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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】手持ち式電動工具
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/02 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
B25F5/02
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020571716
(86)(22)【出願日】2019-06-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-11
(86)【国際出願番号】 EP2019066732
(87)【国際公開番号】W WO2020002269
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-06-24
(31)【優先権主張番号】1830206-7
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】502212604
【氏名又は名称】アトラス・コプコ・インダストリアル・テクニーク・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンソン カール ゴラン
(72)【発明者】
【氏名】ザンダー ハンス ヨハン アルフレド
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0090216(US,A1)
【文献】米国特許第05052496(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具の長手軸に沿って配置された動力伝達系組立体(100)と、前記動力伝達系組立体を収容するように構成されているハウジング(10)と、保持リング(20)とを備える手持ち式電動工具(1)であって、
前記ハウジングは、組み立てられると、実質的に円形断面を有する円錐形外面部(10a)を含むハウジング(10)を形成するように構成されている第1の部分(11)及び第2の部分(12)を備え、
前記保持リングは内面(21)を備え、前記内面は、前記円錐形外面部(10a)と協働するように構成されている円錐形内面部(21a)を備え、前記円錐形内面部(21a)及び前記円錐形外面部(10a)が互いに対して軸方向に変位すると、前記保持リングによって半径方向力が前記第1及び第2のハウジング部分に作用し、これによって、前記第1及び第2のハウジング部分が押し付けられるように構成され、
前記保持リングの前記内面は、ねじ山(22)をさら備えている、
ことを特徴とする電動工具。
【請求項2】
前記ハウジングは第1の端部を有し、前記外面部(10a)は前記第1の端部に形成され、前記実質的に円形の外面部(10a)は組立ハウジングの第1の端部開口を形成するように構成されている、
請求項1に記載の手持ち式電動工具。
【請求項3】
前記第1の端部は前記手持ち式電動工具の遠位端(D)である、
請求項2に記載の手持ち式電動工具。
【請求項4】
ユーザーによって把持されるように構成されているハンドル部(P)をさらに備え、前記ハンドル部は前記円錐形外面部に隣接して配置される、
請求項2または3に記載の手持ち式電動工具。
【請求項5】
前記ハウジングの前記第1及び第2の部分は、前記ハウジングの第1及び第2の半部分を形成し、前記第1及び第2の半部分は、長手方向中心線に平行な平面での断面によって定められる、
請求項1から4のいずれか1項に記載の手持ち式電動工具。
【請求項6】
前記動力伝達系組立体に結合されたねじ付きスリーブ(30)をさらに備え、前記ねじ付きスリーブは、前記保持リングの前記内面の前記ねじ山と協働するねじ山(31)を備える、
請求項5に記載の手持ち式電動工具、
【請求項7】
前記ねじ付きスリーブは、前記組立ハウジングの端部開口を少なくとも部分的に貫通して延びるように構成されている、
請求項2から4のいずれか1項に記載の手持ち式電動工具。
【請求項8】
前記ハウジングの前記第1及び第2の部分のうちの少なくとも一方は、前記第1及び第2の部分のうちの少なくとも一方の内面に配置されたピン(111、112)を備え、前記動力伝達系組立体は、外側スリーブ(110)を備え、前記外側スリーブは、前記ピンを受け入れるようになっている孔(120)を備え、前記ピンと前記孔の縁部(120a)との間の接触圧は、前記組立ハウジングと前記動力伝達系組立体との間の相対移動によってもたらすことができるようになっている、
請求項2から4のいずれか1項に記載の手持ち式電動工具。
【請求項9】
前記組立ハウジングと前記動力伝達系組立体との間の前記相対移動は、前記ねじ付きスリーブ及び前記保持リングの相対回転によってもたらされる軸方向の相対移動である、
請求項8に記載の手持ち式電動工具。
【請求項10】
前記ピンは、接地への電気接続をもたらすようになっている、
請求項8又は9に記載の手持ち式電動工具。
【請求項11】
請求項2から4および請求項7から10のいずれか1項に記載の手持ち式電動工具を組み立てるための組み立て方法であって、
第1のハウジング部分を準備して動力伝達系組立体を前記第1の部分の中に配置するステップと、
第2のハウジング部分を準備して前記第2の部分を前記第1の部分の上に配置し、それによって前記動力伝達系組立体を少なくとも部分的に取り囲むステップと、
保持リングを準備して前記保持リングと前記組立ハウジングとの間の軸方向変位をもたらし、それによって、前記ハウジングの第1及び第2の部分の間に半径方向力を提供して前記第1及び第2のハウジング部分を押し付けるステップと、を含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記動力伝達系組立体に結合されたねじ付きスリーブを準備して、前記保持リングと前記ねじ付きスリーブとの間の相対回転によって前記動力伝達系組立体とハウジングとの間に軸方向変位をもたらすステップ、をさらに含む、
請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略的には手持ち式電動工具に関し、より詳細には、ハウジング及びこのようなハウジング用の保持リングを備える手持ち式電動工具、及び、このような電動工具を組み立てる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電動工具は、例えば、ねじを締結するために様々な産業で使用されていることが知られている。工具の効率及び耐久性に関する一般的な要求は別として、人間工学は、適切な電動工具を選択する際の重要な要因になっている。電動工具のオペレータは、工具を長い作業時間を通して操作する可能性があり、どんなに些細な不快感であっても主要な懸念事項になり得る。例えば、ハンドルデザインは、作業時の工具の作業性及び快適レベルに直接影響を与えるので、工具のハンドルのデザインは、効率的かつ人間工学的な作業環境をもたらす上で非常に重要であることが明らかになっている。
【0003】
人間工学を改善するために、特別にデザインされたグリップ又はハンドル部を有する締結工具が提案されてきた。さらに、適切な摩擦レベルをもたらすためにハンドル部に特定の材料を使用することが提案されてきた。しかしながら、このようなデザインは、費用がかかる傾向があり、ハンドルに使用されたより軟質の材料は摩耗耐性に劣るので工具の耐用期間が短くなる可能性がある。
【0004】
人間工学を改善するために、支持ハンドル又は類似のものなどの補助支持構造体を使用することも知られている。しかしながら、付加的なグリップ部、支持ハンドル、又は類似の補助構成要素を含むデザインの場合、必要以上の複雑さが電動工具自体の組み立てプロセスに加わる可能性がある。
【0005】
特定の関心分野の1つは、ハンドルが工具の回転軸と同じ方向に延びる電動工具、例えば、直線デザインの工具であり、これはハンドルデザイン上のある特定の制約及び課題を提起する。この形式の工具の1つの例は、例えば、エレクトロニクス産業において小さなねじを締結するために一般的に使用されている形式の工具である。より詳細には、これらの工具は、通常、軽量であり、締結作業は工具を手の中で回転させる傾向があるので、反力トルクは、通常、動作シーケンスの終りにオペレータが吸収する。従って、オペレータが手で工具を把持する工具部分のデザイン及びこの部分と手との間の摩擦は、非常に重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、電動工具のためのハンドルデザインの人間工学の分野の改善の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、改善されたハンドル部を含む改善されたハウジングを備える電動工具を提供することが望ましいであろう。特に、改善された人間工学をもたらすハンドル部を含むハウジングを有し、組み立てが容易な電動工具を提供することが望ましいであろう。これらの問題の1又は2以上に上手く対応するために、独立請求項で定義されるような電動工具及び組み立て方法が提供される。好適な実施形態は従属請求項で定義される。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、工具の長手軸に沿って配置された動力伝達系組立体と、動力伝達系組立体を収容するようになっているハウジングと、保持リングとを備える手持ち式電動工具を提供する。ハウジングは、組み立てられると、実質的に円形断面を有する円錐形外面部を含むハウジングを形成するようになっている第1の部分及び第2の部分を備え、保持リングは、円錐形外面部と協働するようになっている円錐形内面部を有する内面を備え、円錐形内面部及び円錐形外面が互いに対して軸方向に変位すると、リングによって半径方向力が第1及び第2のハウジング部分に作用し、これによって、第1及び第2のハウジング部分が押し付けられるように構成されている。
【0009】
第1の態様によれば、電動工具は、第1及び第2の部分によって形成されたハウジングの外側円錐面と協働するリングの内側円錐面によって、ハウジングの第1及び第2の部分を付勢又は押し付けるようになっている保持リングを包含するデザインによって、上述の問題に対する発明性がある解決策をもたらす。より詳細には、保持リングによって、ねじ、リベット、又は類似のものなどの追加のロック手段は不要であり、実際にはこれらの要素は、保持リングによって置き換えることができるので排除又は少なくとも低減される。これは、工具のハンドル部又はその近傍に設けられるねじ又は類似のものに関しては特に重要であり、これらは、潜在的に有害な不連続部をハウジング構造体及び/又はハンドル部にもたらす可能性がある。これらの要素に取って代わる保持リングによって、これらの問題を排除することができ、ハウジング部分の滑らかで快適な固定をもたらすことができる。従って、ハウジングの人間工学及び/又は工具のハンドル部を著しく改善することができる。
【0010】
さらに、保持リングは、人間工学が改善されるという点だけでなく、より効率的で簡便な組み立て方法が提供されるという点でも好都合である。従って、ハウジングを組み立てる際に、第1及び第2のハウジング部分は、一緒になって組立ハウジングを提供するために、軽く固定する(又は当てる)ことができ、その後、半径方向力によって第1及び第2の部分を一緒に保持するために保持リングを配置することができる。結果として、組立ハウジングは、動力伝達系組立体を収容することができる内側空洞を取り囲むことができ、このような動力伝達系組立体は、モーター、歯車、及び回転軸を含むことができる。保持リング及び協働する円錐面は、好ましくは、それぞれの円錐面が互いに対して移動するときに作用する半径方向力がハウジングを一緒に保持するのに十分に大きいようになっている。すなわち、力はねじ又は当技術分野で一般的に使用される類似のものに相当する。半径方向力は、少なくとも半径方向の成分、すなわち、保持リングの、従ってハウジングの円錐形部分の半径方向の成分を有する力と理解されたい。一部の実施形態において、リングは、さらに、対比色又は表面模様を有するリング外側上の要素などの、別の要素を保持するように適合させることができる。
【0011】
工具は、一般に、ハウジングを結合する手段が一般に工具のハンドル部に又はその近くに配置される形式の工具である。このような工具の例は、直線工具を含み、ここでは程度の差はあるが、円筒形のハンドル部が、工具の端部に設けられ、ハウジングは、一般的に少なくとも第1及び第2の端部で適切な手段によって結合される。このような工具において、当技術分野で知られているようにハウジングを結合する留めねじを工具の端部に設けると、ユーザーには工具の重量を支えるだけでなく、反力トルクを吸収する際に一般的に手に対して工具の回転が加わるので、手に相当心地良くない場合がある。従って、第1の態様による本発明の保持リングによってこのようなねじを排除することは、非常に好都合である。1つの好都合な実施形態において、電動工具は、小さなねじを締結する手持ち式電動工具である。例えば、このような工具は、ねじのピッキングを容易にするために真空を工具の第1の端部に(又は第1の端部に)供給するための内部真空経路又はホースを含み、このような工具に関して、ハウジングの第1及び第2の部分との間に適切な十分に緊密なシールを提供することは、真空を漏洩なく効率的に加えることができる点で特に好都合とすることができる。しかしながら、当業者は、何らかの他の形式の電動工具も本発明の範囲にあると考えられることを認識している。一部の実施形態において、工具は、電動工具を制御するように作動する制御装置をさらに備えるか又はこの制御装置に接続可能とすることができる。1つの実施形態において、電動工具は、例えば、1~50cNmの範囲又は1~25cNmの範囲の低い締付けトルクを提供する工具である。
【0012】
1つの実施形態によれば、ハウジングは、第1の端部を有し、外面部は、第1の端部に形成され、実質的に円形の外面部分は、組立ハウジングの第1の端部開口を形成するようになっている。これによって、ハウジングの第1の部分及び第2の部分の各々は、部分的に円形の円錐形端面を備えることができ、これらの端面は、一緒になって実質的に円形の端部開口を形成するようになっている。
【0013】
1つの実施形態によれば、第1の端部は、電動工具の遠位端である。遠位端とは、工具又はハウジングの前端、すなわち、工具前端のビット及び工具のビットホルダーにより近接して配置されたハウジングの端部と理解されたい。
【0014】
1つの実施形態によれば、電動工具は、ユーザーによって把持されるようになっているハンドル部をさらに備え、ハンドル部は、円錐形外面部に隣接して配置される。例えば、円錐形外面は、ハウジングの遠位端又は前端開口を成すことができ、ハンドル部は、前端に又はそれに隣接して設けることができる。これによって、ねじ又は類似のものを手が工具を把持する位置で排除するという有益な効果は非常に重要である。
【0015】
1つの実施形態によれば、ハウジングの第1及び第2の部分は、ハウジングの第1及び第2の半部分を形成し、第1及び第2の半部分は、長手方向中心線を通る断面によって定められる。これによって、工具の構成要素を配置する必要がある第1及び第2の半部分によって定められたハウジングの空洞へ都合良くアクセスできるので、工具の組み立てが容易になる。例えば、動力伝達系組立体又は他の構成要素は、組み立て時に、ハウジングの第1の半部分の中に好都合に配置することができ、その後、第2の半部分は、ほぼ最終的に組み立てられた構造体上にカバーとして配置することができる。
【0016】
1つの実施形態によれば、保持リングの内面は、ねじ山をさらに備える。このようなねじ山は、円錐面自体上に、又は内面の別個のねじ山部分上に設けることができる。一部の実施形態において、このねじ付けされた部分は、円筒面部分とすることができる。一部の実施形態は、差し込みカップリング又はスナップ作動カップリングなどのクイックカップリングを備えることができる。一部の実施形態において、第1及び第2のハウジング部分は、保持リングの内面のねじ山と協働するようになっているねじ山を備えることができる。
【0017】
1つの実施形態によれば、電動工具は、動力伝達系組立体に結合されたねじ付きスリーブをさらに備え、ねじ付きスリーブは、保持リングの内面のねじ山と協働するようになっているねじ山を備える。これは、動力伝達系に結合されるスリーブが、ねじ付きスリーブと保持リングとの協働を利用して動力伝達系を正しい位置に配置する手段として使用できるという、本発明の別の機能性を提供することができる点で特に好都合である。従って、リングが回転の初期段階でスリーブ上にねじ込まれると、リング及びハウジングの円錐面は、軸方向に変位し、ハウジング部分は生成された軸方向の力によって押し付けられる。しかしながら、その間で最大の係合が得られ、リングとハウジングとの間の軸方向の相対移動が終了すると、代わりに、リングとスリーブとの相対回転は、スリーブ、従って、動力伝達系組立体と保持リングとの間の軸方向の相対移動に変換されるので、動力伝達系組立体をハウジングに対して正しい位置に引き込むことができる。従って、この回転の第2の段階時の相互作用は、保持リングが円錐面の間の最大係合に起因して軸方向の固定位置に保持されるので動力伝達系組立体の直線運動をもたらす、直線アクチュエータのようなものと説明することができる。
【0018】
1つの実施形態によれば、ねじ付きスリーブは、組立ハウジングの端部開口を少なくとも部分的に貫通して延びるようになっている。これによって、スリーブのねじ付き部へのアクセスが容易になる。さらに、特に、円錐形外面部分が組立ハウジングの第1の端部開口を形成する実施形態において、スリーブは、前端開口を貫通して延びることができ、動力伝達系は、上述のように保持リングによって前方に変位させることができる。
【0019】
1つの実施形態によれば、ハウジングの第1及び第2の部分のうちの少なくとも一方は、この部分の内面に配置されたピンを備え、動力伝達系組立体は、外側スリーブを備え、外側スリーブは、ピンを受け入れるようになっている孔を備え、ピンと孔の縁部との間の接触圧は、組立ハウジングと動力伝達系組立体との間の相対移動によってもたらすことができるようになっている。換言すると、ピン及び孔は、ハウジング及び動力伝達系が相対的に変位したときに動力伝達系組立体とハウジングとの間の点又は接触区域、すなわち接続部をもたらす。接触点が確立された後、接触圧は相対移動が増加するに従って高くなることができる。1つの実施形態において、スリーブは、2つの孔を備え、ハウジングは、2本のピンを備える。孔は、スリーブの反対側に(すなわち、180°離れて)設けることができる。
【0020】
1つの実施形態によれば、組立ハウジングと動力伝達系組立体との間の相対移動は、ねじ付きスリーブ及び保持リングの相対回転によってもたらされる軸方向の相対移動である。従って、例えば、保持リングは、上述のように動力伝達系組立体に取り付けられたねじ付きスリーブと協働することができ、孔が設けられた外側スリーブを含む動力伝達系は、上述のように(ピンを含む)ハウジングに対して軸方向に変位するようになっている。これは、少なくとも1つのピンが接地との電気接続をもたらすようになっている実施形態では特に好都合である。従って、保持リングの回転から生じる相対的な軸方向変位によって達成される接触圧は、動力伝達系のスリーブとピンとの間のしっかりした安定した電気的接触を可能にするので、工具及び/又は動力伝達系組立体のための適切な接地への接続が保証される。
【0021】
本発明の第2の態様によれば、上述した実施形態のいずれかによる電動工具を組み立てるための組み立て方法が提供される。この方法は、第1のハウジング部分を準備して動力伝達系組立体を第1の部分の中に配置するステップと、第2のハウジング部分を準備して第2の部分を第1の部分の上に配置し、それによって動力伝達系組立体を少なくとも部分的に取り囲むステップと、保持リングを準備してリングと組立ハウジングとの間の軸方向変位をもたらし、それによって、ハウジングの第1及び第2の部分の間に半径方向力を提供して第1及び第2のハウジング部分を押し付けるステップと、を含む。
【0022】
これにより、電動工具の効率的な組み立てが達成され、組み立て時に、第2の半部分をほぼ最終的に組み立てられた構造体上にカバーとして配置する前に、工具の構成要素を好都合に配置することができるハウジングの第1の半部分によって定められた空洞への都合の良いアクセスを可能にすることができ、保持リングを用いて適切な保持又はロックが好都合に提供される、ハウジングのデザインが好都合に可能になる。組み立て方法は、手動で又は必要であれば軸方向変位をもたらす適切な工具によって実行することができる。
【0023】
1つの実施形態によれば、組み立て方法は、動力伝達系組立体に結合されたねじ付きスリーブを準備して、保持リングとねじ付きスリーブとの間の相対回転によって動力伝達系組立体とハウジングとの間に軸方向変位をもたらすステップをさらに含む。これによって、上述のように、スリーブは、動力伝達系に結合されるので、スリーブと保持リングとの相互作用によってハウジングに対して動力伝達系を位置決めする手段として使用することができるという点でさらに別の発明性がある機能性を提供することができる。
【0024】
本発明のさらなる目的、特徴、及び利点は、以下の詳細な開示、図面、及び特許請求の範囲を検討すると明らかになるはずである。当業者は、本発明の様々な特徴を組み合わせて、以下で説明するもの以外の実施形態を作り出し得ることを認識している。
【0025】
本発明は、添付図面を参照して、以下の例示的な実施形態の例示的かつ非限定的な詳細な説明で説明することになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】1つの実施形態による電動工具の斜視断面図である。
図2】1つの実施形態による電動工具の部品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図面は概略的であり、必ずしも縮尺通りではなく、全体的に本発明を説明するために必要な部品のみを示し、他の部品は省略されるか又は単に示唆される場合がある。
【0028】
図1には、1つの実施形態による、ハウジング10及び保持リング20を備える電動工具1が断面図で示されている。断面図なのでハウジング10の第1の部分11のみが示されている。図1の断面は、工具の長手方向中心線に平行な平面での断面であり、ハウジング10は、実質的に二つに分割されており、例示する第1の部分11はハウジング10の第1の半部である。動力伝達系組立体100は、概略的に示されておりハウジングの第1の部分11に配置されている。動力伝達系組立体100は、モーター、歯車装置(図示せず)、及び上記工具の中心線(図示せず)に沿って延びる軸を備えている。ハンドル部Pは、保持リング20に隣接して工具1の端部に配置されている。
【0029】
図2に参照すると、ハウジング10は、断面でより詳細に示されており、ハウジング、詳細にはハウジングの部分11又は12、保持リング20、及び概略的に示される動力伝達系組立体100を含む。以下、この部分は第1の部分11と呼ぶ。上述したように、ハウジング10の第1の部分11は、第2の部分12(図示せず)と共に組立ハウジングを形成するようになっている。ハウジング10は、ハウジングの第1及び第2の部分11、12の対応する円錐形外面によって形成された、実質的に円形断面を有する円錐形外面部(10a)を備える。従って、ハウジングの第1及び第2の部分11、12の円錐形外面の各々は、円錐形外面10aを構成するために半円形断面を有することになる。
【0030】
次に、保持リング20は、円錐形外面部10aと協働するようになっている円錐形内面部21aを有する内面21を備える。これによって、円錐形内面部21a及び円錐形外面10aが互いに対して軸方向に変位すると、リング20によって半径方向力が第1及び第2のハウジング部分11、12に作用し、その結果、第1及び第2のハウジング部分は押し付けられる。ユーザーが把持するようになっているハンドル部Pは、工具1の同じ端部に、すなわち表面10aに隣接して配置されている。
【0031】
組み立て時、動力伝達系組立体100は、ハウジングの第1の部分11の中に配置することができ、従って、第2のハウジング部分12(図示せず)は部分11の上に配置することができ、従って、この動力伝達系組立体110は少なくとも部分的に取り囲まれ、それによって、円錐形外面10aを含む組立ハウジング10も形成される。その後、第1及び第2の部分11、12を押し付ける半径方向力をもたらすために、保持リング20を表面の10aに隣接して配置した後に表面の10aに対して軸方向に変位させることができる。例示的な実施形態において、保持リング20は、円錐面21aに比べて工具1の遠位端に接近して配置された内面21の円筒形部分上に設けられたねじ山22をさらに備える。ねじ山22は、動力伝達系組立体100に結合されて表面10aによって定められたハウジング10の端部開口を貫通して延びる、ねじ付きスリーブ30のねじ山31と協働するようになっているので、例えば、組み立て時、リング20が回転の初期段階でスリーブ上にねじ込まれると、リング20及びハウジング10の円錐面21a、10aは、軸方向に変位し、ハウジング部分は、上述のように生成された軸方向の力によって押し付けられる。
【0032】
しかしながら、その間で最大の係合が得られ、リング20とハウジング10との間の軸方向の相対移動が終了すると、代わりに、リング20とスリーブ30との相対回転は、スリーブ30、従って、動力伝達系組立体100と保持リング20との間の軸方向の相対移動に変換されるので、動力伝達系組立体100をハウジングに対して正しい位置に引き込むことができる。追加の機能性を提供するために、図2の示す実施形態の動力伝達系組立体100は、外側スリーブ110をさらに備え、この外側スリーブは、2つの孔120a、120bを含む。これらの孔は、ハウジング10が備えるピン111、112を受け入れるようになっており、ピン111、112と孔120a、120bのそれぞれの縁部との接触によって、それらの間で接続を確立することができる。この接触は、実際には、リング20のねじ山及びリング30のねじ山31は上述のように協働するので、スリーブ30がリング20に対して軸方向に変位したときに確立される。ピン111、112並びに孔120a、120bの縁部は導電性であり、ピン111、112を接地に接続する電気接続がもたらされるので、ピンと孔120a、120bとの間の接続は、動力伝達系組立体のための接地への接続をもたらすために利用される。
【0033】
本発明は図面及び前述の説明において詳細に例示され説明されているが、このような例示及び説明は、例示的又は実例であり制限的ではないものとみなされ、本発明は、開示された実施形態に限定されない。当業者であれば、多くの変更例、変形例、及び変更例が特許請求の範囲に定義される範囲で考えられることを理解できる。加えて、開示された実施形態の変形例は、図面、明細書、及び特許請求の範囲を考察することで、クレームされた発明を実施する際に当業者が理解して実施することができる。特許請求の範囲において、用語「備える」は、他の要素又はステップを除外するものではなく、複数形ではない名詞は、複数を除外するものではない。特定の手段が互いに異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを、利益をもたらすために用いることができないことを示すものではない。特許請求の範囲の何らかの参照符号は、特許請求の範囲の範囲を制限すると解釈するべきではない。
図1
図2