(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】航空エンジンのファンアセンブリのためのモデリング方法
(51)【国際特許分類】
F04D 29/38 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
F04D29/38 G
(21)【出願番号】P 2021537167
(86)(22)【出願日】2019-07-30
(86)【国際出願番号】 CN2019098268
(87)【国際公開番号】W WO2020134066
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】201811586245.1
(32)【優先日】2018-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519383452
【氏名又は名称】中国航発商用航空発動機有限責任公司
【氏名又は名称原語表記】AECC COMMERCIAL AIRCRAFT ENGINE CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.3998, South Lianhua Road, Minhang District, Shanghai 200241, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楊 小 賀
(72)【発明者】
【氏名】裴 小 萌
(72)【発明者】
【氏名】劉 世 文
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-505399(JP,A)
【文献】特表2016-524260(JP,A)
【文献】特開2001-271792(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0237837(US,A1)
【文献】特開2007-247542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/32-29/38
F01D 5/00- 5/34
G06F 30/15
G06F 30/28
G06T 17/00-17/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空エンジンのファンアセンブリのためのモデリング方法であって、前記ファンアセンブリは、ハブと、ケースと、前記ハブと前記ケースとの間に配置される複数のブレードとを含み、前記モデリング方法は、カスケードチャネルにおいて前記ハブの非軸対称端壁曲面を構築することを含み、前記カスケードチャネルにおいて前記ハブの前記非軸対称端壁曲面を構築することは、
ブレード端部エリアの二重流路のための流路設計方法を使用して、初期軸対称曲面半径と、非軸対称曲面の凹曲面最低点半径とを決定するステップと、
前記初期軸対称曲面半径および前記凹曲面最低点半径に従って、前記カスケードチャネルにおいて前記ハブの前記非軸対称端壁曲面を構築するステップとを含
み、
前記初期軸対称曲面半径および前記凹曲面最低点半径に従って、前記カスケードチャネルにおいて前記ハブの前記非軸対称端壁曲面を構築することは、マルチセグメント凹曲線モデリング方法を使用することにより、前記カスケードチャネルにおいて前記非軸対称端壁曲面を構築することを含み、前記マルチセグメント凹曲線モデリング方法は、少なくとも3つの制御点を使用することによりマルチセグメント凹曲線を構築することを含み、
流れチャネルが、2つの隣接するブレードの圧力面と吸引面との間に形成され、前記マルチセグメント凹曲線モデリング方法は、
同じ軸方向位置における前記ブレードの前記圧力面の円周角および前記吸引面の円周角を計算することと、
第1の曲線セグメント、第2の曲線セグメント、および第3の曲線セグメントを、それぞれ、前記吸引面から前記圧力面までの角度範囲内で3つの角度サブインターバルで構築することとを含み、前記第1の曲線セグメントの2つの端部半径は、それぞれ前記初期軸対称曲面半径および前記凹曲面最低点半径であり、前記第2の曲線セグメントは、等半径ゾーンであり、その半径は、前記凹曲面最低点半径であり、前記第3の曲線セグメントの2つの端部半径は、それぞれ前記凹曲面最低点半径および前記初期軸対称曲面半径であり、
前記マルチセグメント凹曲線モデリング方法はさらに、
角度および半径の式を使用することによって、前記第1の曲線セグメント、前記第2の曲線セグメントおよび前記第3の曲線セグメントをそれぞれ構築することを含み、
前記第1の曲線セグメントを構築するための前記角度および半径の式は、
【数1】
であり、rは前記第1の曲線セグメントの前記制御点の半径であり、θは前記第1の曲線セグメントの前記制御点の円周角であり、r
A
は前記初期軸対称曲面半径であり、r
C
は前記非軸対称曲面の前記凹曲面最低点半径であり、θ
P
は前記ブレードの前記圧力面の円周角であり、θ
1
は前記第1の曲線セグメントの前記2つの端部間の円周角差であり、
前記第2の曲線セグメントを構築するための前記角度および半径の式は、
【数2】
であり、rは前記第2の曲線セグメントの前記制御点の半径であり、r
C
は前記非軸対称曲面の前記凹曲面最低点半径であり、
前記第3の曲線セグメントを構築するための前記角度および半径の式は、
【数3】
であり、rは前記第3の曲線セグメントの前記制御点の半径であり、θは前記第3の曲線セグメントの前記制御点の円周角であり、r
A
は前記初期軸対称曲面半径であり、r
C
は前記非軸対称曲面の前記凹曲面最低点半径であり、θ
S
は前記ブレードの前記吸引面の円周角であり、θ
3
は前記第3の曲線セグメントの前記2つの端部間の円周角差であり、Ap、Bp、Cp、As、BsおよびCsは、設定値である、航空エンジンのファンアセンブリのためのモデリング方法。
【請求項2】
前記ブレード端部エリアの二重流路のための前記流路設計方法は、
ブレード前縁とブレード後縁との間の初期軸対称通常流路を決定し、かつ、前記初期軸対称通常流路に従って前記初期軸対称曲面半径を決定することと、
前記ブレード後縁の根元部から軸方向位置における前記ブレードの根元部の5%以下の距離範囲において、前記非軸対称曲面の凹曲面流路を前記初期軸対称通常流路に一致させ、かつ、前記凹曲面流路に従って前記凹曲面最低点半径を決定することとを含む、請求項1に記載の航空エンジンのファンアセンブリのためのモデリング方法。
【請求項3】
複数の軸方向位置において凹曲線が構築され、前記軸方向位置における前記凹曲線は、前記カスケードチャネルにおいて前記ハブの前記非軸対称端壁曲面を形成するように接続される、請求項
1に記載の航空エンジンのファンアセンブリのためのモデリング方法。
【請求項4】
前記ファンアセンブリは、スピナーをさらに含み、前記モデリング方法は、前記カスケードチャネルにおいて前記ハブの前記非軸対称端壁曲面を構築した後に、スピナー方向変更円錐曲面を構築することをさらに含む、請求項1~
3のいずれか1項に記載の航空エンジンのファンアセンブリのためのモデリング方法。
【請求項5】
前記スピナー方向変更円錐曲面を構築することは、
前記カスケードチャネルにおいて前記ハブの前記非軸対称端壁曲面の前縁点の円周方向位置を計算することと、
前記前縁点から、前記スピナー方向変更円錐曲面との前記カスケードチャネルにおける前記ハブの前記非軸対称端壁曲面の接続点まで前方へ延在する軸方向において、前記非軸対称端壁曲面とスピナー経線流れ面との間の半径差を前記接続点においてゼロになるように徐々に低減し、かつ、速度三角形の式を用いることにより前記接続点の円周方向位置を
計算することと、
前記スピナー方向変更円錐曲面を得るために、前記マルチセグメント凹曲線
モデリング方法を使用することにより、前記ハブの前記非軸対称端壁曲面と軸対称初期スピナー曲面との間の遷移を決定することとを含む、請求項
4に記載の航空エンジンのファンアセンブリのためのモデリング方法。
【請求項6】
統合された曲面を形成するために、前記カスケードチャネルにおける前記非軸対称端壁曲面と、前記スピナー方向変更円錐曲面と、前記ブレードとを接続することをさらに含む、請求項
5に記載の航空エンジンのファンアセンブリのためのモデリング方法。
【請求項7】
前記統合された曲面が得られた後、流れ場が健全であるか否かの判定を行うために数値シミュレーション解析が行われる、請求項
6に記載の航空エンジンのファンアセンブリのためのモデリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、「ファンアセンブリのためのモデリング方法」という名称を有する、2018年12月25日に出願された中国特許出願第201811586245.1に基づくとともにその優先権を主張しており、その開示の全文が本明細書において援用される。
【0002】
開示の分野
本開示は、航空エンジン設計の技術分野に関し、特に、ファンアセンブリのためのモデリング方法に関する。
【背景技術】
【0003】
開示の背景
ファンは、航空エンジンのコアコンポーネントの1つであり、ガスの合計温度および圧力を増加するために、空気を圧縮するように機能する。ファンアセンブリは、ハブと、ケースと、ブレードとを含み、ハブは、部分的に空気力学的な平滑面を規定し、ケースは、部分的に当該空気力学的な平滑面を規定する。ブレードは円周方向に間隔をあけて配置されており、ハブとケースとの周りに位置決めされる。一般に、ブレードはハブ上に均一に配置され、ハブおよびケースは、軸方向に対称的な旋回円周面を含み、ブレードは、空気圧縮を達成するように回転する。ハブの前端にはスピナーが接続されており、スピナーはファンの中に気流をガイドする。
【0004】
ファン効率は、エンジンの特定の燃料消費に重要な影響を有する。経済性を向上するよう航空エンジンの特定の燃料消費を低減するために、ファンのバイパス比が日々増加され、ファンの圧力比が低減され、ブレード先端部接線速度(tangent velocity)が低減され、ファンのハブ比(ファンの先端部半径に対する根元部半径の比)が徐々に減少される。典型的な民間航空エンジンのハブ比は0.3未満に低減されている。ハブ比の減少によりファンのブレード根元部接線速度が低減されるので、ファンの根元部が機能することを保証するために、ファン根元部のキャンバ角が非常に増加される。典型的な航空エンジンのファンの出口キャンバ角は、20°まで(軸方向にわたって)傾斜している。根元部のキャンバ角が大きくなると、ハブに近い端部エリアにおける流れ場が特に過酷になり、通常の軸対称端壁の場合において深刻な二次的な流れにつながり、損失が増加し、ストールの危険性が増加し、これにより、ファンの効率およびストールマージンが低減される。現在、ファンのために、スキュー、スイープおよびリーンといった3次元ブレードモデリング技術が広く用いられている。しかしながら、複雑な力に耐える根元部上において応力が最も大きいので、ファンブレードの根元部におけるこれらの技術の適用は、機械的な問題によって制限される。端壁モデリングは、端部エリアの二次的な流れに対する良好な制御を達成し、ロータの機械的性能に影響を与えない。したがって、端壁モデリングは、ファンの端部エリアの流れを制御する重要な対抗策になっている。他方、スピナーがファンブレードの前に接続されているので、ファン根元部設計における端壁モデリングに加えて、スピナーモデリングとの組み合わせも考慮する必要がある。
【0005】
典型的な非軸対称端壁モデリング方法は、数値最適化方法である。当該最適化設計方法は、端壁の幾何学的曲面の形状に基づいており、端壁の曲面上の制御点をパラメータにより調整し、最適化のために解かれる数値シミュレーション式にネストされる。この方法は、数学的観点から流れ場に適合する最適な端壁曲面を求め得るが、曲面の最適化および解法時間が長く、生成される曲面がしばしば複雑であり、エンジニアリング用途には貢献しないという欠点がある。さらに、既存の端壁モデリング方法では、端壁自体の形状のみが考慮されており、端壁とブレードとスピナーとの組み合わされた設計が考慮されておらず、気流が平滑でなくなりやすく、その結果、効率およびストールマージンが低減される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の概要
本開示の目的は、端壁損失を低減するためのファンアセンブリのためのモデリング方法を提供することである。
【0007】
本開示は、ファンアセンブリのためのモデリング方法を提供し、ファンアセンブリは、ハブと、ケースと、ハブとケースとの間に配置される複数のブレードとを含み、モデリング方法は、カスケードチャネルにおいて非軸対称端壁曲面を構築することを含み、カスケードチャネルにおいて非軸対称端壁曲面を構築することは、
ブレード端部エリアの二重流路のための流路設計方法を使用して、初期軸対称曲面半径と、非軸対称曲面の凹曲面最低点半径とを決定するステップと、
初期軸対称曲面半径および凹曲面最低点半径に従って、カスケードチャネルにおいて非軸対称端壁曲面を構築するステップとを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、ブレード端部エリアの二重流路のための流路設計方法は、
ブレード前縁とブレード後縁との間の初期軸対称通常流路を決定し、かつ、初期軸対称通常流路に従って初期軸対称曲面半径を決定することと、
ブレード後縁の根元部から軸方向位置におけるブレードの根元部の5%以下の距離範囲において、非軸対称曲面の凹曲面流路を初期軸対称通常流路に一致させ、かつ、凹曲面流路に従って凹曲面最低点半径を決定することとを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、初期軸対称曲面半径および凹曲面最低点半径に従って、カスケードチャネルにおいて非軸対称端壁曲面を構築することは、マルチセグメント凹曲線モデリング方法を使用することにより、カスケードチャネルにおいて非軸対称端壁曲面を構築することを含み、マルチセグメント凹曲線モデリング方法は、少なくとも3つの制御点を使用することによりマルチセグメント凹曲線を構築することを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、流れチャネルが、2つの隣接するブレードの圧力面と吸引面との間に形成され、マルチセグメント凹端壁モデリング方法は、
同じ軸方向位置におけるブレードの圧力面の円周角および吸引面の円周角を計算することと、
第1の曲線セグメント、第2の曲線セグメント、および第3の曲線セグメントを、それぞれ、吸引面から圧力面までの角度範囲内で3つの角度サブインターバルで構築することとを含み、第1の曲線セグメントの2つの端部半径は、それぞれ初期軸対称曲面半径および凹曲面最低点半径であり、第2の曲線セグメントは、等半径ゾーンであり、その半径は、凹曲面最低点半径であり、第3の曲線セグメントの2つの端部半径は、それぞれ凹曲面最低点半径および初期軸対称曲面半径であり、マルチセグメント凹端壁モデリング方法はさらに、
角度および半径制御の式を使用することによって、第1の曲線セグメント、第2の曲線セグメントおよび第3の曲線セグメントをそれぞれ構築することを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、第1の曲線セグメントを構築するための角度および半径制御の式は、
【0012】
【0013】
であり、
第2の曲線セグメントを構築するための角度および半径制御の式は、
【0014】
【0015】
であり、
第3の曲線セグメントを構築するための角度および半径制御の式は、
【0016】
【0017】
であり、Ap、Bp、Cp、As、BsおよびCsは、設定値である。
いくつかの実施形態では、複数の軸方向位置において凹曲線が構築され、軸方向位置における凹曲線は、カスケードチャネルにおいて非軸対称端壁曲面を形成するように接続される。
【0018】
いくつかの実施形態では、ファンアセンブリは、スピナーをさらに含み、モデリング方法は、カスケードチャネルにおいて非軸対称端壁曲面を構築した後に、スピナー方向変更円錐曲面を構築することをさらに含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、スピナー方向変更円錐曲面を構築することは、
カスケードチャネルにおいて各非軸対称端壁曲面の前縁点の円周方向位置を計算することと、
前縁点から、スピナー方向変更円錐曲面との接続点まで前方へ延在する軸方向において、非軸対称端壁曲面とスピナー経線流れ面との間の半径差を接続点においてゼロになるように徐々に低減し、かつ、速度三角形の式を用いることにより前縁点の円周方向位置を計算することと、
スピナー方向変更円錐曲面を得るために、非軸対称端壁曲面と軸対称初期スピナー曲面との間の遷移を決定することとを含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、モデリング方法は、統合された曲面を形成するために、カスケードチャネルにおける各非軸対称端壁曲面と、スピナー方向変更円錐曲面と、ブレードとを接続することをさらに含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、統合された曲面が得られた後、流れ場が健全であるか否かの判定を行うために数値シミュレーション解析が行われる。
【0022】
本開示によって提供される技術的ソリューションに基づいて、モデリング方法は、カスケードチャネルにおいて非軸対称端壁曲面を構築することを含む。カスケードチャネルにおいて非軸対称端壁曲面を構築することは、ブレード端部エリアの二重流路のための流路設計方法を使用して、初期軸対称曲面半径と、非軸対称曲面の凹曲面最低点半径とを決定するステップと、初期軸対称曲面半径および凹曲面最低点半径に従って、カスケードチャネルにおいて非軸対称端壁曲面を構築するステップとを含む。本開示のモデリング方法は、非軸対称曲面による流れ方向の制御を実現するために、ブレード端部エリアの二重流路のための流路設計方法を使用して、カスケードチャネルにおいて非軸対称端壁曲面を構築し、これにより、端壁損失が低減される。
【0023】
本開示の他の特徴および利点は、添付の図面を参照して本開示の例示的な実施形態の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0024】
ここで記載される図面は、本開示のさらなる理解を提供するために使用され、本出願の部分を形成する。本開示の例示的な実施形態およびその記載は、本開示を過度に限定するのではなく、説明のために使用される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2】本開示の実施形態におけるファンアセンブリのためのモデリング方法のステップの概略図である。
【
図3】本開示の実施形態のモデリング方法における二重流路設計方法の原理図である。
【
図4】本開示の実施形態のモデリング方法における3セグメント凹曲線を構築する概略図である。
【
図5】本開示の実施形態における凹曲面の構造図である。
【
図7】本開示の実施形態におけるスピナー方向変更円錐および凹曲面の統合された形状図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
実施形態の詳細な説明
以下、実施形態における技術的ソリューションが、本開示の実施形態において添付の図面と併せて明確かつ完全に記載される。記載される実施形態は、本開示の実施形態のすべてではなく、単に実施形態の部分であることは明らかである。少なくとも1つの例示的な実施形態の以下の記載は、実際には単に例示であり、本開示およびその適用または使用に対するいかなる限定としても機能しない。本開示の実施形態に基づいて、当業者によって創作的作業を伴わずに得られるすべての他の実施形態は、本開示の保護範囲に含まれるべきである。
【0027】
具体的に別の態様で言及されなければ、これらの実施形態に記載される構成要素およびステップの相対的な配置、数式、ならびに、数値は、本開示の範囲を限定しない。さらに、説明の容易さのため、図面に示されるさまざまな部分のサイズは実際の比例関係に従って描かれていないということが理解されるべきである。当業者に既知である技術、方法、および、デバイスは、詳細には論じられない場合があるが、適切な場合、当該技術、方法、および、デバイスは、許可される明細書の部分と見なされるべきである。ここで示されるとともに論じられるすべての例において、任意の具体的な値は、限定としてではなく、単に例示として解釈されるべきである。したがって、例示的な実施形態の他の例は、異なる値を有し得る。なお、以下の図において、同様の参照番号および符号は同様の項目を示し、そのため、ある項目が1つの図において定義されると、以降の図においてさらに論じられる必要はない。
【0028】
説明の容易さのために、「~の上方」、「~の上」、「~の上面上」および「上部」といった空間的に相対的な用語は、ここでは、図に示されるように、1つのデバイスまたは特徴と、他のデバイスまたは特徴との間の空間的な位置関係を記載するために使用され得る。空間的に相対的な用語は、図面に記載されるデバイスの向き以外の使用または動作における異なる向きを包含することを意図していることが理解されるべきである。たとえば、図中のデバイスが反転される場合、「他のデバイスまたは構造の上方」または「他のデバイスまたは構造の上」として記載されるデバイスは、「他のデバイスまたは構造の下方」または「他のデバイスまたは構造の下」に位置決めされることになる。したがって、「~の上方」という例示的な用語は、「~の上方」と「~の下方」との両方の向きを含み得る。デバイスはさらに、他の異なる態様で位置決めされてもよく(90度または他の向きで回転されてもよく)、ここで使用される相対的な空間的な記載は、それに従って説明される。
【0029】
図1は、ファンアセンブリの構造図を示す。ファンアセンブリは、ケース1と、ブレード2と、ハブ3と、スピナー4とを含む。スピナー4およびハブ3は、平滑な流路を形成するように当接される。ケース1、スピナー4およびハブ3は、気流の流れ境界を限定する。ブレード2、ハブ3およびスピナー4は、軸Xの周りを一緒に回転し、ブレード2は流入する流れを圧縮する。
【0030】
本開示の実施形態のファンアセンブリのためのモデリング方法は、カスケードチャネルにおいて非軸対称端壁曲面を構築することを含む。カスケードチャネルにおいて非軸対称端壁曲面を構築することは、
ブレード端部エリアの二重流路のための流路設計方法を使用して、初期軸対称曲面半径と、非軸対称曲面の凹曲面最低点半径とを決定するステップと、
初期軸対称曲面半径および凹曲面最低点半径に従って、カスケードチャネルにおいて非軸対称端壁曲面を構築するステップとを含む。
【0031】
本開示の実施形態のモデリング方法は、非軸対称曲面による流れ方向の制御を実現するために、ブレード端部エリアの二重流路のための流路設計方法を使用して、カスケードチャネルにおいて非軸対称端壁曲面を構築し、これにより、端壁損失が低減される。
【0032】
具体的には、
図3に示すように、本実施形態のブレード端部エリアの二重流路のための流路設計方法は、
ブレード前縁Bとブレード後縁Cとの間の初期軸対称通常流路P1を決定し、かつ、初期軸対称通常流路P1に従って初期軸対称曲面半径r
A、すなわち初期軸対称通常流路P1上の任意の点から軸Xまでの距離、を決定することと、
凹曲面流路を得るために、ブレード後縁Cの根元部から軸方向位置におけるブレードの根元部の5%以下の距離範囲において、非軸対称曲面の凹曲面流路P2を初期軸対称通常流路P1に一致させ、かつ、凹曲面流路に従って凹曲面最低点半径を決定することとを含む。
【0033】
具体的には、本実施形態では、
図3に示すように、初期軸対称通常流路P1は、本実施形態における点Cでの凹曲面流路P2と一致する。
【0034】
本実施形態では、
図4および
図5に示されるように、初期軸対称曲面半径r
Aおよび凹曲面最低点半径r
Cに従ってカスケードチャネルにおいて非軸対称端壁曲面を構築することは、マルチセグメント凹曲面モデリング方法を使用することにより、カスケードチャネルにおいて非軸対称端壁曲面を構築することを含み、マルチセグメント凹曲線モデリング方法は、少なくとも3つの制御点を使用することによりマルチセグメント凹曲線を構築することを含む。上記マルチセグメント凹曲面モデリング方法を使用することによりカスケードチャネルにおいて非軸対称端壁曲面を構築することによって、凹曲面のパラメータによる形状決めが達成可能であり、これは、設計者が、カスケードチャネルにおいて非軸対称曲面の形状を調整し、ブレード根元部と凹曲面との一体的な形状決めを実現することが簡便になる。さらに、上述の方法は、エンジニアリングにおいて適用および実現が容易である。
【0035】
具体的には、
図4および
図5に示されるように、流れチャネルが、2つの隣接するブレードの圧力面PSと吸引面SSとの間に形成され、マルチセグメント凹端壁モデリング方法は、
同じ軸方向位置Dにおけるブレードの圧力面PSの円周角θ
pおよび吸引面SSの円周角θ
sを計算することと、
第1の曲線セグメント、第2の曲線セグメント、および第3の曲線セグメントを、それぞれ、圧力面PSから吸引面SSまでの角度範囲内で3つの角度サブインターバルで構築することと、凹曲線Qを形成するために第1の曲線セグメント、第2の曲線セグメント、および第3の曲線セグメントを連続的に接続することとを含み、第1の曲線セグメントの2つの端部半径は、それぞれ初期軸対称曲線半径r
Aおよび凹曲線最低点半径r
Cであり、第2の曲線セグメントは、等半径ゾーンであり、その半径は凹曲面最低点半径r
Cであり、第3の曲線セグメントの2つの端部半径は、それぞれ凹曲面最低点半径r
Cおよび初期軸対称曲面半径r
Aであり、マルチセグメント凹端壁モデリング方法はさらに、
角度および半径の式を使用することによって、第1の曲線セグメント、第2の曲線セグメントおよび第3の曲線セグメントをそれぞれ構築することを含む。
【0036】
具体的には、本実施形態における第1の曲線セグメントのための角度および半径の式は、
【0037】
【0038】
であり、
第2の曲線セグメントのための角度および半径の式は、
【0039】
【0040】
であり、
第3の曲線セグメントのための角度および半径の式は、
【0041】
【0042】
であり、
Ap、Bp、Cp、As、BsおよびCsは、設計者によって与えられるとともに調整される角度半径遷移規則によって決定され、典型的な角度半径遷移規則は
図6に示される。
【0043】
他の実施形態では、制御点は必要に応じて増加または減少され得るが、少なくとも3つの制御点が必要とされる。同じ無次元遷移規則が翼弦方向断面に沿って使用されるので、翼弦方向の遷移の平滑性が保証され得、これにより曲面の平滑性が保証され得る。
【0044】
図5に示されるように、複数の軸方向位置において凹曲線Qが構築され、軸方向位置における凹曲線Qは、カスケードチャネルにおいて、凹端壁曲面、すなわち、非軸対称端壁曲面Fを形成するように接続される。
【0045】
図1に示されるように、本実施形態のファンアセンブリは、スピナー4をさらに含む。モデリング方法は、カスケードチャネルにおいて非軸対称端壁曲面を構築した後に、スピナー方向変更円錐曲面を構築することをさらに含む。
【0046】
図7に示されるように、本実施形態においてスピナー方向変更円錐曲面を構築することは、
カスケードチャネ
ルにおいて非軸対称端壁曲面の前縁点Bの円周方向位置
θ
B
を計算することと、
前縁点Bから、スピナー方向変更円錐曲面との接続点Aまで前方へ延在する軸方向において、非軸対称端壁曲面とスピナー経線流れ面との間の半径差を接続点Aにおいてゼロになるように徐々に低減し、かつ、速度三角形式を用いることにより接続点Aの円周方向位置θ
Aを計算し、点Bの円周方向位置θ
Bに基づいて、流体の相対的な流れ方向に沿って角度Δθを回転することとを含み、
θ
A=θ
B+Δ
θであり、さらに、
接続点Aおよび前縁点Bの円周方向位置を決定した後、方向変更円錐がファン根元部の前縁から前縁の金属角度方向に沿った交点まで徐々に前方へ延在するように、方向変更円錐の円周方向の角度の変動を制御するよう軸方向に沿って制御点を設定することと、同様に、スピナー方向変更円錐曲面Hを得るために、非軸対称端壁曲面と軸対称初期スピナー曲面との間の遷移を決定することとを含む。本実施形態では、スピナー方向変更円錐曲面Hは、スピナーと凹曲線端壁とが平滑に当接するように構築され、これにより、気流が端壁にガイドされる。
【0047】
カスケードチャネルにおける各軸対称端壁曲面Fおよび上記スピナー方向変更円錐曲面Hを構築した後、本実施形態のモデリング方法は、統合された曲面を形成するために、カスケードチャネルにおける各非軸対称端壁曲面Fと、スピナー方向変更円錐曲面Hと、ブレードとを接続することをさらに含む。本実施形態では、端壁、ブレード端部エリアおよびスピナーが一体的に形状決めされ、カスケードチャネルにおける非軸対称端壁とブレードとスピナーとがを統合された曲線形状決め設計が達成されるとともに、気流の流れの平滑性がさらに向上され、これにより、効率およびストールマージンが向上する。
【0048】
図2に示されるように、統合された曲面が得られた後、流れ場が健全であるか否かの判定を行うために数値シミュレーション解析が行われる。流れ場が健全である場合、上述の曲線が構築され、流れ場が健全でない場合、健全な流れ場の目標が達成されるまで、再び上記ステップの方法を使用することにより曲面の形状が調整される。
【0049】
最後に、上記の実施形態は、本開示の技術的ソリューションを限定するためではなく、説明するためにのみ使用されることが留意されるべきである。本開示は、好ましい実施形態を参照して詳細に記載されているが、当業者は、それでも、本開示における特定の実現例に修正を行うことが可能であるか、または、その技術的特徴の部分に対して均等な置換を行うことが可能であることを理解すべきであり、このような修正および均等な置換は、本開示の技術的ソリューションの原理から逸脱しない限り、本開示における保護を求める技術的ソリューションに包含されるべきである。