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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】加速度変換器
(51)【国際特許分類】
   G01P 15/12 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
G01P15/12 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021145485
(22)【出願日】2021-09-07
(65)【公開番号】P2023038650
(43)【公開日】2023-03-17
【審査請求日】2022-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000142067
【氏名又は名称】株式会社共和電業
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100176337
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】石橋 一宏
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-328469(JP,A)
【文献】特開2006-349525(JP,A)
【文献】特開2003-315358(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102435775(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P15/00-15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速度を電気的出力に変換する検出部を備える加速度変換器であって、
前記検出部は、
歪みゲージと、
前記歪みゲージが取り付けられる本体部を有し、
前記本体部は、自由端および固定端を有する片持ち梁構造であり、前記感度方向に凹む第1凹部を有し、
前記歪みゲージは、前記第1凹部の底面に取り付けられる
加速度変換器。
【請求項2】
前記本体部は、正面視において、前記感度方向と直交する方向の長さは、前記感度方向の長さ以上である
請求項1に記載の加速度変換器。
【請求項3】
前記本体部は、前記感度方向において、前記第1凹部の底面よりも前記本体部の中央に向けて凹む第2凹部をさらに有する
請求項1または2に記載の加速度変換器。
【請求項4】
前記本体部は、金属によって構成され、
前記本体部に取り付けられ、金属によって構成される錘をさらに有し、
前記錘を構成する金属の比重は、前記本体部を構成する金属の比重よりも重い
請求項1~3のいずれか一項に記載の加速度変換器。
【請求項5】
前記本体部を構成する金属の比重に対する前記錘を構成する金属の比重の割合は、6以上である
請求項4に記載の加速度変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加速度変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
加速度を電気的出力に変換することによって加速度を検出する加速度変換器が知られている。特許文献1は、加速度変換器の一例としての振動測定装置を開示している。この振動測定装置は、角柱状の片持ち梁と、片持ち梁に取り付けられる歪みゲージと、片持ち梁の先端に取り付けられる錘とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-91629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記振動測定装置においては、歪みゲージが感度方向と交差する方向の加速度を検出するおそれがある。このため、感度方向の加速度の感度を高める点について、なお改善の余地がある。
【0005】
本発明は、加速度を好適に検出できる加速度変換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係る加速度変換器は、加速度を電気的出力に変換する検出部を備える加速度変換器であって、前記検出部は、歪みゲージと、前記歪みゲージが取り付けられる本体部を有し、前記本体部は、前記感度方向に凹む第1凹部を有し、前記歪みゲージは、前記第1凹部の底面に取り付けられる。
【0007】
上記加速度変換器によれば、本体部は、第1凹部を有するため、感度方向の剛性が低下する。感度方向と直交する方向の加速度の感度が高くなることを抑制しつつ、感度方向の加速度の感度が高められる。このため、加速度を好適に検出できる。
【0008】
本発明の第2観点に係る加速度変換器は、第1観点に係る加速度変換器であって、前記本体部は、正面視において、前記感度方向と直交する方向の長さは、前記感度方向の長さ以上である。
【0009】
上記加速度変換器によれば、本体部の正面視における寸法が上記の関係を満たすため、感度方向と直交する方向の加速度の感度が高くなることがより抑制される。
【0010】
本発明の第3観点に係る加速度変換器は、第1観点または第2観点に係る加速度変換器であって、前記本体部は、前記感度方向において、前記第1凹部の底面よりも前記本体部の中央に向けて凹む第2凹部をさらに有する。
【0011】
上記加速度変換器によれば、感度方向の剛性がより低下するため、感度方向の加速度の感度がより高められる。
【0012】
本発明の第4観点に係る加速度変換器は、第1観点~第3観点のいずれか1つに係る加速度変換器であって、前記本体部は、金属によって構成され、前記本体部に取り付けられ、金属によって構成される錘をさらに有し、前記錘を構成する金属の比重は、前記本体部を構成する金属の比重よりも重い。
【0013】
上記加速度変換器によれば、加速度をより好適に検出できる。
【0014】
本発明の第5観点に係る加速度変換器は、第4観点に係る加速度変換器であって、前記本体部を構成する金属の比重に対する前記錘を構成する金属の比重の割合は、6以上である。
【発明の効果】
【0015】
本発明に関する加速度変換器によれば、加速度を好適に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態の加速度変換器の平面図。
図2図1の変換器本体、および、その周辺の拡大図。
図3図2のD3-D3線に沿う断面図。
図4図1の加速度変換器の本体部を上側から視た斜視図。
図5図4の本体部を下側から視た斜視図。
図6図5の本体部の平面図。
図7図6のD7-D7線に沿う断面図。
図8図6のD8-D8線に沿う断面図。
図9図1の変換器本体の基板取付部、および、その周辺の斜視図。
図10図1の変換器本体が備えるフレキシブル基板の平面図。
図11図1の変換器本体が備える蓋の正面図。
図12図11のD12-D12線に沿う断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る加速度変換器について説明する。
【0018】
<1.加速度変換器の全体構成>
図1は、本実施形態の加速度変換器10(以下では、「変換器10」という)の平面図である。図2は、変換器10の変換器本体20、および、その周辺の拡大図である。図3は、図2のD3-D3線に沿う断面図である。変換器10は、加速度を電気的出力に変換する。加速度変換器10は、例えば、自動車の衝突試験、構造物の衝撃強度の測定試験、または、機械の振動測定試験に用いられる。本実施形態の変換器10は、例えば、自動車の衝突試験に用いられ、感度方向XA(図8参照)の自動車の加速度を検出する。
【0019】
変換器10は、変換器本体20と、コネクタ30と、ケーブル40とを備える。変換器本体20とコネクタ30とは、ケーブル40を介して電気的に接続される。コネクタ30は、変換器10の用途に応じて、例えば、ユニバーサルレコーダ等の任意のハードウェアと接続される。変換器本体20は、検出部50と、ケース60と、変換器用の蓋70(以下では、「蓋70」という)とを備える。
【0020】
<2.検出部の構成>
図3に示されるように検出部50は、本体部80と、フレキシブル基板90と、歪みゲージ100と、錘110と、を備える。
【0021】
図4は、本体部80を上側から視た斜視図である。図5は、本体部80を下側から視た斜視図である。図6は、本体部80の平面図である。図7は、図6のD7-D7線に沿う断面図である。図8は、図6のD8-D8線に沿う断面図である。
【0022】
本体部80は、歪みゲージ100が取り付けられるゲージ取付部81、フレキシブル基板90が取り付けられる基板取付部82、および、ゲージ取付部81と基板取付部82とを繋ぐ連結部83を有する。本実施形態では、本体部80は、ゲージ取付部81と基板取付部82と連結部83とが一体的に形成される。
【0023】
本体部80を構成する材料は、任意に選択可能である。本体部80は、ヤング率が低い材料によって構成されることが好ましい。本体部80がヤング率の低い材料によって構成される場合、本体部80、特にゲージ取付部81の厚みを大きくできるため、歪みゲージ100を曲げの中立軸XO(図4参照)から遠くに配置できる。このため、ゲージ取付部81のたわみ量が同程度であっても、より大きな歪みを発生させることができる。ヤング率が低い材料は、例えば、アルミニウム合金、マグネシウム合金、または、チタン合金である。本実施形態では、本体部80を構成する材料は、アルミニウム合金である。より具体的には、本体部80を構成するアルミニウム合金は、比重が2.8の超々ジュラルミンである。
【0024】
ゲージ取付部81の形状は、歪みゲージ100を取り付けられる形状であれば、任意に選択可能である。本実施形態では、ゲージ取付部81は、円柱に類似する形状である。ゲージ取付部81は、正面視において、感度方向XAと直交する方向XB(図8参照)の長さLBが、感度方向XAの長さLA以上であることが好ましい。感度方向XAと直交する方向XBの剛性が高いため、感度方向XAと直交する方向XBの加速度の感度が高くなりにくい。このため、感度方向XAの加速度を好適に検出できる。本実施形態では、長さLBは、最大の長さLAMAXと等しく、最小の長さLAMINよりも長い。
【0025】
ゲージ取付部81は、感度方向XA(図8参照)に凹む第1凹部81Aおよび第2凹部81Bを有する。ゲージ取付部81に形成される第1凹部81Aおよび第2凹部81Bの数は、任意に選択可能である。本実施形態では、ゲージ取付部81には、2つの第1凹部81A、および、4つの第2凹部81Bが形成される。
【0026】
第1凹部81Aは、ゲージ取付部81の長手方向に延びる形状である。第1凹部81Aは、ゲージ取付部81の一方の端部81Xから他方の端部81Yにわたり形成される。歪みゲージ100(図3参照)は、第1凹部81Aの底面81AXに取り付けられる。本実施形態では、歪みゲージ100は、第1凹部81Aの底面81AXのうちの、一方の端部81Xよりの位置に取り付けられる。
【0027】
第2凹部81Bは、感度方向XAにおいて、第1凹部81Aの底面81AXよりもゲージ取付部81の中央に向けて凹む。このため、第2凹部81Bの底面81BXは、感度方向XAにおいて、第1凹部81Aの底面81AXよりもゲージ取付部81の中央の近くに位置する。感度方向XAの剛性がより低下するため、感度方向XAの加速度を好適に検出できる。4つの第2凹部81Bは、ゲージ取付部81の長手方向において、概ね中央に形成される。図4に示されるように、2つの第2凹部81Bは、第1凹部81Aを介して対向する。図5に示されるように、別の2つの第2凹部81Bは、別の第1凹部81Aを介して対向する。このため、図8に示されるように、ゲージ取付部81のうちの長手方向と直交する方向における第2凹部81Bを通過する断面形状は、十字である。
【0028】
基板取付部82は、ゲージ取付部81および連結部83がケース60に収容された状態において、ケース60から露出する。基板取付部82は、熱収縮チューブ210(図3参照)によって覆われる。基板取付部82は、フレキシブル基板90を取り付けることができる形状であれば、任意に選択可能である。本実施形態では、基板取付部82は、中空の直方体に類似する形状である。基板取付部82は、内部空間82X(図7参照)、フレキシブル基板90が取り付けられる取付面82Y、および、底面82Zを有する。取付面82Yは、一対の第1取付面82A、および、一対の第2取付面82Bを有する。
【0029】
一対の第1取付面82Aは、ゲージ取付部81の上面および下面を構成する平滑面である。一対の第1取付面82Aは、内部空間82Xを介して対向する。一対の第2取付面82Bは、基板取付部82の側面を構成する湾曲面である。一対の第2取付面82Bは、内部空間82Xを介して対向する。
【0030】
図9は、熱収縮チューブ210を省略した状態の基板取付部82、および、その周辺の斜視図である。本実施形態の変換器10は、変換器本体20と、複数のケーブル40とが電気的に接続される。複数のケーブル40は、先端40Aを含む所定部分以外は、束ねられた状態で熱収縮チューブ220(図3参照)によって覆われている。
【0031】
基板取付部82は、ケーブル40を内部空間82Xに導入する導入開口82ZX、および、ケーブル40を内部空間82Xから導出する一対の導出開口82BXを有する。導入開口82ZXは、基板取付部82の底面82Zに形成される。導入開口82ZXの形状は、複数のケーブル40が挿入可能な形状であれば任意に選択可能である。本実施形態では、導入開口82ZXの形状は、円である。導入開口82ZXの形状は、楕円、または、三角形以上の多角形であってもよい。
【0032】
導出開口82BXは、基板取付部82の一対の第2取付面82Bにそれぞれ形成される。一対の導出開口82BXは、内部空間82Xを介して対向する。導出開口82BXの形状は、複数のケーブル40が挿入可能な形状であれば任意に選択可能である。本実施形態では、導出開口82BXの形状は、円である。導出開口82BXの形状は、楕円、または、三角形以上の多角形であってもよい。
【0033】
複数のケーブル40は、導入開口82ZXから内部空間82Xに導入され、分岐する。このため、ケーブル40の配線の自由度が高い。内部空間82Xにおいて、複数のケーブル40のうちの一部は、一対の第2取付面82Bのうちの一方に形成される導出開口82BXから導出し、先端40Aがフレキシブル基板90の電極パターン93とはんだ付けされる。内部空間82Xにおいて、複数のケーブル40のうちの別の一部は、一対の第2取付面82Bのうちの他方に形成される導出開口82BXから導出し、先端40Aがフレキシブル基板90の電極パターン93とはんだ付けされる。複数のケーブル40がこのように配線されているため、平面視において、複数のケーブル40の先端40Aを含む所定部分は、S字状に曲げられる。このため、複数のケーブル40に対してフレキシブル基板90から離間するような力が作用した場合であっても、複数のケーブル40と基板取付部82との摩擦によって、複数のケーブル40がフレキシブル基板90から外れることが抑制される。
【0034】
変換器10は、例えば、検出部50およびケーブル40のうちのケーブル40のみが破損する場合がある。このような場合、ケーブル40を交換可能であることが好ましい。本実施形態の変換器10によれば、ケーブル40が破損した場合、はんだを除去し、ケーブル40の先端40Aが導出開口82BX、内部空間82X、および、導入開口82ZXの順に通過するようにケーブル40を引き抜くことによって、ケーブル40を本体部80から分離できる。このため、ケーブル40の交換を容易に実施できる。
【0035】
図4または図5等に示されるように、連結部83は、円柱形状であり、ピン挿入孔83Aおよび配線孔83Bが形成される。連結部83は、ケース60(図3参照)に収容される。ピン挿入孔83Aは、連結部83の側面に形成され、連結部83の径方向に貫通する孔である。ピン挿入孔83Aには、ピン230(図3参照)が挿入される。ピン230は、中立軸XOの延びる方向、および、中立軸XOを中心軸とする回転方向において、本体部80を拘束する機能、換言すれば、本体部80を位置決めする機能を有する。このため、中立軸XOの延びる方向、および、中立軸XOを中心軸とする回転方向における検出部50の位置決めができる。また、感度方向XAと直交する方向XB(図8参照)の加速度の感度が高くなりにくいため、感度方向XAの加速度を好適に検出できる。配線孔83Bは、連結部83の厚さ方向に貫通する孔である。配線孔83Bは、歪みゲージ100とフレキシブル基板90とを電気的に接続する電線240(図9参照)が挿入される。
【0036】
<3.フレキシブル基板の構成>
図10は、フレキシブル基板90の平面図である。フレキシブル基板90の表面には、複数の電極パターン93が形成されている。フレキシブル基板90は、2つの第1部分91、および、3つの第2部分92を有する。2つの第1部分91と、3つの第2部分92とは、繋がっている。このため、フレキシブル基板90を基板取付部82に巻き付けるように配置することができる。2つの第1部分91のうちの一方は、基板取付部82の上側の第1取付面82Aに取り付けられる。2つの第1部分91のうちの他方は、基板取付部82の下側の第1取付面82Aに取り付けられる。3つの第2部分92のうちの電極パターン93が1つのみ形成されている2つの第2部分92は、基板取付部82の一方の第2取付面82Bに取り付けられる。3つの第2部分92のうちの複数の電極パターン93が形成されている1つの第2部分92は、基板取付部82の他方の第2取付面82Bに取り付けられる。基板取付部82にフレキシブル基板90を折り曲げて配置できるため、検出部50を小型に構成できる。
【0037】
<4.歪みゲージの構成>
本実施形態の歪みゲージ100は、変換器10の使用目的に応じて、任意の公知の歪みゲージを用いることができる。本実施形態では、歪みゲージ100は、半導体歪みゲージである。本実施形態では、歪みゲージ100は、ゲージ取付部81の2つの第1凹部81Aの底面81AXにそれぞれ取り付けられる。換言すれば、本実施形態の変換器10は、2つの歪みゲージ100を有する。なお、変換器10が有する歪みゲージ100の数は、1つ、または、3つ以上であってもよい。例えば、変換器10が4つの歪みゲージ100を有する場合、出力がさらに高められる。
【0038】
<5.錘の構成>
図3に示される錘110は、ゲージ取付部81の一方の端部81X(図4参照)に取り付けられる。このため、感度方向XAの加速度を好適に検出できる。錘110の形状は、任意に選択可能である。本実施形態では、錘110の形状は、ゲージ取付部81が挿入される孔を有する円環である。錘110を構成する材料は、任意に選択可能である。感度方向XAの加速度を好適に検出する観点から、錘110を構成する材料は、本体部80を構成する金属よりも比重の大きい金属であることが好ましい。より好ましくは、本体部80を構成する金属の比重に対する錘110を構成する金属の比重の割合RAは、6以上であることが好ましい。本実施形態では、錘110を構成する材料は、比重16.9のタングステン合金であり、割合RAは、6である。錘110を構成する材料として、比重の大きい金属を用いることによって、錘110の厚さ、および、径方向の寸法を小さくできる、換言すれば、錘110を小型化できる。錘110をケース60の開口62の近傍に配置できるため、例えば、3軸の加速度を検出するために、複数の変換器10を同じ測定対象物に取り付ける場合、複数の変換器10の錘110の位置を近づけることができる。このため、加速度の検出の精度が高められる。
【0039】
<6.ケースの構成>
図3等に示されるケース60は、例えば、中空の直方体形状であり、検出部50の一部を収容するケース内空間60Aを有する。ケース60を構成する材料は、任意に選択可能である。本実施形態では、ケース60を構成する材料は、オーステナイト系のステンレスである。ケース60を構成する材料は、例えば、マルテンサイト系またはフェライト系のステンレスであってもよい。ケース60の上面には、ケース60を貫通する貫通孔61(図2参照)が形成される。ケース内空間60Aのうちの歪みゲージ100の周囲の隙間には、ダンパーとして機能するシリコンオイル等の液体が貫通孔61を介して充填される。ケース内空間60Aのうちの歪みゲージ100の周囲に隙間には、アルゴンおよび窒素等の不活性ガス等の気体が貫通孔61を介して充填されていてもよい。なお、本体部80のうちの連結部83の近傍には、円筒形状のカラー120が取り付けられる。このため、ケース内空間60Aに充填されるダンパーとして機能する液体の体積を減らすことができる。
【0040】
<7.蓋の構成>
蓋70は、ケース60の開口62を閉じるようにケース60に取り付けられる。蓋70がケース60の開口62に取り付けられることによって、ケース内空間60Aが密閉される。例えば、変換器10の使用環境下において、気温が上昇した場合、ケース60の内圧が上昇し、ケース60内の空気が膨張する。このため、ケース60が破損するおそれがある。また、ケース60の内圧が上昇した場合、ケース内空間60Aに充填されているシリコンオイル等の液体が漏れ出すおそれがある。本実施形態では、ケース60の破損、および、ケース内空間60Aに充填されている液体が漏れ出すことを抑制できるように、蓋70が構成されている。蓋70は、ケース60の開口62に形成される段差63に嵌め込まれる。蓋70は、内蓋71および外蓋72を有する。
【0041】
図11は、内蓋71の正面図である。図12は、図11のD12-D12線に沿う断面図である。内蓋71は、封止部71Aおよび補強部71Bを有する。封止部71Aを構成する材料は、ゴムである。封止部71Aの形状は、薄板状である。正面視における封止部71Aの形状は、開口62(図3参照)を閉じることのできる形状であれば、任意に選択可能である。本実施形態では、正面視における封止部71Aの形状は、円である。正面視における封止部71Aの形状は、楕円、または、四角形以上の多角形であってもよい。内蓋71を薄く構成するため、封止部71Aの厚さHAは、例えば、0.04mm以上~0.08mmの範囲に含まれることが好ましい。
【0042】
補強部71Bは、封止部71Aに接合される。補強部71Bを構成する材料は、金属である。ゴムによって構成される封止部71Aに対して、金属によって構成される補強部71Bが接合されているため、内蓋71の剛性が高められる。また、内蓋71を容易に取り扱えるため、変換器10の製造時に開口62に内蓋71を容易に取り付けることができる。補強部71Bは、開口62の段差63に接合される。補強部71Bと段差63との接合方法は、例えば、はんだ付け、または、接着である。補強部71Bを構成する材料は、補強部71Bと段差63との接合方法に基づいて決められる。補強部71Bと段差63との接合方法がはんだ付けである場合、補強部71Bを構成する材料は、例えば、真鍮または銅である。補強部71Bと段差63との接合方法が接着である場合、補強部71Bを構成する材料は、任意の金属である。
【0043】
補強部71Bは、封止部71Aと接合される接合部71BX、および、接合部71BXに形成される貫通孔71BYを有する。接合部71BXの形状は、任意に選択可能である。内蓋71を容易に製造する観点から、接合部71BXの外郭形状は、封止部71Aの外郭形状と実質的に同一であることが好ましい。本実施形態では、接合部71BXの外郭形状は、円である。このため、補強部71Bは、全体として、中央に貫通孔71BYが形成されたリング状である。
【0044】
貫通孔71BYの面積は、任意に選択可能である。ケース60の内圧が上昇し、ケース60内の空気が膨張した場合、封止部71Aがケース60の開口62と反対側に膨らむように変形し、ケース60の容積が実質的に増加するような状態が形成される。このため、ケース60内の空気が膨張した場合に、封止部71Aのうちのより多くの部分が膨らむことができるように、貫通孔71BYの面積は、接合部71BXの面積よりも大きいことが好ましい。
【0045】
補強部71Bの厚さHBは、例えば、0.10mm以上~0.18mmの範囲に含まれることが好ましい。補強部71Bの厚さHBは、封止部71Aの厚さHAよりも厚いことが好ましい。厚さHAに対する厚さHBの割合RBは、例えば、内蓋71の薄さ、および、剛性の観点に基づいて決められることが好ましい。割合RBの好ましい最小値は、例えば、125%である。割合RBが125%以上である場合、内蓋71の剛性が高い。割合RBの好ましい最大値は、例えば、450%である。割合RBが450%以下である場合、内蓋71を薄く構成できる。割合RBの好ましい範囲は、例えば、125%以上~450%以下である。
【0046】
内蓋71の製造方法は、例えば、第1工程、第2工程、第3工程、および、第4工程を含む。第1工程では、補強部71Bを構成する金属の角材が所定の大きさに切断される。第2工程では、封止部71Aを構成するゴムが、第1工程で切断された金属の角材に一体的に成形される。第3工程では、ゴムが一体的に成形された金属の角材がリング状にエッチングされる。第4工程では、金属のリングがゴムとともにポンチで打ち抜かれる。
【0047】
外蓋72は、内蓋71と接触するように、内蓋71よりも外側に取り付けられる。外蓋72は、内蓋71と接合されていない。外蓋72を構成する材料は、任意に選択可能である。本実施形態では、外蓋72は、ゴムによって構成される。外蓋72の形状は、任意に選択可能である。本実施形態では、外蓋72の形状は、円板である。ケース60の開口62が内蓋71および外蓋72によって閉じられているため、ケース60の密閉性が高い。
【0048】
<8.本実施形態の効果>
以上のように構成された変換器10によれば、次の効果を得ることができる。
【0049】
<8-1>
本体部80は、第1凹部81Aを有するため、感度方向XAの剛性が低下する。感度方向XAと直交する方向XBの加速度の感度が高くなることを抑制しつつ、感度方向XAの加速度の感度が高められる。このため、加速度を好適に検出できる。
【0050】
<8-2>
本体部80は、正面視において、感度方向XAと直交する方向XBの長さLBは、感度方向XAの長さLA以上であるため、感度方向XAと直交する方向XBの加速度の感度が高くなることがより抑制される。
【0051】
<8-3>
本体部80は、感度方向XAにおいて、第1凹部81Aの底面81AXよりも本体部80の中央に向けて凹む第2凹部81Bを有する。感度方向XAの剛性がより低下するため、感度方向XAの加速度の感度がより高められる。
【0052】
<8-4>
錘110を構成する金属の比重は、本体部80を構成する金属の比重よりも重いため、加速度をより好適に検出できる。
【0053】
<8-5>
本体部80を構成する金属の比重に対する錘110を構成する金属の比重の割合は、6以上であるため、加速度をより好適に検出できる。
【0054】
<9.変形例>
上記実施形態は本発明に関する加速度変換器が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に関する加速度変換器は、実施形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る。その一例は、実施形態の構成の一部を置換、変更、もしくは、省略した形態、または、実施形態に新たな構成を付加した形態である。以下に実施形態の変形例の幾つかの例を示す。
【0055】
<9-1>
上記実施形態では、本体部80のゲージ取付部81は、4つの第2凹部81Bを有していたが、ゲージ取付部81から少なくとも1つの第2凹部81Bを省略してもよい。また、ゲージ取付部81は、5つ以上の第2凹部81Bを有していてもよい。
【0056】
<9-2>
上記実施形態では、ゲージ取付部81の長手方向の概ね中央に第2凹部81Bが形成されたが、第2凹部81Bは、ゲージ取付部81の長手方向において、一方の端部81Xより、または、他方の端部81Yよりの位置に形成されてもよい。
【符号の説明】
【0057】
10 :加速度変換器
50 :検出部
80 :本体部
81A :第1凹部
81AX:底面
81B :第2凹部
100 :歪みゲージ
110 :錘
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