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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】照明装置および照明方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 47/11 20200101AFI20240118BHJP
   H05B 47/165 20200101ALI20240118BHJP
【FI】
H05B47/11
H05B47/165
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021554935
(86)(22)【出願日】2020-11-02
(86)【国際出願番号】 JP2020041023
(87)【国際公開番号】W WO2021090797
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2023-02-06
(31)【優先権主張番号】P 2019201217
(32)【優先日】2019-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木暮 靖男
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-184560(JP,A)
【文献】特開2016-080753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 47/11
H05B 47/165
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内に設けられた評価面と、
第1評価光および第2評価光を前記評価面に射出可能な制御光源と、
前記評価面上又は前記評価面の外縁部に設けられたセンサ部であって、前記評価面における環境光の強度および前記第1評価光の強度を感知可能なセンサ部と、
前記センサ部で感知された光の強度に基づいて、前記第1評価光の強度から前記環境光の強度を減算した強度を算出し、かかる強度を有する前記第2評価光を前記制御光源から前記評価面に射出させる制御部と、
を備える照明装置。
【請求項2】
前記センサ部は、分光光度計であり、
前記制御部は、前記センサ部で得られた前記環境光と前記第1評価光とを足し合わせた光の各波長帯に対応する複数の強度データと、予め記憶している前記第1評価光の各波長帯に対応する複数の強度データと、に基づき、前記環境光の各波長帯に対応する複数の強度データを算出し、前記第1評価光の各波長帯に対応する複数の強度データから前記環境光の各波長帯に対応する複数の強度データを減算したものを、前記第2評価光の各波長帯に対応する複数の強度データとして設定する機能を有する請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記センサ部は、照度計であり、
前記制御部は、
前記センサ部で得られた照度から前記第1評価光の各波長帯に対応する複数の強度データを積分した積分値を減算することで、前記環境光の照度を算出し、
前記環境光の照度から前記環境光の各波長帯に対応する模擬的な複数の強度データを生成し、
前記第1評価光の各波長帯に対応する複数の強度データから、前記環境光の各波長帯に対応する前記模擬的な複数の強度データを減算したものを、前記第2評価光の各波長帯に対応する複数の強度データとして設定する機能を有する請求項1に記載の照明装置。
【請求項4】
前記センサ部は、分光光度計であり、
前記制御部は、予め記憶している前記第1評価光の各波長帯に対応する複数の強度データから、前記センサ部で得られた前記環境光の各波長帯に対応する複数の強度データを減算したものを、前記第2評価光の各波長帯に対応する複数の強度データとして設定する請求項1に記載の照明装置。
【請求項5】
前記センサ部は、照度計であり、
前記制御部は、
前記センサ部で得られた照度から前記環境光の各波長帯に対応する模擬的な複数の強度データを生成し、
前記第1評価光の各波長帯に対応する複数の強度データから、前記環境光の各波長帯に対応する前記模擬的な複数の強度データを減算したものを、前記第2評価光の各波長帯に対応する複数の強度データとして設定する請求項1に記載の照明装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記環境光の各波長帯に対応する複数の強度データを光源種別ごとに複数記憶し、
前記制御部は、前記環境光の前記光源種別をユーザに選択させる機能を有する請求項3又は請求項5に記載の照明装置。
【請求項7】
前記センサ部は、前記評価面に対して着脱可能である請求項1~6のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項8】
室内に設けられた評価面と、
第1評価光および第2評価光を前記評価面に射出可能な制御光源と、
前記評価面における環境光の強度および前記第1評価光の強度を感知可能なセンサ部と、
前記センサ部で感知された光の強度に基づいて、前記第1評価光の強度から前記環境光の強度を減算した強度を算出し、かかる強度を有する前記第2評価光を前記制御光源から前記評価面に射出させる制御部と、
を備え、
前記評価面の少なくとも一部は、透光性を有し、
前記センサ部は、前記制御光源と前記評価面とを結んだ線上であって、前記制御光源から見て前記評価面よりも遠い位置に設けられる照明装置
【請求項9】
環境光が照射されている評価面に対して制御光源から第1評価光を射出し、
前記評価面における前記環境光の強度および前記第1評価光の強度を、前記評価面上又は前記評価面の外縁部に設けられたセンサ部により感知し、
前記センサ部で感知された、前記環境光と前記第1評価光とを足し合わせた光の強度から、前記環境光の強度を算出し、
前記第1評価光の強度から前記環境光の強度を減算した強度を有する第2評価光を前記制御光源から前記評価面に射出する照明方法。
【請求項10】
前記センサ部は、分光光度計であり、
前記センサ部で得られた前記環境光と前記第1評価光とを足し合わせた光の各波長帯に対応する複数の強度データと、予め記憶している前記第1評価光の各波長帯に対応する複数の強度データと、に基づき、前記環境光の各波長帯に対応する複数の強度データを算出し、
前記第1評価光の各波長帯に対応する複数の強度データから前記環境光の各波長帯に対応する複数の強度データを減算したものを、前記第2評価光の各波長帯に対応する複数の強度データとして設定する請求項に記載の照明方法。
【請求項11】
前記センサ部は、照度計であり、
前記センサ部で得られた照度から、予め記憶された前記第1評価光の各波長帯に対応する複数の強度データを積分した積分値を減算することで、前記環境光の照度を算出し、
前記環境光の照度から前記環境光の波長帯に対応する模擬的な複数の強度データを生成し、
前記第1評価光の各波長帯に対応する複数の強度データから、前記環境光の波長帯に対応する前記模擬的な複数の強度データを減算したものを、前記第2評価光の各波長帯に対応する複数の強度データとして設定する請求項に記載の照明方法。
【請求項12】
評価面における環境光の強度を、前記評価面上又は前記評価面の外縁部に設けられたセンサ部により感知し、
第1評価光の強度から前記環境光の強度を減算した強度を有する第2評価光を制御光源から前記評価面に射出する照明方法。
【請求項13】
前記センサ部は、分光光度計であり、
予め記憶された前記第1評価光の各波長帯に対応する複数の強度データから、前記センサ部で得られた前記環境光の各波長帯に対応する複数の強度データを減算したものを、前記第2評価光の各波長帯に対応する複数の強度データとして設定する請求項12に記載の照明方法。
【請求項14】
前記センサ部は、照度計であり、
前記センサ部で得られた照度から前記環境光の波長帯に対応する模擬的な複数の強度データを生成し、
予め記憶された前記第1評価光の各波長帯に対応する複数の強度データから、前記環境光の各波長帯に対応する前記模擬的な複数の強度データを減算したものを、前記第2評価光の各波長帯に対応する複数の強度データとして設定する請求項12に記載の照明方法。
【請求項15】
予め記憶された第1評価光の各波長帯に対応する複数の強度データから、予め記憶された環境光の各波長帯に対応する複数の強度データを減算した強度を有する第2評価光を制御光源から評価面に射出する照明方法。
【請求項16】
前記予め記憶された環境光の各波長帯に対応する複数の強度データは、ユーザが選択した環境条件および光源種別に基づき決定される請求項15に記載の照明方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、評価面に対して適切な強度の光を照明する照明装置および照明方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第8592748号明細書に記載されるように、マッチング表面を照明する目的で、事前に定義された、2700Kから10000Kの範囲の色温度での高品質昼光スペクトルをシミュレーションする方法が知られている。照明は視覚的なマッチングに最も大きな影響を与えるとされ、不正確な照明は不正確な評価につながり、そのため必然的に苦情や生産プロセスのコスト増加につながるとされる。
【0003】
この方法では、(a)グループに配置された複数のLEDを使用して光を生成する。各グループは、コンパクトに並んで配置されたLEDで構成され、各グループ内のLEDは異なる波長で発光する。このため、特定のスペクトルの光が(b)異なる所定の動作温度で個々のLEDが放射する光のスペクトルを測定し、(c)測定温度範囲ごとに、好ましくは線形補間で三刺激値XYZ(CIE1931 2度)を計算する。(d)計算された三刺激値をメモリに保存し、各LEDの色特性として動作温度とPWM値を割り当て、(e)メモリ内容から選択された動作温度とPWM値でLEDを作動させ、シミュレートされるスペクトルの関数として、(f)所定のサイクル周波数中に、各個別の動作温度を絶えず繰り返し測定するデュアルLEDチップとそれを動作温度に関してメモリに保存された三刺激値と比較、(g)現在の測定結果と保存値が一致する場合:問題のLEDを動作温度の以前の値で作動させ続ける、(h)現在の作業温度が保存値から逸脱している場合:現在の作業温度に属する三刺激値および/またはこのLEDに割り当てられたメモリ内容から適切なPMW値を決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第8592748号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、各波長帯域においてそれぞれ特定の強度を持つ光(標準光源、規格光源)を用いて、評価面に置かれた印刷物や製品の色味や出来栄えを評価したい場合に、さらに高精度な評価を行なえる照明装置・照明方法に対するニーズがある。
【0006】
本発明の課題は、評価面での高精度な評価を可能にする照明装置および照明方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、以下の本発明により解決される。すなわち、本発明(1)の照明装置は、室内に設けられた評価面と、
第1評価光および第2評価光を前記評価面に射出可能な制御光源と、
前記評価面における環境光の強度および前記第1評価光の強度を感知可能なセンサ部と、
前記センサ部で感知された光の強度に基づいて、前記第1評価光の強度から前記環境光の強度を減算した強度を算出し、かかる強度を有する前記第2評価光を前記制御光源から前記評価面に射出させる制御部と、
を備える。
【0008】
また、本発明(2)の照明装置は、(1)記載の照明装置であって、前記センサ部は、分光光度計であり、
前記制御部は、前記センサ部で得られた前記環境光と前記第1評価光とを足し合わせた光の各波長帯に対応する複数の強度データと、予め記憶している前記第1評価光の各波長帯に対応する複数の強度データと、に基づき、前記環境光の各波長帯に対応する複数の強度データを算出し、前記第1評価光の各波長帯に対応する複数の強度データから前記環境光の各波長帯に対応する複数の強度データを減算したものを、前記第2評価光の各波長帯に対応する複数の強度データとして設定する機能を有する。
【0009】
また、本発明(3)の照明装置は、(1)記載の照明装置であって、前記センサ部は、照度計であり、
前記制御部は、
前記センサ部で得られた照度から前記第1評価光の各波長帯に対応する複数の強度データを積分した積分値を減算することで、前記環境光の照度を算出し、
前記環境光の照度から前記環境光の各波長帯に対応する模擬的な複数の強度データを生成し、
前記第1評価光の各波長帯に対応する複数の強度データから、前記環境光の各波長帯に対応する前記模擬的な複数の強度データを減算したものを、前記第2評価光の各波長帯に対応する複数の強度データとして設定する機能を有する。
【0010】
また、本発明(4)の照明装置は、(1)記載の照明装置であって、前記センサ部は、分光光度計であり、
前記制御部は、予め記憶している前記第1評価光の各波長帯に対応する複数の強度データから、前記センサ部で得られた前記環境光の各波長帯に対応する複数の強度データを減算したものを、前記第2評価光の各波長帯に対応する複数の強度データとして設定する。
【0011】
また、本発明(5)の照明装置は、(1)記載の照明装置であって、前記センサ部は、照度計であり、
前記制御部は、
前記センサ部で得られた照度から前記環境光の各波長帯に対応する模擬的な複数の強度データを生成し、
前記第1評価光の各波長帯に対応する複数の強度データから、前記環境光の各波長帯に対応する前記模擬的な複数の強度データを減算したものを、前記第2評価光の各波長帯に対応する複数の強度データとして設定する。
【0012】
また、本発明(6)の照明装置は、(3)又は(5)記載の照明装置であって、前記制御部は、前記環境光の各波長帯に対応する複数の強度データを光源種別ごとに複数記憶し、
前記制御部は、前記環境光の前記光源種別をユーザに選択させる。
【0013】
また、本発明(7)の照明装置は、(1)~(6)のいずれか1項に記載の照明装置であって、前記センサ部は、前記評価面に対して着脱可能である。
【0014】
また、本発明(8)の照明装置は、(1)~(6)のいずれか1項に記載の照明装置であって、前記センサ部は、前記制御光源に設けられ、
前記制御部は、前記センサ部で感知した光の強度を前記評価面での反射率に基づき使用する。
【0015】
また、本発明(9)の照明装置は、(1)~(6)のいずれか1項に記載の照明装置であって、前記評価面の少なくとも一部は、透光性を有し、
前記センサ部は、前記制御光源と前記評価面とを結んだ線上であって、前記制御光源から見て前記評価面よりも遠い位置に設けられる。
【0016】
また、本発明(10)の照明方法は、環境光が照射されている評価面に対して制御光源から第1評価光を射出し、
前記評価面における前記環境光の強度および前記第1評価光の強度をセンサ部により感知し、
前記センサ部で感知された、前記環境光と前記第1評価光とを足し合わせた光の強度から、前記環境光の強度を算出し、
前記第1評価光の強度から前記環境光の強度を減算した強度を有する第2評価光を前記制御光源から前記評価面に射出する。
【0017】
また、本発明(11)の照明方法は、(10)に記載の照明方法であって、前記センサ部は、分光光度計であり、
前記センサ部で得られた前記環境光と前記第1評価光とを足し合わせた光の各波長帯に対応する複数の強度データと、予め記憶している前記第1評価光の各波長帯に対応する複数の強度データと、に基づき、前記環境光の各波長帯に対応する複数の強度データを算出し、
前記第1評価光の各波長帯に対応する複数の強度データから前記環境光の各波長帯に対応する複数の強度データを減算したものを、前記第2評価光の各波長帯に対応する複数の強度データとして設定する。
【0018】
また、本発明(12)の照明方法は、(10)に記載の照明方法であって、前記センサ部は、照度計であり、
前記センサ部で得られた照度から、予め記憶された前記第1評価光の各波長帯に対応する複数の強度データを積分した積分値を減算することで、前記環境光の照度を算出し、
前記環境光の照度から前記環境光の波長帯に対応する模擬的な複数の強度データを生成し、
前記第1評価光の各波長帯に対応する複数の強度データから、前記環境光の波長帯に対応する前記模擬的な複数の強度データを減算したものを、前記第2評価光の各波長帯に対応する複数の強度データとして設定する。
【0019】
また、本発明(13)の照明方法は、評価面における環境光の強度をセンサ部により感知し、
第1評価光の強度から前記環境光の強度を減算した強度を有する第2評価光を制御光源から前記評価面に射出する。
【0020】
また、本発明(14)の照明方法は、(13)に記載の照明方法であって、前記センサ部は、分光光度計であり、
予め記憶された前記第1評価光の各波長帯に対応する複数の強度データから、前記環境光の各波長帯に対応する複数の強度データを減算したものを、前記第2評価光の各波長帯に対応する複数の強度データとして設定する。
【0021】
また、本発明(15)の照明方法は、(13)に記載の照明方法であって、前記センサ部は、照度計であり、
前記センサ部で得られた照度から前記環境光の波長帯に対応する模擬的な複数の強度データを生成し、
予め記憶された前記第1評価光の各波長帯に対応する複数の強度データから、前記環境光の各波長帯に対応する前記模擬的な複数の強度データを減算したものを、前記第2評価光の各波長帯に対応する複数の強度データとして設定する。
【0022】
また、本発明(16)の照明方法は、予め記憶された第1評価光の各波長帯に対応する複数の強度データから、予め記憶された環境光の各波長帯に対応する複数の強度データを減算した強度を有する第2評価光を制御光源から前記評価面に射出する。
【0023】
また、本発明(17)の照明方法は、(16)に記載の照明方法であって、前記予め記憶された環境光の各波長帯に対応する複数の強度データは、ユーザが選択した環境条件および光源種別に基づき決定される。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、評価面での高精度な評価を可能にする照明装置および照明方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第1実施形態の照明装置を示す模式図である。
図2図1に示す照明装置の制御回路の詳細を示すブロック図である。
図3図1に示す照明装置の制御光源の詳細を示す側面模式図である。
図4図1に示す照明装置を用いた照明方法を示すフローチャートである。
図5図4に示す照明方法に使用する第1評価光(D50)、第2評価光、環境光の関係を示すグラフである。
図6】第2実施形態の照明装置を用いた照明方法を示すフローチャートである。
図7】一般的なLED照明の各波長帯に対応する複数の強度データを含む光のスペクトルを示すグラフである。
図8】一般的な蛍光灯の各波長帯に対応する複数の強度データを含む光のスペクトルを示すグラフである。
図9】一般的な白熱電球の各波長帯に対応する複数の強度データを含む光のスペクトルを示すグラフである。
図10】第3実施形態の照明装置を用いた照明方法を示すフローチャートである。
図11】第4実施形態の照明装置を用いた照明方法を示すフローチャートである。
図12】第5実施形態の照明装置を示す模式図である。
図13】第6実施形態の照明装置を示す模式図である。
図14】第7実施形態の照明装置を用いた照明方法に使用する第1評価光(D65)、第2評価光、環境光の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下図1図14を参照して、本発明の照明装置および照明方法の実施形態について説明する。本発明の照明装置および照明方法は、評価面において評価物をより規格の光(D65標準光源、D50補助標準光源)に近い特性を有する光によって評価できるものである。
[第1実施形態]
【0027】
図1図5を参照して、第1実施形態の照明装置および照明方法について説明する。図1図2に示すように、照明装置11は、評価対象物12が載置される評価面13と、評価面13に光を射出する制御光源14と、制御光源14の光および環境光を感知できるセンサ部15と、センサ部15からの信号に基づき制御光源14を制御する制御回路16と、を備える。制御回路16は、一般的なPCとその周辺機器によって構成されてもよい。制御回路16は、制御部の一例である。照明装置11は、制御回路16に接続されたタッチパネル式のディスプレイを有していてもよい。照明装置11は、印刷物の仕上がり状態を確認するための刷り見台の一部に設置されていてもよい。
【0028】
評価面13は、平坦な平面を構成している。評価面13の上側に評価対象物12が載置される。本実施形態では、評価対象物12は、紙やその他の媒体に印刷された印刷物(カラー印刷物)である。評価面13は、例えば、刷り見台の上面に設けられていてもよい。評価面13は、一例として、刷り見台の上面に対して平行な面(水平面)に沿って設けられるが、水平面に対して斜めに延びていてもよいし、鉛直方向に延びていてもよい。
【0029】
制御光源14は、刷り見台に取り付けられた図示しないフレームによって支持されることが好ましく、評価面13から所定の距離だけ離間した位置に配置されることが好ましい。すなわち、制御光源14は、評価面13と対向した位置に配置される。図3に示すように、制御光源14は、複数の発光素子17と、複数の発光素子17からの光を拡散して透過させる光拡散部18と、を有する。複数の発光素子17のそれぞれは、例えばLEDで構成されることが好ましいが、LED以外のレーザーダイオード、有機EL等、その他の光源で構成されてもよい。
【0030】
複数の発光素子17のそれぞれは、励起光を射出可能な光源部21と、励起光を各色に対応する特定の波長帯域の光に変換する複数の粒子状の蛍光体を含有する蛍光層22と、を有してもよい。光源部21は、例えば、近紫外光を射出可能であってよいが、例えば、可視光、特に青色光を射出可能であってもよい。蛍光層22は、励起光をある色(第1の波長帯域)の光に変換する蛍光体Aと、励起光を他の色(第2の波長帯域)の光に変換する蛍光体Bと、を混合的に含んでいてもよい。蛍光層22は、励起光を3色以上の光に変換するように、3種類以上の蛍光体を混合的に含んでいてもよい。
【0031】
或いは、複数の発光素子17のそれぞれは、互いに異なる各色に対応した特定の波長帯域の光を直接に射出可能に構成されてもよい。
【0032】
光拡散部18は、透光性を有する平板として形成される。光拡散部18は、樹脂やガラスによって形成されている。光拡散部18は、一方の面に表面を荒くした拡散面を有する。拡散面は、例えば、サンドブラスト等の手法で形成されることが好ましい。
【0033】
制御光源14は、制御回路16の制御下で、D50(補助標準光源)の光(例えば、2000lx)を第1評価光として射出できる。制御光源14は、制御回路16の制御下で、第1評価光から補正された補正光である第2評価光を射出できる。
【0034】
なお、室内の照明(環境光)の照度(維持照度)は、工場では例えば500lx、オフィス等の執務空間では750lx、倉庫では200lxである。通常の環境光は、評価面における厳密な評価において無視できない大きさの照度を有する。
【0035】
本実施形態では、センサ部15(センサ)は、評価面13上に設けられている。センサ部15は、評価面13の一部として、評価面13上に埋め込まれていてもよい。或いは、センサ部15は、評価面13の外縁部に設けられていてもよく、これによって評価対象物12が評価面13上に載置された際に、評価対象物12がセンサ部15に干渉してしまうことを防止してもよい。或いは、センサ部15は、評価面13に対して着脱可能に構成されてもよく、校正工程時にのみ評価面13上に設置され、第2評価光を補正(校正)する校正工程の完了時に評価面13から除去されてもよい。校正工程を行うタイミングとしては、任意であり、1日に1回程度でもよいし、1か月に1回程度であってもよい。センサ部15は、制御回路16と有線又は無線によって電気的又は電磁波を介して接続されており、センサ部15と制御回路16との間で信号をやりとりすることができる。センサ部15は、制御回路16と有線又は無線によって光学的に接続されていてもよい。すなわち、センサ部15は、光ファイバーおよび電気・光変換器等を介して制御回路16と光学的に接続され、センサ部15と制御回路16との間で光信号をやりとりしてもよい。或いは、センサ部15は、光無線通信によって制御回路16と光学的に接続されてもよく、センサ部15に接続された通信機と制御回路16に接続された通信機との間で光信号をやりとりしてもよい。
【0036】
本実施形態において、センサ部15は、分光光度計で構成されている。分光光度計で構成されたセンサ部15は、各波長帯ごとに光の強度を感知することができる。従って、分光光度計で構成されたセンサ部15からの信号に基づき、制御回路16では、評価面13における各波長帯ごとに光の強度を含む光のスペクトルを得ることができる。
【0037】
図2に示すように、制御回路16は、マイクロプロセッサ(MPU23)と、PWM制御用のタイミング発生回路24と、タイミング発生回路24に接続された複数のドライバー25と、記憶部26と、MPU23と記憶部26とを接続するバス27と、を有する。ドライバー25は、発光素子17に接続され、発光素子17を直接駆動するための回路である。記憶部26は、ハードディスクドライブ(HDD)やSSD(Solid State Drive)であってよい。記憶部26は、第1評価光(例えば、D50)の各波長帯に対応する複数の強度データを記憶している。
【0038】
本実施形態では、タイミング発生回路24によって、PWM制御を行って制御光源のそれぞれの発光素子の発光量を制御している。制御光源14の発光素子17がLED以外の光源、例えばレーザーダイオード、有機EL等で構成される場合には、制御回路16は、このタイミング発生回路24に代えて、電流値制御や電圧値制御を行うことが可能な回路で構成されてもよい。
【0039】
図4図5を参照して、本実施形態の照明装置11を用いた照明方法について説明する。
【0040】
ユーザが照明装置11の電源をオンすると、照明装置11が起動する。まもなく、照明装置11は、制御光源14を駆動して、評価面13に対してD50(補助標準光源)に対応する光である第1評価光を射出する(ステップS11)。なお、評価面13に対しては、第1評価光だけでなく、室内の照明19からの光である環境光が照射されている。
【0041】
分光光度計で構成されるセンサ部15は、環境光と第1評価光とを足し合わせた光の強度を、各波長帯に対応する複数の強度データ(各波長帯ごとの照度)として感知する(ステップS12)。センサ部15は、各波長帯に対応する複数の強度データに対応する信号を制御回路16に送る。
【0042】
制御回路16は、これら環境光と第1評価光とを足し合わせた光の各波長帯に対応する複数の強度データと、制御回路16の記憶部26に記憶された第1評価光の各波長帯に対応する複数の強度データと、を比較する。より詳細には、制御回路16は、これらを比較し、環境光と第1評価光とを足し合わせた光の各波長帯に対応する複数の強度データが、予め記憶している第1評価光の各波長帯に対応する複数のパラメータを超過した部分を、環境光に由来する各波長帯に対応する複数の強度データとして扱う。したがって、制御回路16は、環境光と第1評価光とを足し合わせた光の各波長帯に対応する複数の強度データから、第1評価光の各波長帯に対応する複数の強度データを減算することで、図5に示すような、環境光の各波長帯に対応する複数の強度データを得ることができる。図5は、評価面13での各波長帯に対応する照度であって、第1評価光の強度データの最大値(λ=550nmのとき)を1としたときの相対照度を示している。
【0043】
制御回路16は、第1評価光の各波長帯に対応する複数の強度データから、環境光の各波長帯に対応する複数の強度データを減算することで、補正光である第2評価光の各波長帯に対応する複数の強度データを算出する(校正工程、ステップS13)。この校正工程の完了後に、ユーザは、センサ部15を取り外してもよい。制御回路16は、制御光源を駆動して、この第2評価光を補正光として評価面13に照射する(ステップS14)。これによって、図5に示すような、D50に対応する各波長帯での強度データを有する光を評価面13において実現できる。このため、ユーザは、D50の強度に正しく調整された光によって、評価面13に載置された評価対象物12の仕上がりを評価することができる。
【0044】
第1実施形態によれば、以下のことがいえる。照明装置11は、室内に設けられた評価面13と、評価面13に射出可能な制御光源14と、評価面13における環境光の強度および前記第1評価光の強度を感知可能なセンサ部15と、センサ部15で感知された光の強度に基づいて、前記第1評価光の強度から前記環境光の強度を減算した強度を算出し、かかる強度を有する前記第2評価光を制御光源14から評価面13に射出させる制御部と、を備える。
【0045】
また、照明方法は、環境光が照射されている評価面13に対して制御光源14から第1評価光を射出し、評価面13における前記環境光の強度および前記第1評価光の強度をセンサ部15により感知し、センサ部15で感知された、前記環境光と前記第1評価光とを足し合わせた光の強度から、前記環境光の強度を算出し、前記第1評価光の強度から前記環境光の強度を減算した強度を有する第2評価光を制御光源14から評価面13に射出する。
【0046】
これらの構成の照明装置11および照明方法によれば、環境光の強度を考慮しつつ、評価面13において、第1評価光(例えば、D50等)を正しく再現することができる。このため、評価対象物12の仕上がり状態を正しい色味によって評価することができ、評価対象物12の高精度な評価を実現できる。
【0047】
この場合、センサ部15は、分光光度計であり、前記制御部は、センサ部15で得られた前記環境光と前記第1評価光とを足し合わせた光の各波長帯に対応する複数の強度データと、予め記憶している前記第1評価光の各波長帯に対応する複数の強度データと、に基づき、前記環境光の各波長帯に対応する複数の強度データを算出し、前記第1評価光の各波長帯に対応する複数の強度データから前記環境光の各波長帯に対応する複数の強度データを減算したものを、前記第2評価光の各波長帯に対応する複数の強度データとして設定する機能を有する。
【0048】
この構成によれば、分光光度計を用いることによって、各波長帯ごとの光の強度データ(各波長帯ごとの光の照度)を得ることができるため、環境光の強度を各波長帯ごとに正しく把握することができる。これによって、補正光である第2評価光の各波長帯に対応する複数の強度データを正しく設定することができる。これによって、第2評価光と環境光とが足し合わされて、評価面13において第1評価光を正しく再現することができる。
【0049】
センサ部15は、評価面13に対して着脱可能である。この構成によれば、評価面13において、センサ部15が作業の邪魔になることがなく、ユーザフレンドリーな照明装置11を実現できる。
【0050】
以下の実施形態では、主として第1実施形態と異なる部分について説明し、第1実施形態と共通する部分については、図示又は説明を省略する。
[第2実施形態]
【0051】
図6図9を参照して、第2実施形態の照明装置11および照明方法について説明する。
【0052】
制御回路16の記憶部26は、環境光の光源種別ごと(例えば、LED、蛍光灯、白熱電球、ごと)に、各波長帯に対応する複数の強度データを記憶している。すなわち、制御回路16の記憶部26は、光源種別ごとのスペクトルを記憶している。このとき、記憶部26に記憶される光源種別ごとの複数の強度データは、他の波長帯の光の強さに対する相対値でもよいし、実機によって再現された光を実際に測定した実測値であってもよいし、その両方でもよい。
【0053】
センサ部15は、照度計で構成される。照度計は、分光光度計とは異なり、各波長帯に対応する光の複数の強度データが得られるものではなく、すべての波長の光の強さを考慮した、評価面13での照度を感知することができる。
【0054】
本実施形態の照明装置11は、制御回路16と接続されたタッチパネル式のディスプレイを備えている。
【0055】
図6図9を参照して、本実施形態の照明装置11を用いた照明方法について説明する。
【0056】
照明装置11を起動すると、制御回路16は、タッチパネル式のディスプレイに対して、室内照明19(環境光)の光源種別について、ユーザに入力を求める画像を表示する。ユーザは、室内に設置されている照明19を確認し、タッチパネル式のディスプレイに対して光源種別を入力する(ステップS21)。光源種別の選択肢としては、例えば、LED、蛍光灯、白熱電球、等が存在するが、それら以外の光源種別を選択可能であってもよい。なお、光源種別に対応する、各波長帯ごとの複数の強度データを含む一般的な光源のスペクトルは、周知であり、それらの例が図7図9に示される。
【0057】
図7は、一般的なLED照明のスペクトルを示しており、460nmのピークの強度を1としたときの相対的な強度を示している。図8は、一般的な蛍光灯のスペクトルを示しており、550nmのピークの強度を1としたときの相対的な強度を示している。図9は、一般的な白熱電球のスペクトルを示しており、780nmのピークの強度を1としたときの相対的な強度を示している。
【0058】
制御回路16の記憶部26は、これらの光源種別に対応する、各波長帯ごとの複数の強度データを含む一般的な光源のスペクトル(図7図9に示される山型の稜線上の値)を記憶している。なお、このスペクトルの各値を積分或いは互いに足し合わせた積分値(図7図9に示される山型の面積に相当する値)は、評価面13での照度にほぼ相当するか、或いは評価面13での照度と極めて相関の高い値である。したがって、評価面13での照度に関する情報と、光源種別に関する情報とがあれば、制御回路16は、評価面13における環境光の各波長帯に対応する複数の強度データを模擬的に算出することができる。
【0059】
ユーザが光源種別として、例えば、LEDを選択した場合を例に以下説明する。ユーザが光源種別を選択した後、制御回路16は、制御光源14を駆動して、評価面13に対して、第1評価光を照射する(ステップS22)。センサ部15は、評価面13における照度を感知して、照度に関する信号を制御回路16に送る(ステップS23)。制御回路16は、ステップS22で射出した第1評価光の各波長帯に対応する複数の強度データ(評価面での実測値相当に換算したもの)を積分した積分値を算出する。この積分値は、第1評価光の評価面13での照度にほぼ相当するか、あるいは第1評価光の評価面13での照度と極めて相関の高い値である。制御回路16は、センサ部15で得られた照度の値から、この第1評価光の各波長帯に対応する複数の強度データの積分値(第1評価光の評価面13での照度)を減算して、環境光の照度を算出する(ステップS24)。
【0060】
制御回路16は、環境光の照度と、ユーザが選択した光源種別に関する情報に基づき、環境光の各波長帯に対応する模擬的な複数の強度データを算出する(ステップS25)。さらに制御回路16は、第1評価光の各波長帯に対応する複数の強度データから、環境光の各波長帯に対応する模擬的な複数の強度データを減算し、補正光である第2評価光の各波長帯に対応する複数の強度データを算出する(校正工程、ステップS26)。この校正工程の完了後に、ユーザは、センサ部15を取り外してもよい。制御回路16は、この第2評価光を補正光として評価面13に照射する(ステップS27)。これによって、評価面13では、第1評価光(例えば、D50)が再現される。ユーザは、評価面13において評価対象物の仕上がり状態を正しく評価することができる。なお、本実施形態では、光源種別として、ユーザがLEDを選択した場合を例に説明したが、光源種別として蛍光灯や白熱電球を選択した場合でもほぼ同様である。
【0061】
本実施形態によれば、以下のことがいえる。センサ部15は、照度計であり、制御部は、センサ部15で得られた照度から前記第1評価光の各波長帯に対応する複数の強度データを積分した積分値を減算することで、前記環境光の照度を算出し、前記環境光の照度から前記環境光の各波長帯に対応する模擬的な複数の強度データを生成し、前記第1評価光の各波長帯に対応する複数の強度データから、前記環境光の各波長帯に対応する前記模擬的な複数の強度データを減算したものを、前記第2評価光の各波長帯に対応する複数の強度データとして設定する機能を有する。
【0062】
この構成によれば、環境光の強度を考慮しつつ、評価面において、正しく調整された第1評価光(例えば、D50等)を再現することができる。このため、評価対象物12の仕上がり状態を正しい色味によって評価することができ、評価対象物12の高精度な評価を実現できる。また、センサ部15が照度計で構成されるために、センサ部15を分光光度計で構成した場合に比して、センサ部15のコストを低減することができる。
【0063】
この場合、前記制御部は、前記環境光の各波長帯に対応する複数の強度データを光源種別ごとに複数記憶し、前記制御部は、前記環境光の前記光源種別をユーザに選択させる機能を有する。この構成によれば、センサ部15に分光光度計を用いない場合でも、ユーザから光源種別に関する情報の入力を受けることで、センサ部15で得られた照度の情報に基づき、環境光の各波長帯に対応する模擬的な複数の強度データを算出することができる。これによって、補正光として正確な第2評価光を射出でき、評価面13において環境光とともに第1評価光(例えば、D50)を正しく再現することができる。
[第3実施形態]
【0064】
図10を参照して、第3実施形態の照明装置11および照明方法について説明する。
【0065】
センサ部15は、第1実施形態と同様に分光光度計で構成される。また、本実施形態では、制御回路16は、環境光の各波長帯に対応する複数の強度データを得るに際し、評価面13に対して第1評価光を照射することはしない。
【0066】
本実施形態の照明装置11を用いた照明方法について説明する。ユーザが照明装置11を起動すると、制御回路16は、直ちにセンサ部15を介して環境光の強度、すなわち環境光の各波長帯に対応する複数の強度データを取得する(ステップS31)。このとき、評価面13には、制御光源14からいずれの光も照射されず、評価面13には環境光(室内照明19等)のみが照射されている。
【0067】
さらに、制御回路16は、予め記憶部26に記憶された第1評価光(例えば、D50)の各波長帯に対応する複数の強度データから、環境光の各波長帯に対応する複数の強度データを減算して、補正光である第2評価光の各波長帯に対応する複数の強度データを算出する(ステップS32)。制御回路16は、制御光源14を駆動して、評価面13に対して第2評価光を照射する(ステップS33)。これによって、評価面13では、第1評価光(例えば、D50)が正しく再現される。ユーザは、評価面13において評価対象物12の仕上がり状態を正しく評価することができる。
【0068】
本実施形態によれば、以下のことがいえる。照明装置11は、室内に設けられた評価面13と、評価面13に射出可能な制御光源14と、評価面13における環境光の強度および前記第1評価光の強度を感知可能なセンサ部15と、センサ部15で感知された光の強度に基づいて、前記第1評価光の強度から前記環境光の強度を減算した強度を算出し、かかる強度を有する前記第2評価光を制御光源14から評価面13に射出させる制御部と、を備える。
【0069】
この構成によれば、環境光の強度を考慮しつつ、評価面13において、正しく調整された第1評価光(例えば、D50等)を再現することができる。このため、評価対象物12の仕上がり状態を正しい色味によって評価することができ、評価対象物12の高精度な評価を実現できる。また、本実施形態では、評価光の補正に先立ち、第1評価光を評価面13に照射する工程を要しない。このため、環境光がセンサ部15で感知可能な十分な強さを有している場合には、本実施形態のように最初に第1評価光を評価面13に照射する工程を省略して、評価光の補正(校正)に要するプロセスを簡略化できる。
【0070】
この場合、センサ部15は、分光光度計であり、前記制御部は、予め記憶している前記第1評価光の各波長帯に対応する複数の強度データから、センサ部15で得られた前記環境光の各波長帯に対応する複数の強度データを減算したものを、前記第2評価光の各波長帯に対応する複数の強度データとして設定する機能を有する。
この構成によれば、評価光の補正に先立ち、第1評価光を評価面に照射する工程を要することなく、評価光の補正(校正)に要するプロセスを簡略化できる。
【0071】
センサ部15は、評価面13に対して着脱可能である。この構成によれば、評価面13において、センサ部15が作業の邪魔になることがなく、ユーザフレンドリーな照明装置11を実現できる。
[第4実施形態]
【0072】
図11を参照して、第4実施形態の照明装置11および照明方法について説明する。
【0073】
制御回路16の記憶部26は、光源種別ごと(例えば、LED、蛍光灯、白熱電球、ごと)に、各波長帯に対応する複数の強度データを記憶している。すなわち、制御回路16の記憶部26は、光源種別ごとのスペクトルを記憶している。このとき、記憶部26に記憶される光源種別ごとの複数の強度データは、他の波長帯の光の強さに対する相対値でもよいし、実機によって再現された光を実際に測定した実測値であってもよいし、その両方でもよい。
【0074】
センサ部15は、照度計で構成される。本実施形態の照明装置11は、制御回路16と接続されたタッチパネル式のディスプレイを備えている。
【0075】
図11を参照して、本実施形態の照明装置11を用いた照明方法について説明する。
【0076】
照明装置11を起動すると、制御回路16は、タッチパネル式のディスプレイに対して、室内照明19(環境光)の光源種別について、ユーザに入力を求める画像を表示する。ユーザは、室内に設置されている照明19を確認し、タッチパネル式のディスプレイに対して光源種別を入力する(ステップS41)。光源種別の選択肢としては、例えば、LED、蛍光灯、白熱電球、等が存在する。
【0077】
制御回路16の記憶部26は、これらの光源種別に対応する、各波長帯ごとの複数の強度データを含むスペクトル(図7図9の山型の稜線上の値)を記憶している。なお、このスペクトルの各値を積分或いは互いに足し合わせた積分値(図7図9に示される山型の面積に相当する値)は、評価面13での照度にほぼ相当するか、或いは評価面13での照度と極めて相関の高い値である。したがって、評価面13での環境光の照度の情報と、光源種別に関する情報とがあれば、制御回路16は、それらに基づき評価面13における環境光の各波長帯に対応する模擬的な複数の強度データを算出することができる。
【0078】
ユーザが光源種別として、例えば、LEDを選択した場合を例に以下説明する。ユーザが光源種別を選択した後、制御回路16は、直ちにセンサ部15を介して評価面における照度を取得する(ステップS42)。
【0079】
制御回路16は、環境光の照度と、ユーザが選択した光源種別に関する情報に基づき、環境光の各波長帯に対応する模擬的な複数の強度データを算出する(ステップS43)。さらに制御回路16は、第1評価光(例えば、D50)の各波長帯に対応する複数の強度データから、環境光の各波長帯に対応する模擬的な複数の強度データを減算し、補正光である第2評価光の各波長帯に対応する複数の強度データを算出する(ステップS44)。制御回路16は、このように各波長帯に対応する複数の強度データが算出された第2評価光を評価面に照射する(ステップS45)。これによって、評価面13では、第1評価光(例えば、D50)が正しく再現される。ユーザは、評価面13において評価対象物12の仕上がり状態を正しく評価することができる。
【0080】
本実施形態によれば、以下のことがいえる。センサ部15は、照度計であり、前記制御部は、センサ部15で得られた照度から前記環境光の各波長帯に対応する模擬的な複数の強度データを生成し、前記第1評価光の各波長帯に対応する複数の強度データから、前記環境光の各波長帯に対応する前記模擬的な複数の強度データを減算したものを、前記第2評価光の各波長帯に対応する複数の強度データとして設定する機能を有する。
【0081】
この構成によれば、環境光の強度を考慮しつつ、評価面13において、正しく調整された第1評価光(例えば、D50等)を再現することができる。このため、評価対象物12の仕上がり状態を正しい色味によって評価することができ、評価対象物12の高精度な評価を実現できる。また、センサ部15が照度計で構成されるために、センサ部15を分光光度計で構成した場合に比して、コストを低減できる。また、評価光の補正に先立ち、第1評価光を評価面13に照射する工程を要することなく、評価光の補正(校正)に要するプロセスを簡略化できる。
【0082】
前記制御部は、前記環境光の各波長帯に対応する複数の強度データを光源種別ごとに複数記憶し、前記制御部は、前記環境光の前記光源種別をユーザに選択させる機能を有する。この構成によれば、センサ部15に分光光度計を用いない場合でも、ユーザから光源種別に関する情報の入力を受けることで、センサ部15で得られた照度の情報に基づき、環境光の各波長帯に対応する模擬的な複数の強度データを算出することができる。これによって、補正光として正確な第2評価光を射出でき、評価面13において環境光とともに第1評価光(例えば、D50)を再現することができる。
[第5実施形態]
【0083】
図12を参照して、第5実施形態の照明装置11および照明方法について説明する。
【0084】
本実施形態では、センサ部15は、制御光源14の一部に配置されている。センサ部15は、各発光素子17から射出される光がセンサ部15によって遮られないように、例えば、光拡散部18の外縁部等に配置されることが好ましい。センサ部15は、分光光度計で構成されるが、照度計で構成されてもよい。
【0085】
評価面13は、反射率が既知の反射板を有していてもよい。反射板31は、例えば白色であることが好ましい。反射板31の反射率は、例えば、30~80%であることが好ましい。反射板31は、評価面13に対して着脱可能に構成されていてもよい。したがって、反射板31は、補正光の校正工程の終了後に、評価面13から除去されてもよい。
【0086】
或いは、評価面13全体を反射板としてもよい。この場合には、評価面13は、白色で構成されることが好ましい。評価面13の反射率は、例えば、30~80%であることが好ましい。
【0087】
本実施形態の照明装置11を用いた照明方法について説明する。第1評価光に対して補正(校正)がされた第2評価光を得るためには、種々の方法を取りえる。
【0088】
例えば、第1実施形態のように行ってもよい。すなわち、評価面13に対して第1評価光を照射し、評価面13において光(第1評価光と環境光とを含む光)の各波長帯に対応する複数の強度データをセンサ部15で感知する。このとき、センサ部15で得られた各値は、反射板31又は評価面13での反射によって減衰しているので、制御回路16は、これらの各値を反射率で除算することで、減衰前の評価面13での光の各波長帯に対応する複数の強度データを得る。
【0089】
制御回路16は、第1評価光と環境光とを含む光の各波長帯に対応する複数の強度データのうち、第1評価光を超過している部分を、環境光に由来する各波長帯に対応する複数の強度データとして取得する。制御回路16は、第1評価光の各波長帯に対応する複数の強度データから、環境光の各波長帯に対応する複数の強度データを減算したものを、補正光である第2評価光の各波長帯に対応する複数の強度データとして算出する。この第2評価光を評価面13に照射する。このようにして、ユーザは、評価対象物12の評価を行ってもよい。
【0090】
また、第2実施形態のように、センサ部15を照度計で構成し、第2実施形態のような照明方法で行ってもよい。すなわち、環境光の光源種別をユーザが選択し、評価面13に対して第1評価光を照射し、評価面13において光(第1評価光と環境光とを含む光)の照度をセンサ部15で感知する。このとき、センサ部15で得られた照度は、反射板31又は評価面13での反射によって減衰しているので、制御回路16は、これらの照度を反射率で除算することで、減衰前の評価面13での照度を得ることができる。
【0091】
制御回路16は、この減衰前の照度から、第1評価光の各波長帯に対応する複数の強度データの積分値(第1評価光の評価面13での照度)を減算して、環境光の照度を得る。制御回路16は、環境光の照度と、ユーザが選択した光源種別に関する情報に基づき、環境光の各波長帯に対応する模擬的な複数の強度データを算出する。さらに制御回路16は、第1評価光の各波長帯に対応する複数の強度データから、環境光の各波長帯に対応する模擬的な複数の強度データを減算し、補正光である第2評価光の各波長帯に対応する複数の強度データを算出する。制御回路16は、このように各波長帯に対応する複数の強度データが算出された第2評価光を評価面13に照射する。このようにして、ユーザは、評価対象物12の評価を行ってもよい。
【0092】
或いは、第3実施形態のような照明方法で行ってもよい。すなわち、制御回路16は、直ちにセンサ部15を介して環境光の各波長帯に対応する複数の強度データを取得する。このとき、評価面13には、制御光源14からいずれの光も照射されず、評価面13には環境光(室内照明19等)のみが照射されている。このとき、センサ部15で得られた各値は、反射板31又は評価面13での反射によって減衰しているので、制御回路16は、これらの照度を反射率で除算することで、減衰前の評価面での各値(環境光の各波長帯に対応する複数の強度データ)を得る。
【0093】
さらに、制御回路16は、第1評価光の各波長帯に対応する複数の強度データから、環境光の各波長帯に対応する複数の強度データを減算して、補正光である第2評価光の各波長帯に対応する複数の強度データを算出する。制御回路16は、このように各波長帯に対応する複数の強度データが算出された第2評価光を評価面13に照射する。このようにして、ユーザは、評価対象物12の評価を行ってもよい。
【0094】
或いは、第4実施形態のような照明方法で行ってもよい。すなわち、制御回路16は、タッチパネル式のディスプレイに対して、室内照明19(環境光)の光源種別についてユーザに入力を求め、ユーザが光源種別を入力する。制御回路16は、直ちにセンサ部15を介して評価面13における照度を取得する。このとき、センサ部15で得られた照度は、反射板31又は評価面13での反射によって減衰しているので、制御回路16は、これらの照度を反射率で除算することで、減衰前の評価面13での照度を得る。
【0095】
制御回路16は、環境光の照度と、ユーザが選択した光源種別に関する情報に基づき、環境光の各波長帯に対応する模擬的な複数の強度データを算出する。さらに制御回路16は、第1評価光の各波長帯に対応する複数の強度データから、環境光の各波長帯に対応する模擬的な複数の強度データを減算し、補正光である第2評価光の各波長帯に対応する複数の強度データを算出する。制御回路16は、このように各波長帯に対応する複数の強度データが算出された第2評価光を評価面13に照射する。このようにして、ユーザは、評価対象物12の評価を行ってもよい。
【0096】
本実施形態によれば、以下のことがいえる。センサ部15は、制御光源14に設けられ、前記制御部は、センサ部15で感知した光の強度を評価面13での反射率に基づき使用する機能を有する。この構成によれば、センサ部15が制御光源14に配置されるために、評価面13上にセンサ部15を設置するためのスペースを確保しなくてもよい。また、センサ部15が評価対象物12と干渉してしまうこともなく、ユーザフレンドリーな照明装置11を実現できる。さらに、反射率を考慮することで、このような配置をとったとしても、環境光の強度を正確に把握することができる。これによって、正確に補正(校正)された第2評価光を得て、これを用いて評価対象物12を高精度に評価できる。
[第6実施形態]
【0097】
図13を参照して、第6実施形態の照明装置11および照明方法について説明する。
【0098】
本実施形態では、評価面13は、透光性を有する平板で構成される。評価面13は、例えば、ガラス板でもよいし、アクリル板その他の合成樹脂製の透明な平板であってもよい。本実施形態において、評価面13は、制御光源14に支持されていてもよい。本実施形態では、評価面13は、全体が透光性を有するように構成されているが、評価面13の少なくとも一部が透光性を有する構成であっても当然によい。
【0099】
センサ部15は、制御光源14と評価面13とを結んだ線上に設けられている。センサ部15は、制御光源14から見て評価面13よりも遠い位置に設けられる。センサ部15は、照明装置11が設置される室内の壁面に対して着脱可能に固定されていてもよい。センサ部15は、分光光度計で構成されるが、照度計で構成されてもよい。
【0100】
本実施形態の照明装置11を用いた照明方法について説明する。第1評価光に対して補正(校正)がされた第2評価光を得るためには、種々の方法を取りえる。例えば、第1~第4実施形態の照明方法を用いることができる。評価面13に補正光である第2評価光が照射された状態で、ユーザは、評価面13の制御光源14側の面とは反対側の面(センサ部15側の面)に評価対象物12を固定・設置し、センサ部15側の面から目視をすることで、評価対象物12を透過的に評価することができる。
【0101】
本実施形態によれば、以下のことがいえる。評価面13の少なくとも一部は、透光性を有し、センサ部15は、制御光源14と評価面13とを結んだ線上であって、制御光源14から見て評価面13よりも遠い位置に設けられる。
【0102】
この構成によれば、評価対象物12を透過的に評価したい場合に有効な配置をとることができる。また、評価面13上にセンサ部15を設置するためのスペースを確保することが難しい場合に、センサ部15の配置上の問題を解消することができる。また、センサ部15が評価対象物12と干渉してしまうこともなく、ユーザフレンドリーな照明装置11を実現できる。これによって、正確に補正(校正)された第2評価光を得て、これを用いて評価対象物12を高精度に評価できる。
[第7実施形態]
【0103】
図14を参照して、第7実施形態の照明装置11および照明方法について説明する。本実施形態の照明装置11および照明方法は、評価対象物12が、表面に塗装が施された製品(プラスチック、衣料品)である場合に、その塗装状態の評価(塗装の色味の評価)に適したものである。
【0104】
本実施形態では、制御光源14から射出される第1評価光は、D50とは異なり、D65(標準光源)である。制御光源14は、制御回路16の制御下で、D65の光(例えば、2000lx)を第1評価光として射出できる。制御光源14は、制御回路16の制御下で、第1評価光から補正された補正光である第2評価光を射出できる。
【0105】
センサ部15は、分光光度計で構成されるが、照度計で構成されてもよい。センサ部15は、評価面13に対して着脱可能であってもよい。センサ部15は、第5実施形態のように、制御光源14の一部に配置されていてもよい。センサ部15は、第6実施形態のように、制御光源14と評価面13とを結んだ線上であって、制御光源14から見て評価面13よりも遠い位置に設けられていてもよい。
【0106】
図14を参照して、本実施形態の照明装置11を用いた照明方法について説明する。図14は、評価面13での各波長帯に対応する照度であって、第1評価光の強度データの最大値(λ=455nmのとき)を1としたときの相対照度を示している。本実施形態では、第1評価光としてD50に代えて、D65を用いる以外は、第1~第4実施形態の照明方法を使用できる。すなわち、制御回路16は、センサ部15を用いて、環境光の各波長帯に対応する複数の強度データを取得するか、環境光の照度に基づき環境光の各波長帯に対応する模擬的な複数の強度データを得る。制御回路16は、第1評価光(D65)の各波長帯に対応する複数の強度データから、環境光の各波長帯に対応する複数の強度データ又は模擬的な複数の強度データを減算したものを、第2評価光の各波長帯に対応する複数の強度データとして設定する。制御回路16は、制御光源14を駆動して、当該第2評価光を評価面13に照射する。評価面13では、この第2評価光と環境光とが足し合わされて、D65(標準光源)が正確に再現される。この状態で、ユーザは、評価対象物12の評価を高い精度で行うことができる。
[第8実施形態]
【0107】
第8実施形態の照明装置11および照明方法について説明する。本実施形態は、外科、口腔外科等の手術に適した照明装置11および照明方法である。
【0108】
照明装置11は、制御回路16に接続されたタッチパネル式のディスプレイを有する。制御回路16は、D50(補助標準光源)か、D65(標準光源)のいずれで照明するを選択する画像をディスプレイに表示する。ユーザは、タッチパネルの操作によって、評価対象物12である患者を、D50で照明するか、或いは、D65で照明するか、を選択することができる。一般に、手術では、3500~4500K(ケルビン)程度の白色光(10000~100000lx)の光で術野を照明する。
【0109】
なお、本実施形態では、タッチパネル式のディスプレイによって、D50か、D65を選択するようにしているが、切り替えの機構はこれに限られない。これらの切り替えを行うスイッチを制御光源14の近傍に設けて、ユーザがスイッチを操作することで両者の切り替えを行っても当然によい。
【0110】
評価面13は、手術台の一部を構成する。手術室内の照明(環境光)の照度(維持照度)は、例えば1000lxである。
【0111】
センサ部15は、分光光度計で構成されるが、照度計で構成されてもよい。センサ部15は、手術台(評価面13)に対して着脱可能であってもよい。センサ部15は、第5実施形態のように、制御光源14の一部に配置されていてもよい。
【0112】
本実施形態の照明装置11を用いた照明方法について説明する。本実施形態では、第1評価光としてD50又はD65のいずれかを切り替えて使用する以外は、第1~第4実施形態の照明方法を使用できる。ユーザは、補正光である第2の評価光によって、評価対象(本実施形態では、患者)に対して良好な処置を施すことができる。
【0113】
本実施形態によれば、外科、口腔外科等の手術に適した照明装置11および照明方法を提供できる。
[第9実施形態]
【0114】
第9実施形態の照明装置11および照明方法について説明する。本実施形態の照明装置11および照明方法では、センサ部15が設けられていない。
【0115】
本実施形態の照明装置11を用いた照明方法について説明する。
【0116】
照明装置11を起動すると、制御回路16は、タッチパネル式のディスプレイに対して、環境条件の入力を求める画像を表示する。ユーザは、室内を確認し、タッチパネル式のディスプレイに対して環境条件を入力する。環境条件の選択肢としては、例えば、工場、オフィス等の執務室、倉庫、手術室等が存在するが、それら以外の環境条件を選択可能であってもよい。この入力に基づき、制御回路11は、評価面13での環境光の照度を、工場であれば500lx、オフィス等の執務室であれば750lx、倉庫であれば200lx、手術室であれば1000lxと推定する。これらの照度に関する情報は、ユーザが選択した場所に関する情報に紐づけられて記憶部26に記憶されている。また、ユーザが環境光の照度を把握している場合には、制御回路16に対してキーボード等を介して数値を直接入力することで環境光の照度を設定してもよい。
【0117】
さらに、制御回路16は、室内照明19(環境光)の光源種別について、ユーザに入力を求める画像を表示する。ユーザは、室内に設置されている照明19を確認し、タッチパネル式のディスプレイに対して光源種別を入力する(ステップS21)。光源種別の選択肢としては、例えば、LED、蛍光灯、白熱電球、等が存在するが、それら以外の光源種別を選択可能であってもよい。なお、光源種別に対応する、各波長帯ごとの複数の強度データを含む一般的な光源のスペクトルは、周知であり、それらの例が図7図9に示される。
【0118】
制御回路16の記憶部26は、これらの光源種別に対応する、各波長帯ごとの複数の強度データを含む一般的な光源のスペクトル(図7図9に示される山型の稜線上の値)を記憶している。なお、このスペクトルの各値を積分或いは互いに足し合わせた積分値(図7図9に示される山型の面積に相当する値)は、評価面13での照度にほぼ相当するか、或いは評価面13での照度と極めて相関の高い値である。したがって、上記評価面13での照度に関する情報(環境条件)と、光源種別に関する情報とがあれば、制御回路16は、評価面13における環境光の各波長帯に対応する複数の強度データを模擬的に算出することができる。
【0119】
ユーザが環境条件として、例えば、工場を選択し、ユーザが光源種別として、例えば、LEDを選択した場合を例に以下説明する。ユーザが光源種別を選択した後、制御回路16は、評価面13での環境光の照度の推定値(500lx)と、ユーザが選択した光源種別に関する情報に基づき、環境光の各波長帯に対応する模擬的な複数の強度データを算出する。さらに制御回路16は、第1評価光の各波長帯に対応する複数の強度データから、環境光の各波長帯に対応する模擬的な複数の強度データを減算し、補正光である第2評価光の各波長帯に対応する複数の強度データを算出する(校正工程)。制御回路16は、この第2評価光を補正光として評価面13に照射する。これによって、評価面13では、第1評価光(例えば、D50、D65)が再現される。ユーザは、評価面13において評価対象物の仕上がり状態を正しく評価することができる。なお、本実施形態では、環境条件として、ユーザが工場を選択した場合を例に説明したが、環境条件としてオフィス等の執務室、倉庫、或いは手術室を選択した場合でもほぼ同様である。また、本実施形態では、光源種別として、ユーザがLEDを選択した場合を例に説明したが、光源種別として蛍光灯や白熱電球を選択した場合でもほぼ同様である。
【0120】
本実施形態によれば、センサ部15を省略できるため、照明装置11の製造コストを削減できる。
【0121】
上記した実施形態は、種々の置き換えや変形を加えて実施できる。また、上記実施形態同士を適宜に組み合わせて発明を実現することも当然にできる。
【符号の説明】
【0122】
11 照明装置
12 評価対象物
13 評価面
14 制御光源
15 センサ部
16 制御回路
17 発光素子
18 光拡散部
19 室内照明
21 光源部
22 蛍光層
23 MPU
24 タイミング発生回路
25 ドライバー
26 記憶部
27 バス
31 反射板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14