(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】ステージの作製方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240118BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
(21)【出願番号】P 2021503982
(86)(22)【出願日】2020-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2020007433
(87)【国際公開番号】W WO2020179539
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】P 2019037589
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】花待 年彦
(72)【発明者】
【氏名】諸田 修平
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 優
(72)【発明者】
【氏名】荒木 良仁
(72)【発明者】
【氏名】横山 響
(72)【発明者】
【氏名】藤井 理啓
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-16697(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0193951(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0190215(US,A1)
【文献】特開2014-13874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の第1の面に対して平行な方向に移動しながら前記第1の面に垂直な方向から前記第1の面に絶縁体を溶射し、
前記第1の面と前記第1の面に隣接する前記基材の第2の面との角部に形成される面に対して平行な方向に移動しながら前記角部に形成される面に垂直な方向から前記角部に形成される面に絶縁体を溶射し、
前記第2の面に対して平行な方向に移動しながら、前記第2の面に垂直な方向から前記第2の面に前記絶縁体を溶射することを含み、
前記第1の面、前記角部に形成される面および前記第2の面に、前記絶縁体を連続的に溶射することを含む、ステージの作製方法。
【請求項2】
前記第1の面と180度反対の方向の前記基材の第3の面に対して平行な方向に移動しながら前記第3の面に垂直な方向から前記第3の面に前記絶縁体を溶射することを含む、請求項
1に記載の作製方法。
【請求項3】
前記第1の面を延長した面と、前記第2の面を延長した面とは、90度で交わるように形成される、請求項
1に記載の作製方法。
【請求項4】
前記第1の面、前記角部に形成される面および前記第2の面に前記絶縁体を連続的に溶射することを繰り返すことを含む、請求項
1に記載の作製方法。
【請求項5】
前記絶縁体に含まれる一部の粒子の扁平面を、前記第1の面、前記角部に形成される面および前記第2の面に沿うように溶射することを含む、請求項
1に記載の作製方法。
【請求項6】
前記絶縁体に含まれる一部の粒子の扁平面を前記第3の面に沿うように溶射することを含む、請求項
2に記載の作製方法。
【請求項7】
前記基材は液体を流す流路を有する、請求項
1または請求項
2に記載の作製方法。
【請求項8】
前記基材の上に静電チャックを配置することを含む、請求項
1または請求項
2に記載の作製方法。
【請求項9】
前記第3の面に前記絶縁体を溶射することと、前記第2の面及び前記第1の面に前記絶縁体を連続的に溶射を行うことを交互に繰り返すことを含む、請求項
2に記載の作製方法。
【請求項10】
前記第3の面に前記絶縁体を溶射することと、前記第2の面に前記絶縁体を溶射することと、前記第1の面に前記絶縁体を溶射することとを連続的に行うことを含む、請求項
2または請求項
9に記載の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ステージ、およびステージの作製方法に関し、例えば、基板を載置するためのステージ、およびステージの作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスはほぼ全ての電子機器に搭載されており、電子機器の機能に対して重要な役割を担っている。半導体デバイスはシリコンなどが有する半導体特性を利用したデバイスである。半導体デバイスは、半導体膜、絶縁膜、および導電膜を基板上に積層し、これらの膜がパターニングされることによって構成される。これらの膜は、蒸着法、スパッタリング法、化学気相成長(CVD)法、または基板の化学反応などを利用して積層され、フォトリソグラフィープロセスによってこれらの膜がパターニングされる。フォトリソグラフィープロセスは、パターニングに供されるこれらの膜の上へのレジストの形成、レジストの露光、現像によるレジストマスクの形成、エッチングによるこれらの膜の部分的除去、およびレジストマスクの除去を含む。
【0003】
上述した膜の特性は、膜を形成する条件、またはパターニングの条件によって大きく左右される。前記条件の一つが基板を設置するための載置台(以下、ステージと記す)に印加する電圧である。近年の半導体デバイスの微細化に伴い、加工する穴の径と加工する膜の厚さの比が大きくなっているため、例えば、エッチング装置に含まれるステージに印加する電圧が増加している。ステージに印加する電圧が増加することに伴い、ステージに含まれる部材の耐電圧の向上が求められる。ステージに含まれる部材は、例えば、冷却板、静電チャックなどである。特許文献1および特許文献2には、溶射法の一つであるセラミック溶射により絶縁膜を表面に形成され、耐電圧を向上させたステージが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6027407号公報
【文献】登録実用新案第2600558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の溶射法においては、溶射される面毎に溶射方向を変えているため、面と面との境界(以下、つなぎ、角部と記すこともある)に間隙または空隙が生じていた。そして、間隙または空隙によって、溶射された絶縁膜の耐電圧が低下していた。したがって、ステージにおいて、溶射法によって溶射された絶縁膜中の間隙または空隙を減らすことによって、溶射するステージに含まれる部材の耐電圧(以下、絶縁破壊電圧と記すこともある)を向上させることが課題となる。
【0006】
本発明の実施形態の課題の一つは、より耐電圧が高いステージおよびステージの作製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態の一つは、ステージであって、第1の面および第1の面に隣接する第2の面を有する基材と、扁平面を有する複数の粒子から構成され、扁平面の一部が第1の面および第2の面に沿って設けられる絶縁膜と、を含む。
【0008】
別の態様において、基材は、第1の面と180度反対の方向の第3の面を含み、絶縁膜は、扁平面の一部が第3の面に沿って設けられてもよい。
【0009】
別の態様において、第1の面を延長した面と、第2の面を延長した面とは、90度で交わるように設けられてもよい。
【0010】
別の態様において、絶縁膜の所定の面積に対する空隙の面積の比率は5%以下であってもよい。
【0011】
別の態様において、基材は液体を流す流路を有してもよい。
【0012】
別の態様において、絶縁膜上に静電チャックを配置することを含んでもよい。
【0013】
本発明の実施形態の一つは、ステージの作製方法であって、基材の第1の面に対して平行な方向に移動しながら第1の面に垂直な方向から第1の面に絶縁体を溶射し、第1の面に隣接する基材の第2の面に対して平行な方向に移動しながら、第2の面に垂直な方向から第2の面に絶縁体を溶射することを含む。
【0014】
別の態様において、第1の面と180度反対の方向の基材の第3の面に対して平行な方向に移動しながら第3の面に垂直な方向から第3の面に絶縁体を溶射することを含んでもよい。
【0015】
別の態様において、第1の面を延長した面と、第2の面を延長した面とは、90度で交わるように形成してもよい。
【0016】
別の態様において、第1の面に絶縁体を溶射することと、第2の面に絶縁体を溶射することとを、連続的に行うことを含んでもよい。
【0017】
別の態様において、第1の面に絶縁体を溶射することと、第2の面に絶縁体を溶射することとを、交互に繰り返すことを含んでもよい。
【0018】
別の態様において、第3の面に絶縁体を溶射することと、第2の面に絶縁体を溶射することと、第1の面に絶縁体を溶射することとを、連続的に行うことを含んでもよい。
【0019】
別の態様において、絶縁体に含まれる一部の粒子の扁平面を第1の面および第2の面に沿うように溶射することを含んでもよい。
【0020】
別の態様において、絶縁体に含まれる一部の粒子の扁平面を第3の面に沿うように溶射することを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】本発明の一実施形態に係るステージの構成を示す斜視図および断面図である。
【
図1B】本発明の一実施形態に係るステージの構成を示す斜視図および断面図である。
【
図1C】本発明の一実施形態に係るステージの構成を示す斜視図および断面図である。
【
図2A】本発明の一実施形態に係るステージの作製方法を示す斜視図である。
【
図2B】本発明の一実施形態に係るステージの作製方法を示す斜視図である。
【
図2C】本発明の一実施形態に係るステージの作製方法を示す斜視図である。
【
図3A】本発明の一実施形態に係るステージの作製方法を示す斜視図である。
【
図3B】本発明の一実施形態に係るステージの作製方法を示す斜視図である。
【
図3C】本発明の一実施形態に係るステージの作製方法を示す斜視図である。
【
図4A】従来のステージの角部の一部を説明するための断面図である。
【
図4B】従来のステージの角部の一部を説明するための断面図である。
【
図4C】従来のステージの角部の一部を説明するための断面図である。
【
図5A】本発明の一実施形態に係るステージの角部の一部を示す断面図である。
【
図5B】本発明の一実施形態に係るステージの角部の一部を示す断面図である。
【
図6A】本発明の一実施形態に係るステージの角部の一部を示す断面図である。
【
図6B】本発明の一実施形態に係るステージの角部の一部を示す断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るステージの角部の一部を電子顕微鏡によって撮像した画像の一例である。
【
図8A】本発明の一実施形態に係るステージの作製方法を示す斜視図である。
【
図8B】本発明の一実施形態に係るステージの作製方法を示す斜視図である。
【
図8C】本発明の一実施形態に係るステージの作製方法を示す斜視図である。
【
図9】本発明の実施形態に係るステージを備える膜加工装置の断面模式図。
【
図10A】本発明の一実施形態に係るステージの角部の一部を電子顕微鏡によって撮像した画像の一例である。
【
図10B】本発明の一実施形態に係るステージの角部の一部を電子顕微鏡によって撮像した画像の一例である。
【
図11】本発明の一実施形態に係るステージの絶縁破壊電圧を示す図である。
【
図12A】本発明の一実施形態に係るステージの構成を示す斜視図および断面図である。
【
図12B】本発明の一実施形態に係るステージの構成を示す斜視図および断面図である。
【
図12C】本発明の一実施形態に係るステージの構成を示す斜視図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本出願で開示される発明の各実施形態について、図面を参照し説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0023】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。
【0024】
本発明において、ある一つの膜を加工して複数の膜を形成した場合、これら複数の膜は異なる機能、役割を有することがある。しかしながら、これら複数の膜は同一の工程で同一層として形成された膜に由来し、同一の層構造、同一の材料を有する。したがって、これら複数の膜は同一層に存在しているものと定義する。
【0025】
本明細書および図面において、一つの構成のうちの複数の部分をそれぞれ区別して表記する際には、同一の符号を用い、さらにハイフンと自然数を用いる。
【0026】
1.第1実施形態
本実施形態では、本発明の一実施形態に係るステージ122に関して説明する。
【0027】
1-1.ステージの構成
図1にステージ122の断面図を示す。
図1Aおよび
図1Bに示すように、ステージ122は支持プレート140および第1の絶縁膜141を有する。
【0028】
支持プレート140は、少なくとも、第1の面440、第1の面440に隣接する第2の面442、および第3の面444を有する。また、支持プレート140は、第1の基材160および第2の基材162を有する。第1の基材160は、第1の面440および第2の面442を有し、第2の基材162は第3の面444を有する。第1の絶縁膜141が溶射法によって第1の基材160および第2の基材162に設けられている。すなわち、第1の絶縁膜141は、第1の面440、第2の面442、および第3の面444に設けられている。第2の面442は、第2の面442-1、第2の面442-2、第2の面442-3、および第2の面442-4の全ての面を含んでもよいし、一部を含んでもよい。本発明の一実施形態において、第1の絶縁膜141は、第3の面444の全てに設けられる例を示すが、第1の絶縁膜141は、第3の面444の一部に設けられてもよい。
【0029】
ここで、第1の面440を延長した面と第2の面442-1を延長した面とは、90度またはおおよそ90度で交わるように形成される。第2の面442-1を延長した面と第2の面442-2を延長した面とは、90度またはおおよそ90度で交わるように形成される。第2の面442-2を延長した面と第2の面442-3を延長した面とは、90度またはおおよそ90度で交わるように形成される。第2の面442-3を延長した面と第2の面442-4を延長した面とは、90度またはおおよそ90度で交わるように形成される。第2の面442-4を延長した面と第3の面444を延長した面とは、90度またはおおよそ90度で交わるように形成される。また、第1の面440と第3の面444とは、180度またはおおよそ180度反対の方向に設けられている。
【0030】
第1の基材160および第2の基材162の主な材料は金属またはセラミックスであり、例えば、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ステンレス、またはそれらを含む酸化物などを用いることができる。支持プレート140には、底面に温度センサーを設置するための開口142が設けられてもよい。温度センサーには熱電対などを利用することができる。なお、本発明の一実施形態において、第1の絶縁膜141は、開口142の内壁に設けられる例を示すが、第1の絶縁膜141は、開口142の内壁の一部に設けられてもよい。
【0031】
ステージ122の支持プレート140内部に、基板の温度を制御するための媒体を環流するための溝(流路)146を設けてもよい。媒体としては、水、イソプロパノールやエチレングリコールなどのアルコール、シリコーンオイルなどの液体の媒体を用いることができる。第1の基材160と第2の基材162の一方、あるいは両方に溝146が形成され、その後、第1の基材160と第2の基材162がろう付けなどによって接合される。媒体はステージ122を冷却する場合、加熱する場合のいずれの場合に用いてもよい。
【0032】
後述する
図9に図示する温度コントローラ228によって温度が制御された媒体を溝146に流すことで、支持プレート140の温度を制御することができる。
【0033】
第1の絶縁膜141は、所望の耐電圧を満たし、溶射法によって溶射が可能な材料であれば公知の材料を用いることができる。例えば、第1の絶縁膜141に用いられる材料は、アルカリ土類金属、希土類金属、アルミニウム(Al)、タンタル(Ta)およびケイ素(Si)の1種類以上の酸化物が用いられる。具体的には、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化マグネシウム(MgO)等が挙げられる。
【0034】
第1の絶縁膜141に用いられる材料は、無機絶縁体を含んでもよい。無機絶縁体は、具体的には、酸化アルミニウム、酸化物チタン、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化イットリウム、またはこれらの複合酸化物が挙げられる。
【0035】
本明細書等において用いられる溶射法としては、例えば、ローカロイド溶射法やプラズマ溶射法、あるいはこれらを組み合わせた溶射法でもよい。
【0036】
任意の構成として、ステージ122は支持プレート140を貫通する貫通孔144を一つ、あるいは複数有してもよい。貫通孔144にヘリウムなどの熱伝導率の高いガスを流すよう、後述する
図9に図示するチャンバー202にヘリウム導入管を設けてもよい。これにより、ガスがステージ122と基板の隙間を流れ、ステージ122の熱エネルギーを効率よく基板へ伝えることができる。なお、本発明の一実施形態において、第1の絶縁膜141は、貫通孔144の内壁に設けられる例を示すが、第1の絶縁膜141は、貫通孔144の内壁の一部に設けられてもよい。
【0037】
図1Cに図示するように、ステージ122にはさらに、基板をステージ122上に固定するための機構として静電チャック170を有してもよい。静電チャック170は、例えば静電チャック電極172を絶縁性の膜174で覆った構造を有することができる。静電チャック電極172に高電圧(数百Vから数千V)を印加することで、静電チャック電極172に生じる電荷、および基板裏面に発生し、静電チャック電極172に生じる電荷とは逆の極性の電荷とのクーロン力により、基板を固定することができる。絶縁体としては、酸化アルミニウムや窒化アルミニウム、窒化ホウ素などのセラミックを用いることができる。なお、絶縁性の膜174は完全に絶縁性である必要はなく、ある程度の導電性(例えば10
9Ω・cmから10
12Ω・cmオーダーの抵抗率)を有してもよい。この場合、膜174は上述したセラミックに酸化チタンや、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウムなどの金属酸化物がドープされる。静電チャック170の周辺には、基板の位置を決定するためのリブ176が設けられていてもよい。
【0038】
1-2.ステージの作製
図2および
図3はステージ122の第1の作製方法を示す断面図である。
図1A、
図1B、または
図1Cと同一、または類似する構成については説明を省略することがある。
【0039】
図2および
図3を用いて、ステージ122の第1の作製方法を説明する。はじめに、
図2Aに示すように、支持プレート140を準備する。
【0040】
次に、
図2Bに示すように、溶射装置に含まれる溶射機500を支持プレート140の第1の面440に対して平行な方向に移動しながら、第1の絶縁膜141を第1の面440上の少なくとも一部に形成する。このとき、溶射機500は、支持プレート140の端から支持プレート140の第1の面440の略中心に向かうことと、支持プレート140の略中心から支持プレート140の端に向かうこととを繰り返し、ジグザグに動きながら第1の絶縁膜141を第1の面440上の少なくとも一部に形成してもよい。溶射装置に含まれる溶射機500によって、第1の絶縁膜141を第1の面440上に形成することは、溶射法によって第1の絶縁膜141を第1の面440上に形成することと言い換えてもよい。このとき、溶射機500によって、溶射される粒子が第1の面440に吹き付けられる方向を溶射方向とした場合、前記溶射方向と第1の面440とは略垂直または垂直であってもよい。また、溶射機500の第1の面440に対する平行な方向への移動は、一方向であってもよいし、
図2Bに示すように、一方向と180度反対の方向との両方の方向であってもよい。一方向と180度反対の方向との両方の方向に移動しながら、第1の絶縁膜141を第1の面440上に形成することによって、第1の絶縁膜141を第1の面440上に均一に形成することができる。
【0041】
次に、
図2Cに示すように、溶射機500を第2の面442に対して平行な方向に移動しながら、第1の絶縁膜141を第2の面442上の少なくとも一部に形成する。このとき、溶射機500は、第2の面442の一方の端(例えば、第1の面440側)から第2の面442の他方の端(例えば、第3の面444側)に向かうことと、第2の面442の他方の端から第2の面442の一方の端に向かうこととを繰り返し、ジグザグに動きながら第1の絶縁膜141を第2の面442上の少なくとも一部に形成してもよい。溶射装置に含まれる溶射機500によって、第1の絶縁膜141を第2の面442上に形成することは、溶射法によって第1の絶縁膜141を第2の面442上に形成することと言い換えてもよい。このとき、溶射機500によって、溶射される粒子が第2の面442に吹き付けられる方向を溶射方向とした場合、前記溶射方向と第2の面442とは略垂直または垂直であってもよい。また、溶射機500の第2の面442に対する平行な方向への移動は、一方向であってもよいし、
図2Cに示すように、一方向と180度反対の方向との両方の方向であってもよい。一方向と180度反対の方向との両方の方向に移動しながら、第1の絶縁膜141を第2の面442上に形成することによって、第1の絶縁膜141を第2の面442上に均一に形成することができる。
【0042】
次に、
図2Bで説明した方法と同様に、
図3Aに示すように、再度、第1の絶縁膜141を第1の面440上に形成する。続けて、
図2Cで説明した方法と同様に、
図3Bに示すように、再度、第1の絶縁膜141を第2の面442上に形成する。
【0043】
以上説明したように、第1の絶縁膜141を各面に形成することによって、
図3Cに示すように、支持プレート140に第1の絶縁膜141を設けることができる。さらに、例えば、
図1Cに示すように、支持プレート140と静電チャック170とを接合することによって、ステージ122を作製することができる。支持プレート140と静電チャック170との接合は、例えば、溶接やねじ止め、または、ろう付けによって行うことができる。ろう付けにおいて用いられるろうとしては、銀、銅、および亜鉛を含む合金、銅と亜鉛を含む合金、リンを微量含む銅、アルミニウムやその合金、チタン、銅、およびニッケルを含む合金、チタン、ジルコニウム、および銅を含む合金、チタン、ジルコニウム、銅、およびニッケルを含む合金などが挙げられる。
【0044】
以上、
図2A、
図2B、
図2C、
図3A、
図3B、
図3Cおよび
図1Aを用いて説明したように、第1の絶縁膜141を第1の面440上に形成することと、第1の絶縁膜141を第2の面442上に形成することとを交互に繰り返すことによって、第1の絶縁膜141を、支持プレート140の第1の面440および第2の面442に均一に形成することができる。また、第1の絶縁膜141を第1の面440上に形成することと、第1の絶縁膜141を第2の面442上に形成することとを交互に繰り返すことによって、第1の面440と第2の面442との角部に間隙または空隙が生じることを抑制することができる。なお、第1の絶縁膜141を第1の面440上に形成することと、第1の絶縁膜141を第2の面442上に形成することとを交互に繰り返すことによって、第1の面440上に形成される第1の絶縁膜141と、第2の面442上に形成される第1の絶縁膜141とが重なってもよい。第1の面440上に形成される第1の絶縁膜141と、第2の面442上に形成される第1の絶縁膜141とが重なることによって、第1の面440と第2の面442との角部に間隙または空隙が生じることを抑制することができる。
【0045】
例えば、溶射装置に含まれる溶射機500を第1の面440に対して平行な方向に1mm移動しながら、第1の絶縁膜141を第1の面440上の少なくとも一部に形成することと、溶射装置に含まれる溶射機500を第2の面442に対して平行な方向に1mm移動しながら、第1の絶縁膜141を第2の面442上の少なくとも一部に形成することとを繰り返すことによって、第1の絶縁膜141を概形30cmの円状の支持プレート140に均一に形成してもよい。
【0046】
任意の形成方法として、溶射機500を第3の面444に対して平行な方向に移動しながら、第1の絶縁膜141を第3の面444上の少なくとも一部に形成してもよい。また、溶射機500は、支持プレート140の端から支持プレート140の第3の面444の略中心に向かうことと、支持プレート140の略中心から支持プレート140の端に向かうこととを繰り返し、ジグザグに動きながら第1の絶縁膜141を第3の面444上の少なくとも一部に形成してもよい。このとき、第1の絶縁膜141を第1の面440上の少なくとも一部に形成することと、第1の絶縁膜141を第2の面442上の少なくとも一部に形成することと、第1の絶縁膜141を第3の面444上の少なくとも一部に形成することとを繰り返して、第1の絶縁膜141を、支持プレート140の第1の面440、第2の面442および第3の面444に均一に形成してもよい。
【0047】
1-3.従来のステージが有する支持プレートの角部と本発明の一実施形態に係るステージ122が有する支持プレート140の角部との比較
図4は従来のステージが有する支持プレートの角部の一部を説明するための断面図である。
図5および
図6は、本発明の一実施形態に係るステージ122が有する支持プレート140の角部の一部を示す断面図である。
図7は、本発明の一実施形態に係るステージ122が有する支持プレート140の角部の一部を電子顕微鏡によって撮像した画像の一例である。
図1から
図3と同一、または類似する構成については説明を省略することがある。また、以降の説明においては、
図1Bに示された構成を有するステージ122を例に説明される。
【0048】
図4Aにおいては、第1の面440と第2の面442-1との角部はC面取りした形状を有する例を示す。
図4Bにおいては、第2の面442-2と第2の面442-3との角部は曲率を有する例を示す。
図4Cにおいては、第2の面442-4と第3の面444との角部は曲率を有する例を示す。従来、第1の面440と第2の面442-1との角部に形成された第1の絶縁膜141、第2の面442-2と第2の面442-3との角部に形成された第1の絶縁膜141、および、第2の面442-4と第3の面444との角部に形成された第1の絶縁膜141は、大きな間隙または空隙446を含んでいた。なお、第1の面440と第2の面442-1との角部は曲率を有してもよく、第2の面442-2と第2の面442-3との角部はC面取りした形状を有してもよく、第2の面442-4と第3の面444との角部はC面取りした形状を有してもよい。
【0049】
一方、
図5Bには、本発明の一実施形態に係るステージ122が有する支持プレート140の第1の面440と第2の面442-1との角部はC面取りした形状を有する例を示す。
図5Bに示すように、第1の面440と第2の面442-1との角部に形成された第1の絶縁膜141は、大きな間隙または空隙446を含まず、均一な膜を有する。
【0050】
図5Aに示すように、本発明の一実施形態に係るステージ122が有する支持プレート140においては、溶射法により形成された第1の絶縁膜141は第1の面440において扁平な形状を有する複数の粒子450から構成される。複数の粒子450の少なくとも一部の粒子450の扁平面452は、第1の面440に平行または略平行な面に沿うように溶射法によって形成される。溶射機500によって溶射される粒子が、粒子450である。また、扁平面452に垂直または略垂直な方向454と第1の面440に垂直または略垂直な方向とは、平行または略平行であって、溶射機500によって溶射される粒子450が第1の面440に吹き付けられる溶射方向とも平行または略平行である。
【0051】
第1の面440と同様に、第2の面442-1においても、溶射法により形成された第1の絶縁膜141は扁平な形状を有する複数の粒子450から構成され、複数の粒子450の少なくとも一部の粒子450の扁平面462は、第2の面442-1に平行または略平行な面に沿うように溶射法によって形成される。また、溶射機500によって溶射される粒子が、粒子450である。さらに、扁平面462に垂直または略垂直な方向464と第2の面442-1に垂直または略垂直な方向とは、平行または略平行であって、溶射機500によって溶射される粒子450が第2の面442-1に吹き付けられる溶射方向とも平行または略平行である。
【0052】
第1の面440および第2の面442-1と同様に、角部の面443においても、溶射法により形成された第1の絶縁膜141は扁平な形状を有する複数の粒子450から構成され、複数の粒子450の少なくとも一部の粒子450の扁平面472は、角部の面443に平行または略平行な面に沿うように溶射法によって形成される。また、溶射機500によって溶射される粒子が、粒子450である。さらに、扁平面472に垂直または略垂直な方向474と角部の面443に垂直または略垂直な方向とは、平行または略平行であって、溶射機500によって溶射される粒子450が角部の面443に吹き付けられる溶射方向とも平行または略平行である。
【0053】
図6Bには、本発明の一実施形態に係るステージ122が有する支持プレート140の第2の面442-4と第3の面444との角部は曲率を有する例を示す。
図6Bに示すように、第2の面442-4と第3の面444と角部に形成された第1の絶縁膜141は、大きな間隙または空隙446を含まず、均一な膜を有する。
【0054】
図6Aに示すように、本発明の一実施形態に係るステージ122が有する支持プレート140においては、第1の面440と180度反対の方向に設けられている第3の面444において、溶射法により形成された第1の絶縁膜141は扁平な形状を有する複数の粒子450から構成される。複数の粒子450の少なくとも一部の粒子450の扁平面482は、第3の面444に平行または略平行に沿うように溶射法によって形成される。溶射機500によって溶射される粒子が、粒子450である。また、扁平面482に垂直または略垂直な方向484と第3の面444に垂直または略垂直な方向とは、平行または略平行であって、溶射機500によって溶射される粒子450が第3の面444に吹き付けられる溶射方向とも平行または略平行である。
【0055】
第3の面444と同様に、第2の面442-4においても、溶射法により形成された第1の絶縁膜141は扁平な形状を有する複数の粒子450から構成される。なお、第2の面442-4に形成される複数の粒子450の構成は、
図5Aに示された第2の面442-1に形成される複数の粒子450の構成と同様であるから、ここでの説明は省略する。
【0056】
第3の面444および第2の面442-4と同様に、第3の面444と第2の面442-4との角部を構成する各点に対する接平面の一つを面491とすると、面491においても、溶射法により形成された第1の絶縁膜141は扁平な形状を有する複数の粒子450から構成され、複数の粒子450の少なくとも一部の粒子450の扁平面492は、面491に平行または略平行な面に沿うように溶射法によって形成される。また、溶射機500によって溶射される粒子が、粒子450である。さらに、扁平面492に垂直または略垂直な方向494と面491に垂直または略垂直な方向とは、平行または略平行であって、溶射機500によって溶射される粒子450が角部の面491に吹き付けられる溶射方向とも平行または略平行である。
【0057】
図7には、複数の粒子450によって形成された曲面491Sと曲面492Sとがおおよそのガイドラインで示されている。曲面491Sと曲面492S
図7に示すように、曲面491Sと曲面492Sとはそれぞれの曲面を構成する各点における接平面は平行または略平行であることがわかる。すなわち、扁平面492に垂直または略垂直な方向494と、曲面491Sと曲面492Sとはそれぞれの曲面を構成する各点における接平面に垂直または略垂直な方向とは、平行または略平行であって、溶射機500によって溶射される粒子450が角部に吹き付けられる溶射方向とも平行または略平行である。なお、
図7に図示した本発明の一実施形態に係るステージにおいては、第1の絶縁膜141の材料酸化アルミニウムを用い、粒子のサイズは25μm程度である例を示した。
【0058】
本発明の一実施形態に係るステージ122においては、支持プレート140の第1の面440に対して、溶射機500を平行な方向に移動しながら第1の面440に垂直な方向から第1の絶縁膜141を第1の面440に溶射法によって形成すること、および、第1の面440に隣接する第2の面442に対して、溶射機500を平行な方向に移動しながら第2の面442に垂直な方向から第1の絶縁膜141を第2の面442に溶射法によって形成することを、交互に繰り返すことによって、第1の絶縁膜141を構成する少なくとも一部の粒子450の扁平面を第1の面440と第2の面442に平行または略平行に沿うように形成することができる。
【0059】
また、第1の面440上に形成される第1の絶縁膜141と、第2の面442上に形成される第1の絶縁膜141とが重なるように形成される。その結果、第1の面440、第2の面442、および第1の面440と第2の面442との角部に形成される第1の絶縁膜141は、間隙または空隙をほぼ含まない均一な膜となる。よって、第1の絶縁膜141が支持プレート140に緻密に形成されるため、支持プレート140の絶縁破壊電圧が向上する。したがって、ステージおよびステージの作製方法において、本発明が適用されることによって、耐電圧が高いステージおよびステージの作製方法を提供することができる。
【0060】
2.第2実施形態
本実施形態では、本発明の一実施形態に係るステージ122の第2の作製方法に関して説明する。第1実施形態と同一、または類似する構成については説明を省略することがある。
【0061】
図8に、本発明の一実施形態に係るステージ122の第2の作製方法を示す。ステージ122の第2の作製方法は、第1実施形態において示したステージ122の第1の作製方法と比較して、第3の面444における第1の絶縁膜141の形成と、第2の面442における第1の絶縁膜141の形成と、第1の面440における第1の絶縁膜141との形成とを、溶射機500を連続的であって、かつ、一方向に移動させながら行う点が異なる。以下のステージ122の第2の作製方法の説明においては、主に、第1の作製方法と異なる点について説明される。
【0062】
はじめに、支持プレート140を準備することは、第1実施形態で示した
図2Aと同様であるから、ここでの説明は省略する。
【0063】
次に、
図8Aに示すように、支持プレート140の第1の面440の略中心に略垂直な軸に対して支持プレート140を回転させ、溶射装置に含まれる溶射機500を第3の面444に対して平行な方向に移動しながら、第1の絶縁膜141を第3の面444上の少なくとも一部に形成する。
【0064】
次に、
図8Bに示すように、溶射機500によって第1の絶縁膜141を第2の面442上に形成することは、溶射機500を第3の面444に対して平行な方向から第2の面442に対して平行な方向へ、連続的であって、かつ、一方向に移動させながら行われる。溶射機500によって第1の絶縁膜141を第2の面442上に形成することは、第1実施形態において示したステージ122の第1の作製方法と同様の方法を用いることができる。溶射機500の移動が、連続的であって、かつ、一方向であって、第1の絶縁膜141を第3の面444上から第2の面442上に形成することによって、第1の絶縁膜141を第3の面444上および第2の面442上に均一に形成することができる。
【0065】
次に、
図8Cに示すように、溶射機500によって第1の絶縁膜141を第1の面440上に形成することは、溶射機500を第2の面442に対して平行な方向から第1の面440に対して平行な方向へ、連続的であって、かつ、一方向に移動させながら行われる。溶射機500によって第1の絶縁膜141を第1の面440上に形成することは、第1実施形態において示したステージ122の第1の作製方法と同様の方法を用いることができる。溶射機500の移動が、連続的であって、かつ、一方向であって、第1の絶縁膜141を第2の面442上から第1の面440上に形成することによって、第1の絶縁膜141を第2の面442上および第1の面440上に均一に形成することができる。
【0066】
以上説明したように、第1の絶縁膜141を各面に形成することによって、支持プレート140に第1の絶縁膜141を設けることができる。さらに、支持プレート140と静電チャック170とを接合することは、第1実施形態で示した
図1Aと同様であるから、ここでの説明は省略する。以上説明したように、第2の作製方法において、ステージ122を作製することができる。
【0067】
以上、
図2A、
図8A、
図8B、
図8Cおよび
図1Aを用いて説明したように、第1の絶縁膜141を第3の面444上に形成することと、第1の絶縁膜141を第2の面442上に形成することと、第1の絶縁膜141を第1の面440上に形成することとを、連続的に、かつ、一方向に移動させながら行うことによって、第1の絶縁膜141を、支持プレート140の第3の面444、第2の面442、および第1の面440により均一に形成することができる。また、第3の面444と第2の面442との角部、第2の面442と第1の面440との角部に間隙または空隙が生じることをさらに抑制することができる。その結果、第3の面444、第3の面444と第2の面442との角部、第2の面442、第2の面442と第1の面440との角部、および第1の面440に形成される第1の絶縁膜141は、間隙または空隙をほぼ含まない均一な膜となる。よって、第1の絶縁膜141が支持プレート140に緻密に形成されるため、支持プレート140の絶縁破壊電圧がさらに向上する。したがって、ステージおよびステージの作製方法において、本発明が適用されることによって、より耐電圧が高いステージおよびステージの作製方法を提供することができる。
【0068】
本実施形態に係るステージの作製方法は、上述した作製方法に限定されない。
【0069】
本実施形態に係るステージの作製方法は、例えば、第1の絶縁膜141を第1の面440上に形成することと、第1の絶縁膜141を第2の面442上に形成することと、第1の絶縁膜141を第3の面444上に形成することとを、連続的に、かつ、一方向に移動させながら行う作製方法であってもよい。第1の絶縁膜141を第1の面440上に形成することと、第1の絶縁膜141を第2の面442上に形成することと、第1の絶縁膜141を第3の面444上に形成することとを、連続的に、かつ、一方向に移動させながら行う作製方法は、上述した作製方法と同様に、第1の絶縁膜141が支持プレート140に緻密に形成されるため、支持プレート140の絶縁破壊電圧がさらに向上する。
【0070】
また、本実施形態に係るステージの作製方法においては、例えば、第1の絶縁膜141を第3の面444上に形成することを第1の溶射とし、第1の絶縁膜141を第2の面442上に形成し第1の絶縁膜141を第1の面440上に形成することを連続的に行うことを第2の溶射としてもよい。さらに、本実施形態に係るステージの作製方法においては、第1の溶射と第2の溶射とを交互に行ってもよく、第1の溶射と第2の溶射とを交互に繰り返し行ってもよく、第2の溶射と第1の溶射とを交互に行ってもよく、第2の溶射と第1の溶射とを交互に繰り返し行ってもよい。第1の溶射と第2の溶射とを交互に繰り返し行うことで、ステージの絶縁膜の厚さのばらつきがさらに抑制される。その結果、絶縁膜がさらに均一に成膜されたステージを提供することができる。
【0071】
また、本実施形態に係るステージの作製方法においては、第1の溶射と第2の溶射とを交互に行ったのち、第1の溶射と第2の溶射とを連続的に行ってもよく、第1の溶射と第2の溶射とを交互に繰り返し行ったのち、第1の溶射と第2の溶射とを連続的に繰り返し行ってもよい。第2の溶射を先に行う場合も同様に、第2の溶射と第1の溶射とを交互に行ったのち、第1の溶射と第2の溶射とを連続的に行ってもよく、第2の溶射と第1の溶射とを交互に繰り返し行ったのち、第1の溶射と第2の溶射とを連続的に繰り返し行ってもよい。第1の溶射と第2の溶射とを交互に行ったのち、第1の溶射と第2の溶射とを連続的に行うことで、ステージの絶縁膜の厚さのばらつきがさらに抑制され、かつ、ステージの角部に間隙または空隙が生じることをさらに抑制することができる。
【0072】
3.第3実施形態
本実施形態では、ステージ122が備えられた膜加工装置を例として説明する。第1実施形態または第2実施形態と、同一または類似する構成に関しては説明を省略することがある。
【0073】
図9には、膜加工装置の一つであるエッチング装置200の断面図が示されている。エッチング装置200は、種々の膜に対してドライエッチングを行うことができる。エッチング装置200は、チャンバー202を有している。チャンバー202は、基板上に形成された導電体、絶縁体、または半導体などの膜に対してエッチングを行う空間を提供する。
【0074】
チャンバー202には排気装置204が接続され、これにより、チャンバー202内を減圧雰囲気に設定することができる。チャンバー202にはさらに反応ガスを導入するための導入管206が設けられ、バルブ208を介してチャンバー内にエッチング用の反応ガスが導入される。反応ガスとしては、例えば四フッ化炭素(CF4)、オクタフルオロシクロブタン(c-C4F8)、デカフルオロシクロペンタン(c-C5F10)、ヘキサフルオロブタジエン(C4F6)などの含フッ素有機化合物が挙げられる。
【0075】
チャンバー202上部には導波管210を介してマイクロ波源212を設けることができる。マイクロ波源212はマイクロ波を供給するためのアンテナなどを有しており、例えば2.45GHzのマイクロ波や、13.56MHzのラジオ波(RF)といった高周波数のマイクロ波を出力する。マイクロ波源212で発生したマイクロ波は導波管210によってチャンバー202の上部へ伝播し、石英やセラミックなどを含む窓214を介してチャンバー202内部へ導入される。マイクロ波によって反応ガスがプラズマ化し、プラズマに含まれる電子やイオン、ラジカルによって膜のエッチングが進行する。
【0076】
チャンバー202下部には基板を設置するため、本発明の一実施形態に係るステージ122が設けられる。基板はステージ122上に設置される。ステージ122には電源224が接続され、高周波電力に相当する電圧がステージ122に印加され、マイクロ波による電界がステージ122の表面、基板表面に対して垂直な方向に形成される。チャンバー202の上部や側面にはさらに磁石216、磁石218、および磁石220を設けることができる。磁石216、磁石218、および磁石220としては永久磁石でもよく、電磁コイルを有する電磁石でもよい。磁石216、磁石218、磁石220によってステージ122、および基板表面に平行な磁界成分が作り出され、マイクロ波による電界との連携により、プラズマ中の電子はローレンツ力を受けて共鳴し、ステージ122、および基板表面に束縛される。その結果、高い密度のプラズマを基板表面に発生させることができる。
【0077】
例えば、ステージ122がシースヒータを備える場合、シースヒータを制御するヒータ電源230が接続される。ステージ122にはさらに、任意の構成として、基板をステージ122に固定するための静電チャック用の電源226や、ステージ122内部に環流される媒体の温度制御を行う温度コントローラ228、ステージ122を回転させるための回転制御装置(図示は省略)が接続されてもよい。
【0078】
上述したように、エッチング装置200には本発明の一実施形態に係るステージ122が用いられる。このステージ122を用いることで、基板を均一に加熱し、かつ、加熱温度を精密に制御することができる。また、このステージ122を用いることで、ステージの絶縁破壊電圧を向上させることができる。また、このステージ122を用いることで、基板に印加される電圧に対する耐電圧が向上する。よって、エッチング装置200を用いることによって、アスペクト比が高いコンタクトの形成、または、アスペクト比が高い膜を形成することができる。したがって、エッチング装置200により、基板上に設けられる種々の膜を均一にエッチングすることが可能となる。
【0079】
4.第4実施形態
本実施形態では、本発明の一実施形態に係るステージの角部における間隙または空隙446の割合、および、本発明の一実施形態に係るステージの絶縁破壊電圧について説明する。第1実施形態乃至第3実施形態と同一または類似する構成については説明を省略することがある。
【0080】
図10Aに、本発明の一実施形態に係るステージを第1の作製方法によって形成したときの第3の面444と第2の面442との角部の一部を電子顕微鏡によって撮像した画像の一例を示す。
図10Bに、本発明の一実施形態に係るステージを第2の作製方法によって形成したときの第3の面444と第2の面442との角部の一部を電子顕微鏡によって撮像した画像の一例を示す。
図11に、従来のステージ、本発明の一実施形態に係るステージを第1の作製方法で作製した場合、および第2の作製方法で作製した場合の絶縁破壊電圧を示す図である。
【0081】
図10Aおよび
図10Bに示すように、間隙または空隙446は黒点で示されている。
図10Aおよび
図10Bは、
図4Cで示したような従来のステージにおける角部のような大きな間隙または空隙446を有していない。
図10Aおよび
図10Bに、200μm×200μmの領域502を示す。
図10Aにおいて、領域502の面積に対する間隙または空隙446の面積の比は、4.33%であった。また、
図10Bにおいて、領域502の面積に対する間隙または空隙446の面積の比は、0.49%であった。すなわち、第1の作製方法および第2の作製方法によって形成された角部の領域502の面積に対する間隙または空隙446の面積の比は、従来と比べて、劇的に減少している。
【0082】
次に、
図11に示すように、従来のステージにおける絶縁破壊電圧は3.58kV、本発明の一実施形態に係るステージを第1の作製方法で作製した場合における絶縁破壊電圧は4.60kV、第2の作製方法で作製した場合の絶縁破壊電圧は10.37kVであった。第1の作製方法で作製した場合における絶縁破壊電圧は従来のステージにおける絶縁破壊電圧と比較して1kV大きく、第2の作製方法で作製した場合における絶縁破壊電圧は従来のステージにおける絶縁破壊電圧と比較して約3倍大きい。
【0083】
5.第5実施形態
本実施形態では、本発明の一実施形態に係るステージ124に関して説明する。第1実施形態乃至第4実施形態と同一または類似する構成については説明を省略することがある。
【0084】
図12にステージ124の断面図を示す。ステージ124の構成は、第1実施形態において示したステージ122の構成と比較して、ヒータ層150の構成を有する点が異なる。以下のステージ124の構成の説明においては、主に、ステージ122の構成と異なる点について説明される。なお、第1実施形態乃至第4実施形態は、第1実施形態乃至第4実施形態で説明されたステージ122を本実施形態で説明するステージ124に適宜置き換えて実施されてもよい。
【0085】
図12Aおよび
図12Bに示すように、ステージ124は支持プレート140を有し、その上にヒータ層150が備えられる。
【0086】
ステージ124において、上述した
図9に図示された温度コントローラ228によって温度が制御された媒体を溝146に流すことで、支持プレート140の温度を制御することができる。ただし、液体の媒体による温度制御は応答が遅く、また、精密な温度制御が比較的難しい。したがって、媒体を用いて支持プレート140の温度を粗く制御し、ヒータ層150内のヒータ線154を用いて基板の温度を精密に制御することが好ましい。これにより、精密な温度制御のみならず、高速でステージ124の温度調整を行うことが可能となる。
【0087】
ヒータ層150は主に三つの層を有している。具体的には、ヒータ層150は第2の絶縁膜152、第2の絶縁膜152上のヒータ線154、ヒータ線154上の第3の絶縁膜156を有している(
図12B)。ヒータ線154はヒータ層150内に一本だけ設けられてもよく、あるいは複数のヒータ線154が設けられ、それぞれが
図9に図示されるヒータ電源230によって独立して制御されてもよい。第2の絶縁膜152と第3の絶縁膜156によってヒータ線154が電気的に絶縁される。ヒータ電源230から供給される電力によりヒータ線154が加熱され、これによってステージ124の温度が制御される。
【0088】
第2の絶縁膜152、第3の絶縁膜156は無機絶縁体を含むことができる。無機絶縁体は、第1実施形態において示されているため、ここでの説明は省略される。また、第2の絶縁膜152と第3の絶縁膜156は溶射法を用いて形成することができる。溶射法は、第1実施形態において示されているため、ここでの説明は省略される。
【0089】
ヒータ線154は通電することで発熱する金属を含むことができる。具体的には、タングステンやニッケル、クロム、コバルト、およびモリブデンから選択される金属を含むことができる。金属はこれらの金属を含む合金でもよく、例えばニッケルとクロムの合金、ニッケル、クロム、およびコバルトを含む合金でもよい。
【0090】
ヒータ線154は、スパッタリング法、有機金属CVD(MOCVD)法、蒸着法、印刷法、電解めっき法などを用いて形成した金属膜、あるいは金属箔をエッチングにより別途加工し、これを第2の絶縁膜152上に配置して形成することが好ましい。これは、溶射法を用いてヒータ線154を形成した場合、ヒータ線154の全体にわたって均一な密度や厚さや幅を確保することが困難であるのに対し、金属膜、あるいは金属箔をエッチングにより加工した場合には、これらの物理的パラメータのばらつきが小さいヒータ線154を形成することができるためである。これにより、ステージ124の温度を精密に制御し、かつ温度分布を低減することが可能となる。
【0091】
さらに、上述した合金は金属単体と比較すると体積抵抗率が高いため、ヒータ線154のレイアウト、すなわち平面形状が同一の場合、金属単体を用いた場合と比較してヒータ線154の厚さを大きくすることができる。このため、ヒータ線154の厚さのばらつきを小さくすることができ、より小さな温度分布を実現することができる。
【0092】
任意の構成として、ステージ124は支持プレート140とヒータ層150を同時に貫通する貫通孔144を一つ、あるいは複数有してもよい。貫通孔144にヘリウムなどの熱伝導率の高いガスを流すよう、上述された
図9に図示するチャンバー202にヘリウム導入管を設けてもよい。これにより、ガスがステージ124と基板の隙間を流れ、ステージ124の熱エネルギーを効率よく基板へ伝えることができる。なお、本発明の一実施形態において、第1の絶縁膜141は、貫通孔144の内壁に設けられる例を示すが、第1の絶縁膜141は、貫通孔144の内壁の一部に設けられてもよい。
【0093】
図12Cに図示するように、ステージ124にはさらに、基板をステージ124上に固定するための機構として静電チャック170を有してもよい。第1実施形態において示されているため、ここでの説明は省略される。
【0094】
以上のように、本発明の一実施形態におけるステージは、従来と比較して間隙または空隙が少なく、絶縁破壊電圧が大きい。したがって、本発明の一実施形態に係る作製方法を適用することによって、耐電圧が高いステージおよびステージの作製方法を提供することができる。
【0095】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0096】
また、上述した各実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと理解される。
【符号の説明】
【0097】
100:ステージ、102:チャンバー、110:シースヒータ、122:ステージ、124:ステージ、128:温度コントローラ、140:支持プレート、141:第1の絶縁膜、142:開口、144:貫通孔、146:溝(流路)、146:溝、150:ヒータ層、152:第2の絶縁膜、154:ヒータ線、156:第3の絶縁膜、160:第1の基材、162:第2の基材、170:静電チャック、172:静電チャック電極、174:膜、176:リブ、200:エッチング装置、202:チャンバー、204:排気装置、206:導入管、208:バルブ、210:導波管、212:マイクロ波源、214:窓、216:磁石、218:磁石、220:磁石、224:電源、226:電源、228:温度コントローラ、230:ヒータ電源、440:第1の面、442:第2の面、442-1:第2の面、442-2:第2の面、442-3:第2の面、442-4:第2の面、443:面、444:第3の面、446:空隙、450:粒子、452:扁平面、454:方向、462:扁平面、464:方向、472:扁平面、474:方向、482:扁平面、484:方向、491:面、491S:曲面、492:扁平面、492S:曲面、494:方向、500:溶射機、502:領域