(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】支持構造を備えた脈管周囲組織焼灼カテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 5/14 20060101AFI20240118BHJP
A61M 31/00 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
A61M5/14 540
A61M31/00
(21)【出願番号】P 2021172863
(22)【出願日】2021-10-22
(62)【分割の表示】P 2019076766の分割
【原出願日】2013-10-23
【審査請求日】2021-11-19
(32)【優先日】2012-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515116283
【氏名又は名称】アブレイティブ ソリューションズ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ABLATIVE SOLUTIONS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィッシェル、デビッド、アール.
(72)【発明者】
【氏名】フィッシェル、ティム、エー.
(72)【発明者】
【氏名】ラグランド、ロバート、ライアン
(72)【発明者】
【氏名】ケント、ダリン、ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】デニソン、アンディー、エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン、エリック、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】バーク、ジェフ、アラン
(72)【発明者】
【氏名】ヘイデン、クリストファー、スコット
(72)【発明者】
【氏名】フィッシェル、ロバート、イー.
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-527428(JP,A)
【文献】特開平06-277294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/14
A61M 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のものを含むカテーテル:
縦方向に延在する中心軸を有する、カテーテル本体;
標的脈管の管腔表面を目指して外側に前進することに適合している、少なくとも二つのガイドチューブ;並びに、
外側に前進させられ、該少なくとも二つのガイドチューブによって誘導されて該標的脈管の該管腔表面に貫入するのに適合している、注入針を有する少なくとも二つの注入チューブ;
ここで、該少なくとも二つのガイドチューブは、
該標的脈管の該管腔表面の内壁に係合する遠位端を備え、該注入針を有する少なくとも二つの注入チューブが前進して該標的脈管の該管腔表面を貫入する間、
該遠位端が該カテーテル本体の一部を中央配置させ、該標的脈管の該管腔表面に対して留まり、且つ、
該遠位端が該標的脈管の該管腔表面に貫入しない。
【請求項2】
前記少なくとも二つのガイドチューブが、完全に拡張した状態を有し、ここで、前記少なくとも二つのガイドチューブの遠位端の面が、前記カテーテル本体の中心軸に平行に配置されている、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記少なくとも二つのガイドチューブが、前記少なくとも二つのガイドチューブの遠位部上に放射線不透過性マーカーを含み、前記標的脈管の前記管腔表面に対する、前記少なくとも二つのガイドチューブの正しい展開の画像的確認を提供する、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記注入針を有する少なくとも二つの注入チューブが、前記少なくとも二つのガイドチューブの遠位端から一定の距離延在する、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記少なくとも二つのガイドチューブが、第一の曲率半径を有する湾曲した遠位部を有し、前記注入針を有する少なくとも二つの注入チューブが、第二の曲率半径を有する湾曲した遠位部を有し、該第一の曲率半径と該第二の曲率半径が互いの差25%以内である、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記少なくとも二つのガイドチューブが、前記中心軸からの同一の拡張直径を有する、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記少なくとも二つのガイドチューブが、前記カテーテル本体の遠位部を前記標的脈管の真の中心の近傍に再現可能に配置する、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記少なくとも二つのガイドチューブが、内部層及び外部層を有する、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項9】
液体注入ポートをさらに含む、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項10】
前記カテーテル本体の遠位部が、前記少なくとも二つのガイドチューブが前進するように適合されている少なくとも2つの開口部を有する、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項11】
前記少なくとも二つのガイドチューブの同時移動を制御するように適合された制御機構をさらに備える、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項12】
前記注入針を有する少なくとも二つの注入チューブの同時移動を制御するように適合された制御機構をさらに備える、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項13】
前記少なくとも二つのガイドチューブの遠位端が、前記標的脈管の前記管腔表面との係合点である、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項14】
前記注入針を有する少なくとも二つの注入チューブが、放射線不透過性マーカーを含む、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項15】
少なくとも一つの注入チューブの管腔内に放射線不透過性ワイヤーをさらに含む、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項16】
前記注入針を有する少なくとも二つの注入チューブのそれぞれが、注入内腔を含む、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項17】
前記注入内腔内に放射線不透過性ワイヤーをさらに含み、ここで、該放射線不透過性ワイヤーが、前記注入内腔の容積を低減させる、請求項16に記載のカテーテル。
【請求項18】
前記カテーテルが、少なくとも三つのガイドチューブと、注入針を有する少なくとも三つの注入チューブとを有する、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項19】
前記カテーテルが、除神経のために腎動脈内に配置されるように構成される、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項20】
前記注入針を有する少なくとも二つの注入チューブが、外弾性膜を貫入するように構成されている、請求項1に記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高血圧、鬱血性心不全、前立腺肥大症(BPH)及び前立腺癌、並びに他の疾患の治療のために組織及び神経線維を焼灼する器具の分野の発明である。
【背景技術】
【0002】
1930年代以降、腎動脈の外層内又はその周囲にある交感神経を破壊又は焼灼することで高血圧が劇的に低減されることが、知られている。早くも1952年には、動物実験における組織焼灼にアルコールが用いられている。具体的には、Robert M.Berneは、「麻酔下及び非麻酔下のイヌにおける除神経された腎臓の血行動態及びナトリウム排出」(Am J Physiol, October 1952 171:(1)148-158)において、イヌの腎動脈の外側にアルコールを塗ることで除神経が引き起こされると、記載している。
【0003】
生体構造が類似しているため、本開示の目的に関して、「標的脈管」という用語は、本明細書では、高血圧又は鬱血性心不全(CHF)の場合には腎動脈、BPH及び前立腺癌の場合には尿道、を意味する。
【0004】
腎除神経に関する最近の技術として、ラジオ波(RF)焼灼カテーテルである、St.Jude Medical社のSimplicityTM Medtronic及びEnligHTNTM、並びにCovidine社のOne Shot システム等の、RFのエネルギー又は超音波のエネルギーを用いるエネルギー送達デバイスが挙げられる。高血圧又はCHFの治療のため、腎動脈内部から交感神経を除神経する現在のRF焼灼技術を用いることには、潜在的なリスクがある。腎動脈の内部から腎動脈壁にRFエネルギーを適用することによる短期合併症及び長期後遺症は、十分には解明されていない。腎動脈内でのこの種のエネルギー適用及び貫壁性腎動脈損傷は、遅発性再狭窄、血栓形成、腎動脈けいれん、破片による腎実質内での塞栓、又は腎動脈内部での他の問題を引き起こす可能性がある。特に、腎動脈内部に解剖学的異常、或いはアテローム性動脈硬化又は線維症が有る場合には、RFエネルギーが均一に送達されず、交感神経焼灼が不均一又は不完全になる可能性もある。この場合、治療の失敗につながる可能性、又は腎動脈の外膜面に広がる交感神経をさらに危険なレベルのRFエネルギーで焼灼する必要が生じる可能性がある。超音波の使用にも、同様な問題があり得る。
【0005】
RFエネルギー送達用のSimplicityTMシステムでは、腎臓の交感神経線維を効果的に円周状に焼灼することもできない。円周状のRFエネルギーを腎動脈内の環状部分に適用する(外膜層外側の交感神経を破壊するために内膜表面にエネルギーを適用する)とすると、内膜、中膜、及び外膜に対する円周状で貫壁性の熱損傷による腎動脈狭窄症を生じるというさらに高いリスクがある。最後に、RFエネルギーを用いる腎動脈の内壁の「焼灼」は、激痛を伴う可能性が高い。RF焼灼腎除神経には長時間を要するので、繰り返して行われる脈管壁の焼灼による激痛を制御するために、鎮静剤の使用が必要であり、時には、非常に高用量のモルヒネ又は他のアヘン剤、及び全身麻酔に近い麻酔が必要となる。したがって、RFベースの腎臓交感神経除去による現在の手法には、多くの実質的な限界がある。超音波又は他のエネルギー送達技術にも、同様な限界がある。
【0006】
血管の内壁を目指して単一の針を拡張させる膨張可能な弾性バルーンを用いる、Sewardらにより米国特許第6,547,803号及び第7,666,163号に記載されているBullfrog(登録商標)マイクロ注入カテーテルは、アルコール等の化学的焼灼液の注入に使用可能であった。しかし、これらの特許が記載も予測もしていないのだが、脈管の全円周周りへの焼灼物質の円周状送達には、複数回の適用が必要であった。Sewardらが示している針の最多本数は二本であって、二本針版Bullfrog(登録商標)は、腎動脈内で用いられる小さなガイドカテーテルに適合するように小型化することが困難であった。針一本のみを用いる場合、カテーテルの端部において全てのデバイスを制御しかつ精密に回転させることは、どうみても困難であって、その後の注入で均等に間隔が空けられない場合には危険である。このデバイスは、神経焼灼剤の送達深さを精確に制御及び調節することもできない。このデバイスには、使用可能な針の長さに関する物理的制約条件もあり、したがって、焼灼剤を好適な深さに、特に内膜が肥厚化した、病変のある疾患腎動脈に注入する能力が制限される。Bullfrog(登録商標)の他の限界は、腎動脈内でバルーンが膨張すると、バルーンが腎動脈の内膜及び中膜を損傷し、さらには内皮細胞剥離を引き起こすため、一時的な腎虚血を引き起こし、また遅発性血管狭窄を引き起こす可能性があることである。
【0007】
JacobsonとDavisは、米国特許第6,302,870号において、薬物を血管の内壁内に注入するためのカテーテルを記載している。Jacobsonらの特許の構想は、それぞれが針の脈管壁内への貫入を制限する柄を有する、外側に拡張する複数の針というものであるが、遠位端に針を有するチューブが回転して外側に湾曲した形になることが設計の基本である。記載の設計では針の遠位端から短い距離を隔てて近接して取り付けられた小円盤状の柄が取り付けられているが、その直径が一定であるため、柄の直径の少なくとも2倍分だけデバイスの総直径が増大し、柄の直径が針の貫入を阻止できるほど十分大きい場合には、デバイスの直径が著しく大きくなる。チューブの直径より大きな直径を有する柄を用いることで、デバイスが大きくなり、針を出す中空軸の内側へと針を完全に戻すこともできなるため、針が中空軸から出たままとなって、偶発的な針刺しによる損傷の可能性が生じる。腎除神経又は心房細動への適用のいずれにせよ、針付きのカテーテルが長いため、そのような回転は困難である。また、貫入を制限する柄は、針の遠位端から一定の距離にある。ある脈管において特定の層を選択的に標的にしたくても、或いは壁厚が異なる脈管において脈管の外膜を大幅に超えて貫入させる必要が有るとしても、貫入深さをその場で調節することはできない。Jacobsonらは、当該注入カテーテルの除神経への使用を想定していない。最後に、Jacobsonらの特許の
図3は、ガイドワイヤー無しの拡張可能な針を覆うシースを示しており、解放された遠位端を有するそのシースは、その脈管系を通っての前進をより困難にしている。また、柄のせいで、針をシース内に完全に後退させる際に、シース内で針が詰まり、押し出しも困難となる可能性がある。
【0008】
早くも1980年には、Klineらが「ラットにおける腎除神経後の機能的再神経支配とノルエピネフリン(NE)に対する過感受性の発現」(American Physiological Society1980:0363-6110/80/0000-0000801.25, pp.R353-R358)において公表しているように、アルコールが動物モデルにおける腎除神経に有効であることが示されている。Klineらは、「残存する全ての神経線維を破壊するため、95%アルコールをその脈管に適用した。腎除神経のためのこの技術を用いることで、我々は、手術の2週間後には、腎臓ノルエピネフリン濃度が50% 以上枯渇する(すなわち<10mg/g組織)ことを見出した。」と述べている。再度1983年の論文「大動脈神経切断ラットにおける腎除神経の動脈圧に対する効果」(Hypertension, 1983, 5:468-475)において、Klineらは再び、手術の間に適用した95%アルコール溶液がラットにおける腎動脈周囲の神経の焼灼に有効であることを、公表した。1990年台以降、複数のポイントで液体を動脈壁内に注入するように設計された、Jacobsonらが記載したような薬剤送達カテーテルはが作成されている。
【0009】
McGuckinは、米国特許第7,087,040号において、単一針から出る液体を注入するための三つの拡張可能な歯先を有する腫瘍組織焼灼カテーテルについて記載している。この歯先は、外側に拡張して腫瘍組織に貫入する。McGuckinのデバイスは遠位端が開放されているため開、この遠位端が先の尖った歯先による不用意な針刺しを防止することはない。また、McGuckinのデバイスでは、先の尖った歯先を、外側に拡張して腫瘍組織に貫入できるような十分な強度とすることが最も重要である。そのような強度を達成するため、これらの歯先の直径は、腎除神経のため液体を注入した後に後退する際に重度の脈管外出血を生じさせるほど大きくする必要がある。このデバイスには、脈管の内壁に対する歯先から遠位開口部までの貫入深さを確実に設定する有効な貫入深さ制限機構も無ければ、貫入深さを事前に設定する調節機構も無い。肝腫瘍の治療については、いくつかの深さでの複数回の注入が必要になると思われるため、歯先貫入深さが連続的に調節可能であることは理にかなっている。しかし、腎除神経については、焼灼液を浅すぎる層に注入して腎動脈の中膜を損傷することや、深すぎる層に注入して腎動脈の外膜内及び外膜周囲層内にある神経に当て損なうことが無いようにするために、貫入深さを精確に調整できること又は使用するデバイスを選択する際に貫入深さを選択できることが重要である。
【0010】
アルコールは、腎除神経にための治療薬として有用であることが歴史的に示され、FDAによって神経の焼灼における使用に適応とされているが、脈管壁厚の多様性に適合するため及び多くの腎動脈神経が腎動脈の外膜の幾分か外側に位置している事実を考慮するためには、貫入深さを調整可能とした、腎動脈周囲の外層内にある交感神経線維の脈管周囲円周状焼灼専用の脈管内注入システムが必要である。
【0011】
本明細書を通して、焼灼液、焼灼溶液、及び/又は焼灼物質のという用語は全て、多くの組織内の神経又は組織を損傷する、破壊する、又は焼灼する意図で人体内の同組織内に送達される液体又はガス状物質を含むように同じ意味で使用される。
【0012】
また、本明細書を通して、血管、脈管壁、動脈、又は動脈壁に適用される内壁又は内表面という用語は同一のもの、すなわち内側が脈管内腔である脈管壁の内表面を意味する。また、注入出口という用語は、注入される液体が出る、針内の遠位開口部として定義される。注入針に関しては、注入出口又は遠位開口部のいずれもが本明細書において同じ意味で使用される。
【0013】
ある構造の「深部」という用語は、「外膜の深部」がある動脈の外膜の外側にある多くの組織を表すように、その構造のかなた又は外側と定義される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
Fischellらは、米国特許出願番号第13/216,495号、第13/294,439号、及び第13/342,521号において、焼灼液を標的脈管の内壁の内部又は深部に送達するために拡張可能な針を用いるいくつかの方法を記載している。ここに本明細書の一部を構成するものとしてこれらの出願の全体を援用する。出願番号第13/216,495号、第13/294,439号、及び第13/342,521号の実施形態には二種類あって、針のみが他のいずれかの構造からも支持されずに外側に拡張するものと、標的脈管の内壁内に前進する際に針を支持する誘導要素として機能するガイドチューブを有するものである。針のみの設計の限界は、脈管貫入後の出血回避のために十分小さな針が用いられる場合、そのような針は、所望される位置に確実かつ一様に拡張するには脆弱すぎる可能性があることである。一つの実施形態における、針同士を互いに接続するための紐又はワイヤーの使用は、当該領域である程度の助けとなる。Fischellらの出願番号第13/294,439号及び第13/342,521号に記載のようなガイドチューブの使用は、こうした支持を大幅に改善するが、支持されていないガイドチューブを一様に拡張し、かつカテーテルの遠位部の中央に好適に配置できるかどうかは、ガイドチューブ自身の形状に依存している。予測通りにカテーテルを中央配置できず、ガイドチューブの拡張を行わない場合、針を標的深さまで精確かつ再現可能に貫入させることは、困難となる。
【0015】
非支持ガイドチューブの別の限界は、注入針がガイドチューブを通って前進する際に、半径方向の支持又は「バックアップ」が無いことである。この結果、注入針が前進する際に、ガイドチューブが脈管壁の内表面から押しのけられる可能性がある。ガイドチューブをバックアップできるほど硬いものとする場合には、カテーテルの遠位部がより剛直となるため、カテーテルの送達能力が制限される可能性があり、標的脈管の内壁に外傷を生ずる可能性がある。ガイドチューブが相当に柔軟なものである場合、注入針が前進する間に、脈管壁の内表面から押しのけられる可能性があり、及び/又は半径方向にずれて、注入部位が標的脈管の中心軸まわりに対称的に配置されない可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願は、脈管周囲組織焼灼カテーテル(PTAC)であって、人体の脈管の外層内又は外層のかなたにある組織を円周状に損傷するための焼灼液を送達することができるPTACを開示する。本技術を用いる組織及び神経の焼灼は、RF焼灼カテーテルの場合に比べて割合に短い時間で完遂することができ、さらに使い捨てのカテーテルのみを用い、他の外部設置の資本的設備を必要としないという利点を有している。また、この技術では、Versed等の短時間作用型麻酔薬の使用が可能であり、麻酔薬の用量を低減して、治療の間に患者が経験する不快感及び疼痛を軽減或いは無くすものである。
【0017】
PTACを用いる主な標的は、腎除神経による高血圧及び鬱血性心不全の治療、並びに尿道内のカテーテルからの前立腺組織焼灼によるBPH及び前立腺癌の治療である。
【0018】
一つ或いは最高でも二つの焼灼点で機能する、Bullfrog注入カテーテルや現在のRF焼灼デバイスとは異なり、本明細書で開示されるデバイスは、脈管周囲に液体を注入するように設計され、脈管の内層の損傷を最小限に抑えながら神経又は他の「標的」組織をより均一に円周状に損傷することが可能である。本明細書において、「円周状送達」という用語は、一つの脈管壁内における少なくとも三つの点での好適な焼灼溶液の同時注入、或いは一つの血管の外膜層(外層)の外側の空間への円周状注入、と定義される。円周状送達を記載していない、米国特許第6,302,870号のJacobsonらのデバイスとは異なり、本明細書に開示されるデバイスは、外側への動きを生じさせるチューブの回転に依存することもなければ、貫入を制限する直径一定の柄を有することもない。その上、Jacobsonらの特許では、チューブ状のシース内に後退するバージョンのデバイスを示しているが、当該チューブは一つの開口端を有しており、Jacobsonらの特許の請求項では、一つの内腔内を流れる液体がカテーテルの遠位端から複数の針を介して出ることを可能にする連結管を収容するために、直径を増大させることが必要とされている。本願の好ましい実施形態では、用いられる連結管がチューブの内腔内に適合しているためにカテーテルの直径が大幅に低減し、カテーテルを人体内の所望の部位に送達することが容易になっている。
【0019】
具体的には、腎動脈周囲の交感神経又は標的脈管の周囲の組織を高い効率で再現可能に焼灼することが可能で、高血圧その他の管理及び治療を改善する、カテーテルシステムが明確に望まれている。本開示による最も重要な改善点は、Fischellらの出願番号第13/294,439号及び第13/342,521号に記載されたガイドチューブの拡張の均一性及び対称性を改善する支持構造が加えられたことである。また、本願の支持構造は、針がガイドチューブを通って標的脈管の内壁内に前進する際に、拡張されるガイドチューブを半径(外側)方向に支持して、より良好にバックアップする。
【0020】
このタイプのシステムは、心臓の左心房への肺静脈口近傍又はこの肺静脈口の壁内にある筋肉線維及び通道組織の高い効率での再現可能な脈管周囲円周状焼灼を可能にすることにより、他の現行技術に勝る大きな利点をも有している。このような焼灼によって、心房細動(AF)及び他の心不整脈を停止させることができた。本願の概念を用いて、尿道前立腺部外側の前立腺組織を焼灼して、前立腺肥大症(BPH)又は前立腺癌を治療することもできた。この手法が持つ他の応用の可能性も、本願の様々な教示から明らかとなり得る。
【0021】
先に記載したFischellらの高血圧の治療に関する出願と同様に、本願では小径のカテーテルであって、先の尖った注入針をその遠位端又はその近傍に有する複数の拡張可能な注入チューブを含み、当該注入針が、当該注入針の標的脈管の内層への貫入及び貫通を支持しかつ誘導するように設計されたガイドチューブを通って前進する、小径のカテーテルが開示される。・米国特許出願番号第13/294,439号におけるFischellらの設計を改良した本発明の基本的実施形態は二種類である。第一の実施形態では、PTACの遠位部内の中空軸を通って前進する、三つ以上の手動で拡張されるガイドチューブが用いられる。各中空軸は、PTACの遠位部の縦軸から外側に湾曲した形状の中心支え部を有している。この事前に形成され湾曲したガイドチューブは、中空軸に従って標的脈管の内表面を目指して外側に前進する。・この設計の要点は、中心支え部による支持(バックアップ)、並びに遠位針を有する注入チューブが脈管壁を通って前進する際に、ガイドチューブが標的脈管の内壁から押しのけられるのを防止する中心カテーテル本体の質量である。具体的には、中空軸の遠位部の一部である外側に湾曲した中心支え部が上記のようにバックアップ又は支持する。ガイドチューブを半径方向に支持することに加えて、中心支え部は、中空軸の遠位端内の開口部と共に、ガイドチューブが一様に間隔をあけること及び横方向に安定化することも支持する。
【0022】
デバイスの中央配置の均一性及び予測可能性並びに標的脈管の内壁との係合位置へとガイドチューブを前進させる際の前進速度制御の向上に関しても、本願はFischellらの出願番号第13/294,439号より著しく勝っている。
【0023】
標的脈管(腎動脈等)に近づくために用いられるガイドカテーテルの遠位部は、通常、標的脈管の縦軸に整列してはいない。そのため、手動で拡張される三つのガイドチューブを用いる実施形態を有する本明細書に開示のデバイスは、いくつかの異なる状況において有利となる。
【0024】
これらの三つのガイドチューブが外側に前進する際、まず一つが標的脈管の内壁に接触し、ガイドチューブが外側にさらに前進すると、最初に接触したガイドチューブは、二番目のガイドチューブが標的脈管の内壁に接触するまで、PTACの本体を標的脈管の内壁から離して標的脈管の中央に押しやる。続いて、接触した二つのガイドチューブは、三番目のガイドチューブが標的脈管の内壁に接触するまで、PTACの本体を標的脈管の中央にさらに押しやる。本明細書のガイドチューブは脆弱な自己拡張型構造ではなく、それぞれがPTACの縦軸を中心として同一の拡張直径を有しているため、PTACの遠位部が標的脈管の真の中心の近傍に再現性良く配置されることになる。ガイドチューブの遠位部上の放射線不透過性マーカーの蛍光透視像によって、ガイドチューブの正しい中央配置が画像的に確認される。ガイドチューブの正しい中央配置は、ガイドチューブが展開した後に、ガイドカテーテルから注入される造影剤によっても確認可能である。
【0025】
このシステムの別の重要な利点は、遠位注入針を有する注入チューブが標的脈管壁を通って展開する/前進する際の、ガイドチューブの安定性及び「バックアップ」支持である。ガイドチューブは、標的脈管の内壁と係合すると、PTAC本体内の中空軸によって支持される。この中心カテーテルの「バックアップ」により、注入針が標的脈管の内壁に貫入して事前に設定された貫入深さまで遠位側に前進する際に、ガイドチューブは変わらぬ位置にあることになる。次いで、焼灼液が送達され、注入針がガイドチューブ内に後退し、ガイドチューブ及び注入針がPTACの遠位部内の中空軸内に後退する。
【0026】
自己拡張型の設計を用いているFischellらの出願番号第13/294,439号の教示を改良した、本発明の第二の実施形態では、管腔内中央配置機構(ICM)に取り付けられたガイドチューブが使用される。ICMの一つの実施形態は、標的脈管の内壁を目指して展開し、かつ注入針が標的脈管壁を通って前進する際にガイドチューブが標的脈管の内壁から押しのけられるのを防止するためにガイドチューブの中央配置、均一かつ対称な拡張、及び半径方向の支持(バックアップ)を改善する、拡張可能なワイヤーカゴ状の構造である。中央配置ICMを有するガイドチューブが自己拡張型である場合に、当該ICMは特に有用である。ICMは、先の第一の実施形態に記載のような手動で拡張可能なガイドチューブをさらに安定させ、バックアップすることもできる。ICMは、ICMの拡張状態を蛍光透視法で確認する際の視覚化を可能とする特定の放射線不透過性マーカーを含むことができる。また、ICMは、ガイドチューブの先端による標的脈管壁の内層の外傷を低減するために、ガイドチューブの先端から標的脈管の内壁までの間隔を最小程度にすることもできる。
【0027】
本明細書に開示のPTACのいずれの実施形態においても、その遠位端又は遠位端近傍に遠位開口部(注入口)を有する注入針の遠位端を介して焼灼液を注入することができる。注入針が事前に設定された距離だけ標的脈管の内壁内に或いは内壁を超えて貫入するようにする、PTACの一部としての貫入制限機構がある。貫入制限機構の好ましい実施形態は、PTACの近位部内に組み込まれており、貫入深さ調整手段を含むことができる。この調整手段には、精確な貫入深さ調整を可能とするマーキングも含まれ得る。
【0028】
PTACの近位端内の機構による貫入深さの調整は、医師による制御又はデバイス製造の間の事前設定のいずれでも良い。前の例では、管腔内超音波法又は他の画像化技術を用いて、脈管周囲腎除神経(PVRD)を実施する所望部位での腎動脈の厚さを特定することができる。その後、臨床医は、貫入深さを適切に調整する。臨床医には利用できない貫入深さ調整法を用いて工場でPTACを事前に設定すること、並びに複数の貫入深さが必要とされる場合に貫入深さの変更を可能とする異なる製品コードで提供することも、想定される。例えば、2mm以上、3mm以上、及び4mm以上等の三つの貫入深さを利用できる。工場での貫入深さの調整の他の利点は、較正が簡単になること、並びに製造されるPTACがさまざまである場合に、精密な貫入深さを有するように工場で最終的に調整して高品質な製品を提供できることである。治験の間に事前に設定された単数又は複数の貫入深さを用い、誤った貫入深さに設定する潜在的なミスを抑えることの認可を求める書類を規制当局に提出できることも、一つの利点である。最後に、工場での製造及び較正による内的調整と貫入深さマーキングによる外的調整の両方をPTACに組み込むことも、想定される。
【0029】
本明細書に開示のPTACに関して、その調整手段は、以下のいずれか一つであることができる:1.デバイス製造の間の、事前に設定された貫入深さの調整及び較正。この場合、その製品には、いくつかの較正済みの貫入深さを有することが表示される。2.PTACの使用前又は使用中でのデバイス操作者による貫入深さの調整。このやり方には、焼灼液が注入される深さを示すPTAC上へのマーキングの利用が含まれる。このやり方は、適切な量の前立腺組織内への送達を可能にするために一連の異なる貫入深さが望ましい、BPH及び前立腺癌の治療用に特に用いられる。
【0030】
理想的には、注入針は、注入チューブが脈管壁から離脱した後に失血が実質的に無いほどに、十分小さくなければならない。本願に開示される実施形態のFischellらの出願番号第13/216,495号並びにJacobsonらの米国特許第6,302,870号に教示の実施形態に勝る大きな利点は、本明細書に開示のガイドチューブのような構造によって支持されるため、小さな(<25ゲージ)注入針を用いても、自己拡張性構造体が、脆弱ではなく、脈管壁に確実に貫入できることである。本明細書に開示の、ICMが取り付けられたガイドチューブは、Fischellらの米国特許出願番号第13/294,439号及び第13/342,521号に記載の支持されていないガイドチューブに勝るさらなる利点をもたらす。別の利点は、ガイドチューブを脈管内で確実に中央配置できること並びに拡張した機構が脈管壁内側に接触する際の外傷が低減されることである。
【0031】
本明細書に開示の、ICMによって支持されるガイドチューブには、いくつかの異なる実施形態がある。いくつかの異なる実施形態として、以下が挙げられる:1.近位部、中心部、及び遠位部を有し、ニチノール等の形状記憶合金製の単一のチューブ又は金属スプリングで構成される、拡張可能な構造体。この構造体の近位部は、遠位注入針を有する注入チューブを誘導するFischellらの米国特許出願番号第13/294,439号及び第13/342,521号のガイドチューブに類似した、ガイドチューブであって良い。中心部及び遠位部は、ICMである。この構造体の中心部は、放射線不透過性マーカーを有して、外傷が最小になるように、拡張して脈管の内壁に接触する。この構造体の拡張可能な遠位部は、ガイドチューブ及び拡張可能な構造体の中心部を支持して、再現可能な拡張を容易にする。この構造体の好ましい実施形態では、遠位部が高い可撓性を有している。本明細書の構造体は、自己拡張性であることができる、又はPTACの近位端にある拡張制御機構(ECM)の操作を介して拡張できる、或いはPTACが自己拡張性ICM及び調整又は拡張促進に使用できるECMを有する場合には、その両方であることができる。2.近位部、中心部、及び遠位部を有し、組み込まれたスプリング部材を有するプラスチック製のガイドチューブを有し、そのスプリング部材がガイドチューブの遠位端から遠位側に延在してICMを形成している、拡張可能な構造体。Fischellらの米国特許出願番号第13/294,439号及び第13/342,521号のガイドチューブに類似したガイドチューブは、遠位注入針を有する注入チューブを誘導する。この構造体の中心部は、放射線不透過性マーカーを有して、外傷が最小になるように、拡張して脈管の内壁に接触する。この構造体の拡張可能な遠位部は、ガイドチューブ及び拡張可能な構造体の中心部を支持して、再現可能な拡張を容易にする。本明細書の構造体は、自己拡張性であることができる、又はPTACの近位端にある拡張制御機構(ECM)の操作を介して拡張できる、或いはPTACが自己拡張性ICM及び調整又は拡張促進に使用できるECMを有する場合には、その両方であることができる。3.Fischellらの米国特許出願番号第13/294,439号及び第13/342,521号のガイドチューブに類似し、遠位注入針を有する注入チューブを誘導する、拡張可能なガイドチューブ。このガイドチューブは、ICMに取り付けられ、膨張可能なバルーンで形成され、膨張可能なバルーンは、PTACの中空軸内の内腔を介して膨張する。
【0032】
通常、本明細書に開示される実施形態の遠位注入針を有する注入チューブは、ガイドチューブの曲率半径に類似した曲率半径を有する事前に設定された湾曲した形状を有する。したがって、ガイドチューブを通って前進する際に、注入チューブは、ガイドチューブの湾曲をなぞり、標的脈管の内壁に対するガイドチューブの位置を変更することがない。ガイドチューブ及び注入チューブの遠位部の曲率半径の差は、±25%以内であるべきであり、理想的には、±10%以内である。
【0033】
ガイドチューブが拡張後に、脈管の内壁に拘束されることなく、デバイスの使用が想定された脈管の最大直径より僅かに大きい直径を達成するように設定されるため、本願の実施形態は、異なる直径を有する脈管において有効である。注入チューブが、ガイドチューブの遠位端から延在して脈管壁を通って貫入する際に、近位方向後方に湾曲することも、本願の実施形態の特性の一つである。
【0034】
貫入深さは精確であることが好ましいため、PTACの近位部又は遠位部のいずれかで用いられるチューブは、ガイドカテーテルを通って腎動脈内で展開する間に伸長しないように限定された延伸性を有しなければならない。例えば、ステンレス鋼製のL605又はニチノール製のハイポチューブは、PTACの近位中空部用に最良の材料である。代わりに、金属強化チューブ又は延伸性が小さくデュロメータ硬度が高いプラスチックを用いることができる。そのようなチューブは、PTACの遠位部が大動脈から腎動脈に入る際、ガイドカテーテル内で直角に近い屈曲部を進むためにより可撓性であることが必要であるため、PTACの遠位部にも適している。
【0035】
遠位注入針を有する注入チューブは、カテーテル本体内の注入内腔と流体連通しており、カテーテル本体内の注入内腔は、PTACの近位端の注入ポートと流体連通している。通常、そのような注入ポートには、焼灼液源への接続に用いられるLuerコネクター等の標準的なコネクターが含まれる。同様に本明細書では、標準的な注射器からの焼灼液の偶発的な注入を不可能にすることにより安全性を向上でき、かつ焼灼剤を注入する際にカテーテル内の死腔を最小化するための、注入ポート用の特製の(近位側)接続具(Luer接続具とは異なる)の使用を想定し記載している。
【0036】
この注入システムでは、大動脈、肺静脈、又は腎動脈、或いは尿路前立腺部の外膜層又はその深部の多くの組織を標的にする場合でも針貫入が安全であるように、動脈壁に貫入する非常に小さなゲージ(25ゲージ未満)の針の使用も想定されている。遠位針が角針又は丸針であり得ること、及び角針を用いる場合には注入出口/遠位開口部が注入チューブ又は遠位針の、角針先端の近位側側面に設けられた小さな放出口(細孔)であり得ること、も想定されている。少なくとも二つの注入チューブがなければならないが、治療対象の脈管の直径及び注入される焼灼液の脈管周囲空間内での拡散能力によっては、三つないし八つの注入チューブがより適切であることもあり得る。例えば、直径が5mmの腎動脈において必要であるのは三つ又は四つの注入チューブである一方、直径が8mmの腎動脈においては五つないし六つの注入チューブが必要となる。
【0037】
本開示の好ましい実施形態では、エタノールが親水性かつ脂溶性であり脈管周囲空間内で急速に拡散するため、焼灼液として使用される。そのため、エタノールの円周状送達に必要なのは三本の針だけであり、デバイスの直径を小さくすることができる。別の神経毒剤にエタノール又は他のアルコールを加えて使用すると、その焼灼剤の脈管周囲空間内での拡散が加速されることも、想定されている。
【0038】
通常、本明細書で開示される自己拡張型PTACの実施形態には、一本の腎動脈の治療から他の腎動脈の治療へと移行する間及び人体からの離脱の間に、展開に先立ってガイドチューブ及びICMを収容する、中空で薄肉のシースが含まれる。このシースは、PTACの遠位端のガイドカテーテル又は導入シースの内部への容易な挿入をも可能にする。このシースは、治療手順の最後に患者の身体からPTACが除去される際に、施術者を可能性のある針刺し及び血液由来病原体から保護することもできる。通常、このシースには、シースの遠位端付近に配置され、施術者に蛍光透視下でその位置を知らせる、放射線不透過性マーカーが含まれる。
【0039】
PTAC全体は、固定された遠位ガイドワイヤーを含むように、或いはガイドワイヤーの内腔がPTACの全長に伸びているオーバー・ザ・ワイヤー式構成又はガイドワイヤーがカテーテル本体からPTACの遠位端に対して少なくとも10cmだけ近位側に出ており、ガイドワイヤーの近位部についてはカテーテル軸の外側に伸びている急速交換構成のいずれかにおいて、ガイドワイヤー上を前進するように、設計されている。いくつかの用途では、遠位ガイドワイヤー無しで柔軟かつ先の細い遠位先端を用いることも、想定されている。
【0040】
固定されたガイドワイヤーのバージョン、又は遠位ガイドワイヤー無しで柔軟かつ先の細い遠位先端を有するバージョンは、遠位直径が最小になるため、好ましい実施形態である。固定されたガイドワイヤーに対して近位側だけが、閉塞部と呼ばれる、PTACの先の細い遠位部である。閉塞部は、PTACの設計における次のような目的を果たす。
1.閉塞部は、PTACがガイドカテーテル内で、大動脈から小孔を通って腎動脈に入る際の屈曲部のような屈曲部を好適に進行するのを可能にする、細径の固定された遠位ガイドワイヤーの部分から直径が増大する、先の細い可撓性部材である。
2.閉塞部の近位部は、ガイドチューブ及びICMを含むPTACシステムの拡張可能な部分を注入針で完全に包囲して拘束するために、上記のシースと対になる。
3.通常、閉塞部には、施術者に閉塞具の位置並びにシースに対する閉塞部の位置を見えるようにすることが可能な、放射線不透過性マーカーが含まれる。
4.腎除神経を含むいくつかの用途で、固定された遠位ガイドワイヤーがなくても本デバイスが安全に前進できるように、閉塞部は先が細く柔軟であることが想定される。
【0041】
ガイドチューブ及び注入針が正確に展開していることを蛍光透視的に可視化することは、非常に望ましい。この目標を達成できるいくつかの方法がある。蛍光透視法を用いて注入針、ガイドユーブ、及び注入チューブを明確に可視化するため、タンタル又はタングステン等の放射線不透過性材料で形成する、或いは金又は白金等の放射線不透過性材料でコート又はマークすることが、想定される。しかし、好ましい方法は、放射線不透過性マーカー帯を各ガイドチューブの遠位端近傍に配置し、かつ放射線不透過性ワイヤーを各注入チューブの内腔内に含ませることである。各注入チューブの内腔内の放射線不透過性ワイヤーは、良好に可視化することに加えて、注入チューブ内の容積或いは死腔を低減させ、PTACの内部をフラッシュするのに必要な液の量を低減させる。
【0042】
脈管壁の当該領域の電気的活動を評価するための診断針としても機能するように、一つ又は複数の注入針がPTACの近位端と電気的に導通可能であることも、想定されている。
【0043】
組織及び/又は神経を焼灼するための電流エネルギー又はRFエネルギーを送達する電源又はRF源に、二つ又はそれ以上の拡張可能な脚部を設置できることも、想定される。
【0044】
腎動脈のある部分における交感神経の永続的な破砕(神経断裂)を最適化するため、本デバイスが、一つ又は複数の神経焼灼物質を同時に又は連続的に注入可能であることも、想定される。使用可能な想定される神経毒性物質として、エタノール、フェノール、グリセロール、比較的高濃度の局所麻酔薬(例えば、リドカイン、或いはブピバカイン、テトラカイン、ベンゾカイン等の他の薬剤)、神経毒性を有する抗不整脈薬、ボツリヌス毒素、ジゴキシン又は他の強心配糖体、グアネチジン、加熱された生理食塩水を含む加熱された液体、高張生理食塩水、低張液体、KCl或いは加熱された上記神経毒性物質が挙げられるが、それらに限定されない。
【0045】
焼灼物質が、(塩分多めの)高張生理食塩水等の高張液体或いは蒸留水等の低張液体であり得ることも、想定される。これらの薬剤は、神経に永続的な損傷を引き起こし、アルコール又は特定の神経毒素と同様に良好に機能し得る。これらの薬剤は、高温、低温、又は室温でも注入可能である。蒸留水、低張生理食塩水、又は高張生理食塩水を、注入量を1mL未満として使用すれば、PTAC使用手順の一つのステップが省かれる。これは、少量のこれらの液体が腎臓にとっては有害ではないことから、カテーテル引き抜きの間に焼灼液が腎動脈に入るのを防止するためにPTACから焼灼液を生理食塩水で完全にフラッシュする必要がなくなるためである。このため、毒性がより高い焼灼液を用いる場合には一本の動脈当たり2回の液体注入が必要であるのに比べ、蒸留水等を使用すれば1回の液体注入で済むことになる。
【0046】
標的の組織又は神経を焼灼又は損傷するために高温の液体を送達するように、PTACカテーテルを加熱された液体又はその蒸気の源に接続することも、想定される。加熱される液体は、生理食塩水、高張液、低張液、アルコール、フェノール、リドカイン、或いは液体のいくつかの他の組合せであって良い。針注入部位及びその周辺の標的の組織又は神経を熱焼灼するため、加熱或いは蒸気化した、生理食塩水、高張生理食塩水、低張生理食塩水、エタノール、蒸留水、又は他の液体を注入針を介して注入することもできる。
【0047】
本開示では、最初に注入される、又は焼灼溶液と混合して注入される、又は焼灼溶液と共に注入されると除神経による何らかの疼痛を解消できる、リドカイン等の麻酔薬の使用も想定される。
【0048】
注入針又は注入チューブを前進させる前に、標的脈管壁(例えば、腎動脈)の厚さ及び構造を正確に測定し、焼灼剤の精確かつ適切な注入深さを把握し設定できるように、マルチスライスCTスキャン、MRI、血管内超音波法(IVUS)、又は光干渉断層影像法(OCT)等の画像化技術を用いることも、想定されている。PTACの使用に先立ってIVUSを用いることは、精確な注入深さを目標として設定するのに、特に有用である。次いで、設定されたこの精確な注入深さを、調整可能な貫入深さ特性を利用することで、又は事前に設定された焼灼液送達用の貫入深さを有する好適なPTACを選択することによって、ねらうことができる。製造の際、貫入深さに従って、パッケージのラベルに異なる製品コードが表示される。
【0049】
腎臓交感神経焼灼における使用のために、本明細書に記載の好ましい手動拡張可能な(「プッシュ式」の)PTACのガイドチューブは、下記のステップで使用される(各ステップは必須ではなく、当業者ならわかるように、短縮することも修正することも可能である):
1.アルコール中隔焼灼などと同様な方法で、心臓カテーテル用又は中隔焼灼用の標準的な技術を用いて患者に鎮静剤を投与する(精通した鎮痛剤及び麻薬性鎮痛剤を用いる))。
2.第一の腎動脈を、標準的な動脈アクセス法を用いて、大腿動脈又は橈骨動脈を介して配置したガイドカテーテルと係合させる。
3.PTACの注入内腔を含む全ての内腔を生理食塩水でフラッシングした後、固定された遠位ガイドワイヤーでPTACの遠位端をガイドカテーテル内に前進させる。閉塞具上又はガイドチューブ上の放射線不透過性マーカーが腎動脈内の所望する位置に達するまで、PTACの遠位部をガイドカテーテルの遠位端を通して前進させる。
4.標的脈管の内壁を目指してガイドチューブが完全に拡張するまで、PTACの近位部内の機構を用いて、中空軸外のガイドチューブを手動で前進させる。このガイドチューブの放射線不透過性チップを可視化して、ガイドチューブの拡張を確認する。
5.次いで、ガイドチューブを通して注入チューブ/注入針を同軸上に前進させ、腎動脈に貫入させて、内弾性膜(IEL)及び中膜を通過させ、次にIELから事前に設定された距離(通常0.5mm~4mm、好ましくは2mm~4mm)だけ離れた外弾性膜(EEL)を通過させて、腎動脈の脈管壁の外層(外膜及び/又は外膜周囲層)内まで前進させる。こうして、注入チューブ/注入針を配置して、神経焼灼剤を外膜面又は(外膜面の外側の)「深部」に送達させる。IELからの深さが2mm~4mmの場合に、腎動脈の内膜及び中膜の損傷が最小になる。腎動脈における中膜の正常な厚さは、0.5mmないし0.8mmである。本願で開示される貫入深さ制限特性の実施形態では、ガイドチューブの遠位端から一定の距離に配置された注入針は遠位開口部を有している。正常な腎動脈において、ガイドチューブは、通常は標的脈管の内壁に又はその近傍に位置するIEL寄りに配置される。血管造影法、IVUS、又はOCTから判別して腎動脈内のプラーク又は新生内膜過形成によって内膜が肥厚している場合には、ガイドチューブの遠位端から3mm~6mmの貫入深さが必要となる。より大きな事前設定済み貫入深さを有する特定の製品コード(即ち、事前設定製品)又はPTACのハンドル内の機構を用いる施術者に可能な調整によって、対応が容易になるように想定されている。脈管に狭窄がある場合には、狭窄部位から離れた部位で注入し、必要に応じて、狭窄を経皮的冠動脈形成術(PCI)で治療することが望ましい。
6.エタノール(エチルアルコール)、蒸留水、高張生理食塩水、低張生理食塩水、フェノール、グリセロール、リドカイン、ブピバカイン、テトラカイン、ベンゾカイン、グアネチジン、ボツリヌス毒素、配糖体、又はいずれかの好適な神経毒性液等の焼灼液であって良い焼灼剤を適切な量だけ注入させる。この注入には、脈管壁内及び/又は脈管のすぐ外側の空間内への、二つ又はそれ以上の神経焼灼液或いは局所麻酔薬の組合せを一緒に又は連続しての注入(不快感を低減させる局所麻酔薬が最初で、続いて焼灼剤を送達する)、及び/又は高温液(或いは蒸気)、又は非常に低温の(冷凍焼灼用の)液体を注入が含まれ得る。通常の注入量は、0.1mL~3.0mLである。これにより、交差して、標的脈管の円周まわりに焼灼環を形成する、複数の焼灼領域(各注入チューブ/注入針につき一つ)が生成される。神経焼灼剤注入前の試験注入の際又は治療注入の際のいずれかにおいて、焼灼領域のX線での可視化を可能にする造影剤を追加することができる。焼灼剤としてエタノールを用いる場合、0.5mL未満の量で十分である。これは、交感神経を含む必要な空間が完全に満たされるだけでなく、偶発的に腎動脈内に放出されるとしても患者の腎臓を損傷しないほどにその量が小さいためである。理想的には、0.1mLないし0.3mLのエタノールが用いられる。
7.生理食塩水をPTAC内に注入して、遠位注入針を有する注入チューブを含めたPTACの注入内腔(死腔)から焼灼剤を完全に洗い流す。こうすることで、注入針がPTAC内に後退する間に、焼灼剤が偶発的に腎動脈内に入ることが防止される。このような腎動脈内への偶発的な放出は、腎臓の損傷を引き起こしかねない。蒸留水、低張生理食塩水、又は高張生理食塩水を焼灼剤として用いる場合、或いは焼灼剤の量が少なくて、腎動脈内への偶発的な放出で腎臓が損傷される可能性が低い場合には、この洗浄ステップを省略することができる。焼灼に必要な量が0.5mL未満のエタノールの場合、エタノール0.5mLが正常な血液流内に存在しても、腎臓が損傷されないため、フラッシングは不必要である。
8.PTACの注入チューブ/注入針をガイドチューブ内に後退させる。
9.ガイドチューブをPTACの中空軸内に後退させる。
10.場合によっては、PTACを30o~90o回転させること、或いはPTACを最初の注入部位に対して0.2cmないし4cmだけ遠位側又は近位側に移動させることができ、必要な場合には、除神経/神経焼灼を拡大するために、注入を繰り返して第二の組織損傷環を作り出す。
11.同じ方法を上記ステップ毎に繰り返して、反対側の(体の反対側に存在する)腎動脈内の組織を焼灼する。
12.PTACをガイドカテーテルから完全に引き出す。
13.患者の身体から残っている機器を全て除去する。
【0050】
上記の手順を簡略化したものは下記の通りであり、生理食塩水を用いてカテーテルの注入内腔/死腔をフラッシュすることがない:
1.アルコール中隔焼灼などと同様な方法で心臓カテーテル用又は中隔焼灼用の標準的な技術を用いて患者に鎮静剤を投与する(精通した鎮痛剤及び麻薬性鎮痛剤を用いる)。
2.第一の腎動脈を、標準的な動脈アクセス法を用いて、大腿動脈又は橈骨動脈を介して配置し、その遠位端が腎動脈の小孔より先に入り込んでいるガイドカテーテルと係合させる。
3.患者の身体外で、針誘導要素/ガイドチューブ及び注入針が完全に拡張した状態で、注入内腔を焼灼液でフラッシュする。
4.患者の身体外で、注入内腔を除くPTACの全内腔を生理食塩水でフラッシュする。十分な量の生理食塩水をガイドチューブ及びカテーテルの遠位開口部から流して、残留している焼灼液をPTACの外表面から洗い流す。
5.注入針及び針誘導要素/ガイドチューブを後退させる。
6.ガイドカテーテルを通してPTACを腎動脈内の所望のポイントまで前進させる。
7.針誘導要素/ガイドチューブを手動で前進させる。
8.次に、内弾性膜(IEL)を通って所望の深さまで注入チューブ/注入針を前進させる。
9.好適な量の焼灼剤/焼灼液を注入させる。
10.PTACの注入チューブ/注入針をガイドチューブ内に後退させる。
11.ガイドチューブをPTACの中空軸内に後退させる。
12.PTACをガイドカテーテル内に後退させる。
13.必要に応じて、ガイドカテーテルを反対側の(体の反対側に存在する)腎動脈に移動させる。
14.ステップ6ないし11を繰り返す。
15.ガイドカテーテルからPTACを完全に除去する。
16.患者の身体から残っている機器を全て除去する。
【0051】
後退する注入針から漏出する可能性のある焼灼液の量がPTAC内の死腔の容積より著しく小さいため、この簡略化された手順は安全である。具体的には、0.5mLものエタノール等の焼灼液が腎臓損傷を引き起こすことなく腎動脈内に安全に注入される上に、たとえその全容積が腎動脈内に漏出したとしても、死腔が0.3mL未満であるため、腎臓を損傷することはない。現状では、内容積の10%未満(即ち、0.03mL未満)が閉鎖されたPTACから漏出する可能性があり、そのため上記の簡略化された手順は非常に安全である。
【0052】
腎臓交感神経焼灼における使用のために、以下の手順(各ステップは必須ではなく、当業者ならわかるように、短縮することも修正することも可能である)で本明細書に開示されるICMを有するPTACが用いられる:
1.アルコール中隔焼灼等と同様な方法で心臓カテーテル用又は中隔焼灼用の標準的な技術を用いて患者に鎮静剤を投与する(精通した鎮痛剤及び麻薬性鎮痛剤を用いる)。
2.第一の腎動脈を、標準的な動脈アクセス法を用いて大腿動脈又は橈骨動脈を介して配置したガイドカテーテルと係合させる。
3.PTACの注入内腔を含む全ての内腔を生理食塩水でフラッシングした後、その閉鎖位置にあるPTACの遠位端をガイドカテーテル内に前進させる。ICM又はガイドチューブ上の放射線不透過性マーカーが腎動脈内の所望の位置に達するまで、ガイドカテーテルの遠位端を通してPTACの遠位部を前進させる。
4.シースを引き戻して、ICMを有する拡張可能なガイドチューブが腎動脈の内壁を目指して展開できるようにする。ICMが自己拡張型である場合、この展開は自動的になされ、拡張が遠位側の拡張制御機構(ECM)によって制御される場合には、施術者が操作してICM及びガイドチューブを拡張させる。ガイドチューブの放射線不透過性チップ及び/又はICM上の放射線不透過性マーカーを可視化して、拡張を確認する。
5.次いで、ガイドチューブを通して注入チューブ/注入針を同軸上に前進させ、腎動脈に貫入させて、内弾性膜(IEL)を通過させ、神経焼灼剤を外膜面の深部に送達するため、IELから事前に設定された距離(通常0.5mm~4mm、好ましくは2mm~4mm)だけ離れた腎動脈の脈管壁の外層(外膜及び/又は外膜周囲層)内まで前進させる。IELから2mm~4mmの深さの場合に、腎動脈の内膜及び中膜の損傷が最小になる。
6.エタノール(エチルアルコール)、蒸留水、高張生理食塩水、低張生理食塩水、フェノール、グリセロール、リドカイン、ブピバカイン、テトラカイン、ベンゾカイン、グアネチジン、ボツリヌス毒素、配糖体、又はいずれかの好適な神経毒性液等の焼灼液であって良い焼灼剤を適切な量だけ注入させる。この注入には、脈管壁内及び/又は脈管のすぐ外側の空間内への、二つ又はそれ以上の神経焼灼液或いは局所麻酔薬の組合せを一緒に又は連続しての注入(不快感を低減させる局所麻酔薬が最初で、続いて焼灼剤を送達する)、及び/又は高温液(或いは蒸気)、又は非常に低温の(冷凍焼灼用の)液体を注入が含まれ得る。通常の注入量は、0.1mL~5mLである。これにより、交差して、標的脈管の円周まわりに焼灼環を形成する、複数の焼灼領域(各注入チューブ/注入針につき一つ)が生成される。神経焼灼剤注入前の試験注入の際又は治療注入の際のいずれかにおいて、焼灼領域のX線での可視化を可能にする造影剤を追加することができる。焼灼剤としてエタノールを用いる場合、0.5mL未満の量で十分である。これは、交感神経を含む必要な空間が完全に満たされるだけでなく、偶発的に腎動脈内に放出されるとしても患者の腎臓を損傷しないほどにその量が小さいためである。理想的には、0.1mLないし0.3mLのエタノールが用いられる。
7.生理食塩水をPTAC内に注入して、遠位注入針を有する注入チューブを含めたPTACの注入内腔(死腔)から焼灼剤を完全に洗い流す。こうすることで、注入針がPTAC内に後退する間に、焼灼剤が偶発的に腎動脈内に入ることが防止される。このような腎動脈内への偶発的な放出は、腎臓の損傷を引き起こしかねない。蒸留水、低張生理食塩水、又は高張生理食塩水を焼灼剤として用いる場合、或いは焼灼剤の量が少なくて、腎動脈内への偶発的な放出で腎臓が損傷される可能性が低い場合には、この洗浄ステップを省略することができる。
8.PTACの注入チューブ/注入針をガイドチューブ内に後退させる。次いで、ICMを有するガイドチューブを後退させて、シース下に戻し、先の尖った注入針を完全に囲い込む。次いで、PTAC全体をガイドカテーテル内に引き戻す。
9.場合によっては、PTACを30o~90o回転させること、或いはPTACを最初の注入部位に対して0.2cmないし4cmだけ遠位側又は近位側に移動させることができ、必要な場合には、除神経/神経焼灼を拡大するために、注入を繰り返して第二の組織損傷環を作り出す。
10.同じ方法を上記ステップ毎に繰り返して、反対側の(体の反対側に存在する)腎動脈内の組織を焼灼する。
11.PTACをガイドカテーテルから完全に引き出す。
12.患者の身体から残っている機器を全て除去する。
【0053】
本願の両方の実施形態において、上記の方法で記載したように、脈管壁への注入針の貫入を制限する手段がPTACの近位部内に含まれている。施術者が用いて、まずガイドチューブの拡張を引き起こし、次に注入針の前進を引き起こす、一つ又は複数のハンドルが想定される。これらの機構を逆に作動させると、注入針がガイドチューブ内に後退し、その後ガイドチューブがカテーテル本体内又はシース下に後退する。Fischellらは、米国特許出願番号第13/643,070号、第13/643,066号、及び第13/643,065号において、シース、遠位注入針を有するガイドユーブ及び注入チューブ等の前進・後退する遠位構造用の制御機構を、記載している。これらの機構の偶発的な手順外の動きを防止するための連動装置及びロック機構も記載されている。
【0054】
また、Fischellらは、フラッシング及び焼灼液注入用のポートを有する近位部を記載している。本願に開示の実施形態には、近位部に同様な構造及び制御機構がある。通常、カテーテルの中間部には、三種の同心チューブがある。中空軸を用いる手動拡張の実施形態には、カテーテルの本体を形成する外側チューブがある。中間チューブは、ガイドチューブの前進及び後退を制御し、内側チューブは、遠位注入針を有する注入チューブの前進及び後退を制御する。内側チューブの内腔も、PTACの近位部内の注入ポートに注入された焼灼液を注入チューブ及び注入針の内腔に運び、最終的に注入針の遠位端又はその近傍の遠位開口部から運び出す、内腔である。
【0055】
本明細書に開示のPTACの他の重要な特徴は、カテーテルから焼灼液を所望される多くの組織内に洗い流すのに必要な生理食塩水の量を最小化するために、PTACの内容積(「死腔」)を低減するその設計である。脈管周囲腎除神経(PVRD)の実施には0.5mL未満のエタノール等の焼灼液が必要と想定される。死腔は0.5mL未満でなければならず、理想的には0.2mL未満とすべきである。いくつかの設計上の特徴によって、死腔が0.1mL未満に低減され得ると想定される。そのような特徴には、PTACの液注入に用いられる内側チューブとしての内径が0.5mm未満の小径ハイポチューブの使用が含まれる。当該ハイポチューブは、ハイポチューブの内容積を低減し、結果としてPTACの死腔を低減するためにハイポチューブ/内側チューブの全長に渡って内側に配置されるワイヤーが含まれるか、並びに/或いは、内径0.5mm未満で長さ2cm未満と小さくすることで近位側の注入ポート及び/又はPTACの近位端の注入連結管の容積を抑えるように設計する。
【0056】
ガイドチューブが、前進可能で肉厚が非常に薄い注入針用の針誘導要素であることが、本発明の重要な特徴の一つである。具体的には、標的脈管の内壁に貫入するために中心カテーテルから外側に前進する湾曲した針を記載している、Jacobson等の先行技術では、カテーテルの遠位端又は側面から前進する針に覆いがない。前進の間に誘導(支持)がなく、一般に、動脈の壁からの後退後に出血を引き起こすほど厚くない針は、脆弱すぎて、所望されるように脈管壁内に確実に貫入することができない。したがって、本願に開示される実施形態の重要な態様は、非常に薄い注入針が標的脈管の内壁内の所望される深さまで確実に前進することを可能にする、ガイドチューブ等の針誘導要素を、含むことである。そのような誘導要素は、チューブである必要もなければ丸い断面を有する必要もなく、半管又は部分管であって良く、前進可能な針を誘導する溝穴を有する構造であって良く、誘導構造は、外側に拡張して、半径方向に支持し、針を誘導する、バネのような拡張可能な何らかの構造であって良い。「拡張する」という用語は、カテーテルの縦軸に比較的近い第一の位置から少なくとも縦軸から比較的離れた第二の位置までの構造の動きを意味し、その動きは、拡張、たわみ、旋回運動、又は他の仕組みによるものであって良い。針誘導要素が中心のカテーテルから外側に拡張することが望ましい。
【0057】
本願に開示される実施形態に関して独自であることは、針誘導要素を半径方向及び横方向に支持する別の構造も用いられることである。複数の針の一様な貫入及び角拡散が必要とされるため、別の構造の使用は重要である。また、針が前進し、かつ「誘導要素」(例えば、ガイドチューブ)によって誘導されるため、誘導要素は、針が支持されていない間に、所望の位置から脈管の内壁を目指して後退させることもできる。このため、本開示は、針が脈管壁内に前進する際に、針誘導要素が内表面から後退しないように半径方向に支持(「バックアップ」)する構造の設計を教示する。
【0058】
本開示の別の実施形態では、単一の注入チューブ内でガイドチューブと注入チューブを組み合わせることで、構造が簡略化される。これによって、操作のステップも削減される。具体的には、注入針が、中空軸を通って前進及び後退する注入チューブの内側に永続的に取り付けられる。注入チューブの遠位端の直径は、注入針の直径より大きく、注入針の標的脈管の内壁への貫入を制限する「栓」として機能する。
【0059】
本開示のさらに別の実施形態では、遠位針を有し標的脈管の内壁内に前進する注入チューブを通すガイドチューブを拡張させる、膨張可能なバルーンが用いられる。このバルーンは、柔軟でも、なかば柔軟でも、柔軟でなくても良い。ただし、バルーンの膨張圧を変えることで、拡張したガイドチューブの外縁の直径を容易に設定できるように、伸縮性の柔軟なバルーンが好ましい。ガイドチューブをバルーンの外側に取り付けることで、ガイドチューブをバルーン内に配置した場合に比べて構造が単純となり、ガイドチューブの遠位端が標的脈管の内壁と係合可能となって、バルーンの該表面が標的脈管の内壁に接触しなくなる。バルーンが内壁に接触する場合には、内皮細胞が取り除かれて、望ましくない新生内膜過形成が生じる。バルーンによって拡張される実施形態において、ガイドチューブと組み合わされた注入チューブは、バルーンが膨張する際に、注入針を外側に拡張させて標的脈管の内壁内に貫入させる。バルーンによって拡張される実施形態において、拡張可能な遠位部を閉じ込めて送達を容易にし、カテーテルの取り扱い、挿入、及び除去の間の針刺しを低減する、シースを使用することもできる。ガイドチューブ又は注入チューブをバルーンの外側に取り付けることで、薄い注入針が標的脈管の内壁を通って前進する際に、半径方向及び横方向に支持されて確実に一様に拡張する。
【0060】
本願の実施形態の別の特徴は、焼灼液注入用の注入ポートに、小径の内腔を有する特製の接続具を用いることである。また、本願では、注入ポートの特製の接続具と対をなす注射器が想定される。そのような注射器は、焼灼液を含む標的脈管の内壁内に注入される液体、又はPTACを治療対象の脈管内に挿入する前に注入チューブをフラッシュするのに用いられる生理食塩水を、好適な量だけ含むことができる。
【0061】
本願で開示されるPTACの別の特徴は、複数の針を通る液流が一致して、注入針の各先端からの焼灼液の均一な円周状送達を実施することである。
【0062】
本願で開示されるPTACのさらに別の特徴は、遠位部が腎動脈内の所望の部位に到達した後、施術者が本カテーテルの縦方向の動きを固定できることである。これには、本明細書に記載のようなPTACの多くの具体的な特徴を用いて実施可能ないくつかの方法がある。これらの方法として、以下が挙げられる:
1.腎臓ガイドカテーテルの近位端のTuohy-Borst弁を閉じて、PTACの縦方向の動きを不可能にする。
2.接着パッド又はVelcroを用いてPTACの近位部を患者の皮膚又はガイドカテーテルの近位端にしっかりと固定する。
3.ガイドカテーテルに対するPTACの縦方向の動きを固定する、PTACの近位部内又はハンドル内の機構を用いる。機構には以下が含まれる:
a.クリップを、ガイドカテーテルの近位端の外側上で係止されるまで、PTACの外表面上を遠位側に滑らかに動かす。ガイドカテーテル上で係止されると、そのクリップは、PTACの縦軸に対するフリクションロックとなる。
b.ロッキングチューブを、ガイドチューブ及び/又は注入チューブを作動させるPTACの近位部/ハンドル内の機構とロッキングチューブの近位端が結合するガイドカテーテルの近位部内へと、遠位側に滑らかに動かす。このロッキングチューブを縦方向に動かす又は回転させると、ロッキングチューブの遠位部がガイドカテーテルの近位部と係合し、PTACの縦方向の動きを防止する。例えば、ロッキングチューブの直径を大きくすると、ガイドカテーテルの近位端のTuohy-Borst弁又はロッキングチューブ自体の内表面のいずれかに対するフリクションロックとなる。
【0063】
したがって、本明細書に開示のPTACの一つの特徴は、注入針が焼灼液を腎動脈の外層又はその深部内に注入するためその内部を通って前進する拡張可能な支持された針誘導要素を有する、経皮的に送達されるカテーテルを有することであって、このような設計によって、腎動脈の内膜層及び中膜層の損傷が低減又は防止される。
【0064】
本願の別の態様では、PTACが、PTACの本体から外側に前進する手動で拡張可能なガイドチューブ/針誘導要素を有する設計とし、当該PTACは、ガイドチューブ/針誘導要素を標的脈管の内壁に向けて半径方向に支持する支持構造を有する。
【0065】
本開示の別の態様では、PTACが、PTAC本体の遠位部内に遠位開口部を有する中空軸から外側に前進する手動で拡張可能なガイドチューブ/針誘導要素を有する設計とし、当該中空軸及び開口部は、ガイドチューブ/針誘導要素を横方向に支持して、円周状/横方向に一様かつ対称的に確実に拡張させる。例えば、三つのガイドチューブ/針誘導要素を用いる場合、ガイドチューブ/針誘導要素が外側に拡張する際に、横方向の支持により、隣接するガイドチューブ/針誘導要素間でおよそ120oの角度が確実に維持される。
【0066】
本願で開示されるPTACの実施形態の別の態様では、PTACが、ガイドチューブ/針誘導要素に取り付けられ、遠位注入針を有する注入チューブがガイドチューブ/針誘導要素を通って脈管周囲空間内に前進する際にガイドチューブ/針誘導要素が標的脈管の内壁から押しのけられるのを防止するようにさらに半径方向にさらに支持又はバックアップする、管腔内中央配置機構(ICM)を有している。
【0067】
本開示のPTACの別の態様では、PTACが、ガイドチューブ/針誘導要素に取り付けられ、横方向にさらに支持してガイドチューブの一様な拡張を促進する、管腔内中央配置機構(ICM)を有している。
【0068】
本願のPTACのさらに別の態様では、PTACが、ガイドチューブによる標的脈管の内壁の外傷の可能性を低減し、組織焼灼のための注入針の貫入を誘導する、管腔内中央配置機構(ICM)を有している。
【0069】
本開示のさらに別の態様では、腎除神経のための二段階の注入方法が用意されており、患者の身体に挿入する前にまずカテーテルに生理食塩水を満たし、注入針を展開させた後に焼灼液(例えば、エタノール)の最初の注入を実施し、この注入の後に、腎臓に非毒性の生理食塩水又は類似した液体を用いて焼灼液をすべてカテーテルの死腔外に洗い出す。次いでPTACを閉鎖し、他の腎動脈では、同じ注入手順を繰り返す。
【0070】
本願のさらに別の態様では、各腎動脈の除神経のための一段階の注入方法が用意されており、患者の身体に挿入する前にまずカテーテルに焼灼液を満たし、注入針を展開させた後に、焼灼液(例えば、エタノール)の注入を一回だけ実施する。次いでPTACを閉鎖し、他の腎動脈では、同じ注入手順を繰り返す。
【0071】
本開示のさらに別の態様では、PTACが、それぞれ放射線不透過性マーカーを有する、少なくとも三つのガイドチューブ/針誘導要素を有する。これらのガイドチューブ/針誘導要素は、一組の中空軸から外側に手動で拡張可能であって、一組の中空軸は、各ガイドチューブ/針誘導要素をさらに支持及びバックアップして、標的脈管の内壁に対して安定化させる。PTACの近位部内の機構を作動させて、ガイドチューブ/針誘導要素の拡張を完了させる。
【0072】
本発明のさらに別の態様では、湾曲しており拡張可能な注入チューブに注入針を設け、当該注入針は、ガイドチューブを通って同軸上に前進できる。注入チューブの遠位部の曲率半径は、ガイドチューブの曲率半径と類似している。
【0073】
本願の実施形態のさらに別の態様では、ガイドチューブと注入チューブを組み合わせて肥厚した近位部を有する一つの注入チューブとしており、この肥厚した近位部は、貫入制限機構として機能し、特定の注入深さを設定するように製造され得る。
【0074】
本開示のPTACのさらに別の態様では、ガイドチューブ/針誘導要素、及び/又は遠位注入針を有する注入チューブを半径方向に拡張させかつ支持する、拡張可能なバルーンが用いられる。
【0075】
本願のPTACのさらに別の態様では、複数の注入針の流れ抵抗を概ね同一とする。
【0076】
本開示のPTACのさらに別の態様では、PTACに、PTACの位置決め、開放、閉鎖、及び使用を補助する、一つ又は複数の放射線不透過性マーカーが含まれる。その放射線不透過性マーカーには、以下が含まれる:
・ シースの遠位端をマークする放射線不透過性リング;
・ ガイドチューブの端又はその直近に配置され、バリウム又はタングステン等の放射線不透過性フィラーを有する金属帯又はプラスチックでできている、放射線不透過性マーカー;
・ 注入針の遠位部上の放射線不透過性マーカー;
・ 注入チューブ及び/又は注入針の内腔内の放射線不透過性ワイヤー;
・ 放射線不透過性である、PTACの遠位固定ガイドワイヤー(例えば、白金ワイヤー);
・ 管腔内中央配置機構(ICM)上の放射線不透過性マーカー。
【0077】
本明細書を通して、「遠位注入針を有する注入チューブ」という用語は、組織内に貫入し、かつその組織内への液体の注入に使用される、先の尖った遠位端を有するチューブの明示に用いられる。そのような構造体は、皮下注射針、注入針、或いは単に針とも呼ばれる。また、「要素」及び「構造」という用語は、本願の範囲内で同じ意味で用いられる。「Luer接続具」という用語は、本願を通して、ネジ蓋のない先の細いLuer接続具又はネジ蓋のあるLuerロック接続具を意味する。
【0078】
本発明のこれらの及び他の特徴並びに利点は、当業者が、添付の図面及び請求項を含めて発明の詳細な説明を読む際に、明らかになるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【
図1】
図1は、その遠位端に固定されたガイドワイヤーを有する、管腔内神経焼灼システム(INAS)の遠位部の縦方向断面図である。
【
図2】
図2は、焼灼剤の脈管周囲空間内への送達のために手動で拡張された際のその拡張位置でのPTACの遠位部の概略図である。
【
図3】
図3は、焼灼溶液の標的脈管壁内への送達用に構成される際のその拡張位置での
図2のPTACの遠位部の縦断面図である。
【
図6】
図6は、
図5に示されるPTACの縦断面拡大図のセクション6-6での横断面図である。
【
図7】
図7は、
図5に示されるPTACの縦断面拡大図のセクション7-7での横断面図である。
【
図8】
図8は、前進して、ガイドカテーテルから出て腎動脈に入る、その事前配置状態での、本明細書に開示のPTACの手動で拡張可能な実施形態の遠位部の概略図である。
【
図9】
図9は、ガイドチューブが腎動脈の内壁を目指して手動で前進した後の、PTACの手動で拡張可能な実施形態の遠位部の概略図である。
【
図10】
図10は、遠位注入針を有する注入チューブがガイドチューブを出て腎動脈の内壁の深部の所望される貫入深さに前進した後のPTACの手動で拡張可能な実施形態の遠位部の概略図である。
【
図11】
図11は、PTACの近位領域にあるハンドルの概略図である。
【
図12】
図12は、管腔内中央配置機構(ICM)の一つの実施形態の遠位部の断面図であって、遠位針を有し腎動脈等の脈管の内壁を目指して前進する注入チューブが通るガイドチューブを、半径方向及び横方向に支持する、放射線不透過性マーカーを備えたワイヤーかごを示している。
【
図15】
図15は、PTACのガイドチューブ及び注入チューブが単一の注入チューブ内で組み合わされて、前進して、標的脈管の内壁に貫入する、別の実施形態の遠位部の縦断面図である。
【
図16】
図16は、ガイドチューブが標的脈管の内壁と係合する際に、ガイドチューブを外側に前進させかつ半径方向及び横方向に支持する、膨張可能なバルーンを用いる、さらに別の実施形態の縦断面図である。
【
図18】
図18は、内側チューブ、中間チューブ、及び外側チューブの複数の部位を示す、PTACの中心部の縦断面図である。
【
図19】
図19は、先の尖った注入針がPTACの遠位端に出現する際の配置を示す概略図である。
【
図20】
図20は、先の尖った注入針の好ましい形状の概略図である。
【
図21A】
図21Aは、閉塞具の近位部を支持構造として用いる、PTACの別の実施形態の概略図であって、ガイドチューブが前進したが注入針がまだ前進していない状態でのPTACの構成を示している。
【
図21B】
図21Bは、その内部で閉塞具の近位部がガイドチューブをさらに支持する、PTACの別の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0080】
図1は、2012年10月23日に提出されたFischellの米国特許出願番号第13/643,070号に記載の発明の拡張した遠位部の縦断面図である。この脈管内神経焼灼システム(INAS)50は、その遠位端に、先端28を有する固定されたガイドワイヤー20を有している。
図1は、完全に展開した状態での、自己拡張性ガイドチューブ15、同軸注入チューブ16、先の尖った遠位注入針19、及びガイドチューブ15の遠位端29より外側に配置された注入出口である針遠位開口部17を有するINAS 50を示している。INAS 50のこの実施形態では、四つのガイドチューブ15を通って突出している四つの注入チューブ16があることを、理解されたい。このガイドチューブ15は、遠位注入針19を有する薄肉で可撓性の注入チューブ16が標的脈管の内壁内に貫入する際に支持する、針誘導要素である。
【0081】
この構成では、シース22が引き戻されていて、放射線不透過性マーカー帯27を有するガイドチューブ15が外側に拡張することが可能である。要素15及び16が放射線不透過性金属でできていない場合には、標準的な蛍光透視法を用いてINAS 50の配置を良好に可視化するために、注入チューブ16及びガイドチューブ15の遠位部を金又はタンタル等の放射線不透過性材料でマークすること、或いは注入チューブ16又は先の尖った遠位注入針19を放射線不透過性材料で形成すること、又は放射線不透過性材料を注入チューブ16又は先の尖った遠位注入針19内に配置すること、が想定される。
図1は、遠位注入針19を有する注入チューブ16の位置を施術者が蛍光透視法で明確に同定できるようにするため、注入チューブ16内に配置された放射線不透過性ワイヤー18を示している。 脈管の内壁を通って前進した後の注入針19の位置を知ることは、施術者にとって特に重要である。放射線不透過性ワイヤー18用の材料は、白金、タングステン、又は金、或いはこの種の金属の合金等、良く知られている放射線不透過性金属から選択できる。
【0082】
直径L1は、完全に拡張したガイドチューブ15の形状記憶を示す。腎動脈における使用のために、L1は、通常3mm~10mmであるが、腎動脈の直径が7mmを超えることはほとんどないため、一つのサイズのみとする場合には8mmが最適である。
図1に示されるように、完全に拡張した状態でのガイドチューブ15の遠位端29は、INAS 50の縦軸に平行な面を有している。 INAS50の遠位部は、先細部26、放射線不透過性マーカー帯24、及び近位部23を有している。要素23、24、及び26を含むこの先細部は、閉塞部30と呼ばれる。閉塞部30は、コアワイヤー11及びガイドチューブ20の外層25に固定して取り付けられる。この設計の他の重要な特徴は、閉塞部30上の放射線不透過性マーカー帯24と共にシース22の遠位端及び閉塞部30の相対的な位置の情報を表示する放射線不透過性マーカー13が、シース22の遠位端に位置していることである。シース22の遠位端に位置する放射線不透過性マーカー13が、閉塞部30の放射線不透過性マーカー帯24にごく接近している場合、施術者には、注入チューブ16を含むガイドチューブ15が完全に収縮していることがわかる。シース22の放射線不透過性マーカー13が十分離れている場合、施術者には、少なくともガイドチューブ15が互いに外側に配置され、それらの遠位端29が脈管の内表面に接触していることがわかる。遠位注入針19を有する注入チューブ16が同軸上に前進してガイドチューブ15を通って標的脈管の内壁に貫入する際に、ガイドチューブ15が標的脈管の内壁に対するその位置を維持するように、注入チューブ16の通常事前に形成される曲率半径がガイドチューブ15の曲率半径と一致すべきであることも、Fischellの米国特許出願で開示されている。上記のように、この設計の限界は、標的脈管内で自動的に中央に配置され得ないガイドチューブ15等の支持されていない自己拡張性の針誘導要素構造が持つ信頼性及び安定性である。また、何らの半径方向の支持もないガイドチューブ15は、注入チューブ16が前進する間に、標的脈管の内壁から離れることがある。
【0083】
図2は、その拡張位置におけるPTAC 100の遠位部の概略図であって、外側チューブ102、放射線不透過性マーカー122を有しPTAC 100の本体の外側に前進するガイドチューブ115を通す遠位開口部131を有する、外側チューブ外延部104を示している。先細部106、及び遠位先端109を有する固定されたガイドワイヤー110も示されている。遠位注入針119及び針遠位開口部117を有する注入チューブ116は、その完全に展開した位置で、示されている。開口部131は、遠位注入針119を有する注入チューブ116の前進よりも前にガイドチューブ115が外側に前進する際に、ガイドチューブ115の側面を支持する。
図2のPTAC 100は、三つのガイドチューブを有しており、三番目のガイドチューブは、カテーテルの後ろに隠れていて、この概略図では見えない。
図2のPTAC 100は、三つのガイドチューブ115を有しており、他の実施形態で、ガイドチューブの数がたった一つであることも八つと多いこともあり得るが、ガイドチューブの最適な数は三つ又は四つである。標的脈管の直径がより大きくなると、四つないし八つと多い数のガイドチューブ115及び注入チューブ116を使用することになる。
【0084】
ガイドチューブ115の出口である、外側チューブ外延部104内の遠位開口部(又は窓)131については、異なる形状も想定される。これらの可能な形状には、湾曲した(例えば、丸い)近位端及び遠位端、軸方向の直線状の側面、並びに楕円形の又は丸い形状が含まれる。開口部131を覆う移動可能な蓋、又は腎動脈内に良好に送達するためにPTACの外表面を平滑にするように設けられるスリットも想定される。
【0085】
ガイドチューブ115が非常に薄い注入針119用の針誘導要素であることが、本発明の重要な特徴である。具体的には、中心カテーテルから外側に前進して標的脈端の内壁に貫入する湾曲した針を記載しているJacobsonらの従来技術では、針は、(覆われておらず)それ自体でカテーテルの遠位端又は側面から前進する。前進の間に支持及びバックアップされることが無い場合、動脈の壁に貫入及び後退する後に出血のリスクがないほど薄い針は、一般に脆弱すぎて、所望されるように脈管壁内に確実に貫入することができない。したがって、本願のPTAC 100の重要な態様は、非常に薄い針119が標的脈管の壁内の所望の深さまで確実に前進することを可能にする、ガイドチューブ115等の針誘導要素を含むことであることが、想定される。
【0086】
図3は、
図2に示されるPTAC 100の遠位部の縦断面図である。
図3の近位端には、PTAC 100の中心部分を形成し、PTAC 100の全長のほとんどを占める、三つの同心チューブ、外側チューブ102、中間チューブ103、及び内側チューブ105が示されている。外側チューブ102は、外側チューブ外延部104に接続されており、外側チューブ外延部104は、先細部106に接続されている。コアワイヤー111及び外層113を有する固定されたガイドワイヤー110は、先細部106の遠位端から遠位側に延在している。ガイドワイヤー110の全長の一部のみが
図3に示されており、ガイドワイヤー110の全長は
図2に示されていることに、留意すべきである。
図3のセクションS4及びS5は、それぞれ
図4及び
図5に示されている。
【0087】
図3には、放射線不透過性マーカー122を有するガイドチューブ115が、外側チューブ外延部104内の開口部131を通って完全に前進した状態で示されている。中空軸120の一部を形成する外側チューブ外延部104の内表面は、ガイドチューブ115が前進及び後退する際に比較的剛直となるように、金属又は高デュロメータ硬度のプラスチック等の剛性材料で形成すべきである。
【0088】
本願のPTAC 100の好ましい実施形態では、外側チューブ102及び外側チューブ外延部104の代わりに、四つの異なるチューブ状構造が用いられている。具体的には、PTACの近位部は、
図11に示される金属製ハイポチューブ82である。 この金属製ハイポチューブ82は、その遠位端で長さがおよそ20cmの剛直なプラスチック製のチューブ92(
図18参照)に接続され、剛直なプラスチック製チューブ92は、
図2ないし7に示されるチューブ102である、長さがおよそ10cmのより柔軟でありより高い可撓性を有するプラスチック製チューブに接続される。通常、プラスチック製チューブ92及び102は、同一の内径及び外径を有する。通常、カテーテル本体の遠位端部である外側チューブ外延部104は、柔軟な外側チューブ102の内径より僅かに大きな内径を有する。内側チューブ105を注入チューブ116に接続する、連結管125は、同軸的にプラスチック製チューブ92及び102の内部にあって、PTAC 100のカテーテル本体の遠位端部である外側チューブ外延部104よりは少なくとも数cmだけ近位側にある。
【0089】
好ましい実施形態において、遠位側金属製ハイポチューブ及び内側チューブ105に接続している中間チューブ103は、金属製ハイポチューブでできている近位部にも接続している。これらのチューブの構造は、
図18に示されている。
【0090】
本明細書に開示のPTAC 100の重要な態様は、注入経路の内容積、即ち「死腔」を最小にすることである。死腔を最小にすることで、焼灼液を注入する前に脈管周囲空間内に注入する液体の必要量が低減される。使用法の一つのバージョンにおいては、PTAC 100を患者の身体に挿入する前に、身体外でまず死腔を生理食塩水でフラッシュし、次に死腔に生理食塩水を満たす。理想的には、死腔は0.3mL未満とすべきであり、可能ならおよそ0.1mLとすべきである。0.5mL未満であれば、焼灼液の注入に先立って脈管周囲空間内に注入するフラッシング用液の液量の最小化に有用である。
【0091】
図3に示される中心支え部121は、ガイドチューブ115を、遠位側に前進する際及び完全に展開した後の両方において支持する。この中心支え部121は、注入チューブ116が標的脈管の内壁から2mm~4mmの所望される位置までガイドチューブ115を通って前進する際に、ガイドチューブ115が標的脈管の内壁から押しのけられるのを防止するように、ガイドチューブ115の前進を主に半径方向に支持する。例外的なケースでは、注入チューブ116の遠位端にある注入針119は、標的脈管の内壁から8mmもの深さまで前進する。ガイドチューブ115の横方向の支持は主として開口部131の側面により行われるが、当該開口部131は、中心支え部121と共に、ガイドチューブ115が前進する際及び外側に膨張する際の半径方向及び円周方向/横方向の支持の要となり、注入針119が標的脈管の内壁を通って送達する間のバックアップにもなる。中心支え部121は、湾曲した傾斜又は直線状の傾斜等のたわみ曲面を含むことができ、たわみ曲面が湾曲している実施形態の場合、その曲率半径は、ガイドチューブ115の遠位側表面の曲率半径と一致して良い。湾曲した傾斜の実施形態の場合、中心支え部121及び中空軸120は、ガイドチューブ115が半径方向にのみ拡張するのを容易にするように横方向の支持も行う。中心支え部121は、ガイドチューブ115を半径方向及び横方向に支持するが、本明細書に記載の他の実施形態では、半径方向にのみ又は横方向にのみ支持することができる。ガイドチューブ115を半径方向に支持することは、ガイドチューブ115をPTAC 100の縦軸と直角方向に支持することと、本明細書で定義される。ガイドチューブ115を横方向に支持することは、ガイドチューブ115を半径方向と直角である円周方向に支持することと、本明細書で定義される。
【0092】
注入チューブ116の遠位部の中心軸の曲率半径が、非拘束状態で測定した、ガイドチューブ115の中心軸、及び中心支え部121内に形成される中空軸120の遠位部の中心軸の曲率半径と同一である、又は同一に近いことも、重要な特徴である。また、ガイドチューブ115の長さは、遠位針119を有する注入チューブ116の遠位に湾曲した部分の長さと少なくとも同じであるべきである。こうした設計によって、各注入チューブ116の湾曲部がガイドチューブ115の内腔内に拘束され、注入チューブ116がねじれることも変位することもなくなる。
【0093】
中心支え部121の遠位部のより詳細を
図17に示す。
【0094】
図3からわかるように、液体注入内腔133を有する内側チューブ105は、連結管125を介して、三つの注入チューブ116とつながっており、そのために、注入チューブ116の内腔は、液体注入内腔133と流体連通している。 内側チューブ105及び連結管125は、連結管125の同軸上外側の部分を含めその全長に渡って直径が同一である中間チューブ103の内部を、PTAC 100の縦軸に沿ってなめらかに動くことができる。
【0095】
図3から、連結管125が、内側チューブ105の内腔内の、内側チューブ105の遠位端に対して近位側の部分に位置していることが、明らかである。内側チューブ105及び連結管125は、両方とも同軸的に、PTAC 100の外側チューブ102内の、PTAC 100の本体外側の遠位端部分である外側チューブ外延部104に対して近位側の部分に、位置している。これは、チューブを針に接続する連結管がチューブの遠位端(その内側でかつ遠位端に対して近位側ではなく)に取り付けられている、Jacobsonの特許第6,302,870号の
図3に示される実施形態とは著しく異なっている。また、Jacobsonの連結管は、同軸的にカテーテルの本体外側の遠位端部内(カテーテルの遠位端部に対して近位側である、チューブの内部ではなく)に位置している。遠位端部は、針がそこから出て外側に湾曲し脈管の内壁内に入る、カテーテルの遠位部として、定義される。
【0096】
図2ないし4のPTAC 100の針119のそれぞれの針遠位開口部117を通る流速がほぼ同一であることも、PTAC 100の重要な特徴であり得る。流速がほぼ同一であることは、注入針119を有する各注入チューブ116を事前に試験して、所定の圧力の下で流速、そして流れ抵抗を測定することで、非常に簡単に確認できる。その試験の結果に基づいて、注入チューブ116を選別することができ、それぞれPTAC 100用に選別された注入チューブは、流れ抵抗がほぼ同一になるように組み合わされる。
【0097】
図4は、
図3に示されるPTAC 100縦断面図の領域S4の拡大図である。
図4は、内部層123、外部層127、遠位端129、及び放射線不透過性マーカー122を有するガイドチューブ115の詳細を示している。ガイドチューブ115の内腔内に同軸的に有るのは、遠位注入針119を有する注入チューブ116、遠位開口部117、及び放射線不透過性マーカーワイヤー118である。放射線不透過性マーカーワイヤー118は、次の二つの目的を果たす。第一に、注入チューブが焼灼液を脈管周囲空間内及び標的脈管の外膜の深部内に送達するための位置に前進する際に、注入チューブの位置を蛍光透視的に可視化する。第二に、放射線不透過性マーカーワイヤー118は、注入チューブ116の内容積を低減することで、PTAC 100が腎動脈から後退する際に、無害な生理食塩水のみを残して、全ての焼灼液をPTAC 100の外の脈管周囲空間内へと生理食塩水フラッシュするために必要な生理食塩水の量を低減させる。遠位注入針119を有する注入チューブ116の放射線不透過性は、針119が標的脈管の内壁内に好適に配置されていることを施術者が蛍光透視下で確認できるようにするため、非常に重要である。本開示の他の実施形態では、注入チューブ116及び注入針119の外側及び/又は内側上のコーティング、めっき、又はマーキングが使用可能であるか、或いは遠位注入針119を有する注入チューブ116が二層の被覆材料でできている。例えば、ニチノール製のチューブを白金製の内側チューブに被せ、成形すると、可視性が高く、
図3及び4に示される放射線不透過性マーカーワイヤー118が不必要となるため、理想的である。
【0098】
ガイドチューブ115は、遠位開口部131を有する中空軸120を通って前進及び後退する。三つのガイドチューブ115は、近位端近傍でガイドチューブコネクター132によって互いに接触している。
図4も、中心支え部121を目指して前進する際に、ガイドチューブ115が、中心支え部121の湾曲した傾斜144さらには中空軸120の開口部131の側面によってどのように外側に向けられかつ支持されるかを、明確に示している。中心支え部121も、ガイドチューブ115をさらに横方向に支持する、近位指状部142を有している。
【0099】
外側チューブ外延部104は、その遠位端で先細部106に接続しており、先細部106は、コアワイヤー111及び外層113と共に、ガイドワイヤー110の周りで同軸上にある。
【0100】
同様に
図4に示されているのは、貫入深さL2であって、これは、ガイドチューブ115の遠位端129から、注入針119の遠位端に位置する遠位開口部117の中心までの距離である。PTAC 100の近位端の機構(
図11に示すように)は、注入チューブ116及びガイドチューブ115等の遠位部品の動きを制御し、さらには注入針119の貫入深さL2を制限及び/調整する。
【0101】
中心支え部121及び遠位開口部131が、
図4に示されるように、PTAC 100の別個の部品であることができ、或いは、
図17に示されるように、それらが単一の成形部品又は機械加工部品として形成されることもできる。中心支え部121の遠位先端145は、中心支え部121を先細部106に接続して、固定する。また、中心支え部121、遠位開口部131、及び先細部106は、成形された又は機械加工された単一部品であることができる。
【0102】
PTAC 100の好ましい実施形態で、ガイドチューブ115は事前に形成された湾曲した形状を有しているが、中心支え部121が直線状のガイドチューブを標的脈管の内壁を目指して外側に湾曲させる場合には、可撓性の自然な直線性を有するガイドチューブも想定される。
【0103】
本明細書では、「中心支え部」という用語が用いられるが、中心支え部121の最も重要な構成要素は、展開したガイドチューブ115を半径方向に、並びにある程度横方向に支持する、傾斜144である。具体的には、中心支え部121の湾曲した傾斜144は、ガイドチューブ115が遠位開口部131を通って出る際に、その外側への動きを支持及び誘導し、ガイドチューブ115と注入チューブ116が標的脈管の内壁と係合する際には、半径方向に支持する。中心支え部121の指状部142が、さらに横方向に支持する。
【0104】
傾斜144又は中心支え部121の形状には、ガイドチューブ115が遠位開口部131を通って遠位側に前進する際にガイドチューブ115を外側に誘導する平滑で湾曲した表面又は傾斜した表面を有する、近位側外延部又は指状部も含まれる。
【0105】
図4に示される中心支え部121は、プラスチック製の部品であるが、ステンレススチール等の放射線不透過性金属でできた部品、又はタングステン等の放射線不透過性フィラーを含むプラスチック製の部品も、好適に使用できて、ガイドチューブ115がPTAC 100から出る精確な位置を示す。ガイドチューブ115が、したがって注入針119も標的脈管の内壁と係合する点を同様に示すように、放射線不透過性マーカーを遠位開口部131又は中心支え部121又は外側チューブ外延部104の一部に配置する又は取り付けることも想定される。
【0106】
通常、PTAC 100の部品の多くは、ポリアミド、ポリウレタン、ナイロン、又はテコタン(Techothane(登録商標)、熱塑性ポリウレタンの一種)等のプラスチック材料でできている。これらのプラスチック製部品として、外側チューブ102、中間チューブ103、及び内側チューブ105、外側チューブ外延部104、ガイドチューブ115の内部層123及び外部層127、先細部106、中心支え部121、ガイドチューブコネクター132、並びに連結管125が挙げられる。連結管125は、成形部品であって良く、或いは注入チューブ116を内側チューブ105と接着するためにエポキシ樹脂又はその他の樹脂を用いても良い。
【0107】
内側チューブ105、中間チューブ103、又は外側チューブ102のいずれか又はすべてが金属製ハイポチューブ又は金属強化プラスチック製チューブであることも想定される。
【0108】
通常、注入チューブ116は、バネ又はニチノール等の形状記憶性金属でできている。放射線不透過性マーカーワイヤー118及びガイドチューブ放射線不透過性マーカー122は、金、白金、又はタンタル、或いはこれらの金属又は類似した金属の合金でできていることもある。通常、コアワイヤー111はステンレススチールであって、外層113は白金巻き付けワイヤー又は白金インジウムワイヤーである。外層113は、ポリマー材料であることもできる。PTAC 100の外側のいずれかまたはいくつかの部分が、特性改善のために、潤滑剤コーティングを施されて良い。注入チューブ116及び注入針119は、針が標的脈管の内壁に貫入する際及び標的脈管の内壁から後退する際に如何なる失血も漏れも回避するため、直径が0.5mm未満であるべきで、好ましくは0.3mm未満である。
【0109】
図5は、注入内腔133と共に外側チューブ102、中間チューブ103、及び内側チューブ105を含むPTAC 100の中心部から遠位部への移行を示す
図3のPTACの領域S5の拡大図である。外側チューブ102と外側チューブ外延部104との接続も示されている。
図5で、注入チューブ116の近位端は、連結管125の近位端に対して遠位側の位置にあるが、PTAC 100製造のためには、注入チューブ116の近位端が連結管125の近位端に対して近位側の位置にあることが好ましい。
【0110】
ガイドチューブコネクター132は、三つのガイドチューブ115を、三つのガイドチューブ115に前進及び後退のための推進力を供給する、中間チューブ103に接続する。中間チューブ103のこの動きは、PTAC 100の近位端の制御機構の動きによってもたらされる。連結管125は、内側チューブ105の遠位部の内側に位置し、三つの注入チューブ116のいずれとも接続し、内側チューブ105の前進及び後退が同時に注入チューブ116の前進及び後退に連動するようにする。いくつかのチューブ間のフラッシングスペースも
図5に示されている。具体的に示されているのは、中間チューブ103と外側チューブ102との間の外側環状間隙137、並びに内側チューブ105と中間チューブ103との間の内側環状間隙139である。これらの間隙137及び139はそれぞれ、PTAC 100の患者の身体への挿入に先立って、生理食塩水でフラッシュされなければならない。
【0111】
図5を見れば、注入チューブ116の近位端が内側チューブ105の注入内腔133とどのように流体連通しているかもわかる。注入チューブ116の内腔内に位置する放射線不透過性ワイヤー118は、注入チューブ116の近位端から近位側に延在し、連結管125の本体内に接続している。連結管125の本体内に接続する代わりに、三つの放射線不透過性ワイヤーを互いに溶接する及び/又は連結管125の近位端に取り付けることも想定される。直径が一様な中間チューブ103内での内側チューブ105の縦方向の動きは、連結管125及びそれに取り付けられた注入チューブ116をも縦方向に動かす。PTAC 100の近位端近傍の制御機構によるこうした縦方向の動きは、ガイドチューブ115の内腔を介して注入チューブ116を前進及び後退させ、外側に拡張させて標的脈管の内壁に貫入させて、焼灼液の送達を容易にする。
【0112】
図5は、三つの注入チューブ116がどのように内側チューブ105及び連結管125の遠位端から延在して、その後ガイドチューブ115の近位端のガイドチューブ115の外部層127の内腔に入るのかも示している。ガイドチューブ115及びガイドチューブコネクター132は、中間チューブ103の遠位部内と同軸的に接続している。したがって、中間チューブ103の縦方向の動きは、ガイドチューブコネクター132及びガイドチューブ115の縦方向の動きを引き起こし、PTAC 100の近位部の機構が、外側チューブ102及び外側チューブ外延部104に対してガイドチューブ115を前進させること及び後退させることを、可能にする。
【0113】
貫入深さ制限が、ガイドチューブコネクター132に対する内側チューブ105の前進を制限する機序であり得ることも、想定される。内側チューブ105の遠位端間又は連結管125とガイドチューブコネクター132の近位端の間に位置する、リング又は他の構造は、内側チューブ105の前進(遠位側への)を制限し、針119がガイドチューブ115の遠位端129を超えて貫入するのを制限する。そのような構造は、内側チューブ105、連結管125、注入チューブ116、ガイドチューブコネクター132、ガイドチューブ115の近位端、又は中間チューブ103等の
図5に示されるPTAC 100の内部構造に取り付け不能でも取り付け可能でも良い。そのような構造は、針119のガイドチューブ115の遠位端129を超える貫入深さの調整に使用可能なねじ山等の長さ調整機構を有することもできる。
【0114】
図6は、
図5に示されるPTAC 100のセクション6-6での横断面図である。
図6は、外側チューブ102、中間チューブ103、内側チューブ105、中間チューブ103と外側チューブ102との間の外側環状間隙137、並びに内側チューブ105と中間チューブ103との間の内側環状間隙139を含む、PTAC 100の本体の同軸要素を示す。
図6は、連結管125がどのように内側チューブ105の内側の、放射線不透過性ワイヤー118を有する三つの注入チューブ116をまとめるかについても示している。
【0115】
図7は、
図5に示されるPTAC 100のセクション7-7での横断面図である。
図7は、中間チューブ103の外側を拘束する外側チューブ外延部104に遠位側に接続する、外側チューブ102の同軸配置を示している。ガイドチューブコネクター132は、それ自体が中間チューブ103の内側に位置するガイドチューブコネクター132の内側に位置する外部プラスチック層127を有する三つのガイドチューブ115に接続する。このような構造により、中間チューブ103の縦方向の動きが、接続されているガイドチューブコネクター132及びガイドチューブ115における同様な動きを生じさせ得る。
【0116】
図8~11は、脈管周囲腎除神経にPTAC 100がどのように用いられるかを示す、一組の概略図である。
図8は、その事前配置状態での、外側チューブ102、外側チューブ外延部104、先細部106、及び遠位端109を有する遠位側に固定されたガイドワイヤー110を有するPTAC 100の遠位部の概略図を示している。三つの遠位開口部131の内の二つは、外側チューブ外延部104の表面上に示されている。
図8において、PTAC 100の遠位部は、腎臓ガイドカテーテル140の遠位端から腎動脈内の位置に押し出されている。内弾性膜(IEL)、中膜、外弾性膜(EEL)、腎動脈及び大動脈の外膜も示されている。
【0117】
図9は、ガイドチューブ115が腎動脈の内壁に対して外側に完全に拡張した状態の、腎動脈内のPTAC 100の遠位部の概略を示している。腎動脈及び大動脈が断面で示されているため、下側のガイドチューブ115は、腎動脈の内壁の一部と実際には接触しているが、示されていない。これは、この断面図が腎動脈を0oと180oで切ったものを合成しているためである。三つ目のガイドチューブ115は、見えない。これは、腎動脈の内表面に接触しすぎてPTAC 100の後に隠れているためである。ガイドチューブ115上の放射線不透過性マーカー122により、完全に拡張したガイドチューブ115が腎動脈の内壁に実際に接触していることを、施術者が可視化して知ることができる。ガイドチューブ115が外側チューブ外延部104内の開口部131から出ることで、外側に展開する際に横方向に支持されることは、非常に重要である。
図4に示される中心支え部121によって、半径方向に支持される。ガイドチューブが半径方向及び横方向に支持されることは、ガイドチューブが一様に拡張し、PTAC 100の遠位部が標的脈管の中心に位置し、
図10に示されるように注入針119が展開できるために、非常に重要である。
【0118】
図10は、遠位注入針119を有する注入チューブ116が完全に展開して焼灼液を腎動脈の外膜内及び/又は深部の脈管周辺空間内に送達する状態での、腎動脈内のPTAC 100の遠位部の概略を示す。理想的には、注入針119の遠位端又はその近傍にある針遠位開口部117は、
図10の上側の針119について示されるように、EELの先の外膜の外側に配置されるべきである。三つ目の針119及びガイドチューブ115は、PTAC 100の本体の後に隠れており、
図10では見えない。腎除神経の標的である交感神経は、外膜内に位置しているか、又は外膜から数mmだけ外側に位置している。具体的には、IELから2mm~4mmだけ奥の位置が、針遠位開口部117にとって好適な位置である。交感神経がさらに奥にある場合には、4mm~8mmの距離を用いることが想定される。
【0119】
図11は、焼灼液を脈管周囲空間に送達する手順の間に針誘導要素/ガイドチューブ115及び遠位針119を有する注入チューブ116を前進及び後退させる制御機構を有する、PTAC 100の近位部300(即ち、ハンドル)の実施形態の概略図である。ハンドル300は、押しボタン332及び342等の第一の制御及び第二の制御によって作動するロック機構も有している。具体的には、ボタン332は、押されると、外側チューブ制御シリンダー335に対するガイドチューブ制御シリンダー333の動きのロックを解除する。外側チューブ制御シリンダー335は、外側チューブ102に取り付けられている。移行部338は、ねじれを回避するために、外側チューブ制御シリンダー335と外側チューブ102との間の接続張力を緩和する。ガイドチューブシリンダー333は、
図2~7の中間チューブ103に取り付けられており、中間チューブ103は、
図2~10のガイドチューブ115に接続されている。
【0120】
ガイドチューブ制御機構330は、PTAC 100の使用者が、ガイドチューブ115の遠位側への動き及び近位側への動きを制御することを可能にし、ボタン332及びガイドチューブ制御シリンダー333を含んでいる。注入針制御機構340は、PTAC 100の使用者が、遠位注入針119を有する注入チューブ116の遠位側への動き及び近位側への動きを制御することを可能にし、ボタン342及び針制御シリンダー345を含んでいる。
【0121】
ボタン342は、押し下げられると、ガイドチューブ制御シリンダー333に対する針制御シリンダー345の動きのロックを解除する。これで、
図3~7の中間チューブ103に対する内側チューブ105の相対的な縦方向の動きが可能となり、遠位注入針119を有する注入チューブ116がガイドチューブ115を通って前進及び後退するようになる。
【0122】
図11に示されるハンドル300は、フラッシングポート344を有している。通常、Luer接続具を有する、フラッシングポート344は、蓋346と共に示されている。フラッシングポート344は、
図5及び6に示される環状間隙137及び139を生理食塩水によりフラッシュするのに用いられる。焼灼液コネクター接続具を通常有する、注入ポート354は、蓋356と共に示されている。注入ポート354は、焼灼液の
図3及び5の内腔133内への注入を可能とし、内腔133は、注入チューブ116の内腔と流体連通しており、注入チューブ116の内腔は、針遠位開口部117と流体連通している。
【0123】
図11には、一つのフラッシングポート344が示されているが、PTAC 100内の内部空間(注入内腔以外の)をフラッシュするのに二つ又はそれ以上のフラッシングポートを用いることも想定される。二つのボタン332及び342を、単一のボタン及びシリンダー機構に置き換えることも想定される。その場合、PTAC 100の近位部内の伸縮機構は、単一のボタンを押すと、ガイドチューブ115を前進させ、次に、遠位注入針119を有する注入チューブ116を前進させる。単一のボタンの押し下げを解除すると、まず遠位注入針119を後退させ、次にガイドチューブ115を後退させる。
【0124】
注入ポート354の焼灼液コネクター接続具に標準的なLuer接続具又はLuerロック接続具を用いることもできるが、焼灼液の注入に特製の接続具を用いるのが、本明細書に開示のPTAC 100の好ましい特徴である。焼灼液が焼灼性/毒性であるため、注入ポート354に特製の接続具を用いれば、一つ又は複数の注入ポート(例えば、344)内、又は通常腎臓ガイドカテーテルと共に用いられる「Y字」アダプター内の標準的なLuer接続具内への焼灼液の偶発的な注入が低減される。施術者が誤って標準的なLuerロック注射器内のフラッシング液又は他の薬剤を注入チューブの内腔を介して注入することも、防止される。カテーテルの死腔/内容積を最小化する、標準的なLuer接続具の内腔より小さな内腔を有する特製の接続ポートを使用できることも、利点の一つである。
【0125】
注入ポート354に接続するように設計された特製の接続具を有する特製の注射器は、PTAC 100とは別のパッケージで、或いは同じパッケージで提供される。そのような注射器は、例えば0.25mLのエタノール等の腎除神経を達成するための好適な量の焼灼液を、正しい量だけ精確に含むことができる。治療対象の組織の体積が腎動脈の直径と共に変わるため、内容積が0.1mLから0.5mLまでで、それぞれが注入ポート354に接続する特製のコネクターを有する、いくつかの注射器が提供される。生理食塩水でフラッシュする場合、或いは他の液体(例えば、造影剤又は麻酔薬)の注入が手順の一部である場合には、可視化、フラッシング、腎除神経、又は疼痛軽減用の好適な量及び種類の液体を含む、追加の注射器が提供される。特製の接続具を有する焼灼液注入注射器が、注入ポート354等のポートを介するフラッシング用の注射器の色又はマーキングとは異なる色又はマーキングを有することが、想定される。
【0126】
ハンドル300も、一方向に回転すると、ガイドチューブ115の遠位端129を超えて延在している注入針119間の間隔である貫入深さL2を低減する、
図4に示す間隔調整シリンダー348を有する。シリンダー348が他の方向に回転すれば、貫入深さL2が増大する。達成可能な間隔を示すハンドル300上のマーキングを有するPTAC 100の使用者が、間隔調整シリンダー348にアクセス可能であることが、想定される。ハンドル300の好ましい実施形態において、間隔調整シリンダー348は、工場でPTAC 100を組み立てて試験する間にのみアクセス可能である。この製造方法は、
図4の貫入深さL2の好適な較正を確実にするためであって、貫入深さL2は、各PTAC 100の製造及び試験の間に工場で事前に設定される。貫入深さL2を精確に設定及び較正する能力は、製造歩留まり向上に決定的に重要である。言い換えると、内側チューブ105及び中間チューブ103等といったPTAC 100の部品の相対的な長さが数mmも変動しても、間隔調整シリンダー348を用いて貫入深さL2を精確に調整できる。この好ましい実施形態において、PTAC 100には、
図4に示される貫入深さL2に従った表示がなされる。例えば、PTAC 100の貫入深さL2は、2.5mm、3mm、及び3.5mmの三種類となる。ねじ山又は他の機構(特に表示しない)を用いて、所望の貫入深さに設定された間隔調整シリンダー348をロックすることも想定される。間隔調整シリンダー348を本明細書に示すが、移動シリンダー等の他の機構を貫入深さL2の調整に用いることも想定される。
【0127】
ハンドル300の機能は、PTAC 100を脈管周囲腎除神経(PVRD)用に稼働させることである。この手順には、以下のステップが含まれるが、各ステップが必須ではなく、当業者ならわかるように、短縮することも修正することも可能である:
1)ポート344及び354を介して、PTAC 100の全内容積を生理食塩水でフラッシュする。
2)事前に配置した
図8~10のガイドカテーテル140を介して、PTAC 100を挿入し、
図8に示されるPTAC 100の遠位部を患者の腎動脈内の所望される部位に配置する。
3)ボタン332を押し、ガイドチューブ制御シリンダー333に対してロックされている外側チューブ制御シリンダー335を持ちながら、切り込み331がポート344と係合して
図5の中間チューブ103の前進を制限するまで、ガイドチューブ制御シリンダー333を遠位方向に押し、
図9に示すように、中空軸120の内側から開口部131を通って外側にガイドチューブ115を完全に展開させる。
4)ボタン332を解除すると、ガイドチューブ制御シリンダー333に対する外側チューブ制御シリンダー335の相対的な動きが再びロックされる。
5)ボタン342を押すと、ガイドチューブ制御シリンダー333に対する注入針制御シリンダー345の相対的な動きが可能となり、外側チューブ制御シリンダー335(今やガイドチューブ制御シリンダー333に対してロックされている)を持ちながら、貫入制限機構が注入針制御シリンダー345の動きを停止させて、針119のガイドチューブ115の遠位端129に対する事前に設定された貫入深さL2が達成されるまで、遠位端349を有する注入針制御シリンダー345を前進させる。これを行うには次の二つの方法がある:1)ガイドチューブフラッシュポート344と係合するまで、注入針制御シリンダー345の遠位端349を前進させる。又は2)内部間隔347を、注入針制御シリンダー345の内側の間隔調整シリンダー348の近位端に対して接近させる。
6)ボタン342から指を離すと、ガイドチューブ制御シリンダー333に対する注入針制御シリンダー345の相対的な動きが再びロックされる。ここで、PTAC 100は
図10に示される配置となり、針119が、内弾性膜(IEL)を貫通し、IELから事前に設定された距離(通常は0.5mm~4mm、好ましくはおよそ2mm~4mm)だけ腎動脈の脈管壁内に貫入している。貫入深さが2mm~3mmなら、腎動脈の内膜及び中膜の損傷が最小となる。いくつかの異常な標的脈管については、8mmと大きい貫入深さが必要となる。
7)この状態で、注射器又は注射器付き連結管(図示せず)をポート354に取り付け、所望する量の焼灼液を注入する。この焼灼剤は、エタノール(エチルアルコール)、蒸留水、高張生理食塩水、低張生理食塩水、フェノール、グリセロール、リドカイン、ブピバカイン、テトラカイン、ベンゾカイン、グアネチジン、ボツリヌス毒素、配糖体、又はいずれかの好適な神経毒性液等の焼灼液で良い。この注入には、脈管壁内及び/又は脈管のすぐ外側の空間内への、二つ又はそれ以上の神経焼灼液或いは局所麻酔薬の組合せを一緒に又は連続しての注入(不快感を低減させる局所麻酔薬が最初で、続いて焼灼剤を送達する)、及び/又は高温液(或いは蒸気)、又は非常に低温の(冷凍焼灼用の)液体を注入が含まれ得る。通常の注入量は、0.1mL~5.0mLである。これにより、交差して、標的脈管の円周まわりに焼灼環を形成する、複数の焼灼領域(各注入チューブ/注入針につき一つ)が生成される。神経焼灼剤注入前の試験注入の際又は治療注入の際のいずれかにおいて、焼灼領域のX線での可視化を可能にする造影剤を追加することができる。焼灼剤としてエタノールを用いる場合、0.5mL未満の量で十分である。これは、交感神経を含む必要な空間が完全に満たされるだけでなく、偶発的に腎動脈内に放出されるとしても患者の腎臓を損傷しないほどにその量が小さいためである。理想的には、0.1mLないし0.3mLのエタノールが用いられる。使用量は、全ての腎動脈について同一であって良く、或いは、エタノールを注入する腎動脈の直径に応じて変えることもできる。エタノールが親水性で脂溶性であるため、拡散が促進され、このような少量でも有効である。焼灼剤又は焼灼液を注入する前に、
図2~4の針119が標的脈管の脈管壁内へと展開していることを蛍光透視的に確認することが望ましい。
8)次に、焼灼液を含む注射器に代えて、生理食塩水を含む注射器をポート354に取り付ける。理想的には、PTAC 100内に焼灼液が確実に残らないようにするため、死腔の総容積より僅かに多い量の生理食塩水を注入する。例えば、PTAC 100内の死腔が0.1mLであるなら、例えば、0.1mL~0.15mLの生理食塩水を注入すれば、
図10の注入針119の遠位開口部117を介して適切な脈管周囲組織へとすべての焼灼液が確実に送達される。
9)ボタン342を押し、外側チューブ制御シリンダー335を持ちながら、注入針119がガイドチューブ115内に完全に後退するまで、注入針制御シリンダー345を近位方向に引き戻す。注入針制御シリンダー345が正しい位置に到達して注入針119が完全に納められる際に、カチっと音がする、又は停止することが想定される。
10)ボタン342から指を離すと、ガイドチューブ制御シリンダー333に対する注入針制御シリンダー345の動きがロックされる。
11)ボタン332を押すと、ガイドチューブ制御シリンダー333に対する外側チューブ制御シリンダー335の相対的な動きが可能になり、注入針制御シリンダー345に対してロックされる。
12)外側チューブ制御シリンダー335に対してガイドチューブ制御シリンダー333を近位方向に後退させる。この結果、
図9の形態のガイドチューブ115が、PTAC 100の外側チューブ外延部104内の開口部131の内側に後退する。
13)PTAC 100をガイドカテーテル140内に引き戻す。
14)ガイドカテーテル140を別の腎動脈に移動させる。
15)別の腎動脈について、ステップ3~13を繰り返す。
16)患者の身体からPTAC 100を除去する。
【0128】
ステップ8をなくすこと、及びステップ1において、患者の身体外で、生理食塩水の代わりに、焼灼液で内容積/死腔をフラッシュすることが、非常に望ましい。これは、ガイドチューブ115及び針119が完全に展開した状態で行うものと考えられる。焼灼液によるフラッシングの間に表面上に残留しているいかなる焼灼液もPTAC 100の表面から除去するために、この技法がカテーテルの患者身体内への前進に先立って、PTAC
100の遠位部の生理食塩水による洗浄に用いられることも望ましい。
【0129】
上記のように、ボタン332及び342は、押されてロックする際及び指が離れる際に、制御シリンダー類の動きを可能にするが、下記のように、それらが連動することも想定される:
1.最初の連動は、ガイドチューブ制御シリンダー333がその最も遠位部にあって、外側チューブ102が引き戻されかつガイドチューブ115が完全に展開している場合にのみ、注入針制御シリンダー345のロック解除を可能にする。
2.二番目の連動は、注入針制御シリンダー345がその最も遠位部にあって、針119がガイドチューブ115内に後退している場合にのみ、ガイドチューブ制御シリンダー333のロック解除を可能にする。上記の制御機構とボタン332及び342との組合せによって、PTAC 100の使用法が、合理的に単純かつ容易になる。基本的に、施術者がボタン332を押すと、ガイドチューブ制御シリンダー333が前進してガイドチューブ115が外側に拡張し、ボタン342を押すと、針119が前進して腎動脈の内壁に貫入する。注入が実施され、次いでボタン342を押すと反対の手順が行われ、針119が後退し、さらにボタン332を押すと、ガイドチューブ制御シリンダー333が近位側に後退して、ガイドチューブ115をPTAC 100の本体内に後退させる。
【0130】
ボタンを押すことでハンドルが作動し、各部が縦方向に押されて或いは引かれてガイドチューブ及び針が展開することは
図11に示されているが、ロック又は縦方向の動き用の回転機構等、他の技術も使用可能であることが想定される。ここに本明細書の一部を構成するものとしてその全体が援用される、2012年10月23日に提出されたFischellらの米国特許出願番号第13/643,070号では、
図33で、そのような回転ロック機構が示されている。
【0131】
上記の方法のステップ8に記載のように、注入内腔を生理食塩水でフラッシュしてから充填することには、治療中に毒性の焼灼液を偶発的に腎動脈に導入することがないという利点があるが、低死腔のPTAC 100によって可能な別の技術がある。具体的には、もし死腔が小さく、焼灼液がエタノール、高張生理食塩水、又は低張生理食塩水なら、患者の身体外で、焼灼液を用いて死腔を満たすことができる。腎臓に向かう大量の血液と混合されるため、0.5mLのエタノール、高張生理食塩水、又は低張生理食塩水を直接注入しても、腎臓をいためない。この考え方から、焼灼液注入後のフラッシングステップが削減され、治療手順中の注入ステップが、動脈一本当たり二回から一回に低減される。例えば、もし死腔が0.1mLで、所望されるエタノールの量が0.2mLなら、0.1mLのエタノールを用いて、患者の身体外で死腔を満たすことができる。その後、カテーテル及び針を最初の腎動脈内に展開させる。次いで、0.2mLの追加のエタノールを注入すると、0.2mLが脈管周囲空間内に送達され、0.1mLが死腔内に残ることになる。針119及びガイドチューブ115を後退させ、PTAC 100が他の腎動脈内で展開し、別の0.2mLのエタノールを注入する。針119及びガイドチューブ115を後退させ、PTAC 100を、患者の身体から除去する。この焼灼手順においては、腎動脈内に漏れ込むエタノールは非常に少量(0.05mL未満)となり、その10倍でも腎臓をいためない。このようにステップが低減される方法の別の利点は、焼灼液のみが脈管周囲空間内に送達されるため、上記の手順であれば焼灼液が送達される前に最初に送達された生理食塩水による焼灼液の「希釈」が抑えられることである。
【0132】
この手順の一つの変形形態では、PTAC 100が患者の身体内に配置される前に、注入ポート354用の接続具上に蓋356が固定されることで、PTAC 100が腎動脈内に挿入される間に焼灼液が腎動脈に入るのを防止することも、留意すべきである。また、PTAC 100が一本の腎動脈から反対側の腎動脈に移動する際に、そのようなシール蓋356を注入ポート354用の接続具上に配置することで、焼灼液が第二の腎動脈に入るのも防止される。蓋356は、PTAC 100が患者の身体から除去される際にも、注入ポート354用の接続具上に固定される。腎除神経処置の間に、蓋356は、焼灼液を治療対象の脈管の脈管周囲空間内に注入するためだけに、除去される。
【0133】
注入ポート354に取り付けられた栓も、閉じると、焼灼液が
図2~10の針遠位開口部117から漏れるのを防止できる。当然ながら実際に、PTAC 100が患者身体の動脈系内で移動する際に、蓋356が取り付けられていないと、動脈系内の血圧によって、PTAC 100の注入内腔内のいかなる液体も注入ポート354から出てしまう。
【0134】
フラッシングステップの有無を組み合わせることもできる。例えば、PTAC 100の死腔に焼灼液を事前に注入することができ、針119及びガイドチューブ115を展開した後に、焼灼液を生理食塩水で脈管周囲空間内に洗い流すことができる。焼灼液を脈管周囲空間内に注入した後、針119及びガイドチューブ115は脈管周囲空間外に後退でき、死腔に焼灼液を再び満たして、生理食塩水で死腔外に洗い出すことができる。その後、他の腎動脈を治療することができる。
【0135】
PTAC 100を、完全に拡張したガイドチューブ115及び完全に後退した注入チューブ116と共に梱包することができる。こうする理由は、ガイドチューブが、ポリイミド等のプラスチックでできていて、湾曲した形状に成形されるのが、好ましいためである。そのようなプラスチック材料は、梱包されて中空軸120内に後退すると、中空軸120によって直線状に変形されることがある。針119をその遠位端に有する注入チューブ116が完全に拡張した状態でデバイスを出荷することもでき、こうすれば、ガイドチューブ115及び注入チューブ116の形状が最も保持される。この場合、取扱者が針に刺されないことを確実にするため、デバイスは保護容器に入れて出荷される。
【0136】
図11のハンドル300が遠位部を有し、その遠位部が先細突出構造338を有し、先細突出構造338がハイポチューブ82に取り付けられ、そのハイポチューブ82がPTAC 100の全長のほとんどに延在していることも、理解されるはずである。
図18に示されるように、ハイポチューブ82がチューブ92に接続され、チューブ92が、PTAC 100の外側チューブ102に接続されている。通常、ハイポチューブは、皮下注射針と同じ種類の金属で、即ち、一般にはステンレススチールで、できている。
【0137】
図12は、管腔内中央配置機構(ICM)250によって支持された自己拡張性ガイドチューブ215を有するPTAC 200の別の実施形態の縦断面図であって、ICM250は、自己拡張性ガイドチューブ215の拡張の均一性を補助し、さらにはガイドチューブ215を支持する。 ICM250の中心部204は、標的脈管の内壁に対して開くためのより大きな表面を提供し、ガイドチューブ215の遠位端229が、標的脈管の内壁によって押しのけられる、又は遠位注入針219を有する注入チューブ216が標的脈管の内壁を通って前進する際に、横方向に動くのを防止する。
図2~11のPTAC 100と同様に、ガイドチューブ215は針誘導要素であって、注入針219を有する注入チューブ216が標的脈管の内壁を通って前進する際に、外側に拡張して注入チューブ216の遠位端で注入針219を支持/バックアップする。この支持又はバックアップは、
図1に示されるPTAC 50の実施形態に比べて、
図12に示されるようなPTAC 200の別の実施形態の重要な特徴である。
図12に示されるPTAC 200には、近位部223を有する支え220、遠位先細部226、及び放射線不透過性マーカー帯224が含まれる。遠位先細部226の遠位側が、コアワイヤー211及び外側層228を有する固定されたガイドワイヤー210である。各注入チューブ216の内腔内の放射線不透過性ワイヤー218は、それらの配置が蛍光透視下で可視化されるように、注入チューブ216の放射線不透過性を増大させる。
【0138】
図12のPTAC 200は、四つの同心の注入チューブ216と共に四つのガイドチューブ215を有している。理想的には、三本ないし五本の針が腎除神経に用いられる。神経焼灼用の焼灼液としてエタノールを用いる場合には、三本の針で十分である。これは、エタノールが親水性であるため、即ち、エタノールが人体組織内に容易に拡散するためである。
【0139】
コアワイヤー211は、PTAC 200の中心部と連結して、遠位側に延在して、固定されたガイドワイヤー210の中心をなす。固定されたワイヤー及びガイドワイヤーの形成は、医療機器の分野で良く知られている。
【0140】
ICM250には、遠位環202、支持支柱208、放射線不透過性マーカー206を有する中心部204が含まれる。ICM250は、拡張の間及びガイドチューブ215を通って注入チューブ216が前進する間に、ガイドチューブ215を追加的に半径方向及び円周方向/横方向に支持する。中心部204の外側も、小さいが平坦な又は僅かに湾曲した表面を有し、標的脈管の内壁と係合又は接触して、ガイドチューブ215の遠位端が標的脈管の内壁に接触する場合に比べ、脈管壁の外傷を低減する。
図12からわかるように、中心部204の表面は、ガイドチューブ215の遠位端が標的脈管の内壁に接触する前に、脈管壁に接触する。このため、より広い表面が脈管壁に接触し、ガイドチューブ215の遠位端229が標的脈管の内壁を損傷する可能性を低下させる。
【0141】
図12及び13に示されるように、ICM250の遠位側に取り付けられるガイドチューブ215の構造形成にはいくつかの技法があることが、想定される。 一つの技法は、ニチノール製チューブを用いて
図12に示される形状に形成することである。この形状を加熱処理すれば、機械加工により材料を除去してガイドチューブ215の遠位端229を露出させることができる。二度目の機械加工法では、ガイドチューブ215の半分を除去し、PTAC 200のICM250のその部分をおよそ90oから270oにする。放射線不透過性栓206は、水平な部分204内に取り付けられ、ICM250の遠位端は、遠位環202に取り付けられる。
【0142】
別の技法では、ガイドチューブ215がプラスチック製で、ニチノール製の平滑なワイヤーが、三つの部分、プラスチック製ガイドチューブに取り付けられる近位部、平滑で水平な形の中心部、及び遠位側の湾曲したICM部、を有している。
【0143】
図12には、自己拡張性ガイドチューブ215が外側に拡張できるようにするために、その近位位置即ち開口位置に後退している、放射線不透過性マーカー帯213を有するシース212が示されている。放射線不透過性栓206は、ガイドチューブ215の標的脈管の内壁寄りの及び/又は内壁にごく接近した好適な拡張を確認する、蛍光透視的可視化を可能にする。遠位注入針219及び遠位開口部217を有する注入チューブ216は、ガイドチューブ215を通って前進し、標的脈管の内壁に貫入する。次いで、焼灼液が、針遠位開口部217を通って、脈管周囲空間内に注入される。その後、注入チューブ216は、ガイドチューブ215内に後退し、シース212は、遠位方向に前進して、ガイドチューブ215及びICM250を折り畳んで収容する。シース212の遠位端近傍の放射線不透過性マーカー帯213が、支え220上の放射線不透過性マーカー帯224と隣接している場合、施術者は、PTAC 200がその収縮位置にあることを確認でき、ガイドカテーテル内に後退させる。
【0144】
図13は、
図12の領域S13の縦断面拡大図であって、完全に展開したPTAC 200の構造を示している。遠位注入針219を有する注入チューブ216、針遠位開口部217、及び放射線不透過性ワイヤー218が、取り付けられたICM250を有するガイドチューブ215の遠位端229から同軸的に前進していることが、示されている。ICM250は、放射線不透過性マーカー206を有する中心部204を有している。中心部204は、ガイドチューブ215の遠位端上でガイドチューブ215に固定して取り付けられている、近位端を有している。中心部204は、支持支柱208と一体で形成され、中心部204の遠位端で接続していることが、
図13に示されている。
【0145】
ガイドチューブ215、中心構造204、及び支持支柱208は、形状記憶合金又はニチノール等の弾力性金属でできている。具体的には、
図12及び13に示される実施形態において、ニチノール製の単一チューブは機械加工され、曲げられ、熱処理されて、
図12及び13に示される形態となる。 ガイドチューブ215は、中心部204がそうであるように、円筒形であって、中心部204は、放射線不透過性マーカー206が取り付けられている。支持支柱208は、円筒が除去された部分を有している。
【0146】
ガイドチューブ215が
図1~10に示されるようなプラスチックでできていることもあり得て、そのプラスチックが、ガイドチューブ215に取り付けられている丸い又は平坦なニチノール製のワイヤーを有して、そのプラスチックの自己拡張特性を増強し、ICMの支持支柱208から遠位側に延在していることも、想定される。ガイドチューブ215の構造における異なる変形形態が、ガイドチューブをより柔軟にするために、使用可能であることも、想定される。例えば、ガイドチューブ215の長さに沿ってらせん形にレーザーで切り出したものである。
【0147】
図14は、
図12のPTAC 200の領域S14の縦断面拡大図である。
図14は、遠位放射線不透過性マーカー帯213を有するシース212を示している。 ガイドチューブ215、注入チューブ216、放射線不透過性ワイヤー218、及びコアワイヤー211も示されている。PTAC 200の中心部及び近位部は、従来技術の開示、米国特許出願番号第13/294,439号、及び第13/342,521号に示されている。これには、施術者が標的脈管の内壁を目指してガイドチューブ215を外側に拡張させることを可能にする、PTAC 200の近位端近傍の機構が含まれている。また、これには、ガイドチューブ215を通った標的脈管の内壁内への遠位注入針219を有する注入チューブ216の前進を制御する機構も含まれている。
【0148】
Fischellらは、米国特許出願番号第13/643,070号において、自己拡張性ガイドチューブを解放して、注入針を標的脈管の外膜内又は(外膜の外側の)深部に前進させるために特別に設計された、いくつかのハンドル/近位部の構成を示している。そのような設計は、
図12~14のPTAC 200と連動して良好に機能する。
【0149】
図12~14のPTAC 200は、自己拡張性ガイドチューブ構造を示しているが、手動で拡張させる
図2~10のPTAC 100にICMを加えて、標的脈管の内壁を目指すガイドチューブをさらに支持しバックアップすることが、想定される。
【0150】
本願のPTAC 200の重要な発明の特徴は、
図4及び
図12の針誘導要素/ガイドチューブ115及びガイドチューブ215用の半径方向及び横方向/円周方向の支持構造である。これらには、開口部131を有する中空軸120、及び
図4のガイドチューブ115を半径方向及び横方向に支持するための中心支え部121、並びにガイドチューブ215を半径方向及び横方向に支持する
図12のICM250が含まれる。
【0151】
図15は、本願の別の実施形態である、PTAC 300の縦断面図である。PTAC 300は、組み合わされて遠位放射線不透過性マーカー322を有する単一注入チューブ集合体315内となるガイドチューブ316及び注入チューブ318、遠位開口部317を有する遠位端329及び遠位注入針319、並びに針319の蛍光透視下での可視性を増進する注入チューブ318の外表面上の金メッキを有している。PTAC 300は、遠位先細突出部306、前進する注入チューブ集合体315を通す開口部331を有する外側チューブ302を有している。
【0152】
PTAC 300は、注入内腔333とつながっている内側チューブ305をも有し、注入内腔333は、注入チューブ/ガイドチューブ集合体315の内腔と流体連通しており、注入チューブ/ガイドチューブ集合体315の内腔は、注入針319の内腔と流体連通している。内側チューブ305は、連結管325を介して注入チューブ/ガイドチューブ集合体315に取り付けられている。
図3及び4の中心支え部121に類似している、中心支え部321は、傾斜344を提供し、傾斜344は、注入チューブ集合体315を外側に曲げ、注入針319による標的脈管の内壁への貫入を半径方向に支持する。
【0153】
中心支え部321の遠位突出部345は、遠位先細突出部306とつながる。外側チューブ302、遠位先細突出部306又は中心支え部121も、放射線不透過性マーカーを含むことができ、或いはタングステンフィラー含有ポリウレタン等の放射線不透過性フィラーを含むプラスチックでできていて良い。中心支え部321は、針遠位開口部317がPTAC 300の本体内に完全に後退してPTAC 300の使用者が針刺しを回避できるように、十分な距離だけ近位方向に延在しなければならない。
【0154】
遠位先細突出部306は、好ましくは、比較的低デュロメータ硬度のプラスチック又は柔軟なプラスチックでできている。注入針319は、その形状を保持するいかなる金属でできていて良いが、L605等のコバルトクロム合金又はニチノール等の形状記憶合金でできていることが好ましい。
【0155】
PTAC 300が、
図3のPTAC 100のように遠位固定ガイドワイヤー有することができること、或いはオーバー・ザ・ワイヤー式又は急速交換式のいずれかでガイドワイヤー上を送達され得ることも、想定される。 同様に、
図2~11のPTAC 100又は
図12~14のPTAC 200は、本願に開示の他の実施形態ように示されるような固定されたガイドワイヤー211の代わりに、
図15の先細突出部306に類似した柔軟な先細突出部を、使用できる。
【0156】
PTAC 300は、針の送達において、
図2~11のPTAC 100に比べて、ステップが一つ少ないという利点を有している。PTAC 300の遠位端を所望の部位に配置した後に、施術者は、PTAC 300の近位端の機構を用いて、内側チューブ305を外側チューブ302に対して前進させることができる。こうすることで、注入チューブ集合体315が前進し、中心支え部321の傾斜344により曲げられる際に外向きになり、開口部331を出て、外側チューブ302に入る。針319は、標的脈管の内壁に貫入して、注入チューブ/ガイドチューブ集合体315の遠位端によって貫入が制限される。注入チューブ/ガイドチューブ集合体315上の遠位放射線不透過性マーカー帯322と針319上の金メッキとの組合せによって、焼灼液を脈管周囲空間内に送達するために、施術者がPTAC 300の展開を可視化できるようにする。
【0157】
PTAC 300のこの実施形態において、注入チューブ/ガイドチューブ集合体315は、外側に拡張して、注入針319が標的脈管の内壁を通って前進する際に、注入針319を支持/バックアップする針誘導要素である。
【0158】
図16は、本明細書に開示のPTAC400のさらに別の実施形態の遠位部の縦断面図であって、この実施形態では、四つのガイドチューブ415を外側に拡張させて、標的脈管の内壁に係合させる、膨張可能なバルーン450が用いられる。この実施形態では、三つないし八つのガイドチューブが想定され、腎除神経のためのエタノールの送達には三つのガイドチューブが好ましい。
【0159】
PTAC 400は、外層425を有し遠位側に取り付けられ固定されたガイドワイヤー420、コアワイヤー411、及び遠位先端428を有している。
図16は、遠位放射線不透過性マーカー422を有するガイドチューブ415と共に、その完全に展開した位置でのPTAC 400を示している。ガイドチューブ415内で同軸上にあるのは、注入チューブ416、先の尖った遠位注入針419、ガイドチューブ415の遠位端429を超えて外側に配置された遠位開口部417である。放射線不透過性ワイヤー418は、死腔低減のために注入チューブ416の内腔内にあって、かつ可視性を増大させる。
【0160】
PTAC 400の遠位部は、先細部426、放射線不透過性マーカー帯424、及び近位部423を有している。要素423、424、及び426を含めて、この先細部は、閉塞部430と呼ばれる。閉塞部430は、遠位先端428、外層425、及びコアワイヤー411を有する、固定されたガイドワイヤー420に取り付けられている。この別の実施形態が持つ他の重要な特徴は、シース402上の放射線不透過性マーカー帯413であって、放射線不透過性マーカー帯413は、PTAC 400がその収縮位置にあって、シース402が最も遠位部にあって、その結果、ガイドチューブ415及び注入チューブ416が完全に収縮しているかどうかが施術者に容易にわかるように、閉塞部430上の放射線不透過性マーカー帯424と共同して閉塞部430に対するシース402の遠位端の位置を示す。遠位注入針419を有する注入チューブ416が前進して標的脈管の内壁に貫入する際に、ガイドチューブ415が標的脈管の内壁に対するその位置を維持するように、注入チューブ416の事前に形成された曲率半径は、ガイドチューブ415の曲率半径に類似すべきである。具体的には、注入チューブ416の遠位部の中心軸の曲率半径は、ガイドチューブ415の中心軸の曲率半径とほぼ同一であるべきである。ガイドチューブ415及び注入チューブ416の中心軸の曲率半径は、それぞれ1mm以内であるべきで、理想的にはそれぞれ0.2mm以内とすべきある。単一な曲率半径を有する湾曲形状が
図16に示されているが、ガイドチューブ415及び注入チューブ416の湾曲形状は、それぞれが異なる曲率半径を有する、二つ又はそれ以上の部分からなって良い。
たとえこれらの部分が二種類又はそれ以上の曲率半径を有するとしても、完全に展開した際の注入チューブ416の湾曲形状を、その縦軸がガイドチューブ415の湾曲部内腔の縦軸と同軸のものとすることが、重要である。言い換えると、前進した注入チューブ416は、前進したガイドチューブ415内に完全に収まらなければならない。曲率半径が著しく異なる場合、注入チューブ416の曲率半径は、ガイドチューブ415の曲率半径より小さくなければならず、これは、注入チューブ416が前進する際に、注入チューブ416がガイドチューブ415を標的脈管の内壁から押し離さないようにするためである。これら二つの曲率半径の特徴は、二つとも互いに20%以内でなければならず、理想的には5%以内とすべきである。
【0161】
図2~11のPTAC 100と同様に、ガイドチューブ415は、針誘導要素であって、外側に拡張して、注入針419を有する注入チューブ416が標的脈管の内壁を通って前進する際に、注入チューブ416の遠位端で注入針419を支持/バックアップする。
【0162】
図16は、その近位端で内側チューブ405に、その遠位端で閉塞部430に取り付けられている膨張可能なバルーン450を示している。内側チューブ405内の側孔452は、内側チューブ405の膨張内腔433と膨張可能なバルーン450の内部空間454との間に流体連通をもたらす。これにより、
図1に示されるINAS 50の場合に比べ、ガイドチューブ415の半径方向の安定性が著しく向上する。これは、バルーン450がガイドチューブ415を半径方向にしっかりと支持するためである。バルーン450の外側が各ガイドチューブ415に固定して接続されても良い。この構成において、ガイドチューブ415に接続されている、バルーン450は、ガイドチューブ415を一様に拡張させ、PTAC 400の遠位部を中心配置を改善するため、ガイドチューブ415の横方向安定性を向上させる。
【0163】
PTAC 400とガイドチューブ415は、上記の実施形態と同様に、前進することも後退することもでき、或いはPTAC 400とガイドチューブ415が内側チューブ405に接続されて、注入チューブ416のみがガイドチューブ415の内腔内を縦方向に移動可能であっても良い。
【0164】
上記の実施形態と同様に、PTAC 400を単独のガイドワイヤー上を前進するように、或いはPTAC 400をまったくガイドワイヤーをゆうしないように、構成することもできる。また、
図15のPTAC 300と同様に、ガイドチューブ415と注入チューブ416を組み合わせることができる。
【0165】
図16に示される構成に関して、遠位放射線不透過性マーカー帯413を有するシース402は、引き戻されて、ガイドチューブ415が外側に拡張するのを可能にする。放射線不透過性ワイヤー418並びに放射線不透過性マーカー帯422、424、及び413は、金、プラチナ、又はタンタル、或いはそのような金属の合金等のいずれかの高密度金属でできていて良い。
【0166】
バルーン450は、柔軟でも半柔軟でも非柔軟でも良いが、可撓性の柔軟なバルーンが好ましい。これは、このようなバルーン450の膨張圧を変えることによって、拡張したガイドチューブ415の直径を容易に設定できるためである。ガイドチューブ415をバルーンの外側に接続することで、バルーン内にガイドチューブ415を配置した場合に比べ、構造が単純になる。こうすることで、ガイドチューブ415の遠位端429で標的脈管の内壁と係合させることが可能になり、バルーン450の全体が標的脈管の内壁に接触しなくなる。バルーン450が標的脈管の内壁に接触すると、上皮細胞がある程度剥落して、望ましくない新生上皮過形成が生じることがある。通常、バルーンは、膨張内腔433を介した生理食塩水の注入により10~100psiの膨張圧で膨張する。
【0167】
図16は、ガイドチューブ415を半径方向及び横方向に支持する膨張可能なバルーン450を示しているが、ガイドチューブ415の下で膨張可能な何らかの機械的構造の使用も想定される。そのような構造は、ガイドチューブに実際に接続されても接続されなくても良い。例えば、末端同士が合致すると解放される、カージャッキに似た構造も使用可能である。 末端同士を引いて合致させるねじ山又は単なるワイヤー又はチューブでも、ガイドチューブ415を支持する構造を形成できる。
【0168】
図16のバルーン450等の膨張可能なバルーンを、
図12の管腔内中央配置機構(ICM)250を有するPTAC 200に加えることも、想定される。ICM250を有するガイドチューブ215が自己膨張性を有するか又は手動で膨張可能な場合には、これが適用可能である。
【0169】
図17は、
図3及び4のPTAC 100の中心支え部121の概略図である。首部146を有する遠位先端145は、
図3及び4に示されるようなPTAC 100の遠位先端106の近位部に接続する。 湾曲傾斜部144は、ガイドチューブ115が前進し、湾曲傾斜部144に沿って外側に動く際に、半径方向及び横方向に支持する。遠位指部142は、傾斜した内表面148を有し、傾斜した内表面148も、ガイドチューブ115が前進する際に、横方向に支持する。湾曲した構造142(
図4に示される)は、外側チューブ外延部104の内側に接続する。
【0170】
図18は、
図2~11のPTAC 100の三つの中心部の縦断面を示している。PTAC 100の中心部の近位端には、三つの同心の金属製ハイポチューブ、即ち外側ハイポチューブ82、中間ハイポチューブ83、及び内側ハイポチューブ85がある。通常、これらは、ステンレススチール、L605、コバルトクロム合金、又はニチノール等の薄肉金属の管でできている。PTAC 100の外側ハイポチューブ82は、その遠位端が近位プラスチック製外側チューブ92につながっており、外側チューブ92は、一般に、例えばポリイミドなどの比較的高デュロメータ硬度のプラスチックでできている。
図18の中央の断面図からわかるように、近位プラスチック製外側チューブ92は、その遠位端で、
図2~11に示される外側チューブ102の近位端とつながっている。一般に、外側チューブ102は、近位プラスチック製チューブ92よりは低いデュロメータ硬度/より可撓性のあるプラスチックでできている。
【0171】
図18の近位部に示されるように、中間ハイポチューブ83は、その遠位端で中間チューブ103に接続している。
図18の中心部に示されるように、中心注入内腔93は、その遠位端で注入内腔133を有する内側チューブ105の近位端と接続している。
【0172】
同様に、
図18の遠位部に示されているのは、連結管125であって、連結管125は、内側チューブ105を,放射線不透過性ワイヤー118を有する
図3及び4の注入チューブ116に接続し、放射線不透過性ワイヤー118は、注入チューブ116の全長を蛍光透視下で可視化する。連結管125は、内側チューブ105の遠位端に近接した部分において、内側チューブ105内で同軸上にある。内側チューブ105の近位端も、外側チューブ102内に同軸的にあって、外側チューブ102は、
図2~10の外側チューブ外延部104に対して近位側にある。
【0173】
図19は、
図2~10の完全に拡張したPTAC 100の遠位端の概略図であって、PTAC 100の遠位端に対する先の尖った注入針119の方向を示している。
図19は、PTAC 100の縦軸をその遠位端から見た図である。ガイドワイヤー109の先端及び先細遠位部106が明らかに見えており、放射線不透過性マーカー122を有する三つの拡張したガイドチューブ115も明らかに見えている。遠位注入針119を有する拡張した注入チューブ116は、針119のカット部と共に示され、針119のカット部は、針119の開口面が焼灼液をPTAC 100の縦軸に対して垂直方向に送達し、かつ針119の傾斜切断面が針119の軸に対して横方向を向くように、切断されている。
【0174】
針119が前進する際に、針119の先端がガイドチューブ115の内側に引っ掛かりにくくなっているため、この形態は有益である。
図20は、好ましい三重カット針119を良好に示しており、三重カット針119は、ガイドチューブ115の内側に引っ掛かる可能性をさらに低減する。
【0175】
図20は、
図19のセクションS20の拡大概略図であって、先の尖った注入針119の好ましい形状を示している。
図20は、PTAC 100の縦軸に垂直な、針遠位開口部117からの焼灼液の液流の方向を示している。摺動面を提供する、針先端81内の追加カット91も示されている。針119のメインカットの方向、さらには追加カット91の方向が組み合わさって、針119がガイドチューブ115を通って前進する際に、ガイドチューブ115の内側で偶発的に引っ掛かる可能性を低減している。
【0176】
図21Aは、PTAC 500である、別の実施形態の概略図である。PTAC 500は、ガイドチューブ515の支持構造として閉塞部520の近位部を用いる。閉塞部520は、近位部523、放射線不透過性マーカー帯524、及び遠位先細部506を有している。近位部523は、その内でガイドチューブ515が入れ子になるスロット525を有している。外側チューブ502は、PTAC 500の外側を形成し、閉塞部520の近位部523上を前進して密閉構造を形成する、シースとして機能する。内側チューブ505は、針519(図示せず)の動きの推進力を提供する、外側チューブ502の構造内のチューブである。ワイヤー503は、ガイドチューブ515の動きの推進力を提供する、構造である。コアワイヤー511は、閉塞部520に接続しており、PTAC 500の近位端の機構は、外側チューブ502及び/又はガイドチューブ515に対する閉塞部520の縦方向の動きを容易にする。PTAC 500がガイドワイヤー上を送達されるように構成されることもあれば、
図15のPTAC 300のように、その遠位端がガイドワイヤーを有していないこともあるが、この場合、固定されたガイドワイヤー509は、示されている。
【0177】
図21Aは、ガイドチューブ515は前進したが、針519が前進前である、PTAC 500の配置を示している。ガイドチューブ515は、
図2~11のPTAC 100と同様に手動で前進可能である、或いは
図1の従来技術のPTAC 50と同様に、外側チューブ502がシースとして機能し、かつ引き戻されて、ガイドチューブ515を外側に拡張可能にする際に、自己拡張可能である。
図21Aの配置の後の次のステップは、PTAC 500の近位部内の機構によって作動されるコアワイヤー511の近位方向の動きによって閉塞部520が近位側に動く(引き戻される)ことである。これにより、スロット525が拡張したガイドチューブ515に入り込み、
図17に示される中心支え部121と同様に、半径方向及び横方向に支持するまで、スロット525が近位側に動く。
閉塞部520が引き戻されると、針519が
図21Bに示される構成で標的脈管の内壁内に前進する。
【0178】
図21Bは、注入チューブ516の遠位端での針519の標的脈管の内壁内への前進後の、PTAC 500の配置を示している。閉塞部520は、針519が前進する際に脈管内壁から押し戻されるのを防止するために、ガイドチューブ515を半径方向に支持する。スロット525も、ガイドチューブ515及び針519が互いに120oに位置して、焼灼液を標的脈管の内壁の内又は外側に均一に注入するように、横方向に支持する。前の実施形態のように、ガイドチューブ515は、針誘導要素である。この実施形態において、閉塞部520は、ガイドチューブ515である針誘導要素を半径方向及び横方向に支持する、縦方向に移動可能な機構である。
【0179】
本明細書は、組織焼灼用途でのPTACの使用に焦点を合わせたが、
図1~21Bの装置及び方法が、血管の特定部分又は血管のすぐ外側の多くの組織内への、或いは尿道前立腺部を介する前立腺組織内への局所的薬剤送達を含む、何らかの目的のための何らかの液体の注入に応用できることは、明確に想定される。
【0180】
図1~21Bに示される実施形態では三つ又は四つの注入針が示しているが、注入針が標的脈管の内壁に貫入する際に針を誘導する針誘導要素を半径方向及び/又は横方向に支持する機構を含む本明細書に開示の構造を一本の針、二本の針、或いは五本又はそれ以上を有する設計に応用することができる。たとえ単一針の設計であっても、Mercator社のBullfrogシステム等の他の単一針システムより、直径が小さく使いやすい。
【0181】
上記の教示を踏まえた、さまざまな他の修正、適応、及び別の設計は、当然ながら可能である。したがって、添付の請求項の範囲内で、本明細書に具体的に記載した以外のやり方で本発明を実施できることを理解すべきである。