(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】免震装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/04 20060101AFI20240118BHJP
F16F 1/40 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
F16F15/04 P
F16F1/40
(21)【出願番号】P 2020061379
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】森 隆浩
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-029539(JP,A)
【文献】特開2002-089624(JP,A)
【文献】特開平10-054433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/04
F16F 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に交互に積層された硬質材料層及び軟質材料層を有する、積層構造体を備えた、免震装置であって、
前記積層構造体は、その上側及び下側のうち少なくともいずれか一方の端部側において、軸線方向外側に向かうにつれて前記積層構造体の外径が徐々に増大する、フレア部を有しており、
前記フレア部の外表面は、軸線方向断面において軸線方向外側に向かうにつれて徐々に外周側へ向かうように直線状に延在する、傾斜部を有しており、
前記積層構造体の上側及び下側のうち前記少なくともいずれか一方の端部側において、最も軸線方向外側に位置する複数の前記硬質材料層が、それぞれ当該硬質材料層に対し軸線方向内側に隣り合う他の前記硬質材料層の外径よりも大きな外径を有して
おり、
前記フレア部の外表面は、
前記傾斜部としての第1傾斜部と、
前記第1傾斜部よりも軸線方向内側に位置する、他の前記傾斜部としての第2傾斜部と、
からなり、
前記第2傾斜部における水平方向に対する鋭角側の傾斜角度は、前記第1傾斜部における水平方向に対する鋭角側の傾斜角度よりも、小さく、
前記フレア部には、複数の前記硬質材料層が位置している、免震装置。
【請求項2】
前記傾斜部は、水平方向に対する鋭角側の傾斜角度が、5°~70°である、請求項1に記載の免震装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、免震装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の免震装置は、一般的に、硬質材料層及び軟質材料層が鉛直方向に交互に積層されてなるものである(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の免震装置においては、免震装置の水平方向変形時において、座屈するおそれがあった。
【0005】
この発明は、耐座屈性能を向上できる免震装置を提供することを、目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の免震装置は、
鉛直方向に交互に積層された硬質材料層及び軟質材料層を有する、積層構造体を備えた、免震装置であって、
前記積層構造体は、その上側及び下側のうち少なくともいずれか一方の端部側において、軸線方向外側に向かうにつれて前記積層構造体の外径が徐々に増大する、フレア部を有しており、
前記フレア部の外表面は、軸線方向断面において軸線方向外側に向かうにつれて徐々に外周側へ向かうように直線状に延在する、傾斜部を有している。
本発明の免震装置によれば、耐座屈性能を向上できる。
【0007】
本発明の免震装置においては、
前記傾斜部は、水平方向に対する鋭角側の傾斜角度が、5°~70°であると、好適である。
これにより、耐座屈性能をより向上でき、また、免震装置の耐久性を向上できる。
【0008】
本発明の免震装置においては、
前記フレア部の外表面は、前記傾斜部として、
第1傾斜部と、
前記第1傾斜部よりも軸線方向内側に位置する第2傾斜部と、
を有しており、
前記第1傾斜部における水平方向に対する鋭角側の傾斜角度と、前記第2傾斜部における水平方向に対する鋭角側の傾斜角度とは、互いに異なっていてもよい。
【0009】
本発明の免震装置においては、
前記第2傾斜部における水平方向に対する鋭角側の傾斜角度は、前記第1傾斜部における水平方向に対する鋭角側の傾斜角度よりも、大きいと、好適である。
これにより、免震装置の耐久性を向上できる。
【0010】
本発明の免震装置においては、
前記第2傾斜部における水平方向に対する鋭角側の傾斜角度は、前記第1傾斜部における水平方向に対する鋭角側の傾斜角度よりも、小さくてもよい。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、耐座屈性能を向上できる免震装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る免震装置を、水平方向変形が生じていない状態で示す、軸線方向断面図である。
【
図2】
図1の免震装置の一部を拡大して示す、軸線方向断面図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係る免震装置の一部を拡大して示す、軸線方向断面図である。
【
図4】本発明の第3実施形態に係る免震装置の一部を拡大して示す、軸線方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の免震装置は、地震の揺れが構造物(例えば、ビル、マンション、戸建て住宅、倉庫等の建物、並びに、橋梁等)に伝わるのを抑制するために、構造物の上部構造と下部構造との間に配置されると、好適なものである。
以下に、図面を参照しつつ、この発明に係る免震装置の実施形態を例示説明する。各図において共通する構成要素には同一の符号を付している。
【0014】
図1は、本発明の第1実施形態に係る免震装置1を説明するための図面である。
図2は、
図1の免震装置1の一部を拡大して示す、軸線方向断面図である。
図3は、本発明の第2実施形態に係る免震装置1を説明するための図面である。
図4は、本発明の第3実施形態に係る免震装置1を説明するための図面である。
図1~
図4は、それぞれ、免震装置1を、水平方向変形が生じていない状態で示している。
以下では、説明の便宜のため、
図1~
図4の各実施形態の免震装置1について併せて説明する。
図1に示すように、免震装置1は、上下一対のフランジプレート21、22(以下、それぞれ「上側フランジプレート21」、「下側フランジプレート22」ともいう。)と、積層構造体3と、を備えている。
【0015】
本明細書において、免震装置1の「中心軸線O」(以下、単に「中心軸線O」ともいう。)は、積層構造体3の中心軸線である。免震装置1の中心軸線Oは、鉛直方向に延在するように指向される。本明細書において、免震装置1の「軸線方向」とは、免震装置1の中心軸線Oに平行な方向である。免震装置1の「軸線方向内側」とは、積層構造体3の軸線方向中心に近い側を指しており、免震装置1の「軸線方向外側」とは、積層構造体3の軸線方向中心から遠い側(フランジプレート21、22に近い側)を指している。また、免震装置1の「軸直方向」とは、免震装置1の軸線方向に垂直な方向である。また、免震装置1の「内周側」、「外周側」、「径方向」、「周方向」とは、免震装置1の中心軸線Oを中心としたときの「内周側」、「外周側」、「径方向」、「周方向」をそれぞれ指す。また、「上」、「下」とは、鉛直方向における「上」、「下」をそれぞれ指す。
【0016】
上側フランジプレート21は、上側フランジプレート21の上に構造物(例えば、ビル、マンション、戸建て住宅、倉庫等の建物、並びに、橋梁等)の上部構造(建物本体等)が載せられた状態で、当該上部構造に連結されるように、構成されている。下側フランジプレート22は、上側フランジプレート21よりも下側に配置され、構造物の下部構造(基礎等)に連結されるように構成されている。上側フランジプレート21及び下側フランジプレート22は、金属から構成されると好適であり、鋼から構成されるとより好適である。上側フランジプレート21及び下側フランジプレート22は、軸直方向断面において、円形又は多角形状(四角形等)等、任意の外縁形状を有してよい。
【0017】
積層構造体3は、上側フランジプレート21及び下側フランジプレート22どうしの間に配置されている。積層構造体3は、複数の硬質材料層4と、複数の軟質材料層5と、被覆層6と、を有している。硬質材料層4と軟質材料層5とは、鉛直方向に交互に積層されている。各硬質材料層4と各軟質材料層5とは、同軸上に配置されており、すなわち、各硬質材料層4と各軟質材料層5とのそれぞれの中心軸線は、免震装置1の中心軸線O上に位置している。積層構造体3の上下両端には、軟質材料層5が配置されている。積層構造体3の上下両端に配置された一対の軟質材料層5は、上側フランジプレート21及び下側フランジプレート22にそれぞれ固定されている。
【0018】
硬質材料層4は、硬質材料から構成されている。硬質材料層4を構成する硬質材料としては、金属が好適であり、鋼がより好適である。
図1~
図4の各例のように、硬質材料層4どうしの軸線方向の間隔は、均一(一定)であると、好適であるが、硬質材料層4どうしの軸線方向の間隔は、不均一(非一定)であってもよい。ここで、「硬質材料層4どうしの軸線方向の間隔」とは、互いに隣り合う一対の硬質材料層4の軸線方向中心どうしの間の軸線方向距離を指す。また、
図1~
図4の各例のように、各硬質材料層4の厚さは、互いに同じであると、好適であるが、各硬質材料層4の厚さは、互いに異なっていてもよい。
軟質材料層5は、硬質材料層4よりも硬さの低い(柔らかい)、軟質材料から構成されている。軟質材料層5を構成する軟質材料としては、弾性体が好適であり、ゴムがより好適である。軟質材料層5を構成し得るゴムとしては、天然ゴム又は合成ゴム(高減衰ゴム等)が好適である。
図1~
図4の各例のように、各軟質材料層5の厚さは、互いに同じであると、好適であるが、各軟質材料層5の厚さは、互いに異なっていてもよい。
【0019】
被覆層6は、硬質材料層4及び軟質材料層5の外周側の表面を覆っている。被覆層6を構成する材料は、弾性体が好適であり、ゴムがより好適である。被覆層6を構成する材料は、軟質材料層5を構成する軟質材料と同じでもよいし、軟質材料層5を構成する軟質材料とは異なっていてもよい。
被覆層6は、軟質材料層5と一体に構成されている。
図1~
図4の各例において、被覆層6は、硬質材料層4及び軟質材料層5の外周側の表面の全体を覆っていており、ひいては、積層構造体3の外周側の表面の全体を構成している。ただし、被覆層6は、硬質材料層4及び軟質材料層5の外周側の表面の一部のみを覆っていてもよく、ひいては、積層構造体3の外周側の表面の一部のみを構成していてもよい。また、被覆層6は、設けられていなくてもよく、その場合、積層構造体3の外周側の表面は、硬質材料層4及び軟質材料層5の外周側の表面のみから構成される。
【0020】
本実施形態において、積層構造体3、硬質材料層4、軟質材料層5、及び被覆層6は、それぞれ、軸直方向断面において、円形又は多角形状(四角形等)等の任意の外縁形状を有してよい。
なお、本明細書において、積層構造体3、硬質材料層4、軟質材料層5、及び被覆層6のそれぞれの「外径」とは、これらが軸直方向断面において非円形の外縁形状を有している場合、軸直方向断面におけるこれらの外接円の直径を指す。
【0021】
図1~
図4の各実施形態において、積層構造体3は、積層構造体3の上側及び下側のうち少なくともいずれか一方の端部側において、フレア部3Fを有している。フレア部3Fは、積層構造体3のうち、積層構造体3の軸線方向外側の端30に至るまで、軸線方向外側に向かうにつれて積層構造体3の外径が徐々に増大する部分である。すなわち、フレア部3Fは、積層構造体3のうち、積層構造体3の軸線方向の中心33における積層構造体3の外径よりも、大きな外径を有する部分である。
本明細書において、「徐々に増大」とは、一部分で一定に維持されることなく常に連続的に増大する場合に限られず、一部分で一定に維持される場合(例えば、段階的に増大する場合)も含む。
図1~
図4の各実施形態において、積層構造体3は、積層構造体3の上側及び下側の両方の端部側において、フレア部3Fを有している。ただし、積層構造体3は、積層構造体3の上側及び下側のうちいずれか一方の端部側のみにおいて、フレア部3Fを有してもよい。フレア部3Fの外表面は、積層構造体3の中心軸線Oの周りに回転対称に構成されていると、好適である。
図1~
図4の各実施形態において、フレア部3Fの外表面は、軸線方向断面において軸線方向外側に向かうにつれて徐々に外周側へ向かうように直線状に延在する、傾斜部3FIを、1つ又は複数有している。フレア部3Fの外表面は、
図1~
図2の実施形態のように、傾斜部3FIを1つのみ有してもよい。あるいは、フレア部3Fの外表面は、
図3及び
図4の各実施形態のように、傾斜部3FIを、軸線方向に沿って複数有してもよい。
【0022】
以下、
図1~
図4の各実施形態の免震装置1の作用効果について説明する。
まず、
図1~
図4の各実施形態の免震装置1は、上述のとおり、積層構造体3が、積層構造体3の上側及び下側のうち少なくともいずれか一方の端部側において、軸線方向外側に向かうにつれて積層構造体3の外径が徐々に増大する、フレア部3Fを有している。
これにより、仮に、積層構造体3の軸線方向の各位置における積層構造体3の外径が、
図1~
図4の各例での積層構造体3の軸線方向中心33における積層構造体3の外径と同じである場合に比べて、免震装置1の水平変形時において、積層構造体3がよりしっかりと軸線方向に支えられるので、免震装置1が座屈しにくくなる(言い換えれば、免震装置1の耐座屈性能を向上できる)。
また、
図1~
図4の各実施形態の免震装置1によれば、仮に、積層構造体3の軸線方向の各位置における積層構造体3の外径が、
図1~
図4の各例での積層構造体3のフレア部3Fにおける軸線方向外側の端30における積層構造体3の外径と同じである場合に比べて、免震装置1を柔らかくすることができるので、構造物の長周期化が可能となり(言い換えれば、構造物がよりゆっくりと揺れるようになり)、ひいては、免震装置1の免震性能を向上できる。
また、
図1~
図4の各実施形態の免震装置1によれば、フレア部3Fにおいて、軸線方向外側に向かうにつれて積層構造体3の外径が徐々に増大するので、仮に、フレア部3Fにおいて積層構造体3の外径が一定である場合に比べて、免震装置1の水平方向変形時において、積層構造体3のフレア部3Fにおける外周側部分が、フランジプレート21、22から離れるように軸線方向内側へ反り返ること(以下、「めくれ上がり」という。)を、抑制することができる。それにより、めくれ上がりに起因してフレア部3Fにおける外周側部分において軟質材料層5が疲労したり損傷したりするおそれを、低減でき、ひいては、免震装置1の耐久性を向上できる。
また、
図1~
図4の各実施形態の免震装置1によれば、フレア部3Fの外表面が、軸線方向断面において軸線方向外側に向かうにつれて徐々に外周側へ向かうように直線状に延在する、傾斜部3FIを、1つ又は複数有しているので、仮に、フレア部3Fの外周面の全体が、軸線方向断面において非直線状(例えば湾曲線状)に延在する場合に比べて、免震装置1の水平方向変形時において、積層構造体3のフレア部3Fにおける外周側部分における変形がより均一になるので、耐座屈性能を向上できる。また、フレア部3Fの外表面が、傾斜部3FIを1つ又は複数有しているので、仮に、フレア部3Fの外周面の全体が、軸線方向断面において非直線状(例えば湾曲線状)に延在する場合に比べて、免震装置1のめくれ上がりを抑制できる。また、フレア部3Fの外表面が、傾斜部3FIを1つ又は複数有しているので、仮に、フレア部3Fの外周面の全体が、軸線方向断面において非直線状(例えば湾曲線状)に延在する場合に比べて、免震装置1が製造し易くなる。
【0023】
本明細書で説明する各例において、傾斜部3FIは、その各軸線方向位置において、水平方向に対する鋭角側の傾斜角度θ(
図2~
図4)が、5°以上であると好適であり、20°以上であるとより好適である。これにより、免震装置1の水平方向変形時における、フレア部3Fの軸線方向内側の端部でのひずみを低減できる。よって、免震装置の耐久性を向上できる。
また、本明細書で説明する各例において、傾斜部3FIは、その各軸線方向位置において、水平方向に対する鋭角側の傾斜角度θ(
図2~
図4)が、70°以下であると好適であり、50°以下であるとより好適である。これにより、積層構造体3におけるフレア部3Fの軸線方向外側の端30の外径と、積層構造体3におけるフレア部3Fよりも軸線方向内側の中央部の外径との差を、大きくできるので、上述したフレア部3Fの効果(耐座屈性能の向上及び免震性能の向上)を、より効果的に得ることができる。
【0024】
なお、フレア部3Fの外表面は、傾斜部3FIを、1つ又は複数有する限り、軸線方向断面において軸線方向に平行に直線状に延在する部分、かつ/又は、軸線方向断面において非直線状に延在する部分を、さらに有していてもよい。
ただし、フレア部3Fの外表面は、
図1~
図4の各実施形態のように、フレア部3Fの外表面の全体が、1つ又は複数の傾斜部3FIからなるか、あるいは、図示は省略するが、フレア部3Fの外表面の全体が、1つ又は複数の傾斜部3FIと、軸線方向断面において軸線方向に平行に直線状に延在するストレート部と、からなると、好適である。
【0025】
本明細書で説明する各例においては、上述のように、フレア部3Fの外表面は、
図3及び
図4の各例のように、軸線方向に沿って複数の傾斜部3FIを有してよい。この場合、これら複数の傾斜部3FIどうしは、水平方向に対する鋭角側の傾斜角度θが互いに異なっていると、好適である。
図3及び
図4の各例では、フレア部3Fの外周面は、傾斜部3FIとしての第1傾斜部3FI1と、他の傾斜部3FIとしての第2傾斜部3FI2と、とからなる。第2傾斜部3FI2は、第1傾斜部3FI1よりも軸線方向内側に位置している。第1傾斜部3FI1における水平方向に対する鋭角側の傾斜角度θ1(θ)と、第2傾斜部3FI2における水平方向に対する鋭角側の傾斜角度θ2(θ)とは、互いに異なっている。
【0026】
上述のようにフレア部3Fの外表面が軸線方向に沿って複数の傾斜部3FIを有する場合、
図3の例のように、これら複数の傾斜部3FIは、軸線方向内側に位置する傾斜部3FIほど、水平方向に対する鋭角側の傾斜角度θが大きいと、好適である。
図3の例においては、第2傾斜部3FI2における水平方向に対する鋭角側の傾斜角度θ2(θ)は、第1傾斜部3FI1における水平方向に対する鋭角側の傾斜角度θ1(θ)よりも、大きい。
これにより、免震装置1の水平方向変形時における、フレア部3Fの軸線方向内側の端部でのひずみを、より効果的に低減できる。よって、免震装置の耐久性をより向上できる。
ただし、フレア部3Fの外表面が軸線方向に沿って複数の傾斜部3FIを有する場合、これら複数の傾斜部3FIの水平方向に対する鋭角側の傾斜角度θの大小関係は、任意でよい。例えば、
図4の例のように、これら複数の傾斜部3FIは、軸線方向内側に位置する傾斜部3FIほど、水平方向に対する鋭角側の傾斜角度θが小さくてもよい。
図4の例では、第2傾斜部3FI2における水平方向に対する鋭角側の傾斜角度θ2(θ)は、第1傾斜部3FI1における水平方向に対する鋭角側の傾斜角度θ1(θ)よりも、小さい。
【0027】
本明細書で説明する各例において、積層構造体3は、
図1~
図4の各例のように、積層構造体3の上側及び下側のうち少なくともいずれか一方の端部側(具体的には、フレア部3F)において、積層構造体3の軸線方向外側の端30に至るまで、積層構造体3の軸線方向外側に向かうにつれて、積層構造体3の外径が、一部分で一定に維持されることなく常に連続的に増大していると、より好適である。この場合、免震装置1の耐座屈性能及び免震性能を、向上できることに加えて、積層構造体3のめくれ上がりをさらに抑制することができる。
【0028】
なお、
図1~
図4の各実施形態において、フレア部3Fは、積層構造体3のうち、積層構造体3の軸線方向の中心33よりも軸線方向外側に離れた位置のみに位置しており、それにより、フレア部3Fよりも軸線方向内側の中央部分において、積層構造体3の外径は、軸線方向に沿って一定である。ただし、フレア部3Fは、積層構造体3のうち、積層構造体3の軸線方向の中心33から積層構造体3の軸線方向外側の端30までの全体にわたって位置していてもよい。すなわち、積層構造体3は、積層構造体3の上側及び下側のうち少なくともいずれか一方の端部側(具体的には、フレア部3F)において、積層構造体3の軸線方向の中心33から積層構造体3の軸線方向外側の端30までの全体にわたって、積層構造体3の軸線方向外側に向かうにつれて、積層構造体3の外径が、徐々に増大していてもよい。
【0029】
本明細書で説明する各例において、積層構造体3は、
図1~
図4の各例のように、その上側及び下側のうち少なくともいずれか一方の端部側において、最も軸線方向外側に位置する複数の硬質材料層4が、それぞれ当該硬質材料層4に対し軸線方向内側に隣り合う他の硬質材料層4の外径以上の外径を有している(すなわち、これら複数の硬質材料層4の外径が、軸線方向外側に向かうにつれて徐々に増大している)と、好適である。言い換えれば、積層構造体3は、
図1~
図4の各例のように、その上側及び下側のうち少なくともいずれか一方の端部側において、いずれの硬質材料層4も、当該硬質材料層4に対し軸線方向内側に隣り合う他の硬質材料層4の外径未満の外径を有していないと、好適である。これにより、仮に、いずれかの硬質材料層4が、当該硬質材料層4に対し軸線方向内側に隣り合う他の硬質材料層4の外径未満の外径を有している場合に比べて、免震装置1の耐座屈性能を、向上できる。また、仮に、積層構造体3の上側及び下側のうち少なくともいずれか一方の端部側において、各硬質材料層4の外径が同じである場合に比べて、積層構造体3のめくれ上がりを抑制することができる。
【0030】
また、本明細書で説明する各例において、積層構造体3は、
図1~
図4の各例のように、その上側及び下側のうち少なくともいずれか一方の端部側において、最も軸線方向外側に位置する複数の硬質材料層4が、それぞれ当該硬質材料層4に対し軸線方向内側に隣り合う他の硬質材料層4の外径よりも大きな外径を有している(すなわち、これら複数の硬質材料層4の外径が、軸線方向外側に向かうにつれて、一部分で一定に維持されることなく常に連続的に増大している)と、好適である。この場合、免震装置1の耐座屈性能及び免震性能を、向上できることに加えて、積層構造体3のめくれ上がりをさらに抑制することができる。
【0031】
なお、
図1~
図4の各実施形態では、積層構造体3における軸線方向中央部分において、複数の硬質材料層4の外径が、互いに同じである。ただし、積層構造体3の上側及び下側のうち少なくともいずれか一方の端部側(具体的には、フレア部3F)において、積層構造体3の軸線方向の中心33から積層構造体3の軸線方向外側の端30までの領域内の、複数の硬質材料層4が、それぞれ当該硬質材料層4に対し軸線方向内側に隣り合う他の硬質材料層4の外径以上の外径を有して(すなわち、これら複数の硬質材料層4の外径が、軸線方向外側に向かうにつれて徐々に増大して)いてもよい。
【0032】
積層構造体3のフレア部3Fにおける積層構造体3の軸直方向断面での外縁形状は、積層構造体3のフレア部3Fよりも軸線方向内側の中央部における積層構造体3の軸直方向断面での外縁形状とは、同じであってもよい。
あるいは、積層構造体3のフレア部3Fにおける積層構造体3の軸直方向断面での外縁形状は、積層構造体3のフレア部3Fよりも軸線方向内側の中央部における積層構造体3の軸直方向断面での外縁形状とは、異なっていてもよい。これによれば、免震性能を向上しつつ、耐座屈性能をより向上できる。例えば、積層構造体3のフレア部3Fにおける積層構造体3の軸直方向断面での外縁形状が円形であり、積層構造体3の軸線方向中心33における積層構造体3の軸直方向断面での外縁形状が四角形であってもよい。あるいは、積層構造体3のフレア部3Fにおける積層構造体3の軸直方向断面での外縁形状が四角形であり、積層構造体3の軸線方向中心33における積層構造体3の軸直方向断面での外縁形状が円形であってもよい。
【0033】
なお、積層構造体3が、
図1及び
図3の各例のように、その上側及び下側の両方の端部側においてフレア部3Fを有する場合は、その上側及び下側のうちいずれか一方の端部側のみにおいてフレア部3Fを有する場合に比べて、耐座屈性能を向上できる。
一方、積層構造体3が、その上側及び下側のうちいずれか一方の端部側のみにおいてフレア部3Fを有する場合は、
図1及び
図3の各例のように、その上側及び下側の両方の端部側においてフレア部3Fを有する場合に比べて、免震装置1の製造時において、積層構造体3を構成する各硬質材料層4及び各軟質材料層5の積層作業等がしやすくなるので、免震装置1の製造性を向上できる。
【0034】
積層構造体3は、
図1~
図4の各例においては、各硬質材料層4と各軟質材料層5とが環状ではなく中実に構成されており、積層構造体3の中心軸線O上に硬質材料層4と軟質材料層5とが位置しているが、これに限られない。例えば、積層構造体3は、各硬質材料層4と各軟質材料層5とが環状に構成されており、各硬質材料層4の中心穴と各軟質材料層5の中心穴とによって、積層構造体3は、その中心軸線O上に、軸線方向に延在する中心穴を有しており、当該中心穴に、柱状体が配置されていてもよい。柱状体は、塑性変形により振動エネルギーを吸収できるように構成されていると好適である。柱状体は、例えば、鉛、錫、錫合金、又は熱可塑性樹脂から構成されることができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の免震装置は、地震の揺れが構造物(例えば、ビル、マンション、戸建て住宅、倉庫等の建物、並びに、橋梁等)に伝わるのを抑制するために、構造物の上部構造と下部構造との間に配置されると、好適なものである。
【符号の説明】
【0036】
1:免震装置、
21:上側フランジプレート(フランジプレート)、 22:下側フランジプレート(フランジプレート)、
3:積層構造体、 30:積層構造体の軸線方向外側(上側又は下側)の端、 33:積層構造体の軸線方向中心、 3F:フレア部、 3FI:傾斜部、 3FI1:第1傾斜部、 3FI2:第2傾斜部、
4:硬質材料層、
5:軟質材料層、
6:被覆層、
O:中心軸線