(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】ワーク加工用粘着シートおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09J 7/29 20180101AFI20240118BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240118BHJP
C09J 133/04 20060101ALI20240118BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
C09J7/29
C09J7/38
C09J133/04
H01L21/78 M
(21)【出願番号】P 2021508135
(86)(22)【出願日】2020-01-24
(86)【国際出願番号】 JP2020002604
(87)【国際公開番号】W WO2020195086
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-10-25
(31)【優先権主張番号】P 2019054781
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100176407
【氏名又は名称】飯田 理啓
(72)【発明者】
【氏名】小田 直士
(72)【発明者】
【氏名】坂本 美紗季
(72)【発明者】
【氏名】山口 征太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 尚哉
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-075560(JP,A)
【文献】国際公開第2017/061132(WO,A1)
【文献】特開2015-122431(JP,A)
【文献】特開2018-154737(JP,A)
【文献】特開2002-274064(JP,A)
【文献】国際公開第2007/052520(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B
H01L21/301;21/67-21/683;21/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材における片面に積層された粘着剤層とを備えるワーク加工用粘着シートであって、
前記粘着剤層が、側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体を含有する粘着性組成物から形成された活性エネルギー線硬化性の粘着剤からなり、
前記アクリル系重合体のガラス転移温度(Tg)が、-80℃以上、-30℃以下であり、
前記基材における前記粘着剤層と接する面には、ピロリドン系化合物
およびバインダー樹脂を含有するコート層が形成されており、
前記ピロリドン系化合物が、重合体であり、
前記基材が、ポリエステル系フィルムを基材本体とし、
前記粘着剤が、前記ピロリドン系化合物と結合または反応可能な官能基を有する
ことを特徴とするワーク加工用粘着シート。
【請求項2】
前記アクリル系重合体が、当該重合体の主鎖に(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構造を含んでおり、
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおける
アルキル基の炭素数が、1~4である
ことを特徴とする請求項1に記載のワーク加工用粘着シート。
【請求項3】
前記アクリル系重合体が、当該重合体の主鎖に官能基含有モノマー由来の構造を含んでおり、
前記アクリル系重合体全体における前記官能基含有モノマー由来の構造部分の割合が、0.1質量%以上、12質量%以下である
ことを特徴とする請求項1または2に記載のワーク加工用粘着シート。
【請求項4】
前記ピロリドン系化合物が、ビニルピロリドンを主構成単位とする重合体であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のワーク加工用粘着シート。
【請求項5】
前記基材の25℃における貯蔵弾性率が、1000MPa以上であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のワーク加工用粘着シート。
【請求項6】
前記基材が、ポリエチレンテレフタレートフィルムを基材本体とすることを特徴とする請求項5に記載のワーク加工用粘着シート。
【請求項7】
ダイシングシートであることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のワーク加工用粘着シート。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のワーク加工用粘着シートの製造方法であって、
基材本体の片面に、ピロリドン系化合物を含有するコート層を形成し、前記基材を得る工程と、
前記粘着性組成物を剥離シートの剥離面に塗工し、前記粘着剤層を形成する工程と、
前記基材のコート層側の面と、前記粘着剤層とを貼合する工程と
を備えたことを特徴とするワーク加工用粘着シートの製造方法。
【請求項9】
請求項3に記載のワーク加工用粘着シートの製造方法であって、
官能基含有モノマーを5質量%以上、35質量%以下の量で共重合させた(メタ)アクリル酸エステル重合体を調製し、前記(メタ)アクリル酸エステル重合体に、官能基を有する活性エネルギー線硬化性基含有化合物を反応させて、側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体を製造し、当該アクリル系重合体を含有する粘着性組成物を調製する工程と、
基材本体の片面に、ピロリドン系化合物を含有するコート層を形成し、前記基材を得る工程と、
前記粘着性組成物を剥離シートの剥離面に塗工し、前記粘着剤層を形成する工程と、
前記基材のコート層側の面と、前記粘着剤層とを貼合する工程と
を備えたことを特徴とするワーク加工用粘着シートの製造方法。
【請求項10】
前記官能基含有モノマーの官能基の量に対する、前記官能基を有する活性エネルギー線硬化性基含有化合物の量が、60モル%以上、99モル%以下であることを特徴とする請求項9に記載のワーク加工用粘着シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等のワークの加工に好適に使用することができるワーク加工用粘着シートおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコン、ガリウムヒ素などの半導体ウエハや各種パッケージ類は、大径の状態で製造され、素子小片(半導体チップ)に切断(ダイシング)され、剥離(ピックアップ)された後に、次の工程であるマウント工程に移される。この際、半導体ウエハ等のワークは、基材および粘着剤層を備えるワーク加工用粘着シートに貼着された状態で、バックグラインド、ダイシング、洗浄、乾燥、エキスパンディング、ピックアップ、マウンティング等の加工が行われる。
【0003】
ここで、上記のダイシング工程では、被切断物の固定不足等に起因して、チップの切断面に欠け(チッピング)が発生することがある。このようなチッピングは、チップ自身の折れ曲げ強度を低下させたり、封止されたICのパッケージ内に空気を巻き込んだりして、パッケージクラックを起こしやすくする。近来、半導体ウエハの薄膜化が進んでいるが、厚みが薄くなるほど、上記のようなチッピングが生じる可能性が高くなる。
【0004】
上記のようなチッピングの発生を防止するために、粘着力を向上させることが考えられる。例えば、特許文献1は、ダイシング用粘着シートをシリコンミラーウエハに貼り付けた後、23℃で180°引き剥がし(引張速度300mm/min)を行ったときの粘着力が10N/25mm以上になる貼付け温度を有するダイシング用粘着シートを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、粘着力の大きいワーク加工用粘着シートを使用した場合、ワークとの分離時(例えばチップのピックアップ時)に、粘着剤層を構成していた粘着剤がワークに付着してしまうという糊残りの問題が生じ易い。かかる糊残りの問題は、ワークが表面に微細な凹部を有するものの場合に、特に生じ易い。
【0007】
具体的には、ワーク加工用粘着シートの粘着剤層側の面を、ワークの凹部が存在する面に貼付し、ワーク加工用粘着シート上においてワークに対する所定の加工を行った後、ワーク加工用粘着シートとワークとが分離される。この分離の際に、当該ワークにおけるワーク加工用粘着シートに貼付されていた面に、ワーク加工用粘着シートの粘着剤層を構成していた粘着剤が付着し易いという問題が発生する。
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、ワークへの糊残りを抑制することができるワーク加工用粘着シートおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、基材と、前記基材における片面に積層された粘着剤層とを備えるワーク加工用粘着シートであって、前記粘着剤層が、側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体を含有する粘着性組成物から形成された活性エネルギー線硬化性の粘着剤からなり、前記アクリル系重合体のガラス転移温度(Tg)が、-80℃以上、-30℃以下であり、前記基材における前記粘着剤層と接する面には、ピロリドン系化合物を含有するコート層が形成されていることを特徴とするワーク加工用粘着シートを提供する(発明1)。
【0010】
上記発明(発明1)に係るワーク加工用粘着シートでは、粘着剤層が、側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体を含有する粘着性組成物から形成された活性エネルギー線硬化性の粘着剤からなり、当該アクリル系重合体のガラス転移温度(Tg)が上記範囲であり、さらには、基材における粘着剤層と接する面にピロリドン系化合物を含有するコート層が形成されていることにより、糊残りの問題を低減することができる。
【0011】
上記発明(発明1)において、前記アクリル系重合体が、当該重合体の主鎖に(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構造を含んでおり、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数が、1~4であることが好ましい(発明2)。
【0012】
上記発明(発明1,2)において、前記アクリル系重合体が、当該重合体の主鎖に官能基含有モノマー由来の構造を含んでおり、体全体における前記官能基含有モノマー由来の構造部分の割合が、0.1質量%以上、12質量%以下であることが好ましい(発明3)。
【0013】
上記発明(発明1~3)において、前記ピロリドン系化合物が、ビニルピロリドンを主構成単位とする重合体であることが好ましい(発明4)。
【0014】
上記発明(発明1~4)において、前記基材の25℃における貯蔵弾性率が、1000MPa以上であることが好ましい(発明5)。
【0015】
上記発明(発明5)において、前記基材が、ポリエチレンテレフタレートフィルムを基材本体とすることが好ましい(発明6)。
【0016】
上記発明(発明1~6)においては、ダイシングシートであることが好ましい(発明7)。
【0017】
第2に本発明は、前記ワーク加工用粘着シート(発明1~7)の製造方法であって、基材本体の片面に、ピロリドン系化合物を含有するコート層を形成し、前記基材を得る工程と、前記粘着性組成物を剥離シートの剥離面に塗工し、前記粘着剤層を形成する工程と、前記基材のコート層側の面と、前記粘着剤層とを貼合する工程とを備えたことを特徴とするワーク加工用粘着シートの製造方法を提供する(発明8)。
【0018】
第3に本発明は、前記ワーク加工用粘着シート(発明3)の製造方法であって、官能基含有モノマーを5質量%以上、35質量%以下の量で共重合させた(メタ)アクリル酸エステル重合体を調製し、前記(メタ)アクリル酸エステル重合体に、官能基を有する活性エネルギー線硬化性基含有化合物を反応させて、側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体を製造し、当該アクリル系重合体を含有する粘着性組成物を調製する工程と、基材本体の片面に、ピロリドン系化合物を含有するコート層を形成し、前記基材を得る工程と、前記粘着性組成物を剥離シートの剥離面に塗工し、前記粘着剤層を形成する工程と、前記基材のコート層側の面と、前記粘着剤層とを貼合する工程とを備えたことを特徴とするワーク加工用粘着シートの製造方法を提供する(発明9)。
【0019】
上記発明(発明9)において、前記官能基含有モノマーの官能基の量に対する、前記官能基を有する活性エネルギー線硬化性基含有化合物の量が、60モル%以上、99モル%以下であることが好ましい(発明10)。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るワーク加工用粘着シートは、ワークへの糊残りを抑制することができる。また、本発明に係るワーク加工用粘着シートの製造方法によれば、ワークへの糊残りを抑制することのできるワーク加工用粘着シートを効率良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係るワーク加工用粘着シートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の一実施形態に係るワーク加工用粘着シートは、基材と、当該基材における片面に積層された粘着剤層とを備える。当該粘着剤層は、側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体を含有する粘着性組成物から形成された活性エネルギー線硬化性の粘着剤からなり、上記アクリル系重合体のガラス転移温度(Tg)は、-80℃以上、-30℃以下である。また、上記基材における粘着剤層と接する面には、ピロリドン系化合物を含有するコート層が形成されている。
【0023】
本実施形態に係るワーク加工用粘着シートを使用する際、ワーク加工用粘着シートの粘着剤層における基材とは反対側の面(以下「粘着面」という場合がある。)にワークを貼付し、ワーク加工用粘着シート上においてワークに対する所定の加工が行われる。続いて、粘着剤層に対してエネルギー線を照射して粘着剤層を硬化させた後、ワーク加工用粘着シートとワークとが分離される。本実施形態に係るワーク加工用粘着シートは、上記の構成を有することにより、ワークとの分離時に、ワークへの糊残りを効果的に抑制することができる。特に、粘着剤層が、側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体を含有する粘着性組成物から形成された活性エネルギー線硬化性の粘着剤からなると、活性エネルギー線の照射により、ワークに対する粘着力が低下し易く、ワークとの分離時にワーク側に粘着剤が残り難い。また、粘着剤のガラス転移温度(Tg)が、-30℃以下であると、基材に対する密着性が高くなり、ワークとの分離時にワーク側に粘着剤が残り難くなる。さらに、基材における粘着剤層と接する面にピロリドン系化合物を含有するコート層が存在することにより、基材と粘着剤層との密着性がより高くなり、ワークとの分離時にワーク側に粘着剤が残り難くなる。かかる糊残り抑制効果は、ワークにおけるワーク加工用粘着シートの粘着面と接する面に微細な凹部が存在する場合にも、良好に発揮される。
【0024】
糊残り抑制の観点から、上記アクリル系重合体のガラス転移温度(Tg)は、-30℃以下であることを要し、-32℃以下であることが好ましく、特に-35℃以下であることが好ましい。また、同じく糊残り抑制の観点から、上記アクリル系重合体のガラス転移温度(Tg)は、-80℃以上であることが好ましく、-70℃以上であることがより好ましく、特に-55℃以上であることが好ましい。なお、本明細書におけるガラス転移温度(Tg)は、Foxの式より求められる計算値である。
【0025】
一方、本実施形態における基材の25℃における貯蔵弾性率は、1000MPa以上であることが好ましい。基材がかかる貯蔵弾性率を有することにより、ダイシング時に、ワーク加工用粘着シートの揺れの発生が低減し、ワーク加工用粘着シートに貼付されたワークの動きが制限される結果、チッピングの発生が抑制される。通常、基材が上記のように大きい貯蔵弾性率を有すると、基材と粘着剤層との密着性が低下して、ワークとの分離時にワーク側に粘着剤が残り易くなるが、本実施形態に係るワーク加工用粘着シートでは、前述した構成を有することにより、上記のように大きい貯蔵弾性率を有する基材を使用した場合であっても、糊残りを抑制することができる。
【0026】
上記の観点から、基材の25℃における貯蔵弾性率は、1200MPa以上であることがより好ましく、特に1500MPa以上であることが好ましい。一方、基材の25℃における貯蔵弾性率は、3000MPa以下であることが好ましい。貯蔵弾性率の上限値が上記であることにより、ワーク加工用粘着シートは適度な弾性を有するものとなり、ワークとの分離(チップのピックアップを含む)を良好に行うことができる。なお、基材の貯蔵弾性率の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0027】
本実施形態に係るワーク加工用粘着シートの一例としての具体的構成を
図1に示す。
図1に示すように、一実施形態に係るワーク加工用粘着シート1は、基材2と、当該基材2における片面側に積層された粘着剤層3と、粘着剤層3における基材2とは反対側に積層された剥離シート4とを備える。基材2は、基材本体21と、ピロリドン系化合物を含有するコート層22とを備えており、当該コート層22は、粘着剤層3と接する側に位置している。また、剥離シート4は、当該剥離シート4の剥離面が粘着剤層3に接するように設けられている。なお、本明細書における剥離シートの剥離面とは、剥離シートにおいて剥離性を有する面をいい、剥離処理を施した面および剥離処理を施さなくても剥離性を示す面のいずれをも含むものである。
【0028】
1.ワーク加工用粘着シートの構成部材
(1)基材
本実施形態における基材2は、基材本体21と、基材本体21の粘着剤層3側に設けられた、ピロリドン系化合物を含有するコート層22とを備えている。
【0029】
(1-1)基材本体
本実施形態における基材本体21は、ワーク加工用粘着シートの使用の際に所望の機能を発揮するものである限り、特に限定されない。ただし、ダイシング時におけるチッピングの発生抑制の観点から、基材2が前述した貯蔵弾性率を発揮し得るものであることが好ましい。なお、本実施形態では、コート層22は基材2の貯蔵弾性率に殆ど影響を与えないため、基材2の貯蔵弾性率は、基材本体21の貯蔵弾性率と同一視することができる。
【0030】
ワークが、半導体ウエハのような、活性エネルギー線(特に紫外線)に対する透過性の無いまたは比較的低いものである場合には、基材本体21は、活性エネルギー線に対して良好な透過性を有することが好ましい。基材2を介して粘着剤層3に活性エネルギー線を照射することで、当該粘着剤層3を良好に硬化させることが可能となる。また、ワークが、ガラス部材のような、活性エネルギー線に対して良好な透過性を有する材質からなるものである場合、当該ガラス部材の表面に凹凸(例えば、印刷による凹凸)が存在し、当該凹凸に起因して活性エネルギー線(特に紫外線)が十分な透過性を発揮できない可能性があるときには、基材本体21は、活性エネルギー線に対して良好な透過性を有することが好ましい。
【0031】
基材本体21は、樹脂系の材料を主材とする樹脂フィルムであることが好ましい。その具体例としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系フィルム;エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム;エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体フィルム、その他のエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム等のエチレン系共重合フィルム;ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、エチレン-ノルボルネン共重合体フィルム、ノルボルネン樹脂フィルム等のポリオレフィン系フィルム;ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム等のポリ塩化ビニル系フィルム;(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム;ポリウレタンフィルム;ポリイミドフィルム;ポリスチレンフィルム;ポリカーボネートフィルム;フッ素樹脂フィルムなどが挙げられる。ポリエチレンフィルムの例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、高密度ポリエチレン(HDPE)フィルム等が挙げられる。また、これらの架橋フィルム、アイオノマーフィルムといった変性フィルムも用いられる。また、基材は、上述したフィルムが複数積層されてなる積層フィルムであってもよい。この積層フィルムにおいて、各層を構成する材料は同種であってもよく、異種であってもよい。なお、本明細書における「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸およびメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語についても同様である。
【0032】
本実施形態における基材本体21としては、上述したフィルムの中でも、ポリエステル系フィルム、硬質塩化ビニルフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム等が好ましく、特にポリエステル系フィルムが好ましい。また、ポリエステル系フィルムの中でも、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。上記フィルムは、前述した貯蔵弾性率を満たし易く、したがって、チッピングの発生を抑制し易い。
【0033】
基材本体21は、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、酸化防止剤、着色剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、イオン捕捉剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤の含有量としては、特に限定されないものの、基材本体21が所望の機能を発揮する範囲とすることが好ましい。
【0034】
基材本体21の厚さは、ワーク加工用粘着シート1が使用される方法に応じて適宜設定できるものの、チッピングの発生抑制の観点から、20μm以上であることが好ましく、特に25μm以上であることが好ましく、さらには40μm以上であることが好ましい。また、当該厚さは、450μm以下であることが好ましく、特に300μm以下であることが好ましく、さらには200μm以下であることが好ましい。
【0035】
(1-2)コート層
本実施形態におけるコート層22は、ピロリドン系化合物を含有する。このコート層22が存在することにより、基材2と粘着剤層3との密着性が向上し、ワークとの分離時に糊残りが効果的に抑制される。その理由は必ずしも明らかではないが、ピロリドン系化合物と、粘着剤層3を構成する粘着剤に含まれる官能基、特に水酸基とが結合または反応して、粘着剤層3がコート層22に密着し易くなるからであると推測される。
【0036】
ピロリドン系化合物は、ピロリドン骨格を有する化合物であればよく、単量体であってもよいし、重合体であってもよい。中でも、コート層22に対する粘着剤層3の密着性の観点から、ピロリドン骨格を有する重合体であることが好ましく、特に、ビニルピロリドンを主構成単位とする重合体であることが好ましい。当該重合体は、ビニルピロリドンの単独重合体(ポリビニルピロリドン)であってもよいし、ビニルピロリドンと他のモノマーとの共重合体であってもよい。このような共重合体の場合、ビニルピロリドン成分の含有比率は、50質量%以上であることが好ましい。
【0037】
他のモノマーとしては、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基等の付加重合性不飽和基を有するモノマーが挙げられる。かかる他のモノマーは、側鎖にアルキル基、アルキルエステル基、アルキルエーテル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、ポリアルキルエーテル等を有するものであってもよい。
【0038】
上記他のモノマーとしては、具体的には、(メタ)アクリル酸、(メタ)メタクリル酸メチル等の(メタ)メタクリル酸アルキルエステル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸とグリコールとのモノエステル、(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩、(メタ)アクリル酸のアンモニウム塩、酢酸ビニル、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルカプロラクタム、(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド等のビニルモノマーなどが挙げられる。
【0039】
ピロリドン骨格を有する重合体の重量平均分子量は、50000以上であることが好ましく、特に100000以上であることが好ましい。また、当該重量平均分子量は、1000000以下であることが好ましく、特に800000以下であることが好ましく、さらには700000以下であることが好ましい。ここで、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0040】
本実施形態におけるコート層22は、ピロリドン系化合物を含有するコート剤を塗工することにより形成することが好ましい。かかるコート剤は、ピロリドン系化合物以外に、バインダー樹脂を含有することが好ましく、さらにバインダー樹脂と反応する硬化剤(架橋剤)を含有することが好ましい。
【0041】
コート剤中におけるピロリドン系化合物の含有量(固形分換算)は、20質量%以上であることが好ましく、特に30質量%以上であることが好ましい。また、当該含有量は、80質量%以下であることが好ましく、特に70質量%以下であることが好ましい。
【0042】
バインダー樹脂としては、ポリエステル系バインダー樹脂、アクリル系バインダー樹脂、ポリエーテル・ウレタン系バインダー樹脂等が好ましく挙げられる。中でも、基材への親和性の観点から、ポリエステル系バインダー樹脂が好ましい。ポリエステル系バインダー樹脂としては、水性ポリエステル系バインダー樹脂が好ましい。水性ポリエステル系バインダー樹脂は、水に溶解して水溶液の形態を取るか、水中にエマルションとして分散した水分散体の形態を取るものである。
【0043】
上記水性ポリエステル系バインダー樹脂は、酸価が10.0KOHmg/g以上であり、水酸基価が2.0KOHmg/g以上であるものが好ましい。これにより、基材本体21に対する密着性が優れたものとなる。かかる観点から、水性ポリエステル系バインダー樹脂の酸価は、15.0KOHmg/g以上であることがより好ましく、特に20.0KOHmg/g以上であることが好ましく、さらには30.0KOHmg/g以上であることが好ましく、40.0KOHmg/g以上であることが最も好ましい。また、水性ポリエステル系バインダー樹脂の水酸基価は、2.5KOHmg/g以上であることがより好ましく、特に3.0KOHmg/g以上であることが好ましく、さらには3.5KOHmg/g以上であることが好ましく、4.0KOHmg/g以上であることが最も好ましい。なお、上記の酸価および水酸基価は、JIS K0070-1992に準拠して測定した値である。
【0044】
上記水性ポリエステル系バインダー樹脂としては、アルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合して得られる共重合体、および当該共重合体の変性物等が挙げられる。
【0045】
上記アルコール成分としては、1分子中に2個以上の水酸基を有する多価アルコールを使用することができる。具体的なアルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、3-メチル-1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、3-メチル-4,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル等のグリコール類;これらのグリコール類にε-カプロラクトン等のラクトン類を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のポリエステルジオール類;1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、スピログリコール、ジヒドロキシメチルトリシクロデカン等の二価環式アルコール;ビスフェノールAのエチレンオキシドやプロピレンオキシド付加物;グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール等の三価以上の多価アルコールが挙げられる。これらのアルコール成分は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
上記カルボン酸成分としては、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する多塩基酸を使用することができる。具体的なカルボン酸成分としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4-ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルメタン-4,4’-ジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘット酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸及びこれらの無水物;トリメリット酸、ピロメリット酸、トリメシン酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、ヘキサヒドロトリメリット酸、テトラクロロヘキセントリカルボン酸等のトリカルボン酸及びこれらの無水物;1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸等のテトラカルボン酸及びその無水物等が挙げられる。これらのカルボン酸成分は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
水性ポリエステル系バインダー樹脂の重量平均分子量は、水への溶解性または分散性、および基材本体21に対する密着性の観点から、1000~20000であることが好ましく、1500~15000であることがより好ましく、特に2000~10000であることが好ましく、さらには500~7500であることが好ましい。
【0048】
コート剤中におけるバインダー樹脂の含有量(固形分換算)は、20質量%以上であることが好ましく、特に30質量%以上であることが好ましい。また、当該含有量は、80質量%以下であることが好ましく、特に70質量%以下であることが好ましい。
【0049】
硬化剤としては、バインダー樹脂と反応する限り、特に限定されないが、例えば、エポキシ系化合物、カルボジイミド系化合物、オキサゾリン系化合物、ヒドラジド系化合物、イソシアネート系化合物、アルコキシシラン系化合物、アミン系化合物等が挙げられる。これらの硬化剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。上記の中でも、水性ポリエステル系バインダー樹脂との反応性の観点から、エポキシ系化合物、カルボジイミド系化合物またはオキサゾリン系化合物が好ましく、特にオキサゾリン系化合物が好ましい。また、それら化合物は、水性ポリエステル系バインダー樹脂との相溶性の観点から、水溶性のものであることが好ましい。
【0050】
エポキシ系化合物としては、分子中に2個以上のエポキシ基またはグリシジル基を有するものであればよい。また、カルボジイミド系化合物としては、分子中にカルボジイミド基を少なくとも2個以上含有するものであればよい。
【0051】
オキサゾリン系化合物としては、分子中にオキサゾリン基を少なくとも2個以上含有するものであればよく、例えば、2位の炭素位置に不飽和炭素-炭素結合をもつ置換基を有する付加重合性2-オキサゾリン(例えば2-イソプロペニル-2-オキサゾリン)の単独重合体や、当該付加重合性2-オキサゾリンと他の不飽和単量体との共重合体等が挙げられる。
【0052】
オキサゾリン系化合物が重合体である場合、その重量平均分子量は、10000~300000であることが好ましく、50000~200000であることがより好ましい。
【0053】
コート剤中における硬化剤の含有量(固形分換算)は、1質量%以上であることが好ましく、特に3質量%以上であることが好ましい。また、当該含有量は、20質量%以下であることが好ましく、特に15質量%以下であることが好ましい。
【0054】
コート層22の厚さの下限値は、粘着剤層3に対する密着性の観点から、0.01μm以上であることが好ましく、特に0.03μm以上であることが好ましい。また、コート層22の厚さの上限値は、ブロッキング防止の観点から、10μm以下であることが好ましく、特に1μm以下であることが好ましく、さらには0.2μm以下であることが好ましい。
【0055】
(2)粘着剤層
本実施形態における粘着剤層3は、側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体(A)を含有する粘着性組成物(以下「粘着性組成物P」という場合がある。)から形成された活性エネルギー線硬化性の粘着剤からなる。本実施形態における粘着性組成物Pは、アクリル系重合体(A)とともに、架橋剤(B)を含有することが好ましく、さらに光重合開始剤(C)を含有することも好ましい。
【0056】
(2-1)各成分
(2-1-1)側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体(A)
側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体(A)は、官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP)と、当該官能基と反応可能な官能基を有する活性エネルギー線硬化性基含有化合物(A3)とを反応させて得られるものであることが好ましい。
【0057】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP)は、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A1)と、反応性の官能基を有する官能基含有モノマー(A2)とを共重合したものであることが好ましい。
【0058】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A1)としては、アルキル基の炭素数が1~18であるものが好ましく、特に炭素数が1~4であるものが好ましい。炭素数が1~4であることにより、得られる粘着剤層3の基材2に対する密着性がより高いものとなる。
【0059】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A1)の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピルまたは(メタ)アクリル酸n-ブチルが好ましく、特にメタクリル酸メチルまたはアクリル酸n-ブチルが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP)における上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A1)由来の構造部分の質量の割合は、50~98質量%であることが好ましく、特に60~95質量%であることが好ましく、さらには70~90質量%であることが好ましい。
【0061】
官能基含有モノマー(A2)としては、活性エネルギー線硬化性基含有化合物(A3)が有する官能基と反応することが可能な反応性の官能基を有するものが使用される。官能基含有モノマー(A2)が有する官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等が挙げられ、中でも水酸基またはカルボキシ基が好ましく、特に水酸基が好ましい。なお、架橋剤(B)を使用する場合、官能基含有モノマー(A2)が有する反応性の官能基は、当該架橋剤(B)と反応することが好ましい。
【0062】
官能基含有モノマー(A2)として水酸基を有するモノマー(水酸基含有モノマー)を使用する場合、その例としては(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが挙げられ、その具体例としては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられる。これらの中でも、水酸基の反応性および共重合性の点から、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
官能基含有モノマー(A2)としてカルボキシ基を有するモノマー(カルボキシ基含有モノマー)を使用する場合、その例としてはエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられ、その具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等が挙げられる。これらの中でも、カルボキシ基の反応性および共重合性の点から、アクリル酸が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
なお、異なる種類の官能基含有モノマー(A2)を組み合わせて用いてもよい。例えば、上述の水酸基含有モノマーとカルボキシ基含有モノマーとを組み合わせて用いてもよい。
【0065】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP)における官能基含有モノマー(A2)由来の構造部分の質量の割合は、5質量%以上であることが好ましく、特に7質量%以上であることが好ましく、さらには10質量%以上であることが好ましい。また当該割合は、35質量%以下であることが好ましく、特に30質量%以下であることが好ましく、さらには17質量%以下であることが好ましい。官能基含有モノマー(A2)由来の構造部分の質量の割合が上記範囲にあることにより、側鎖にエネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体(A)への活性エネルギー線硬化性基含有化合物(A3)の導入量を好適な範囲にすることができる。また、架橋剤(B)を使用して、官能基含有モノマー(A2)と架橋剤(B)とを反応させる場合には、当該架橋剤(B)による架橋の度合い、すなわちゲル分率を好適な範囲にすることができ、粘着剤層3の凝集力等の物性をコントロールすることが可能となる。さらに、当該割合が17質量%以下であると、糊残り抑制効果がより優れたものとなる。
【0066】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP)は、上述した(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A1)および官能基含有モノマー(A2)とともに、その他のモノマーを共重合したものであってもよい。
【0067】
上記その他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等のアルコキシアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステル;N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピロリドン等の窒素含有複素環を有するモノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等の非架橋性のアクリルアミド;(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノプロピル等の非架橋性の3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル;酢酸ビニル;スチレンなどが挙げられる。上記の中でも、窒素含有複素環を有するモノマー、非架橋性のアクリルアミドまたは酢酸ビニルが好ましく、特に、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、ジメチル(メタ)アクリルアミドまたは酢酸ビニルが好ましく、さらには、N-アクリロイルモルホリンまたはジメチルアクリルアミドが好ましい。かかるモノマーを共重合させることにより、得られる粘着剤層3の基材2に対する密着性がより優れたものとなる。これらのモノマーは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP)における上記他のモノマー由来の構造部分の質量の割合は、1質量%以上であることが好ましく、特に3質量%以上であることが好ましく、さらには5質量%以上であることが好ましい。また当該割合は、20質量%以下であることが好ましく、特に18質量%以下であることが好ましく、さらには15質量%以下であることが好ましい。これにより、得られる粘着剤層3の基材2に対する密着性がより優れたものとなる。
【0069】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP)の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。また、重合法に関しては特に限定されず、一般的な重合法、例えば溶液重合法により重合することができる。
【0070】
一方、活性エネルギー線硬化性基含有化合物(A3)は、官能基含有モノマー(A2)の官能基と反応可能な官能基、および活性エネルギー線の照射によって開裂する炭素-炭素二重結合を含む活性エネルギー線硬化性基を含有するものである。
【0071】
官能基含有モノマー(A2)の官能基と反応可能な官能基としては、例えば、イソシアネート基、エポキシ基等が挙げられ、中でも水酸基との反応性の高いイソシアネート基が好ましい。
【0072】
炭素-炭素二重結合を含む活性エネルギー線硬化性基としては、(メタ)アクリロイル基等が好ましい。なお、活性エネルギー線の照射によって開裂する炭素-炭素二重結合は、活性エネルギー線硬化性基含有化合物(A3)1分子中に1~5個存在することが好ましく、特に1~3個存在することが好ましい。
【0073】
活性エネルギー線硬化性基含有化合物(A3)の例としては、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート;ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物などが挙げられる。これらの中でも、特に2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートが好ましい。なお、活性エネルギー線硬化性基含有化合物(A3)は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
アクリル系重合体(A)を調製する上で、(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP)の調製、および(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP)と活性エネルギー線硬化性基含有化合物(A3)との反応は、常法によって行うことができる。この反応工程においては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP)中の官能基含有モノマー(A2)に由来する反応性の官能基と、活性エネルギー線硬化性基含有化合物(A3)中の官能基とが反応する。これにより、側鎖にエネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体(A)が得られる。なお、(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP)と活性エネルギー線硬化性基含有化合物(A3)との反応は、有機金属触媒等の触媒の存在下で行われることが好ましい。
【0075】
アクリル系重合体(A)中において、官能基含有モノマー(A2)の反応性の官能基の量に対する、活性エネルギー線硬化性基含有化合物(A3)の量は、60モル%以上であることが好ましく、特に70モル%以上であることが好ましい。また、当該活性エネルギー線硬化性基含有化合物(A3)の量は、99モル%以下であることが好ましく、特に95%以下であることが好ましく、さらには90モル%以下であることが好ましい。
【0076】
アクリル系重合体(A)全体における、官能基含有モノマー(A2)由来の構造部分の割合は、0.1質量%以上であることが好ましく、特に0.5質量%以上であることが好ましく、さらには1質量%以上であることが好ましい。また、当該割合は、12質量%以下であることが好ましく、特に10質量%以下であることが好ましく、さらには8質量%以下であることが好ましい。これにより、得られる粘着剤層3の基材2(コート層21)に対する密着性がより優れたものとなる。
【0077】
アクリル系重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、1万以上であることが好ましい。また、当該重量平均分子量(Mw)は、150万以下であることが好ましい。アクリル系重合体(A)の重量平均分子量(Mw)が上記の範囲にあることにより、粘着性組成物Pの塗工性が担保されるとともに、粘着剤層3の凝集性が良好なものとなるため、ダイシング等に適した物性を得ることができる。
【0078】
なお、側鎖にエネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、前述した通りである。
【0079】
(2-1-2)架橋剤(B)
粘着性組成物Pは、側鎖にエネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体(A)を架橋することが可能な架橋剤(B)を含有することが好ましい。この場合、本実施形態における粘着剤層3は、当該アクリル系重合体(A)と架橋剤(B)との架橋反応により得られた架橋物を含有する。かかる架橋剤(B)を使用することにより、粘着剤層3を形成する粘着剤のゲル分率を好適な範囲に調整することが容易となり、ダイシング等に適した物性を得ることができる。
【0080】
架橋剤(B)の種類としては、例えば、エポキシ系化合物、ポリイソシアネート系化合物、金属キレート系化合物、アジリジン系化合物等のポリイミン系化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアルデヒド類、メチロールポリマー、金属アルコキシド、金属塩等が挙げられる。これらの中でも、架橋反応を制御し易いことなどの理由により、エポキシ系化合物またはポリイソシアネート系化合物を使用することが好ましく、特にポリイソシアネート系化合物を使用することが好ましい。
【0081】
エポキシ系化合物としては、例えば、1,3-ビス(N,N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等が挙げられる。
【0082】
ポリイソシアネート系化合物は、1分子当たりイソシアネート基を2個以上有する化合物である。具体的には、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート等が挙げられる。さらには、これらのビウレット体、イソシアヌレート体、アダクト体等が挙げられる。アダクト体としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物が挙げられる。
【0083】
架橋剤(B)は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0084】
粘着性組成物Pにおける架橋剤(B)の含有量は、側鎖にエネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体(A)100質量部に対し、0.01~15質量部であることが好ましく、特に0.05~10質量部であることが好ましく、さらには0.1~2質量部であることが好ましい。
【0085】
(2-1-3)光重合開始剤(C)
活性エネルギー線硬化性の粘着剤を硬化させるのに使用する活性エネルギー線として紫外線を用いる場合には、粘着性組成物Pは、さらに光重合開始剤(C)を含有することが好ましい。このように光重合開始剤(C)を含有することにより、側鎖にエネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体(A)を効率良く重合・硬化させることができ、また重合硬化時間および活性エネルギー線の照射量を少なくすることができる。
【0086】
光重合開始剤(C)としては、例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4-ジエチルチオキサンソン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンジル、ジベンジル、ジアセチル、β-クロールアンスラキノン、(2,4,6-トリメチルベンジルジフェニル)フォスフィンオキサイド、2-ベンゾチアゾール-N,N-ジエチルジチオカルバメート、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-プロペニル)フェニル]プロパノン}、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0087】
粘着性組成物P中における光重合開始剤(C)の含有量は、側鎖にエネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体(A)100質量部に対し、0.1~10質量部であることが好ましく、特に0.5~8質量部であることが好ましい。
【0088】
(2-1-4)その他の成分
本実施形態における粘着性組成物Pは、本実施形態に係るワーク加工用粘着シート1による前述した効果を損なわない限り、所望の添加剤、例えば帯電防止剤、粘着付与剤、酸化防止剤、光安定剤、軟化剤、充填剤などを添加することができる。なお、後述の希釈溶剤は、粘着性組成物Pを構成する添加剤に含まれないものとする。
【0089】
(2-2)粘着性組成物の調製
本実施形態における粘着性組成物Pは、アクリル系重合体(A)を製造し、得られたアクリル系重合体(A)に、所望により、架橋剤(B)と、光重合開始剤(C)と、添加剤とを混合することで製造することができる。このとき、所望により希釈溶剤を添加して、粘着性組成物Pの塗布液を得てもよい。
【0090】
上記希釈溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤などが用いられる。
【0091】
このようにして調製された塗布液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。例えば、粘着性組成物Pの濃度が10質量%以上、60質量%以下となるように希釈する。なお、塗布液を得るに際して、希釈溶剤等の添加は必要条件ではなく、粘着性組成物Pがコーティング可能な粘度等であれば、希釈溶剤を添加しなくてもよい。この場合、粘着性組成物Pは、アクリル系重合体(A)の重合溶媒をそのまま希釈溶剤とする塗布液となる。
【0092】
(2-3)粘着剤層の厚さ
本実施形態における粘着剤層3の厚さは、10μm以上であることが好ましく、特に15μm以上であることが好ましく、さらには20μm以上であることが好ましい。これにより、ワーク加工用粘着シート1が良好な粘着力を発揮し易くなり、例えば、ダイシング時におけるチップ飛びなどを効果的に抑制することが可能となる。また、粘着剤層3の厚さは、100μm以下であることが好ましく、特に50μm以下であることが好ましい。これにより、活性エネルギー線の照射後における、加工後のワークに対する粘着力が適度に低下するものとなり、ワーク加工用粘着シート1からのワークの分離がより容易となる。
【0093】
(3)剥離シート
本実施形態に係るワーク加工用粘着シート1では、粘着剤層3に剥離シート4が積層されている。この剥離シート4は、粘着剤層3形成のための工程材料であってもよいし、ワーク加工用粘着シート1をワークに貼付するまでの間、粘着剤層3の粘着面を保護するものであってもよい。また、本実施形態に係るワーク加工用粘着シート1において、剥離シート4は省略されてもよい。
【0094】
剥離シート4の構成は任意であり、プラスチックフィルムを剥離剤等により剥離処理したものが例示される。プラスチックフィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、およびポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。剥離剤としては、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系の剥離剤等を用いることができ、これらの中で、安価で安定した性能が得られるシリコーン系剥離剤が好ましい。剥離シート4の厚さについては特に制限はないが、通常20μm以上、250μm以下である。
【0095】
(4)その他の部材
本実施形態に係るワーク加工用粘着シート1では、粘着剤層3における粘着面に接着剤層が積層されていてもよい。この場合、本実施形態に係るワーク加工用粘着シート1は、上述のように接着剤層を備えることで、ダイシング・ダイボンディングシートとして使用することができる。このようなダイシング・ダイボンディングシートでは、接着剤層における粘着剤層3とは反対側の面にワークを貼付し、当該ワークとともに接着剤層をダイシングすることで、個片化された接着剤層が積層されたチップを得ることができる。当該チップは、この個片化された接着剤層によって、当該チップが搭載される対象に対して容易に固定することが可能となる。上述した接着剤層を構成する材料としては、熱可塑性樹脂と低分子量の熱硬化性接着成分とを含有するものや、Bステージ(半硬化状)の熱硬化型接着成分を含有するもの等を用いることが好ましい。
【0096】
また、本実施形態に係るワーク加工用粘着シート1では、粘着剤層3における粘着面に保護膜形成層が積層されていてもよい。この場合、本実施形態に係るワーク加工用粘着シート1は、保護膜形成兼ワーク加工用シートとして使用することができる。このようなシートでは、例えば、保護膜形成層における粘着剤層3とは反対側の面にワークを貼付し、当該ワークとともに保護膜形成層をダイシングすることで、個片化された保護膜形成層が積層されたチップを得ることができる。当該ワークとしては、片面に回路が形成されたものが使用されることが好ましく、この場合、通常、当該回路が形成された面とは反対側の面に保護膜形成層が積層される。個片化された保護膜形成層は、所定のタイミングで硬化させることで、十分な耐久性を有する保護膜をチップに形成することができる。保護膜形成層は、未硬化の硬化性接着剤からなることが好ましい。
【0097】
2.ワーク加工用粘着シートの物性
本実施形態に係るワーク加工用粘着シート1は、ワーク加工用粘着シート1における粘着剤層3側の面を支持体に固定し、粘着剤層3に対して活性エネルギー線を照射して粘着剤層3を硬化させた後に、粘着剤層3から基材2を剥離角度180°、剥離速度300mm/minで引き剥がしたときの剥離力として測定される、基材2と粘着剤層3との間の層間強度が、1000mN/25mm以上であることが好ましく、特に3000mN/25mm以上であることが好ましく、さらには5000mN/25mm以上であることが好ましい。当該層間強度が上記であることにより、ワークとの分離時における糊残りを効果的に抑制することができる。本実施形態に係るワーク加工用粘着シート1は、前述した構成および物性を有することにより、上記の層間強度を達成することができる。なお、上記層間強度の上限値は特に限定されないものの、通常、50000mN/25mm以下であることが好ましい。また、上記層間強度の測定方法の詳細は、後述する試験例に記載する通りである。
【0098】
3.ワーク加工用粘着シートの製造方法
本実施形態に係るワーク加工用粘着シート1の製造方法は特に限定されない。好ましい製造方法は、基材本体21の片面に、ピロリドン系化合物を含有するコート層22を形成し、基材2を得る工程と、粘着性組成物P(の塗布液)を剥離シート4の剥離面に塗工し、粘着剤層3を形成する工程と、上記基材2のコート層22側の面と、粘着剤層3とを貼合する工程とを備える。
【0099】
基材本体21の片面に対するコート層22の形成は、公知の方法により行うことができる。例えば、コート層22を形成するためのコート剤を、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等により基材本体21の片面に塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥させることにより、コート層22を形成することができる。
【0100】
また、剥離シート4の剥離面に対する粘着剤層3の形成は、公知の方法により行うことができる。例えば、粘着性組成物Pの塗布液を、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等により剥離シート4の剥離面に塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥させることにより、粘着剤層3を形成することができる。
【0101】
粘着性組成物Pが架橋剤(B)を含有する場合には、上記の乾燥の条件(温度、時間など)を変えることにより、または加熱処理を別途設けることにより、塗膜内のアクリル系重合体(A)と架橋剤(B)との架橋反応を進行させ、粘着剤層3内に所望の存在密度で架橋構造を形成することが好ましい。
【0102】
基材2のコート層22側の面と粘着剤層3とを貼合した後、上記の架橋反応を十分に進行させるために、例えば23℃、相対湿度50%の環境に数日間静置するといった養生を行ってもよい。
【0103】
上記のように、剥離シート4上に形成した粘着剤層3を基材2に転写する方法は、生産効率が高いため好ましい。一般的に、このような転写による方法は、基材と粘着剤層との密着性が低くなる傾向がある。しかしながら、本実施形態に係るワーク加工用粘着シート1は、前述した構成および物性を有することにより、かかる方法によって製造しても、基材2と粘着剤層3との密着性が高く、したがって、ワークとの分離時におけるワークへの糊残りを効果的に抑制することができる。
【0104】
なお、生産効率は低下するものの、上記のように剥離シート4上に形成した粘着剤層3を基材2に転写するのではなく、基材2のコート層22に対して粘着剤層3を直接形成してもよい。この場合、粘着剤層3に剥離シート4を積層してもよいし、積層しなくてもよい。
【0105】
4.ワーク加工用粘着シートの使用方法
本実施形態に係るワーク加工用粘着シート1は、ワークの加工のために使用することができる。すなわち、本実施形態に係るワーク加工用粘着シート1の粘着面をワークに貼付した後、ワーク加工用粘着シート1上にて当該ワークの加工を行うことができる。
【0106】
本実施形態に係るワーク加工用粘着シート1を用いて加工が施されるワークは、特に限定されない。当該ワークの例としては、半導体ウエハ、半導体パッケージ等の半導体部材や、ガラス板等のガラス部材等が挙げられる。本実施形態に係るワーク加工用粘着シート1によれば、加工後のワークにおける糊残りを抑制することができるため、このような糊残りが生じないことが求められるワークに対して使用することが好ましい。
【0107】
本実施形態に係るワーク加工用粘着シート1を用いて行う加工としては、バックグラインド、ダイシング、エキスパンド、ピックアップ等が挙げられる。一のワーク加工用粘着シート1を使用して、上記の各加工を行ってもよいし、一連の加工の途中でワーク加工用粘着シート1を貼り替えてもよい。
【0108】
また、上述した加工の完了後、加工後のワークをワーク加工用粘着シート1から分離する際には、当該分離の前に、粘着剤層3に対して活性エネルギー線を照射することが好ましい。これにより、加工後のワークに対する粘着力を低下させることができ、上記の分離を容易に行うことができる。上記活性エネルギー線としては、通常、紫外線、電子線等が用いられ、特に取扱いが容易な紫外線が好ましい。
【0109】
上記紫外線の照射は、高圧水銀ランプ、フュージョンランプ、キセノンランプ等によって行うことができ、紫外線の照射量は、照度が50mW/cm2以上、1000mW/cm2以下であることが好ましい。紫外線の光量は、50mJ/cm2以上であることが好ましく、特に80mJ/cm2以上であることが好ましく、さらには100mJ/cm2以上であることが好ましい。また、紫外線の光量は、2000mJ/cm2以下であることが好ましく、特に1000mJ/cm2以下であることが好ましく、さらには500mJ/cm2以下であることが好ましい。
【0110】
一例として、ワーク加工用粘着シート1上においてワークとしての半導体ウエハやガラス板をダイシングし、複数の半導体チップに個片化した後、必要に応じてワーク加工用粘着シート1をエキスパンドする。そして、粘着剤層3に対して活性エネルギー線を照射し、粘着剤層3を硬化させた後、ワーク加工用粘着シート1から半導体チップやガラスチップを個々にピックアップする。
【0111】
本実施形態に係るワーク加工用粘着シート1は、前述した構成および物性を有することにより、ピックアップされる半導体チップやガラスチップの表面に、粘着剤層3を構成する粘着剤が付着することが抑制される。すなわち、半導体チップやガラスチップへの糊残りが抑制される。
【0112】
特に、本実施形態に係るワーク加工用粘着シート1は、表面に凹部を有するワークに対して特に好適に使用できる。この場合、当該ワークの凹部が存在する面に、ワーク加工用粘着シート1の粘着面を貼付することができる。このような凹部を有するワークとしては、例えば、レーザー光照射(レーザー印字)によって微細な凹部が形成された保護膜または封止樹脂層を有する半導体ウエハや、切り溝等の微細な凹部が形成されたガラス板などが挙げられる。本実施形態に係るワーク加工用粘着シート1は、表面に凹部を有するワークに使用する場合であっても、糊残りを抑制する効果を良好に得ることができる。
【0113】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0114】
例えば、剥離シート4は無くてもよいし、基材2における粘着剤層3とは反対側の面には、他の層が設けられてもよい。
【実施例】
【0115】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0116】
〔製造例1〕(基材Xの作製)
(1)コート剤の調製
反応容器に水938gと硫酸銅(II)0.046mgとを仕込み、これを60℃まで昇温した。次いで、60℃を維持しながら、N-ビニルピロリドン1kg、25%アンモニア水6g、および35質量%過酸化水素水溶液34gを180分間かけて滴下した。滴下終了後、25質量%アンモニア水2gを添加した。反応開始から4時間後、80℃に昇温し、35質量%過酸化水素水5gを添加した。次いで、反応開始から5.5時間後、35質量%過酸化水素水5gを添加し、更に80℃で1時間保持することにより、50質量%ポリビニルピロリドン水溶液を得た。これによって得られたポリビニルピロリドンの重量平均分子量(Mw)は、30万であった。
【0117】
上記で得られたポリビニルピロリドン水溶液40質量部(固形分換算;以下同じ)と、ポリエステル系バインダー樹脂(互応化学工業社製,製品名「プラスコート:Z-730」,重量平均分子量:3000,酸価:50.0KOHmg/g,水酸基価:5.0KOHmg/g)50質量部と、オキサゾリン基含有ポリマーの水溶性硬化剤(日本触媒社製,製品名「エポクロス:WS-300」,重量平均分子量:120000)5質量部とを混合し、コート剤(10質量%水溶液)を得た。
【0118】
(2)コート層の形成
上記で得られたコート剤を、基材本体であるポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル社製,製品名「PET100 T-100ミツビシ」,厚さ100μm)の片面にマイヤーバーを用いて塗布した。そして、塗膜を110℃で1分間乾燥させることにより、基材本体上に厚さ0.05μmのコート層(ピロリドン系コート層)を形成し、これを基材Xとした。
【0119】
〔製造例2〕(基材Yの作製)
(1)コート剤の調製
水溶性ポリビニルアルコール樹脂(クラレ社製,製品名「ポバール」)40質量部と、アルコール系バインダー樹脂(互応化学工業社製,製品名「プラスコート:Z-565」)50質量部と、オキサゾリン基含有ポリマーの水溶性硬化剤(日本触媒社製,製品名「エポクロス:WS-300」,重量平均分子量:120000)5質量部とを混合し、コート剤(10質量%水溶液)を得た。
【0120】
(2)コート層の形成
上記で得られたコート剤を、基材本体であるポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル社製,製品名「PET100 T-100ミツビシ」,厚さ100μm)の片面にマイヤーバーを用いて塗布した。そして、塗膜を110℃で1分間乾燥させることにより、基材本体上に厚さ0.05μmのコート層(非ピロリドン系コート層)を形成し、これを基材Yとした。
【0121】
〔実施例1〕
(1)粘着性組成物の調製
アクリル酸n-ブチル(BA)75質量部と、メタクリル酸メチル(MMA)10質量部と、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)15質量部とを、溶液重合法により重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体を得た。この(メタ)アクリル酸エステル重合体と、当該(メタ)アクリル酸エステル重合体100gに対して30g(アクリル酸2-ヒドロキシエチルに対して80モル%に相当する。)のメタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)とを反応させて、側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体を得た。このアクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)は、60万であった。
【0122】
上記で得られた、側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体100質量部と、光重合開始剤としての2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(BASF社製,製品名「オムニラッド127」)7質量部と、架橋剤としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(東ソー社製,製品名「コロネートL」)0.2質量部とを溶媒中で混合し、粘着性組成物の塗布液を得た。
【0123】
(2)粘着剤層の形成
厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面にシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET381031」)の剥離面に対して、上記粘着性組成物の塗布液を塗布し、加熱により乾燥させることで、剥離シート上に、厚さ25μmの粘着剤層を形成した。
【0124】
(3)ワーク加工用粘着シートの作製
上記工程(2)で形成した粘着剤層の露出面と、製造例1で作製した基材Xのコート層側の面とを貼り合わせることで、ワーク加工用粘着シートを得た。
【0125】
〔実施例2~6,比較例1~2〕
側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体((メタ)アクリル酸エステル重合体)を構成する各モノマーの種類および割合、ならびに当該アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)を表1に示すように変更する以外、実施例1と同様にしてワーク加工用粘着シートを製造した。
【0126】
〔比較例3~4〕
側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体((メタ)アクリル酸エステル重合体)を構成する各モノマーの種類および割合、ならびに当該アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)を表1に示すように変更するとともに、基材Xを基材Yに変更する以外、実施例1と同様にしてワーク加工用粘着シートを製造した。
【0127】
〔比較例5〕
基材Xを基材Yに変更する以外、実施例1と同様にしてワーク加工用粘着シートを製造した。
【0128】
〔比較例6〕
エチレン・メタクリル酸共重合体(EMAA)(三井・デュポンポリケミカル社製,製品名「ニュクレルN0903HC」)を、小型Tダイ押出機(東洋精機製作所社製,製品名「ラボプラストミル」)によって押出成形して得られた、厚さ80μmのEMAAフィルムに対し、110kGyの電子線を2.2秒照射した。このようにして得られたEMAAフィルムを、基材Xと置き換えた以外、実施例1と同様にしてワーク加工用粘着シートを製造した。
【0129】
ここで、表1に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
BA:アクリル酸n-ブチル
MMA:メタクリル酸メチル
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
ACMO:N-アクリロイルモルホリン
DMAA:N,N-ジメチルアクリルアミド
2EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル
VAc:酢酸ビニル
【0130】
前述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・測定装置:東ソー社製,HLC-8320
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK gel superH-H
TSK gel superHM-H
TSK gel superH2000
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0131】
〔試験例1〕(基材の貯蔵弾性率の測定)
実施例および比較例で作製・使用した基材について、下記の装置および条件で25℃における貯蔵弾性率を測定した。結果を表1に示す。
測定装置:動的弾性率測定装置,エー・アンド・デイ社製,製品名「レオバイブロン DDV-01FP」
試験開始温度:0℃
試験終了温度:200℃
昇温速度:3℃/分
周波数:11Hz
振幅:20μm
【0132】
〔試験例2〕(ガラス転移温度の算出)
実施例および比較例で調製した、側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体のガラス転移温度(Tg)を、Foxの式より算出した。結果を表1に示す。
【0133】
〔試験例3〕(層間強度の測定)
基材と、当該基材の片面に積層される、高粘着力性の紫外線硬化性粘着剤から構成される粘着剤層と、当該粘着剤層における基材の反対の面に積層される剥離シートとの3層から構成される高粘着力UV粘着シート(リンテック社製,製品名「Adwill D-510T」)の基材側の面を、両面粘着テープ(リンテック社製,製品名「タックライナー」)を介して、支持体としてのステンレススチール板(SUS304#600)の片面に固定した。
【0134】
次に、上記高粘着力UV粘着シートから剥離シートを剥離し、上記粘着剤層における基材と反対側の面を露出させた。次いで、実施例および比較例にて製造したワーク加工用粘着シートから剥離シートを剥離して、粘着面を露出させ、当該粘着面を、上記高粘着力UV粘着シートにおける粘着剤層の露出面に貼付した。
【0135】
続いて、ワーク加工用粘着シートにおける粘着剤層に対して、ワーク加工用粘着シートにおける基材側の面から紫外線を照射し(照度:230mW/cm2,光量:190mJ/cm2)、ワーク加工用粘着シートの粘着剤層および高粘着力UV粘着シートの粘着剤層を硬化させた。
【0136】
その後、万能型引張試験機(島津製作所製,製品名「オートグラフAG-IS」)を用いて、剥離角度180°および剥離速度300mm/minの条件で、ワーク加工用粘着シートの基材を、ワーク加工用粘着シートの粘着剤層から引き剥がし、そのときの剥離力(mN/25mm)を測定した。そして、当該剥離力を層間強度(mN/25mm)とした。結果を表1に示す。
【0137】
なお、実施例1~3のワーク加工用粘着シートにおいては、ワーク加工用粘着シートの粘着剤層と基材との層間強度が高過ぎて、基材または粘着剤層にちぎれが発生したため、測定不能であった。
【0138】
〔試験例4〕(糊残りの評価)
シリコンウエハのミラー面に対し、レーザー印字装置(キーエンス社製,製品名「MD-S9910A」)を用いて印字を行った。これにより、当該ミラー面に対し、断面視で幅が約50μm、深さが約25μmの溝を形成した。
【0139】
続いて、実施例および比較例にて製造したワーク加工用粘着シートから剥離シートを剥離して露出した粘着面を、上記レーザー印字後のミラー面に対して2kgのゴムローラを用いて貼付し、20分間放置した。
【0140】
続いて、ワーク加工用粘着シートにおける粘着剤層に対して、ワーク加工用粘着シートにおける基材側の面から紫外線を照射し(照度:230mW/cm2,光量:190mJ/cm2)、ワーク加工用粘着シートの粘着剤層を硬化させた。
【0141】
その後、上記ミラー面とワーク加工用粘着シートとを分離し、当該ミラー面における印字部分への糊残り(粘着剤の付着)を目視で確認した。その結果、糊残りが無かったものを「◎」、糊残りが僅かに確認できたものを「〇」、糊残りが有ったものを「×」と評価した。結果を表1に示す。
【0142】
〔試験例5〕(チッピングの評価)
実施例および比較例にて製造したワーク加工用粘着シートから剥離シートを剥離し、表出した粘着剤層に対して、テープマウンター(リンテック社製,製品名「AdwillRAD2500m/12」)を用いて、6インチシリコンウエハおよびダイシング用リングフレームを貼付した。続いて、リングフレームの外径に合わせてワーク加工用粘着シートを裁断した後、ダイシング装置(ディスコ社製:DFD-651)を用いて、以下のダイシング条件でシリコンウエハ側から切断するダイシングを行い、8mm角のチップを得た。
【0143】
<ダイシング条件>
・ウエハの厚さ:350μm
・ダイシング装置:ディスコ社製,製品名「DFD-651」
・ブレード:ディスコ社製,製品名「NBC-2H205027HECC」
・ブレード幅:0.025~0.030mm
・刃先出し量:0.640~0.760mm
・ブレード回転数:30000rpm
・切削速度:80mm/sec
・基材切り込み深さ:20μm
・切削水量:1.0L/min
・切削水温度:20℃
【0144】
得られた8mm角のチップのうち、ワーク加工用粘着シートの中心部およびその近傍に位置するものについて、チッピング(チップ端部の欠け)の有無を観察した。具体的には、電子顕微鏡(KEYENCE社製,製品名「VHZ-100」,倍率:300倍)を用いて、基材本体の製造時における流れ方向(MD方向)に50チップ辺分およびMD方向に直交する方向(CD方向)に50チップ辺分を観察した。そして、100μm以上の幅または深さを有する欠けをチッピングと判定し、チッピングを有するチップ数を数えた。この結果に基づいて、以下を基準として、チッピングを評価した。評価結果を表1に示す。
○:チッピングが生じたチップの数が、5個未満である。
×:チッピングが生じたチップの数が、5個以上である。
【0145】
【0146】
表1から分かるように、実施例で得られたワーク加工用粘着シートは、ワークとの分離時におけるワークへの糊残りを良好に抑制することができた。また、ダイシング時におけるチッピングの発生も抑制することができた。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明のワーク加工用粘着シートは、糊残りが生じないことが求められるワーク、特に表面に微細な凹部を有するようなワークを加工するときに好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0148】
1…ワーク加工用粘着シート
2…基材
21…基材本体
22…コート層
3…粘着剤層
4…剥離シート