(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】加工治具
(51)【国際特許分類】
B29C 53/02 20060101AFI20240118BHJP
B29C 53/80 20060101ALI20240118BHJP
E04C 5/07 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
B29C53/02
B29C53/80
E04C5/07
(21)【出願番号】P 2020133803
(22)【出願日】2020-08-06
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【氏名又は名称】近藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】大窪 一正
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 直樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 周斗
(72)【発明者】
【氏名】デヴィン グナワン
【審査官】小山 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-206022(JP,A)
【文献】実開平06-017924(JP,U)
【文献】特開2004-001294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 53/00-53/84
B29C 70/00-70/88
B21D 5/00- 9/18
E04C 5/00- 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を母材とする繊維補強樹脂からなりコンクリート補強用材料として使用されるロッドを曲げ加工する加工治具であって、
前記ロッドの所定の被保持部位を保持し固定するクランプ部と、
前記ロッドの、前記被保持部位から離れて位置する被加工部位を加熱する加熱部と、
前記加熱部により加熱される前記被加工部位を押し当てて曲げるためのガイド面を有する曲げ型と、を備え
、
前記加熱部は、前記曲げ型に接触して前記曲げ型を通じた熱伝導により前記被加工部位に熱を付与する高温部を有し、
前記高温部は、前記曲げ型に対する接触状態と非接触状態とを切替可能に設けられている、加工治具。
【請求項2】
前記曲げ型は、
前記クランプ部に対し相対的に、回転せず且つ並進移動しないように位置固定されている、請求項1に記載の加工治具。
【請求項3】
熱可塑性樹脂を母材とする繊維補強樹脂からなりコンクリート補強用材料として使用されるロッドを曲げ加工する加工治具であって、
前記ロッドの所定の被保持部位を保持し固定するクランプ部と、
前記ロッドの、前記被保持部位から離れて位置する被加工部位を加熱する加熱部と、
前記加熱部により加熱される前記被加工部位を押し当てて曲げるためのガイド面を有する曲げ型と、を備え、
前記曲げ型は、
前記被加工部位の一部を把持し前記ガイド面上に固定するロッド把持部を有するとともに、前記クランプ部に対し相対的に前記ガイド面の曲率中心を回転軸線とする回転が可能であり、且つ前記クランプ部に対し相対的に前記クランプ部に保持される前記被保持部位の延在方向への並進移動が可能であり、
前記曲げ型を前記クランプ部に対し相対的に前記クランプ部から遠ざかる側に前記並進移動の方向に付勢する弾性部材を更に備え
る、加工治具。
【請求項4】
前記ガイド面に押し当てられ曲げられた前記被加工部位を冷却する冷却部を更に備える、請求項1~3の何れか1項に記載の加工治具。
【請求項5】
前記冷却部は、前記
ガイド面に設けられた吹出孔から冷却風を吹き出して前記被加工部位を冷却するものである、請求項4に記載の加工治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロッドを曲げ加工する加工治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性樹脂を母材とする繊維補強樹脂からなるロッドをコンクリート補強用材料として鉄筋の代わりに使用することが知られている(例えば、非特許文献1参照)。このようなロッドをコンクリート補強用材料として用いるためには、ロッドに定着用フックを形成したり、せん断補強材料としてロッドを矩形環状に形成したりすることが必要であり、鉄筋と同様に曲げ加工が必要である。ロッドの曲げ加工には、例えば工業用ドライヤー等の熱風でロッドを加熱し、軟化したロッドを曲げると言った手法が考えられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】保倉篤ら、「熱可塑性FRPを埋設したコンクリート梁の曲げ性状」、令和元年度土木学会全国大会第74回年次学術講演会、2019年9月3日発行、V-407
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、工業用ドライヤーなどを用いて加熱する場合には、熱風の当たり方によってロッドの位置ごとに温度のムラが発生しやすい。そして、例えば、作業者の力加減や技能によって局所的に高温になった箇所が折れ曲がってしまうといったようなことが起こりやすく、曲げ加工後のロッドの品質が低下する可能性がある。また、加工するロッドを固定する作業者、工業用ドライヤーを操作する作業者、曲げ加工する方向に材料を引っ張る作業者、など、作業人員が多数必要となる場合もあり得る。
【0005】
本発明は、繊維補強樹脂からなるロッドの曲げ加工において、品質が高い曲げ加工部を簡易に形成する加工治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の加工治具は、熱可塑性樹脂を母材とする繊維補強樹脂からなりコンクリート補強用材料として使用されるロッドを曲げ加工する加工治具であって、ロッドの所定の被保持部位を保持し固定するクランプ部と、ロッドの、被保持部位から離れて位置する被加工部位を加熱する加熱部と、加熱部により加熱される被加工部位を押し当てて曲げるためのガイド面を有する曲げ型と、を備える。
【0007】
曲げ型は、クランプ部に対し相対的に、回転せず且つ並進移動しないように位置固定されている、こととしてもよい。
【0008】
曲げ型は、被加工部位の一部を把持しガイド面上に固定するロッド把持部を有するとともに、クランプ部に対し相対的にガイド面の曲率中心を回転軸線とする回転が可能であり、且つクランプ部に対し相対的にクランプ部に保持される被保持部位の延在方向への並進移動が可能であり、曲げ型をクランプ部に対し相対的にクランプ部から遠ざかる側に並進移動の方向に付勢する弾性部材を更に備える、こととしてもよい。
【0009】
本発明の加工治具は、ガイド面に押し当てられ曲げられた被加工部位を冷却する冷却部を更に備える、こととしてもよい。
【0010】
加熱部は、ガイド面に設けられた吹出孔から熱風を吹き出して被加工部位を加熱するものであり、冷却部は、吹出孔から冷却風を吹き出して被加工部位を冷却するものである、こととしてもよい。
【0011】
加熱部は、曲げ型に接触して曲げ型を通じた熱伝導により被加工部位に熱を付与する高温部を有し、高温部は、曲げ型に対する接触状態と非接触状態とを切替可能に設けられている、こととしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、繊維補強樹脂からなるロッドの曲げ加工において、品質が高い曲げ加工部を簡易に形成する加工治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】(a)は、
図1のIIa-IIa断面図であり、(b)は、
図1のIIb-IIb断面図であり、(c)は、曲げ型及び加熱部の分解斜視図である。
【
図3】(a)は、冷却部の一例を示す平面図であり、(b)は、冷却部の他の例を示す斜視図である。
【
図4】(a)は、曲げ型の変形例を示す断面図であり、(b)は、曲げ型の他の変形例を示す断面図であり、(c)は、クランプ部の変形例を示す断面図である。
【
図5】(a)は、曲げ型近傍の変形例を示す平面図であり、(b)は、(a)のVb-Vb断面図である。
【
図7】曲げ加工中の第2実施形態の加工治具の動作を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明に係る加工治具の第1実施形態について詳細に説明する。
図1に示される加工治具1は、熱可塑性樹脂を母材とする繊維補強樹脂からなるロッド3を曲げ加工するための加工治具である。このロッド3は、従来の鉄筋に代えてコンクリート構造物に埋設されるコンクリート補強用材料として使用される。このような用途のロッド3においては、鉄筋と同様に、端部に定着用フックを形成する、せん断補強材料として矩形環状に形成するなどの目的で曲げ加工が施される。
【0015】
ロッド3の繊維補強樹脂の母材である熱可塑性樹脂の例としては、例えば、熱可塑性エポキシ、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリカーボネートが挙げられる。また、補強繊維としては、例えば、炭素繊維やバサルト繊維、ガラス繊維が挙げられる。
【0016】
ロッド3の材料である繊維補強樹脂は熱可塑性樹脂を母材とするので、ロッド3を加熱して軟化させることができる。そして、軟化したロッド3に力を加えて曲げ、曲げた状態で再び冷却して硬化させることにより、ロッド3に曲げ加工が施される。加工治具1は、このような曲げ加工の作業を支援するための治具である。加工治具1により、例えばロッド3をU字状に180°湾曲させたり、L字状に90°湾曲させたりすることができる。本実施形態では、加工治具1によって、ロッド3の先端部を曲げ加工して定着用フックを形成する場合を例として説明する。
【0017】
加工治具1は、架台7と、クランプ部9と、曲げ型11と、加熱部13と、を備えている。架台7は例えば矩形平板状に形成される。
【0018】
クランプ部9は、架台7の上面に設置されており、ロッド3の一部位を保持し固定する機能を有する。クランプ部9で保持されるロッド3の一部位とは、ロッド3のうち曲げ加工が施される部位からやや離れた部位である。以下では、曲げ加工が施されるロッド3の一部位を「被加工部位」と呼び、図中で符号「3b」を付して示す。また、クランプ部9で保持されるロッド3の一部位を「被保持部位」と呼び、図中で符号「3c」を付して示す。
【0019】
クランプ部9は、例えば
図2(a)に示されるように、被保持部位3cをロッド径方向に挟む一対の挟持部材9aを有する。各挟持部材9aには、被保持部位3cが挿入される保持溝9cが対向するように設けられている。これら挟持部材9aの少なくとも一方が架台7上をスライド可能であり、2つの挟持部材9aの保持溝9c同士の間に被保持部位3cが挟み込まれることで、クランプ部9が被保持部位3cを保持し固定する。上記のようにクランプ部9が被保持部位3cを保持し固定したときには、被保持部位3cはクランプ部9に対してロッド3の軸方向に滑らず、クランプ部9は架台7に対して不動に固定される。よって、被保持部位3cが架台7に対して不動になる。なお、クランプ部9が被保持部位3cを保持固定するための上記機構は一例であり、他の保持機構が採用されてもよい。
【0020】
図2(b)にも示されるように、曲げ型11は、架台7の上面に設置されており、ロッド3の被加工部位3bを押し当てて曲げるためのガイド面11aを有している。架台7の上面に直交する方向から見て曲げ型11は円環形状をなしており、ガイド面11aは円柱面をなしている。後述するように加熱部13によって加熱された被加工部位3bがガイド面11aに押し当てられることにより、被加工部位3bはガイド面11a上で円弧状に湾曲する。曲げ型11は架台7に対して不動に固定されている。すなわち、曲げ型11は、架台7に対して回転移動も並進移動もしないように固定されている。従って、曲げ型11は、ロッド3の曲げ加工中におけるクランプ部9に対し相対的に、回転せず且つ並進移動しない。また、本実施形態における曲げ型11とクランプ部9との位置関係によれば、曲げ加工前の直線状のロッド3の被保持部位3cがクランプ部9に保持固定された状態において、ロッド3は曲げ型11に外接する接線に沿って延在し、被加工部位3bとガイド面11aとが軽く接する。
【0021】
加熱部13は、被加工部位3bを加熱する機能を有している。加熱部13は高温を発する高温部13aを有しており、高温部13aが曲げ型11に接触することで、曲げ型11を通じた熱伝導により被加工部位3bに熱が付与される。本実施形態では、高温部13aは曲げ型11の円環中空部に嵌め込まれる円柱形状をなしており、高温部13aには、電熱線等の発熱源13bが内蔵されている。そして、高温部13aの円柱側面が曲げ型11の円環内側面に接触することで、高温部13aから曲げ型11に熱が伝導される。
【0022】
図2(c)に示されるように、高温部13aは曲げ型11の円環中空部に対して着脱可能に嵌め込まれていてもよい。この構成によれば、高温部13aは、曲げ型11への接触状態(円環中空部に嵌め込まれた状態)と非接触状態(円環中空部から取り去られた状態)とを切替可能である。
【0023】
続いて、上述のような構成の加工治具1を用いて実行されるロッド3の曲げ加工について説明する。
図1に示されるように、ロッド3の先端近傍の被保持部位3cをクランプ部9に保持させた状態とする。一方、加熱部13の高温部13aが曲げ型11の円環中空部に嵌め込まれた状態で発熱源13bによって加熱され、これにより曲げ型11が加熱される。次に、作業者が手で、ロッド3の被加工部位3bよりも先端側の部位を把持し、ロッド3が弛まないように当該ロッド3の軸方向への引張力Faを付与しながら、被加工部位3bをガイド面11aに押し当てる方向に力Fbを付与する。これにより、
図1中に二点鎖線で示されるように、被加工部位3bは曲げ型11からの熱で軟化されながら、ガイド面11aに巻き付くように円弧状に変形していく。
【0024】
被加工部位3bが所望の形状に湾曲したところで、被加工部位3bがガイド面11aに接した状態のまま、加熱部13のスイッチをOFFにする。これにより、高温部13a及び曲げ型11が自然放熱により温度低下し、被加工部位3bが温度低下する。被加工部位3bが十分に温度低下し再硬化したところで、クランプ部9から被保持部位3cを解放し、ロッド3を加工治具1から取り外して、曲げ加工が完了する。
【0025】
以上説明したような加工治具1によれば、クランプ部9でロッド3の被保持部位3cを保持固定した上で、加熱された被加工部位3bを曲げ型11に押し当てるようにして、曲げ型11に沿った湾曲形状でロッド3が曲げ加工される。従って、作業者の力加減や技能にほぼ依存しない状態の高品質の曲げ加工部が形成される。また、加工治具1において被保持部位3cの保持固定、被加工部位3bの加熱、及び被加工部位3bの曲げが効率よく実行されるので、多数の作業者を必要とせずに、簡易にロッド3の曲げ加工を行うことができる。
【0026】
なお、前述のように高温部13aが曲げ型11の円環中空部に対して着脱可能である場合には、被加工部位3bを温度低下させるときに、高温部13aを曲げ型11の円環中空部から除去することで、被加工部位3bの温度低下を速め曲げ加工の作業時間を短縮することができる。また、この場合には、除去された高温部13aを十分に温度低下させる必要がないので、次のロッド3の曲げ加工において高温部13aの再加熱の時間やエネルギーを節約することができる。
【0027】
また、被加工部位3bの温度低下を更に速めるために、被加工部位3bを積極的に冷却する冷却部15が更に設けられてもよい。このような冷却部15の一例として、
図3(a)に示されるように、ガイド面11a上の被加工部位3bに向けて冷却風を送出する送風装置が架台7上に設けられてもよい。
【0028】
また、被加工部位3bを加熱する加熱部としては、上述の加熱部13に代えて種々の方式を採用することができる。一例として
図3(b)に示される加熱部17は、曲げ型11のガイド面11aに形成された吹出孔17aを有し、当該吹出孔17aから熱風を吹き出して被加工部位3bを加熱するものである。この場合において、冷却部15を設ける場合には、前述の送風装置(
図3(a)参照)に代えて、冷却部15は、吹出孔17aから冷却風を吹き出してガイド面11a上の被加工部位3bを冷却するものであってもよい。
【0029】
また、加熱部13,17は被加工部位3bを湾曲内側から加熱するものであるが、被加工部位3bの湾曲外側から被加工部位3bを加熱する加熱部が採用されてもよい。また、被加工部位3bの加熱を均等にするために、加熱部13又は加熱部17に加えて、被加工部位3bの湾曲外側から被加工部位3bを加熱する加熱部が更に設けられてもよい。この場合、例えば、被加工部位3bに向けて熱風を吹き出す加熱部が、
図3(a)に示される冷却部15の位置と同様の位置に設けられてもよい。また、被加工部位3bの過熱を防止するために、ロッド3の加工に適した加熱温度を設定可能とし、被加工部位3bの加熱温度を制御する温度制御部が設けられてもよい。この温度制御部により被加工部位3bが適切な温度で加熱されることで、過熱による曲げ加工部の品質低下が抑制される。
【0030】
また、被加工部位3bが押し当てられるガイド面11aの形状は単なる円柱面に限られない。例えば、
図4(a)に示されるように、被加工部位3bが嵌まる円弧状の凹部を有する断面形状のガイド面21aが採用されてもよい。この構造によれば、曲げ加工中に被加工部位3bが曲げ型11から外れてしまう可能性が低減される。また、曲げ型11と被加工部位3bとの接触面積が拡大されるので、被加工部位3bが効率的に加熱され、加熱のバラツキも低減される。
【0031】
また、
図4(b)に示されるように、複数のガイド面21aが曲げ型11の円柱軸方向に並ぶように形成されてもよい。この場合、
図4(c)に例示されるように、クランプ部9においても、複数のロッド3の被保持部位3cを保持固定可能な構造(例えば、複数対の保持溝9cが挟持部材9aに設けられた構造)が採用されることで、複数のロッド3の曲げ加工を同時に行うことができる。
【0032】
また、作業者が手で被加工部位3bを曲げ型11に押し当てることに代えて、このような作業者の手の動作を自動的に実行する機構が設けられてもよい。すなわち、ロッド3の被加工部位3bよりも先端側の部位を把持し、ロッド3が弛まないように当該ロッド3の軸方向への引張力Faを付与しながら、被加工部位3bをガイド面11aに押し当てる方向に力Fbを付与するといった動作を実行する機構が架台7に設けられてもよい。
【0033】
また、被加工部位3bを自動的に曲げ型11に押し当てるための駆動機構が架台7に設けられてもよい。この一例として、
図5(a)に示されるように、曲げ型11との間に被加工部位3bを挟むように配置された押圧ローラ23が設けられてもよい。被保持部位3cがクランプ部9で保持固定された状態において、押圧ローラ23は、被加工部位3bの外側面上を転がりながら、ガイド面21aのやや外周側で当該ガイド面21aに平行な円弧軌道を移動する。このような押圧ローラ23の駆動により、被加工部位3bが自動的にガイド面21aに押し当てられる。なお、押圧ローラ23の外周面は、円柱面であってもよいし、
図5(b)に示されるように、ガイド面21aと同様の凹部を有する断面形状に形成されてもよい。また、曲げ型11のガイド面についても、凹部を有する断面形状のガイド面21aに限られず、円柱面(ガイド面11a)であってもよい。また、
図5(a)に示されるように、押圧ローラ23にも高温部13aが内蔵されるといったように、押圧ローラ23にも被加工部位3bの加熱手段が設けられてもよい。
【0034】
また、半径が異なる複数の曲げ型11を準備し、架台7に設置する曲げ型11を適宜交換することで、ロッド3の曲げ加工部の曲率を適宜変更可能としてもよい。また、ガイド面21aの凹部のサイズが異なる曲げ型11を準備し、架台7に設置する曲げ型11を適宜交換することで、ロッド3の外径の変更に適宜対応可能としてもよい。また、作業者が加熱部13や曲げ型11に接触して火傷することを防止するために、加熱部13や曲げ型11を覆うカバーが設けられてもよい。
【0035】
(第2実施形態)
続いて、本発明に係る加工治具の第2実施形態について詳細に説明する。
図6に示されるように、本実施形態の加工治具41は、第1実施形態における曲げ型11に代えて、可動の曲げ型43を備えている。曲げ型43は、架台7に対し回転可能且つ並進移動可能に支持されている点において曲げ型11と相違する。これ以外の点においては、本実施形態の加工治具41は第1実施形態の加工治具1と同じ構成を備えるものであるので、以下では、第1実施形態と同一又は同等の構成要素に同一符号を付して、重複する説明を省略する。
【0036】
図6に示されるように、曲げ型43は、架台7に対し、ガイド面11aの曲率中心を回転軸線Cとして回転可能に支持されている。更に、曲げ型43は、架台7に対し、クランプ部9に保持される被保持部位3cの延在方向(
図6の矢印A方向)へ弾性的に並進移動が可能であるように支持されている。具体的には、曲げ型43は回転軸線C上に延在する回転シャフト44を有している。架台7には、回転シャフト44の軸受であるとともに回転シャフト44の移動を案内するガイドレール45が設けられている。ガイドレール45は上記A方向に平行に延びており、回転シャフト44のA方向への移動を案内する。また、ガイドレール45には、回転シャフト44をクランプ部9から遠ざける側に向けてA方向に付勢する弾性部材47(例えばバネ)が設置されている。回転シャフト44は、弾性部材47からの付勢によって、ガイドレール45の端部に設けられたストッパ部45aに突当てられている。
【0037】
また、曲げ型43は、被加工部位3bの一部を把持しガイド面11a上に固定するロッド把持部49を有している。なお、ロッド把持部49で把持される被加工部位3bの一部は、実質的にロッド3の軸方向に長さを有しない部位であり、被加工部位3b上のほぼ一点である。ロッド把持部49は曲げ型43に対して固定されており曲げ型43の回転に追従して回転移動する。ロッド把持部49によって一部がガイド面11a上に固定された被加工部位3bは、ガイド面11a上を周方向に滑らないようになる。ロッド把持部49により被加工部位3bを把持するための把持機構としては、例えば、ロッド3の周囲に巻き付けられる細帯状の部材を有する機構など、適切な機構を採用すればよい。
【0038】
続いて、上述のような構成の加工治具41を用いて実行されるロッド3の曲げ加工について説明する。
図6に示されるように、ロッド3の先端近傍の被保持部位3cをクランプ部9に保持させた状態とする。そして、直線状に延びるロッド3とガイド面11aとが接する位置において、ロッド3の一部をロッド把持部49に把持させガイド面11a上に固定する
【0039】
次に、
図7に示されるように、加熱部13により曲げ型43が加熱された状態で、作業者が手で、ロッド3の被加工部位3bよりも先端側の部位を把持し、ロッド3が弛まないように当該ロッド3の軸方向への引張力Faを付与しながら、被加工部位3bをガイド面11aに押し当てる方向に力Fbを付与する。そうすると、ロッド把持部49がロッド3の先端側に引っ張られることで曲げ型43は回転軸線C周りに矢印H方向に回転する。そして、この曲げ型43の回転に追従してロッド把持部49及び当該ロッド把持部49で把持されたロッド3の部位も回転する。このとき、被加工部位3bのうちロッド把持部49よりもクランプ部9に近い部位(被加工部位3b)が、曲げ型43からの熱で軟化されながら、ガイド面11aに巻き付くように円弧状に変形していく。更にこのとき、被加工部位3bが曲げ型43のガイド面11aに巻き取られる分の長さに対応して、曲げ型43は、弾性部材47の付勢に逆らってクランプ部9側に向けてA方向に移動する。このとき、弾性部材47の付勢に起因して、曲げ型43が被加工部位3bをクランプ部9から遠ざかる側に向けてA方向に押すので、被加工部位3bは、適切な力でガイド面11aに押し当てられ、ガイド面11aに沿った正しい形状に湾曲する。
【0040】
上記のような動作により、被加工部位3bが所望の形状に湾曲したところで、第1実施形態と同様にして被加工部位3bを十分に温度低下させ、クランプ部9及びロッド把持部49からロッド3を解放し、ロッド3を加工治具1から取り外して、曲げ加工が完了する。
【0041】
以上説明したような加工治具41によっても、第1実施形態と同様に、高品質の曲げ加工部が形成され、多数の作業者を必要とせずに簡易にロッド3の曲げ加工を行うことができる。
【0042】
なお、架台7を平板状のものにすることは必須ではなく、例えば、
図8に示されるようなものであってもよい。すなわち、
図8に示される加工治具51では、曲げ加工中に作業者が把持する棒状のハンドル部53が架台7として機能している。ハンドル部53の側面にクランプ部9が設けられ、ハンドル部53の先端面の穴53aに、曲げ型11を軸支する軸受材55が挿入され、この軸受材55を付勢するための弾性部材57(例えばバネ)が穴53a内に内蔵されている。このような加工治具51も、加工治具41と同様の原理によって動作可能である。この加工治具51は装置全体がコンパクトであるので、例えばコンクリート構造物の施工現場において、作業者が容易に持ち運び可能であり、施工現場において簡易にロッド3の曲げ加工を実行することができる。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形したものであってもよい。各実施形態の構成を適宜組み合わせて使用してもよい。
【符号の説明】
【0044】
1,41,51…加工治具、3…ロッド、9…クランプ部、11…曲げ型、13,17…加熱部、3c…被保持部位、3b…被加工部位、11a,21a…ガイド面、13a…高温部、15…冷却部、17a…吹出孔、C…回転軸線、47,57…弾性部材、49…ロッド把持部。