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  • 特許-流動層炉における流動媒体の再生方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】流動層炉における流動媒体の再生方法
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/30 20060101AFI20240118BHJP
   B01J 8/24 20060101ALI20240118BHJP
   B01J 2/00 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
F23G5/30 E
B01J8/24
B01J2/00 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021504104
(86)(22)【出願日】2020-03-03
(86)【国際出願番号】 JP2020008860
(87)【国際公開番号】W WO2020179776
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2019039468
(32)【優先日】2019-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591149344
【氏名又は名称】伊藤忠セラテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078190
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 三千雄
(74)【代理人】
【識別番号】100115174
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 正博
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 駿一
(72)【発明者】
【氏名】阪本 淳
(72)【発明者】
【氏名】牧野 浩
(72)【発明者】
【氏名】亀田 貴之
(72)【発明者】
【氏名】奥村 洋司
(72)【発明者】
【氏名】村田 珠美
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特許第6410973(JP,B1)
【文献】実開昭56-132425(JP,U)
【文献】特開2015-045486(JP,A)
【文献】特表平08-504131(JP,A)
【文献】特開2003-262308(JP,A)
【文献】特開2017-156073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/30
B01J 8/24
B01J 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動媒体からなる流動層を用いて、高温状態下において、バイオマス材料及び/又は石炭類からなる燃料を燃焼又はガス化せしめる流動層炉において、
前記流動媒体として、40重量%以上のAl23と60重量%以下のSiO2 を含む化学組成を有する、人工的に製造された球状の耐火粒子を用いると共に、該流動層炉内において低融点物質の付着により肥大化乃至は塊状化した該流動媒体を、高温状態下の流動層炉より炉外に抜き出して、乾式冷却方式に従って急冷せしめることにより、かかる流動媒体に付着した低融点物質を非晶質化させた後、機械式研磨を実施して、該流動媒体に付着した非晶質の低融点物質を分離せしめる一方、その分離せしめた非晶質の低融点物質を集塵装置にて捕集して、除去することにより、K2CO3との共存下における加熱処理試験後の凝集粒の重量比率が50%以下である再生流動媒体を得ることを特徴とする流動層炉における流動媒体の再生方法。
【請求項2】
前記流動層炉から抜き出された高温の肥大化乃至は塊状化流動媒体が、500℃以下の温度まで急冷されることを特徴とする請求項1に記載の流動層炉における流動媒体の再生方法。
【請求項3】
前記急冷が、150℃/時間以上の冷却速度にて実施されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の流動層炉における流動媒体の再生方法。
【請求項4】
前記流動層炉から抜き出された高温の肥大化乃至は塊状化流動媒体に対して、空冷を施すことにより、かかる肥大化乃至は塊状化流動媒体が急冷せしめられることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の流動層炉における流動媒体の再生方法。
【請求項5】
前記球状の耐火粒子が、ムライト質又はムライト・コランダム質の焼結粒子であることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の流動層炉における流動媒体の再生方法。
【請求項6】
前記再生流動媒体が、0.60以上の真円度を有する球状粒子であることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の流動層炉における流動媒体の再生方法。
【請求項7】
前記再生流動媒体の未使用流動媒体からの粒度指数(AFS.GFN)の変化率が、80~120%の範囲であることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の流動層炉における流動媒体の再生方法。
【請求項8】
前記球状の耐火粒子が、5%以下の見掛気孔率を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の流動層炉における流動媒体の再生方法。
【請求項9】
前記球状の耐火粒子が、40~80重量%のAl23と60~20重量%のSiO2 を含む化学組成を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の流動層炉における流動媒体の再生方法。
【請求項10】
前記球状の耐火粒子が、焼結法によって人工的に製造された球状の焼結粒子であることを特徴とする請求項1乃至請求項9の何れか1項に記載の流動層炉における流動媒体の再生方法。
【請求項11】
前記機械式研磨が、前記急冷された肥大化乃至は塊状化流動媒体を、軸回りに回転せしめられる円筒状砥石の周面に接触させることによって、実施されることを特徴とする請求項1乃至請求項10の何れか1項に記載の流動層炉における流動媒体の再生方法。
【請求項12】
前記再生流動媒体が、再び、前記流動層炉に投入されて、前記流動層が構成されるようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項11の何れか1項に記載の流動層炉における流動媒体の再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動層炉における流動媒体の再生方法に係り、特に、ゴミ、廃棄物の焼却や石炭火力発電、バイオマス発電等のための流動層炉において、その流動層の形成に用いられた流動媒体を有利に再生して、再び流動媒体として利用することの出来る実用的な手法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、建築廃材、生木、木屑、PKS(Palm Kernel Shell:ヤシ殻)、EFB(Empty Fruits Bunch :空果房)、木質ペレット等のバイオマス材料、石炭、都市ゴミ等の廃棄物、RDF(燃料固形化ゴミ)等を、燃料として流動層炉に投入し、かかる流動層炉内に形成させた流動層において、燃焼或いはガス化させることにより、焼却処理や熱回収を行うことが、再生可能エネルギとしての利用や廃棄物処理等の観点から、広く採用されてきている。そして、そのような流動層炉における流動層の形成に用いられる流動媒体は、筒状の炉内に充填されて、加熱下において、炉の下部から空気や反応ガスが吹き込まれることにより、かかる流動媒体を激しく流動せしめて、流動層を形成すると共に、そのような流動媒体の激しい流動によって、炉内温度が均一化されることとなる。また、そこでは、高温状態となった炉内へ、炉の上部から、燃料となる都市ゴミ等の廃棄物や、石炭、バイオマス材料等の燃料が供給され、その燃焼によって発生する熱量にて、発電が行われたり、かかる燃料のガス化によって、所望のガスが発生せしめられるようになっているのである。
【0003】
ところで、かくの如き流動層炉においては、それぞれの燃料の燃焼乃至はガス化に際して、かかる燃料中の非可燃成分である灰分の中に含まれるSiO2 等とアルカリ金属酸化物(K2O ,Na2O 等)とが反応することにより、ガラス状の低融点物質(SiO2 -K2O,Na2O系化合物等)が生成し、そしてその低融点物質が、流動媒体(耐火粒子)に付着することによって、流動媒体の粒子同士の結合を促進して、流動媒体が肥大化乃至は塊状化する問題が、内在している。また、そのような肥大化乃至は塊状化した流動媒体は、炉内における流動状態が不良となって、流動層炉の連続運転を困難とするようになるところから、その場合には、一旦、流動層炉を停止して、流動媒体の取替えを行なう必要が生じるのであるが、その取替え作業によって、流動媒体が損失することとなることに加えて、流動層炉の稼働率が低下することにもなり、また稼働コストにも、悪影響をもたらすことになる。
【0004】
このため、そのような流動層炉において用いられて、肥大化乃至は塊状化した流動媒体(凝集物)を再生する技術が、従来より、種々提案されており、例えば、特開2011-106701号公報においては、流動層式燃焼炉の流動層より抜き出した流動媒体を、水中に投入して冷却することにより、流動媒体と付着物との収縮差を利用して、流動媒体から付着物を分離するようにした流動媒体再生方法が、提案されている。しかしながら、そこでは、水中への投入によって再生された、粒径の小さな流動媒体を、水から分離するための面倒な回収作業が必要となることに加えて、燃焼炉における急加熱に基づく熱衝撃によって流動媒体の粉化を回避し、また燃焼炉への移送を容易となすべく、湿潤状態にある流動媒体を乾燥せしめる必要もあり、しかも、燃焼炉より取り出された流動媒体が投入される水中には、重金属等の有害成分が溶出されることとなるところから、そのような流動媒体の投入された水の排水処理にも、困難な問題を内在しており、実用的な再生方法とは認められないものであった。
【0005】
また、特開2003-262308号公報には、流動床式焼却炉から、付着物により肥大化した流動媒体を炉外に抜き出して、高速の空気を吹き込むことによって、流動媒体に付着した物質を除去して、流動媒体の再生及び粒子径の適正化を行なう一方、その除去された付着物を集塵装置で捕集するようにした流動媒体付着物の除去方法が、提案されているのであるが、そのような高速空気の吹込みのみによる処理では、流動媒体の表面に付着する付着物を充分に除去することが出来ず、そのために、そのまま再生流動媒体として再利用するには、大きな問題を内在するものであった。
【0006】
さらに、特開平8-278018号公報においては、流動層炉から抜き出した肥大化した流動媒体は、乾式冷却手段にて冷却された後、媒体再生手段において、高速で回転するすり鉢状の回転ロータにより、円周方向に飛ばされた後に内側へ戻されることにより生じるスクラビイング効果によって、流動媒体に付着する付着物を剥離するようにすることにより、かかる流動媒体を乾式再生する装置が明らかにされているが、そのようなスクラビイング効果による付着物の除去方式によっても、流動媒体に付着する付着物の剥離には限度があり、そのようにして再生された流動媒体を、そのまま流動層炉に投入して、目的とする流動層を形成させるには、少なからず問題を内在するものであった。
【0007】
加えて、特開2017-156073号公報には、流動層炉から抜き出された流動媒体を、不燃物の分離の後に、表面研磨機に導いて表面研磨し、次いで分級装置によって、所定粒径の流動媒体を分級することからなる、流動層炉における流動媒体の処理方法が提案されており、そこにおいては、表面研磨機として、流動媒体と研磨媒体とを容器状のドラムに収容して、ドラムを加振し、流動媒体粒子同士、又は流動媒体粒子と研磨媒体とをこすり合わせることにより、流動媒体の表面研磨を行なう振動ミルを用いることが、明らかにされている。しかしながら、そのような振動ミルを用いて流動媒体を表面研磨したところで、流動媒体の表面に付着する付着物を充分に研磨除去することは困難なことであり、そのまま流動層炉に投入して流動層を形成するには、少なからず問題を有するものであった。また、そこでは、流動媒体粒子に粉砕力が作用しないように、ボールミルやロッドミルではなく、振動ミルを用いて、表面研磨することとされており、そのために、流動媒体に付着する付着物を剥離するには、充分ではなかったのである。
【0008】
しかも、それら従来から提案されている流動媒体の再生方法は、何れも、流動媒体として、ケイ砂等の天然の砂を対象とするものであるところから、そのような流動媒体の性状に基づくところの制約を受けて、有効な再生方法が確立されていないのが、現状である。即ち、流動層の流動媒体として、一般的に用いられているケイ砂を再生処理しようとした場合において、ケイ砂は割れ易く、そのために、再生工程において、ケイ砂の粒度分布を管理し難いことに加えて、その際に発生する遊離ケイ酸の粉末は発がん性物質であるところから、作業環境にも悪影響を及ぼす可能性がある。そして、かかるケイ砂は比較的安価であるところから、流動層炉から抜き出された肥大化流動媒体は、実際には、そのまま、廃棄処分されているのである。けだし、再生工程等でコストを掛けると、費用対効果の点からしても望ましくないからであり、それ故に、流動媒体の再生には、未だ充分な解決策が見出されていないのが、実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2011-106701号公報
【文献】特開2003-262308号公報
【文献】特開平8-278018号公報
【文献】特開2017-156073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここにおいて、本発明は、かくの如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、バイオマス材料及び/又は石炭類を燃料として用いる流動層炉において、その流動層を形成するために用いられた流動媒体を、適正な性状を有する再生流動媒体として、有利に再生することの出来る有効な再生方法を提供することにあり、また他の課題とするところは、流動層炉から抜き出された使用済みの流動媒体を再生して、再び流動層炉に有利に供給することの出来る、流動媒体の実用的な再生方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そして、本発明は、上述した課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものであるが、また、以下に記載の各態様は、任意の組合せにおいて採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されるものではなく、明細書全体の記載から把握され得る発明思想に基づいて認識され得るものであることが、理解されるべきである。
【0012】
そこで、本発明は、先ず、前記した課題を解決すべく、流動媒体からなる流動層を用いて、高温状態下において、バイオマス材料及び/又は石炭類からなる燃料を燃焼又はガス化せしめる流動層炉において、前記流動媒体として、40重量%以上のAl23と60重量%以下のSiO2 を含む化学組成を有する、人工的に製造された球状の耐火粒子を用いると共に、該流動層炉内において低融点物質の付着により肥大化乃至は塊状化した該流動媒体を、高温状態下の流動層炉より炉外に抜き出して、乾式冷却方式に従って急冷せしめることにより、かかる流動媒体に付着した低融点物質を非晶質化させた後、機械式研磨を実施して、該流動媒体に付着した非晶質の低融点物質を分離せしめる一方、その分離せしめた非晶質の低融点物質を集塵装置にて捕集して、除去することにより、K2CO3との共存下における加熱処理試験後の凝集粒の重量比率が50%以下である再生流動媒体を得ることを特徴とする流動層炉における流動媒体の再生方法を、その要旨とするものである。
【0013】
なお、かかる本発明に従う流動層炉における流動媒体の再生方法の好ましい態様の一つによれば、前記流動層炉から抜き出された高温の肥大化乃至は塊状化流動媒体が、500℃以下の温度まで急冷されることとなる。
【0014】
また、本発明に従う再生方法の好ましい態様の他の一つによれば、前記急冷が、150℃/時間以上の冷却速度にて実施される。
【0015】
さらに、本発明に従う再生方法の望ましい別の態様の一つによれば、前記流動層炉から抜き出された高温の肥大化乃至は塊状化流動媒体に対して、空冷を施すことにより、かかる肥大化乃至は塊状化流動媒体が急冷せしめられることとなる。
【0016】
加えて、本発明にあっては、前記球状の耐火粒子は、40~80重量%のAl23と60~20重量%のSiO2 を含む化学組成を有していることが望ましく、また、ムライト質又はムライト・コランダム質の焼結粒子であることが望ましく、更に、5%以下の見掛気孔率を有していることが望ましい。しかも、そのような耐火粒子としては、焼結法によって人工的に製造された球状の焼結粒子が有利に用いられ、それによって、本発明の特徴がより一層よく発揮されることとなる。
【0017】
そして、本発明に従って得られる再生流動媒体は、0.60以上の真円度を有する球状粒子として調整されていることが望ましく、また、そのような再生流動媒体の未使用流動媒体からの粒度指数(AFS.GFN)の変化率が、80~120%の範囲内であることが望ましい。
【0018】
また、本発明に従う流動層炉における流動媒体の再生方法の有利な態様によれば、前記機械式研磨が、前記急冷された肥大化乃至は塊状化流動媒体を、軸回りに回転せしめられる円筒状砥石の周面に接触させることによって、実施されることとなる。
【0019】
さらに、本発明にあっては、有利には、上述の如くして得られた再生流動媒体は、再び、前記流動層炉に投入されて、前記流動層が構成されることとなる。
【発明の効果】
【0020】
このように、本発明に従う流動層炉における流動媒体の再生方法にあっては、流動層炉において流動層を形成する流動媒体として、人工的に製造されたAl23-SiO2 系の球状耐火粒子を用いると共に、そのような流動媒体(耐火粒子)に対して、高温からの乾式冷却方式による急冷操作と機械式研磨処理とを組み合わせて実施することにより、高温状態下の流動層炉から炉外に抜き出された流動媒体に付着する低融点物質を効果的に非晶質化せしめて、容易に且つ効果的に分離除去せしめ得て、K2CO3との共存下における加熱処理試験後の凝集粒の重量比率が50%以下となる再生流動媒体を、有利に得ることが出来ることとなったのである。
【0021】
しかも、本発明に係る再生方法によれば、肥大化乃至は塊状化(凝集)した流動媒体粒子が効果的に孤立化せしめられ得、更に、粒子に付着した低融点物質も効果的に分離除去せしめられ得ることとなり、これによって、耐凝集性が付与され、更に粒子の球形度を効果的に高めて、粒度分布を新砂に近づけ得ることとなり、それによって、適正な特性を有する再生流動媒体を有利に得ることが出来ると共に、流動媒体としての流動性に極めて優れたものとなって、繰り返し、使用と再生を行なうことが出来るところから、長期間に亘って、経済的に有利に用いられ得るという特徴も発揮し得たのである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る再生方法おける機械式研磨処理に用いられる研磨装置の概略を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
先ず、本発明において対象とされる流動層炉は、よく知られているように、高温状態下において流動媒体を激しく流動せしめて、流動層を形成する一方、そのような流動媒体の中に所定の燃料を投入して、その燃焼やガス化を行うようにしたものであって、従来から各種の形式のものが提案されているが、本発明は、その何れの形式の流動層炉にも適用され得るものである。例えば、本発明に従う再生方法が適用される流動層炉としては、循環型やバブリング型等の公知の各種の構造のものがあり、それらの炉における流動層の形成に用いられた流動媒体が肥大化乃至は塊状化して、炉外に抜き出されるものに対して、本発明が適用され、有用な再生流動媒体として、再び流動層の形成に用いられることとなるのである。
【0024】
また、そのような流動層炉において、燃焼乃至はガス化処理される燃料としては、公知の各種のバイオマス材料や石炭類が対象とされ、具体的には、バイオマス材料としては、木くず、建築廃材、生木、PKS、果実が脱果された残りの部分であるEFB(例えば、油ヤシ、空果房)、木質ペレット、スイッチグラス、RDF、製紙スラッジ等を挙げることが出来、更に石炭類としては、泥炭、亜炭、褐炭から、無煙炭に至る各種石炭や、コークス、オイルコークス等が対象とされることとなる。
【0025】
ところで、かかる流動層炉を用いた、上述の如き燃料の燃焼乃至はガス化処理は、高温状態下、一般に700℃以上、例えば800℃~1000℃程度の温度下において行われることとなるのであるが、その際、流動層を構成する流動媒体には、前述せるように、燃料中の非可燃成分である灰分の中に含まれるSiO2 等とアルカリ金属酸化物等とが反応することにより生成されるガラス状の反応物(SiO2-K2O,Na2O 系化合物等)が付着し、更に、そのような付着物がバインダーとなって流動媒体粒子同士が結合して、肥大化乃至は塊状化する問題を惹起することとなるのである。
【0026】
そこで、本発明にあっては、そのような肥大化乃至は塊状化した流動媒体の実用的な再生処理を有利に実現すべく、先ず、かかる流動媒体として、人工的に製造された特定の球状の耐火粒子を用いることとしたのである。即ち、本発明においては、40重量%以上のAl23と60重量%以下のSiO2 とを含む化学組成を有している、球状の耐火粒子からなる流動媒体が、用いられることとなるのである。ここで、Al23の含有量が、40重量%未満となると、換言すればSiO2 の含有量が60重量%を超えるようになると、耐火粒子の熱膨張が大きくなり、SiO2 特有の異常膨張が惹起されて、本発明に従う再生処理の工程において、自己崩壊の問題が惹起されるようになることに加えて、燃料中のアルカリ成分との反応性が高くなり、粒子の凝集現象が惹起され易くなる等の問題を生じる。特に、本発明にあっては、そのような化学組成において、ムライト材質又はムライト・コランダム材質の耐火粒子が好適に用いられることとなる。
【0027】
なお、かかる耐火粒子の化学組成において、本発明の目的を有利に達成すべく、Al23 は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上の割合において含有せしめられ、その上限としては、一般に90重量%、好ましくは80重量%、より好ましくは70重量%程度が採用されることとなる。一方、SiO2 は、好ましくは50重量%以下、更に好ましくは40重量%以下の割合において含有せしめられ、その下限としては、一般に10重量%、好ましくは20重量%、更に好ましくは30重量%程度の割合が採用される。中でも、Al23:50~80重量%とSiO2 :50~20重量%の化学組成が有利に採用され、更にAl23:60~70重量%とSiO2 :40~30重量%の化学組成が、より一層好適に採用されることとなる。ここで、そのような化学組成は、例えば、一般的な蛍光X線分析装置にて測定することが可能である。
【0028】
また、かかる流動媒体として用いられるAl23-SiO2 系耐火粒子は、球状形状を呈する粒子として構成され、その真円度としては、一般に0.70以上であることが望ましく、中でも0.75以上、特に0.80以上の真円度を有する球状の耐火粒子が有利に用いられることとなる。このような真円度を有する球状の耐火粒子を用いることにより、本発明に従う再生工程において、耐火粒子表面に付着する付着物の剥離、除去が有利に行われ得て、その再生工程の実用性が、より一層高められ得るのである。
【0029】
さらに、そのようなAl23-SiO2 系耐火粒子は、その見掛け気孔率が、5%以下となるように構成されていることが望ましく、これによって、耐火粒子に付着する低融点物質により惹起される耐火粒子の肥大化乃至は凝集を効果的に抑制すると共に、再生処理工程における低融点物質の剥離除去作業を、より一層有利に進行せしめることが可能となる。なお、この見掛け気孔率が5%を超えるようになると、粒子の凝集現象が発生し易くなることに加えて、再生処理工程において粒子が破壊され易くなると共に、低融点物質の剥離除去を充分に行い難くなる等の問題が惹起されるようになる。このような見掛け気孔率は、本発明の目的を有利に達成する上において、好ましくは3.5%以下、特に3.0%以下となるように制御されることとなる。また、この見掛け気孔率は、JIS-R-2205に規定される測定法に準拠して、測定することが可能である。
【0030】
更にまた、上述の如き人工的に製造された球状の耐火粒子の粒径としては、流動媒体として用いるべく、流動層炉において用いられる従来からの流動媒体と同様な粒径が採用されるところであって、流動層のタイプやその操業条件等に応じて、適宜に決定されることとなる。例えば、バブリングタイプのBFB(Bubbling Fluidized Bed)においては、従来から用いられている4号珪砂や5号珪砂と同様な粒径のものが用いられ、また循環型であるCFB(Circulating Fluidized Bed)においては、6号珪砂や7号珪砂と同様な粒径のものが用いられることとなる。なお、それら流動層において用いられる耐火粒子の平均粒子径(D50)としては、一般に、0.05~3.0mm程度のものとなる。
【0031】
なお、上述の如く、流動媒体として用いられる、人工的に製造された球状のAl23-SiO2 系の耐火粒子は、従来から公知のAl23源原料やSiO2 源原料を用いた各種の手法によって製造可能であり、例えば、球状化に際しては、転動造粒法やスプレードライヤー法等による造粒手法に従って、造粒物が形成され、そして、そのような造粒物が、焼結法によって球状の焼結粒子として製造されたり、また、溶融法によって融着粒子として形成されたり、更には、火炎溶融法によって球状の溶融固化物として形成されることとなる。中でも、本発明にあっては、焼結法によって人工的に製造された球状の焼結粒子の採用が推奨される。
【0032】
そして、本発明にあっては、流動媒体として、上述の如き人工的に製造された球状のAl23-SiO2 系の耐火粒子を用いてなる流動層炉において、所定の燃料の燃焼乃至はガス化処理にて生じる低融点物質の付着により肥大化乃至は塊状化した流動媒体(凝集粒)が、流動層炉から炉外に抜き出されて(取り出されて)、本発明に従って急冷され、更に機械式研磨処理が施されることによって、流動媒体に付着した低融点物質を分離、除去し、更にその除去した低融点物質を集塵装置にて捕集することによって、流動媒体の再生及び粒子径の適正化を行うようにしたのである。
【0033】
具体的には、高温状態下の流動層炉から炉外に抜き出された、低融点物質の付着により肥大化乃至は塊状化した流動媒体は、乾式冷却方式に従って急冷せしめられることとなるのであり、これによって、かかる流動媒体に付着した低融点物質が非晶質化されることにより、低融点物質の脆性を高めて、後の機械式研磨処理の効率が効果的に向上せしめられ得ることとなる。即ち、抜き出される流動媒体は、高温で稼働される流動層炉において使用されているため、流動媒体及び粒子表面に付着する低融点物質は、高温状態となっており、そこでは、低融点物質は非晶質の形態となっているのである。そして、そのような流動層炉にて使用された流動媒体を炉外に抜き出して再生する際、流動媒体の粒子表面の低融点物質は、徐冷によって非晶質から結晶質へと変化するようになる。そこにおいて、非晶質のものは、一般的に脆性が高く、壊れやすいものである一方、結晶質のものは、脆性が低く、そのために破壊され難いものであるところから、本発明にあっては、流動層炉から抜き出された流動媒体の冷却に際して、意図的に急冷操作を施すことにより、流動媒体の粒子表面に付着した低融点物質(SiO2-K2O,Na2O 系化合物等)を非晶質物質の状態に保ち、後の機械式研磨を有利に行い得るようにしたのである。けだし、機械式研磨では、粒子表面に付着する低融点物質の脆性は高い程好ましく、そのために、流動媒体の粒子表面の低融点物質を非晶質物質の状態に保つことによって、その剥離、除去を容易に行い得るようにして、流動媒体粒子自体の損傷を可及的に回避しつつ、後の機械式研磨の効率を、より一層高め得るようにしたのである。
【0034】
なお、そのような流動層炉から取り出された、肥大化乃至は塊状化した流動媒体の凝集粒の急冷は、稼働状態にある流動層炉の高温状態、一般に700℃以上、例えば800℃~1000℃程度の温度に加熱されている状態から、低融点物質であるSiO2-K2O,Na2O 系物質の中で最も低融点である物質の融点よりも低い500℃以下の温度まで、望ましくは200℃以下の温度まで、更に望ましくは機械式研磨設備への投入を考慮して、100℃以下の温度となるように、実施されることとなる。また、かかる急冷に際しての冷却速度としては、早ければ早いほど望ましく、一般に150℃/時間以上、好ましくは300℃/時間以上、更に望ましくは600℃/時間以上の速度が採用されることとなる。このような冷却速度を採用することによって、流動媒体(耐火粒子)表面に付着した低融点物質は、非晶質物質の状態で保たれることとなり、以て、後の機械式研磨工程における剥離除去が有利に実現され得るのである。
【0035】
ここで、本発明における急冷に採用される乾式冷却方式とは、水を用いることなく(水に直接に接触させることなく)、冷却用気体や冷却用表面に接触させることによって、流動層炉から抜き出された高温の流動媒体の急速な冷却を行うものであって、公知の各種の非水式冷却方式が、適宜に採用されることとなる。例えば、冷却用空気の吹き付けや冷却用空気との積極的な接触等による空冷方式の他、水冷ジャケット付きスクリューコンベアを用い、その冷却表面に対して、高温の流動媒体の制御した量を接触せしめて、冷却せしめる方式等の、公知の急速冷却方式が、単独で又は組み合わせて用いられ、以て、目的とする冷却速度にて、目的とする冷却温度までの冷却が行われることとなる。
【0036】
次いで、かくの如くして急冷された流動媒体(凝集粒)には、その表面に付着する非晶質化された低融点物質を分離、除去して、有用な再生流動媒体として再利用すべく、機械式研磨処理が施されることとなる。この機械式研磨処理は、公知の各種の研磨装置を用いて実施され得、例えば、流動媒体を砥石に接触させて、その表面を研磨するようにした研磨装置を用いることが出来、有利には、軸周りに回転せしめられる円筒状砥石の周面に対して、急冷された流動媒体(凝集粒)を供給して、接触させることによって、研磨が行われるようにした方式が、有利に採用されることとなる。
【0037】
ところで、図1には、本発明に従う再生方法における機械式研磨に好適に用いられる研磨装置の一例が、概略的に示されている。そこにおいて、研磨装置10は、密閉された箱形で、下部がテーパー形状又は半円形状とされてなる筐体12内に、軸13回りに高速回転せしめられる円筒型の砥石14と、この砥石14の外周から所定の間隔を空けて、砥石14の周りに所定のピッチで放射状に複数枚配置されたガイド羽根16が取り付けられてなる、砥石14とは逆方向に回転せしめられる砂ガイド部材18を設けてなる構造を有しており、投入口20を通じて筐体12内に投入された流動媒体(凝集粒)を、回転されているガイド羽根16で掬って砥石14側に導き、かかるガイド羽根16(砂ガイド部材18)とは逆方向に高速回転せしめられる砥石14に対して、次々と接触させることにより、かかる流動媒体の表面研磨が行われるようにすることによって、流動媒体の表面に付着する非晶質化低融点物質が効果的に剥離、除去せしめられるようになっている。なお、かかる研磨装置10の筐体12の下部には、研磨された流動媒体の取出口22が設けられている一方、筐体12の上部には、流動媒体の研磨によって生じた、流動媒体から分離せしめられた非晶質の低融点物質(粉末)を吸引、除去するための集塵口24が設けられており、この集塵口24を通じて、かかる分離された非晶質の低融点物質(粉末)が集塵装置26に導かれて、捕集されるようになっている。
【0038】
かくの如き機械式研磨処理が、急冷された流動媒体に対して実施されることによって、K2CO3との共存下における加熱処理試験後の凝集粒の重量比率が50%以下である再生流動媒体が、有利に形成され得ることとなるのであり、これによって、再生された流動媒体の流動性が効果的に高められ得ることとなるのである。なお、かかる凝集粒の重量比率が50%を超えるようになると、流動層炉内において凝集が発生し易くなり、流動不良を惹起する等の問題を生じる。
【0039】
すなわち、本発明に従って再生された流動媒体は、その得られた再生流動媒体と共に、燃料(バイオマス材料及び/又は石炭類)の灰分に模したK2CO3を共存させた状態下において、900℃の温度で2時間の加熱処理を実施する凝集評価試験をした後において、かかる再生流動媒体の凝集粒の発生量が、重量比率において50%以下となる特性を有しているのである。このような所定の加熱処理試験後における凝集粒の重量比率は、本発明においては、50%以下と規定されるものであるが、それは、少なければ少ない程望ましく、有利には40%以下、更に有利には20%以下となるように、機械式研磨処理が施されて、再生流動媒体として再生されることとなる。なお、凝集粒の重量比率の測定には、再生した流動媒体(耐火粒子)の40gに対して、K2CO3の8.8gを混合して、900℃の温度で2時間加熱処理する試験が採用され、そしてその試験を実施した後、使用前の流動媒体(新砂)の平均粒子径の7倍に最も近い大きさの目開きを有する標準篩にて、かかる加熱処理試験後の流動媒体を篩い分けして、その篩上に残る塊状のものを凝集粒として、その重量比率を求める手法が、採用されることとなる。
【0040】
加えて、本発明に従って再生された流動媒体は、その真円度が0.60以上であることが望ましく、中でも0.65以上、更には0.70以上の真円度を有する再生流動媒体として有利に調製されることとなる。このような真円度を有する再生流動媒体を用いることによって、流動層炉内における流動化が有利に惹起され、目的とする流動層が容易に形成され得るのである。
【0041】
なお、そのような再生流動媒体の真円度や、先の流動媒体(新砂)の真円度は、何れも、マイクロトラック・ベル(株)製の粒子形状測定装置:PartAnSIによって測定することが出来る。かかる装置は、サンプルセル、ストロボLED及び高速度CCDカメラから構成されており、その測定原理は、水をポンプにより循環させる一方、試料(再生流動媒体/新砂)を投入することで、ストロボLED光源とCCDカメラの間に配置されたサンプルセルを、試料粒子の混在する水が通過し、その際に得られる投影像を画像解析することにより、粒子毎の投影面積と最大フェレー径を求めることからなるものである。そして、その得られた最大フェレー径と投影面積の値から、下式:
真円度
=[4×投影面積(mm2)]/[π×{最大フェレー径(mm)}2
により、粒子毎の真円度が算出されるのである。具体的には、再生流動媒体粒子/新砂粒子を5000個以上投入し、粒子毎の真円度を算出した後、それぞれ得られた真円度の合計値を測定粒子個数で平均することにより、再生流動媒体/新砂の真円度(平均値)が、それぞれ求められるのである。
【0042】
さらに、本発明に従って再生された流動媒体は、未使用の流動媒体(新砂)からの粒度指数(AFS.GFN)の変化率が、80~120%の範囲内であることが望ましい。換言すれば、再生流動媒体の粒度指数(AFS.GFN)が、新砂の粒度指数(AFS.GFN)の80~120%の範囲内であることが望ましいのである。かかる変化率が80%に満たない場合には、孤立粒子が充分に得られていないこととなるからであり、また120%を超えるようになると、新砂よりも粒度が細粒化していることを意味しており、それは、粒子が粉砕されていることを示しているために、望ましくないのである。なお、そのような変化率は、望ましくは85~115%の範囲内であり、更に望ましくは90~110%の範囲内である。そして、このような粒度指数(AFS.GFN)の変化率を有する再生流動媒体は、その再利用に際して、再生後の粒度調整を施す必要がなく、再利用可能であり、流動媒体として有利に用いることが出来ることとなるのである。
【0043】
また、かくの如き粒度指数(AFS.GFN)の変化率の測定は、新砂(未使用)の流動媒体と再生後の耐火粒子(再生流動媒体)の粒度分布をそれぞれ測定して、粒度指数(AFS.GFN)を求め、下式:
粒度指数(AFS.GFN)の変化率(%)
=(再生後のAFS.GFN/新砂のAFS.GFN)×100
に従って算出され得るものである。
【0044】
そして、上述の如く、本発明に従って得られた再生流動媒体は、再び、流動層炉に投入されて、流動層の形成に有利に用いられ得るのであって、これにより流動媒体の繰返しの使用を可能ならしめて、流動媒体の使用効率を効果的に向上せしめ得たのである。
【0045】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述してきたが、それは、あくまでも、例示に過ぎないものであって、本発明は、そのような実施形態に係る具体的な記述によって、何等限定的に解釈されるものではないことが、理解されるべきである。
【0046】
例えば、稼働中の流動層炉から、低融点物質の付着により肥大化乃至は塊状化した高温の流動媒体を抜き出す(取り出す)に際しては、公知の各種の取出し手法が採用されるところであって、具体的には、炉底からの取出し方式等が採用されることとなる。
【0047】
また、本発明に従う乾式冷却方式による急冷と機械式研磨処理とを連続的なラインにおいて実施することが、流動媒体の再生工程としては有利に採用されるところではあるが、勿論、それら急冷と機械式研磨処理とを異なるラインにおいて非連続的に実施することも可能である。
【0048】
さらに、流動層炉から抜き出される肥大化/塊状化流動媒体中に、金属質やセラミック質の如き介在物や岩石等の不燃物が混入している場合にあっては、本発明に従う機械式研磨処理に先立って、そのような不燃物を篩等によって除去する操作が、好適に採用され、加えて、肥大化/塊状化流動媒体が余りにも巨大化して、機械式研磨処理が困難となる場合にあっては、そのような巨大化した肥大化/塊状化流動媒体を、上記と同様に、機械式研磨処理に先立って、適当な解砕装置にて解砕して、機械式研磨処理に望ましい大きさとすることも、有利に採用されるところである。
【0049】
なお、本発明に従う再生方法が適用される流動層炉においては、上記した燃料が燃焼せしめられて生じた熱エネルギーが、発電や給湯、水蒸気の生成等に好適に用いられることとなるが、また、それらバイオマス材料や石炭類をガス化処理して、生じたガスの利用を図るようにすることも可能である。
【実施例
【0050】
以下に、本発明の代表的な実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
【0051】
-実施例1-
流動媒体として、各種材質の耐火粒子A,B及びCを、それぞれ、下記表1に示される公知の製造法に従って準備した。
【0052】
【表1】
【0053】
次いで、それら耐火粒子A~Cに対して、それぞれ、バイオマス燃料の灰分に模した試薬を添加して、混練した後、900℃×3時間の焙焼を行い、そして空冷により、400℃/時間の冷却速度で大気温度まで急冷した後、ジョークラッシャーにて解砕することにより、肥大化した凝集粒に模した疑似凝集粒を、それぞれ作製した。なお、試薬は、下記表2に示される分量において、SiO2 ,K2O の原料としてのK2CO3、CaOの原料としてのCa(OH)2 、MgOの原料としてのMg(OH)2 、及びNa2O の原料としてのヘキサメタリン酸ソーダを用いて、各耐火粒子(A,B,C)の34kgに対して、配合せしめた。
【0054】
【表2】
【0055】
そして、かくして得られた疑似凝集粒の約40kgを、図1に示される如き構造の研磨機であるサンドフレッシャー(株式会社清田鋳機製、BR-305)に投入して、砥石(砥石径:305mm)を周速:40m/秒で高速回転させて、その外周面に接触せしめることによって、かかる疑似凝集粒を研磨して、疑似凝集粒に付着した低融点物質を分離、除去せしめる一方、その除去した低融点物質(粉末)を、かかるサンドフレッシャーに連結した集塵機(アマノ株式会社製パルスジェット集塵機:PiF-75U)により、風量:46m3 /分にて集塵することで、機械式研磨処理を実施して、再生流動媒体(耐火粒子)を、それぞれ得た。そして、この機械式研磨処理時に発生した集塵粉は、再生耐火粒子Aにおいては50%、再生耐火粒子Bにおいては5%、再生耐火粒子Cにおいては10%であったことから、従来から流動媒体として用いられている珪砂からなる耐火粒子Aは、その大半が機械式研磨処理によって粉砕され、実用的な再生処理を行うことが困難であることが認められた。
【0056】
-実施例2-
実施例1において、耐火粒子A~Cに対する機械式研磨処理時間を種々異ならしめて得られた各種の再生粒子について、それぞれの40gと、K2CO3の8.8gとを混合した後、その得られた混合物を、電気炉において、900℃×2時間の加熱処理を施した。そして、そのような加熱処理の施されてなる再生粒子について、それぞれ、12メッシュ(目開き:1.4mm)の標準篩にて篩い分けをして、その篩上に残る塊状のものの重量比率を、凝集粒量として求め、その結果を、下記表3に示した。
【0057】
【表3】
【0058】
かかる表3の結果から明らかなように、再生耐火粒子B及びCにおいては、何れも、機械式研磨処理された粒子のK2CO3共存下の加熱処理試験後の凝集粒量は50%以下となり、更にその処理時間を長くすることによって、凝集粒量は減少し、特に、再生耐火粒子Bにあっては、研磨処理時間が120分となると、凝集粒量は19.2%と極めて少なくなり、燃料中の非可燃成分である灰分中に含まれるアルカリ金属酸化物(K2O、Na2O)との反応による凝集粒の形成が、効果的に抑制乃至は阻止され得ることが認められた。これに対して、従来の珪砂からなる再生耐火粒子Aにあっては、機械式研磨処理後においても、ほぼ全てが凝集粒となり、粒子同士が溶融して、原形を止めていない状況となっていることを認めた。
【0059】
-実施例3-
実施例1において、機械式研磨処理時間を種々変化させて得られた再生耐火粒子B及びCについて、その研磨処理時間毎に、それぞれの再生耐火粒子の真円度を求めて、その結果を、下記表4に示した。なお、真円度は、マイクロトラック・ベル株式会社製の粒子形状測定装置PartAnSIによって求められた投影面積と最大フェレー径とから、前記した真円度を求める式に基づいて、算出された。
【0060】
【表4】
【0061】
かかる表4の結果から明らかなように、機械式研磨処理によって得られた再生耐火粒子B及びCは、何れも、その真円度が約0.6以上であり、特に、再生耐火粒子Bにあっては、研磨処理時間を長くすることにより、真円度は上昇し、研磨処理時間が120分においては、0.79の真円度を有する再生粒子が得られていることから、そのような再生粒子においては、流動層炉内における流動化が有利に惹起され、流動層が容易に形成され得る球状の粒子径状を呈していることが認められる。これに対して、再生耐火粒子Cにあっては、研磨処理時間が30分までは、真円度は上昇したが、それ以降は低下することとなることが明らかとなった。なお、粒子形状を観察するために、再生耐火粒子Cについての粒子状態を顕微鏡写真にて調べたところ、半球状の粒子形状を呈しており、機械式研磨処理によって割れていることを認めた。また、再生耐火粒子Aについては、機械式研磨処理によって粉砕されており、再生処理工程に耐え得る耐久性を有していないことから、研磨処理前後における真円度の測定は、除外することとした。
【0062】
-実施例4-
実施例1において、機械式研磨処理時間を種々変化させて得られた再生耐火粒子B及びCについて、その研磨処理時間毎に、それぞれ粒度分布を測定して、粒度指数(AFS.GFN)を求め、その結果を、下記表5に示した。
【0063】
【表5】
【0064】
かかる表5の結果から明らかなように、再生耐火粒子B及びCにあっては、何れも、その新砂と機械式研磨処理した再生耐火粒子との粒度指数(AFS.GFN)の変化率は、80~120%の範囲内であった。そこにおいて、再生耐火粒子Bにあっては、研磨処理時間を長くすることにより、粒度指数(AFS.GFN)の変化率は、新砂と同値であることを示す100%に近づくことが認められ、新砂と同等な粒度指数を有していることから、流動媒体として用いる場合において、再生後の粒度調整を施す必要がなく、そのまま再利用可能であると判断された。これに対して、再生耐火粒子Cにあっては、研磨処理時間が60分となると、粒度指数(AFS.GFN)の変化率は100%を超え、新砂よりも細粒化していることを認めた。これは、機械式研磨処理により、粒子が半球状に割れたことによるものであると認められる。また、再生耐火粒子Aにあっては、機械式研磨処理によって粉砕されており、そのような機械式研磨処理による再生処理に耐え得る耐久性を有していないところから、その再生前後における粒度指数(AFS.GFN)の変化率の測定は、除外することとした。
【符号の説明】
【0065】
10 研磨装置 12 筐体
13 軸 14 砥石
16 ガイド羽根 18 砂ガイド部材
20 投入口 22 取出口
24 集塵口 26 集塵装置
図1