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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】芝刈機
(51)【国際特許分類】
   A01D 34/68 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
A01D34/68 K
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020117336
(22)【出願日】2020-07-07
(65)【公開番号】P2022014787
(43)【公開日】2022-01-20
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河合 勇太
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】榎本 翔
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-000032(JP,A)
【文献】特開平06-269211(JP,A)
【文献】特開昭64-067117(JP,A)
【文献】米国特許第04773205(US,A)
【文献】特開平05-064509(JP,A)
【文献】特開平01-067117(JP,A)
【文献】特開2015-188339(JP,A)
【文献】実開平04-117535(JP,U)
【文献】実開平01-155728(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に生える芝草を刈り取る芝刈機であって、
刈刃が取り付けられるハウジングと、
前記ハウジングに取り付けられた前記刈刃を回転駆動する原動機と、
前記ハウジング内に設けられているとともに、前記刈刃によって刈り取られた芝草が通過する集草経路と、
前記集草経路の長手方向に沿って、前記集草経路内に空気の流れを形成する送風ファンと、
を備え、
前記集草経路の内面は、剛性を有しているとともに、その少なくとも一部の範囲には、前記長手方向に対して交差する方向に延びる複数の突条が、前記集草経路に対して位置が固定された態様で、前記長手方向に沿って繰り返し形成されており
前記送風ファンによる前記集草経路内の空気の流れにより、隣り合う二つの突条が形成する各溝内には、旋回流がそれぞれ形成される、
芝刈機。
【請求項2】
前記複数の突条の各々は、前記長手方向に対して直交する方向に延びている、請求項1に記載の芝刈機。
【請求項3】
前記複数の突条の各々は、三角形の断面形状を有する、請求項1又は2に記載の芝刈機。
【請求項4】
前記複数の突条の各々は、同一の断面形状を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の芝刈機。
【請求項5】
前記集草経路の前記内面は、前記刈刃の回転方向に交差するとともに、互いに対向する一対の側面を有し、
前記複数の突条は、前記一対の側面の少なくとも一方に設けられている、請求項1から4のいずれか一項に記載の芝刈機。
【請求項6】
前記一対の側面は、第1の側面と、前記第1の側面に対して前記回転方向の下流側に位置する第2の側面とを有し、
前記複数の突条は、少なくとも前記第2の側面に設けられている、請求項5に記載の芝刈機。
【請求項7】
前記集草経路の前記内面は、前記一対の側面の間を延びる底面をさらに有し、
前記複数の突条は、前記底面にも設けられている、請求項5又は6に記載の芝刈機。
【請求項8】
前記ハウジングは、前記刈刃が回転する範囲を少なくとも部分的に取り囲む刈刃カバーを有し、
前記刈刃カバーには集草口が設けられており、前記集草口から前記刈刃カバーの外部に向けて前記集草経路が延びている、請求項1から7のいずれか一項に記載の芝刈機。
【請求項9】
前記刈刃によって刈り取られた芝草を収集する集草容器をさらに備え、
前記集草経路は、前記集草容器に向けて伸びている、請求項1から8のいずれか一項に記載の芝刈機。
【請求項10】
前記ハウジングに取り付けられた少なくとも一つの車輪を備え、
前記少なくとも一つの車輪は、前記ハウジングを前記地面に沿って移動可能に支持する、請求項1から9のいずれか一項に記載の芝刈機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、地面に生える芝草を刈り取る芝刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、芝刈機が記載されている。この種の芝刈機は、刈刃が取り付けられるハウジング(デッキとも称される)と、刈刃を回転駆動する原動機と、ハウジング内に設けられた集草経路と、集草経路内に空気の流れを形成する送風ファンとを備える。送風ファンは、刈刃とは独立した部材であってもよく、刈刃と一体に設けられていてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-142515
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
刈刃によって刈り取られた芝草が、集草経路の内面へ大量に付着すると、集草経路が大きく塞がれてしまう。特に、ハウジングに設けられた集草経路は、例えば柔軟性を有する蛇腹のダクトとは異なり、その内面が剛性を有している(即ち、変形しない)。そのことから、集草経路の内面へ付着した芝草は、そこから脱落することなく張り付きやすい。また、集草経路の内面に芝草が一度付着し始めると、その内面上に芝草が急速に蓄積されやすい。その結果、集草経路の内面へ大量の芝草が付着して、集草経路が大きく塞がれてしまうことがある。
【0005】
上記した実情を鑑みて、本明細書は、剛性を有する集草経路の内面に、刈り取られた芝草が大量に付着することを抑制し得る技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する技術は、地面に生える芝草を刈り取る芝刈機に具現化される。この芝刈機は、刈刃が取り付けられるハウジングと、ハウジングに取り付けられた刈刃を回転駆動する原動機と、ハウジング内に設けられているとともに、刈刃によって刈り取られた芝草が通過する集草経路と、集草経路の長手方向に沿って集草経路内に空気の流れを形成する送風ファンとを備える。集草経路の内面は、剛性を有している。そして、集草経路の内面の少なくとも一部の範囲には、集草経路の長手方向に対して交差する方向に延びる複数の突条が、集草経路の長手方向に沿って繰り返し形成されている。
【0007】
上記した構成では、集草経路内に形成された空気の流れによって、刈り取られた芝草が集草経路内を搬送される。集草経路の内面には、複数の突条が形成されているので、当該内面の近傍では、複数の突条を跨ぐように空気が流れていく。このとき、隣り合う二つの突条が形成する溝内では、空気の流れが比較的に遅くなることから、溝の内外において流れの速度差が生じる。その結果、複数の突条によって形成された各々の溝内に、旋回流がそれぞれ形成される。この旋回流が、集草経路の内面へ芝草が付着することを抑制するとともに、集草経路の内面へ付着した芝草を、内面から剥離させるように機能する。これにより、剛性を有する集草経路の内面においても、刈り取られた芝草が大量に付着することが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例の芝刈機2の外観を示す斜視図。
図2】実施例の芝刈機2の内部構造を示す断面図。
図3】単体のデッキ12を上方から見たときの斜視図。
図4】単体のデッキ12を下方から見たときの斜視図。
図5】単体のデッキ12の一部を示す斜視図であって、デッキ12の左側部分が除去されている。
図6】単体のデッキ12の一部を示す斜視図であって、デッキ12の右側部分が除去されている。
図7】集草経路44における空気の流れAF及び旋回流RFを模式的に示す。
図8】複数の突条60の変形例に関して、集草経路44における空気の流れAF及び旋回流RFを模式的に示す。
図9】他の実施形態のデッキ112を下方から見たときの斜視図。
図10】他の実施形態のデッキ112の一部を示す斜視図であって、デッキ112の左側部分が除去されている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本技術の一実施形態において、複数の突条の各々は、集草経路の長手方向に対して直交する方向に延びていてもよい。このような構成によると、複数の突条が形成する溝の内外において、空気の流れの速度差がより大きくなり、前述した旋回流が明確に形成されてやすい。
【0010】
本技術の一実施形態において、複数の突条の各々は、三角形の断面形状を有してもよい。このような構成によると、前述した旋回流が形成されてやすいとともに、複数の突条が形成する溝の側面が傾斜することによって、溝内から芝草が排除されやすい。但し、他の実施形態として、複数の突条の各々は、矩形、台形、半円形といった様々な断面形状を有してもよい。
【0011】
本技術の一実施形態において、複数の突条の各々は、同一の断面形状を有してもよい。但し、他の実施形態として、複数の突条の少なくとも一つが、他の少なくとの一つの突条とは異なる形又はサイズの断面形状を有してもよい。
【0012】
本技術の一実施形態において、集草経路の内面は、刈刃の回転方向に交差するとともに、互いに対向する一対の側面を有してよい。この場合、前述した複数の突条は、一対の側面の少なくとも一方に設けられていてもよい。集草経路の一対の内面には、刈刃によって刈り取られた芝草が付着しやすい。そのことから、一対の側面の少なくとも一方に複数の突条が設けられていると、集草経路の内面に付着する芝草の量を、効果的に低減することができる。
【0013】
上記の実施形態において、一対の側面は、第1の側面と、第1の側面に対して刈刃の回転方向の下流側に位置する第2の側面とを有してもよい。この場合、複数の突条は、少なくとも第2の側面に設けられていてもよい。刈刃によって刈り取られた芝草は、刈刃の回転方向に向けて飛散しやすく、回転方向の下流側に位置する第2の側面には、刈り取られた芝草が付着しやすい。そのことから、第2の側面に複数の突条が設けられていると、集草経路の内面に付着する芝草の量を、効果的に低減することができる。
【0014】
上記した実施形態において、集草経路の内面は、一対の側面の間を延びる底面をさらに有してもよい。この場合、複数の突条は、底面にも設けられていてもよい。集草経路の底面にも、刈り取られた芝草が付着しやすい。そのことから、底面にも複数の突条が設けられていると、集草経路の内面に付着する芝草の量を、効果的に低減することができる。
【0015】
本技術の一実施形態において、ハウジングは、刈刃が回転する範囲を少なくとも部分的に取り囲む刈刃カバーを有してもよい。この場合、刈刃カバーには集草口が設けられており、集草口から刈刃カバーの外部に向けて集草経路が延びていてもよい。このような構成によると、刈刃によって刈り取られた芝草が、周囲へ散乱することなく、集草経路へ案内されやすい。
【0016】
本技術の一実施形態において、芝刈機は、刈刃によって刈り取られた芝草を収集する集草容器をさらに備えてもよい。この場合、前述した集草経路は、集草容器に向けて伸びていてもよい。このような構成によると、刈刃によって刈り取られた芝草が、集草経路を通じて集草容器に搬送されて収集される。但し、他の実施形態として、芝刈機は、集草容器を必ずしも備える必要はなく、集草経路によって搬送された芝草が、芝刈機の外部へそのまま排出されてもよい。
【0017】
本技術の一実施形態において、芝刈機は、ハウジングに取り付けられた少なくとも一つの車輪を備えてもよい。この場合、少なくとも一つの車輪は、ハウジングを地面に沿って移動可能に支持するように構成されていてもよい。即ち、芝刈機は、手押し式の芝刈機や、自走式の芝刈機であってもよい。
【0018】
以下では、本開示の代表的かつ非限定的な具体例について、図面を参照して詳細に説明する。この詳細な説明は、本開示の好ましい例を実施するための詳細を当業者に示すことを単純に意図しており、本開示の範囲を限定することを意図したものではない。また、以下に開示される追加的な特徴などは、さらに改善された芝刈機を提供するために、他の特徴や開示とは別に、又は共に用いることができる。
【0019】
また、以下の詳細な説明で開示される特徴や工程の組み合わせは、最も広い意味において本開示を実施する際に必須のものではなく、特に本開示の代表的な具体例を説明するためにのみ記載されるものである。さらに、上記及び下記の代表的な具体例の様々な特徴、ならびに、独立及び従属クレームに記載されるものの様々な特徴は、本開示の追加的かつ有用な実施形態を提供するにあたって、ここに記載される具体例のとおりに、あるいは列挙された順番のとおりに組合せなければならないものではない。
【0020】
本明細書及び/又は特許請求の範囲に記載された全ての特徴は、実施例及び/又はクレームに記載された特徴の構成とは別に、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、個別に、かつ互いに独立して開示されることを意図するものである。さらに、全ての数値範囲及びグループ又は集団に関する記載は、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、それらの中間の構成を開示する意図を持ってなされている。
【実施例
【0021】
図面を参照して、実施例の芝刈機2について説明する。図1に示すように、芝刈機2は、本体ユニット4と、ハンドルユニット6を備えている。本体ユニット4は、複数の車輪8を備える。複数の車輪8には、特に限定されないが、一対の前車輪と、一対の後車輪とが含まれる。本体ユニット4の後方には、集草容器10が着脱可能に取り付けられている。ハンドルユニット6は、本体ユニット4に取り付けられており、本体ユニット4の後方に向けて延びている。ユーザが芝刈機2を使用する場合、ユーザは芝刈機2の後方に立ち、ハンドルユニット6の上部を両手で把持する。そして、ユーザは、ハンドルユニット6介して芝刈機2を押しながら、芝刈機2の後方を歩行する。これにより、車輪によって支持された芝刈機2が、地面に沿って移動する。
【0022】
図2に示すように、本体ユニット4は、ハウジング12、14と、ハウジング12、14に取り付けられた刈刃18と、刈刃18を駆動するモータ20と、モータ20によって駆動される送風ファン22とを備える。ハウジング12、14は、本体ユニット4の主たる構造体であって、樹脂材料で構成されている。但し、ハウジング12、14を構成する材料や、具体的な構造については、特に限定されない。一例ではあるが、本実施例におけるハウジング12は、主に、デッキ12とカウル14とで構成されている。デッキ12は、主にハウジング12、14の下側部分を構成しており、複数の車輪8を回転可能に支持している。カウル14は、デッキ12の上部に取り付けられており、デッキ12の中央部分から上方に突出している。芝刈機2が地面上に配置されたときに、デッキ12の下部が地面に対して対向する。
【0023】
モータ20は、駆動シャフト16を介して、刈刃18及び送風ファン22に接続されている。駆動シャフト16は、鉛直方向に沿って延びており、モータ20からデッキ12内へ下方に向けて延びている。刈刃18及び送風ファン22は、デッキ12内において、駆動シャフト16に固定されている。デッキ12の下部は地面に向けて開放されており、刈刃18及び送風ファン22は、地面と対向するように配置される。モータ20が駆動シャフト16を駆動すると、刈刃18及び送風ファン22が回転する。これにより、刈刃18が、地面に生える芝草を刈り取るとともに、送風ファン22が、刈り取られた芝草を集草容器10へ搬送する空気の流れAF(図5図6参照)を形成する。なお、本実施例における送風ファン22は、刈刃18とは独立した部材で構成されているが、他の実施形態として、送風ファン22は、刈刃18と一体に設けられていてもよい。
【0024】
本体ユニット4は、二つのバッテリパック取付部28と、二つのバッテリパック24をさらに備える。これらのバッテリパック取付部28及びバッテリパック24は、カウル14内に位置している。各々のバッテリパック取付部28は、一つのバッテリパック24を着脱可能に構成されている。バッテリパック24は、モータ20へ電力を供給するための電源であって、例えばリチウムイオン電池といった複数の二次電池セルを内蔵する。バッテリパック取付部28に取り付けられたバッテリパック24は、電子制御ユニット(図示省略)を介して、モータ20へ電気的に接続される。電子制御ユニットは、例えば複数のスイッチング素子を有するインバータ回路と、複数のスイッチング素子の動作を制御するプロセッサとを備えており、バッテリパック24からモータ20に供給される電力を制御する。カウル14には、開閉式のバッテリカバー26が設けられている。ユーザは、バッテリカバー26を開放することで、バッテリパック取付部28に対してバッテリパック24を着脱することができる。
【0025】
図1に示すように、ハンドルユニット6は、ハンドルフレーム30とグリップ32とを備える。ハンドルフレーム30の基端部分は、デッキ12に連結されており、揺動可能に支持されている。グリップ32は、ハンドルフレーム30の先端部分に設けられており、ユーザによって把持されるように構成されている。ハンドルユニット6はさらに、スイッチレバー34と、スイッチレバー34を揺動可能に支持するスイッチユニット36、38とを備える。スイッチレバー34は、スイッチユニット36、38によって、グリップ32から離反する方向に付勢されている。ユーザは、グリップ32を把持する手の指で、スイッチレバー34を操作することができる。一方のスイッチユニット38は、スイッチレバー34に加えられた操作を検出し、それに対応する信号を前述した制御ユニットに送信する。これにより、ユーザがスイッチレバー34を操作すると、モータ20が刈刃18を駆動し、ユーザがスイッチレバー34の操作を解除すると、モータ20が刈刃18の駆動を停止する。
【0026】
次に、図3図6を参照して、ハウジング12、14の一部であるデッキ12について説明する。本実施例のデッキ12は、樹脂材料で構成されており、一定の剛性を有している。但し、デッキ12を構成する材料は、樹脂に限定されず、金属又はその他の剛性を有する材料で構成されてもよい。デッキ12は、主に、刈刃カバー40と集草経路44とを備える。刈刃カバー40は、概してドーム形状を有しており、刈刃カバー40の内面42は、刈刃18が回転する範囲を上方及び側方(水平方向)から取り囲んでいる。刈刃カバー40は下方に開放されており、刈刃カバー40の内部で回転する刈刃18によって、地面に生える芝草が刈り取られる。
【0027】
刈刃カバー40には、開口部である集草口48が設けられている。集草経路44は、刈刃カバー40の集草口48から、刈刃カバー40の外部に向けて延びている。集草経路44は、デッキ12の後面12aまで延びており、その後面12aには排出口50が設けられている。即ち、集草経路44は、集草口48から排出口50まで、その長手方向LGに沿って伸びている。ここで、集草経路44の長手方向LGは、直線に限られず、湾曲していてもよい。デッキ12の後面12aには、集草容器10が取り付けられる。これにより、刈刃カバー40の内部空間が、集草経路44を介して、集草容器10に接続される。
【0028】
集草経路44の内面46には、複数の突条60が形成されている。複数の突条60は、集草経路44の長手方向LGに沿って、繰り返し配列されている。また、複数の突条60の各々は、集草経路44の長手方向LGに対して直交する方向に延びている。ここで、特に限定されないが、本実施例における集草経路44の内面46は、第1の側面46aと、第2の側面46bと、底面46cと、上面46dとを有する。一対の側面46a、46bは、水平方向において互いに対向している。また、第2の側面46bは、第1の側面46aに対して、刈刃18の回転方向RTの下流側に位置する。底面46c及び上面46dは、それぞれ一対の側面46a、46bの間を延びるともに、鉛直方向において互いに対向している。そして、複数の突条60は、集草経路44の第2の側面46bと底面46cとのそれぞれに設けられている。一方、第1の側面46aと上面46dには、突条60が設けられていない。このように、本実施例では、集草経路44の内面46の一部の範囲に、複数の突条60が設けられている。
【0029】
図7に示すように、本実施例の芝刈機2では、集草経路44内に形成される空気の流れABによって、刈り取られた芝草CPが集草経路44内を搬送される。このとき、刈り取られた芝草CPが、集草経路44の内面46へ大量に付着すると、集草経路44が大きく塞がれてしまう。特に、デッキ12に設けられた集草経路44は、例えば柔軟性を有する蛇腹のダクトとは異なり、その内面46が剛性を有している(即ち、変形しない)。そのことから、従来の構造では、集草経路44の内面46へ大量の芝草CPが付着して、集草経路44が大きく塞がれてしまうことがあった。
【0030】
この点に関して、集草経路44の内面46には、複数の突条60が形成されており、当該内面46の近傍では、複数の突条60を跨ぐように空気が流れていく。このとき、隣り合う二つの突条60が形成する溝62内では、空気の流れABが比較的に遅くなり、溝62の内外において流れの速度差が生じる。その結果、複数の突条60によって形成された各々の溝62内に、旋回流RFがそれぞれ形成される。この旋回流RFが、集草経路44の内面46へ芝草CPが付着することを抑制する。また、この旋回流RFは、集草経路44の内面46へ付着した芝草CPを、内面46から剥離させるようにも機能する。これにより、剛性を有する集草経路44の内面46においても、刈り取られた芝草CPが大量に付着することが抑制される。
【0031】
本実施例の芝刈機2では、複数の突条60の各々は、三角形の断面形状を有している。このような構成によると、前述した旋回流RFが形成されてやすい。また、複数の突条60が形成する溝62の側面が傾斜することによって、溝62内から芝草CPが排除されやすい。但し、図8に示すように、他の実施形態として、複数の突条60の各々は、矩形の断面を有してもよい。あるいは、複数の突条60の各々は、台形、半円形といった他の断面形状を有してもよい。これらの断面形状によっても、複数の突条60によって形成された各々の溝62内には、旋回流RFがそれぞれ形成され、集草経路44の内面46に刈り取られた芝草CPが付着することが抑制される。
【0032】
本実施例の芝刈機2では、複数の突条60の各々が、同一の断面形状を有している。しかしながら、他の実施形態として、複数の突条60の少なくとも一つが、他の少なくとの一つの突条60とは異なる形又はサイズの断面形状を有してもよい。例えば、複数の突条60のうちの一部が、三角形の断面形状を有しており、複数の突条60の他の一部が、矩形の断面形状を有してもよい。あるいは、集草経路44の内面46を複数の区域に区分し、それぞれの区域において突条60の数、サイズ、断面形状等を個別に設計してもよい。
【0033】
本実施例の芝刈機2では、集草経路44の内面46のうち、第2の側面46bと底面46cとに複数の突条60が設けられている。第2の側面46bは、刈刃18の回転方向RTに関して下流側に位置するので、本来的に芝草CPが付着しやすい。集草経路44の底面46cについても、重力の作用によって、本来的に芝草CPが付着しやすい。このような本来的に芝草CPが付着しやすい部分に対して、上述した複数の突条60が設けられていると、芝草CPによって集草経路44が塞がれることを、効果的に抑制することができる。
【0034】
しかしながら、複数の突条60は、特に限定されることなく、より広い範囲に設けられてもよい。図9図10は、その一例であるデッキ112を示す。このデッキ112では、複数の突条60が、刈刃カバー40の内面42にも設けられている。このような構成によると、刈刃カバー40の内面42に、芝草が付着することを避けることができる。また、デッキ112では、集草経路44の第1の側面46a及び上面46dにも、複数の突条60が形成されている。集草経路44の内面46の全体に、複数の突条60が形成されている。
【0035】
以上、本実施例の芝刈機2について詳細に説明したが、当該芝刈機2は本技術を実施するための一例であって、様々に変更することが可能である。例えば、本実施例の芝刈機2は、手押しタイプ(ウォークビハインドタイプ)の構造を有しているが、これに限られず、複数の車輪8の少なくとも一つを駆動する自走式の構造を有してもよい。あるいは、芝刈機2は、必ずしも車輪8を備える必要はなく、作業者によって保持される手持ち式の構造を有してもよい。また、芝刈機2は、モータ20に代えて、又は加えて、刈刃18と送風ファン22との少なくとも一方を駆動するエンジン又はその他の原動機を備えてもよい。また、刈刃18は、剛性を有する刃物に限られず、例えばナイロンコードのような線材であってもよい。
【符号の説明】
【0036】
2:芝刈機
4:本体ユニット
6:ハンドルユニット
8:車輪
10:集草容器
12、112:デッキ
12a:デッキの後面
14:カウル
16:駆動シャフト
18:刈刃
20:モータ
22:ダクト
24:バッテリパック
26:バッテリカバー
28:バッテリ取付部
30:ハンドルフレーム
32:グリップ
34:スイッチレバー
36、38:スイッチユニット
40:刈刃カバー
42:刈刃カバーの内面
44:集草経路
46:集草経路の内面
48:集草口
50:排出口
60:突条
62:隣り合う二つの突条が形成する溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10