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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】セルフレベリング材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/06 20060101AFI20240118BHJP
   C04B 24/00 20060101ALI20240118BHJP
   C04B 24/42 20060101ALI20240118BHJP
   B28C 7/04 20060101ALI20240118BHJP
   C04B 20/10 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
C04B28/06
C04B24/00
C04B24/42 A
B28C7/04
C04B20/10
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020060443
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021155314
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】515181409
【氏名又は名称】MUマテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100206944
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 絵美
(72)【発明者】
【氏名】林山 貴代美
(72)【発明者】
【氏名】森 裕克
(72)【発明者】
【氏名】蒔田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】戸田 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】平野 義信
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-229009(JP,A)
【文献】特開2019-210785(JP,A)
【文献】特開昭54-011931(JP,A)
【文献】特開2005-008465(JP,A)
【文献】特開2005-022913(JP,A)
【文献】特開2010-138031(JP,A)
【文献】特開2005-272173(JP,A)
【文献】特開2016-007784(JP,A)
【文献】特開2004-315343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00 - 32/02
B28C 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナセメントを含有する水硬性成分と、吸水率が1.6%超である細骨材と、撥水剤と、減水剤と、消泡剤とを含み、吸水率が1.6%超である前記細骨材の含有量が、セルフレベリング材全量に対して20質量%以上である、セルフレベリング材。
【請求項2】
前記撥水剤が液体である、請求項1に記載のセルフレベリング材。
【請求項3】
前記撥水剤が流動パラフィン又はシリコーンオイルである、請求項1又は2に記載のセルフレベリング材。
【請求項4】
前記撥水剤の含有量が、水硬性成分100質量部に対して0.02~1.2質量部である、請求項1~3のいずれか一項に記載のセルフレベリング材。
【請求項5】
前記水硬性成分が、ポルトランドセメント及び石膏を更に含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のセルフレベリング材。
【請求項6】
前記水硬性成分100質量%中、前記アルミナセメントを20~60質量%、前記ポルトランドセメントを20~60質量%、前記石膏を10~50質量%含む、請求項5に記載のセルフレベリング材。
【請求項7】
前記細骨材の少なくとも一部が前記撥水剤で被覆されている、請求項1~6のいずれか一項に記載のセルフレベリング材。
【請求項8】
細骨材と撥水剤とを混合して中間組成物を調製する工程、及び
水硬性成分と、減水剤と、消泡剤と、前記中間組成物とを混合してセルフレベリング材を製造する工程を有し、
前記細骨材が、吸水率が1.6%超である細骨材を含み、
得られるセルフレベリング材における、吸水率が1.6%超である前記細骨材の含有量が、セルフレベリング材全量に対して20質量%以上である、セルフレベリング材の製造方法。
【請求項9】
前記撥水剤が液体である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記撥水剤が流動パラフィン又はシリコーンオイルである、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記撥水剤の配合量が、水硬性成分100質量部に対して0.02~1.2質量部である、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルフレベリング材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セルフレベリング材は、構造物の床面の施工に床下地材として用いられている。セルフレベリング材と水とを混練して得られるセルフレベリング材スラリーは、流動性が非常に良いため自己平滑性に優れ、コンクリートの床に流して硬化させることで、水平レベル性及び平滑性に優れた床を得ることができる。
【0003】
例えば特許文献1には、高い流動性を有し、水平レベル性に優れ平滑な床面に仕上げることができるレベリング性水硬性組成物として、アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏からなる水硬性成分と、細骨材と、流動化剤及び/又は増粘剤を含むレベリング性水硬性組成物で、細骨材100質量%中、50メッシュ篩を通過し、かつ70メッシュ篩、100メッシュ篩、140メッシュ篩及び200メッシュ篩より選ばれるメッシュ篩で残留する細骨材を合計した総質量が、細骨材100質量%中、90~100質量%含む細骨材を用いるレベリング性水硬性組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-230900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、セルフレベリング材スラリーが高い流動性を有し水平レベル性に優れていても、セルフレベリング材スラリーを硬化して得られる硬化体の表層部に凹凸が残ることがある。セルフレベリング材硬化体表層の凹凸は、その上に施工されるビニル床シート等の仕上げ材の仕上がりに悪影響を及ぼすため好ましくない。
【0006】
本発明は、スラリー硬化後に優れた表面平滑性を有するセルフレベリング材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のセルフレベリング材は、アルミナセメントを含有する水硬性成分と、吸水率が1.6%超である細骨材と、撥水剤と、減水剤と、消泡剤とを含む。
【0008】
上記セルフレベリング材において、上記撥水剤は液体であることが好ましい。
【0009】
上記撥水剤は、流動パラフィン又はシリコーンオイルであることが好ましい。
【0010】
上記セルフレベリング材において、上記撥水剤の含有量は、水硬性成分100質量部に対して0.02~1.2質量部であることが好ましい。
【0011】
上記水硬性成分が、ポルトランドセメント及び石膏を更に含有してもよい。
【0012】
上記セルフレベリング材において、上記水硬性成分100質量%中、アルミナセメントを20質量%~60質量%、ポルトランドセメントを20~60質量%、石膏を10~50質量%含んでいてもよい。
【0013】
上記セルフレベリング材において、上記細骨材の少なくとも一部が上記撥水剤で被覆されていることが好ましい。
【0014】
本発明はまた、細骨材と撥水剤とを混合して中間組成物を調製する工程、及び、水硬性成分と、減水剤と、消泡剤と、該中間組成物とを混合してセルフレベリング材を製造する工程を有する、セルフレベリング材の製造方法を提供する。
【0015】
上記方法において、上記細骨材は、吸水率が1.6%超である細骨材を含んでいてよい。上記方法では、吸水率が1.6%超である細骨材を含む場合において、より撥水剤の効果が発揮される。
【0016】
上記方法において、上記撥水剤は液体であることが好ましい。
【0017】
上記撥水剤は、流動パラフィン又はシリコーンオイルであることが好ましい。
【0018】
上記撥水剤の配合量は、水硬性成分100質量部に対して0.02~1.2質量部であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、スラリー硬化後に優れた表面平滑性を有するセルフレベリング材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0021】
本実施形態に係るセルフレベリング材は、アルミナセメントを含有する水硬性成分と、細骨材と、撥水剤と、減水剤と、消泡剤とを含み、該細骨材の吸水率が1.6%超である。
【0022】
本発明者らは、細骨材の吸水率が一定以上である場合に、セルフレベリング材スラリーを硬化した後の表面凹凸が悪化する傾向を見出した。本発明のセルフレベリング材を用いることにより、吸水率が1.6%超である細骨材を含んでいても、硬化後の表面平滑性を高めることができる。このような効果が得られる理由として、本発明者らは以下のように推察している。硬化体表面の凹凸は、セルフレベリング材スラリーが硬化する過程で細骨材がスラリー中の水分を吸収し、特に表層部が不均一になることで発生すると考えられる。撥水剤をセルフレベリング材に配合することによって、細骨材による局所的な吸水が抑制され、セルフレベリング材スラリー全体をより均一化し、結果的に硬化体の表面凹凸の発生を抑制することができると考えられる。
【0023】
細骨材の吸水率は、JIS A 1109:2006に規定されている骨材の吸水率(%)の測定方法に準じて測定される。細骨材の吸水率は、1.65%以上、1.7%以上、1.75%以上、1.8%以上、1.9%以上又は2.0%以上であってもよい。細骨材の吸水率は、例えば、5%以下であってよく、4.8%以下、4.6%以下、4.4%以下、4.2%以下、4%以下、3.5%以下、3%以下又は2.5%以下であってもよい。細骨材の吸水率は、1.65~4.8%であることが好ましく、1.7~4.6%であることがより好ましく、1.75~4.4%であることが更に好ましい。
【0024】
本実施形態に係るセルフレベリング材は、吸水率が1.6%以下である細骨材を含んでいてもよい。細骨材全量に対する、吸水率が1.6%超である細骨材の含有量は、例えば、10質量%以上、30質量%以上、50質量%以上、70質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、98質量%以上、99質量%以上であってよく、100質量%であってもよい。細骨材全量に対する、吸水率が1.6%超である細骨材の含有量は、100質量%以下、98質量%以下、又は95質量%以下であってもよい。
【0025】
細骨材としては、例えば、珪砂、川砂、陸砂、海砂、砕砂、石灰石骨材、スラグ細骨材、再生細骨材等を用いることができる。細骨材としては、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
細骨材の粗粒率は、例えば0.6~2.0であってよく、0.8~1.8であることが好ましい。粗粒率とは、JIS A 1102:2014に規定される骨材の粗粒率をいう。細骨材の粗粒率が上記範囲であると、セルフレベリング材スラリーの高流動性が得やすい点で好ましい。
【0027】
吸水率が1.6%超である細骨材の含有量は、セルフレベリング材全量に対して、例えば20~85質量%であってよく、25~75質量%であることが好ましく、35~60質量%であることがより好ましい。吸水率が1.6%超である細骨材の含有量は、水硬性成分100質量部に対して、例えば30~500質量部であってよく、50~400質量部であることが好ましく、85~300質量部であることがより好ましく、120~250質量部であることが更に好ましい。
【0028】
本実施形態に係るセルフレベリング材は、撥水剤を含む。撥水剤とは、撥水剤が付着した物の表面に撥水性を付与するものである。セルフレベリング材が撥水剤を含むことにより、吸水率の高い細骨材を用いても、細骨材による吸水を抑制することができる。撥水剤は、室温(25℃)で液体のものが好ましい。
【0029】
撥水剤としては、例えば、流動パラフィン等の鉱物油などの炭化水素油、シリコーンオイル等が挙げられる。流動パラフィンはその炭素数や製造方法に関わらず使用することができる。流動パラフィンは、例えば炭素数10~40、又は15~35程度のアルカンの混合物であってよい。
【0030】
シリコーンオイルとしては、ストレートシリコーンオイル又は変性シリコーンオイルであってよい。ストレートシリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル等が挙げられる。シリコーンオイルはストレートシリコーンオイルであることが好ましい。撥水剤は、流動パラフィン又はシリコーンオイルであることが好ましい。撥水剤は1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0031】
撥水剤の含有量は、水硬性成分100質量部に対し、例えば0.02~1.2質量部であってよく、好ましくは0.025~1質量部であり、より好ましくは0.03~0.8質量部であり、更に好ましくは0.04~0.4質量部である。撥水剤の配合量が水硬性成分100質量部に対して1.2質量部以下であると、セルフレベリング材スラリー製造時の混練が行いやすく好ましい。
【0032】
撥水剤の含有量は、細骨材100質量部に対し、例えば0.01~0.6質量部であってよく、好ましくは0.012~0.5質量部であり、より好ましくは0.015~0.4質量部であり、更に好ましくは0.02~0.2質量部である。
【0033】
本実施形態に係るセルフレベリング材は、アルミナセメントを含有する水硬性成分を含む。アルミナセメントを用いることによって、セルフレベリング材に速硬性及び速乾性をもたらすことができる。アルミナセメントとしては、鉱物組成の異なるものが数種知られ市販されているが、それらの主成分はモノカルシウムアルミネート(CA)であり、市販品はその種類によらず使用することができる。なかでも、2000~6000cm/gのブレーン比表面積を有するアルミナセメントを用いることが好ましい。アルミナセメントのブレーン比表面積は、JIS R 2521:1995に準じて求められる。
【0034】
水硬性成分は、更にポルトランドセメントを含有することが好ましい。ポルトランドセメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント及び白色ポルトランドセメント等のポルトランドセメント;高炉セメント、フライアッシュセメント及びシリカセメント等の混合セメントなどであってよい。ポルトランドセメントのブレーン比表面積は、例えば2500cm/g以上であってよい。
【0035】
水硬性成分は、更に石膏を含有することが好ましい。石膏は、無水又は半水であってよい。石膏は、フッ酸製造工程等で副産される石膏、又は天然に産出される石膏であってよい。石膏は、1種又は2種以上の混合物として使用することができる。石膏のブレーン比表面積は、例えば2000cm/g以上であってよい。
【0036】
水硬性成分の含有量は、セルフレベリング材全量に対して、例えば15~50質量%であってよい。
【0037】
水硬性成分の組成は、水硬性成分100質量%中、アルミナセメント20~60質量%、ポルトランドセメント20~60質量%、及び石膏10~50質量%であることが好ましく、アルミナセメント25~50質量%、ポルトランドセメント25~50質量%、及び石膏15~45質量%であることがより好ましく、アルミナセメント28~45質量%、ポルトランドセメント28~45質量%、及び石膏20~40質量%であることが更に好ましく、アルミナセメント30~40質量%、ポルトランドセメント30~40質量%、及び石膏25~35質量%であることが特に好ましい。水硬性成分の組成が上記範囲であることにより、速硬性、低収縮性、及び優れた圧縮強度発現性を得ることができる。
【0038】
本実施形態に係るセルフレベリング材は、減水剤を含む。減水剤としては、例えば、メラミンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物、カゼイン、カゼインカルシウム、ポリカルボン酸系、ポリエーテル系及びポリエーテルポリカルボン酸系等が挙げられる。減水剤としては市販品を用いることができる。減水剤の含有量は、使用する水硬性成分に応じて、特性を損なわない範囲で適宜調整することができる。減水剤の含有量は、水硬性成分100質量部に対して、例えば0.005~1.0質量部であってよく、0.01~0.5質量部であることが好ましい。減水剤の含有量が0.005質量部以上であると、流動性が向上する傾向がある。減水剤の含有量が1.0質量部以下であると、材料分離を抑制することができる。
【0039】
本実施形態に係るセルフレベリング材は、消泡剤を含む。消泡剤としては、公知のものであってよく、例えば、シリコーン系、アルコール系、ポリエーテル系等の合成物質、植物由来の天然物質などが挙げられる。消泡剤を用いることで、セルフレベリング材の消泡効果が向上することが期待できる。なかでもポリエーテル系消泡剤は価格や入手のしやすさの観点から好ましい。消泡剤の含有量は、水硬性成分100質量部に対して、例えば0.01~2.0質量部であってよく、0.02~1.0質量部であることが好ましい。
【0040】
本実施形態に係るセルフレベリング材は、無機粉末を更に含んでいてもよい。無機粉末としては、例えば、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカヒューム、炭酸カルシウム微粉末又はドロマイト微粉末等であってよい。無機粉末の含有量は、セルフレベリング材全量に対して、例えば10~30質量%であってよい。無機粉末の含有量は、水硬性成分100質量部に対して、例えば30~150質量部であってよい。無機粉末のブレーン比表面積は、例えば3000cm/g以上であってよい。
【0041】
本実施形態に係るセルフレベリング材は、必要に応じて増粘剤、凝結遅延剤、凝結促進剤、樹脂粉末、収縮低減剤等を更に含んでいてもよい。
【0042】
本実施形態に係るセルフレベリング材は、上述の各種材料を混合することにより得ることができる。本発明の効果をより高めるためには、細骨材と撥水剤とを予め混合し、その後その他の材料を添加して混合することが好ましい。細骨材と撥水剤とを予め混合することにより、セルフレベリング材をスラリーとして用いる際に、細骨材による吸水をより抑制することができ、硬化体表面の平滑性をより高めることができる。このようにして得られたセルフレベリング材では、細骨材の少なくとも一部は撥水剤で被覆された状態である。
【0043】
本実施形態に係るセルフレベリング材の製造方法は、例えば、細骨材と撥水剤とを混合して中間組成物を調製する第一工程、及び、水硬性成分と、減水剤と、消泡剤と、上記中間組成物とを混合してセルフレベリング材を製造する第二工程を有していてよい。第二工程では、必要に応じて添加されるその他の材料を併せて混合してもよい。当該方法によれば、細骨材自体の吸水率が高い場合であっても、セルフレベリング材スラリーの硬化体の表面の平滑性を高めることができる。第一工程では、用いる細骨材及び撥水剤の全量を混合することが好ましい。また、第一工程においては、細骨材と撥水剤とを均一に混合するよう、1分以上混合することが好ましく、2分以上混合することがより好ましい。
【0044】
本実施形態に係るセルフレベリング材は、所定量の水と混合及び撹拌することによりスラリーとして用いることができる。セルフレベリング材スラリーを硬化させて、例えば構造物の床面の施工に用いることにより、水平レベル性及び平滑性に優れた床を得ることができる。
【実施例
【0045】
以下、本発明について実施例を挙げてより具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0046】
[使用材料]
セルフレベリング材の製造には、以下に示す材料を表1に示す配合割合で用いた。表1の配合割合は、水硬性成分を100質量部としたときの各材料の質量部を示している。
【0047】
<水硬性成分>
・アルミナセメント[AC](主成分モノカルシムアルミネート、イメリス ミネラルズ・ジャパン社製、ブレーン比表面積3270cm/g)
・ポルトランドセメント[PC](JIS R 5201早強ポルトランドセメント、宇部三菱セメント社製、ブレーン比表面積4510cm/g)
・石膏[G](天然無水石膏、ブレーン比表面積3870cm/g)
<細骨材>
・S6A(6号珪砂、吸水率0.91、粗粒率1.34)
・S6B(6号珪砂、吸水率2.11、粗粒率1.67)
・S6C(6号珪砂、吸水率2.90、粗粒率1.31)
<撥水剤>
・流動パラフィン(和光1級、富士フィルム和光純薬社製、流動パラフィン含有量≦100%)
・シリコーンオイル(KF-99、信越化学工業社製、メチルハイドロジェンポリシロキサン含有量100%)
<無機粉末>
・高炉スラグ微粉末(リバーメント、千葉リバーメント社製、ブレーン比表面積4410cm/g)
<混和剤>
・減水剤(ポリカルボン酸系流動化剤、花王社製)
・消泡剤(ポリエーテル系消泡剤、サンノプコ社製)
【0048】
細骨材の吸水率は、JIS A 1109:2006に規定の吸水率の測定方法に準じて測定した。
【0049】
[セルフレベリング材の製造]
アイリッヒミキサーで細骨材及び撥水剤の全量を3分間混合することにより、中間組成物を得た。その後、その他の全材料を加えて更に5分間混合することにより、セルフレベリング材を得た。配合割合は表1のとおりとした。なお、表1の配合割合は、水硬性成分を100質量部としたときの各成分の質量部を示している。
【0050】
[セルフレベリング材スラリーの調製]
セルフレベリング材1.5kgに水390gを加え、ケミスターラーを用いて3分間混練することにより、セルフレベリング材スラリーを得た。得られた各セルフレベリング材スラリーのフロー値、ショア硬度、及びセルフレベリング材スラリー硬化後の表面凹凸を以下に示す方法で評価した。
【0051】
[フロー値]
流動性の評価のため、JASS 15M-103「社団法人日本建築学会:セルフレベリング材の品質基準」に規定されたフロー値を測定した。測定は、20℃、65%RHの環境下で行った。フロー値の測定結果を表2に示す。
【0052】
[ショア硬度]
速硬性の評価のため、材齢2時間でのショア硬度を測定した。セルフレベリング材スラリー調製後すぐに、内寸法が幅130×長さ190×高さ17mmの合成樹脂製容器に厚さ15mmになるようにスラリーを流し込んだ。流し込んでから2時間経過後に、硬化した表面のショア硬度をスプリング式硬度計タイプD型((株)上島製作所製)を用いて、任意の4ヶ所の表面硬度を測定した。スプリング式硬度計タイプD型のゲージの読み取り値の平均値をショア硬度として求めた。測定は20℃、65%RHの環境下で行った。ショア硬度の測定結果を表2に示す。
【0053】
[表面凹凸]
セルフレベリング材スラリー調製後すぐに、内寸法が幅130×長さ190×高さ17mmの合成樹脂製容器に厚さ15mmになるようにスラリーを流し込み、24時間経過後に、硬化体の表面凹凸を評価した。本評価試験において「凹凸」とは、セルフレベリング材硬化体の表面に存在する、幅が数mm以内、厚さが1mm以内のものである。凹凸の評価は、表面凹凸の存在が、目視で分かる場合を1、目視では十分に分からないが指で触れてはっきり分かる場合を2、指で触れてやや分かる場合を3、指で触れてわずかに分かる場合を4、指で触れても分からない場合を5とし、5段階評価で行った。測定は20℃、65%RHの環境下で行った。表面凹凸の測定結果を表2に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
いずれの実施例及び比較例においてもスラリー製造時に問題なく混練を行うことができた。吸水率が高い細骨材を使用し、かつ撥水剤を添加していない比較例1、2では、硬化体に目視で確認できる表面凹凸が発生した。一方、実施例1~6のセルフレベリング材では、硬化体の表面凹凸が小さく、かつフロー値及びショア硬度が目標値を満足していた。実施例のセルフレベリング材は、良好な表面平滑性、流動性及び速硬性を有することが示された。