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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】固体撮像素子、および、撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 25/78 20230101AFI20240118BHJP
   H03M 1/56 20060101ALI20240118BHJP
   H03K 5/08 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
H04N25/78
H03M1/56
H03K5/08 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021505507
(86)(22)【出願日】2019-11-26
(86)【国際出願番号】 JP2019046089
(87)【国際公開番号】W WO2020183808
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2019046578
(32)【優先日】2019-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112955
【弁理士】
【氏名又は名称】丸島 敏一
(72)【発明者】
【氏名】曙 佐智雄
(72)【発明者】
【氏名】植野 洋介
【審査官】花田 尚樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/026564(WO,A1)
【文献】特開2018-148541(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0054931(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0249162(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/30 - 5/33
23/11
23/20 -23/30
25/00
25/20 -25/61
25/615-25/79
H03M 1/00 - 1/88
H03K 5/00 - 5/02
5/08 - 5/1254
5/15 - 5/26
99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された入力電圧と所定の参照電圧との分圧を供給する分圧回路と、
ゲートに入力された前記分圧と所定のソース電圧との間のゲート-ソース間電圧に応じたドレイン電流を出力する入力側差動トランジスタと、
前記ドレイン電流に応じた電圧を前記入力電圧と前記参照電圧との比較結果として出力する出力側差動トランジスタと、
前記入力側差動トランジスタのドレインに自身のドレインおよびゲートが接続された入力側カレントミラートランジスタと、
前記出力側差動トランジスタのドレインに自身のドレインが接続され、前記入力側カレントミラートランジスタのゲートに自身のゲートが接続された出力側カレントミラートランジスタと、
前記分圧回路の出力ノードにゲートが接続され、前記入力側カレントミラートランジスタの前記ドレインにソースが接続され、オン抵抗が前記入力側カレントミラートランジスタオン抵抗よりも小さい制御トランジスタと
を具備する固体撮像素子。
【請求項2】
前記入力側差動トランジスタのソースと前記出力側差動トランジスタのソースとに共通に接続されたテール電流源をさらに具備する
請求項1記載の固体撮像素子。
【請求項3】
入力側抵抗と、
出力側抵抗と
をさらに具備し、
前記入力側カレントミラートランジスタの前記ドレインは、前記入力側抵抗を介して前記入力側差動トランジスタのドレインに接続され、
前記出力側カレントミラートランジスタの前記ドレインは、前記出力側抵抗を介して前記出力側差動トランジスタのドレインに接続される
請求項2記載の固体撮像素子。
【請求項4】
前記入力側差動トランジスタ、前記出力側差動トランジスタおよび前記制御トランジスタは、P型トランジスタである
請求項1記載の固体撮像素子。
【請求項5】
前記入力側差動トランジスタ、前記出力側差動トランジスタおよび前記制御トランジスタは、N型トランジスタである
請求項1記載の固体撮像素子。
【請求項6】
前記分圧回路は、
入力側容量と、
参照側容量と、
所定数の中間容量と、
複数のスイッチと
を備え、
前記入力側容量と前記参照側容量と所定数の前記中間容量とのそれぞれの一端は、前記入力側差動トランジスタの前記ゲートに共通に接続され、
前記複数のスイッチは、前記入力側容量と前記参照側容量と所定数の前記中間容量とのそれぞれの他端の間の複数の経路を制御信号に従って開閉し、
前記入力側容量の他端には前記入力電圧が入力され、
前記参照側容量の他端には前記参照電圧が入力される
請求項1記載の固体撮像素子。
【請求項7】
入力された入力電圧と所定の参照電圧との分圧を供給する分圧回路と、
ゲートに入力された前記分圧と所定のソース電圧との間のゲート-ソース間電圧に応じたドレイン電流を出力する入力側差動トランジスタと、
前記ドレイン電流に応じた電圧を前記入力電圧と前記参照電圧との比較結果として出力する出力側差動トランジスタと、
前記入力側差動トランジスタのドレインに自身のドレインおよびゲートが接続された入力側カレントミラートランジスタと、
前記出力側差動トランジスタのドレインに自身のドレインが接続され、前記入力側カレントミラートランジスタのゲートに自身のゲートが接続された出力側カレントミラートランジスタと、
前記分圧回路の出力ノードにゲートが接続され、前記入力側カレントミラートランジスタの前記ドレインにソースが接続され、オン抵抗が前記入力側カレントミラートランジスタオン抵抗よりも小さい制御トランジスタと、
前記比較結果に基づいて計数値を計数するカウンタと、
を具備する撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、固体撮像素子、および、撮像装置に関する。詳しくは、シングルスロープ型のADCを設けた固体撮像素子、および、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、その構成が簡易であることから、比較器およびカウンタによりアナログ信号をデジタル信号に変換するシングルスロープ型のADC(Analog to Digital Converter)が、固体撮像素子などにおいて用いられている。例えば、一対の差動トランジスタを含む差動増幅回路と、参照信号および画素信号の分圧を一対の差動トランジスタの一方に供給する分圧回路とを比較器内に配置したADCが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-148541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の従来技術では、分圧回路の追加により、動作に必要な電源電圧を低下させて、消費電力の低減を図っている。しかしながら、画素信号のリセットレベルと信号レベルとの差が非常に大きい場合には、差動トランジスタのゲート-ソース間電圧が増大し、その増大に起因して差動トランジスタの寄生容量が大きくなるおそれがある。この寄生容量の増大により、参照信号と画素信号との比較結果の反転タイミングに誤差が生じ、その誤差に起因して画像データの画質が低下してしまうという問題がある。
【0005】
本技術はこのような状況に鑑みて生み出されたものであり、参照信号と画素信号とを比較する比較器を設けた固体撮像素子において、画像データの画質を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術は、上述の問題点を解消するためになされたものであり、その第1の側面は、入力された入力電圧と所定の参照電圧との分圧を供給する分圧回路と、ゲートに入力された上記分圧と所定のソース電圧との間のゲート-ソース間電圧に応じたドレイン電流を出力する入力側差動トランジスタと、上記ドレイン電流に応じた電圧を上記入力電圧と上記参照電圧との比較結果として出力する出力側差動トランジスタと、上記入力電圧が所定範囲外の値である場合には上記ゲート-ソース間電圧を低下させる制御トランジスタとを具備する固体撮像素子である。これにより、差動トランジスタのゲート-ソース間電圧が低下するという作用をもたらす。
【0007】
また、この第1の側面において、上記入力側差動トランジスタのソースと上記出力側差動トランジスタのソースとに共通に接続されたテール電流源と、上記入力側差動トランジスタのドレインに自身のドレインおよびゲートが接続された入力側カレントミラートランジスタと、上記出力側差動トランジスタのドレインに自身のドレインが接続され、上記入力側カレントミラートランジスタのゲートに自身のゲートが接続された出力側カレントミラートランジスタとをさらに具備し、上記制御トランジスタのゲートは、上記分圧回路の出力ノードに接続され、ソースは、上記入力側差動トランジスタおよび上記入力側カレントミラートランジスタの接続点に接続されてもよい。これにより、ダイオード接続のトランジスタを配置した比較器において、差動トランジスタのゲート-ソース間電圧が低下するという作用をもたらす。
【0008】
また、この第1の側面において、上記入力側差動トランジスタのソースと上記出力側差動トランジスタのソースとに共通に接続されたテール電流源と、上記入力側差動トランジスタのドレインに一端が接続された入力側抵抗と、上記出力側差動トランジスタのドレインに一端が接続された出力側抵抗とをさらに具備し、上記制御トランジスタのゲートは、上記分圧回路の出力ノードに接続され、ソースは、上記入力側差動トランジスタおよび上記入力側抵抗の接続点に接続されてもよい。これにより、トランジスタがN型またはP型のみの比較器において、差動トランジスタのゲート-ソース間電圧が低下するという作用をもたらす。
【0009】
また、この第1の側面において、上記入力側差動トランジスタおよび上記入力側抵抗の接続点がゲートに接続され、上記入力側抵抗の他端がドレインに接続された入力側カレントミラートランジスタと、上記出力側抵抗の他端に自身のドレインが接続され、上記入力側カレントミラートランジスタのゲートに自身のゲートが接続された出力側カレントミラートランジスタとをさらに具備してもよい。これにより、消費電力が削減されるという作用をもたらす。
【0010】
また、この第1の側面において、上記入力側差動トランジスタ、上記出力側差動トランジスタおよび上記制御トランジスタは、P型トランジスタであり、上記制御トランジスタは、上記入力電圧が所定値より低い場合には上記入力側差動トランジスタのドレイン電圧を低くしてもよい。これにより、リセットレベルより低い信号レベルが入力される場合に差動トランジスタのゲート-ソース間電圧が低下するという作用をもたらす。
【0011】
また、この第1の側面において、上記入力側差動トランジスタ、上記出力側差動トランジスタおよび上記制御トランジスタは、N型トランジスタであり、上記制御トランジスタは、上記入力電圧が所定値より高い場合には上記入力側差動トランジスタのドレイン電圧を高くしてもよい。これにより、リセットレベルより高い信号レベルが入力される場合に差動トランジスタのゲート-ソース間電圧が低下するという作用をもたらす。
【0012】
また、この第1の側面において、上記分圧回路は、制御信号に従って上記入力電圧と上記参照電圧との分圧比を変更してもよい。これにより、分圧比が可変の比較器において、差動トランジスタのゲート-ソース間電圧が低下するという作用をもたらす。
【0013】
また、本技術の第2の側面は、入力された入力電圧と所定の参照電圧との分圧を供給する分圧回路と、ゲートに入力された上記分圧と所定のソース電圧との間のゲート-ソース間電圧に応じたドレイン電流を出力する入力側差動トランジスタと、上記ドレイン電流に応じた電圧を上記入力電圧と上記参照電圧との比較結果として出力する出力側差動トランジスタと、上記入力電圧が所定範囲外の値である場合には上記ゲート-ソース間電圧を低下させる制御トランジスタと、上記比較結果に基づいて計数値を計数するカウンタとを具備する撮像装置である。これにより、差動トランジスタのゲート-ソース間電圧が低下し、画像データの画質が向上するという作用をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本技術の第1の実施の形態における撮像装置の一構成例を示すブロック図である。
図2】本技術の第1の実施の形態における固体撮像素子の積層構造の一例を示す図である。
図3】本技術の第1の実施の形態における固体撮像素子の一構成例を示すブロック図である。
図4】本技術の第1の実施の形態における画素の一構成例を示す回路図である。
図5】本技術の第1の実施の形態におけるアナログデジタル変換部の一構成例を示すブロック図である。
図6】本技術の第1の実施の形態における比較器の一構成例を示す回路図である。
図7】比較例におけるストリーキングの発生要因を説明するための図である。
図8】本技術の第1の実施の形態におけるMOS(Metal-Oxide-Semiconductor)トランジスタの特性の一例を示すグラフである。
図9】比較例における参照信号の変動の一例を示すタイミングチャートである。
図10】本技術の第1の実施の形態と比較例とにおける振幅とノード電圧との関係の一例を示すグラフである。
図11】本技術の第2の実施の形態における比較器の一構成例を示す回路図である。
図12】本技術の第3の実施の形態における比較器の一構成例を示す回路図である。
図13】本技術の第3の実施の形態における分圧回路の一構成例を示す回路図である。
図14】本技術の第4の実施の形態における比較器の一構成例を示す回路図である。
図15】内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
図16図15に示すカメラヘッド及びCCU(Camera Control Unit)の機能構成の一例を示すブロック図である。
図17】車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
図18】撮像部の設置位置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本技術を実施するための形態(以下、実施の形態と称する)について説明する。説明は以下の順序により行う。
1.第1の実施の形態(差動トランジスタのゲート-ソース間電圧を低下させる例)
2.第2の実施の形態(抵抗が接続された差動トランジスタのゲート-ソース間電圧を低下させる例)
3.第3の実施の形態(差動トランジスタのゲート-ソース間電圧を低下させ、カレントミラー回路との間に抵抗を挿入した例)
4.第4の実施の形態(N型の差動トランジスタのゲート-ソース間電圧を低下させる例)
5.内視鏡手術システムへの応用例
6.移動体への応用例
【0016】
<1.第1の実施の形態>
[撮像装置の構成例]
図1は、本技術の第1の実施の形態における撮像装置100の一構成例を示すブロック図である。この撮像装置100は、画像データを撮像するための装置であり、光学部110、固体撮像素子200およびDSP(Digital Signal Processing)回路120を備える。さらに撮像装置100は、表示部130、操作部140、バス150、フレームメモリ160、記憶部170および電源部180を備える。撮像装置100としては、例えば、デジタルスチルカメラなどのデジタルカメラの他、撮像機能を持つスマートフォンやパーソナルコンピュータ、車載カメラ等が想定される。
【0017】
光学部110は、被写体からの光を集光して固体撮像素子200に導くものである。固体撮像素子200は、垂直同期信号VSYNCに同期して、光電変換により画像データを生成するものである。ここで、垂直同期信号VSYNCは、撮像のタイミングを示す所定周波数の周期信号である。固体撮像素子200は、生成した画像データをDSP回路120に信号線209を介して供給する。
【0018】
DSP回路120は、固体撮像素子200からの画像データに対して所定の画像処理を実行するものである。このDSP回路120は、処理後の画像データをバス150を介してフレームメモリ160などに出力する。
【0019】
表示部130は、画像データを表示するものである。表示部130としては、例えば、液晶パネルや有機EL(Electro Luminescence)パネルが想定される。操作部140は、ユーザの操作に従って操作信号を生成するものである。
【0020】
バス150は、光学部110、固体撮像素子200、DSP回路120、表示部130、操作部140、フレームメモリ160、記憶部170および電源部180が互いにデータをやりとりするための共通の経路である。
【0021】
フレームメモリ160は、画像データを保持するものである。記憶部170は、画像データなどの様々なデータを記憶するものである。電源部180は、固体撮像素子200、DSP回路120や表示部130などに電源を供給するものである。
【0022】
[固体撮像素子の構成例]
図2は、本技術の第1の実施の形態における固体撮像素子200の積層構造の一例を示す図である。この固体撮像素子200は、回路チップ202と、その回路チップ202に積層された受光チップ201とを備える。これらのチップは、ビアなどの接続部を介して電気的に接続される。なお、ビアの他、Cu-Cu接合やバンプにより接続することもできる。
【0023】
図3は、本技術の第1の実施の形態における固体撮像素子200の一構成例を示すブロック図である。この固体撮像素子200は、行選択部211、DAC(Digital to Analog Converter)212、画素アレイ部213を備える。また、固体撮像素子200は、タイミング制御部214、定電流源部230、アナログデジタル変換部300、水平転送走査部215および信号処理部216をさらに備える。
【0024】
例えば、画素アレイ部213は、受光チップ201に配置され、それ以外の回路(行選択部211など)は、回路チップ202に配置される。なお、受光チップ201および回路チップ202のそれぞれに配置する回路は、この構成に限定されない。例えば、アナログデジタル変換部300内の比較器までを受光チップ201に配置し、その後段を回路チップ202に配置することもできる。
【0025】
画素アレイ部213には、複数の画素220が二次元格子状に配列される。以下、水平方向に配列された画素220の集合を「行」と称し、行に垂直な方向に配列された画素220の集合を「列」と称する。これらの列数をN(Nは整数)とする。また、画素アレイ部213には、列ごとに垂直信号線229(nは、1乃至Nの整数)が配線される。
【0026】
画素220は、光電変換によりアナログの画素信号を生成し、対応する垂直信号線229を介してアナログデジタル変換部300に供給するものである。
【0027】
行選択部211は、行を順に選択して駆動し、画素信号を出力させるものである。DAC212は、所定の参照信号を生成してアナログデジタル変換部300に供給するものである。参照信号として、例えば、のこぎり刃状のランプ信号が生成される。
【0028】
タイミング制御部214は、垂直同期信号VSYNCに同期して行選択部211、アナログデジタル変換部300および水平転送走査部215のそれぞれの動作タイミングを制御するものである。
【0029】
定電流源部230には、列ごとに定電流源が配置される。それぞれの定電流源は、対応する列の垂直信号線に接続される。
【0030】
アナログデジタル変換部300は、列ごとに、その列の画素信号をデジタル信号に変換するものである。このアナログデジタル変換部300は、列ごとのデジタル信号を信号処理部216に出力する。
【0031】
水平転送走査部215は、アナログデジタル変換部300を制御して行内の画素信号を順に出力させるものである。
【0032】
信号処理部216は、デジタル信号に対して、暗電流補正やデモザイク処理などの所定の信号処理を行うものである。この信号処理部216は、処理後の信号からなる画像データを信号線209を介してDSP回路120に供給する。
【0033】
[画素の構成例]
図4は、本技術の第1の実施の形態における画素220の一構成例を示す回路図である。この画素220は、光電変換素子221、転送トランジスタ222、リセットトランジスタ223、浮遊拡散層224、増幅トランジスタ225および選択トランジスタ226を備える。
【0034】
また、定電流源部230には、列ごとに定電流源231が設けられる。定電流源231は、対応する垂直信号線229に一定の電流を供給するものである。
【0035】
光電変換素子221は、入射光を光電変換して電荷を生成するものである。転送トランジスタ222は、行選択部211からの駆動信号TRGに従って、光電変換素子221から浮遊拡散層224へ電荷を転送するものである。
【0036】
リセットトランジスタ223は、行選択部211からの駆動信号RSTに従って、浮遊拡散層224から電荷を引き抜いて初期化するものである。
【0037】
浮遊拡散層224は、電荷を蓄積し、電荷量に応じた電圧を生成するものである。増幅トランジスタ225は、浮遊拡散層224の電圧を増幅するものである。
【0038】
選択トランジスタ226は、行選択部211からの駆動信号SELに従って、増幅された電圧の信号を画素信号として出力するものである。画素信号は、対応する垂直信号線229を介してアナログデジタル変換部300へ供給される。
【0039】
[アナログデジタル変換部の構成例]
図5は、本技術の第1の実施の形態におけるアナログデジタル変換部300の一構成例を示す回路図である。このアナログデジタル変換部300には、複数の比較器330と、複数のカウンタ310と、複数のラッチ320とが配置される。これらの比較器330、カウンタ310およびラッチ320は、列ごとに設けられる。
【0040】
比較器330は、参照信号RMPと、対応する列からの画素信号Vinとを比較するものである。この比較器330は、比較結果Voutを対応するカウンタ310に供給する。
【0041】
カウンタ310は、タイミング制御部214の制御に従って、比較結果Voutが反転するまでの期間に亘って計数値を計数するものである。このカウンタ310は、計数値を示すデジタル信号を対応するラッチ320に出力し、保持させる。
【0042】
ラッチ320は、対応する列のデジタル信号を保持するものである。このラッチ320は、水平転送走査部215の制御に従ってデジタル信号を信号処理部216に出力する。
【0043】
上述の比較器330およびカウンタ310により、アナログの画素信号がデジタル信号に変換される。すなわち、比較器330およびカウンタ310は、ADCとして機能する。このように比較器およびカウンタからなる簡易な構成のADCは、シングルスロープ型のADCと呼ばれる。
【0044】
また、アナログデジタル変換部300は、AD変換の他、リセットレベルと信号レベルとの差分を求めるCDS(Correlated Double Sampling)処理を列ごとに行う。ここで、リセットレベルは、画素220の初期化時の画素信号のレベルであり、信号レベルは、露光終了時の画素信号のレベルである。例えば、リセットレベルの変換時にカウンタ310がダウンカウントおよびアップカウントの一方を行い、信号レベルの変換時にカウンタ310がダウンカウントおよびアップカウントの他方を行うことにより、CDS処理が実現される。なお、カウンタ310がアップカウントのみ、あるいは、ダウンカウントのみを行う構成とし、その後段にCDS処理を行う回路を追加することもできる。
【0045】
[比較器の構成例]
図6は、本技術の第1の実施の形態における比較器330の一構成例を示す回路図である。この比較器330は、テール電流源331と、差動トランジスタ332および333と、オートゼロスイッチ334および335と、制御トランジスタ336とを備える。また、比較器330は、カレントミラートランジスタ337および338と、キャパシタ339と、分圧回路340とをさらに備える。差動トランジスタ332、差動トランジスタ333および制御トランジスタ336として、例えば、pMOS(p-type MOS)トランジスタが用いられる。また、カレントミラートランジスタ337および338として、例えば、nMOS(n-type MOS)トランジスタが用いられる。
【0046】
分圧回路340は、参照信号RMPと画素信号Vinとを分圧し、その分圧を供給するものである。この分圧回路340は、キャパシタ341および342を備える。
【0047】
キャパシタ341は、画素信号Vinを伝送する垂直信号線229と、差動トランジスタ332のゲートの間に挿入されており、画素信号Vinに対する入力容量となる。一方、キャパシタ342は、参照信号RMPを供給するDAC212と差動トランジスタ332のゲートの間に挿入されており、参照信号RMPに対する入力容量となる。
【0048】
これらのキャパシタ341および342のそれぞれの容量に基づいて決定される分圧比により、画素信号Vinの電圧と、参照信号RMPの参照電圧とが分圧される。画素信号Vinと参照信号RMPとの分圧は、ゲート電圧V1として、差動トランジスタ332および制御トランジスタ336のゲートに供給される。
【0049】
差動トランジスタ332および333のソースは、テール電流源331を介して電源電圧VDDの端子に接続されている。また、差動トランジスタ332のドレインは、制御トランジスタ336のソースとカレントミラートランジスタ337のドレインとに接続される。一方、差動トランジスタ333のドレインは、カレントミラートランジスタ338のドレインに接続される。また、差動トランジスタ333のドレインの電圧は、比較器330の比較結果Voutとしてカウンタ310へ出力される。
【0050】
なお、差動トランジスタ332は、特許請求の範囲に記載の入力側差動トランジスタの一例である。差動トランジスタ333は、特許請求の範囲に記載の出力側差動トランジスタの一例である。
【0051】
カレントミラートランジスタ337のゲートおよびドレインは短絡されている。また、カレントミラートランジスタ337のソースは、所定の基準電位(接地電位など)の端子に接続される。一方、カレントミラートランジスタ338のゲートは、カレントミラートランジスタ337のゲートに接続され、ソースは基準電位の端子に接続される。また、制御トランジスタ336のドレインは、基準電位の端子に接続される。
【0052】
なお、カレントミラートランジスタ337は、特許請求の範囲に記載の入力側カレントミラートランジスタの一例である。カレントミラートランジスタ338は、特許請求の範囲に記載の出力側カレントミラートランジスタの一例である。
【0053】
オートゼロスイッチ334は、タイミング制御部214からの制御信号AZSWに従って差動トランジスタ332のゲートとドレインとの間を短絡するものである。オートゼロスイッチ335は、タイミング制御部214からの制御信号AZSWに従って差動トランジスタ333のゲートとドレインとの間を短絡するものである。キャパシタ339は、差動トランジスタ333のゲートと基準電位の端子との間に挿入され、差動トランジスタ333のゲートには、一定の電圧VSHが印加される。
【0054】
例えば、タイミング制御部214は、リセットレベルの変換期間と信号レベルの変換期間とのそれぞれの直前のタイミングにおいて、オートゼロスイッチ334を閉状態に制御し、オートゼロ動作を行う。
【0055】
上述の構成により、カレントミラートランジスタ337および338はカレントミラー回路を構成する。また、そのカレントミラー回路と、テール電流源331と、差動トランジスタ332および333とからなる回路は、差動増幅回路を構成する。
【0056】
差動増幅回路において、差動トランジスタ332は、ゲート電圧V1と、ソース電圧Vtailとの間のゲート-ソース間電圧に応じたドレイン電流を供給する。また、差動トランジスタ333のドレインからは、そのドレイン電流に応じた電圧が、参照信号RMPと画素信号Vinとの比較結果Voutとして出力される。
【0057】
また、制御トランジスタ336のオン抵抗は、ダイオード接続のカレントミラートランジスタ337のオン抵抗よりも小さいものとする。このため、制御トランジスタ336がオン状態に移行すると、差動トランジスタ332のドレイン電圧V2が低下する。このドレイン電圧V2の低下に応じて、差動トランジスタ332のソース電圧Vtailも低下する。このソース電圧Vtailの低下により、差動トランジスタ332のゲート-ソース間電圧が低下する。
【0058】
ここで、制御トランジスタ336を設けた効果について説明するために、制御トランジスタ336の無い構成を比較例として想定する。
【0059】
図7は、比較例におけるストリーキングの発生要因を説明するための図である。画素220が電荷として電子を蓄積する場合、入射光の照度が高いほど、画素信号Vinの信号レベルは、リセットレベルに対して低い値となる。言い換えれば、照度が高いほど、リセットレベルから信号レベルに変化する際の振幅が大きくなる。
【0060】
ある列の画素信号Vin1の振幅が非常に大きく、別の列の画素信号Vin2の振幅は比較的小さいものとする。この振幅の大きい方の列をアグレッサーとし、小さい方の列をビクティムとする。
【0061】
また、参照信号RMPは、AD変換の期間に亘って徐々に大きくなる。この参照信号RMPが最小のとき(すなわち、AD変換開始時)のゲート電圧V1は振幅が大きいほど低くなり、そのゲート電圧V1が低いほど差動トランジスタ332のゲート-ソース間電圧が大きくなる。すなわち、振幅が大きいほど、差動トランジスタ332のゲート-ソース間電圧が大きくなる。
【0062】
振幅が非常に大きいと、差動トランジスタ332のゲート-ソース間電圧の増大により、テール電流源331のテール電流の大部分は、差動トランジスタ332側に流れる。そうすると、差動対でありながら、差動トランジスタ332は、殆どソースフォロワーのように振る舞う。言い換えるなら、その状態でゲート電圧V1が変化すると、ドレイン電圧V2は殆ど変化しない一方、ソース電圧Vtailは、ゲート電圧V1とほぼ連動する。ソース電圧Vtailがゲート電圧V1とほぼ連動するため、差動トランジスタ332のゲート-ソース間の寄生容量の充放電が起きない。したがって、DAC212から見た差動トランジスタ332の実効的な容量は、差動トランジスタ332のゲート-ドレイン間の寄生容量と考えることができる。
【0063】
図8は、本技術の第1の実施の形態におけるMOSトランジスタの特性の一例を示すグラフである。同図における縦軸は容量であり、横軸はゲート-ソース間電圧Vgsである。また、同図における実線は、MOSトランジスタのゲート-ドレイン間の寄生容量Cgdの特性を示し、一点鎖線は、MOSトランジスタのゲート-ソース間の寄生容量Cgsの特性を示す。
【0064】
ゲート-ソース間電圧VgsがMOSトランジスタの閾値電圧VTHを超えると、MOSトランジスタは飽和状態と呼ばれる状態に移行し、寄生容量Cgsが増大する。閾値電圧VTHの増大に伴って、寄生容量Cgsは飽和する。そして、ゲート-ソース間電圧Vgsがドレイン電圧Vおよび閾値電圧VTHの和を超えると、MOSトランジスタは3極間状態と呼ばれる状態に移行する。この3極間状態への移行時に、寄生容量Cgsが減少する一方で、寄生容量Cgdは増大する。
【0065】
前述したように、差動トランジスタ332の実効的な容量は、差動トランジスタ332のゲート-ドレイン間の寄生容量Cgdである。このため、アグレッサーの振幅が非常に大きく、差動トランジスタ332が3極間状態に移行すると、DAC212から見た差動トランジスタ332の実効的な容量(寄生容量Cgd)が増大する。
【0066】
図9は、比較例における参照信号RMPの変動の一例を示すタイミングチャートである。参照信号RMPは、タイミングT0乃至T1のリセットレベルの変換期間に亘って、初期値から徐々に増大する。また、タイミングT2乃至T3の信号レベルの変換期間に亘って、初期値から徐々に増大する。
【0067】
比較例では、差動トランジスタ332が3極間状態に移行し、DAC212から見た容量(寄生容量Cgd)が増大すると、DAC212の負荷の時定数が増大する。これにより、同図における一点鎖線のように参照信号RMPの上昇速度が遅くなり、各列の信号レベルの比較結果Voutが反転するまでの時間が遅くなる。信号レベルの反転タイミングが遅くなる一方でリセットレベルの反転タイミングは変化が無いため、CDS処理後のデジタル信号に誤差が生じ、画像データの画質が低下してしまう。
【0068】
アグレッサーで生じた寄生容量の増大による反転タイミングの遅延は、アグレッサーのみならず、ビクティムにも生じる。このため、例えば、比較例では、照度が高いときに、白浮きのストリーキングが発生する。寄生容量の増大を抑制するには、画素信号の振幅を小さくすればよいが、ダイナミックレンジが低下してしまうため、好ましくない。
【0069】
ここで、3極間状態への移行が生じるのは、画素信号Vinの振幅が、およそAc-1・|Vthp|ボルト(V)のときである。ただし、厳密にはドレイン電圧V2の上昇のためにそれよりも若干小さい。
【0070】
上述のVthpは、P型の差動トランジスタ332の閾値電圧である。また、Acは、垂直信号線229からゲート電圧V1のノードへの伝達ゲイン(いわゆる、オートゼロゲイン)である。例えば、オートゼロゲインが0デシベル(dB)の場合に、画素信号Vinに対する入力容量と参照信号RMPに対する入力容量とが略一致する際には、伝達ゲインAcは約0.5となる。実際には他の寄生容量により、もう少し減衰するため、上述の設定の場合には伝達ゲインAcは0.4程度まで小さくなると思われる。
【0071】
直感的に述べるなら、差動トランジスタ332を3極管状態に遷移させるには、ゲート電圧V1のノードには、約|Vthp|ボルト(V)だけの信号が入ればよい。しかし、分圧回路340の容量分圧を考慮すると、その減衰を補うAc-1・|Vthp|ボルト(V)の入力が必要となる。
【0072】
したがって、画素信号Vinの振幅が、Ac-1・|Vthp|ボルト(V)を超える場合に、ストリーキングが発生する。
【0073】
そこで、このストリーキングの発生を抑制するために、制御トランジスタ336を追加することを提案する。比較器330の特性を決めるオートゼロ状態では動作しないで影響を与えず、画素信号Vinの振幅が大きいときのみドレイン電圧V2を低下させるように動作し、3極管状態に入りにくくすることがポイントである。
【0074】
制御トランジスタ336を設けない比較例において、差動トランジスタ332のドレイン-ゲート間電圧Vdgは、次の式により表される。
dg=Vgsn-Vgs0+Ac・ΔVVSL
≒Ac・ΔVVSL+(21/2-1)・VODn0
≒Ac・ΔVVSL+0.4×VODn0 ・・・式1
上式において、Vgsnは、信号レベル入力時のN型のカレントミラートランジスタ337のゲート-ソース間電圧である。Vgs0は、オートゼロ時のカレントミラートランジスタ337のゲート-ソース間電圧である。ΔVVSLは、画素信号Vinの振幅である。VODn0は、カレントミラートランジスタ337のオーバードライブ電圧(言い換えれば、ピンチオフ電圧)である。
【0075】
また、式1では、画素信号Vinの振幅が十分に大きい場合には、差動トランジスタ332には、オートゼロ時の約2倍の電流が流れていることを想定している。故に、次の式が成立する場合に、差動トランジスタ332は3極管状態に移行し、容量変化をもたらす。
Ac・ΔVVSL+0.4×VODn0>|Vthp| ・・・式2
【0076】
式2を変形すると、次の式が得られる。
ΔVVSL>Ac-1・(|Vthp|-0.4×VODn0) ・・・式3
【0077】
これに対して、制御トランジスタ336を追加した場合を考える。画素信号Vinの振幅が大きく、かつ、その際に制御トランジスタ336の負荷抵抗(オン抵抗)が、カレントミラートランジスタ337のオン抵抗よりも十分に小さいとすると、次の式が成立する。
dg≒Vsg3≒VODp3+|Vthp3| ・・・式4
上式において、Vsg3は、制御トランジスタ336のソース-ゲート間電圧である。VODp3は、制御トランジスタ336のオーバードライブ電圧である。Vthp3は、制御トランジスタ336の閾値電圧である。
【0078】
式4より、差動トランジスタ332が3極管状態に入らず、飽和状態を維持するためには、次の式を満たせばよい。
ODp3+|Vthp3|<|Vthp| ・・・式5
【0079】
式5を変形すると、次の式が得られる。
|Vthp|-|Vthp3|-VODp=-Δ|Vthp|-VODp3>0
【0080】
ただし、P型の差動トランジスタ332のバックバイアス効果により、しばしばΔ|Vthp|がゼロより大きく、当然ながら、オーバードライブ電圧VODp3もゼロより大きい。このため、3極管状態に入るのを完全に防ぐことはできない。しかしながら、それでも、これらのパラメータの両方を極力ゼロに近くすることにより、3極管状態にわずかに入ったところで止めることができる。
【0081】
具体的には、制御トランジスタ336について、極力Δ|Vthp|が小さい素子やトランジスタサイズを選定する。あるいは、アスペクト比を極力高める等により、オーバードライブ電圧VODp3を可能な限り小さくするなどである。注意点として、この制御トランジスタ336を追加すると、そのゲート容量が、比較器330のオートゼロゲインAcを低下させて、画素信号の電圧換算ノイズを増大させうる。したがって、制御トランジスタ336のゲート面積は、差動トランジスタ332に比べて十分に小さい面積に留めるべきである。同時に、例えば、ゲート幅を等しくすることにより、差動トランジスタ332とドレインおよびソースを共有するようにレイアウトし、寄生容量の増加を最小限に留めるべきである。
【0082】
なお、比較結果Voutの反転時の近傍であるオートゼロ点の付近において、制御トランジスタ336はオフ状態になるため、制御トランジスタ336による悪影響は殆ど無いと期待することができる。また、Δ|Vthp|が、同じpMOSトランジスタ間の閾値電圧の差であるため、nMOSトランジスタとpMOSトランジスタとのアンバランス等のコーナー条件に対しても、ある程度ロバストであると期待することができる。
【0083】
図10は、本技術の第1の実施の形態と比較例とにおける振幅とノード電圧との関係の一例を示すグラフである。同図におけるaは、制御トランジスタ336の無い比較例における振幅とノード電圧との関係の一例を示すグラフである。同図におけるbは、制御トランジスタ336の有る第1の実施の形態における振幅とノード電圧との関係の一例を示すグラフである。また、同図における横軸は、画素信号Vinの振幅ΔVVSLを示す。振幅ΔVVSLは、画素信号VinのリセットレベルVinpと、信号レベルVindとの差分である。同図における縦軸は、ノード電圧を示す。実線は、ソース電圧Vtailの特性を示し、一点鎖線は、ドレイン電圧V2の特性を示す。
【0084】
同図におけるaに例示するように、比較例では、振幅ΔVVSLの増大に伴って、ソース電圧Vtailがドレイン電圧V2に近い一定値になるまで低下する。一方、ドレイン電圧V2は一定である。そして、ソース電圧Vtailが一定値になるときの値よりも振幅ΔVVSLが大きくなると、差動トランジスタ332が3極管状態に移行し、寄生容量が増大してしまう。
【0085】
これに対して、制御トランジスタ336を追加した場合、同図におけるbに例示するように、ソース電圧Vtailがドレイン電圧V2に近い値になるときに、制御トランジスタ336がオン状態に移行する。そして、その制御トランジスタ336側にドレイン電流が流れることにより、振幅ΔVVSLが増大するほど、ソース電圧Vtailおよびドレイン電圧V2が低下する。このソース電圧Vtailの低下により、差動トランジスタ332のゲート-ソース間電圧が低下するため、差動トランジスタ332が飽和状態を維持することができる。これにより、寄生容量の増大によるストリーキングを抑制することができる。
【0086】
まとめると、分圧回路は、入力された画素信号Vinの電圧と所定の参照信号RMPの電圧との分圧をゲート電圧V1として供給する。差動トランジスタ332は、ゲートに入力されたゲート電圧V1と所定のソース電圧Vtailとの間のゲート-ソース間電圧に応じたドレイン電流を出力する。また、差動トランジスタ333は、そのドレイン電流に応じた電圧を、画素信号と参照信号との比較結果Voutとしてドレインから出力する。
【0087】
また、制御トランジスタ336は、ソース電圧Vtailがドレイン電圧V2に近づくときの値よりも振幅ΔVVSLが大きい場合(言い換えると、画素信号の信号レベルが所定値より低い場合)、ドレイン電圧V2を低下させる。これにより、差動トランジスタ332のゲート-ソース間電圧が低下し、そのトランジスタの寄生容量の増大を抑制することができる。
【0088】
なお、pMOSトランジスタを制御トランジスタ336として用いているが、後述するようにnMOSトランジスタを用いることもできる。この場合には、画素信号Vinの信号レベルが所定値より高い場合に、制御トランジスタ336がドレイン電圧V2を高くし、差動トランジスタ332のゲート-ソース間電圧を低下させる。
【0089】
制御トランジスタ336がnMOSトランジスタの場合と、pMOSトランジスタの場合とをまとめると、画素信号Vinが所定範囲外である場合に、制御トランジスタ336が差動トランジスタ332のゲート-ソース間電圧を低下させる。
【0090】
このように、本技術の第1の実施の形態によれば、画素信号Vinが所定範囲外の場合に制御トランジスタ336が差動トランジスタ332のゲート-ソース間電圧を低下させるため、差動トランジスタ332の寄生容量の増大を抑制することができる。これにより、寄生容量の増大に起因するストリーキングを防止し、画像データの画質を向上させることができる。
【0091】
<2.第2の実施の形態>
上述の第1の実施の形態では、比較器330内にP型の差動トランジスタ332等に加えて、N型のカレントミラートランジスタ337等を設けていた。しかし、このようにpMOSトランジスタとnMOSトランジスタとが混在する構成では、いずれか一方のみを配置する場合と比較して、製造コストが増大するおそれがある。この第2の実施の形態の比較器330は、nMOSトランジスタの代わりに、抵抗を配置した点において第1の実施の形態と異なる。
【0092】
図11は、本技術の第2の実施の形態における比較器330の一構成例を示す回路図である。この第2の実施の形態の比較器330は、カレントミラートランジスタ337および338の代わりに抵抗351および352を配置した点において第1の実施の形態と異なる。
【0093】
抵抗351は、差動トランジスタ332のドレインに一端が接続され、抵抗352は、差動トランジスタ333のドレインに一端が接続される。抵抗351および352の他端は、基準電位(接地電位など)の端子に接続される。なお、抵抗351は、特許請求の範囲に記載の入力側抵抗の一例であり、抵抗352は、特許請求の範囲に記載の出力側抵抗の一例である。
【0094】
N型のカレントミラートランジスタ337および338の削減により、P型トランジスタのみとなる。このため、pMOSトランジスタとnMOSトランジスタとが混在する場合と比較して、トランジスタを形成する際の工程数を少なくし、固体撮像素子200の製造コストを削減することができる。
【0095】
このように、本技術の第2の実施の形態によれば、差動トランジスタ332および333に、抵抗351および352を接続したため、比較器330内のトランジスタをpMOSトランジスタのみにすることができる。これにより、トランジスタを形成する際の工程数を少なくし、製造コストを削減することができる。
【0096】
<3.第3の実施の形態>
上述の第1の実施の形態では、差動トランジスタ332および333に、カレントミラートランジスタ337および338を直接接続していたが、この構成では、消費電力を十分に低減することができないことがある。この第3の実施の形態の比較器330は、抵抗の追加により、動作可能な最低限の電源電圧を低下させ、消費電力を低減した点において第1の実施の形態と異なる。
【0097】
図12は、本技術の第3の実施の形態における比較器330の一構成例を示す回路図である。この第3の実施の形態の比較器330は、抵抗361および362をさらに設けた点において第1の実施の形態と異なる。
【0098】
抵抗361の一端は、差動トランジスタ332のドレインに接続され、他端は、カレントミラートランジスタ337のドレインに接続される。抵抗362の一端は、差動トランジスタ333のドレインに接続され、他端は、カレントミラートランジスタ338のドレインに接続される。なお、抵抗361は、特許請求の範囲に記載の入力側抵抗の一例であり、抵抗362は、特許請求の範囲に記載の出力側抵抗の一例である。
【0099】
また、カレントミラートランジスタ337のゲートは、抵抗361および差動トランジスタ332の接続点に接続される。オートゼロスイッチ334は、差動トランジスタ332のゲートと、抵抗361およびカレントミラートランジスタ337の接続点とを短絡する。オートゼロスイッチ335は、差動トランジスタ333のゲートと、抵抗362およびカレントミラートランジスタ338の接続点とを短絡する。
【0100】
また、制御トランジスタ336のソースは、抵抗361およびカレントミラートランジスタ337の接続点に接続される。
【0101】
上述の構成において、オートゼロスイッチ334および335が閉状態の際の電源電圧VDD1は、次の式により表される。
VDD1=VdsT+VgsP+VgsN-VR ・・・式6
上式において、VdsTは、テール電流源331をpMOSトランジスタにより実現した際の、そのトランジスタのドレイン-ソース間電圧である。VgsPは、オートゼロ動作の際のP型の差動トランジスタ332および333のゲート-ソース間電圧である。VgsNは、N型のカレントミラートランジスタ337および338のゲート-ソース間電圧である。VRは、抵抗361および362のそれぞれの端子間電圧である。
【0102】
これに対して、抵抗361および362を設けない第1の実施の形態において、オートゼロスイッチ334および335が閉状態の際の電源電圧VDD1は、次の式により表される。
VDD1=VdsT+VgsP+VgsN ・・・式7
【0103】
式6および式7に例示したように、抵抗361および362を設けることにより、差動増幅回路が正常に動作可能な最低限の電源電圧VDD1を低下させることができる。これにより、比較器330の消費電力を削減することができる。
【0104】
図13は、本技術の第3の実施の形態における分圧回路340の一構成例を示す回路図である。この第3の実施の形態の分圧回路340は、キャパシタ341乃至345と、スイッチ346乃至349とを備える。
【0105】
キャパシタ341乃至345の一端は、差動トランジスタ332のゲートに共通に接続される。キャパシタ341の他端は、画素アレイ部213に接続され、キャパシタ345の他端は、DAC212に接続される。
【0106】
スイッチ346は、タイミング制御部214の制御に従って、キャパシタ341の他端と、キャパシタ342の他端との間の経路を開閉するものである。スイッチ347は、タイミング制御部214の制御に従って、キャパシタ342の他端と、キャパシタ343の他端との間の経路を開閉するものである。スイッチ348は、タイミング制御部214の制御に従って、キャパシタ343の他端と、キャパシタ344の他端との間の経路を開閉するものである。スイッチ349は、タイミング制御部214の制御に従って、キャパシタ344の他端と、キャパシタ345の他端との間の経路を開閉するものである。
【0107】
タイミング制御部214は、スイッチ346乃至349のそれぞれを制御して、垂直信号線側の入力容量と、DAC212側の入力容量との比率を変更することができる。これにより、分圧比を必要に応じて切り替えることができる。
【0108】
なお、キャパシタ341乃至345の5つのキャパシタを設けているが、キャパシタの個数は、5個に限定されない。スイッチについても同様に4個に限定されない。また、第2の実施の形態に、第3の実施の形態の分圧回路340を適用することもできる。
【0109】
このように、本技術の第3の実施の形態によれば、差動トランジスタ332および333とカレントミラー回路との間に抵抗361および362を挿入したため、それらの端子電圧の分、必要最低限の電源電圧VDDを低下させることができる。これにより、比較器330の消費電力を削減することができる。
【0110】
<4.第4の実施の形態>
上述の第1の実施の形態では、P型の差動トランジスタ332および333を設けた差動増幅回路により差動増幅を行っていたが、この構成では、画素信号の信号レベルがリセットレベルより高くなる場合に、差動増幅を行うことができない。この第4の実施の形態の比較器330は、N型の差動トランジスタを設けた点において第1の実施の形態と異なる。
【0111】
図14は、本技術の第4の実施の形態における比較器330の一構成例を示す回路図である。この第4の実施の形態の比較器330は、制御トランジスタ371と、カレントミラートランジスタ372および373と、オートゼロスイッチ374および375と、差動トランジスタ376および377とを備える。また、この比較器330は、テール電流源378、キャパシタ379および分圧回路340をさらに備える。
【0112】
制御トランジスタ371、差動トランジスタ376および差動トランジスタ377として、nMOSトランジスタが用いられる。また、カレントミラートランジスタ372および373として、pMOSトランジスタが用いられる。
【0113】
制御トランジスタ371およびカレントミラートランジスタ372は、電源電圧VDDの端子と、差動トランジスタ376との間において、並列に接続される。カレントミラートランジスタ372は、ダイオード接続される。カレントミラートランジスタ373および差動トランジスタ377は、電源電圧VDDの端子とテール電流源378との間において直列に接続される。差動トランジスタ376および377のそれぞれのソースは、テール電流源378に共通に接続される。
【0114】
また、制御トランジスタ371および差動トランジスタ376のゲートは、分圧回路340に共通に接続される。キャパシタ379は、差動トランジスタ377のゲートと基準電位の端子との間に挿入される。
【0115】
オートゼロスイッチ374は、タイミング制御部214の制御に従って、差動トランジスタ376のゲートとドレインとの間を短絡する。一方、オートゼロスイッチ375は、タイミング制御部214の制御に従って、差動トランジスタ377のゲートとドレインとの間を短絡する。
【0116】
なお、差動トランジスタ376は、特許請求の範囲に記載の入力側差動トランジスタの一例である。差動トランジスタ377は、特許請求の範囲に記載の出力側差動トランジスタの一例である。また、カレントミラートランジスタ372は、特許請求の範囲に記載の入力側カレントミラートランジスタの一例である。カレントミラートランジスタ373は、特許請求の範囲に記載の出力側カレントミラートランジスタの一例である。
【0117】
画素220が正電荷を蓄積する場合、信号レベルは、リセットレベルよりも高くなる。この場合には、信号レベルが非常に高い(すなわち、振幅が大きい)場合に、差動トランジスタ376のゲート-ソース間電圧が高くなる。
【0118】
また、画素信号Vinの信号レベルが所定値より高い場合に、制御トランジスタ371がドレイン電圧V2を高くし、差動トランジスタ376のゲート-ソース間電圧を低下させる。これにより、差動トランジスタ376の寄生容量の増大を抑制することができる。
【0119】
なお、第4の実施の形態の比較器330に、第2の実施の形態や第3の実施の形態を適用することもできる。
【0120】
このように、本技術の第4の実施の形態によれば、N型の制御トランジスタ371が差動トランジスタ376のゲート-ソース間電圧を低下させるため、信号レベルがリセットレベルよりも高くなる場合であっても、寄生容量の増大を抑制することができる。
【0121】
<5.内視鏡手術システムへの応用例>
本開示に係る技術は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、内視鏡手術システムに適用されてもよい。
【0122】
図15は、本開示に係る技術が適用され得る内視鏡手術システム5000の概略的な構成の一例を示す図である。図15では、術者(医師)5067が、内視鏡手術システム5000を用いて、患者ベッド5069上の患者5071に手術を行っている様子が図示されている。図示するように、内視鏡手術システム5000は、内視鏡5001と、その他の術具5017と、内視鏡5001を支持する支持アーム装置5027と、内視鏡下手術のための各種の装置が搭載されたカート5037と、から構成される。
【0123】
内視鏡手術では、腹壁を切って開腹する代わりに、トロッカ5025a~5025dと呼ばれる筒状の開孔器具が腹壁に複数穿刺される。そして、トロッカ5025a~5025dから、内視鏡5001の鏡筒5003や、その他の術具5017が患者5071の体腔内に挿入される。図示する例では、その他の術具5017として、気腹チューブ5019、エネルギー処置具5021及び鉗子5023が、患者5071の体腔内に挿入されている。また、エネルギー処置具5021は、高周波電流や超音波振動により、組織の切開及び剥離、又は血管の封止等を行う処置具である。ただし、図示する術具5017はあくまで一例であり、術具5017としては、例えば攝子、レトラクタ等、一般的に内視鏡下手術において用いられる各種の術具が用いられてよい。
【0124】
内視鏡5001によって撮影された患者5071の体腔内の術部の画像が、表示装置5041に表示される。術者5067は、表示装置5041に表示された術部の画像をリアルタイムで見ながら、エネルギー処置具5021や鉗子5023を用いて、例えば患部を切除する等の処置を行う。なお、図示は省略しているが、気腹チューブ5019、エネルギー処置具5021及び鉗子5023は、手術中に、術者5067又は助手等によって支持される。
【0125】
(支持アーム装置)
支持アーム装置5027は、ベース部5029から延伸するアーム部5031を備える。図示する例では、アーム部5031は、関節部5033a、5033b、5033c、及びリンク5035a、5035bから構成されており、アーム制御装置5045からの制御により駆動される。アーム部5031によって内視鏡5001が支持され、その位置及び姿勢が制御される。これにより、内視鏡5001の安定的な位置の固定が実現され得る。
【0126】
(内視鏡)
内視鏡5001は、先端から所定の長さの領域が患者5071の体腔内に挿入される鏡筒5003と、鏡筒5003の基端に接続されるカメラヘッド5005と、から構成される。図示する例では、硬性の鏡筒5003を有するいわゆる硬性鏡として構成される内視鏡5001を図示しているが、内視鏡5001は、軟性の鏡筒5003を有するいわゆる軟性鏡として構成されてもよい。
【0127】
鏡筒5003の先端には、対物レンズが嵌め込まれた開口部が設けられている。内視鏡5001には光源装置5043が接続されており、当該光源装置5043によって生成された光が、鏡筒5003の内部に延設されるライトガイドによって当該鏡筒の先端まで導光され、対物レンズを介して患者5071の体腔内の観察対象に向かって照射される。なお、内視鏡5001は、直視鏡であってもよいし、斜視鏡又は側視鏡であってもよい。
【0128】
カメラヘッド5005の内部には光学系及び撮像素子が設けられており、観察対象からの反射光(観察光)は当該光学系によって当該撮像素子に集光される。当該撮像素子によって観察光が光電変換され、観察光に対応する電気信号、すなわち観察像に対応する画像信号が生成される。当該画像信号は、RAWデータとしてカメラコントロールユニット(CCU:Camera Control Unit)5039に送信される。なお、カメラヘッド5005には、その光学系を適宜駆動させることにより、倍率及び焦点距離を調整する機能が搭載される。
【0129】
なお、例えば立体視(3D表示)等に対応するために、カメラヘッド5005には撮像素子が複数設けられてもよい。この場合、鏡筒5003の内部には、当該複数の撮像素子のそれぞれに観察光を導光するために、リレー光学系が複数系統設けられる。
【0130】
(カートに搭載される各種の装置)
CCU5039は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等によって構成され、内視鏡5001及び表示装置5041の動作を統括的に制御する。具体的には、CCU5039は、カメラヘッド5005から受け取った画像信号に対して、例えば現像処理(デモザイク処理)等の、当該画像信号に基づく画像を表示するための各種の画像処理を施す。CCU5039は、当該画像処理を施した画像信号を表示装置5041に提供する。また、CCU5039は、カメラヘッド5005に対して制御信号を送信し、その駆動を制御する。当該制御信号には、倍率や焦点距離等、撮像条件に関する情報が含まれ得る。
【0131】
表示装置5041は、CCU5039からの制御により、当該CCU5039によって画像処理が施された画像信号に基づく画像を表示する。内視鏡5001が例えば4K(水平画素数3840×垂直画素数2160)又は8K(水平画素数7680×垂直画素数4320)等の高解像度の撮影に対応したものである場合、及び/又は3D表示に対応したものである場合には、表示装置5041としては、それぞれに対応して、高解像度の表示が可能なもの、及び/又は3D表示可能なものが用いられ得る。4K又は8K等の高解像度の撮影に対応したものである場合、表示装置5041として55インチ以上のサイズのものを用いることで一層の没入感が得られる。また、用途に応じて、解像度、サイズが異なる複数の表示装置5041が設けられてもよい。
【0132】
光源装置5043は、例えばLED(light emitting diode)等の光源から構成され、術部を撮影する際の照射光を内視鏡5001に供給する。
【0133】
アーム制御装置5045は、例えばCPU等のプロセッサによって構成され、所定のプログラムに従って動作することにより、所定の制御方式に従って支持アーム装置5027のアーム部5031の駆動を制御する。
【0134】
入力装置5047は、内視鏡手術システム5000に対する入力インタフェースである。ユーザは、入力装置5047を介して、内視鏡手術システム5000に対して各種の情報の入力や指示入力を行うことができる。例えば、ユーザは、入力装置5047を介して、患者の身体情報や、手術の術式についての情報等、手術に関する各種の情報を入力する。また、例えば、ユーザは、入力装置5047を介して、アーム部5031を駆動させる旨の指示や、内視鏡5001による撮像条件(照射光の種類、倍率及び焦点距離等)を変更する旨の指示、エネルギー処置具5021を駆動させる旨の指示等を入力する。
【0135】
入力装置5047の種類は限定されず、入力装置5047は各種の公知の入力装置であってよい。入力装置5047としては、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、スイッチ、フットスイッチ5057及び/又はレバー等が適用され得る。入力装置5047としてタッチパネルが用いられる場合には、当該タッチパネルは表示装置5041の表示面上に設けられてもよい。
【0136】
あるいは、入力装置5047は、例えばメガネ型のウェアラブルデバイスやHMD(Head Mounted Display)等の、ユーザによって装着されるデバイスであり、これらのデバイスによって検出されるユーザのジェスチャや視線に応じて各種の入力が行われる。また、入力装置5047は、ユーザの動きを検出可能なカメラを含み、当該カメラによって撮像された映像から検出されるユーザのジェスチャや視線に応じて各種の入力が行われる。更に、入力装置5047は、ユーザの声を収音可能なマイクロフォンを含み、当該マイクロフォンを介して音声によって各種の入力が行われる。このように、入力装置5047が非接触で各種の情報を入力可能に構成されることにより、特に清潔域に属するユーザ(例えば術者5067)が、不潔域に属する機器を非接触で操作することが可能となる。また、ユーザは、所持している術具から手を離すことなく機器を操作することが可能となるため、ユーザの利便性が向上する。
【0137】
処置具制御装置5049は、組織の焼灼、切開又は血管の封止等のためのエネルギー処置具5021の駆動を制御する。気腹装置5051は、内視鏡5001による視野の確保及び術者の作業空間の確保の目的で、患者5071の体腔を膨らめるために、気腹チューブ5019を介して当該体腔内にガスを送り込む。レコーダ5053は、手術に関する各種の情報を記録可能な装置である。プリンタ5055は、手術に関する各種の情報を、テキスト、画像又はグラフ等各種の形式で印刷可能な装置である。
【0138】
以下、内視鏡手術システム5000において特に特徴的な構成について、更に詳細に説明する。
【0139】
(支持アーム装置)
支持アーム装置5027は、基台であるベース部5029と、ベース部5029から延伸するアーム部5031と、を備える。図示する例では、アーム部5031は、複数の関節部5033a、5033b、5033cと、関節部5033bによって連結される複数のリンク5035a、5035bと、から構成されているが、図15では、簡単のため、アーム部5031の構成を簡略化して図示している。実際には、アーム部5031が所望の自由度を有するように、関節部5033a~5033c及びリンク5035a、5035bの形状、数及び配置、並びに関節部5033a~5033cの回転軸の方向等が適宜設定され得る。例えば、アーム部5031は、好適に、6自由度以上の自由度を有するように構成され得る。これにより、アーム部5031の可動範囲内において内視鏡5001を自由に移動させることが可能になるため、所望の方向から内視鏡5001の鏡筒5003を患者5071の体腔内に挿入することが可能になる。
【0140】
関節部5033a~5033cにはアクチュエータが設けられており、関節部5033a~5033cは当該アクチュエータの駆動により所定の回転軸まわりに回転可能に構成されている。当該アクチュエータの駆動がアーム制御装置5045によって制御されることにより、各関節部5033a~5033cの回転角度が制御され、アーム部5031の駆動が制御される。これにより、内視鏡5001の位置及び姿勢の制御が実現され得る。この際、アーム制御装置5045は、力制御又は位置制御等、各種の公知の制御方式によってアーム部5031の駆動を制御することができる。
【0141】
例えば、術者5067が、入力装置5047(フットスイッチ5057を含む)を介して適宜操作入力を行うことにより、当該操作入力に応じてアーム制御装置5045によってアーム部5031の駆動が適宜制御され、内視鏡5001の位置及び姿勢が制御されてよい。当該制御により、アーム部5031の先端の内視鏡5001を任意の位置から任意の位置まで移動させた後、その移動後の位置で固定的に支持することができる。なお、アーム部5031は、いわゆるマスタースレイブ方式で操作されてもよい。この場合、アーム部5031は、手術室から離れた場所に設置される入力装置5047を介してユーザによって遠隔操作され得る。
【0142】
また、力制御が適用される場合には、アーム制御装置5045は、ユーザからの外力を受け、その外力にならってスムーズにアーム部5031が移動するように、各関節部5033a~5033cのアクチュエータを駆動させる、いわゆるパワーアシスト制御を行ってもよい。これにより、ユーザが直接アーム部5031に触れながらアーム部5031を移動させる際に、比較的軽い力で当該アーム部5031を移動させることができる。従って、より直感的に、より簡易な操作で内視鏡5001を移動させることが可能となり、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0143】
ここで、一般的に、内視鏡下手術では、スコピストと呼ばれる医師によって内視鏡5001が支持されていた。これに対して、支持アーム装置5027を用いることにより、人手によらずに内視鏡5001の位置をより確実に固定することが可能になるため、術部の画像を安定的に得ることができ、手術を円滑に行うことが可能になる。
【0144】
なお、アーム制御装置5045は必ずしもカート5037に設けられなくてもよい。また、アーム制御装置5045は必ずしも1つの装置でなくてもよい。例えば、アーム制御装置5045は、支持アーム装置5027のアーム部5031の各関節部5033a~5033cにそれぞれ設けられてもよく、複数のアーム制御装置5045が互いに協働することにより、アーム部5031の駆動制御が実現されてもよい。
【0145】
(光源装置)
光源装置5043は、内視鏡5001に術部を撮影する際の照射光を供給する。光源装置5043は、例えばLED、レーザ光源又はこれらの組み合わせによって構成される白色光源から構成される。このとき、RGBレーザ光源の組み合わせにより白色光源が構成される場合には、各色(各波長)の出力強度及び出力タイミングを高精度に制御することができるため、光源装置5043において撮像画像のホワイトバランスの調整を行うことができる。また、この場合には、RGBレーザ光源それぞれからのレーザ光を時分割で観察対象に照射し、その照射タイミングに同期してカメラヘッド5005の撮像素子の駆動を制御することにより、RGBそれぞれに対応した画像を時分割で撮像することも可能である。当該方法によれば、当該撮像素子にカラーフィルタを設けなくても、カラー画像を得ることができる。
【0146】
また、光源装置5043は、出力する光の強度を所定の時間ごとに変更するようにその駆動が制御されてもよい。その光の強度の変更のタイミングに同期してカメラヘッド5005の撮像素子の駆動を制御して時分割で画像を取得し、その画像を合成することにより、いわゆる黒つぶれ及び白とびのない高ダイナミックレンジの画像を生成することができる。
【0147】
また、光源装置5043は、特殊光観察に対応した所定の波長帯域の光を供給可能に構成されてもよい。特殊光観察では、例えば、体組織における光の吸収の波長依存性を利用して、通常の観察時における照射光(すなわち、白色光)に比べて狭帯域の光を照射することにより、粘膜表層の血管等の所定の組織を高コントラストで撮影する、いわゆる狭帯域光観察(Narrow Band Imaging)が行われる。あるいは、特殊光観察では、励起光を照射することにより発生する蛍光により画像を得る蛍光観察が行われてもよい。蛍光観察では、体組織に励起光を照射し当該体組織からの蛍光を観察するもの(自家蛍光観察)、又はインドシアニングリーン(ICG)等の試薬を体組織に局注するとともに当該体組織にその試薬の蛍光波長に対応した励起光を照射し蛍光像を得るもの等が行われ得る。光源装置5043は、このような特殊光観察に対応した狭帯域光及び/又は励起光を供給可能に構成され得る。
【0148】
(カメラヘッド及びCCU)
図16を参照して、内視鏡5001のカメラヘッド5005及びCCU5039の機能についてより詳細に説明する。図16は、図15に示すカメラヘッド5005及びCCU5039の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0149】
図16を参照すると、カメラヘッド5005は、その機能として、レンズユニット5007と、撮像部5009と、駆動部5011と、通信部5013と、カメラヘッド制御部5015と、を有する。また、CCU5039は、その機能として、通信部5059と、画像処理部5061と、制御部5063と、を有する。カメラヘッド5005とCCU5039とは、伝送ケーブル5065によって双方向に通信可能に接続されている。
【0150】
まず、カメラヘッド5005の機能構成について説明する。レンズユニット5007は、鏡筒5003との接続部に設けられる光学系である。鏡筒5003の先端から取り込まれた観察光は、カメラヘッド5005まで導光され、当該レンズユニット5007に入射する。レンズユニット5007は、ズームレンズ及びフォーカスレンズを含む複数のレンズが組み合わされて構成される。レンズユニット5007は、撮像部5009の撮像素子の受光面上に観察光を集光するように、その光学特性が調整されている。また、ズームレンズ及びフォーカスレンズは、撮像画像の倍率及び焦点の調整のため、その光軸上の位置が移動可能に構成される。
【0151】
撮像部5009は撮像素子によって構成され、レンズユニット5007の後段に配置される。レンズユニット5007を通過した観察光は、当該撮像素子の受光面に集光され、光電変換によって、観察像に対応した画像信号が生成される。撮像部5009によって生成された画像信号は、通信部5013に提供される。
【0152】
撮像部5009を構成する撮像素子としては、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)タイプのイメージセンサであり、Bayer配列を有するカラー撮影可能なものが用いられる。なお、当該撮像素子としては、例えば4K以上の高解像度の画像の撮影に対応可能なものが用いられてもよい。術部の画像が高解像度で得られることにより、術者5067は、当該術部の様子をより詳細に把握することができ、手術をより円滑に進行することが可能となる。
【0153】
また、撮像部5009を構成する撮像素子は、3D表示に対応する右目用及び左目用の画像信号をそれぞれ取得するための1対の撮像素子を有するように構成される。3D表示が行われることにより、術者5067は術部における生体組織の奥行きをより正確に把握することが可能になる。なお、撮像部5009が多板式で構成される場合には、各撮像素子に対応して、レンズユニット5007も複数系統設けられる。
【0154】
また、撮像部5009は、必ずしもカメラヘッド5005に設けられなくてもよい。例えば、撮像部5009は、鏡筒5003の内部に、対物レンズの直後に設けられてもよい。
【0155】
駆動部5011は、アクチュエータによって構成され、カメラヘッド制御部5015からの制御により、レンズユニット5007のズームレンズ及びフォーカスレンズを光軸に沿って所定の距離だけ移動させる。これにより、撮像部5009による撮像画像の倍率及び焦点が適宜調整され得る。
【0156】
通信部5013は、CCU5039との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部5013は、撮像部5009から得た画像信号をRAWデータとして伝送ケーブル5065を介してCCU5039に送信する。この際、術部の撮像画像を低レイテンシで表示するために、当該画像信号は光通信によって送信されることが好ましい。手術の際には、術者5067が撮像画像によって患部の状態を観察しながら手術を行うため、より安全で確実な手術のためには、術部の動画像が可能な限りリアルタイムに表示されることが求められるからである。光通信が行われる場合には、通信部5013には、電気信号を光信号に変換する光電変換モジュールが設けられる。画像信号は当該光電変換モジュールによって光信号に変換された後、伝送ケーブル5065を介してCCU5039に送信される。
【0157】
また、通信部5013は、CCU5039から、カメラヘッド5005の駆動を制御するための制御信号を受信する。当該制御信号には、例えば、撮像画像のフレームレートを指定する旨の情報、撮像時の露出値を指定する旨の情報、並びに/又は撮像画像の倍率及び焦点を指定する旨の情報等、撮像条件に関する情報が含まれる。通信部5013は、受信した制御信号をカメラヘッド制御部5015に提供する。なお、CCU5039からの制御信号も、光通信によって伝送されてもよい。この場合、通信部5013には、光信号を電気信号に変換する光電変換モジュールが設けられ、制御信号は当該光電変換モジュールによって電気信号に変換された後、カメラヘッド制御部5015に提供される。
【0158】
なお、上記のフレームレートや露出値、倍率、焦点等の撮像条件は、取得された画像信号に基づいてCCU5039の制御部5063によって自動的に設定される。つまり、いわゆるAE(Auto Exposure)機能、AF(Auto Focus)機能及びAWB(Auto White Balance)機能が内視鏡5001に搭載される。
【0159】
カメラヘッド制御部5015は、通信部5013を介して受信したCCU5039からの制御信号に基づいて、カメラヘッド5005の駆動を制御する。例えば、カメラヘッド制御部5015は、撮像画像のフレームレートを指定する旨の情報及び/又は撮像時の露光を指定する旨の情報に基づいて、撮像部5009の撮像素子の駆動を制御する。また、例えば、カメラヘッド制御部5015は、撮像画像の倍率及び焦点を指定する旨の情報に基づいて、駆動部5011を介してレンズユニット5007のズームレンズ及びフォーカスレンズを適宜移動させる。カメラヘッド制御部5015は、更に、鏡筒5003やカメラヘッド5005を識別するための情報を記憶する機能を備えてもよい。
【0160】
なお、レンズユニット5007や撮像部5009等の構成を、気密性及び防水性が高い密閉構造内に配置することで、カメラヘッド5005について、オートクレーブ滅菌処理に対する耐性を持たせることができる。
【0161】
次に、CCU5039の機能構成について説明する。通信部5059は、カメラヘッド5005との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部5059は、カメラヘッド5005から、伝送ケーブル5065を介して送信される画像信号を受信する。この際、上記のように、当該画像信号は好適に光通信によって送信され得る。この場合、光通信に対応して、通信部5059には、光信号を電気信号に変換する光電変換モジュールが設けられる。通信部5059は、電気信号に変換した画像信号を画像処理部5061に提供する。
【0162】
また、通信部5059は、カメラヘッド5005に対して、カメラヘッド5005の駆動を制御するための制御信号を送信する。当該制御信号も光通信によって送信されてよい。
【0163】
画像処理部5061は、カメラヘッド5005から送信されたRAWデータである画像信号に対して各種の画像処理を施す。当該画像処理としては、例えば現像処理、高画質化処理(帯域強調処理、超解像処理、NR(Noise reduction)処理及び/又は手ブレ補正処理等)、並びに/又は拡大処理(電子ズーム処理)等、各種の公知の信号処理が含まれる。また、画像処理部5061は、AE、AF及びAWBを行うための、画像信号に対する検波処理を行う。
【0164】
画像処理部5061は、CPUやGPU等のプロセッサによって構成され、当該プロセッサが所定のプログラムに従って動作することにより、上述した画像処理や検波処理が行われ得る。なお、画像処理部5061が複数のGPUによって構成される場合には、画像処理部5061は、画像信号に係る情報を適宜分割し、これら複数のGPUによって並列的に画像処理を行う。
【0165】
制御部5063は、内視鏡5001による術部の撮像、及びその撮像画像の表示に関する各種の制御を行う。例えば、制御部5063は、カメラヘッド5005の駆動を制御するための制御信号を生成する。この際、撮像条件がユーザによって入力されている場合には、制御部5063は、当該ユーザによる入力に基づいて制御信号を生成する。あるいは、内視鏡5001にAE機能、AF機能及びAWB機能が搭載されている場合には、制御部5063は、画像処理部5061による検波処理の結果に応じて、最適な露出値、焦点距離及びホワイトバランスを適宜算出し、制御信号を生成する。
【0166】
また、制御部5063は、画像処理部5061によって画像処理が施された画像信号に基づいて、術部の画像を表示装置5041に表示させる。この際、制御部5063は、各種の画像認識技術を用いて術部画像内における各種の物体を認識する。例えば、制御部5063は、術部画像に含まれる物体のエッジの形状や色等を検出することにより、鉗子等の術具、特定の生体部位、出血、エネルギー処置具5021使用時のミスト等を認識することができる。制御部5063は、表示装置5041に術部の画像を表示させる際に、その認識結果を用いて、各種の手術支援情報を当該術部の画像に重畳表示させる。手術支援情報が重畳表示され、術者5067に提示されることにより、より安全かつ確実に手術を進めることが可能になる。
【0167】
カメラヘッド5005及びCCU5039を接続する伝送ケーブル5065は、電気信号の通信に対応した電気信号ケーブル、光通信に対応した光ファイバ、又はこれらの複合ケーブルである。
【0168】
ここで、図示する例では、伝送ケーブル5065を用いて有線で通信が行われていたが、カメラヘッド5005とCCU5039との間の通信は無線で行われてもよい。両者の間の通信が無線で行われる場合には、伝送ケーブル5065を手術室内に敷設する必要がなくなるため、手術室内における医療スタッフの移動が当該伝送ケーブル5065によって妨げられる事態が解消され得る。
【0169】
以上、本開示に係る技術が適用され得る内視鏡手術システム5000の一例について説明した。なお、ここでは、一例として内視鏡手術システム5000について説明したが、本開示に係る技術が適用され得るシステムはかかる例に限定されない。例えば、本開示に係る技術は、検査用軟性内視鏡システムや顕微鏡手術システムに適用されてもよい。
【0170】
本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、撮像部5009に好適に適用され得る。具体的には、図1の撮像装置100を、撮像部5009に適用することができる。撮像部5009に本開示に係る技術を適用することにより、ストリーキングを抑制し、より鮮明な術部画像を得ることができるため、手術をより安全にかつより確実に行うことが可能になる。
【0171】
<6.移動体への応用例>
本開示に係る技術(本技術)は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット等のいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0172】
図17は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
【0173】
車両制御システム12000は、通信ネットワーク12001を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。図17に示した例では、車両制御システム12000は、駆動系制御ユニット12010、ボディ系制御ユニット12020、車外情報検出ユニット12030、車内情報検出ユニット12040、及び統合制御ユニット12050を備える。また、統合制御ユニット12050の機能構成として、マイクロコンピュータ12051、音声画像出力部12052、及び車載ネットワークI/F(interface)12053が図示されている。
【0174】
駆動系制御ユニット12010は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット12010は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。
【0175】
ボディ系制御ユニット12020は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット12020は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット12020には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット12020は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0176】
車外情報検出ユニット12030は、車両制御システム12000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット12030には、撮像部12031が接続される。車外情報検出ユニット12030は、撮像部12031に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像を受信する。車外情報検出ユニット12030は、受信した画像に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。
【0177】
撮像部12031は、光を受光し、その光の受光量に応じた電気信号を出力する光センサである。撮像部12031は、電気信号を画像として出力することもできるし、測距の情報として出力することもできる。また、撮像部12031が受光する光は、可視光であっても良いし、赤外線等の非可視光であっても良い。
【0178】
車内情報検出ユニット12040は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット12040には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部12041が接続される。運転者状態検出部12041は、例えば運転者を撮像するカメラを含み、車内情報検出ユニット12040は、運転者状態検出部12041から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。
【0179】
マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット12010に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行うことができる。
【0180】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0181】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で取得される車外の情報に基づいて、ボディ系制御ユニット12020に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で検知した先行車又は対向車の位置に応じてヘッドランプを制御し、ハイビームをロービームに切り替える等の防眩を図ることを目的とした協調制御を行うことができる。
【0182】
音声画像出力部12052は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。図17の例では、出力装置として、オーディオスピーカ12061、表示部12062及びインストルメントパネル12063が例示されている。表示部12062は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0183】
図18は、撮像部12031の設置位置の例を示す図である。
【0184】
図18では、撮像部12031として、撮像部12101,12102,12103,12104,12105を有する。
【0185】
撮像部12101,12102,12103,12104,12105は、例えば、車両12100のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部等の位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部12101及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として車両12100の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部12102,12103は、主として車両12100の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部12104は、主として車両12100の後方の画像を取得する。車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0186】
なお、図18には、撮像部12101ないし12104の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲12111は、フロントノーズに設けられた撮像部12101の撮像範囲を示し、撮像範囲12112,12113は、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部12102,12103の撮像範囲を示し、撮像範囲12114は、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部12104の撮像範囲を示す。例えば、撮像部12101ないし12104で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両12100を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0187】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、距離情報を取得する機能を有していてもよい。例えば、撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、複数の撮像素子からなるステレオカメラであってもよいし、位相差検出用の画素を有する撮像素子であってもよい。
【0188】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を基に、撮像範囲12111ないし12114内における各立体物までの距離と、この距離の時間的変化(車両12100に対する相対速度)を求めることにより、特に車両12100の進行路上にある最も近い立体物で、車両12100と略同じ方向に所定の速度(例えば、0km/h以上)で走行する立体物を先行車として抽出することができる。さらに、マイクロコンピュータ12051は、先行車の手前に予め確保すべき車間距離を設定し、自動ブレーキ制御(追従停止制御も含む)や自動加速制御(追従発進制御も含む)等を行うことができる。このように運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0189】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を元に、立体物に関する立体物データを、2輪車、普通車両、大型車両、歩行者、電柱等その他の立体物に分類して抽出し、障害物の自動回避に用いることができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両12100の周辺の障害物を、車両12100のドライバが視認可能な障害物と視認困難な障害物とに識別する。そして、マイクロコンピュータ12051は、各障害物との衝突の危険度を示す衝突リスクを判断し、衝突リスクが設定値以上で衝突可能性がある状況であるときには、オーディオスピーカ12061や表示部12062を介してドライバに警報を出力することや、駆動系制御ユニット12010を介して強制減速や回避操舵を行うことで、衝突回避のための運転支援を行うことができる。
【0190】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、赤外線を検出する赤外線カメラであってもよい。例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在するか否かを判定することで歩行者を認識することができる。かかる歩行者の認識は、例えば赤外線カメラとしての撮像部12101ないし12104の撮像画像における特徴点を抽出する手順と、物体の輪郭を示す一連の特徴点にパターンマッチング処理を行って歩行者か否かを判別する手順によって行われる。マイクロコンピュータ12051が、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在すると判定し、歩行者を認識すると、音声画像出力部12052は、当該認識された歩行者に強調のための方形輪郭線を重畳表示するように、表示部12062を制御する。また、音声画像出力部12052は、歩行者を示すアイコン等を所望の位置に表示するように表示部12062を制御してもよい。
【0191】
以上、本開示に係る技術が適用され得る車両制御システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、例えば、撮像部12031に適用され得る。具体的には図1の撮像装置100を、撮像部12031に適用することができる。撮像部12031に本開示に係る技術を適用することにより、ストリーキングを抑制し、より見やすい撮影画像を得ることができるため、ドライバの疲労を軽減することが可能になる。
【0192】
なお、上述の実施の形態は本技術を具現化するための一例を示したものであり、実施の形態における事項と、特許請求の範囲における発明特定事項とはそれぞれ対応関係を有する。同様に、特許請求の範囲における発明特定事項と、これと同一名称を付した本技術の実施の形態における事項とはそれぞれ対応関係を有する。ただし、本技術は実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において実施の形態に種々の変形を施すことにより具現化することができる。
【0193】
なお、本技術は以下のような構成もとることができる。
(1)入力された入力電圧と所定の参照電圧との分圧を供給する分圧回路と、
ゲートに入力された前記分圧と所定のソース電圧との間のゲート-ソース間電圧に応じたドレイン電流を出力する入力側差動トランジスタと、
前記ドレイン電流に応じた電圧を前記入力電圧と前記参照電圧との比較結果として出力する出力側差動トランジスタと、
前記入力電圧が所定範囲外の値である場合には前記ゲート-ソース間電圧を低下させる制御トランジスタと
を具備する固体撮像素子。
(2)前記入力側差動トランジスタのソースと前記出力側差動トランジスタのソースとに共通に接続されたテール電流源と、
前記入力側差動トランジスタのドレインに自身のドレインおよびゲートが接続された入力側カレントミラートランジスタと、
前記出力側差動トランジスタのドレインに自身のドレインが接続され、前記入力側カレントミラートランジスタのゲートに自身のゲートが接続された出力側カレントミラートランジスタと
をさらに具備し、
前記制御トランジスタのゲートは、前記分圧回路の出力ノードに接続され、ソースは、前記入力側差動トランジスタおよび前記入力側カレントミラートランジスタの接続点に接続される
前記(1)記載の固体撮像素子。
(3)前記入力側差動トランジスタのソースと前記出力側差動トランジスタのソースとに共通に接続されたテール電流源と、
前記入力側差動トランジスタのドレインに一端が接続された入力側抵抗と、
前記出力側差動トランジスタのドレインに一端が接続された出力側抵抗と
をさらに具備し、
前記制御トランジスタのゲートは、前記分圧回路の出力ノードに接続され、ソースは、前記入力側差動トランジスタおよび前記入力側抵抗の接続点に接続される
前記(1)記載の固体撮像素子。
(4)前記入力側差動トランジスタおよび前記入力側抵抗の接続点がゲートに接続され、前記入力側抵抗の他端がドレインに接続された入力側カレントミラートランジスタと、
前記出力側抵抗の他端に自身のドレインが接続され、前記入力側カレントミラートランジスタのゲートに自身のゲートが接続された出力側カレントミラートランジスタと
をさらに具備する
前記(3)記載の固体撮像素子。
(5)前記入力側差動トランジスタ、前記出力側差動トランジスタおよび前記制御トランジスタは、P型トランジスタであり、
前記制御トランジスタは、前記入力電圧が所定値より低い場合には前記入力側差動トランジスタのドレイン電圧を低くする
前記(1)から(4)のいずれかに記載の固体撮像素子。
(6)前記入力側差動トランジスタ、前記出力側差動トランジスタおよび前記制御トランジスタは、N型トランジスタであり、
前記制御トランジスタは、前記入力電圧が所定値より高い場合には前記入力側差動トランジスタのドレイン電圧を高くする
前記(1)から(4)のいずれかに記載の固体撮像素子。
(7)前記分圧回路は、制御信号に従って前記入力電圧と前記参照電圧との分圧比を変更する
前記(1)から(6)のいずれかに記載の固体撮像素子。
(8)入力された入力電圧と所定の参照電圧との分圧を供給する分圧回路と、
ゲートに入力された前記分圧と所定のソース電圧との間のゲート-ソース間電圧に応じたドレイン電流を出力する入力側差動トランジスタと、
前記ドレイン電流に応じた電圧を前記入力電圧と前記参照電圧との比較結果として出力する出力側差動トランジスタと、
前記入力電圧が所定範囲外の値である場合には前記ゲート-ソース間電圧を低下させる制御トランジスタと、
前記比較結果に基づいて計数値を計数するカウンタと
を具備する撮像装置。
【符号の説明】
【0194】
100 撮像装置
110 光学部
120 DSP回路
130 表示部
140 操作部
150 バス
160 フレームメモリ
170 記憶部
180 電源部
200 固体撮像素子
201 受光チップ
202 回路チップ
211 行選択部
212 DAC
213 画素アレイ部
214 タイミング制御部
215 水平転送走査部
216 信号処理部
220 画素
221 光電変換素子
222 転送トランジスタ
223 リセットトランジスタ
224 浮遊拡散層
225 増幅トランジスタ
226 選択トランジスタ
230 定電流源部
231 定電流源
300 アナログデジタル変換部
310 カウンタ
320 ラッチ
330 比較器
331、378 テール電流源
332、333、376、377 差動トランジスタ
334、335、374、375 オートゼロスイッチ
336、371 制御トランジスタ
337、338、372.373 カレントミラートランジスタ
339、341~345、379 キャパシタ
340 分圧回路
346~349 スイッチ
351、352、361、362 抵抗
5009、12031 撮像部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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