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特許7421995飲料用缶内のヘッドスペースの酸素含有量を測定する方法
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  • 特許-飲料用缶内のヘッドスペースの酸素含有量を測定する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】飲料用缶内のヘッドスペースの酸素含有量を測定する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/00 20060101AFI20240118BHJP
   G01N 1/22 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
G01N1/00 101R
G01N1/22 A
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020070937
(22)【出願日】2020-04-10
(65)【公開番号】P2020173255
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-10-24
(31)【優先権主張番号】A50337/2019
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】513304183
【氏名又は名称】アントン パール ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Anton Paar GmbH
【住所又は居所原語表記】Anton-Paar-Strasse 20, A-8054 Graz-Strassgang, Austria
(74)【代理人】
【識別番号】110000095
【氏名又は名称】弁理士法人T.S.パートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 利春
(74)【代理人】
【識別番号】100181331
【弁理士】
【氏名又は名称】金 鎭文
(74)【代理人】
【識別番号】100183597
【弁理士】
【氏名又は名称】比企野 健
(74)【代理人】
【識別番号】100161997
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 大一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100090918
【弁理士】
【氏名又は名称】泉名 謙治
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ウムファー
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-176636(JP,A)
【文献】特表2011-501148(JP,A)
【文献】国際公開第2006/126683(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3039032(JP,U)
【文献】特開平10-007115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00-1/44
G01N 33/00-33/46
B65B 57/00-57/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に湾曲した底部(20)を有する飲料用缶(6)内のヘッドスペースガスの酸素含有量を測定する方法であって、
前記飲料用缶(6)を、前記底部(20)が重力に反して配置されるように逆さまにして設置して、前記ヘッドスペースガスを前記底部の領域に集め、
穿刺ヘッド(1)に設けられ中空に形成されたピアサー(2)によって、前記飲料用缶(6)の前記底部(20)、具体的には前記底部(20)の中央に採取開口部を形成し、前記採取開口部に採取チューブ(3)を挿入し、前記採取開口部を、前記ピアサー(2)又は前記穿刺ヘッド(1)に設けられたシール要素によって気密に覆う方法において、
ヘッドスペースガスが充填されたヘッドスペース(4)と前記採取開口部との間に直接的な接続が形成されるように、前記飲料用缶(6)内の液面を、前記採取チューブ(3)を介して低下させ、
前記液面が低下した後、前記飲料用缶(6)の前記ヘッドスペース(4)内に存在するヘッドスペースガスを、前記採取チューブ(3)及び/又は中空に形成された前記ピアサー(2)を介して、又は、前記穿刺ヘッド(1)を介して、複数のセンサを含むセンサユニット(8)に供給することによって、前記ヘッドスペースガスの酸素含有量、及び/又は、酸素分圧、及び/又は、ヘッドスペース容積を、前記センサユニット(8)によって検出することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記飲料用缶(6)内の液面を、前記飲料用缶(6)内に存在するサンプル液体の所定量をポンプ(9)で採取することにより、前記ピアサー(2)又は前記採取チューブ(3)を介して前記飲料用缶(6)に導入されるガス、具体的には窒素を用いて圧力を上昇させることにより、又は、飲料用缶に存在する圧力により、低下させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ヘッドスペースガスの酸素含有量を測定した後、前記採取チューブ(3)を、前記飲料用缶(6)内に存在する液体の中に沈めて、その後、前記飲料用缶(6)から前記液体を採取し、前記センサユニット(8)に案内することによって、前記液体中に存在する酸素含有量を検出することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
低下した前記液面によって生じたヘッドスペース(4)の中に、具体的には中空に形成された前記ピアサー(2)を介して、前記ヘッドスペースガスの酸素濃度又は酸素分圧を測定する酸素センサ(12)を挿入することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記液面を低下させた後、前記飲料用缶(6)の前記ヘッドスペース(4)内に存在するヘッドスペースガスを、ポンプ(9)により、前記採取チューブ(3)及び/又は中空に形成された前記ピアサー(2)を介して、複数のセンサを備える前記センサユニット(8)に送り、その後再び、前記飲料用缶(6)の前記ヘッドスペース(4)に戻すことにより、前記ヘッドスペースガスの酸素含有量、及び/又は、酸素分圧、及び/又は、ヘッドスペース容積を、前記センサユニット(8)によって算出することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
特に発泡性の液体を含む前記飲料用缶(6)の測定時に酸素含有量を測定するために、前記飲料用缶(6)の前記ヘッドスペース(4)内の前記液面が低下した後に、前記ヘッドスペースガス又は前記ヘッドスペースガスの一部が結合された泡を生成し、生成された前記泡から、センサユニット(8)において、酸素含有量、及び/又は、酸素分圧、及び/又は、ヘッドスペース容積を算出し、具体的にはその後、前記泡を再び前記飲料用缶(6)の前記ヘッドスペース(4)に戻すことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記センサユニット(8)は、前記ヘッドスペースガスの酸素含有量及び/又は酸素分圧を測定するための酸素センサ(12)を備え、ここで、具体的には、酸素含有量及び/又はヘッドスペース容積は、圧力センサ(10)による追加的な圧力測定によって算出され、及び/又は、特に前記ヘッドスペースガスの容積が変化した場合には、温度センサ(11)による温度測定によって算出することを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ヘッドスペースガスを、前記ヘッドスペース(4)から、前記センサユニット(8)、具体的には前記温度センサ(11)に送り、その後再び前記ヘッドスペースに戻すことを、前記センサユニット(8)、具体的には、前記圧力センサ(10)及び/又は前記温度センサ(11)及び/又は前記酸素センサ(12)、及び/又は、前記ヘッドスペースガスが安定した温度に到達するまで、及び/又は、センサ独自の等化工程が終了するまで何回も行うことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ヘッドスペースガスを、前記ヘッドスペース(4)から、前記センサユニット(8)、具体的には前記温度センサ(11)に送り、その後再び前記ヘッドスペースに戻すことを、前記センサユニット(8)、具体的には、前記圧力センサ(10)及び/又は前記温度センサ(11)及び/又は前記酸素センサ(12)、及び/又は、前記ヘッドスペースガスが同じ温度に到達するまで、及び/又は、センサ独自の等化工程が終了するまで何回も行うことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記センサユニット(8)は、複数のさらなるセンサ、具体的にはCOセンサ、アルコールセンサ、及び/又は、糖センサを備え、これらのさらなるセンサにより、前記飲料用缶内に存在する液体中のCO含有量、及び/又は、アルコール含有量、及び/又は、糖含有量が測定されることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ヘッドスペースガスを、前記ポンプ(9)により、前記採取チューブ(3)及び/又は前記中空に形成されたピアサー(2)を介して前記センサユニット(8)に送り、
測定の前に、前記ピアサー(2)、前記穿刺ヘッド(1)、前記センサユニット(8)、前記ポンプ(9)、環状導管(22)、及び/又は、前記採取チューブ(3)を、洗浄剤、具体的には窒素で洗浄することによって、酸素及び/又はサンプル残留物を除去することを特徴とする、請求項2又は5に記載の方法。
【請求項12】
前記ヘッドスペース容積の算出は、穿刺された前記飲料用缶(6)内の圧力を、まず、前記採取チューブ(3)を挿入する際に測定し、そして、取り出す際に再び測定し、気体の法則及び前記圧力の変化に基づいて、前記ヘッドスペース容積を計算することによって行うことを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記飲料用缶(6)を穿刺する前に、前記ピアサー(3)及び/又は前記穿刺ヘッド(1)及び/又は前記環状導管(22)内の圧力を、具体的には窒素ガスを導入することによって、前記飲料用缶(6)の内圧と等しくし、サンプル液体が発泡しないようにすることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
具体的には請求項1乃至10のいずれか1項に記載の方法によって、液体が充填された飲料用缶(6)内のヘッドスペースガスの酸素含有量を測定するための装置であって、具体的には中空に形成されたピアサー(2)と採取チューブ(3)とが設けられた穿刺ヘッド(1)を備える装置において、
前記装置は、前記採取チューブ(3)に接続された導管、具体的には環状導管(22)を備え、前記導管には、前記飲料用缶(6)のヘッドスペースガスを中空に形成された前記ピアサー(2)を介して採取可能なセンサユニット(8)が配置されており、前記装置は、前記ヘッドスペースガスが充填されたヘッドスペース(4)と採取開口部との間に直接的な接続を形成可能なように、前記飲料用缶(6)内の液面を、前記採取チューブ(3)を介して低下させるように構成されており、前記装置は、制御装置をさらに含み、前記制御装置は、ヘッドスペースガスが充填された前記ヘッドスペース(4)と前記採取開口部との間に直接的な接続が形成可能になるまで、前記液面を、前記ピアサー(2)を介して所望通りに低下可能であるように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項15】
前記装置は、前記飲料用缶(6)内の圧力を上昇させる手段、具体的にはポンプ(9)及び/又はガス供給装置を備え、前記装置は、さらに、前記液面を規定通りに低下させることが可能であるように構成された制御装置を含むことを特徴とする、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記装置は、ポンプ(9)及び環状導管(22)を備え、前記環状導管(22)内には前記センサユニット(8)が配置されており、前記センサユニット(8)によって、前記飲料用缶(6)のヘッドスペースガスを中空に形成された前記ピアサー(2)を介して採取し、前記環状導管(22)を介して、具体的には前記採取チューブ(3)を介して、前記飲料用缶(6)の前記ヘッドスペース(4)内に戻すことが可能であることを特徴とする、請求項14又は15に記載の装置。
【請求項17】
前記センサユニット(8)は、酸素センサ(12)、及び/又は、圧力センサ(10)、及び/又は、温度センサ(11)、及び/又は、COセンサ、及び/又は、アルコールセンサ、及び/又は、糖センサを備え、前記酸素センサ(12)は、具体的には、蛍光消光原理に基づく光化学センサとして、又は、電気化学酸素センサとして、構成されていることを特徴とする、請求項14乃至16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
前記ポンプ(9)は、循環ポンプとして構成されていることを特徴とする、請求項16に記載の装置。
【請求項19】
前記循環ポンプは、膜ポンプ、蠕動ポンプ、ピストンポンプ、歯車ポンプ、ねじポンプ、外輪ポンプ、又は噴射ポンプであることを特徴とする、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記装置は、前記環状導管(22)に一体化された複数の弁(13,14,15)を備え、前記弁(13,14,15)は、前記弁(13,14,15)を介して前記装置、具体的には前記環状導管の自動浄化が実施可能なように、前記環状導管(22)内に配置されていることを特徴とする、請求項14乃至19のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載した概念に係る方法、及び、請求項13に記載した概念に係る方法を実行するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料製造業者にとって、飲料用缶や瓶等といった容器内の酸素含有量を知ることは、大きな関心事である。なぜなら、酸素含有量は、飲料の賞味期限や味に影響し、金属容器の場合には、その腐食にも影響するからである。場合によっては生じる酸素侵入の原因を推理可能にするには、液体中の酸素含有量と、液体の上の気体空間、いわゆる「ヘッドスペース」内の酸素含有量とを、別々に測定することが重要である。
【0003】
こうすることによって、酸素が液体と一緒に容器の中に入ったか、又は、場合によっては位置合わせが不良であった充填工程によって入ったかを判定することが可能になる。この気体空間における測定は、特に重要である。なぜなら、液体中の酸素の溶解度は低いため、容器の大部分の酸素はヘッドスペース内又はヘッドスペースガス中に存在するからである。通常、液体サンプルは、容器からホース導管を介して酸素センサを通過させることによって採取可能であるため、液体サンプルの測定は平凡な業務である。一般的には、液体サンプルは十分あり、酸素センサが等化時間後に安定値を示すまで酸素センサに供給できる。難しいのは、ヘッドスペースガスを測定する際の状況である。わずか数ミリメートルのヘッドスペースガスしか存在しない場合が多いため、これを排出して酸素センサに流すことは難しい。
【0004】
特に難しいのは、具体的には飲料用缶のヘッドスペースガスを測定する際の状況である。第1の課題は、ヘッドスペースガスへのアクセスである。缶の蓋は、消費者が缶を開けることが可能なように、予め刻印された構造を有している。多くの場合、ロゴや文字も刻印されているので、缶の蓋に測定装置を密着させて、アクセス用孔を開けることは難しい。仮に、適した面があったとしても、この面を確実に密閉するためには、缶を極めて正確に配置する必要がある。円筒状の缶の外面は、これを密閉したり穿刺したりすることができるほど、機械的に頑丈ではない。したがって、底部だけが、密閉したり穿刺したりするために確実に利用可能な位置として残っている。CO含有の飲料用缶の底部は、通常、大きく内側に湾曲しており、このため、缶を逆さまに立てた場合、底部の最も深い部位は液体内に位置し、したがって、ヘッドスペースへのアクセスを形成することはできないことになる。同時に、底部の最も深い部位は、最も確実に穿刺したり密閉したりすることが可能な部位である。
【0005】
従来技術から公知の解決方法では、缶の上部エッジ領域を穿刺するために缶を傾ける、又は、蓋を穿刺するが、これは、缶を正確に位置合わせすることが必要になり、全ての缶でこれを行うことはできない。ここに記載の公知の方法は、高い装置コストを必要とし、操作員がより大きな注意をはらうこと、又は、より高度の訓練を行うことを必要とする。例えば、日本国特開平4-315943号及び日本国特許第3405637号からは、飲料用缶のエッジに穴を開けて、ヘッドスペースガスへのアクセスを得るための装置及び方法が公知である。
【0006】
この従来技術から公知の方法の欠点は、缶を試料採取器に設置して穿刺する際に、高い精度が必要とされる点である。また、従来技術から公知の方法において、穿刺位置を密閉することは手間がかかり、多くの場合、空気や酸素が入ることによる測定エラーを十分に確実に回避することができない点である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の課題は、飲料用缶の底部を穿刺して、その後ヘッドスペース測定を行うことを可能にする方法であって、試料採取器に缶を設置及び穿刺する際にそれほど高い精度を必要としない方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1に記載した特徴により解決される。ここで、ヘッドスペースガスが充填されたヘッドスペースと採取開口部との間に直接的な接続が形成されるように、飲料用缶内の液面を、採取チューブを介して低下させ、液面が低下した後、飲料用缶のヘッドスペース内に存在するヘッドスペースガスを、採取チューブ及び/又は中空に形成されたピアサー、又は、穿刺ヘッドを介して、複数のセンサを含むセンサユニットに供給し、こうすることによって、ヘッドスペースガスの酸素含有量、及び/又は、酸素分圧、及び/又は、ヘッドスペース容積を、センサユニットによって検出するように構成されている。
【0009】
飲料用缶の底部を穿刺することによって、採取開口部を、正確な位置決めとは無関係に穿刺し、これによって、容易に密閉することが可能である。また、液面を低下させることによって、ヘッドスペースにアクセス可能にし、又は、ヘッドスペースを拡大させて、ヘッドスペースガスの容易な測定が実現される。
【0010】
本発明に係る方法の特に有効な実施形態は、従属請求項に記載した特徴により、より詳細に規定される。
【0011】
好ましくは、飲料用缶内の液面を、飲料用缶内に存在するサンプル液体の所定量をポンプで採取することにより、ピアサー又は採取チューブを介して飲料用缶の中に導入されるガス、具体的には窒素を用いて圧力を上昇させることにより、又は、飲料用缶内に存在する圧力により、低下させるように構成されていてもよい。
【0012】
サンプル液体の酸素含有量は、ヘッドスペースガスの酸素含有量を測定した後、採取チューブを飲料用缶に存在する液体の中に沈めて、その後、液体を飲料用缶から採取し、センサユニットに案内して、液体中に存在する酸素含有量を検出することによって、容易に検出可能である。
【0013】
酸素含有量、及び/又は、酸素分圧、及び/又は、ヘッドスペース容積を容易に測定するために、低下した液面によって生じたヘッドスペースの中に、具体的には中空に形成されたピアサーを介して、ヘッドスペースガスの酸素濃度又は酸素分圧を測定する酸素センサを挿入してもよい。
【0014】
好ましい実施形態の一つでは、液面を低下させた後、飲料用缶のヘッドスペース内に存在するヘッドスペースガスを、ポンプにより、採取チューブ及び/又は中空に形成されたピアサーを介して、複数のセンサを備えるセンサユニットに送り、その後再び、飲料用缶のヘッドスペースに戻すことにより、ヘッドスペースガスの酸素含有量、及び/又は、酸素分圧、及び/又は、ヘッドスペース容積を、センサユニットによって算出するように構成されていてもよい。この実施形態により、存在するヘッドスペースガスとは無関係に、ヘッドスペースガス中の酸素含有量を容易に測定できることになり、ヘッドスペース内の自由容積とは無関係に、複数のセンサを用いることが可能になる。また、ヘッドスペースガスが循環し、又は、再びヘッドスペースに戻されるので、常に十分なヘッドスペースガスが利用可能である。これによって、酸素含有量、及び/又は、酸素分圧、及び、ヘッドスペース容積の正確な測定が実現される。
【0015】
本発明によれば、特に発泡性の液体を含む飲料用缶の測定時に酸素含有量を測定するために、飲料用缶のヘッドスペース内の液面が低下した後に、ヘッドスペースガス又はヘッドスペースガスの一部が結合された泡を生成し、生成された泡から、センサユニットにおいて、酸素含有量、及び/又は、酸素分圧、及び/又は、ヘッドスペース容積を算出し、具体的にはその後、泡を再び飲料用缶のヘッドスペースに戻すように構成されていてもよい。こうすることによって、例えば、わずかな量のヘッドスペースガスしか存在しない場合にも、泡と結合されたヘッドスペースガス又はその中に含まれる酸素を、容易に検出することができる。なぜなら、液状物質における酸素の溶解度は低いため、泡の酸素含有量は、ヘッドスペース内の酸素含有量とほぼ対応するからである。
【0016】
酸素含有量、及び/又は、酸素分圧、及び/又は、ヘッドスペース容積を容易に測定するためには、センサユニットが、ヘッドスペースガスの酸素含有量及び/又は酸素分圧を測定するための酸素センサを備えているように構成されていてもよい。ここで、具体的には、酸素含有量及び/又はヘッドスペース容積は、圧力センサによる追加的な圧力測定によって(及び/又は、好ましくはヘッドスペースガスの容積が変化した場合に温度センサによる温度測定によって)、算出する。
【0017】
複数のセンサが温度感受性を有しているため、又は、極めて高い精度を実現するためには、測定される手段に対する温度等化が必要であるため、ヘッドスペースガスを、ヘッドスペースから、センサユニット、具体的には温度センサに送り、その後再びヘッドスペースに戻すことを、センサユニット、具体的には圧力センサ及び/又は温度センサ及び/又は酸素センサ、及び/又は、ヘッドスペースガスが安定した、好ましくは同じ温度に到達するまで、及び/又は、センサ独自の等化工程が終了するまで何回も行うように構成されていてもよい。ヘッドスペースガスがセンサユニットを通って何回も周回することにより、センサユニットの個々のセンサがヘッドスペースガスの温度を受容することが可能であり、又は、この温度に等化させることが可能であり、そして、ヘッドスペースガスの測定を、等化された温度領域において行うことが可能になる。また、このようにして、センサ又はセンサユニットの温度をヘッドスペースガスの温度に等化させることが加速される。さらに、酸素センサにおける、例えば拡散工程などの他の等化工程は、完全な等化を行うための十分な時間を有する。
【0018】
好ましくは、センサユニットが複数のさらなるセンサ、具体的にはCOセンサ、アルコールセンサ、及び/又は、糖センサを備えており、これらのさらなるセンサにより、飲料用缶内に存在する液体中のCO含有量、及び/又は、アルコール含有量、及び/又は、糖含有量が測定されるように構成されていてもよい。このようにセンサユニット内又は測定アセンブリ内に様々なセンサを配置することにより、サンプル液体又はヘッドスペースガスの様々なパラメータを算出することが可能であるので、サンプル液体及び/又はヘッドスペースガスの完全な分析を行うことが可能である。あるいは、追加的なセンサを、センサユニット以外の、導管又は環状導管内に配置してもよい。
【0019】
場合によっては存在する、サンプル体からの酸素又は異物を除去可能にするために、又は、測定結果のエラーをより良好に回避可能にするために、測定の前に、ピアサー、穿刺ヘッド、センサユニット、ポンプ、環状導管、及び/又は、採取チューブを、洗浄剤、具体的には窒素で洗浄することによって、酸素及び/又はサンプル残留物を除去するように構成されていてもよい。
【0020】
好ましくは、ヘッドスペース容積の算出は、穿刺された飲料用缶内の圧力を、まず、採取チューブを挿入する際に測定し、そして、取り出す際に再び測定し、気体の法則及び圧力の変化に基づいて、ヘッドスペース容積を計算することによって行うように構成されていてもよい。
【0021】
好ましくは、飲料用缶を穿刺する前に、ピアサー、及び/又は、穿刺ヘッド、及び/又は、環状導管内の圧力を、具体的には窒素ガスを導入することによって、飲料用缶の内圧と等しくし、サンプル液体が発泡しないようにしてもよい。こうすることによって、泡の形成を容易に妨げることが可能であり、望ましくないヘッドスペースガスの流出を回避することが可能である。
【0022】
本発明のさらなる課題は、ヘッドスペースガスの酸素含有量を容易に測定可能な装置を実現することにある。
【0023】
この課題は、請求項13に記載した特徴により解決される。ここで、本発明によれば、本装置は、採取チューブに接続された導管、具体的には環状導管を備え、導管には、飲料用缶のヘッドスペースガスを中空に形成されたピアサーを介して採取可能なセンサユニットが配置されており、本装置は、ヘッドスペースガスが充填されたヘッドスペースと採取開口部との間に直接的な接続を形成可能なように、飲料用缶内の液面を、採取チューブを介して低下させるように構成されており、本装置は、制御装置をさらに含み、この制御装置は、ヘッドスペースガスが充填されたヘッドスペースと採取開口部との間に直接的な接続が形成可能になるまで、液面を、ピアサーを介して規定通りに低下可能であるように構成されている。本発明に係る装置により、酸素含有量、又は、酸素分圧、及び/又は、ヘッドスペース容積を、容易に測定可能であり、高い測定精度を実現可能である。
【0024】
液面を容易に低下させることを可能にするために、本装置は、飲料用缶内の圧力を上昇させる手段、具体的にはポンプ及び/又は及び/又はガス供給装置を備えていてもよく、本装置は、液面を規定通りに低下させることが可能であるように構成された制御装置を含むように構成されていてもよい。
【0025】
好ましくは、本装置は、ポンプ及び環状導管を備えるように構成されていてもよく、環状導管内にはセンサユニットが配置されており、このセンサユニットによって、飲料用缶のヘッドスペースガスを中空に形成されたピアサーを介して採取し、環状導管を介して、具体的には採取チューブを介して、飲料用缶のヘッドスペース内に戻すことが可能である。こうすることによって、ヘッドスペースガスがわずかな量の場合であっても、センサの等化を容易に実現可能であり、ヘッドスペースガスの周回によって測定精度を上昇させることが可能である。
【0026】
好ましくは、センサユニットは、酸素センサ、及び/又は、圧力センサ、及び/又は、温度センサ、及び/又は、COセンサ、及び/又は、アルコールセンサ、及び/又は、糖センサを備えていてもよく、酸素センサは、具体的には、蛍光消光原理に基づく光化学センサとして、又は、電気化学酸素センサとして構成されていてもよい。
【0027】
ポンプを、循環ポンプとして、好ましくは、膜ポンプ、蠕動ポンプ、ピストンポンプ、歯車ポンプ、ねじポンプ、外輪ポンプ、又は、噴射ポンプとして構成することによって、ヘッドスペースガスの効率的な循環が容易に実現可能である。
【0028】
例えば窒素などの洗浄ガスを容易に装置内に導入することを可能にするために、本装置は、環状導管に一体化された複数の弁を備えていてもよく、これらの弁は、これらの弁を介して本装置、具体的には環状導管の自動浄化が実施可能なように、環状導管内に配置されていてもよい。
【0029】
本発明のさらなる特有の効果及び態様は、明細書及び添付の図面に明示される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
以下に、本発明を、特に好ましい実施形態に基づき図面に概略的に示し、当該図面を参照しながら例示的に説明する。しかしながら、本実施形態は、限定的なものと解釈されるべきではない。
図1図1は、本発明に係る装置を示す概略的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1には、本発明に係る、飲料用缶のヘッドスペースガスの酸素含有量を測定するための装置が、概略図に示されている。この装置は、中空に形成されたピアサー2が配置された穿刺ヘッド1を含む。ピアサー2は、この実施形態では、針に似たものとして構成されており、穿刺ヘッド1の内部において、図示した矢印に沿って運動可能である。この装置は、飲料用缶6が設置されるサンプル保持部21をさらに備えている。ここでは、飲料用缶6は、逆さまにサンプル保持部21の上に置かれており、飲料用缶6の底部20が、ピアサー2の方向を向いている。電源装置7によって、飲料用缶6は、穿刺ヘッド1の方向に運動可能であり、これによって、穿刺ヘッド1は、閉鎖された飲料用缶6の底部20の上に載せられる、又は、固定されることが可能である。この装置は、採取チューブ3をさらに備えており、採取チューブ3は、本実施形態では、ピアサー2と同心に配置されている。
【0032】
必要ならば、芯揃え装置又は停止具が設けられていてもよく、これによって、飲料用缶をピアサー2に対して同心に配置させて、飲料用缶6の底部の中心をピアサー2の中心に揃えることができる。
【0033】
ピアサー2は、図1の好ましい実施形態では、中空に構成されており、採取チューブ3がピアサー2の中に入り、及び、これを通ってヘッドスペース4の中に到達することが可能である。ここでは、採取チューブ3は、電源装置5によって動かされる。必要ならば、サンプル保持部21、ピアサー2、穿刺ヘッド1、及び/又は、採取チューブ3が手動で、又は、制御装置を有する電源装置によって制御されて運動可能なように構成されていてもよい。採取チューブ3の、穿刺ヘッド1の反対側の端部において、環状導管22が始まり、そして、再び穿刺ヘッド1に戻る、又は、再びこれに合流する。環状導管22には、センサユニット8及びポンプ9が一体化されている。ポンプ9によって、飲料用缶6に入ったサンプル液体、又は、飲料用缶6のヘッドスペース4に入ったヘッドスペースガスを、採取チューブ3を介して採取し、センサユニット8に供給することが可能である。センサユニット8を介して、サンプル液体又はヘッドスペースガスは、再びポンプ9によって穿刺ヘッドに戻され、そして、再び飲料用缶6又は飲料用缶6のヘッドスペース4の中に戻される。必要ならば、ヘッドスペースガス及び/又はサンプル液体が、穿刺ヘッドを介して採取され、採取チューブ3を通って再びヘッドスペース4、又は、飲料用缶6のサンプル液体に戻されるように構成されていてもよい。
【0034】
必要ならば、採取チューブ3、ピアサー2、又は、穿刺ヘッド1に、再びヘッドスペースに合流する導管ではなく、装置の周りや、又は、採取されたサンプル液体及び/又はヘッドスペースガスを放出する収集容器に合流する導管が設けられていてもよい。
【0035】
センサユニット8は、図1の実施形態では、温度センサ11及び酸素センサ12を備えている。本装置は、環状導管22や飲料用缶6のヘッドスペース4に存在する圧力を検出可能な圧力センサ10をさらに備えている。
【0036】
必要ならば、本装置又はセンサユニット8は、複数の酸素センサ12を含んでいてもよい。これらの酸素センサ12は、センサユニットの外部に配置されていてもよい。
【0037】
以下に、図1の実施形態を参照しながら、本発明に係る方法の一例を説明する。
【0038】
本発明に係る方法では、第1のステップにおいて、飲料用缶6を、サンプル保持部21の上に設置し、その後、穿刺ヘッド1が飲料用缶6の底部20の中央に配置されるように、サンプル保持部21又は穿刺ヘッド1を動かす。その後、ピアサー2を、飲料用缶6の底部の方向に動かし、これを穿刺して、飲料用缶6の底部20に採取開口部を生成する。ピアサー2及び/又は穿刺ヘッド1に取り付けられたシール要素によって、採取開口部を気密に覆い、周囲から、別の気体が装置又は環状導管22の中に侵入しないように、又は、飲料用缶6のヘッドスペース4の中に侵入できないように、及び、ヘッドスペースガスが飲料用缶6から流出できないようにする。ここで、穿刺ヘッド1又はピアサー2のシール要素は、飲料用缶6及び環状導管22を装置の周囲に対して気密に密閉する。その後、採取チューブ3を缶6の中に沈める。飲料用缶6では、底部20が湾曲しているため、通常、ヘッドスペースと採取開口部との間は接続されておらず、採取チューブ3は、まず液体の中に入れられ、採取開口部と飲料用缶のヘッドスペース4との間に直接的な接続が形成されるまで、液体の一部を飲料用缶6から採取する。その結果、ヘッドスペースガスは、採取チューブ及び環状導管22を介して、センサユニット8又は酸素センサ12、圧力センサ10、及び、温度センサ11に供給されることが可能である。ここで、サンプル液体の採取分は、弁13及び開口部17を介して周囲又は収集容器の中に入れられる。こうして、ヘッドスペース4に自由にアクセス可能になり、酸素測定を実施可能である。このヘッドスペース4の人工的な拡大によって、ヘッドスペース4内の酸素質量は不変に維持され、このため、液面が低下することによって、測定結果が異常となることはない。液面が低下した後、増大したヘッドスペース容積が算出され、これを、測定された酸素分圧からヘッドスペースガスの酸素質量又は酸素含有量を算出するために使用可能である。採取される液体の量は、飲料用缶6や公称充填高さに応じて異なり、例えば、ここに記載の方法により、所定の秒数の間サンプルを採取し、その後、水位を検査する実験により検出可能である。
【0039】
他の実施形態の一つでは、液体採取の前にヘッドスペース容積を測定し、この容積と飲料用缶6の直径とから、ヘッドスペース4と採取開口部との間にアクセスするためには、どれくらいの量の液体を採取する必要があるかを算出する。この採取は、公知の流量において、採取チューブ3又は導管若しくは環状導管22を通して時間制御されて、又は、任意の形の流量測定によって行われ得る。
【0040】
必要ならば、装置的に単純な形において、穿刺された飲料用缶内の圧力を、採取チューブ3の挿入時に一回、及び、取り出し時に一回測定することによって、ヘッドスペース容積を算出してもよい。採取チューブ3の容積が追加されることにより、ヘッドスペースガスの圧力又は飲料用缶内の圧力が変化する。気体の法則によって、ピアサー2又は採取チューブ3の容積が分かっている場合、ヘッドスペース容積の算出が可能である。
【0041】
液面が低下した後の残留水位が、飲料用缶6の底部20の最も深い点よりも約5mmだけ深いことが、理想的である。
【0042】
液面が低下した後に、電源装置5によって、採取チューブ3が、拡大されたヘッドスペース4の中に突出し、液体の中に浸されないように配置される。ポンプ9によって、ヘッドスペースガスがヘッドスペース4から吸引され、環状導管22を介してセンサユニット8に供給される。センサユニット8では、温度センサ11及び酸素センサ12によって、ヘッドスペースガスの酸素含有量及び温度が測定される。さらに、圧力センサ10によって、ヘッドスペース4に存在する圧力が検出され、その後、例えばガス方程式により、ヘッドスペースガスの容積が判定される。その後、環状導管22を介して、ヘッドスペースガスは、ポンプ9によってセンサユニット8から、再び穿刺ヘッド1を介して飲料用缶6のヘッドスペース4に戻される。ヘッドスペースガスを、環状導管22を介して周回させることによって、装置内のヘッドスペースガスの回路が生成されるので、ヘッドスペースガスは、一回又は複数回、この装置のセンサユニット8又は複数のセンサに送られることが可能である。ヘッドスペースガスをセンサユニット8又は複数のセンサに一回又は複数回送ることによって、センサの温度等化が改善され、及び/又は、測定結果がセンサ、具体的には酸素センサ12の一般的には漸近的な等化動作への依存度が低減され、その結果、酸素含有量、酸素分圧、及び/又は、ヘッドスペース容積の測定が促進され、この測定値を正確に判定可能である。従来技術である好適な酸素センサは、例えば、膜を介して、酸素の拡散後の酸素含有量を測定する。これらのセンサは、拡散時の等化時間が数秒間必要になり、各センサの前には、測定エラーを生じやすい保護酸素層が形成される場合もあり得る。ヘッドスペースガスをセンサユニット8又は複数のセンサに一回又は複数回送ることによって、拡散が改善され、また保護酸素層の形成が回避される。
【0043】
ヘッドスペースガスの酸素含有量、又はヘッドスペース容積、又は、酸素分圧を測定した後、採取チューブ3を、ヘッドスペース4から、さらに飲料用缶のサンプル液体の中に沈めることが可能である。その後、サンプル液体を、センサユニット8に送り、サンプル液体の酸素含有量、温度、又は、圧力を測定する。
【0044】
あるいは、本装置は、環状導管22の代わりに、収集容器又は類似のものに合流する導管を備えるように構成されていてもよい。この導管により、サンプル液体が、液体中の酸素濃度を測定する時にセンサユニット8に送られ、及び/又は、液面を低下させる時に、廃棄される。
【0045】
飲料用缶6内の液面は、ポンプ9によって低下させること、又は、ピアサー2又は採取チューブ3を介して、又は、穿刺ヘッド1を介して飲料用缶6に導入されるガスによる圧力上昇によって低下させることが可能である。ここで、好適なガスは、飲料用缶6内の酸素濃度を変えない任意のガス、例えば窒素である。あるいは、液面を、飲料用缶内に存在する圧力によって低下させてもよく、これは、具体的には炭酸含有飲料の場合の飲料用缶6において有効である。
【0046】
例えばビール等の発泡性の液体が入った飲料用缶6の場合、特に、素早くサンプル保持部21に設置した場合、ピアサー2による穿刺及び液面を低下させた後、発泡しやすいことが欠点である。発生した泡には、ヘッドスペースガスの一部が局部的に、ほぼ静止状態で結合され、その結果、この結合されたガスの一部は、環状導管22を介した測定工程には参加しない。したがって、必要ならば、発泡性の液体の場合、意図的に泡を生成し、又は、泡形成を促進させて、ヘッドスペースガス全体が均一に泡と結合されるようにすることが可能である。この泡の形成は、例えば、電源装置5によって、採取チューブ3を液体表面よりも数ミリメートル下に配置させ、ヘッドスペースガスを穿刺ヘッド2からポンプ9及び採取チューブ3を介して液体表面に送り、そして、そこで泡を生成する。その後、生成された泡は、ポンプ9によって、環状導管22を介してセンサユニット8に供給され、こうすることによって、泡の酸素含有量を測定可能である。サンプル液体中の酸素の溶解度が低いため、泡の酸素含有量はヘッドスペース4又はヘッドスペースガスの酸素含有量に相当するので、このようにして、ヘッドスペースガスの酸素含有量を測定可能である。
【0047】
飲料用缶6の底部20を穿刺する際の、ピアサー2内のガス圧力の適切な設定は、飲料用缶に応じて、及び、その中に入っているサンプル液体に応じて異なる。特に、通常低温で硬い泡を形成しやすいサンプルの場合、ピアサー2内に存在するガスの圧力を、この液体に一致させる必要がある。つまり、ピアサー圧力つまりピアサー2の圧力が、飲料用缶6の内圧よりも明らかに高く選択されているならば、穿刺時に、窒素が、液体を通ってヘッドスペース内に噴射され、そこで泡が形成される。泡は、ヘッドスペース内の酸素の機能を停止させ、これによって後の測定を行うことができなくなる。したがって、ピアサー2内の圧力が缶の内圧よりも低いことが好ましい。穿刺された開口部を通ってヘッドスペースにアクセス可能な程度の液体が採取されて初めて、圧力は、弁14、15、及び、貯蔵装置16又はポンプ9を介して上昇可能であり、これによって、液面をさらに低下させること、又は、ヘッドスペースガスを採取することが可能である。
【0048】
多くの場合、センサがセンサ独自の等化時間で漸近的な等化動作、及び、温度依存性の測定動作を行うため、特に酸素センサ12及び温度センサ11のセンサを、ヘッドスペースガス又はサンプル液体の温度又は濃度と一致させることが有効である。この等化を素早く実施可能にするには、任意により、ヘッドスペースガスを、複数回センサユニット8又はセンサに送ることにより、等化を加速させる。ヘッドスペースガスを循環させることによって、又は、ヘッドスペースガスを何回も周回させることによって、少量のヘッドスペースガスであっても、センサユニット8によって測定することができ、又は、少量のヘッドスペースガスの場合であっても、センサをヘッドスペースガス及びサンプル液体に素早く等化させることができる。この等化は、温度等化、及び/又は、センサ等の膜による測定ガスの拡散といった、あらゆる時間依存性の効果を含み得る。
【0049】
本装置は、環状導管22内に設けられた弁13をさらに含む。弁13は、周囲の開口部17に繋がった導管に接続されている。開口部17を介して、例えば、窒素などの洗浄ガスや浄化溶液を、環状導管に、又は、センサユニット8又はポンプ9及び複数のセンサに到達させることが可能であり、そうして、本装置からのサンプル残留物又は残りの酸素を、洗浄することが可能である。
【0050】
必要ならば、図1に示されるように、本装置は、複数のさらなる弁14、15、及び、1つの貯蔵装置16を含むように構成されていてもよい。貯蔵装置16は、弁15を介して圧力センサ10に接続されており、別の弁14を介して、本装置の周囲と接続されている。元々ヘッドスペース4においてのみ存在するヘッドスペースガスが、飲料用缶6を開けた時に、又は、液面が低下した後に、ピアサー2によって環状導管22内に分散され得るため、元々閉鎖された飲料用缶6のヘッドスペース4内に存在しているものよりも、低いO濃度が測定される。このシステムエラーは、演算で修正される。そのためには、ポンプ循環量、又は、環状導管22及びそれに接続された部品の容積、並びに、ヘッドスペース容積が分かっている必要がある。ヘッドスペース容積は、測定手順の間に、センサユニット8、又は、圧力センサ10及び温度センサ11によって測定技術的に測定され、及び/又は、気体の法則を用いることによって算出される。
【0051】
さらに、この図1の実施形態にかかる装置には、空の貯蔵装置16が一体化されている。飲料用缶6を穿刺する前の第1のステップにおいて、空気入口18を介して装置の周囲と接続されている弁14を開き、貯蔵装置16を外気圧力にする。また、貯蔵装置を環状導管22に接続する弁15を開いて、第1の空気圧力p1を測定可能である。ここで、弁14及び弁15を閉鎖する。飲料用缶6をピアサー2によって穿刺した後、穿刺された飲料用缶6の圧力と穿刺ヘッド1及び環状導管22内に印加された圧力との組み合わせから成る圧力p2を測定する。そして弁15を開き、設定する混合圧力p3を測定する。ここで、貯蔵装置16が分かっている場合、ボイルマリオットの法則数1を使用して、ヘッドスペース容積VHeadspaceを算出可能である。
【数1】
【0052】
膨張は、純粋に等温線で移行するわけでも、純粋に断熱線で移行するわけでもないため、この結果は良好な近似を示しているだけである。
【0053】
膨張容積VExpansion及び装置容積VApparat、すなわち装置又は環状導管22、採取チューブ3、ピアサー2、及び、穿刺ヘッド1内の容積が、この構造から測定可能であるが、様々な公知のヘッドスペース容積VHeadspaceを用いて一連の測定を実施し、これから、VExpansion及びVApparatを算出することがより好ましい。これら両方の値は、公知の形状情報に加えて、等温線の動作からの偏差に対する修正を含み、こうすることによって、より正確な測定結果を得ることが可能である。
【0054】
そして、測定された酸素濃度は、分かっている容積を用いて、数2に基づき修正可能である。
【数2】
【0055】
あるいは、測定を開始する際に、貯蔵装置16を、飲料用缶6内に存在する圧力よりも高い圧力にすることも可能である。このために、ピアサー2での穿刺の前に、穿刺ヘッド1を飲料用缶6に対して密閉する。その後、弁14及び15を開いて、空気入口18と穿刺ヘッド1との間の領域全体において、同一の圧力となるようにする。この圧力は、圧力センサ10によって測定される。その後、弁14及び15を閉じて、これによって圧力を、貯蔵装置16に「閉じ込める」。その後、酸素濃度を測定する残りの方法を、上述の方法と同様に実施する。
【0056】
あるいは、ヘッドスペースガス又はサンプル液体を、ピアサー2を介して環状導管22の中に送るように構成されていてもよいし、又は、採取チューブ3を直接ピアサー2に接続するように構成されていてもよい。あるいは、ピアサー2を、飲料用缶6の底部20を開口又は貫通させた後、ヘッドスペース4に残留させ、及び、これを介してヘッドスペースガス又はサンプル液体を、環状導管22の中に送ってもよいし、又は、ピアサー2を介して液面を低下させてもよい。
【0057】
必要ならば、センサユニット8又は本装置は、環状導管22又はセンサユニット8に一体化された、複数のさらなるセンサ、例えば、COセンサ、アルコールセンサ、糖センサ、及び/又は、他のセンサを含んでいてもよい。このさらなるセンサによって、例えば、サンプル液体のCO含有量又はアルコール含有量又は糖含有量を測定可能であり、こうして、サンプル液体のさらなるパラメータを検出可能である。さらなるセンサは、任意により、開口部17を介してサンプル液体で充填されることも可能である。これらのさらなるセンサは、例えば、ビールやレモネード等の飲料の製造時に、さらなる情報を提供するので、本発明に係る装置によって、充填工程又は製造工程の品質管理を容易に監視可能である。
【0058】
酸素センサ12は、具体的には、蛍光消光原理に基づく光化学センサとして、又は、例えば電気化学酸素センサとして構成されていてもよい。図1に示される実施形態において、必要ならば、センサユニットは、ヘッドスペースガス及び/又はサンプル液体の酸素含有量を測定する1つの酸素センサ12だけを含んでいてもよい。
【0059】
ポンプ9は、図1に示される実施形態では、例えば、循環ポンプ、具体的には膜ポンプ、蠕動ポンプ、ピストンポンプ、歯車ポンプ、ねじポンプ、外輪ポンプ、又は、噴射ポンプとして形成されていてもよい。
【0060】
必要ならば、ピアサー2及び採取チューブ3の電源装置7又は運動機構は、手動により、又は、他の方法で駆動されてもよく、これによって、個々の部品の運動を連動させてもよい。
図1