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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】ポジションセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/16 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
G01D5/16 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020183435
(22)【出願日】2020-11-02
(65)【公開番号】P2022073447
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】弁理士法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近江 徹哉
(72)【発明者】
【氏名】巻田 真宏
(72)【発明者】
【氏名】秋山 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】三澤 正志
(72)【発明者】
【氏名】益尾 健志
【審査官】藤澤 和浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-002835(JP,A)
【文献】特開平11-271348(JP,A)
【文献】特開2020-122721(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0335441(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00 ~ 5/252
G01D 5/39 ~ 5/62
G01B 7/00 ~ 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイアス磁界を発生させる磁石(104)と、前記バイアス磁界が印加される検出素子(107)と、を有し、磁性体で構成された検出体(200)の移動に伴って前記検出素子が前記検出体から常に受ける磁界の変化に基づいて、前記検出体の移動方向に沿って一方向に並んだ複数の範囲に対応する検出信号を生成する検出部(101)と、
前記検出部から前記検出信号を取得し、前記検出信号と閾値とを比較し、前記検出信号と前記閾値との大小関係の組み合わせに基づいて、前記複数の範囲のいずれかの範囲の位置として前記検出体の位置を特定する信号処理部(102)と、
を含み、
前記検出体は、前記複数の範囲に対応する複数の領域部(201~203)を有し、
前記複数の領域部は、前記検出体のうち前記検出部が対向する検出面(205)の面内で前記検出体の移動方向に階段状に接続されて構成されており、
前記信号処理部は、前記検出体が欠落した場合、前記検出体から前記磁界の影響を全く受けないことによる検出信号を取得することにより、前記検出体の欠落を判定するポジションセンサ。
【請求項2】
前記信号処理部は、前記検出部から前記検出信号を入力して前記検出信号と判定基準とを比較することにより前記検出体の位置を判定して判定結果を出力周期毎に出力する判定機能と、前記検出体の位置の判定が正常判定であるかまたは異常判定であるかを診断周期毎に診断する診断機能と、を有し、
前記診断周期と前記出力周期とは一致した周期であり、
前記信号処理部は、前記異常判定であると診断した場合、前記診断周期において前記異常判定であると診断した周期の次の周期に対応する出力周期で、前記異常判定であると診断したことを示すダイアグ出力を行う請求項1に記載のポジションセンサ。
【請求項3】
前記検出体は、車両のシフトポジションの動作に連動して移動する可動部品である請求項1または2に記載のポジションセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジションセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、磁性体で構成された検出体の位置を検出するポジションセンサが、例えば特許文献1で提案されている。検出体は、山部と谷部とが移動方向に設けられている。
【0003】
ポジションセンサは、山部及び谷部から受ける磁界の変化を検出する検出部を有する。ポジションセンサは、検出部によって取得した検出信号と閾値との比較によってHi/Loを判定することで、山部の位置と谷部の位置とを特定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-2778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術では、谷部の検出時は、検出部の内部の磁石が谷部から影響を受けない、あるいは影響を受けにくい状態になっている。このため、検出部が谷部を検出した場合の検出信号と、検出体が欠落した場合の検出信号と、に差が生じない、あるいは差がわずかになってしまう。よって、検出体の欠落を検出できない可能性がある。
【0006】
本発明は上記点に鑑み、検出体の欠落を判定することができるポジションセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、ポジションセンサは、検出部(101)及び信号処理部(102)を含む。
【0008】
検出部は、バイアス磁界を発生させる磁石(104)と、バイアス磁界が印加される検出素子(107)と、を有する。検出部は、磁性体で構成された検出体(200)の移動に伴って検出素子が検出体から常に受ける磁界の変化に基づいて、検出体の移動方向に沿って一方向に並んだ複数の範囲に対応する検出信号を生成する。
【0009】
信号処理部は、検出部から検出信号を取得し、検出信号と閾値とを比較し、検出信号と閾値との大小関係の組み合わせに基づいて、複数の範囲のいずれかの範囲の位置として検出体の位置を特定する。
【0010】
検出体は、複数の範囲に対応する複数の領域部(201~203)を有する。複数の領域部は、検出体のうち検出部が対向する検出面(205)の面内で検出体の移動方向に階段状に接続されて構成されている。
【0011】
信号処理部は、検出体が欠落した場合、検出体から磁界の影響を全く受けないことによる検出信号を取得することにより、検出体の欠落を判定する。
【0012】
これによると、検出素子は、検出体の各領域部から受ける磁界の影響に基づく検出信号とは異なる検出信号を取得することができる。よって、検出体の欠落時の検出信号に基づいて検出体の欠落を判定することができる。
【0013】
なお、この欄及び特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係るポジションセンサの分解斜視図である。
図2】第1実施形態に係るポジションセンサの構成図である。
図3】検出体及びポジションセンサを示した図である。
図4】検出体とポジションセンサとの位置関係に基づく検出信号を示した図である。
図5】比較例に係る検出体及びポジションセンサを示した図である。
図6】比較例において、検出体とポジションセンサとの位置関係に基づく検出信号を示した図である。
図7】第2実施形態に係るシフトレンジ切替システムを示す斜視図である。
図8】第3実施形態に係る故障が発生した場合の出力の状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について図を参照して説明する。本実施形態に係るポジションセンサは、検出体の位置がどの範囲にあるのかを検出し、その範囲に対応した信号を出力するセンサである。
【0016】
ポジションセンサは、検出体として、車両のシフトポジションの動作に連動する可動部品の位置を検出する。ポジションセンサは、磁気検出方式を採用する。具体的には、ポジションセンサは、シャフトの位置に応じた信号を検出することで、シャフトの状態を取得する。
【0017】
シャフトの状態とは、ユーザによってシフトポジションが操作されたときのシャフトの位置を意味する。例えば、シャフトは、シフトポジションのパーキングに連動して移動する。シフトポジションがパーキングに位置するように操作された場合、シャフトが軸方向に移動する。これにより、シャフトは、パーキングの状態を反映する。ポジションセンサはシャフトのうちパーキングに対応した位置を検出する。
【0018】
一方、シフトポジションがパーキング以外のポジションに位置するように操作された場合、シャフトはパーキング以外の状態を反映する。この場合、ポジションセンサは、シャフトのうちパーキングに対応した位置以外の位置を検出する。もちろん、シャフトはパーキング以外のポジションに連動して移動するものでも良い。
【0019】
シャフトは、例えば全体が磁性体材料によって形成されている。なお、シャフトは、ポジションセンサに対向する面が磁性体材料で形成され、他の部分が別の金属材料によって形成されていても良い。
【0020】
図1図2、及び図3に示されるように、ポジションセンサ100は、検出部101及び信号処理部102を備える。また、ポジションセンサ100は、モールドIC部103、磁石104、及び保持部105を備える。これらは、ケース106に収容される。
【0021】
検出部101は、磁性体で構成された検出体200の移動に伴って、検出体200から常に受ける磁界の変化に基づいて、検出体200の移動方向に沿って一方向に並んだ複数の範囲に対応する検出信号を生成する。検出体200の移動方向に沿った複数の範囲は、複数の範囲が検出体200の移動方向に沿って並列に配置されているのではなく、複数の範囲が検出体200の移動方向に沿って一方向に直列に並んでいる。
【0022】
ここで、検出体200は、移動方向に沿って一方向に並んだ複数の範囲に対応する3つの領域部201~203を有する。各領域部201~203は、四角形状の板部材204によって構成されている。また、各領域部201~203は、検出体200のうち検出部101が対向する検出面205の面内で検出体200の移動方向に階段状に接続されて構成されている。磁石104は、検出面205に対して一定距離の検出ギャップを持って配置される。
【0023】
「階段状に接続される」とは、各領域部201~203における一方と他方とが検出面205の面内において移動方向に対して垂直方向にずれて接続されることである。これにより、各領域部201~203において移動方向に沿った両端部すなわち2本の長辺部は、階段状の形状を構成している。
【0024】
図3に示されるように、検出体200において、移動方向における一方の端部を第1端部206とし、他方の端部を第2端部207とする。領域部201と領域部202との接続部分を第1エッジ208とする。領域部202と領域部203との接続部分を第2エッジ209とする。また、領域部201の位置をA、領域部202の位置をB、領域部203の位置をCとする。
【0025】
検出体200は、磁性体によって構成された板部材がプレス加工等によって形成される。各領域部201~203は、移動方向の長さが同一でも良いし、異なっていても良い。また、各領域部201~203は、検出面205の面内での移動方向に垂直な方向の長さが同一でも良いし、異なっていても良い。なお、検出体200は、シャフト等の部品に固定される。また、検出体200は、両端の領域部201、203がシャフトに固定されても良い。
【0026】
検出部101は、検出素子107を有する。検出素子107は、磁石104からバイアス磁界が印加されると共に、検出体200の移動に伴って検出体200から受ける磁界の変化に基づいて抵抗値が変化する素子である。検出素子107は、例えば複数の磁気抵抗素子対で構成される。磁気抵抗素子対は、2つの磁気抵抗部が直列接続されたハーフブリッジ回路として構成されている。
【0027】
磁気抵抗素子は、例えばAMR素子(Anisotropic Magneto Resistance;AMR)である。検出素子107は、GMR素子(Giant Magneto Resistance;GMR)やTMR素子(Tunneling Magneto Resistance;TMR)でも良い。
【0028】
検出素子107は1つのチップとして構成される。信号処理部102は1つの半導体チップとして構成される。これらのチップは、リードフレーム108に実装され、リード部分が露出するようにモールド樹脂によってモールドされることで、モールドIC部103として構成される。モールドIC部103及び磁石104は、ケース106に収容される。
【0029】
磁石104は、バイアス磁界を発生させると共に、検出部101の一部を構成する部品である。磁石104は、中空部109を有する扁平筒状である。扁平筒状とは、外周形状が矩形状に形成されると共に、中央部には同じく矩形状の貫通孔が形成された形状を指す。扁平筒状は、扁平角筒状とも言える。磁石104の中空部109にはモールドIC部103の一部が差し込まれる。これにより、検出素子107が磁石104の中空部109に収容される。磁石104は、有底筒状の保持部105に差し込まれる。
【0030】
信号処理部102は、検出部101の検出素子107から検出信号を取得し、検出信号と閾値とを比較し、検出信号と閾値との大小関係の組み合わせに基づいて、複数の範囲のいずれかの範囲の位置として検出体200の位置を特定する。また、信号処理部102は、検出体200が欠落した場合、検出体200から磁界の影響を全く受けないことによる検出信号を取得することにより、検出体200の欠落を判定する。
【0031】
信号処理部102は、検出信号に対して各範囲に対応した閾値と、検出体200の欠落に対応した検出信号を判定するための閾値と、を有する。信号処理部102は、ポジション判定に対応した出力信号を生成し、外部装置に出力信号を出力する。
【0032】
次に、検出体200のポジション判定について説明する。図3及び図4に示されるように、検出部101に対して検出体200が移動方向に沿って移動すると、検出信号は各領域部201~203に対応した波形となる。
【0033】
検出体200の各領域部201~203は、検出面205において移動方向に対してずれた位置に配置されている。このため、検出部101が各領域部201~203から受ける磁界の影響は領域部201~203毎に異なる。よって、検出信号は領域部201~203毎に異なる。
【0034】
そして、検出体200が正常に移動する場合、以下のようにポジション判定される。まず、検出体200の第1端部206から第1エッジ208までは、検出信号は最も高い値となる。この場合のポジション判定は「A」となる。
【0035】
検出体200の第1エッジ208から第2エッジ209までは、検出信号は位置Aよりも低い値となる。この場合のポジション判定は「B」となる。
【0036】
検出体200の第2エッジ209から第2端部207までは、検出信号は位置A及び位置Bに対して最も低い値となる。この場合のポジション判定は「C」となる。
【0037】
続いて、検出体200が何らかの理由で欠落した場合、検出素子107は検出体200から磁界の変化を全く受けなくなる。これは、検出体200の検出面205と磁石104とが対向配置されない状態である。これにより、検出信号は、検出部101が各領域部201~203から磁界の影響を受けたときの値とは異なる値に収束する。つまり、検出信号は、磁界の影響を受けない値に収束する。
【0038】
したがって、検出体200が欠落した場合、信号処理部102は、位置Cに対応した領域部203の検出信号と検出体200が欠落した状態の検出信号との差が明らかになるので、欠落の識別が可能になる。図示しないが、信号処理部102は、位置Aに対応した領域部201の検出信号と欠落状態の検出信号との差も明らかになるので、欠落の識別が可能になる。
【0039】
よって、検出体200に欠落が発生した場合、信号処理部102はポジション判定として「欠落」を特定することができる。また、外部装置は、検出体200に異常が発生していることを把握することができる。
【0040】
上記のポジション判定に対する比較例として、図5に示されるように、比較対象の検出体250は2つの谷部251、252が山部253を挟む形状になっている。一方の谷部251の位置をD、山部253の位置をE、他方の谷部252の位置をFとする。
【0041】
図5及び図6に示されるように、検出部101が他方の山部253に対向配置されると、検出ギャップが小さくなる。よって、検出信号は大きい値となる。この場合のポジション判定は「E」となる。
【0042】
これに対し、検出部101が谷部251、252に対向配置されると、検出ギャップが大きくなる。よって、検出部101が谷部251、252からの磁界の影響を受けなくなるので、検出信号は磁界の影響を受けない値に収束する。この場合のポジション判定は「D」または「F」となる。
【0043】
一方、検出体200が欠落した場合、検出部101と検出体250との検出ギャップが大きくなる。つまり、検出部101が検出体250の山部253及び谷部251、252からの磁界の影響を全く受けなくなる。すなわち、検出部101が谷部251、252に対向配置された状態と同じである。このため、検出信号は磁界の影響を受けない値に収束する。
【0044】
したがって、検出体200が欠落したにもかかわらず、ポジション判定は「D」または「F」になってしまう。検出体200の欠落時のポジション判定が「D」または「F」となった場合には谷部251、252の位置であると誤判定される可能性がある。よって、外部装置は、異常状態が発生しているのか否かを把握することはできない。
【0045】
以上説明したように、検出体200が欠落することで検出素子107が検出体200から磁界の影響を受けない状態になったとしても、検出体200から受ける磁界の影響に基づく検出信号とは異なる検出信号を取得することができる。よって、検出体200の欠落時の検出信号に基づいて検出体200の欠落を判定することができる。
【0046】
(第2実施形態)
本実施形態では、主に第1実施形態と異なる部分について説明する。本実施形態では、図7に示されるように、検出体200は、車両のシフトレンジを切り替えるシフトレンジ切替システム300に設けられる。シフトレンジ切替システム300は、モータ310、シフトレンジ切替機構320、及びパーキングロック機構330を備える。
【0047】
モータ310は、図示しない車両に搭載されるバッテリから電力が供給されることで回転する。モータ310は、シフトレンジ切替機構320の駆動源である。モータ310は、スイッチトリラクタンスモータである。モータ310は、DCモータ等、どのような種類のものを用いても良い。
【0048】
モータ310のモータ軸と出力軸311との間には図示しない減速機が設けられている。減速機は、モータ310の回転を減速して出力軸311に出力する。これにより、モータ310の回転がシフトレンジ切替機構320に伝達される。
【0049】
シフトレンジ切替機構320は、ディテントプレート321や、付勢部材としてのディテントスプリング322等を有する。シフトレンジ切替機構320は、減速機から出力された回転駆動力を、マニュアルバルブ323及びパーキングロック機構330へ伝達する。
【0050】
ディテントプレート321は、出力軸311に固定され、モータ310により駆動される可動部品である。ディテントプレート321がディテントスプリング322の基部から離れる方向を正回転方向、基部に近づく方向を逆回転方向とする。
【0051】
ディテントプレート321には、出力軸311と平行に突出するピン324が設けられる。ピン324は、マニュアルバルブ323と接続される。ディテントプレート321がモータ310によって駆動されることで、マニュアルバルブ323は軸方向に往復移動する。すなわち、シフトレンジ切替機構320は、モータ310の回転運動を直線運動に変換してマニュアルバルブ323に伝達する。
【0052】
マニュアルバルブ323は、バルブボディ325に設けられる。マニュアルバルブ323が軸方向に往復移動することで、図示しない油圧クラッチへの油圧供給路が切り替えられ、油圧クラッチの係合状態が切り替わることでシフトレンジが変更される。
【0053】
ディテントプレート321のうちのディテントスプリング322の側には、第1谷部326、第2谷部327、及び2つの谷部326、327の間に形成される山部328が設けられる。ディテントスプリング322の基部に近い側を第2谷部327、遠い側を第1谷部326とする。第1谷部326がPレンジに対応し、第2谷部327がPレンジ以外のnotPレンジに対応する。
【0054】
ディテントスプリング322は、弾性変形可能な板状部材であり、先端に係合部材としてのディテントローラ329が設けられる。ディテントスプリング322は、ディテントローラ329をディテントプレート321の回動中心側に付勢する。ディテントプレート321に所定以上の回転力が加わると、ディテントスプリング322が弾性変形し、ディテントローラ329が第1谷部326と第2谷部327との間を移動する。
【0055】
ディテントローラ329が各谷部326、327のいずれかに嵌まり込むことで、ディテントプレート321の揺動が規制される。これにより、マニュアルバルブ323の軸方向位置及びパーキングロック機構330の状態が決定され、図示しない自動変速機のシフトレンジが固定される。ディテントローラ329は、シフトレンジがnotPレンジのとき、第2谷部327に嵌まり込み、Pレンジのとき、第1谷部326に嵌まり込む。
【0056】
パーキングロック機構330は、パーキングロッド331、円錐体332、パーキングロックポール333、軸部334、及びパーキングギア335を有する。パーキングロッド331は、略L字形状に形成され、一端336の側がディテントプレート321に固定される。パーキングロッド331の他端337の側には、円錐体332が設けられる。円錐体332は、他端337の側に向かうほど縮径するように形成される。ディテントプレート321が逆回転方向に揺動すると、円錐体332がP方向に移動する。
【0057】
パーキングロックポール333は、円錐体332の円錐面と当接し、軸部334を中心に揺動可能に設けられる。パーキングロックポール333ののうちのパーキングギア335の側には、パーキングギア335と噛み合い可能な凸部338が設けられる。ディテントプレート321が逆回転方向に回転し、円錐体332がP方向に移動すると、パーキングロックポール333が押し上げられ、凸部338とパーキングギア335とが噛み合う。一方、ディテントプレート321が正回転方向に回転し、円錐体332がnotP方向に移動すると、凸部338とパーキングギア335との噛み合いが解除される。
【0058】
パーキングギア335は、図示しない車軸に設けられ、パーキングロックポール333の凸部338と噛み合い可能に設けられる。パーキングギア335と凸部338とが噛み合うと、車軸の回転が規制される。シフトレンジがnotPレンジのとき、パーキングギア335はパーキングロックポール333によりロックされず、車軸の回転は、パーキングロック機構330により妨げられない。また、シフトレンジがPレンジのとき、パーキングギア335はパーキングロックポール333によってロックされ、車軸の回転が規制される。
【0059】
上記の構成において、シフトレンジ切替機構320のディテントプレート321には、出力軸311の回転に応じて磁界が変化するように、検出体200が設けられる。
【0060】
検出体200は、磁性体によって構成された板部材がプレス加工等によって形成される。検出体200は、ディテントプレート321と別部材であっても良いし、ディテントプレート321が磁性体であれば、例えばディテントプレート321にプレス加工等を施すことで形成しても良い。
【0061】
以上のように、シフトレンジ切替機構320のディテントプレート321に検出体200を設置することができる。
【0062】
(第3実施形態)
本実施形態では、主に上記各実施形態と異なる部分について説明する。本実施形態では、信号処理部102は、判定機能及び診断機能を有する。
【0063】
判定機能は、信号処理部102が検出部101から検出信号を入力し、検出信号と判定基準とを比較することにより、検出体200の位置を判定し、判定結果を出力周期毎に出力する機能である。判定基準は、各領域部201~203に対応する位置を判定するための閾値である。第1実施形態と同様に、信号処理部102は、検出信号と閾値との大小関係の組み合わせに基づいて、各領域部201~203の位置を特定する。
【0064】
診断機能は、各領域部201~203に対応する位置の判定が正常判定であるかまたは異常判定であるかを診断周期毎に診断する機能である。診断機能は、例えば、ポジションセンサ100を二重系として構成することで実現できる。すなわち、同じ構成の2つの検出部101と、同じ構成の2つの図示しない判定回路部と、をポジションセンサ100に設ける。信号処理部102は、2つの判定回路部の判定結果を比較し、判定結果が一致する場合は正常判定であると判定し、判定結果が異なる場合は異常判定であると判定する。
【0065】
ここで、診断周期と出力周期とは一致した周期に設定されている。このため、信号処理部102は、診断結果を、当該診断を行った周期の次の周期に対応する出力周期で、外部装置に出力する。
【0066】
次に、ポジションセンサ100の作動について説明する。まず、ポジションセンサ100は、起動すると、診断を開始する。その後、ポジションセンサ100は起動時の状態から位置(ポジション)を出力する状態に移行する。
【0067】
すなわち、検出部101は、検出体200から受ける磁界の変化に基づいて、検出体200の現在の位置に対応する検出信号を生成する。検出部101は、検出信号を信号処理部102に出力する。
【0068】
信号処理部102は、判定基準に基づいて、検出部101から入力した検出信号から検出体200の現在の位置を判定する。また、図8に示されるように、信号処理部102は、二重系による回路に基づいて判定結果の診断を行う。
【0069】
そして、信号処理部102は、位置の判定結果が正常判定であると診断した場合、診断周期において正常判定であると診断した周期の次の周期に対応する出力周期で、正常判定であることを示す情報を位置の判定結果に含ませて出力する。あるいは、信号処理部102は、位置の判定結果のみを出力する。
【0070】
一方、故障等が発生した場合、信号処理部102は、位置の判定結果が異常判定であると診断する。この場合、信号処理部102は、診断周期において異常判定であると診断した周期の次の周期に対応する出力周期で、異常判定が発生したことを示すダイアグ出力を行う。信号処理部102は、ダイアグ出力の状態に移行した場合、位置の判定結果を出力しない。
【0071】
以上説明したように、診断周期と出力周期とが一致した周期に設定されているので、診断結果を診断の次の周期で出力することができる。このため、一定の時間を待たずに、わずか一周期後に診断結果を出力することができる。したがって、異常判定であると診断された場合に異常の発生を早期に通知することができる。
【0072】
また、故障検知を毎周期行うことで、検出体200の欠落についての判定を早く正確に行うことができる。すなわち、より正確な異常判定を早期に行うことができる。
【0073】
(他の実施形態)
上記各実施形態で示されたポジションセンサ100の構成は一例であり、上記で示した構成に限定されることなく、本発明を実現できる他の構成とすることもできる。例えば、ポジションセンサ100の用途は車両用に限られず、可動部品の位置を検出するものとして産業用ロボットや製造設備等にも広く利用できる。
【符号の説明】
【0074】
101 検出部
102 信号処理部
104 磁石
107 検出素子
200 検出体
201~203 領域部
205 検出面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8