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特許7422071重金属不溶化固化材及び汚染土壌類の改良工法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】重金属不溶化固化材及び汚染土壌類の改良工法
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/00 20060101AFI20240118BHJP
   C09K 17/02 20060101ALI20240118BHJP
   C09K 17/06 20060101ALI20240118BHJP
   C09K 17/10 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
C02F11/00 101Z
C02F11/00 J ZAB
C09K17/02 P
C09K17/06 P
C09K17/10 P
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020525731
(86)(22)【出願日】2019-06-18
(86)【国際出願番号】 JP2019023984
(87)【国際公開番号】W WO2019244856
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2018118993
(32)【優先日】2018-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592048970
【氏名又は名称】日鉄セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100100192
【弁理士】
【氏名又は名称】原 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【弁理士】
【氏名又は名称】久本 秀治
(74)【代理人】
【氏名又は名称】成瀬 勝夫
(72)【発明者】
【氏名】金沢 智彦
(72)【発明者】
【氏名】西川 奈那
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-044480(JP,A)
【文献】特開2014-205601(JP,A)
【文献】特開平11-171628(JP,A)
【文献】特開2011-236073(JP,A)
【文献】特開2003-246657(JP,A)
【文献】特開2000-096051(JP,A)
【文献】特開2015-025137(JP,A)
【文献】特開2015-160169(JP,A)
【文献】特開2006-205169(JP,A)
【文献】特開2010-207659(JP,A)
【文献】特開2011-256324(JP,A)
【文献】特開2010-159347(JP,A)
【文献】特開2009-079161(JP,A)
【文献】特開2005-162862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F11/00
C09K17/00-17/52
E02D3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重金属としてヒ素及び鉛を含有する軟弱土壌又は汚泥を固化して改良土壌にする共に改良土壌からのヒ素及び鉛の溶出を抑制する重金属不溶化固化材であって、セメント、高炉スラグ及び石膏からなるセメント系固化材と、消石灰を含み(ただし明礬石成分又は硫酸アルミニウムを含まない)、セメント系固化材と消石灰の合計に対し、消石灰の配合量が10~55質量%であることを特徴とする重金属不溶化固化材。
【請求項2】
消石灰が、平均粒径が20μm以下であり、CaOを72.5質量%以上含有する請求項1に記載の重金属不溶化固化材。
【請求項3】
セメント系固化材が、セメント25~90質量%、高炉スラグを5~50質量%及び石膏を5~25質量%含有する請求項に記載の重金属不溶化固化材。
【請求項4】
セメント系固化材と消石灰合計100質量部に対し、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の塩化物及び/又は硫酸塩を2~20質量部配合してなる請求項1に記載の重金属不溶化固化材。
【請求項5】
軟弱土壌又は汚泥を、一軸圧縮強さ100~3000kN/mの改良土壌にするために使用される請求項1に記載の重金属不溶化固化材。
【請求項6】
軟弱土壌又は汚泥を、ヒ素溶出量0.01mg/l以下、又は鉛溶出量0.01mg/l以下の改良土壌にするために使用される請求項1に記載の重金属不溶化固化材。
【請求項7】
ヒ素及び鉛を含有する軟弱土壌又は汚泥を改良して強度を高める共に上記重金属の溶出を抑制する軟弱土壌又は汚泥の改良工法であって、請求項1に記載の重金属不溶化固化材を土壌又は汚泥に混合することを特徴とする軟弱土壌又は汚泥の改良工法。
【請求項8】
軟弱土壌又は汚泥に対し、消石灰添加量が5~55kg/mになるように、重金属不溶化固化材を土壌又は汚泥に混合する請求項に記載の軟弱土壌又は汚泥の改良工法。
【請求項9】
軟弱土壌又は汚泥を、一軸圧縮強さ100~3000kN/mの改良土壌にする請求項に記載の軟弱土壌又は汚泥の改良工法。
【請求項10】
軟弱土壌又は汚泥を、ヒ素溶出量0.01mg/l以下、又は鉛溶出量0.01mg/l以下の改良土壌にする請求項に記載の軟弱土壌又は汚泥の改良工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設汚泥や浚渫土等の軟弱土壌に含まれる重金属の溶出を抑制でき、適切な強度の土壌に改良可能な重金属不溶化固化材、特にヒ素や鉛を含有する軟弱土壌の重金属溶出量を低減し得る不溶化固化材に関する。
【背景技術】
【0002】
現場工事において、建設汚泥や浚渫土等の軟弱土壌に、ヒ素や鉛等の重金属有害物質が含まれていることが報告されている。ヒ素や鉛等の重金属は、環境基準で規制された汚染物質であり、直接摂取することや溶出した水を摂取することで人体に影響を及ぼすおそれがあり、溶出基準値を上回ると、土壌の不溶化処理や吸着工法、遮蔽処理等の措置を行う必要がある。
加えて、建設汚泥や浚渫土等の軟弱土壌の場合、再生利用するために、固化処理によって所定強度の土壌に改良する必要がある。
【0003】
ヒ素や鉛に汚染された土壌の不溶化処理方法として、例えば、Ca/Mg系塩基性物質を添加した後、鉄の硫酸塩/塩酸塩を添加する方法(特許文献1)、焼石膏とAl化合物とCa/Mg含有化合物を混合使用する方法(特許文献2)によって、中性域で不溶化固化することが提案されている。
しかし、特許文献1,2に記載されている方法は、土壌からのヒ素や鉛の溶出を抑制することは可能であるものの、不溶化後における改良土壌の強度発現性が低く、軟弱土壌の再生利用には不十分である。
ヒ素含有汚泥の処理について、不溶化剤による不溶化処理工程、固化材による固化処理工程、及び乾燥剤による乾燥処理工程からなる三工程の処理方法(特許文献3)が提案されているが、工程が煩雑であり、現場施工に不向きである。また、ヒ素汚染土壌を200~700℃で加熱処理した後、Ca化合物と水を添加する処理方法(特許文献4)も提案されているが、こうした高温加熱処理も、現場での施工に適さない。
【0004】
他方、セメントは、軟弱土壌のセメント系固化材として汎用されており、重金属の不溶化にも有効である。しかし、粘土分の多い土壌や重金属含有量の多い土壌に対しては、従来のセメント系固化材ではヒ素や鉛の不溶化には十分とはいえず、重金属の溶出環境基準を満たすためにセメント系固化材の添加量を多くすると、改良土壌の強度が過剰になり軟弱土壌の再生利用に支障を来す懸念がある。
【0005】
特許文献5~9は、各種のセメント系固化材又は不溶化材を開示する。すなわち、特許文献5は、石膏と、生石灰又はセメントと、高炉スラグ微粉末とを混合した主材と、主材による土壌の強アルカリ化を抑制するpH調整剤とからなる汚染土壌の不溶化材を開示する。特許文献6は、土壌用セメント系固化材に、消石灰と軽焼ドロマイトとを所定比で配合してなるセメント系固化材用添加材、及び火山灰質土壌改良方法を開示する。特許文献7は、セメントクリンカ、石膏及び消石灰を含んでなる土壌固化材において、消石灰として粒子径30μm以上の粒子を5~40体積%含有する消石灰を用いることを開示する。特許文献8は、ポルトランドセメントと高炉スラグと石膏とを所定割合で含む重金属汚染土壌用セメント系処理材、及び重金属汚染土壌の固化不溶化処理方法を開示する。特許文献9は、セメント系固化材にセメント焼成炉プレヒーターから抽出されたセメント原料粉末(プレヒーター原料)を混合して用いる地盤改良工法を開示する。プレヒーター原料中には、セメント原料中の石灰石が熱分解して生成した生石灰が多く含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-205169号公報
【文献】特開2010-207659号公報
【文献】特開2005-103429号公報
【文献】特開2006-167617号公報
【文献】特開2012-055819号公報
【文献】特開2011-256324号公報
【文献】特開2010-159347号公報
【文献】特開2007-222694号公報
【文献】特開2000-120059号公報
【発明の概要】
【0007】
本発明は、ヒ素及び鉛を含有する軟弱汚染土壌のヒ素及び鉛の溶出量を抑制し、かつ改良土壌として適切な強度発現性を示し得る重金属不溶化固化材、及び汚染土壌類の改良工法を提供することを目的とする。
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために、特定のセメント系固化材に消石灰を組み合わせることによって、上記課題を解決し得ることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、重金属としてヒ素及び鉛を含有する軟弱土壌又は汚泥を固化して改良土壌にする共に改良土壌からのヒ素及び鉛の溶出を抑制する重金属不溶化固化材であって、セメント、高炉スラグ及び石膏からなるセメント系固化材と、消石灰又は軽焼ドロマイトを含み、セメント系固化材と消石灰又は軽焼ドロマイトの合計に対し、消石灰の配合量が10~55質量%であることを特徴とする重金属不溶化固化材である。
【0010】
上記消石灰としては、平均粒径が20μm以下であり、CaOを72.5質量%以上含有するものが適する。上記軽焼ドロマイトとしては、CaO・MgOを93.0質量%以上含有するものであり、粉末度は5000cm/g~7000cm/gが適する。また、上記セメント系固化材としては、セメントを25~90質量%、高炉スラグを5~50質量%、石膏を5~25質量%含有するものが適する。
【0011】
上記重金属不溶化固化材は、上記セメント系固化材と消石灰又は軽焼ドロマイトの合計100質量部に対し、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の塩化物及び/又は硫酸塩を2~20質量部配合することができる。
【0012】
上記重金属不溶化固化材は、軟弱土壌又は汚泥を、一軸圧縮強さ100~3000kN/mの改良土壌にするために、ヒ素と鉛の溶出量を各0.01mg/L以下の改良土壌にするために好適に使用される。
【0013】
また、本発明は、ヒ素及び鉛を含有する軟弱土壌又は汚泥を改良して強度を高める共に上記重金属の溶出を抑制する軟弱土壌又は汚泥の改良工法であって、上記の重金属不溶化固化材を土壌又は汚泥に混合することを特徴とする軟弱土壌又は汚泥の改良工法である。
軟弱土壌又は汚泥を、一軸圧縮強さ100~3000kN/mの改良土壌にしたり、ヒ素溶出量0.01mg/l以下、又は鉛溶出量0.01mg/l以下の改良土壌にする場合に好適な工法である。
【0014】
本発明の重金属不溶化固化材によれば、簡易に、ヒ素及び鉛を含有する軟弱土壌又は汚泥類を適切な強度の改良土壌に固化でき、かつ、ヒ素及び鉛の溶出量を環境指定基準以下に抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の重金属不溶化固化材は、重金属としてヒ素及び鉛を含有する軟弱土壌又は汚泥(以下、両者を軟弱土壌類又は土壌ともいう。)を固化して改良土壌にする共に、改良土壌からのヒ素と鉛の溶出を抑制する重金属不溶化固化材である。この重金属不溶化固化材は主成分としてセメント系固化材と消石灰又は軽焼ドロマイト(以下、消石灰類ともいう。)を含む。
【0016】
セメント系固化材と消石灰類の配合割合は、両者の合計に対し、消石灰類の配合量が10~55質量%であり、好ましくは20~50質量%である。消石灰類が10質量%未満では、改良土壌の強度が過剰となり、ヒ素や鉛の不溶化も不十分となり易く、再生利用に支障を来す懸念がある。消石灰類の添加量が55質量%を超えると改良土壌の強度が不充分となるだけでなく、pHが高くなることから、鉛の溶出量が増加する。
【0017】
セメント系固化材は、セメントを母材とする固化性の材料であって、軟弱土壌類を効率良く安定化するために、セメントに高炉スラグや石膏を有効成分として添加したものである。セメント系固化材100質量%中に、セメントを25~90質量%、高炉スラグを5~50質量%、及び石膏を5~25質量%含有することがより好ましい。
セメントとしては、JIS規格品(JIS R 5210~5214)あるいは、ポルトランドセメントを製造する際の中間原料であるクリンカーを使用できる。すなわち、ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、エコセメント及び混合セメントが挙げられるが、好ましくはポルトランドセメント、高炉セメントである。
高炉スラグとしては、徐冷スラグ、水砕スラグが挙げられるが、潜在水硬性を有する水砕スラグが適する。
石膏としては、無水石膏が適する。
なお、高炉セメントなどセメント中に高炉スラグや石膏を含むものも存在するが、本発明のセメント系固化材としてセメントに配合される高炉スラグや石膏は、これとは別に加える量であると理解される。
セメント系固化材の製造は、それぞれの粉末を混合、あるいは混合粉砕のいずれも使用できる。セメント系固化材の粒径は、ブレーン比表面積が4000cm/g以上、好ましくは5000cm/g以上である。
セメント系固化材に消石灰又は軽焼ドロマイトを配合した重金属不溶化固化材の粒径は、消石灰を配合する場合、ブレーン比表面積が7000cm/g以上、好ましくは8000cm/g以上である。軽焼ドロマイトを配合する場合、ブレーン比表面積が5000cm/g以上、好ましくは6000cm/g以上である。上限は特に限定されないが、粉砕限界の観点から、12000cm/g程度である。
【0018】
消石灰又は軽焼ドロマイトの配合割合は、重金属不溶化固化材において10~55質量%の範囲とすることがよい。
消石灰としては、JIS規格品(JIS R 9001)を使用できる。好ましくは特号であり、CaO分を72.5質量%以上含有するものが適する。また、消石灰には、土壌と混合した際に消石灰となり得る化合物を含む。好ましくは生石灰である。
また、消石灰の平均粒径(d50)は、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下である。
軽焼ドロマイトとしては、JIS規格品(JIS R 9001)を使用できる。好ましくは特号であり、CaO・MgO分を93.0質量%以上、MgO分を30.0質量%以上含有するものが適する。
粉末度(比表面積)は、好ましくは5000~7000cm/gである。ここで、粉末度は、軽焼ドロマイトをセメント固化材等と混合、粉砕した後の数値である。
【0019】
本発明の重金属不溶化固化材は、ヒ素、鉛の溶出量を抑制するために、上記セメント系固化材と消石灰類に加えて、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の塩化物及び/又は硫酸塩を配合するとよい。
塩化物としては、好ましくは塩化カルシウム、又は塩化ナトリウムが挙げられ、硫酸塩としては、好ましくは硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、又は硫酸カルシウムが挙げられ、これらを単独又は二種以上を混合して使用できる。
塩化物及び/又は硫酸塩は、上記セメント系固化材と消石灰類の合計100質量部に対し、2~20質量部を配合することがよく、好ましくは7~15質量部である。
【0020】
本発明の重金属不溶化固化材には、必要によりコンクリート混和材や無機粉末などその他の成分を配合し得る。また、重金属不溶化固化材は配合成分を事前に混合してもよく、施工現場で同時に混合してもよいが、事前に混合しておけば、製品の品質安定性が優れる。
【0021】
本発明の重金属不溶化固化材は、軟弱土壌又は汚泥を処理して改良土壌とするために使用される。
軟弱土壌としては、一般に泥土と言われ、建設ないし浚渫等により発生する土壌のうち流動性を呈する状態のものであって、強度としては、コーン指数200kN/m2未満であるか、あるいは一軸圧縮強さが概ね50kN/m2以下の土壌がある。
汚泥としては水槽、川、池、湖沼、海底等に堆積したものがあるが、これらは水分量が多く、流動性が大きいので、陸地に放置してある程度乾燥させるか、水分量の少ない土壌と混合して事前処理して含水量を調整することがよい。
【0022】
土壌の状態としては、含水比が10~200質量%、好ましくは20~50質量%の土壌であることがよい。重金属不溶化固化材が固化して強度を発現するためには適当な水分が必要であるが、過剰であると強度向上効果が劣る。
また、湿潤密度としては、1~3g/cm、好ましくは1.5~2.50g/cmの土壌に適する。
加えて、重金属としてヒ素と鉛を含む軟弱土壌類が対象である。ヒ素と鉛の含有量は特に限定されないが、土壌1kg当たり、各1.0mg以上、好ましくは10.0mg以上含むことがよい。上限には制限はないが、200mg程度以下であれば、固化後の改良土壌において、排出基準値(0.01以下)の溶出量に低減できる。
特に、粘土を多く含む軟弱土壌において、本発明の固化材や改良工法は有効である。土壌は通常、粘土と砂とから構成されるが、粘土が多い土壌は粘性土、逆に砂が多い土壌は砂質土と言われる。本発明は、粘土と砂の合計量に対して粘土を50質量%以上含む粘性土、又は粘土を30質量%以上含む砂質土を処理するのに有効である。
【0023】
本発明の重金属不溶化固化材を使用して軟弱土壌類の不溶化固化処理する場合、処理対象の軟弱土壌類1mに対し、重金属不溶化固化材を、10~300kg、好ましくは30~200kg、特に好ましくは50~150kg使用することがよい。また、重金属不溶化固化材に含まれる消石灰類の添加量としては、軟弱土壌類1mに対し、5~55kgの範囲が好ましい。より好ましくは10~55kgの範囲である。
【0024】
本発明の重金属不溶化固化材は、軟弱土壌類を一軸圧縮強さ100~3000kN/mの改良土壌にすることが可能となる。特に、一軸圧縮強さ300~2000kN/mの改良土壌、さらに800~1800kN/mの改良土壌にすることが可能となる。
本発明の重金属不溶化固化材は、上述のとおり軟弱土壌類を所定強度に固化できると共に、ヒ素と鉛の溶出量を低減できる。好ましくはヒ素又は鉛の溶出量の少なくともいずれかを環境基準値(0.01mg/L以下)にすることも可能となる。なお、溶出量の測定は実施例の条件に従う。
【実施例
【0025】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り部は質量部であり、%は質量%である。
【0026】
重金属不溶化固化材に使用した材料を次に示す。
普通ポルトランドセメント(OPC) 日鉄セメント社製、ブレーン比表面積3340 cm2/g
高炉スラグ 日本製鉄社製
無水石膏 タイ産
消石灰特特選 北海道石灰化工社製 (CaO:73.5%,平均粒径:4.8μm)
軽焼ドロマイト 黒崎播磨社製 (CaO・MgO:97.0%、MgO:39.5%、粉末度:6140 cm2/g)
【0027】
上記OPC単体をセメント系固化材(I)とした。セメント(I)とも言う。
上記OPC57.0質量部、高炉スラグ34.7部及び石膏8.3部を、混合、粉砕して、ブレーン比表面積6310cm2/gのセメント系固化材(II)とした。セメント(II)とも言う。
【0028】
下記の土壌材料及び重金属化合物(試薬)を使用し、温度50度で2日間乾燥させた土と蒸留水に重金属試薬を溶解させたものを、ソイルミキサーで3分間混合することで、含水比、重金属量を調整した模擬汚染土壌を作成した(土壌A~E)。
荒木田土 あかぎ園芸製
砕砂 白老産
8号珪砂 東北珪砂社製
ひ酸水素二ナトリウム七水和物(特級) 関東化学社製
硝酸鉛(II) 関東化学社製
【0029】
土壌A~Eの配合組成、土質、含水比、密度及び重金属含有量を表1に示す。
表1において、湿潤密度の単位は(g/cm3)であり、ヒ素、鉛の含有量(上段)の単位は(mg/kg)であり、ヒ素、鉛の溶出量(下段)の単位は(mg/L)である。配合量は部である。
なお、溶出量の測定は、環境省告示46号に準拠して検液を作製し、ICP発光分光分析法によって測定した。
【0030】
【表1】
【0031】
参考例1~4
土壌A~Dに、セメント系固化材(II)を100kg/m3となるように混合して、7日後及び28日後のヒ素溶出量と一軸圧縮強さを測定した。結果を表2に示す。
【0032】
【表2】
【0033】
表2から、土壌中の砂の量が増えるほどヒ素の溶出量は減少し、参考例4の土壌Dでは、セメント系固化材においても環境基準値以下までヒ素の不溶化が可能であることが分かる。しかし、粘土(荒木田土)が増えるほどヒ素溶出量が増加し、セメント系固化材では不溶化が困難であることが分かる。
【0034】
実施例1~8、比較例1~5
上記土壌Eに対し、セメント系固化材(II)と消石灰を配合してなる重金属不溶化固化材を混合処理して、7日後の溶出量と一軸圧縮強さを測定した。結果を表3に示す。なお、表3には、重金属不溶化固化材のブレーン比表面積も示す。
【0035】
【表3】
【0036】
表3から、消石灰を配合しないと、ヒ素の不溶化が不十分となり、消石灰量が増えるとともに、ヒ素の溶出量も減少するが、鉛の溶出量が増加することが分かる。また、セメント系固化材(II)に代えて、OPC単独のセメント系固化材(I)を使用した場合は、鉛又はヒ素の不溶化が不十分となることが分かる。このことから、セメント系固化材(II)に含まれている高炉スラグが溶出量の抑制に有効であることが分かる。すなわち、OPC、高炉スラグ、石膏と消石灰(10~55質量%)とすることで、ヒ素と鉛の溶出量を環境基準値以下とすることができる。
【0037】
実施例9~14
上記模擬土壌Eに対し、セメント系固化材(II)と消石灰に加えて塩化物を配合してなる重金属不溶化固化材を混合処理して、7日後の溶出量と一軸圧縮強さを測定した。結果を表4に示す。なお、表4には、重金属不溶化固化材のブレーン比表面積も示す。
【0038】
【表4】
【0039】
実施例15~20
上記模擬土壌Eに対し、セメント系固化材(II)と消石灰に加えて硫酸塩を配合してなる重金属不溶化固化材を混合処理して、7日後の溶出量と一軸圧縮強さを測定した。結果を表5に示す。なお、表5には、重金属不溶化固化材のブレーン比表面積も示す。
【0040】
【表5】
【0041】
表4、5から、セメント系固化材(II)と消石灰に加えて塩化物又は硫酸塩を配合してなる重金属不溶化固化材を使用することにより、鉛溶出量を更に抑制できることが分かる。
【0042】
実施例21~27
上記土壌E(表3と同条件の土壌)に対し、セメント系固化材(II)と軽焼ドロマイトを配合してなる重金属不溶化固化材を混合処理して、7日後の溶出量と一軸圧縮強さを測定した。結果を表6に示す。なお、表6には、重金属不溶化固化材のブレーン比表面積も示す。
【0043】
【表6】
【0044】
表6から、軽焼ドロマイトにおいても消石灰と同様に、ヒ素、鉛の不溶化効果が認められ、ヒ素や鉛の溶出量を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、簡易に、ヒ素及び鉛を含有する軟弱土壌又は汚泥類を適切な強度の改良土壌に固化でき、かつ、ヒ素及び鉛の溶出量を環境指定基準以下に抑制できる。よって、重金属で汚染された軟弱土壌類の強度を向上させると共に、ヒ素及び鉛の溶出量を抑制し得る重金属不溶化固化材、及び軟弱土壌又は汚泥の改良工法として、非常に有用である。