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特許7422055鉄筋籠およびコンクリート構造物の構築方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】鉄筋籠およびコンクリート構造物の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E04C 5/06 20060101AFI20240118BHJP
   E04G 21/12 20060101ALI20240118BHJP
   E02D 5/30 20060101ALI20240118BHJP
   E02D 5/44 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
E04C5/06
E04G21/12 105A
E02D5/30 Z
E02D5/44 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020188859
(22)【出願日】2020-11-12
(65)【公開番号】P2022077829
(43)【公開日】2022-05-24
【審査請求日】2023-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】山野辺 慎一
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-127413(JP,A)
【文献】特開2018-172870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 5/00 - 5/20
E04G 21/12
E02D 5/22 - 5/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に伸縮可能な鉄筋籠であって、
鉄筋籠の周方向に間隔を空けて配置された可とう性を有する複数本の螺旋状の軸方向鋼材が、旋回方向を変えて内外に設けられ、内外の軸方向鋼材が交差部で回転可能に接合されたことを特徴とする鉄筋籠。
【請求項2】
前記鉄筋籠を拡径させるための拡径用治具が前記鉄筋籠の下端部に設けられたことを特徴とする請求項1記載の鉄筋籠。
【請求項3】
前記拡径用治具は、
前記軸方向鋼材の下端部が取り付けられた取付部と、
前記取付部の下方に設けられた先端部と、
前記取付部と前記先端部に両端部を取り付けて放射状に複数本配置されたアームと、
を有し、
前記アームは、前記先端部を通る鉛直面において回転可能に前記先端部と前記取付部に取り付けられることを特徴とする請求項2記載の鉄筋籠。
【請求項4】
内側の前記軸方向鋼材と外側の前記軸方向鋼材とが前記鉄筋籠の下端部において連続していることを特徴とする請求項1記載の鉄筋籠。
【請求項5】
前記鉄筋籠の径を拘束するための拘束リングが設けられたことを特徴とする請求項2から請求項4のいずれかに記載の鉄筋籠。
【請求項6】
請求項2から請求項5のいずれかに記載の鉄筋籠を、底部に拡幅部を有する立坑内に伸長した状態で建て込み、前記鉄筋籠の下端部を拡径させてその拡径部分を前記拡幅部に配置し、
前記立坑にコンクリートを打設することを特徴とするコンクリート構造物の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋籠とこれを用いたコンクリート構造物の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤に形成した立坑内にコンクリート基礎を構築する際、上下に伸縮可能な鉄筋籠を用いることがある(例えば、特許文献1、2等)。
【0003】
この鉄筋籠は、PC鋼線等を用いた可とう性を有するストランドを軸方向鋼材として用い、鉄筋籠の周方向に間隔を空けて設けた複数のストランドを、上下複数段に配置した帯筋に回転可能に接合したものである。これらストランドと帯筋の交差角を変えることで上下の帯筋の間隔を増減させ、鉄筋籠を上下に伸縮させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-214990号公報
【文献】特開2018-172870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コンクリート基礎の構築時には、しばしば鉄筋籠の径を変えたいということがある。例えば基礎に拡幅部を設けるときに、その拡幅部に配筋したい、あるいは、共通の鉄筋籠を基礎の大きさに合わせて径を変えて使用したい等である。しかしながら、上下に伸縮可能な従来の鉄筋籠について、さらに径を変えることのできるものは無かった。
【0006】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、上下に伸縮可能であり、且つ径を変えることのできる鉄筋籠等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決するための第1の発明は、上下に伸縮可能な鉄筋籠であって、鉄筋籠の周方向に間隔を空けて配置された可とう性を有する複数本の螺旋状の軸方向鋼材が、旋回方向を変えて内外に設けられ、内外の軸方向鋼材が交差部で回転可能に接合されたことを特徴とする鉄筋籠である。
【0008】
本発明の鉄筋籠は、可とう性を有する螺旋状の軸方向鋼材を旋回方向を変えて内外に配置し、交差部で回転可能に接合したものであり、内外の軸方向鋼材の交差角が変化することにより、伸長状態と収縮状態とを実現できる。さらに、鉄筋籠は伸長状態で細径、収縮状態で広径となり、鉄筋籠の径を変えることができる。
【0009】
前記鉄筋籠を拡径させるための拡径用治具が前記鉄筋籠の下端部に設けられることが望ましい。前記拡径用治具は、前記軸方向鋼材の下端部が取り付けられた取付部と、前記取付部の下方に設けられた先端部と、前記取付部と前記先端部に両端部を取り付けて放射状に複数本配置されたアームと、を有し、前記アームは、前記先端部を通る鉛直面において回転可能に前記先端部と前記取付部に取り付けられることが望ましい。
上記の拡径用治具を用いることにより、鉄筋籠の下端部を確実に拡径させることができる。また拡径用治具を上記の取付部、先端部、アーム等から成る構成とすることで、簡易な構成の拡径用治具を用いて鉄筋籠を拡径することができる。
【0010】
内側の前記軸方向鋼材と外側の前記軸方向鋼材とが前記鉄筋籠の下端部において連続していることも望ましい。
この場合、鉄筋籠の下端部を押し付けることで、鉄筋籠の下端部を拡径することができる。また軸方向鋼材の連続部分により、鉄筋籠の下端部をコンクリート構造物の底部に確実に定着できる。
【0011】
前記鉄筋籠の径を拘束するための拘束リングが設けられることも望ましい。
これにより、鉄筋籠の拡径部分を必要な部分に限定できる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明の鉄筋籠を、底部に拡幅部を有する立坑内に伸長した状態で建て込み、前記鉄筋籠の下端部を拡径させてその拡径部分を前記拡幅部に配置し、前記立坑にコンクリートを打設することを特徴とするコンクリート構造物の構築方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、上下に伸縮可能であり、且つ径を変えることのできる鉄筋籠等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】基礎100を示す図。
図2】鉄筋籠1を示す図。
図3】基礎100の構築方法について説明する図。
図4】拡径用治具14、14aを示す図。
図5】内外のストランド11a、11bの接合部16の例。
図6】内外のストランド11a、11bの螺旋半径の変化を示す図。
図7】内外のストランド11a、11bの別の接合部110、110a、110a’の例。
図8】内外のストランド11a、11bの下端部同士が連続する例。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0016】
(1.基礎100)
図1は、本発明の実施形態に係る鉄筋籠1を含むコンクリート構造物である基礎100を示す図である。基礎100は例えば鉄塔深礎であるが、これに限ることはない。
【0017】
基礎100は、地盤2に形成した立坑3内にコンクリートを打設して構築され、コンクリートの内部に鉄筋籠1が埋設される。
【0018】
基礎100の下端部には拡幅部101が設けられ、鉄筋籠1の下端部には拡径用治具14が設けられる。鉄筋籠1は、拡径用治具14により拡幅部101に当たる部分で拡径し、拡径部分が拡幅部101内に埋設される。鉄筋籠1の拡径部分の上端には拘束リング13が設けられ、拘束リング13の上では鉄筋籠1が一定の径となっている。
【0019】
(2.鉄筋籠1)
図2は鉄筋籠1を示す図である。鉄筋籠1は上下に伸縮可能であり、図2(a)は鉄筋籠1が完全に伸びた状態、(c)は鉄筋籠1を完全に縮小させた状態、(b)はその中間の状態を示している。
【0020】
鉄筋籠1は、鉄筋籠1の周方向に間隔を空けて配置された複数本の外側ストランド11aと、同じく鉄筋籠1の周方向に間隔を空けて配置された複数本の内側ストランド11bとを有する。外側ストランド11aと内側ストランド11bは鉄筋籠1の軸方向鋼材であり、螺旋状に配置される。
【0021】
外側ストランド11aと内側ストランド11bの旋回方向は異なっており、本実施形態では、外側ストランド11aが下から上に行くに従って時計回りの方向に回転するのに対し、内側ストランド11bは下から上に行くに従って反時計回りの方向に回転する。内外のストランド11a、11bは、その交差部において回転可能に接合される。なお、内外のストランド11a、11bは、全ての交差部において回転可能に接合される必要は無く、回転可能に接合される交差部を一部の交差部に限定することも可能である。
【0022】
ストランド11a、11bは複数本のPC鋼線を撚り合わせたものであり、可とう性を有する。図2(a)~(c)に示すように、ストランド11a、11bの交差角を変化させることで、鉄筋籠1の全長を伸縮することができる。図2(c)に示すように鉄筋籠1の全長を収縮させれば鉄筋籠1が広径となり、図2(a)に示すように鉄筋籠1を伸長させれば鉄筋籠1は細径となる。
【0023】
(3.基礎100の構築方法)
次に、図3等を参照して鉄筋籠1を用いた基礎100の構築方法について説明する。
【0024】
図3(a)に示すように、本実施形態ではまず地盤2に立坑3を形成する。立坑3の底部には拡幅部31が形成される。
【0025】
その後、鉄筋籠1を収縮した状態で施工現場まで搬送し、鉄筋籠1を伸長してその径を立坑3の径に合わせ、図3(b)に示すように鉄筋籠1を立坑3に建て込む。
【0026】
ここで、伸長後の鉄筋籠1には、拘束リング13と拡径用治具14が取り付けられる。拘束リング13は鉄筋籠1の高さ方向の中間部で鉄筋籠1を囲むように設けられ、拡径用治具14は鉄筋籠1の下端部に設けられる。
【0027】
拡径用治具14は、鉄筋籠1の拡径に用いるものである。図4(a)は拡径用治具14を示す図である。図に示すように、拡径用治具14は、リング材141、先端部142、アーム143、取付部144等を有する。
【0028】
リング材141は、鉄筋籠1の下端部で鉄筋籠1の周方向に配置される。リング材141は、鉄筋籠1の拡径状態の周長より長い線状部材を、少なくとも一部が重なるようにリング状に配置したものである。重複部分の長さが変わることで、リング材141の径が変化する。あるいはリング材141に伸縮可能な線状部材を用い、当該線状部材が伸縮することでリング材141の径が変化するようにしてもよい。
【0029】
取付部144は筒状の部材であり、その内部にリング材141が通される。取付部144には外側ストランド11aと内側ストランド11bの下端部が取り付けられる。
【0030】
また取付部144には、アーム143の上端部が取り付けられる。アーム143の下端部は、先端部142に取り付けられる。先端部142は、取付部144の下方に配置される。アーム143は、先端部142および取付部144に対し、当該先端部142を通る鉛直面内で回転可能に接続され、先端部142を中心として放射状に複数本配置される。
【0031】
図4(a)に示すように、拡径用治具14の先端部142を立坑3の底面に接触させ、この状態から更に鉄筋籠1を下降させると、図4(b)に示すように拡径用治具14のアーム143が外側に広がるように回転する。これによりリング材141の径が広がり、鉄筋籠1の下端部の径が広がる。
【0032】
その他、図4(c)の拡径用治具14aに示すように、リング材141を省略してもよい。この拡径用治具14aは、アーム143aの両端部をいわゆるフォークエンド状に加工し、それぞれ先端部142aと取付部144aに取り付けたものである。
【0033】
先端部142aは、アーム143aの数に対応する複数の鉛直方向の板材1421を、放射状に結合したものである。取付部144aは、鉛直板1441から鉛直方向の突出板1442が内側に突出するように、鉛直板1441と突出板1442を直交させて組み合わせたものである。ストランド11a、11bの下端部は鋼管151に挿入されて樹脂により鋼管151に固定され、当該鋼管151に取付板152が取付けられる。
【0034】
ストランド11a、11bの下端部の取付板152は、取付部144aの鉛直板1441の両面に配置され、ボルト等により鉛直板1441と回転可能に接合される。またアーム143aの両端部は、ボルト等により先端部142aの板材1421、取付部144aの突出板1442と回転可能に結合される。なお図4(c)ではアーム143a、取付部144aをそれぞれ1個のみ図示している。
【0035】
鉄筋籠1の下端部の径が広がった状態を示したものが、図3(c)である。鉄筋籠1の中間部の拘束リング13は、鉄筋籠1の下端部を拡径した時に立坑3の拡幅部31の上端に当たる位置に配置され、拘束リング13で鉄筋籠1の径が拘束されることで、鉄筋籠1の径は立坑3の拡幅部31に当たる位置でのみ広がる。拘束リング13の上方では鉄筋籠1の径が元のまま一定であり、鉄筋籠1が拡径して孔壁に接触することはない。
【0036】
こうして立坑3内に鉄筋籠1を配置した後、立坑3内にコンクリートを打設することで、図1で説明した基礎100が構築される。本実施形態では、基礎100の拡幅部101に鉄筋籠1の拡径部分が埋設されることで、基礎100に引揚力が加わった時に、引揚力が鉄筋籠1の下端部の定着部分から拡幅部101の上面に好適に伝達され、拡幅部101の上方の地盤2により引揚力に抵抗できる。
【0037】
以上説明したように、本実施形態の鉄筋籠1は、可とう性を有する螺旋状のストランド11a、11bを旋回方向を変えて内外に配置し、交差部で回転可能に接合したものであり、内外のストランド11a、11bの交差角が変化することにより、伸長状態と収縮状態とを実現できる。さらに、鉄筋籠1は伸長状態で細径、収縮状態で広径となり、鉄筋籠1の径を変えることができる。
【0038】
また本実施形態では、拡径用治具14を用いることにより、鉄筋籠1の下端部を確実に拡径させることができる。拡径用治具14を前記の先端部142、アーム143、取付部144等から成る構成とすることで、簡易な構成の拡径用治具14を用いて鉄筋籠1を拡径することができる。ただし、拡径用治具14の構成は、鉄筋籠1の下端部を拡径できれば特に限定されない。
【0039】
また本実施形態では、鉄筋籠1が拘束リング13を有していることで、鉄筋籠1の拡径部分を必要な部分に限定できる。
【0040】
しかしながら、本発明が上記の実施形態に限られることはない。例えば本実施形態ではコンクリート構造物として基礎100を構築する例を説明したが、本発明はその他の構造物、例えば筒状構造物を立坑3内に構築する際にも適用可能である。
【0041】
また、本発明で用いる内外のストランド11a、11bは、旋回方向が逆向きの螺旋を描くものである。内外のストランド11a、11bの交差部では、ストランド11a、11bが回転可能に接合されるが、この接合部には、例えば図5(a)に示す接合部16を用いることができる。図5(a)は、接合部16を、ストランド11a、11bの軸方向と直交する断面において示す図である。
【0042】
接合部16は、小金具部161、162による組を一対設け、2組の小金具部161、162のそれぞれでストランド11a、11bを保持し、各組の小金具部161同士を軸材167で回転可能に接合したものである。各組の小金具部161同士、小金具部162同士はそれぞれ同じ形状となっている。
【0043】
小金具部161は、曲面部の一端に平板部を設けた断面を有し、当該平板部には長孔165が形成される。曲面部の他端は、図5(b)に示すように曲面部の外側へと折返された折返し部164となっている。曲面部の途中には、曲面部の外側へと突出する筒状部163が設けられる。
【0044】
小金具部162も、小金具部161と同じく曲面部の一端に平板部を設けた断面を有する。当該平板部には、小金具部161の反対側に突出する筒状の突出部166が設けられ、突出部166の内面にはネジが形成される。頭付きボルト17の軸部を小金具部161の平板部の長孔165から突出部166の内部に通し、当該軸部を突出部166の内面のネジに螺合させることで、小金具部161、162の平板部同士が接合される。
【0045】
一方、小金具部162の曲面部の他端は、図5(b)に示すようにT字状となっている。前記した折返し部164は、小金具部161の幅方向(図5(a)の法線方向に対応する)の両側に一対形成されており、T字の横辺部分がこれらの折返し部164の内側に配置されることで、小金具部161、162の他端同士が係合する。
【0046】
小金具部161、162の曲面部は筒状空間を形成し、ストランド11a、11bは当該筒状空間に通して保持される。前記の長孔165は、当該筒状空間の軸方向(図5(a)の法線方向に対応する)と直交する方向に形成される。
【0047】
各組の小金具部161同士は、筒状部163の位置を合わせて配置される。筒状部163の先端は筒状部163の内側に折り返され、各組の小金具部161同士は、この先端同士が接するように配置される。前記の軸材167はこれらの筒状部163の内部に配置される。軸材167の両端部は軸材167の外側へとフランジ状に張出しており、この張出部分が各筒状部163の先端の折返し部分に係合することで、軸材167が筒状部163から外れないようになっている。
【0048】
ところで、ストランド11a、11bはそれぞれ太さを有するため、螺旋の半径は内外のストランド11a、11bで若干の差があり、その全長も内外のストランド11a、11bで異なる。したがって、内外のストランド11a、11bの接合部の各ストランド11a、11bの長さに対する間隔も異なっている。
【0049】
また図6(a)に示すように、それぞれの螺旋の高さを変えた場合、高さに応じて径が変化する。図6(a)では、ストランド11a、11bの上下端がちょうど上下の位置関係にあるが、螺旋の高さを変えた場合、このようにストランド11a、11bの始点終点の旋回方向の位置が変わらなければ、径の変化は、外側と内側で異なる。
【0050】
そのため、図6(b)に示すように、鉄筋籠1が伸長する(鉄筋籠1が縮径する)と、内外のストランド11a、11bの螺旋半径の差はd1からd2へと大きくなる。従って、鉄筋籠1を伸長すると内外のストランド11a、11bの間隔は大きくなるため、接合部として、この間隔の変化に対応できるものを使用することも望ましい。
【0051】
すなわち、内外のストランド11a、11bの接合部について、ストランド11a、11bを回転可能に接合するのに加え、内外のストランド11a、11bの間隔を可変とするものを用いてもよい。
【0052】
図7(a)は内外のストランド11a、11bの間隔を可変とする接合部110の例であり、一対の挿入部111、頭付きピン112、筒体113等により構成される。
【0053】
挿入部111は筒状の部材であり、一対の挿入部111のそれぞれに外側ストランド11aと内側ストランド11bが挿入される。筒体113は、軸方向の一方の端部が一方の挿入部111に固定され、他方の端部が閉じられる。当該端部には孔114が設けられ、他方の挿入部111に固定された頭付きピン112の軸部が孔114に挿入される。頭付きピン112の頭部は筒体113内に配置され、頭部の径が孔114の径より大きいことにより、頭付きピン112が筒体113から外れることはない。
【0054】
この接合部110は、頭付きピン112が筒体113内を進退することで、矢印に示すように内外のストランド11a、11bの間隔の変化に対応できる。
【0055】
図7(b)は別の接合部110aの例である。接合部110aは、一対の挿入部115と板材116を、ボルト118とナット119により連結したものである。
【0056】
挿入部115は筒状の部材であり、一対の挿入部115のそれぞれに外側ストランド11aと内側ストランド11bが挿入される。各挿入部115は板材116に取り付けられる。板材116は孔117を有し、各板材116が孔117の位置を合わせて配置される。これらの孔117には、一方の板材116側からボルト118の軸部が通され、他方の板材116から突出する軸部の先端にナット119が設けられる。
【0057】
この接合部110aは、両板材116がボルト118の軸部に沿って移動することで、板材116の間隔がボルト118の頭部とナット119の間隔を限度として変化し、矢印に示すように内外のストランド11a、11bの間隔の変化に対応できる。また、外側ストランド11aと内側ストランド11bをそれぞれ2本一組として螺旋状に配置することも可能であり、この場合は図7(c)の接合部110a’に示すように板材116に2つの挿入部115を設け、これらの挿入部115に2本の外側ストランド11aまたは2本の内側ストランド11bを挿入すればよい。
【0058】
なお、前記したストランド11a、11bの間隔の変化は、鉄筋籠1を捩じることで元に戻すことも可能であり、内外のストランド11a、11bの接合部は両ストランド11a、11bを回転可能に接合するだけでも特に問題はない。
【0059】
鉄筋籠1の伸縮に伴う内外のストランド11a、11bの螺旋半径の差を一定にし、間隔を保持するためには、内側のストランド11bの螺旋半径を大きくする、または外側のストランド11aの螺旋半径を小さくする、あるいはその両方が必要になる。したがって、図5に例示したような間隔の変化に対応できない接合部16の場合は、籠全体を捩じればよい。この捩じる角度は、一般の場合、数度から十数度程度であるが、籠の吊り方などの施工方法によっては機構が複雑になるため、そうした場合には、図7のような間隔の変化に対応できる構造とするのがよい。
【0060】
その他、図8(a)に示すように、鉄筋籠1の下端部において、鉄筋籠1の周方向に離れた位置にある内外のストランド11a、11b(例えば、図4(a)に示す鉄筋籠1の下端において同じ傾斜となっている、当該下端において鉄筋籠1の中心に関し対称となる位置にある内外のストランド11a-1、11b-1)の下端部同士をU字状に連続させてもよい。
【0061】
この場合、鉄筋籠1の下端部を立坑3の底部に押し付けることで、図8(b)に示すように鉄筋籠1の下端部に拡径部分を形成し、この拡径部分を立坑3の拡幅部31に配置することもできる。また内外のストランド11a、11bを連続させることで前記した内外のストランド11a、11bの間隔の変化も抑制でき、内外のストランド11a、11bの連続部分により、鉄筋籠1の下端部の基礎100のコンクリートへの定着効果も高めることができる。
【0062】
また、前記の拡径用治具14(14a)を鉄筋籠1の下端部とその上方に複数段設け、これらの拡径用治具14の先端部142(142a)同士を鉛直材で接続してもよい。これにより、図4(b)に示す工程で鉄筋籠1の下端部の拡径用治具14(14a)だけでなくその上方の拡径用治具14(14a)も拡径し、鉄筋籠1の上下の複数箇所で同時に拡径部分を形成することができる。
【0063】
以上、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0064】
1:鉄筋籠
2:地盤
3:立坑
11a:外側ストランド
11b:内側ストランド
13:拘束リング
14、14a:拡径用治具
31、101:拡幅部
100:基礎
141:リング材
142:先端部
143:アーム
144:取付部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8