(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】不揮発性記憶装置
(51)【国際特許分類】
G11C 29/50 20060101AFI20240118BHJP
G11C 16/34 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
G11C29/50 100
G11C16/34 120
(21)【出願番号】P 2021529942
(86)(22)【出願日】2020-06-15
(86)【国際出願番号】 JP2020023325
(87)【国際公開番号】W WO2021002176
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2019124022
(32)【優先日】2019-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 和久
(72)【発明者】
【氏名】濁池 康次
【審査官】後藤 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-293998(JP,A)
【文献】特開平09-139094(JP,A)
【文献】特開2001-266599(JP,A)
【文献】特開平08-297987(JP,A)
【文献】特開平07-050097(JP,A)
【文献】特開平05-325580(JP,A)
【文献】特開平11-134317(JP,A)
【文献】特開平04-102080(JP,A)
【文献】特開2002-343868(JP,A)
【文献】特開平02-105393(JP,A)
【文献】特開平10-112192(JP,A)
【文献】特表2009-537935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11C 29/50
G11C 16/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを不揮発的に記憶するメモリ部と、
内部電圧を生成して前記内部電圧を前記メモリ部に供給する電源部と、
前記メモリ部及び前記電源部を制御する制御部と、
前記内部電圧をAD変換するAD変換器と、
前記メモリ部に書き込まれているデータに関する異常を前記AD変換器の出力に基づき検出する異常検出部と、
第1条件で前記メモリ部から読み出したデータを格納する格納部と、
所定のフラグを出力するフラグ出力部と、
を備え、
前記異常検出部は、前記第1条件よりもデータの論理値を判別し難い第2条件で、判別し難さを段階的に高めながら、前記メモリ部から読み出したデータと前記格納部に格納されているデータとを比較し、比較結果が不一致になる前記第2条件のうちデータの論理値を最も判別し易い条件における前記AD変換器の出力が所定範囲を超えると、前記異常の一形態であるフラグ出力トリガ用異常を検出し、
前記フラグ出力部は、前記異常検出部によって前記フラグ出力トリガ用異常が検出されると、前記所定のフラグを出力する、不揮発性記憶装置。
【請求項2】
前記メモリ部は、
複数のメモリセルをアレイ状に配列したメモリセルアレイと、
前記メモリセルアレイを駆動するデコーダと、
前記メモリセルアレイからデータを読み出すセンスアンプと、
を備える、請求項1に記載の不揮発性記憶装置。
【請求項3】
前記異常検出部は、設定値に対する前記AD変換器の出力の誤差が所定範囲を超えると、前記異常の一形態である
補正トリガ用異常を検出し、
前記制御部は、前記異常検出部によって前記
補正トリガ用異常が検出されると、前記AD変換器の出力に基づいて前記電源部を制御して前記設定値に対する前記AD変換器の出力の誤差に応じて前記内部電圧を補正する、請求項1又は請求項2に記載の不揮発性記憶装置。
【請求項4】
前記電源部は、前記内部電圧として、前記メモリ部のデータ消去動作に用いられる電圧、前記メモリ部のデータ書き込み動作に用いられる電圧、及び前記メモリ部のデータ読み出し動作に用いられる電圧を生成し、
前記AD変換器は、前記メモリ部のデータ消去動作に用いられる電圧及び前記メモリ部のデータ書き込み動作に用いられる電圧を少なくともAD変換する、請求項3に記載の不揮発性記憶装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記比較結果が不一致になる前記第2条件のうちデータの論理値を最も判別し易い条件における前記AD変換器の出力を前記メモリ部に記憶させる、請求項
1~4のいずれか一項に記載の不揮発性記憶装置。
【請求項6】
前記格納部が格納可能なデータ量は、前記メモリ部が記憶可能なデータ量より小さい、請求項
1~5のいずれか一項に記載の不揮発性記憶装置。
【請求項7】
前記格納部は揮発性メモリである、請求項
1~6のいずれか一項に記載の不揮発性記憶装置。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか一項に記載の不揮発性記憶装置と、
前記不揮発性記憶装置によって記憶されているデータを利用して動作する半導体集積回路装置と、
を備える、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、不揮発性記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
不揮発性記憶装置は、例えば、トリミングデータ、機能設定データ、ソフトウェア用コードデータ、トレーサビリティ用データ等を記憶する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-48347号公報(段落0053)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
不揮発性記憶装置が記憶しているはずのデータが消失すると、不揮発性記憶装置によって記憶されているデータを利用して動作する半導体集積回路装置が正常に動作しない。
【0005】
また、不揮発性記憶装置がデータの書き換え可能な記憶装置である場合、データが正しく書き換えられないと、不揮発性記憶装置によって記憶されているデータを利用して動作する半導体集積回路装置がデータ更新後(データ書き換え後)に正常に動作しなくなる。
【0006】
特許文献1では、データの書き換え可能な不揮発性記憶装置においてリフレッシュを実行することによりデータの消失を防止している。特許文献1では、不揮発性記憶装置の製造時にテストによって予め統計的にデータ保持時間が把握され、最も短いデータ保持時間を有するメモリセルの寿命より十分に短いリフレッシュタイミングが設定される。特許文献1で開示されている不揮発性記憶装置は、実際に使用されている状況下での特異な異常に対応することができないため、データの消失防止に関する信頼性が十分に確保できているとはいえない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書中に開示されている不揮発性記憶装置は、データを不揮発的に記憶するメモリ部と、内部電圧を生成して前記内部電圧を前記メモリ部に供給する電源部と、前記メモリ部及び前記電源部を制御する制御部と、前記内部電圧をAD変換するAD変換器と、前記メモリ部に書き込まれているデータに関する異常を前記AD変換器の出力に基づき検出する異常検出部と、を備える構成(第1の構成)である。
【0008】
また、上記第1の構成の不揮発性記憶装置において、前記メモリ部は、複数のメモリセルをアレイ状に配列したメモリセルアレイと、前記メモリセルアレイを駆動するデコーダと、前記メモリセルアレイからデータを読み出すセンスアンプと、を備える構成(第2の構成)であってもよい。
【0009】
また、上記第1又は第2の構成の不揮発性記憶装置において、前記異常検出部は、設定値に対する前記AD変換器の出力の誤差が所定範囲を超えると、前記異常の一形態である第1異常を検出し、前記制御部は、前記異常検出部によって前記第1異常が検出されると、前記AD変換器の出力に基づいて前記電源部を制御して前記設定値に対する前記AD変換器の出力の誤差に応じて前記内部電圧を補正する構成(第3の構成)であってもよい。
【0010】
また、上記第3の構成の不揮発性記憶装置において、前記電源部は、前記内部電圧として、前記メモリ部のデータ消去動作に用いられる電圧、前記メモリ部のデータ書き込み動作に用いられる電圧、及び前記メモリ部のデータ読み出し動作に用いられる電圧を生成し、前記AD変換器は、前記メモリ部のデータ消去動作に用いられる電圧及び前記メモリ部のデータ書き込み動作に用いられる電圧を少なくともAD変換する構成(第4の構成)であってもよい。
【0011】
また、上記第1~第4いずれかの構成の不揮発性記憶装置において、第1条件で前記メモリ部から読み出したデータを格納する格納部と、所定のフラグを出力するフラグ出力部と、を備え、前記異常検出部は、前記第1条件よりもデータの論理値を判別し難い第2条件で前記メモリ部から読み出したデータと前記格納部に格納されているデータとを比較し、比較結果が不一致になる前記第2条件のうちデータの論理値を最も判別し易い条件における前記AD変換器の出力が所定範囲を超えると、前記異常の一形態である第2異常を検出し、前記フラグ出力部は、前記異常検出部によって前記第2異常が検出されると、前記所定のフラグを出力する構成(第5の構成)であってもよい。
【0012】
また、上記第1~第4いずれかの構成の不揮発性記憶装置において、第1条件で前記メモリ部から読み出したデータを格納する格納部を備え、前記異常検出部は、前記第1条件よりもデータの論理値を判別し難い第2条件で前記メモリ部から読み出したデータと前記格納部に格納されているデータとを比較し、比較結果が不一致になる前記第2条件のうちデータの論理値を最も判別し易い条件における前記AD変換器の出力が所定範囲を超えると、前記異常の一形態である第2異常を検出し、前記制御部は、前記異常検出部によって前記第2異常が検出されると、前記格納部に格納されているデータを前記メモリ部に記憶させる構成(第6の構成)であってもよい。
【0013】
また、上記第5又は第6の構成の不揮発性記憶装置において、前記制御部は、前記比較結果が不一致になる前記第2条件のうちデータの論理値を最も判別し易い条件における前記AD変換器の出力を前記メモリ部に記憶させる構成(第7の構成)であってもよい。
【0014】
また、上記第5~第7いずれかの構成の不揮発性記憶装置において、前記格納部が格納可能なデータ量は、前記メモリ部が記憶可能なデータ量より小さい構成(第8の構成)であってもよい。
【0015】
また、上記第5~第8いずれかの構成の不揮発性記憶装置において、前記格納部は揮発性メモリである構成(第9の構成)であってもよい。
【0016】
本明細書中に開示されている車両は、上記第1~第9いずれかの構成の不揮発性記憶装置と、前記不揮発性記憶装置によって記憶されているデータを利用して動作する半導体集積回路装置と、を備える構成(第10の構成)である。
【発明の効果】
【0017】
本明細書中に開示されている不揮発性記憶装置によれば、信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態に係る不揮発性記憶装置を備えるマイクロコンピュータの概略構成を示す図
【
図2】メモリ部のデータ消去動作時にメモリセルに印加される電圧の一例を示す図
【
図3】メモリ部のデータ書き込み動作時にメモリセルに印加される電圧の一例を示す図
【
図4】メモリ部のデータ読み出し動作時にメモリセルに印加される電圧の一例を示す図
【
図5】第1実施形態に係る不揮発性記憶装置の異常検出に関する動作例を示すフローチャート
【
図6】第2実施形態に係る不揮発性記憶装置を備えるマイクロコンピュータの概略構成を示す図
【
図7】第2実施形態に係る不揮発性記憶装置の異常検出に関する動作例を示すフローチャート
【
図8】第3実施形態に係る不揮発性記憶装置を備えるマイクロコンピュータの概略構成を示す図
【
図9】第3実施形態に係る不揮発性記憶装置の異常検出に関する動作例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る不揮発性記憶装置を備えるマイクロコンピュータの概略構成を示す図である。マイクロコンピュータ1Aは、不揮発性記憶装置2Aと、CPU3と、RAM4と、入出力インターフェース5と、を備える。
【0020】
不揮発性記憶装置2Aは、メモリ部10と、電源部20と、制御部30と、AD変換器40と、を備える。
【0021】
メモリ部10は、データを不揮発的に記憶する。メモリ部10は、複数のメモリセルをアレイ状に配列したメモリセルアレイ11と、メモリセルアレイ11を駆動するXデコーダ(ローデコーダ)12及びYデコーダ(カラムデコーダ)13と、メモリセルアレイ11からデータを読み出すセンスアンプ14と、を備える。なお、本実施形態では、メモリ部11としてフラッシュメモリを用いるが、例えば、EEPROM、FeRAMなどを用いることも可能である。
【0022】
電源部20は、内部電圧を生成してメモリ部10及びAD変換器40に供給する。
【0023】
制御部30は、メモリ部10及び電源部20を制御する。本実施形態では、制御部30は、CPU3からの指令に応じてメモリ部10及び電源部20を制御する。
【0024】
メモリ部10のデータ消去動作時にメモリセルに印加される電圧は例えば
図2に示すようになる。したがって、メモリ部10のデータ消去動作時において、電源部20は、制御部30の制御により、内部電圧として15Vの電圧及び-5Vの電圧を生成する。なお、いきなり15Vの電圧を用いるのではなく、15Vの電圧より低い電圧を用いてデータの消去を試みた後ベリファイ(検証)してデータの消去ができなかったメモリセルに対してのみ電圧のレベルを上げて再度データの消去を試みた後ベリファイ(検証)するという処理をデータの消去ができなかったメモリセルがなくなるまで繰り返すようにしてもよい。
【0025】
メモリ部10のデータ書き込み動作時にメモリセルに印加される電圧は例えば
図3に示すようになる。したがって、メモリ部10のデータ書き込み動作時において、電源部20は、制御部30の制御により、内部電圧として11Vの電圧及び4.5Vの電圧を生成する。なお、いきなり11Vの電圧を用いるのではなく、11Vの電圧より低い電圧を用いてデータの書き込みを試みた後ベリファイ(検証)してデータの書き込みができなかったメモリセルに対してのみ電圧のレベルを上げて再度データの書き込みを試みた後ベリファイ(検証)するという処理をデータの書き込みができなかったメモリセルがなくなるまで繰り返すようにしてもよい。
【0026】
メモリ部10のデータ読み出し動作時にメモリセルに印加される電圧は例えば
図4に示すようになる。したがって、メモリ部10のデータ読み出し動作時において、電源部20は、制御部30の制御により、内部電圧として1.5Vの電圧、0.7Vの電圧、及び-4Vの電圧を生成する。
【0027】
AD変換器40は、電源部20によって生成された内部電圧をAD変換する。本実施形態では、AD変換器40は、メモリ部10のデータ消去動作に用いられる電圧(例えば
図2に示す15Vの電圧)及びメモリ部10のデータ書き込み動作に用いられる電圧(例えば
図3に示す11Vの電圧)をAD変換する。本実施形態では、AD変換器40の出力がCPU3に供給される。これにより、CPU3が、メモリ部10に書き込まれているデータに関する異常をAD変換器40の出力に基づいて把握することが可能となる。なお、本実施形態とは異なり、AD変換器40の出力は、不揮発性記憶装置2Aの外部に供給されなくてもよい。
【0028】
制御部30内に設けられる異常検出部31は、メモリ部10に書き込まれているデータに関する異常をAD変換器40の出力に基づき検出する。異常検出部31がメモリ部10に書き込まれているデータに関する異常を検出するので、当該検出結果を用いて適切な処置(本実施形態では内部電圧の補正)を施すことができる。これにより、不揮発性記憶装置2Aの信頼性を高めることができる。なお、本実施形態とは異なり、異常検出部31は、制御部30の外部に設けられてもよい。
【0029】
AD変換器40がメモリ部10のデータ消去動作に用いられる電圧をAD変換するとき、異常検出部31は、データ消去動作時の設定値(例えば
図2に示す15Vに対応するデジタル値)に対するAD変換器40の出力の誤差が所定範囲を超えると(例えばAD変換器40の出力に対応する内部電圧が14.5V以下になると)、データの消去不足が生じ得る状態(異常)を検出する。制御部30は、異常検出部31によってデータの消去不足が生じ得る状態(異常)が検出されると、AD変換器40の出力に基づいて電源部20を制御して上記設定値に対するAD変換器40の出力の誤差に応じてメモリ部10のデータ消去動作に用いられる電圧を補正する。
【0030】
AD変換器40がメモリ部10のデータ書き込み動作に用いられる電圧をAD変換するとき、異常検出部31は、データ書き込み動作時の設定値(例えば
図3に示す11Vに対応するデジタル値)に対するAD変換器40の出力の誤差が所定範囲を超えると(例えばAD変換器40の出力に対応する内部電圧が10.5V以下になると)、データの書き込み不足が生じ得る状態(異常)を検出する。制御部30は、異常検出部31によってデータの書き込み不足が生じ得る状態(異常)が検出されると、AD変換器40の出力に基づいて電源部20を制御して上記設定値に対するAD変換器40の出力の誤差に応じてメモリ部10のデータ書き込み動作に用いられる電圧を補正する。
【0031】
制御部30における電圧の補正手法は特に限定されない。例えば、制御部30が上述した通りデータ消去動作に用いられる電圧及びデータ書き込み動作に用いられる電圧を段階的に高くする機能を有している場合、制御部30が各電圧の最大値に対応させているステップを他のステップに置き換えることで電圧の補正を実現することができる。
【0032】
図5は、不揮発性記憶装置2Aの異常検出に関する動作例を示すフローチャートである。
図5に示すフローチャートは、例えば周期的に開始されてもよく、例えばマイクロコンピュータ1Aが車両に搭載される場合にはイグニッション電源がオフ状態であるときに開始されてもよい。
【0033】
まず始めに、電源部20が、メモリ部10のデータ消去動作に用いられる電圧を生成する(ステップS10)。次に、AD変換器40が、メモリ部10のデータ消去動作に用いられる電圧をAD変換する(ステップS20)。
【0034】
次に、異常検出部31が、AD変換器40の出力に基づき異常の検出を試みる(ステップS30)。
【0035】
異常検出部31によって異常が検出された場合(ステップS30のYES)、制御部30が、設定値に対するAD変換器40の出力の誤差に応じてメモリ部10のデータ消去動作に用いられる電圧の補正量を決定する(ステップS40)。ステップS40の処理が完了すると、ステップS50に移行する。
【0036】
一方、異常検出部31によって異常が検出されなかった場合(ステップS30のNO)、ステップS40の処理を実行することなくステップS50に移行する。
【0037】
ステップS50において、電源部20が、メモリ部10のデータ書き込み動作に用いられる電圧を生成する。次に、AD変換器40が、メモリ部10のデータ書き込み動作に用いられる電圧をAD変換する(ステップS60)。
【0038】
次に、異常検出部31が、AD変換器40の出力に基づき異常の検出を試みる(ステップS70)。
【0039】
異常検出部31によって異常が検出された場合(ステップS70のYES)、制御部30は、設定値に対するAD変換器40の出力の誤差に応じてメモリ部10のデータ書き込み動作に用いられる電圧の補正量を決定する(ステップS80)。ステップS80の処理が完了すると、フロー動作が終了する。
【0040】
一方、異常検出部31によって異常が検出されなかった場合(ステップS70のNO)、ステップS80の処理を実行することなくフロー動作が終了する。
【0041】
<第2実施形態>
図6は、第2実施形態に係る不揮発性記憶装置を備えるマイクロコンピュータの概略構成を示す図である。なお、
図6において
図1と同一の部分には同一の符号を付す。マイクロコンピュータ1Bは、不揮発性記憶装置2Bと、CPU3と、RAM4と、入出力インターフェース5と、を備える。本実施形態においては、第1実施形態と共通する部分の説明を適宜省略し、第1実施形態と異なる部分を主として説明する。
【0042】
不揮発性記憶装置2Bは、メモリ部10と、電源部20と、制御部30と、AD変換器40と、SRAM50と、を備える。
【0043】
本実施形態では、AD変換器40は、メモリ部10のデータ読み出し動作時にメモリセルのゲートに印加される電圧をAD変換する。
【0044】
SRAM50は、第1条件でメモリ部10から読み出したデータを格納する。なお、SRAM10の代わりに、SRAM以外のメモリを用いてもよい。第1条件は、通常のデータ読み出し条件であり、例えば
図4に示すような電圧印加条件である。
【0045】
不揮発性記憶装置2Bの小型化及び低コスト化を図る観点から、SRAM50が格納可能なデータ量は、メモリ部10が記憶可能なデータ量より小さいことが望ましい。SRAM50が格納可能なデータ量をメモリ部10が記憶可能なデータ量より小さくした場合、メモリ部10からのデータ読み出しを複数回に分けて、SRAM50へのデータ格納や後述するデータの比較を複数回に分けて実施することになる。これに対して、SRAM50が格納可能なデータ量をメモリ部10が記憶可能なデータ量と同一にした場合、メモリ部10からのデータ読み出し、SRAM50へのデータ格納、後述するデータの比較がそれぞれ1回で済む。
【0046】
制御部30内に設けられる異常検出部31は、メモリ部10に書き込まれているデータに関する異常をAD変換器40の出力に基づき検出する。異常検出部31がメモリ部10に書き込まれているデータに関する異常を検出するので、当該検出結果を用いて適切な処置(本実施形態ではデータ消失の危険性が高いことを示すフラグの出力)を施すことができる。これにより、不揮発性記憶装置2Bの信頼性を高めることができる。なお、本実施形態とは異なり、異常検出部31は、制御部30の外部に設けられてもよい。
【0047】
異常検出部31は、上記第1条件よりもデータの論理値を判別し難い第2条件(例えばメモリセルのゲートに印加する電圧を上記第1条件より高くした条件)でメモリ部10から読み出したデータとSRAM50に格納されているデータとを比較し、比較結果が不一致になる上記第2条件のうちデータの論理値を最も判別し易い条件におけるAD変換器40の出力が所定範囲を超えると(例えばAD変換器40の出力に対応する内部電圧が-4Vより大きく-3.5V以下になると)、データ消失の危険性が高い状態(異常)を検出する。
【0048】
制御部30は、比較結果が不一致になる上記第2条件のうちデータの論理値を最も判別し易い条件におけるAD変換器40の出力をメモリ部10に記憶させる。これにより、異常検出部31がデータ消失の危険性が高い状態(異常)を検出するまでにデータ消失の危険性が上昇する推移を解析することや検証することが可能になる。
【0049】
制御部30内に設けられるフラグ出力部32は、異常検出部31によってデータ消失の危険性が高い状態(異常)が検出されると、所定のフラグ(データ消失の危険性が高いことを示すフラグ)を不揮発性記憶装置2Bの外部(本実施形態ではCPU3)に出力する。これにより、マイクロコンピュータ1Bが正常に動作しなくなる前にマイクロコンピュータ1Bの動作を停止させることやユーザに異常を報知することなどが可能になる。なお、本実施形態とは異なり、フラグ出力部32は、制御部30の外部に設けられてもよい。
【0050】
図7は、不揮発性記憶装置2Bの異常検出に関する動作例を示すフローチャートである。
図7に示すフローチャートは、例えば周期的に開始されてもよく、例えばマイクロコンピュータ1Bが車両に搭載される場合にはイグニッション電源がオフ状態であるときに開始されてもよい。
【0051】
まず始めに、SRAM50が、上記第1条件でメモリ部10から読み出したデータを格納する(ステップS110)。次に、制御部30が、メモリ部10のデータ読み出し動作時にメモリセルのゲートに印加される電圧を高くする(ステップS120)。したがって、ステップS120の処理が実行された後は、上記第2条件でメモリ部10からデータが読み出される。なお、ステップS120の処理回数が増加するほど、メモリ部10のデータ読み出し動作時にメモリセルのゲートに印加される電圧は高くなる。
【0052】
次に、異常検出部31が、上記第2条件でメモリ部10から読み出したデータとSRAM50に格納されているデータとを比較し、比較結果が不一致になるか否かを判定する(ステップS130)。
【0053】
比較結果が一致していれば(ステップS130のNO)、ステップS120に戻る。
【0054】
一方、比較結果が不一致であれば(ステップS130のYES)、AD変換器40が、メモリ部10のデータ読み出し動作時にメモリセルのゲートに印加される電圧をAD変換する(ステップS140)。次に、異常検出部31が、AD変換器40の出力に基づき異常の検出を試みる(ステップS150)。
【0055】
異常検出部31によって異常が検出された場合(ステップS150のYES)、フラグ出力部32は、所定のフラグを出力する(ステップS160)。ステップS160の処理が完了すると、フロー動作が終了する。
【0056】
一方、異常検出部31によって異常が検出されなかった場合(ステップS150のNO)、ステップS160の処理が実行されることなくフロー動作が終了する。
【0057】
なお、
図7に示すフローチャートでは、比較結果が不一致になるまで、メモリ部10のデータ読み出し動作時にメモリセルのゲートに印加される電圧が際限なく高くなり得る。このような動作とは異なり、メモリ部10のデータ読み出し動作時にメモリセルのゲートに印加される電圧に上限を設け、メモリ部10のデータ読み出し動作時にメモリセルのゲートに印加される電圧が上限に達しても比較結果が一致していれば、フラグ出力部32が所定のフラグを出力することなくフロー動作が終了するようにしてもよい。
【0058】
<第3実施形態>
図8は、第3実施形態に係る不揮発性記憶装置を備えるマイクロコンピュータの概略構成を示す図である。なお、
図8において
図6と同一の部分には同一の符号を付す。マイクロコンピュータ1Cは、不揮発性記憶装置2Cと、CPU3と、RAM4と、入出力インターフェース5と、を備える。本実施形態においては、第2実施形態と共通する部分の説明を適宜省略し、第2実施形態と異なる部分を主として説明する。
【0059】
不揮発性記憶装置2Cは、メモリ部10と、電源部20と、制御部30と、AD変換器40と、SRAM50と、を備える。なお、不揮発性記憶装置2Cは、不揮発性記憶装置2Bと異なり、フラグ出力部32を備えていない。
【0060】
制御部30は、異常検出部31によってデータ消失の危険性が高い状態(異常)が検出されると、SRAM50に格納されているデータをメモリ部10の当該データが書き込まれている領域に記憶させる。具体的には、異常検出部31によってデータ消失の危険性が高い状態(異常)が検出されると、メモリ部10は、制御部30の制御に基づき、SRAM50に格納されているデータが書き込まれているメモリ部10の領域のデータ消去を行った後、SRAM50に格納されているデータがかつて書き込まれていたメモリ部10の領域にSRAM50に格納されているデータを再度書き込む。これにより、データ消失の危険性が高い状態(異常)をデータ消失の危険性が低い状態(正常)に変化させることができる。
【0061】
図9は、不揮発性記憶装置2Cの異常検出に関する動作例を示すフローチャートである。
図9に示すフローチャートは、例えば周期的に開始されてもよく、例えばマイクロコンピュータ1Cが車両に搭載される場合にはイグニッション電源がオフ状態であるときに開始されてもよい。
【0062】
図9に示すフローチャートは、
図7に示すフローチャートにおいてステップS160をステップS170及びS180に置換したものと同じである。そのため、ステップS110~S150に関する説明は省略する。
【0063】
ステップS170において、メモリ部10は、制御部30の制御に基づき、SRAM50に格納されているデータが書き込まれているメモリ部10の領域のデータ消去を行う。
【0064】
ステップS170に続くステップS180においてメモリ部10は、制御部30の制御に基づき、SRAM50に格納されているデータがかつて書き込まれていたメモリ部10の領域にSRAM50に格納されているデータを再度書き込む。
【0065】
<用途>
上述したマイクロコンピュータ1A~1Cは、例えば
図10に示す車両X1に搭載される各種ECUの構成部品として用いられる。なお、上述した実施形態では、CPU3が不揮発性記憶装置2A~2Cによって記憶されているデータを利用して動作したが、不揮発性記憶装置2A~2Cによって記憶されているデータを利用して動作する半導体集積回路装置はCPUに限定されない。すなわち、不揮発性記憶装置2A~2Cは、マイクロコンピュータ以外の装置で用いられてもよい。
【0066】
<留意点>
本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0067】
例えば上述した第1実施形態と第2実施形態とは組み合わせて実施することができる。
【0068】
例えば上述した第1実施形態と第3実施形態とは組み合わせて実施することができる。
【0069】
例えば上述した第1実施形態において、AD変換器40がメモリ部10のデータ読み出し動作に用いられる電圧もAD変換するようにし、異常検出部31が、データの読み出しに関する異常も検出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1A、1B、1C マイクロコンピュータ
2A、2B、1C 不揮発性記憶装置
10 メモリ部
11 メモリセルアレイ
12 Xデコーダ
13 Yデコーダ
14 センスアンプ
20 電源部
30 制御部
31 異常検出部
32 フラグ出力部
40 AD変換器
X1 車両