(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
G09G 3/36 20060101AFI20240118BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
G09G3/36
G09G3/20 612T
G09G3/20 621B
G09G3/20 641E
G09G3/20 642J
G09G3/20 670K
(21)【出願番号】P 2020062207
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(72)【発明者】
【氏名】金森 裕太
【審査官】橋本 直明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-059958(JP,A)
【文献】特開2009-003319(JP,A)
【文献】特開2006-084554(JP,A)
【文献】特開2015-025927(JP,A)
【文献】特開2008-083204(JP,A)
【文献】特開2003-107426(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0051507(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/36
G09G 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィールドシーケンシャル駆動により1フレーム期間単位で1つの画像を表示する液晶表示パネルを有する液晶表示装置であって、
前記1フレーム期間は、前記液晶表示パネルの
全画素の液晶に
一定のリセット電圧を印加するブランキング期間を含み、
前記ブランキング期間は、前記リセット電圧として正のリセット電圧を印加する第一ブランキング期間と、前記リセット電圧として負のリセット電圧を印加する第二ブランキング期間とを含み、
前記1フレーム期間内に含まれる前記ブランキング期間の数が第一の数である第一駆動モードと、前記1フレーム期間内に含まれる前記ブランキング期間の数が第二の数である第二駆動モードとを有し、
前記正のリセット電圧と前記負のリセット電圧のうち少なくとも何れか一方の電圧値又は時間幅は、前記第一駆動モードと前記第二駆動モードが互いに切り替わった際に、前記1フレーム期間内における前記正のリセット電圧の時間積分値の総和と前記負のリセット電圧の時間積分値の総和が互いに等しくなるように変化する、
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記1フレーム期間は、前記液晶表示パネルが画像を表示する表示駆動を行う表示駆動期間と、前記液晶表示パネルが画像を表示しない反転駆動を行う反転駆動期間とを含み、
前記反転駆動期間において前記液晶に印加される反転駆動電圧の
電圧値又は時間幅は、
前記第一駆動モードと前記第二駆動モードが互いに切り替わった際に、前記
正のリセット電圧
と前記負のリセット電圧のうち少なくとも何れか一方の電圧値
又は時間幅のうち互いに同種のパラメーター
と互いに同じ値だけ変化する、
ことを特徴とする請求項
1に記載の液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フィールドシーケンシャル駆動により画像を表示する液晶表示装置では、赤色(R色)、緑色(G色)及び青色(B色)の異なる波長の3つの光源を順次選択して発光させるように制御して、カラー画像を表示する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
フィールドシーケンシャル駆動では、光源が例えばR色、G色、B色の順に一定時間ずつ各色の光を液晶セル(液晶表示パネル)に照射する。液晶セルは、一定の電圧が印加(ON)された場合、照射された光を透過させ、その電圧の逆電圧(振幅が同じであり且つ極性が逆である電圧)が印加(OFF)された場合、照射された光を遮断する。この駆動では、各画素に表示させる色に応じて、一定時間内で液晶セルに光を透過させる時間が調整され、各画素の階調が調整される。各色を表示させる時間を非常に短くすることにより、各色は人間の目に一色ずつ認識されず、混色として認識される。
【0004】
図5は、フィールドシーケンシャル駆動を示すタイミングチャートである。
図5に示す駆動では、1フレーム期間内に、光源を点灯(ON)して画像を表示する表示駆動を行う表示駆動期間(Active期間)と、光源を消灯(OFF)して画像を表示しない反転駆動を行う反転駆動期間(Passive期間)とが交互に設けられている。具体的には、1フレーム期間内に、R色の点灯期間に対応するActive(R)期間、R色の消灯期間に対応するPassive(r)期間、G色の点灯期間に対応するActive(G)期間、G色の消灯期間に対応するPassive(g)期間、B色の点灯期間に対応するActive(B)期間、B色の消灯期間に対応するPassive(b)期間がこの順番に設けられている。また、各Active期間の先頭と各Passive期間の先頭には、光源を消灯して液晶のリセット駆動を行うブランキング期間が設けられている。
【0005】
例えば、
図5(a)に示す状態では、各Active期間の点灯期間中に液晶セルが常にOFFであり、画像の階調は0(黒表示)となる。
図5(b)に示す状態では、各Active期間の点灯期間中に液晶セルが常にONであり、画像の階調は255(白表示)となる。
【0006】
液晶セルに一定の電圧が印加され続けると、液晶分子の位置が固定され、画像の焼き付きが発生するおそれがある。画像の焼き付きを防ぐために、
図5に示す様に、各Passive期間において、液晶セルは、直前のActive期間中にONにされていた時間と同じ時間だけOFFにされ、且つ、直前のActive期間中にOFFにされていた時間と同じ時間だけONにされる。この駆動は、反転駆動と呼ばれ、この駆動が行われている期間中に光源は消灯し、画像は表示されない。この反転駆動により、各色のActive期間とPassive期間とで液晶に印加される正負の電気的エネルギーが相殺され、液晶の電気的バランスが保たれることから、画像の焼き付きが抑制される。
【0007】
しかし、1フレーム期間内にActive期間とPassive期間とを設ける駆動では、各色のActive期間の連続性が失われることによって、いわゆる色割れ(カラーブレイクアップ)が発生することがある。色割れとは、R色、G色及びB色が重ならずに、所望の色とは異なる色に見えてしまう事を言う。色割れの発生は、1フレーム期間内において表示フィールド周波数を高くし、各色のActive期間とPassive期間の長さを短くするn倍速駆動(n>1)を行うことにより抑制されることが知られており、必要に応じて2倍速駆動や3倍速駆動などが用いられる。
【0008】
各ブランキング期間では、液晶セルの全画素に一定のリセット電圧が印加され、液晶分子の配列状態が一様に整えられる。
図5に示す駆動では、各Active期間中のブランキング期間において液晶に印加されるリセット電圧は、一定の正(+)の電圧であり、各Passive期間中のブランキング期間において液晶に印加されるリセット電圧は、一定の負(-)の電圧である。このようにリセット電圧の極性を互いに異ならせることにより、1フレーム期間内のブランキング期間同士で正負の電気的エネルギーが相殺され、液晶の電気的バランスが保たれることから、画像の焼き付きが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図5に示す駆動では、液晶に正(+)のリセット電圧が印加されるブランキング期間の数(=Active期間の数)と、液晶に負(-)のリセット電圧が印加されるブランキング期間の数(=Passive期間の数)が、互いに等しいため、ブランキング期間同士で正負の電気的エネルギーが相殺され、液晶の電気的バランスが保たれるが、例えば、
図5に示す駆動モードをn倍速駆動モードへ切り替え可能な液晶表示装置においては、n倍速駆動モードへ切り替えた際(例えば、通常の駆動モードから2倍速駆動モードへ切り替えた際、2倍速駆動モードから3倍速駆動モードへ切り替えた際)に、1フレーム期間内の駆動期間(フェーズ)の数が変化し、それに応じて、液晶に正(+)のリセット電圧が印加されるブランキング期間の数と、液晶に負(-)のリセット電圧が印加されるブランキング期間の数が、互いに等しくなくなり、ブランキング期間同士で正負の電気的エネルギーが相殺されず、液晶の電気的バランスが保たれなくなり、画像の焼き付きが発生することがある。この問題は、駆動モードを切り替えた際に限らず、その他の何らかの要因により1フレーム期間内におけるリセット電圧を印加する期間の数が変化した際にも起こり得る。
【0011】
本発明は、画像の焼き付きを抑制することが可能な液晶表示装置を提供する目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
フィールドシーケンシャル駆動により1フレーム期間単位で1つの画像を表示する液晶表示パネルを有する液晶表示装置であって、前記1フレーム期間は、前記液晶表示パネルの液晶にリセット電圧を印加するブランキング期間を含み、前記リセット電圧のパラメーターは、前記1フレーム期間内に含まれる前記ブランキング期間の数に応じて変化する、液晶表示装置である。
【0013】
前記ブランキング期間は、前記リセット電圧として正のリセット電圧を印加する第一ブランキング期間と、前記リセット電圧として負のリセット電圧を印加する第二ブランキング期間とを含み、前記リセット電圧の前記パラメーターは、前記1フレーム期間内に含まれる前記第一ブランキング期間の数と前記第二ブランキング期間の数とに応じて変化する、液晶表示装置であっても良い。
【0014】
前記1フレーム期間内に含まれる前記ブランキング期間の数が第一の数である第一駆動モードと、前記1フレーム期間内に含まれる前記ブランキング期間の数が第二の数である第二駆動モードとを有し、前記リセット電圧の前記パラメーターは、前記第一駆動モードと前記第二駆動モードが互いに切り替わった際に変化する、液晶表示装置であっても良い。
【0015】
前記1フレーム期間は、前記液晶表示パネルが画像を表示する表示駆動を行う表示駆動期間と、前記液晶表示パネルが画像を表示しない反転駆動を行う反転駆動期間とを含み、前記反転駆動期間において前記液晶に印加される反転駆動電圧のパラメーターは、前記1フレーム期間内に含まれる前記ブランキング期間の数に応じて、前記リセット電圧の前記パラメーターと共に変化する、液晶表示装置であっても良い。
【0016】
前記反転駆動電圧の前記パラメーターと、前記リセット電圧の前記パラメーターは、互いに同種のパラメーターであり、前記1フレーム期間内に含まれる前記ブランキング期間の数に応じて互いに同じ値だけ変化する、液晶表示装置であっても良い。
【0017】
前記リセット電圧の前記パラメーターは、前記リセット電圧の電圧値である、液晶表示装置であっても良い。
【0018】
前記反転駆動電圧の前記パラメーターは、前記反転駆動電圧の電圧値である、液晶表示装置であっても良い。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、画像の焼き付きを抑制することが可能な液晶表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る液晶表示装置の部分構成図
【
図2】本発明の実施形態に係る液晶表示装置の縦断面図
【
図3】フィールドシーケンシャル駆動の2~5倍速駆動の例を概念的に示すタイミングチャート
【
図4】本発明の実施形態に係る液晶表示装置のフィールドシーケンシャル駆動を示すタイミングチャート
【
図5】フィールドシーケンシャル駆動を示すタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態に係る液晶表示装置について詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る液晶表示装置の部分構成図である。
図2は、本発明の実施形態に係る液晶表示装置の縦断面図である。
【0023】
液晶表示装置1は、デジタルカメラや携帯電話等の電子機器から入力される画像データに従ってカラー画像を表示する、反射型の液晶表示装置である。
図1又は
図2に示す様に、液晶表示装置1は、例えば、アクティブ駆動される液晶表示パネル2、筐体5、回路基板6、光源7、反射部材9、拡散板10、偏光板11、透明部材12、偏光ビームスプリッター13、接眼レンズ14、液晶表示パネル制御回路16、光源制御回路17、を有する。
【0024】
光源7はR色、G色及びB色のLEDを含み、回路基板6の上面に配置されており、光源7から出射された各色の光8は反射部材9によって偏光ビームスプリッター13へ向かって反射される。反射部材9によって反射された光は、拡散板10によって拡散し、偏光板11によって直線偏光化され、透明部材12を透過し、偏光ビームスプリッター13により反射され、ほぼ均一な平行光となって液晶表示パネル2の画像表示面を照明する。液晶表示パネル2の画像表示面から出射された光8の一部は、偏光ビームスプリッター13と接眼レンズ14を透過し、観察者15に画像として視認される。なお、光源7はLED以外の発光装置で構成されていてもよい。反射板9、拡散板10、透明部材12などは省略されていてもよい。
【0025】
液晶表示パネル制御回路16は、液晶表示装置1が接続される電子機器の本体(図示せず)の全体制御CPU等から入力される画像データに従って、ソースドライバ及びゲートドライバを制御して、液晶表示パネル2の各画素の透過光量の制御を行う。また、液晶表示パネル制御回路16は、光源7との同期を取るためのタイミング信号を光源制御回路17へ送信する。
【0026】
液晶表示パネル2は、シリコン等の第一基板3とガラス等の第二基板4とからなる2枚の基板間に液晶(図示せず)を挟持している。液晶としては、強誘電性液晶等が用いられる。また、第一基板3には、画素電極(反射電極)や能動素子が画素毎に配置され、それぞれのソース線がソースドライバと接続され、それぞれのゲート線がゲートドライバと接続されており、第二基板4には、ITO等の共通電極(透明電極)が一様に配置されている。なお、本発明に係る液晶表示装置1では、強誘電性液晶の代わりに、TN液晶、STN液晶、及び反強誘電性液晶等を用いることも可能であり、その場合でも本実施例と同様の効果を期待することができる。
【0027】
液晶表示パネル制御回路16は、R色、G色、B色の光源7の各点灯期間中に、液晶表示パネル2に所定のON電圧を印加することによりON状態を設定し、また、液晶表示パネル2に所定のOFF電圧を印加することによりOFF状態を設定する。この駆動は、
図5に示す各Active期間中に行われる表示駆動に相当する。
【0028】
液晶表示パネル制御回路16は、R色、G色、B色の光源7の各消灯期間中に、液晶表示パネル2に、上述のR色、G色、B色の光源7の各点灯期間中にON電圧を印加した時間と同じ時間だけOFF電圧を印加することによりOFF状態を設定し、また、上述のR色、G色、B色の光源7の各点灯期間中にOFF電圧を印加した時間と同じ時間だけON電圧を印加することによりON状態を設定する。この駆動は、
図5に示す各Passive期間中に行われる反転駆動に相当する。
【0029】
光源制御回路17は、液晶表示パネル制御回路16からのタイミング信号にしたがって、R色、G色、B色の光源7を順次点灯又は消灯させて、各色光によって液晶表示パネル2を照明する。
【0030】
光源7から出射した光8は、液晶表示パネル2の画素がON状態に設定されている場合には、偏光ビームスプリッター13を透過して視認可能となり、画素は光源の色に対応したカラー表示として観察者15に視認される。しかしながら、液晶表示パネル2の画素がOFF状態に設定されている場合には、光源7から出射した光8は偏光ビームスプリッター13を透過せず、画素は黒い表示として観察者15に視認される。
【0031】
フィールドシーケンシャル駆動を用いた液晶表示装置1では、画像の色が人間の目の認識限界を超えてすばやく切換わり、人間の目には、R色、G色、B色の画像が重畳されて(即ち、R色、G色及びB色の3色の光が混合されて)、多色のカラー表示として視認される。液晶表示装置1では、R色、G色及びB色が順次発光し、R色、G色、B色の3色の光が混合されて認識され、多色のカラー表示として視認される。
【0032】
図3は、フィールドシーケンシャル駆動の2~5倍速駆動の例を概念的に示すタイミングチャートである。
【0033】
液晶表示パネル制御回路16は、
図5に示すフィールドシーケンシャル駆動(通常の駆動モード)と、
図3に示す2~5倍速のフィールドシーケンシャル駆動(2~5倍速駆動モード)を、互いに切り替えて実行することができる。
図3において、「R」と記された期間は、R色光源の点灯期間に対応するActive期間を表し、「G」と記された期間は、G色光源の点灯期間に対応するActive期間を表し、「B」と記された期間は、B色光源の点灯期間に対応するActive期間を表し、「r」と記された期間は、R色光源の消灯期間に対応するPassive期間を表し、「g」と記された期間は、G色光源の消灯期間に対応するPassive期間を表し、「b」と記された期間は、B色光源の消灯期間に対応するPassive期間を表している。「R」、「G」、「B」の各期間では、液晶表示パネル2の表示駆動が行われ、「r」、「g」、「b」の各期間では、液晶表示パネル2の反転駆動が行われる。「R」、「G」、「B」の各期間の先頭には、液晶に正(+)のリセット電圧が印加されるブランキング期間(図示せず)が設けられ、「r」、「g」、「b」の各期間の先頭には、液晶に負(-)のリセット電圧が印加されるブランキング期間(図示せず)が設けられている。
【0034】
図3に示す2倍速駆動では、1/60秒の1フレーム期間内に左から第1~9の9個の期間が設定されている。この9個の期間のうち、Active期間が割り当てられる期間は6個であるのに対し、Passive期間が割り当てられる期間は3個である。従って、1フレーム期間内において、液晶に正(+)のリセット電圧が印加されるブランキング期間は6個であるのに対し、液晶に負(-)のリセット電圧が印加されるブランキング期間は3個であり、前者の方が後者よりも3個多い。
【0035】
図3に示す3倍速駆動では、1/60秒の1フレーム期間内に左から第1~12の12個の期間が設定されている。この12個の期間のうち、Active期間が割り当てられる期間は9個であるのに対し、Passive期間が割り当てられる期間は3個である。従って、1フレーム期間内において、液晶に正(+)のリセット電圧が印加されるブランキング期間は9個であるのに対し、液晶に負(-)のリセット電圧が印加されるブランキング期間は3個であり、前者の方が後者よりも6個多い。
【0036】
図3に示す4倍速駆動では、1/60秒の1フレーム期間内に左から第1~15の15個の期間が設定されている。この15個の期間のうち、Active期間が割り当てられる期間は12個であるのに対し、Passive期間が割り当てられる期間は3個である。従って、1フレーム期間内において、液晶に正(+)のリセット電圧が印加されるブランキング期間は12個であるのに対し、液晶に負(-)のリセット電圧が印加されるブランキング期間は3個であり、前者の方が後者よりも9個多い。
【0037】
図3に示す5倍速駆動では、1/60秒の1フレーム期間内に左から第1~18の18個の期間が設定されている。この18個の期間のうち、Active期間が割り当てられる期間は15個であるのに対し、Passive期間が割り当てられる期間は3個である。従って、1フレーム期間内において、液晶に正(+)のリセット電圧が印加されるブランキング期間は15個であるのに対し、液晶に負(-)のリセット電圧が印加されるブランキング期間は3個であり、前者の方が後者よりも12個多い。
【0038】
このように、
図3に示す2~5倍速駆動では、1フレーム期間内において、液晶に正(+)のリセット電圧が印加されるブランキング期間の数(=Active期間の数)は、液晶に負(-)のリセット電圧が印加されるブランキング期間の数(=Passive期間の数)よりも多く、さらに、倍速数(n=2、3、4、5)が増加するにつれて、両者の差は増大していく。従って、1フレーム期間内において、液晶に印加される正(+)のリセット電圧の総和(時間積分値)は、液晶に印加される負(-)のリセット電圧の総和(時間積分値)よりも大きく、さらに、倍速数(n=2、3、4、5)が増加するにつれて、両者の差は増大していく。このため、倍速数(n=2、3、4、5)が増加するにつれて、1フレーム期間内において、ブランキング期間同士で正負の電気的エネルギーが相殺され難くなり、液晶の電気的バランスが保たれなくなる。この問題に対し、本発明の実施形態では、以下のように対処している。
【0039】
図4は、本発明の実施形態に係る液晶表示装置のフィールドシーケンシャル駆動を示すタイミングチャートである。
図4に示すフィールドシーケンシャル駆動は、n倍速駆動ではない、
図5に示す駆動と同様の通常のフィールドシーケンシャル駆動を示している。
図4に示す駆動では、1フレーム期間内に、R色の点灯期間に対応するActive(R)期間、R色の消灯期間に対応するPassive(r)期間、G色の点灯期間に対応するActive(G)期間、G色の消灯期間に対応するPassive(g)期間、B色の点灯期間に対応するActive(B)期間、B色の消灯期間に対応するPassive(b)期間がこの順番に設けられている。それらの各期間の先頭には、液晶表示パネル2の全画素にリセット電圧が印加されるブランキング期間が設けられている。各Active期間では、液晶表示パネル2に画像を表示する表示駆動が行われ、各Passive期間では、液晶表示パネル2に画像を表示しない反転駆動が行われる。これらの駆動が1フレーム単位で連続的に繰り返されることで連続的なカラー画像が表示される。なお、これらの駆動は、
図5に示す駆動と同じである。
【0040】
Vpixは、第一基板3に設けられた画素電極に印加される電圧を表し、Vitoは、第二基板4に設けられた共通電極に印加される電圧を表している。液晶表示パネル2の液晶に印加される電圧は、例えば、Vpix-Vitoの計算式により求められる。
【0041】
Vpixには、「Hi」として定義される3.5Vの電圧と、「Lo」として定義される0Vの電圧が設定されている。Vitoには、「Jump Lo」として定義される1.7Vの電圧と、「Jump Hi」として定義される1.8Vの電圧と、「Step Lo」として定義される1.7Vの電圧と、「Step Hi」として定義される1.8Vの電圧が設定されている。
【0042】
各Active期間中のブランキング期間では、Vpixが「Hi」(3.5V)、Vitoが「Jump Lo」(1.7V)であるので、液晶に印加される電圧は1.8Vとなり、各Passive期間中のブランキング期間では、Vpixが「Lo」(0V)、Vitoが「Jump Hi」(1.8V)であるので、液晶に印加される電圧は-1.8Vとなる。
【0043】
各Active期間中のブランキング期間を除く期間では、Vpixが「Lo」(0V)、Vitoが「Step Hi」(1.8V)であるので、液晶に印加される電圧は-1.8Vとなり、各Passive期間中のブランキング期間を除く期間では、Vpixが「Hi」(3.5V)、Vitoが「Step Lo」(1.7V)であるので、液晶に印加される電圧は1.8Vとなる。
【0044】
図4に示す通常の駆動モードでは、1フレーム期間内において、液晶に正(+)のリセット電圧が印加されるブランキング期間の数(3個)と、液晶に負(-)のリセット電圧が印加されるブランキング期間の数(3個)は、互いに等しいため、ブランキング期間同士で液晶の電気的バランスが保たれている。しかし、
図4に示す通常の駆動モードが
図3に示す2~5倍速駆動モードの何れか一つに切り替わると、1フレーム期間内において、液晶に正(+)のリセット電圧が印加されるブランキング期間の数が、液晶に負(-)のリセット電圧が印加されるブランキング期間の数よりも多くなり、その分だけ液晶の電気的バランスが悪化する。そこで、本発明の実施形態に係る液晶表示パネル制御回路16は、
図4に示す通常の駆動モードが
図3に示す2~5倍速駆動モードの何れか一つに切り替わった際に、例えば、「Jump Lo」(1.7V)の電圧値のみを増加させる。「Jump Lo」の電圧値をどれだけ増加させるかは適宜選択されるが、
図3に示す2~5倍速駆動では、例えば、
図4に示す駆動に対して20~50%程度増加させる。この数値は、計算や実験により求めることができる。
【0045】
「Jump Lo」の電圧値が増加すると、各Active期間中のブランキング期間において液晶に印加される正(+)のリセット電圧が低下し、その分だけ、1フレーム期間内において液晶に印加される正(+)のリセット電圧の総和(時間積分値)も低下する。これに対し、1フレーム期間内において液晶に印加される負(-)のリセット電圧の総和(時間積分値)は、変化せず一定に保たれているので、結果的に、正(+)のリセット電圧の総和(時間積分値)と、負(-)のリセット電圧の総和(時間積分値)は、互いに等しい状態に近づく。これにより、1フレーム期間内における液晶の電気的バランスが改善され、画像の焼き付きが抑制される。
【0046】
1フレーム期間内における液晶の電気的バランスは、1フレーム期間内に含まれるブランキング期間の数に応じて変化する傾向があり、特に、1フレーム期間内に含まれる正(+)のリセット電圧が印加されるブランキング期間の数と負(-)のリセット電圧が印加されるブランキング期間の数とに応じて(両者の数の差に応じて)変化する傾向があるため、これらの数に応じて「Jump Lo」の電圧値、言い換えると、リセット電圧の電圧値を適宜変化させれば、1フレーム期間内における液晶の電気的バランスを効率良く改善することができる。
【0047】
上述のように「Jump Lo」の電圧値を増加させれば液晶の電気的バランスを改善することができるが、「Jump Lo」の電圧値を増加させるとリセット電圧が低下するため、リセット電圧によって液晶分子の配列を十分に整えることができなくなる恐れがある。この問題を解決するための手段としては、例えば、「Jump Lo」の電圧値と共に「Step Lo」の電圧値も増加させることが考えられる。「Step Lo」の電圧値が増加すると、各Passive期間中のブランキング期間を除く期間において液晶に印加される正(+)の電圧(反転駆動電圧)が低下し、「Jump Lo」の電圧値を増加させたことと同様の効果が得られる。従って、液晶の電気的バランスを改善するために「Jump Lo」の電圧値のみを大幅に増加させることは不要となり、結果的に、リセット電圧の大幅な低下を抑制することにつながる。なお、「Step Lo」の電圧値を大幅に増加させると、各Passive期間における反転駆動電圧が大幅に低下し、液晶の電気的バランスが悪化する恐れがあるため、「Step Lo」の電圧値と「Jump Lo」の電圧値は、互いに同じ値だけ増加させて両者のバランスを保ちながら共に変化させるのが好ましい。
【0048】
上述の実施形態では、液晶の電気的バランスを調整するために「Jump Lo」と「Step Lo」の電圧値を変化させたが、それらの時間幅を変化させても良い。また、「Jump Hi」の電圧値や時間幅を「Jump Lo」の電圧値や時間幅と同様に変化させても良い。また、電圧値や時間幅を変化させるのではなく、電圧に関するその他のパラメーターを変化させることにより液晶の電気的バランスを調整しても良い。また、Active期間中のリセット期間において液晶に印加されるリセット電圧の極性と、Passive期間中のリセット期間において液晶に印加されるリセット電圧の極性は、上述の実施形態とはそれぞれ逆(前者が負、且つ、後者が正)であっても良い。また、VpixとVitoの電圧値は、上述の値(0V、3.5V、1.7V、1.8V)に限定されず、その他の値が適宜選択されても良い。これらの場合にも上述の実施形態と同様の効果を期待することができる。
【0049】
フィールドシーケンシャル駆動における各期間の順番、数、幅などは、
図3、4に示すものに限定されず、適宜変更されても良い。
【0050】
ブランキング期間は、Active期間の先頭ではなく、Active期間の後尾などのその他の位置に設けられていても良い。ブランキング期間の長さは、例えば50μsec程度であるが、これには限定されない。
【0051】
本発明は、上述の実施形態に限定されず、その他種々の実施形態を取り得る。
【符号の説明】
【0052】
1 液晶表示装置
2 液晶表示パネル
3 第一基板
4 第二基板
5 筐体
6 回路基板
7 光源
8 光
9 反射部材
10 拡散板
11 偏光板
12 透明部材
13 偏光ビームスプリッター
14 接眼レンズ
15 観察者
16 液晶表示パネル制御回路
17 LED制御回路