(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】二重容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 49/22 20060101AFI20240118BHJP
B65D 1/02 20060101ALI20240118BHJP
B29C 49/06 20060101ALI20240118BHJP
B29C 49/58 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
B29C49/22
B65D1/02 111
B29C49/06
B29C49/58
(21)【出願番号】P 2020160329
(22)【出願日】2020-09-25
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】田端 真一
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-310534(JP,A)
【文献】特開平09-002529(JP,A)
【文献】特開2007-223309(JP,A)
【文献】特開2020-059225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00-49/80
B65D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外層部と内層部を有するプリフォームをブロー成形する工程を含み、筒状の口部を有してボトル状をなし該外層部により形成される外層体と、減容変形可能であって該内層部により形成される内層体と、該口部に設けられて該外層体と該内層体との間に連通する外気導入口とを備える合成樹脂製の二重容器を製造する方法であって、
前記ブロー成形する工程において、
前記外気導入口に、前記プリフォームの内側に供給されるブローガスの圧力以上の加圧ガスを供給して前記内層部を前記外層部から剥離させる工程と、
前記ブローガスの供給を停止する前に前記加圧ガスの供給を停止して、剥離させた前記内層部を前記外層部に近づける工程と、を含む二重容器の製造方法。
【請求項2】
前記加圧ガスは、前記ブローガスの供給を開始した後に供給される、請求項1に記載の二重容器の製造方法。
【請求項3】
前記ブローガスは、前記プリフォームの内側に、第一圧力で供給した後に該第一圧力よりも大きい第二圧力で供給され、
前記加圧ガスは、前記ブローガスが前記第二圧力で供給される際に供給される、請求項2に記載の二重容器の製造方法。
【請求項4】
前記加圧ガスは、前記外気導入口に挿入されるノズルにより供給される、請求項1~3の何れか一項に記載の二重容器の製造方法。
【請求項5】
前記ノズルは、前記内層部を押し込む位置まで前記外気導入口に挿入される、請求項4に記載の二重容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外層体と内層体とを備える二重容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧水などの化粧料や各種の薬剤、食品調味料、飲料などを収容するための容器として、二重容器(デラミ容器、積層剥離容器ともいう)が使用されている。この種の二重容器は、筒状の口部を有してボトル状をなす外層体と、外層体の内側に設けられる減容変形可能な内層体とを備えていて、内層体の内部に収容した内容物を外部に吐出させると、外層体に設けた外気導入口から外層体と内層体との間に外気が導入されて、内層体を減容させたまま外層体が復元される。このため、内容物が少なくなっても外層体を自立させることが可能であり、また内層体に残った内容物が外気と触れづらくなるため、内容物の品質劣化や変質を抑制することができる。
【0003】
このような二重容器は、例えば特許文献1に記載されているように、ポリエチレン等の外層体用樹脂材と、ナイロン(ポリアミド)のように外層体用樹脂材に対して相溶性が低い内層体用樹脂材とを共押出して筒状の積層パリソンを形成し、この積層パリソンの一端部を金型で喰い切ることによって閉塞する一方、他端部からガスを供給してボトル状に成形する押出ブロー成形により製造することができる。
【0004】
また特許文献2、特許文献3に記載されているように、外層体用樹脂材を使用した外層部(外層プリフォーム)と内層体用樹脂材を使用した内層部(内層プリフォーム)とを個別に成形し、これらが組み付けられ積層された試験管状の積層プリフォームを準備し、このプリフォームを金型に設置した後にプリフォーム内にブローガスを供給してボトル状に賦形させて二重容器を製造する方法も知られている。
【0005】
このようにして製造される二重容器は、内層体に収容した内容物を外部に吐出しただけでは、外層体から内層体が完全に剥離しないことがある。このため、二重容器の製造工程においては、特許文献1~3に記載されているように、ブローガスを供給して外層体をボトル状に賦形させる工程を実施した後、外層体から内層体を予め剥離させておく初期剥離処理を行うことが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平8-310534号公報
【文献】特開2020-59225号公報
【文献】特開2020-1288226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、このような初期剥離処理を実施することによって二重容器完成までの工程数が増えることになるため、製造コストと製造時間の増加につながることになる。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決することを課題とするものであり、初期剥離処理に伴う工程数の増加を抑制し、これにより製造コストと製造時間の低減につなげることが可能な二重容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、外層部と内層部を有するプリフォームをブロー成形する工程を含み、筒状の口部を有してボトル状をなし該外層部により形成される外層体と、減容変形可能であって該内層部により形成される内層体と、該口部に設けられて該外層体と該内層体との間に連通する外気導入口とを備える合成樹脂製の二重容器を製造する方法であって、
前記ブロー成形する工程において、
前記外気導入口に、前記プリフォームの内側に供給されるブローガスの圧力以上の加圧ガスを供給して前記内層部を前記外層部から剥離させる工程と、
前記ブローガスの供給を停止する前に前記加圧ガスの供給を停止して、剥離させた前記内層部を前記外層部に近づける工程と、を含む二重容器の製造方法である。
【0010】
前記加圧ガスは、前記ブローガスの供給を開始した後に供給されることが好ましい。
【0011】
前記ブローガスは、前記プリフォームの内側に、第一圧力で供給した後に該第一圧力よりも大きい第二圧力で供給され、
前記加圧ガスは、前記ブローガスが前記第二圧力で供給される際に供給されることが好ましい。
【0012】
前記加圧ガスは、前記外気導入口に挿入されるノズルにより供給されることが好ましい。
【0013】
前記ノズルは、前記内層部を押し込む位置まで前記外気導入口に挿入されることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明による外層部と内層部を有するプリフォームをブロー成形する工程を含む二重容器を製造する方法にあっては、ブロー成形する工程において、プリフォームの内側に供給されるブローガスの圧力以上の加圧ガスを外気導入口に供給して内層部を外層部から剥離させる工程と、ブローガスの供給を停止する前に加圧ガスの供給を停止して剥離させた内層部を外層部に近づける工程と、を含むことにより、従来の初期剥離処理を行った二重容器と同等のものを得ることができる。すなわち、ブロー成形を行う工程で初期剥離処理を行うことができるため、初期剥離処理をブロー成形後に行っていた従来の製造方法に比して、工程数の増加が抑制され、これにより製造コストと製造時間の低減につなげることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る製造方法で製造される二重容器のプリフォームの一実施形態に関し、(a)はプリフォームの口部周辺を倒立姿勢で示す側面図であり、(b)はA-Aに沿う断面図(中心軸線に対して片側のみ示す)である。
【
図2】外気導入口に加圧ガスを供給する状況を示す図(中心軸線に対して片側のみ示す)であって、(a)はノズルを外気導入口に挿入する直前の状態であり、(b)は内層部を押し込む位置までノズルを挿入した状態であり、(c)はノズルから加圧ガスを供給する状態である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明に従う二重容器の製造方法の一実施形態について説明する。
【0017】
図1は、本発明に係る製造方法で製造される二重容器のプリフォームの一実施形態を示した図である。本実施形態のプリフォーム1は、中心軸線Oに沿って円筒状に延在していて、一端部が閉じられて他端部は開放した試験管状になるものである。なお本明細書において上下方向とは、
図1に示したプリフォームの中心軸線Oに沿う方向を意味し、
図1においては、閉じられた一端部(不図示)が上方に位置し、開放した他端部が下方に位置する状態で示している。また径方向とは、中心軸線Oに対して垂直な面内で中心軸線Oと直交する方向であり、周方向とは、この面内で中心軸線Oを中心として周回する方向である。
【0018】
本実施形態のプリフォーム1は、
図1(a)に示すように、円筒状になる口部2を備えている。なお口部2は、上述したプリフォーム1の他端部に相当する部位である。口部2の外周面には、二重容器として成形された際にキャップ等が取り付けられる雄ねじ部3と、雄ねじ部3に対して間隔をあけて周方向に延在するネックリング4と、雄ねじ部3とネックリング4との間に位置する円形の穴(外気導入口5)と、外気導入口5の直上に位置し、ネックリング4の上方で開口するとともにネックリング4の径方向内側に向けて延在してネックリング4の内側に潜り込む凹溝部6とを備えている。
【0019】
プリフォーム1は、
図1(b)に示すように積層構造となるものであって、径方向外側に位置する外層部7と、径方向内側に位置する内層部8と、外層部7と内層部8との間に位置する中間層部9とを備えている。外層部7、内層部8、中間層部9はそれぞれ、プリフォーム1を成形して二重容器とした際に、ボトル状になる外層体と、減容変形可能な内層体と、内層体の表面に設けられる中間層体になるものである。外層部7、内層部8、中間層部9を形成する樹脂材の一例としては、外層部7と内層部8をともにポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂で形成し、中間層部9をナイロン(ポリアミド)やEVOH等のようなポリエステル系樹脂とは相溶性が低い樹脂で形成することが挙げられる。なお樹脂材はこれらに限られず、例えば外層部7と内層部8を形成する樹脂材としては、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂材でもよい。また外層部7と内層部8は同一の樹脂材に限られず、互いに種類が異なるものでもよい。また中間層部9を削除して2層構造としてもよいし、層構造が4層以上になるようにしてもよい。
【0020】
また本実施形態のプリフォーム1は、外層部7と内層部8を形成する樹脂材と中間層部9を形成する樹脂材を、プリフォーム1を形成する金型に共射出することによって形成しているが、これに限られず、例えば外層部7を形成する樹脂材を射出成形して単独の外層部7からなる外層プリフォームを成形し、また内層部8と中間層部9を形成する樹脂材を共射出して積層された内層部8と中間層部9からなる内層プリフォームを成形し、外層プリフォームの内側に内層プリフォームを挿入してプリフォーム組立体としたものでもよい。なお、この場合、中間層部9を設けず、内層部8のみからなる内層プリフォームとしてもよく、外層部7と中間層部9とからなる積層の外層プリフォームを用いてもよい。
【0021】
またプリフォーム1における外気導入口5は、
図1(b)に示すように、口部2の外周面から中間層部9まで延在して外層部7を貫通するものである。本実施形態の外気導入口5は、プリフォーム1を成形する金型に、外気導入口5を形成するための円柱状になる部位が設けられていて、射出成形によってプリフォーム1を成形した時点で形作られているものであるが、この方法以外で外気導入口5を設けてもよい。例えば、プリフォーム1を射出成形した直後の温かいうちにポンチカッターによって形成してもよいし、ドリル等を使用して設けてもよい。
【0022】
なお凹溝部6は、ネックリング4を設けた口部2における外気導入口5の周辺の肉厚を減じることによって、内層部8の厚みを薄くして、外気導入口5の周辺において内層部8と中間層部9を変形しやすくするものである。なお内層部8と中間層部9を変形しやすくした場合の効果は後述するが、凹溝部6は、この効果の必要性に応じて任意に設ければよい。また凹溝部6を設ける数も変更可能であり、例えば外気導入口5の両側に一対設けてもよい。
【0023】
このようにしてプリフォーム1を準備する工程を実施した後は、プリフォーム1をブロー成形する工程を実施する。本実施形態におけるブロー成形を実施するための装置は、図示は省略するが、プリフォーム1の閉じられた一端部を押圧する延伸ロッドと、開放したプリフォーム1の口部2から気体(ブローガス)を供給するブローガス供給部を備えている。そして、延伸ロッドでプリフォーム1の一端部を押圧することによって主に上下方向に延伸させ、またブローガス供給部からプリフォーム1(内層部8)の内側に加圧されたブローガスを供給することによって主に径方向に延伸させる二軸延伸ブロー成形を行って、プリフォーム1から二重容器を製造する。
【0024】
本実施形態の二軸延伸ブロー成形について更に詳細に説明すると、まず試験管状になるプリフォーム1を、
図1に示すように、閉じられた一端部(不図示)が上方に位置し、口部2が下方に位置する姿勢(倒立姿勢)で装置にセットする。本実施形態の装置は、プリフォーム1を所定温度で所定時間加熱する予備加熱手段を備えていて、これによりプリフォーム1を予め加熱しておく。
【0025】
予備加熱されたプリフォーム1は、二重容器を形成するための金型にセットされる。また金型の附帯設備には、
図2(a)に示すように、外気導入口5に挿入されるノズルNが設けられている。なお図示したノズルNは、先端部に設けた開口が径方向を指向しているが、開口の向きは上方(プリフォーム1の一端部を向く方向)でもよい。
【0026】
そして金型を閉じると、それに伴いノズルNもプリフォーム1に向けて移動して、
図2(b)に示すように外気導入口5にノズルNが挿入される。図示したように本実施形態のノズルNは、金型が完全に閉じた状態において、その先端部が中間層部9を介して内層部8を径方向内側に押し込む位置まで挿入される。これにより、中間層部9と内層部8を径方向内側に向けて撓ませることができるため、外気導入口5の周辺において外層部7と中間層部9との密着を抑制し、二重容器として形成した際に、外気を外気導入口5からスムーズに取り込むことができる。本実施形態においては、上述したように凹溝部6によって内層部8の厚みが薄くなっているため、中間層部9と内層部8がより撓みやすくなっている。なお、ノズルNを径方向内側へ過度に押し込むと、中間層部9が傷付いたり、中間層部9や内層部8が破れたりする可能性があるため、ノズルNの押し込み量は、このような不具合が生じない程度とする。
【0027】
また金型が完全に閉じた状態においては、上述した不図示のブローガス供給部が口部2に対して下方から当て付けられる。
【0028】
次いで不図示の延伸ロッドを下方から上方に向けて突き出して、延伸ロッドの先端部でプリフォーム1の閉じられた一端部を押圧して、プリフォーム1を主に上下方向に延伸させる。なお延伸ロッドを稼動させる時間は、一例として、ブローガス供給部が口部2に対して当て付けられてから約0.1秒後に突き出しを開始し、突き出し開始から約0.5秒後には延伸が終了している程度に設定する。
【0029】
そして延伸ロッドによる延伸に続いて、ブローガス供給部からプリフォーム1の内側に加圧されたブローガスを供給し、プリフォーム1を主に径方向に延伸させる。なお本実施形態のブローガスは空気であるが、他の気体(例えば窒素ガス等)を用いてもよい。
【0030】
ここで本実施形態のブローガス供給部は、供給するブローガスの圧力を変化させることができる。具体的には、第一圧力と、第一圧力よりも大きい第二圧力の少なくとも2段階の圧力でブローガスを供給することができる。一例を挙げると、第一圧力は0.8MPa程度であり、第二圧力は3.0MPa程度である。本実施形態においては、延伸ロッドによる延伸が終了した直後からプリフォーム1の内側にブローガスを第一圧力で供給し、その後、第二圧力で更にブローガスを供給するようにしている。なお、第一圧力でブローガスが供給される時間は一例として0.3秒程度であり、第二圧力でブローガスが供給される時間は、一例として4.2秒程度である。
【0031】
ここで、ブローガスを第二圧力で供給している状態において、
図2(c)に示すように、ノズルNから外気導入口5へ加圧ガスを供給する。本実施形態の加圧ガスは、所定の圧力で加圧された空気であるが、加圧された他の気体(例えば窒素ガス等)を用いてもよい。また加圧ガスの圧力は、供給されているブローガスの圧力(第二圧力)以上に設定する。一例を挙げると、ブローガスを3.0MPaで供給する際において、これと同じ圧力で加圧ガスを供給する。外気導入口5へ加圧ガスを供給することにより、外層部7と中間層部9との剥離を進行させることができる。
【0032】
所定時間ノズルNから加圧ガスを供給した後は、ブローガスの供給を停止する前に加圧ガスの供給を停止する。なお、ブローガスの供給は、プリフォーム1が延伸されて外層部7の外面が金型の内面と同形状になる時点で停止してもよいし、外層部7の外面が金型の内面に押し付けられた状態でしばらく保圧してから停止してもよい。すなわち、加圧ガスの供給を停止するタイミングは、延伸された外層部7の外面が金型の内面と同形状になる直前でもよいし、ブローガスによってプリフォーム1が保圧されている状態でもよい。
【0033】
そして加圧ガスの供給を停止した後は、ブローガスによる圧力によって、外層部7から剥離させた中間層部9と内層部8を、外層部7に隣接させるように近づけることができる。
【0034】
その後はプリフォーム1に供給したブローガスを排気する。そして排気が完了して金型を開くと、外層体に対して表面に中間層体を有する内層体の処理剥離処理が完了していて、また剥離した内層体等が外層体に隣接した状態になる二重容器を得ることができる。なお、剥離した内層体等が外層体から離隔した状態になっていると、内層体の容積が小さくなるため、内容物を内層体の内部に意図した量で収容できないおそれがあるが、このように剥離した内層体等を外層体に近づけることによって、充填工程で内容物の収容量がばらつく不具合を防止することができる。
【0035】
このように本実施形態に係る二重容器の製造方法は、ブロー成形を行う工程で初期剥離処理を行うことができるため、初期剥離処理をブロー成形後に行っていた従来の製造方法に比して、工程数の増加が抑制され、これにより製造コストと製造時間の低減につなげることができる。
【0036】
ところで本発明者が検討を重ねた所、加圧ガスの圧力が、これを供給する時点でのブローガスの圧力よりも小さい場合は、ブローガスが第一圧力で供給される場合でも第二圧力で供給される場合でも、中間層部9と内層部8が外層部7から十分に剥離できない現象が生じることがあった。このため外気導入口5へ供給する加圧ガスの圧力は、その時点でのブローガスの圧力以上とする。
【0037】
なお、ブローガスが第一圧力で供給される場合において、第一圧力よりも大きな圧力で加圧ガスを供給すると、剥離した中間層部9と内層部8が破断してしまう現象が生じることがあった。これは、ブローガスの圧力が比較的低いためにプリフォーム1の延伸が十分に進んでいない状態であるのに、中間層部9と内層部8に加圧ガスによる高い圧力が加わったことが要因であると推察される。このためブローガスを、第一圧力で供給した後にこの圧力よりも大きな第二圧力で供給する場合には、ブローガスを第一圧力で供給している状態ではなく、第二圧力で供給している状態で加圧ガスを供給することが好ましい。
【0038】
また加圧ガスの供給がブローガスの供給よりも早く開始されると、外層部7から剥離させた中間層部9と内層部8が延伸ロッドに絡まって破断してしまう現象が生じることがあった。このため加圧ガスは、上記のようにブローガスの供給を開始した後に供給することが好ましい。
【0039】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【0040】
例えば上述した製造方法では、延伸ロッドでプリフォーム1を上下方向に延伸させてからブローガスを供給するようにしたが、延伸ロッドによる延伸は省略してもよい。またプリフォーム1をブロー成形するにあたっては、プリフォーム1の向きを上記の実施形態とは上下を逆にしてこれを正立姿勢にした状態で行ってもよい。また外気導入口5に加圧ガスを供給するにあたっては、ノズルNを中間層部9に押し当てず、中間層部9からノズルNの先端を離隔させた状態で行ってもよいし、ノズルNを使用せずに、加圧ガスの吐出口を口部2の外周面に押し当てるようにして行ってもよい。
【0041】
また上述したプリフォーム1は、外層部7と中間層部9との間で剥離させたが、中間層部9と内層部8との間で剥離させてもよい。例えば外気導入口5を、外層部7と中間層部9を貫通するように設けておき、中間層部9と内層部8との間に加圧ガスを供給することによって、中間層部9と内層部8との間での剥離が実現される。
【符号の説明】
【0042】
1:プリフォーム
2:口部
3:雄ねじ部
4:ネックリング
5:外気導入口
6:凹溝部
7:外層部
8:内層部
9:中間層部
N:ノズル
O:中心軸線