すように、エア調整バルブ56は、エアブローユニット53のエアブロー本体部53bに設けられ、図示しないコンプレッサーからのエアの圧力を調圧し、調圧したエアをノズル部53aから吐出する。エア調整バルブ56の調圧値は、作業者によりエア調整バルブ56のつまみが回されることにより調整される。なお、これに限らず、エア調整バルブ56の調圧値は、制御部300からの制御信号に基づき調整されてもよい。
【0024】
制御部300は、工作機械1の各部の動作を制御する。制御部300は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等からなる。制御部300は、数値制御によって、第1主軸ユニット10、第1主軸移動機構13、第2主軸ユニット20、第2主軸移動機構23,24、工具スピンドル30及び工具ユニット移動機構43を制御する。
【0025】
次に、図9のフローチャートを参照しつつ、制御部300により実行される加工処理について説明する。制御部300は、予め設定されたNCプログラムに沿ってこの加工処理を実行する。この加工処理の開始時には、センサユニット51及びエアブローユニット53は、カバー57内の退避位置Piに位置する。
まず、制御部300は、第1主軸ユニット10を介して把持したワークWを工具スピンドル30の工具31により第1の加工を行う(ステップS101)。
この第1の加工を完了すると、制御部300は、第1主軸ユニット10が把持するワークWを第2主軸ユニット20に受け渡す(ステップS102)。
例えば、制御部300は、上記ステップS102において、図1の矢印A1で示すように第2主軸ユニット20を第1主軸ユニット10に近づける前に、図2の矢印A2で示すように工具ユニット40をX軸方向において第2主軸ユニット20から離れた位置に退避させる。これにより、工具折損検出装置50が工具41に接触することが回避される。
そして、制御部300は、第2主軸ユニット20が第1主軸ユニット10からワークWを受け取った後、図1の矢印A3で示すように、第2主軸ユニット20をZ軸方向において工具ユニット40から退避させたうえで、図2の矢印A4で示すように、工具41を第2主軸ユニット20に対向する位置に工具ユニット40を移動させる。
【0026】
次に、制御部300は、図6に示すように、第2主軸ユニット20を介して把持したワークWを工具ユニット40の工具41を利用して第2の加工を行う(ステップS103)。
この第2の加工が完了すると、制御部300は、工具折損検出装置50を介して工具41の折損の有無を検出し(ステップS104)、上記加工処理に係るフローチャートを終了する。上記加工処理に係るフローチャートは、1つのワークWを加工する毎に実行される。
【0027】
詳しくは、上記ステップS104においては、制御部300は、図6の矢印A5で示すように、Z軸方向においてワークWが工具41aから離れるように第2主軸ユニット20を移動させる。そして、制御部300は、図6の矢印A6及び図7に示すように、Y軸方向において工具折損検出装置50の検出部51aが工具41aと同じ位置となるように第2主軸ユニット20を工具折損検出装置50とともに移動させる。次に、制御部300は、工具折損検出装置50の流体シリンダ52を介してセンサユニット51及びエアブローユニット53を退避位置Piから進出位置Poに移動させる。制御部300は、センサユニット51及びエアブローユニット53が進出位置Poに到達したとき、図示しないコンプレッサーを駆動させてエアブローユニット53を介してセンサユニット51の検出部51aにエアを供給する。これにより、検出部51aに付いた切粉、クーラント液又は塵埃等が吹き飛ばされ、検出部51aの検出精度を高めることができる。検出部51aは、進出位置Poに位置するときにはZ軸方向において第2主軸21よりも工具ユニット40に近い位置に設けられ、退避位置Piに位置するときにはZ軸方向において第2主軸21よりも工具ユニット40から遠い位置に設けられる。
なお、エアブローユニット53からセンサユニット51にエアを供給するタイミングは、本例に限らず、センサユニット51及びエアブローユニット53が退避位置Piにあるときであってもよい。さらに、制御部300は、エアブローユニット53からのエアが工具41に供給される位置で、エアブローユニット53からエアを供給してもよい。これにより、工具41に付いた切粉、クーラント液又は塵埃等が吹き飛ばされる。
【0028】
そして、制御部300は、図7に示すように、進出位置Poにあるセンサユニット51の検出部51aを工具41aに接触させるように、第2主軸移動機構23,24を介して第2主軸ユニット20を工具折損検出装置50とともに移動させる。制御部300は、折損検出に係る工具41aの種類を認識しており、工具41aの種類に応じた位置まで検出部51aを移動させる。これにより、種類毎に工具41の長さ及び径が異なる場合であっても折損検出が正確に行われる。
【0029】
制御部300は、工具41の折損の有無を検出する際、図7に示すように、検出部51aの接触検出面51a1を工具41の刃先に接触させてもよいし、図8に示すように、検出部51aの接触検出面51a3を工具41の側面に接触させてもよい。
なお、本例に限らず、制御部300は、接触検出面51a3以外の接触検出面51a2,51a4,51a5を工具41の側面に接触させてもよい。また、制御部300は、工具41の折損の有無を検出する際、1つの工具41の刃先と側面の両方を順番に検出部51aに接触させてもよい。
【0030】
制御部300は、検出部51aに工具41aが接触した旨の検出結果を検出部51aから受けると、工具41aの折損がない旨の判断を行う。一方、検出部51aに工具41aが接触しない旨の検出結果を検出部51aから受けると、工具41aの折損がある旨の判断を行う。制御部300は、工具折損検出装置50により検出された工具41の折損の有無を図示しないディスプレイ又は発音部を通じて作業者に伝えてもよい。また、例えば、制御部300は、工具41aの折損がある旨の判断を行うと、加工処理を終了してもよい。以上で、ステップS104に係る処理が終了となる。
【0031】
(効果)
以上、説明した一実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)工具折損検出装置50は、ワークWを把持した状態で軸回転させる主軸ユニットの一例である第2主軸ユニット20と一体的に移動可能に設けられ、第2主軸ユニット20と一体的に移動することによりワークWを加工するための工具41に接近又は接触した状態で工具41の折損の有無を検出する検出部51aと、第2主軸ユニット20により把持されたワークWの回転軸(Z軸方向)に沿って検出部51aを第2主軸ユニット20に対して進出位置Poと進出位置Poよりも工具41から遠い退避位置Piの間で移動させる駆動部の一例である流体シリンダ52と、を備える。
この構成によれば、検出部51aが退避位置Piにあれば、切粉又はクーラント液等が検出部51aに到達しづらいため、検出部51aを第2主軸ユニット20に近い位置に設けることが可能となる。これにより、第2主軸ユニット20による工具41を利用したワークWの加工完了後に、迅速に、検出部51aを通じて工具41の折損の有無の検出を開始することが可能となる。従って、ワークWの加工と工具41の折損検出を迅速に切り替えて行うことが可能となる。
また、第2主軸ユニット20の移動が検出部51aの移動にも利用されるため、より簡易な構成を実現でき、コストを抑えることができる。
さらに、検出部51aは、第2主軸ユニット20と一体的に移動することにより、工具41の長さ及び径に関わらず、工具41の折損の有無を検出することができる。
【0032】
(2)流体シリンダ52は、制御部300による制御のもと、工具41によりワークWが加工される際には検出部51aを退避位置Piに待機させ、ワークWの加工完了後で、かつ工具41の折損検出を開始する前に検出部51aを退避位置Piから進出位置Poに移動させる。
この構成によれば、ワークWの加工時に検出部51aを退避位置Piとすることにより、加工に伴う切粉又はクーラント液等が検出部51aに到達することが抑制される。これにより、検出部51aによる検出の精度を高めることができる。また、検出部51aから切粉又はクーラント液等を除去するのに要する時間を短縮できる。
さらに、検出部51aは、工具41の折損検出を行う際には進出位置Poに到達している。このため、例えば、工具41の折損検出を行う際に、第2主軸ユニット20が工具41に接触することが回避され、工具41の折損検出を行いやすい。
【0033】
(3)工具折損検出装置50は、流体シリンダ52及び退避位置Piにある検出部51aが収容され、第2主軸ユニット20を移動可能に支持するベッドSに向けて開口するカバー57を備える。進出位置Poにある検出部51aはカバー57の外に位置する。
この構成によれば、カバー57により、切粉又はクーラント液等から検出部51aが保護される。また、カバー57はベッドSに向けて開口する形状をなすため、カバー57内に切粉又はクーラント液等が溜まることが抑制される。従って、切粉又はクーラント液等が検出部51aに付着することが抑制され、検出部51aによる検出の精度を高めることができる。また、検出部51aから切粉又はクーラント液等を除去するのに要する時間を短縮できる。
【0034】
(4)工具折損検出装置50は、第2主軸ユニット20を移動可能に支持するベッドSと第2主軸ユニット20の間に位置する。
この構成によれば、工具折損検出装置50は、第2主軸ユニット20とベッドSの間のスペースに設けられることにより、工具折損検出装置50を有する工作機械1が大型化することが抑制される。また、第2主軸ユニット20の移動に伴って工具折損検出装置50が他の部材に接触することが抑制される。さらに、工具折損検出装置50が他の部材に接触することを回避するように、第2主軸ユニット20の移動を制御する必要がなくなる。このため、第2主軸ユニット20の移動の自由度が高まる。
【0035】
(5)工作機械1は、工具折損検出装置50と、第2主軸ユニット20と、工具41、及び工具41を保持する工具台42を有する工具ユニット40と、を備える。
この構成によれば、ワークWの加工と工具41の折損検出を迅速に切り替えて行うことが可能となる。
【0036】
なお、本発明は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。以下に、変形の一例を説明する。
【0037】
上記実施形態においては、工具折損検出装置50は、第2主軸ユニット20の下側に設けられていたが、これに限らず、第2主軸ユニット20の上側に設けられてもよいし、X軸方向における第2主軸ユニット20の側方に設けられていてもよい。
【0038】
上記実施形態においては、工具折損検出装置50は、第2主軸移動機構23のスライド部29を介して第2主軸ユニット20に固定されていたが、これに限らず、工具折損検出装置50は、第2主軸ユニット20の第2主軸台25に直接的に固定されていてもよい。
【0039】
上記実施形態における工具折損検出装置50は第1主軸ユニット10に設けられていてもよい。この場合、工具折損検出装置50は工具31の折損の有無を検出する。
【0040】
上記実施形態においては、カバー57は下側に向けて開口する断面コの字状に形成されていたが、これに限らず、センサユニット51等の周囲の全周を囲む筒状に形成されてもよい。
また、カバー57は、工具41に近い端部に開閉可能な蓋部を備えてもよい。この蓋部は、センサユニット51及びエアブローユニット53が退避位置Piに位置するとき切粉等がカバー57内に進入することを防ぐために閉じた状態にあり、センサユニット51及びエアブローユニット53が退避位置Piから進出位置Poに向けて移動する際に開くように構成されてもよい。
また、上記実施形態におけるカバー57の側壁部57b,57cの少なくとも何れか一方は省略されてもよい。
さらに、上記実施形態におけるカバー57は省略されてもよい。
【0041】
上記実施形態においては、センサユニット51を移動させる駆動部として流体シリンダ52が採用されていたが、駆動部は、これに限らず、例えば、モータ、及びモータの回転運動を直線運動に変換してピストンロッド52aに伝達する変換機構であってもよい。
【0042】
上記実施形態における検出部51aは第2主軸ユニット20により利用される工具41の折損の有無を検出していたが、これに限らず、第1主軸ユニット10により利用される工具31の折損の有無を検出してもよい。さらに、上記実施形態における検出部51aは第1主軸ユニット10により把持されたワークWの寸法を検出してもよい。これにより、ワークWの第1の加工の前又は後の寸法を検出可能となる。
また、制御部300は、検出部51aからの検出結果に基づき検出部51aが工具41に接触する位置を判定し、その位置に基づき工具41の摩耗量を判定してもよい。
【0043】
上記実施形態における検出部51aは、アーム部51cが支持部51dの支持軸部51d1を中心として旋回することにより回転してもよい。また、アーム部51cが省略され、支持部51dの支持軸部51d1と軸部51bが同軸上に連結されてもよい。また、軸部51b及びアーム部51cが省略され、検出部51aが支持軸部51d1の先端に固定されてもよい。
【0044】
上記実施形態における第1主軸ユニット10、第2主軸ユニット20、工具スピンドル30及び工具ユニット40の移動方向は適宜変更可能である。
また、上記実施形態におけるエアブローユニット53及びエア調整バルブ56は省略されてもよい。
また、上記実施形態におけるスライド軸部54及び軸受部55は省略されてもよい。
また、上記実施形態における支持板58は省略されてもよい。この場合、検出部51aはピストンロッド52aの先端に固定されてもよい。
また、上記実施形態における工作機械1の第1主軸ユニット10及び工具スピンドル30は省略されてもよい。
また、上記実施形態における工具ユニット移動機構43が省略され、工具ユニット40がベッドSに対して固定されていてもよい。
【0045】
上記実施形態においては、検出部51aは工具41により押される変位量を検出してもよい。また、検出部51aは工具41が接触することを検出する接触式の検出部であったが、これに限らず、光又は電磁波を利用した非接触式の検出部であってもよい。非接触式の検出部は工具41の接近を検出する。また、非接触式の検出部はカメラであってもよい。この場合、制御部300は、カメラにより撮影された工具41の画像に基づき工具41の折損の有無を判定する。
上記実施形態においては、工具41はZ軸方向に沿って延びていたが、工具41はX軸方向又はY軸方向に沿って延びていてもよい。
上記実施形態において、制御部300は、第2の加工を行う前に、工具41の折損の有無を検出してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…工作機械、10…第1主軸ユニット、11…第1主軸、13…第1主軸移動機構、13a,23a,24a,43e…ボールねじ、13b,23b,24b,43f…ナット、13c,23c,24c,43a…モータ、13d…支持ベース、13e…窪み、15…第1主軸台、20…第2主軸ユニット、21…第2主軸、23,24…第2主軸移動機構、25…第2主軸台、29…スライド部、30…工具スピンドル、31,41,41a~41e…工具、40…工具ユニット、42…工具台、43…工具ユニット移動機構、43b,43c…歯車、43d…ベルト、43g…スライダ、43h…ガイドレール、50…工具折損検出装置、51…センサユニット、51a…検出部、51b…軸部、51a1~51a5…接触検出面、51c…アーム部、51d…支持部、51e…受け部、51d1…支持軸部、52…流体シリンダ、52a…ピストンロッド、52b…シリンダ本体部、53…エアブローユニット、53a…ノズル部、53b…エアブロー本体部、54…スライド軸部、55…軸受部、55a,55b…ブッシュ、55c…保持部材、56…エア調整バルブ、57…カバー、57a…上壁部、57b,57c…側壁部、58…支持板、300…制御部、Ax…中心軸、S…ベッド、W…ワーク、Pi…退避位置、Po…進出位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9