(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】芳香拡散器
(51)【国際特許分類】
A45D 34/02 20060101AFI20240118BHJP
A61L 9/12 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
A45D34/02 510Z
A61L9/12
(21)【出願番号】P 2022021059
(22)【出願日】2022-02-15
【審査請求日】2023-01-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年2月19日 富山県総合デザインセンターウェブサイトに掲載(https://toyamadesign.jp/、https://www.toyamadesign-trial.net/hosei、https://www.toyamadesign-trial.net/hosei-12)
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】300014738
【氏名又は名称】新光硝子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 碧
(72)【発明者】
【氏名】安積 伸
(72)【発明者】
【氏名】屋敷 和秀
(72)【発明者】
【氏名】松下 直人
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-022627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 34/02
A61L 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲面を有する透光性部材である本体部と、
前記本体部の表面に形成された1または複数の窪み部と、
前記本体部の表面に形成され、少なくとも1つの前記窪み部と連通する溝部と、
備え
、
前記溝部は、前記芳香拡散器が載置された状態において、水平面に対して傾きを有する、芳香拡散器。
【請求項2】
前記溝部は、複数に枝分かれしており、
第1の溝部から枝分かれした第2の溝部の分岐角度は鋭角である、請求項
1に記載の芳香拡散器。
【請求項3】
前記本体部は、円弧形状またはS字形状である、請求項
1または2に記載の芳香拡散器。
【請求項4】
前記本体部の板厚は3mm以上15mm以下である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の芳香拡散器。
【請求項5】
前記本体部はガラス材または樹脂からなる、請求項1~
4のいずれか1項に記載の芳香拡散器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精油等の香りを空間に拡散させる芳香拡散器に関する。
【背景技術】
【0002】
エッセンシャルオイル(精油)またはアロマオイル(香油)の香りを空間に拡散させて芳香を楽しむ芳香浴は、一般に、アロマディフューザー等の、エッセンシャルオイル等を揮発させるための装置または器具が用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数のオイルカートリッジを収容するハウジング内に送風機を設け、送風機による気流により、複数のオイルカートリッジ内に収容されたオイルの揮発を促進し、各オイルカートリッジ内から揮発した複数種類の芳香揮発成分を混合して放散する、芳香拡散装置が開示されている。特許文献1には、芳香拡散装置のハウジング内にヒーターを設置して、オイルカートリッジ内のオイルの揮発をさらに促進することが記載されている。また、特許文献2、3には、超音波振動によって芳香液体のミストを発生させ、芳香を拡散させる芳香拡散装置が記載されている。
【0004】
特許文献4には、木材を用いて基台及び装飾媒体を形成したアロマオイル等芳香装置が開示されている。特許文献4のアロマオイル等芳香装置では、アロマオイル等の芳香剤を収納した基台のオイル等容器に装飾媒体の浸漬片を浸漬させ、浸漬片を介して毛細管現象により芳香剤を装飾媒体全体に拡散させて、空気中に蒸散させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-181211号公報
【文献】登録実用新案第3155655号公報
【文献】特開2016-153117号公報
【文献】特開2013-17620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1~3に記載の技術では、送風機やヒーター、超音波振動発生装置等を用いることによってオイルの芳香を空間に拡散させている。かかる技術では、常に電源が必要となるため、使用したい時にすぐに使用できない場合がある。
【0007】
上記特許文献4に記載の技術では、電源を必要としないが、オイルには引火点が存在する。このため、オイルを含んだ木材等の取り扱い及び廃棄には十分な注意を要する。また、木材からオイルを除去するのは困難である。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、電源を必要とせず、アロマオイル等の芳香を容易に拡散することが可能な芳香拡散器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、曲面を有する透光性部材である本体部と、本体部の表面に形成された1または複数の窪み部と、本体部の表面に形成され、少なくとも1つの窪み部と連通する溝部とを備える、芳香拡散器が提供される。
【0010】
溝部は、芳香拡散器が載置された状態において、水平面に対して傾きを有するように形成してもよい。
【0011】
溝部は、複数に枝分かれしており、第1の溝部から枝分かれした第2の溝部の分岐角度は鋭角としてもよい。
【0012】
本体部は、円弧形状またはS字形状等の曲面を有した形状であってもよい。
【0013】
本体部の板厚は3mm以上15mm以下であってもよい。
【0014】
本体部はガラス材または樹脂から形成されてもよい。
【0015】
上記構成により、芳香拡散器の窪み部に滴下されたオイルは、当該窪み部と連通する溝部へ広がり、液面の表面積が増大する。これにより、電源を使用せずともオイルの芳香を効率よく空間へ拡散させることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明によれば、電源を必要とせず、アロマオイル等の芳香を容易に拡散することが可能な芳香拡散器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る芳香拡散器を示す斜視図である。
【
図2】同実施形態に係る芳香拡散器を示す平面図である。
【
図3】同実施形態に係る芳香拡散器を示す正面図である。
【
図4】同実施形態に係る芳香拡散器を示す側面図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係る芳香拡散器を示す斜視図である。
【
図6】同実施形態に係る芳香拡散器を示す平面図である。
【
図7】同実施形態に係る芳香拡散器を示す正面図である。
【
図8】同実施形態に係る芳香拡散器を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0019】
本発明の実施形態に係る芳香拡散器は、エッセンシャルオイル(精油)またはアロマオイル(香油)の香りを空間に拡散させるために使用される器具である。エッセンシャルオイル(精油)は、植物の花、葉、果皮、果実、心材、根、種子、樹皮、樹脂等から抽出した天然の素材で、有効成分を高濃度に含有した揮発性の芳香物質である。アロマオイル(香油)は、植物に由来する天然香料やエッセンシャルオイル、合成香料を、アルコールや植物油(キャリアオイル)等で希釈した製品である。以下では、エッセンシャルオイル及びアロマオイルを「オイル」とも総称する。
【0020】
本実施形態に係る芳香拡散器は、テーブル等の卓上に載置して使用される。芳香拡散器は、曲面を有する透光性部材である本体部と、本体部の表面に形成された1または複数の窪み部と、本体部の表面に形成され、少なくとも1つの窪み部と連通する溝部と、備える。芳香拡散器の窪み部に滴下されたオイルは、当該窪み部と連通する溝部へ広がり、液面の表面積が増大する。これにより、電源を使用せずともオイルの芳香を効率よく空間へ拡散させることができる。
【0021】
本体部となる透光性部材は、重力以外の外力によってその曲面形状が変化しない程度の剛性を有するものである。ここで、透光性部材とは、透光性を有する部材、すなわち光が透過する性質を有する物質からなる部材をいう。透光性部材には、光の透過率が高く、当該部材を通して向こう側を明確に認識することができる透明部材や、透過する光が拡散する、または、光の透過率が低いために透明度の低い半透明部材、不透明部材が含まれる。例えば、本体部は、ガラス材または樹脂から形成してもよい。樹脂は、例えばアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等である。本体部をガラス材または樹脂から形成することで、使用後には水洗してオイルを除去することができる。したがって、本実施形態に係る芳香拡散器は、恒久的に、かつ、衛生的に、使用することが可能である。
【0022】
このように、本実施形態に係る芳香拡散器は、アロマオイル等の芳香を容易に拡散することができる、手軽に使用可能な器具である。以下、本実施形態に係る芳香拡散器について、詳細に説明する。以下の説明では、一例として、本体部にガラス材を用いる場合について説明する。
【0023】
[1.第1の実施形態]
まず、
図1~
図4に基づいて、本発明の第1の実施形態に係る芳香拡散器100について説明する。
図1は、本実施形態に係る芳香拡散器100を示す斜視図である。
図2は、本実施形態に係る芳香拡散器100を示す平面図である。
図3は、本実施形態に係る芳香拡散器100を示す正面図である。
図4は、本実施形態に係る芳香拡散器100を示す側面図である。
図3に示す正面図において、X軸の正方向側を右端側、負方向側を左端側ともいう。
【0024】
本実施形態に係る芳香拡散器100は、曲面を有する透光性部材である本体部110と、本体部110の表面115に形成された1または複数の窪み部120と、本体部110の表面115に形成され、少なくとも1つの窪み部120と連通する溝部130と、を備える。本実施形態において、本体部110はガラス材からなる。
【0025】
本実施形態に係る本体部110は、長方形の板状のガラス材が長手方向に湾曲した円弧形状の部材である。本体部110は、例えば曲げガラス板からなる。正面視すると、
図3に示すように、本体部110はアーチ状に湾曲している。芳香拡散器100を載置面Sに載置したとき、右端112a及び左端112bで底面117が載置面Sと接触し、長手方向中央の頂部111が載置面Sから最も高い位置にある。本体部110にこのような曲面を持たせることで、曲面によって生じる勾配により、本体部110の表面115に滴下されたオイルが高位置(すなわち頂部111側)から低位置(すなわち右端112a側または左端112b側)に向かって流れやすくなる。
【0026】
本体部110の板厚tは、3mm以上15mm以下であるのが好ましい。板厚tを3mm以上とすることにより、耐久性が高まり、ユーザが芳香拡散器100を取り扱う際の質感が良好となる。また、板厚tを15mm以下とすることにより、ガラス材の加工性を高めることができる。
【0027】
本体部110の曲面の曲率半径は100mm以上2000mm以下であるのが好ましい。かかる曲率半径とすることで、曲面によって生じる勾配によりオイルが拡散しやすくなる。
【0028】
また、芳香拡散器100を載置面Sに載置したとき、載置面Sからの本体部110の最大高さが、4mm以上100mm以下であるのが好ましい。これにより、本体部110の表面115の窪み部120に滴下されたオイルが拡散しやすくなる。本体部110の最大高さは、本体部110の大きさや形状等に応じて決定すればよい。
【0029】
本体部110をガラス材により形成することで、芳香拡散器100の使用後に水洗してオイルを容易に除去することができる。したがって、芳香拡散器100は、恒久的に、かつ、衛生的に、使用することができる。また、本体部110をガラス材により形成することで爽やかな外観とすることができる。ガラス材の色、透明度の違いによって、芳香拡散器100の外観がユーザに対して異なる印象を与えることもできる。
【0030】
窪み部120は、本体部110の表面115に形成された凹部であって、オイルが滴下される部分である。窪み部120は、本体部110の表面115に点在するように配置される。例えば、本実施形態に係る芳香拡散器100には、
図2に示すように7つの窪み部120a~120gが設けられている。窪み部120の開口形状は特に限定されるものではなく、例えば円形や楕円形、多角形等にし得る。また、窪み部120は、底面が平坦な筒状の窪みであってもよく、球面の一部(球冠)のような形状の窪みであってもよい。さらに、窪み部120内の一部にさらなる窪み部120があってもよく、それとは逆に窪み部120内の一部に凸部があってもよい。
【0031】
窪み部120は、本体部110の表面115を加工して形成される。本実施形態のように本体部110がガラス材からなる場合には、例えばサンドブラスト処理、エッチング処理、ウォータージェット、レーザ加工等によって窪み部120を形成することができる。なお、本体部110が樹脂からなる場合には、例えばサンドブラスト処理、ウォータージェット、レーザ加工等によって窪み部120を形成し得る。1つの窪み部120からは、1または複数の溝部130が延びている。窪み部120に滴下されたオイルは、窪み部120に溜まり、窪み部120と連通する溝部130へと拡散する。
【0032】
窪み部120の底面の表面粗さ(Ra)は、1μm以上10μm以下であるのが好ましい。窪み部120の底面をかかる表面粗さとすることで、窪み部120に滴下されたオイルの液滴と窪み部120の底面との接触角を小さくすることができる。その結果、窪み部120の底面の親油性は高まり、オイルの濡れ広がりがよくなり、芳香は拡散しやすくなる。
【0033】
窪み部120の面積は、25mm2以上700mm2以下であるのが好ましい。なお、窪み部120の面積は、本体部110の表面115での窪み部120の中心位置において、接平面を垂線方向視したときの窪み部120の投影面積とする。窪み部120の面積を25mm2以上とすることにより、芳香を楽しむために必要な適量のオイルを収容することができ、かつ、ドロッパータイプやスポイトタイプのオイルボトルからオイルを滴下させる際に、容易に狙った窪み部120にオイルを滴下させることができる。また、窪み部120の面積を700mm2以下とすることにより、多量のオイルを滴下せずとも、オイルを窪み部120から溝部130へ流れやすくすることができる。窪み部120の深さは、例えば溝部130と同程度としてもよい。例えば、窪み部120の底面と溝部130の底面とを面一にして、段差がないようにすることで、オイルの流れをよくすることができる。
【0034】
溝部130は、本体部110の表面115に形成された線状の凹部であって、オイルの流路となる。溝部130は、本体部110の表面115を窪み部120と同様に加工して形成される。溝部130は、本体部110がガラス材からなる場合には、例えばサンドブラスト処理、エッチング処理、ウォータージェット、レーザ加工等によって形成することができ、本体部110が樹脂からなる場合には、例えばサンドブラスト処理、ウォータージェット、レーザ加工等によって窪み部120を形成し得る。溝部130は、少なくとも1つの窪み部120と連通しており、窪み部120に滴下されたオイルを窪み部120から拡散させる。溝部130を、枝分かれさせ、本体部110の表面115に広がるように形成することで、オイルをより広範囲に拡散させることができる。
【0035】
例えば、溝部130のうち少なくとも1つは、載置面Sに載置した状態において、水平面に対して傾斜しているのがよい。また、任意の溝部(第1の溝部)と、枝分かれさせた他の溝部(第2の溝部)130との分岐角度αは鋭角であるのがよい。ここで、分岐角度αとは、載置面Sに載置した状態において任意の溝部(第1の溝部)130よりも低い位置を下流としたとき、任意の溝部(第1の溝部)130と他の溝部(第2の溝部)との分岐点から任意の溝部(第1の溝部)130が下流方向に延びる部分と、他の溝部(第2の溝部)130とがなす角度である。例えば、
図2においては、窪み部120dから延びる溝部131aから溝部131bが枝分かれしている。溝部131aの分岐点から下流側の部分と溝部131bとのなす角度が、分岐角度αである。分岐角度αを鋭角とすることで、溝部130を流れるオイルが枝分かれした溝部130へスムーズに流れるようにすることができる。
【0036】
例えば
図2に示すように、本体部110の頂部111に形成されている窪み部120aには、窪み部120aから放射状に延びる4つの溝部130a~130dが連通している。窪み部120aに滴下されたオイルは、溝部130a~130dにそれぞれ流れ込み、拡散する。また、溝部130は、2つの窪み部120を連結するように形成してもよい。例えば
図2に示すように、溝部130aは、頂部111の窪み部120aと頂部111より左端112b側の窪み部120bとを連結させている。これにより、頂部111の窪み部120aに滴下されたオイルは、溝部130aを介して窪み部120bに流れ込むことができる。ここで、窪み部120は、載置面Sに載置した状態において、連通する少なくとも1つの溝部130よりも相対的に高い位置に形成されているのがよい。
【0037】
また、窪み部120bには、本体部110の左端112b側に向かって延びる溝部130e、130fが連通している。オイルを窪み部120bに滴下すると、窪み部120bのオイルは溝部130e、130fへ拡散する。このように、窪み部120に滴下されたオイルは、連通する溝部130を流れ、本体部110の表面115にて拡散されていく。本体部110の表面115に広範囲にわたって溝部130を形成することで、オイルの芳香をより拡散させることができる。
【0038】
溝部130は線状であればよく、直線、曲線等にし得る。溝部130で模様を表せば、芳香拡散器100の美観をより高めることができる。例えば
図2に示すように、本体部110の表面115に葉形状の溝部130を形成してもよい。
図2に示す芳香拡散器100では、例えば窪み部120bと連通する溝部130e、130fの末端部分が葉形状に形成されている。また、葉形状の溝部130のように、溝部130は枝分かれしたり、他の溝部130と連結したりしてもよい。なお、溝部130で表す模様は特に限定されず、葉形状の他にも、例えば、花や果実、樹木、動物、波模様、幾何学模様等であってもよい。
【0039】
溝部130の断面形状は、例えばV形状またはU形状としてもよい。溝部130の幅は、0.5mm以上4mm以下であるのが好ましい。溝部130の幅を0.5mm以上とすることにより、適量のオイルが溝部130を流れ、芳香を効果的に拡散させることができる。溝部130の幅を4mm以下とすることにより、オイルが溝部130を流れやすくなる。また、溝部130の深さは、0.5mm以上4mm以下であるのが好ましい。溝部130の深さを0.5mm以上とすることにより、適量のオイルが溝部130を流れ、芳香を効果的に拡散させることができる。溝部130の深さを4mm以下とすることにより、使用後に水洗によって表面115に残存したオイルを容易に除去することができる。なお、窪み部120及び溝部130の深さは、本体部110の板厚よりも小さくする。
【0040】
本実施形態に係る芳香拡散器100は、例えば、本体部110となる板ガラスを曲げた後、サンドブラスト処理、エッチング処理、ウォータージェット、レーザ加工等により本体部110の表面115に窪み部120及び溝部130を加工することにより製造することができる。
【0041】
芳香拡散器100において、曲面を有する本体部110の窪み部120に滴下されたオイルは、窪み部120から複数の溝部130に拡散する。これにより、オイル液面の表面積が増大し、駆動のために電源を必要とする送風機やヒーター、超音波振動発生装置等を設けることなくオイルの芳香を効率よく空間へ拡散させることができる。オイルの拡散は、本体部110の傾斜や窪み部120の表面粗さに起因した拡張ぬれ、溝部130の断面形状に起因する毛細管現象等によって生じる。このようなオイルを拡散させる要因を効果的に影響させあうことで、窪み部120に滴下されたオイルをより拡散させることができ、オイル液面の表面積を増大させることができる。
【0042】
また、オイルが滴下される窪み部120を本体部110の表面115に複数点在させることにより、それぞれの窪み部120に滴下するオイルの量が少量であっても、効果的にオイルの表面積を拡大させることができるため、芳香を効果的に拡散させることができる。このように、本実施形態に係る芳香拡散器100を用いればオイルの使用量を節約でき、特に比較的高価なエッセンシャルオイル(精油)を使用する際の節約効果は大きくなる。さらに、オイルが滴下される窪み部120を複数点在させることによって、一度の芳香浴において、オイルの滴下とオイルが広がる様子を視覚的に複数回楽しむこともできる。
【0043】
例えば、本体部の形状が平面であり、オイルの滴下箇所(窪み部)が1か所のみである場合、滴下されたオイルが拡散する範囲は限定的となる。本実施形態に係る芳香拡散器100のように、曲面を有する本体部110に複数の窪み部120を設けることで、ぞれぞれの窪み部120において、窪み部120に滴下されたオイルが溝部130へ拡散するため、オイル液面の表面積を増大させることができる。
【0044】
さらに、本体部110をガラス材により形成することで、水洗によりオイルを容易に除去できるため、芳香拡散器100を恒久的に、かつ、衛生的に、使用することができる。また、本体部110をガラス材により形成することで爽やかな外観とすることができる。
【0045】
[2.第2の実施形態]
次に、
図5~
図8に基づいて、本発明の第2の実施形態に係る芳香拡散器200について説明する。
図5は、本実施形態に係る芳香拡散器200を示す斜視図である。
図6は、本実施形態に係る芳香拡散器200を示す平面図である。
図7は、本実施形態に係る芳香拡散器200を示す正面図である。
図8は、本実施形態に係る芳香拡散器200を示す側面図である。
図7に示す正面図において、X軸の正方向側を右端、負方向側を左端ともいう。
【0046】
本実施形態に係る芳香拡散器200は、第1の実施形態に係る芳香拡散器100と比較して、本体部の形状が異なる。本実施形態に係る芳香拡散器200の窪み部及び溝部の機能及び構成は第1の実施形態と同様である。このため、以下の説明では、第1の実施形態に係る芳香拡散器100と同様の機能、構成については、詳細な説明を省略する。
【0047】
本実施形態に係る芳香拡散器200は、曲面を有する透光性部材である本体部210と、本体部210の表面215に形成された1または複数の窪み部220と、本体部210の表面215に形成され、少なくとも1つの窪み部220と連通する溝部230と、を備える。本実施形態において、本体部210はガラス材からなる。
【0048】
本実施形態に係る本体部210は、長方形の板状のガラス材が長手方向に2回湾曲したS字形状の部材である。本体部210は、例えば曲げガラス板からなる。正面視すると、
図7に示すように、本体部210は、曲面を有する第1の湾曲部210A及び第2の湾曲部210Cと、平面の第1の傾斜部210B及び第2の傾斜部210Dとからなる。
【0049】
第1の湾曲部210Aは、上に凸状に湾曲した部分であり、本体部210の頂部211を有する。長手方向(X方向)において、一端は本体部210の右端212aであり、芳香拡散器200を載置面Sに載置したときに底面217が載置面Sと接触する。他端は、第1の傾斜部210Bに連続している。第2の湾曲部210Cは、下に凸状に湾曲した部分であり、本体部210の谷部213を有する。芳香拡散器200を載置面Sに載置したときに谷部213の底面217が載置面Sと接触する。長手方向(X方向)において、第2の湾曲部210Cの右端212a側の一端は第1の傾斜部210Bに連続し、左端212b側の他端は第2の傾斜部210Dに連続している。
【0050】
第1の傾斜部210Bは、第1の湾曲部210Aと第2の湾曲部210Cとを連結する。第1の傾斜部210Bは、
図7に示すように、高位置にある第1の湾曲部210Aの左端212b側の端部から、低位置にある第2の湾曲部210Cの右端212a側の端部に向かって傾斜している。第2の傾斜部210Dは、第2の湾曲部210Cの左端212b側の端部から、当該端部における接線に沿って斜め上方に延びている。第2の傾斜部210Dは、第2の湾曲部210Cの曲面の一部とみなせる程度に設けられていればよい。第2の湾曲部210Cの反対側にある第2の傾斜部210Dの端部は、本体部210の左端212bである。
【0051】
本体部210にこのような湾曲部210A、210C及び傾斜部210B、210Dを持たせることで、曲面または傾斜面により生じる勾配によって、本体部210の表面215に滴下されたオイルが高位置(すなわち第1の湾曲部210Aの頂部211側)から低位置(すなわち第2の湾曲部210Cの谷部213側)に向かって流れやすくなる。特に、本実施形態に係る芳香拡散器200では、全表面積に対する第1の傾斜部210Bの表面積の割合が50%以上ある。このように、芳香拡散器200を載置面Sに載置したときに水平面に対して傾斜する部分を多くすることで、点在する窪み部220のいずれにオイルを滴下しても、オイルが拡散しやすいものとすることができる。
【0052】
なお、本実施形態に係る本体部210の形状は、点対称ではないが、本発明はかかる例に限定されず、点対称な形状であってもよい。例えば、第1の湾曲部210Aの形状と、第2の湾曲部210C及び第2の傾斜部210Dからなる部分の形状とを、同一としてもよい。すなわち、本体部210の両端部分は、ともに湾曲部であってもよく、湾曲部及び平面部からなる部分であってもよい。また、
図5~
図8に示す芳香拡散器200では、全表面積に対する第1の傾斜部210Bの表面積の割合は50%以上であるが、本発明はかかる例に限定されない。全表面積に対する第1の湾曲部210A、第2の湾曲部210C、第1の傾斜部210B、第2の傾斜部210Dの表面積の各割合は、芳香拡散器200の外観や、卓上に載置したときの安定性等を考慮して、適宜決定すればよい。
【0053】
本体部210の板厚tは、第1の実施形態と同様、3mm以上15mm以下であるのが好ましい。
【0054】
また、第1の湾曲部210Aの曲率半径を第1の曲率半径R1、第2の湾曲部210Cの曲率半径を第2の曲率半径R2としたとき、第1の曲率半径R1及び第2の曲率半径R2は、それぞれ10mm以上1000mm以下であるのが好ましく、第1の曲率半径R1及び第2の曲率半径R2のうち、小さい方の曲率半径は、10mm以上100mm以下であるのが好ましい。かかる曲率半径とすることで、第1の湾曲部210Aの頂部211と第2の湾曲部210Cの谷部213とに適切な高低差を生じさせ、これらを連結する第1の傾斜部210Bにオイルを拡散させるのに適した勾配を生じさせることができる。
図5~
図8に示す芳香拡散器200においては、第1の曲率半径R1よりも第2の曲率半径R2の方が大きい。しかし、本発明はかかる例に限定されず、第2の曲率半径R2よりも第1の曲率半径R1が大きくてもよく、第1の曲率半径R1と第2の曲率半径R2とが同一であってもよい。第1の曲率半径R1及び第2の曲率半径R2は、芳香拡散器200の外観や、卓上に載置したときの安定性等を考慮して、適宜決定すればよい。
【0055】
また、第1の実施形態と同様、芳香拡散器200を載置面Sに載置したとき、載置面Sからの本体部210の最大高さは、4mm以上100mm以下であるのが好ましい。本体部210の最大高さは、本体部210の大きさや形状等に応じて決定すればよい。
【0056】
本実施形態に係る芳香拡散器200においても、本体部210をガラス材により形成することで、芳香拡散器200の使用後に水洗してオイルを容易に除去することができ、芳香拡散器200を恒久的にかつ衛生的に使用することができる。また、本体部210をガラス材により形成することで爽やかな外観とすることができ、ガラス材の色、透明度の違いによって、芳香拡散器200の外観がユーザに対して異なる印象を与えることもできる。
【0057】
窪み部220は、本体部210の表面215に形成された凹部であって、オイルが滴下される部分である。窪み部220は、本体部210の表面に点在するように配置され、形状、底面の表面粗さ、面積、深さ、加工方法は第1の実施形態と同様とすることができる。例えば本実施形態に係る芳香拡散器200には、
図6に示すように6つの円形の窪み部220a~220fが設けられている。1つの窪み部220からは、1または複数の溝部230が延びている。窪み部220に滴下されたオイルは、窪み部220に溜まり、窪み部220と連通する溝部230へと拡散する。
【0058】
溝部230は、本体部210の表面215に形成された線状の凹部であって、オイルの流路となる。溝部230の断面形状、幅、深さ、分岐角度、加工方法は、第1の実施形態と同様とすることができる。溝部230は、少なくとも1つの窪み部220と連通しており、窪み部220に滴下されたオイルを窪み部220から拡散させる。溝部230を、枝分かれさせ、本体部210の表面215に広がるように形成することで、オイルをより広範囲に拡散させることができる。溝部230のうち少なくとも1つは、載置面Sに載置した状態において、水平面に対して傾斜しているのがよい。
【0059】
例えば
図6に示すように、本体部210の第1の湾曲部210Aの頂部211に形成されている窪み部220aには、窪み部220aから放射状に延びる5つの溝部230a~230eが連通している。窪み部220aに滴下されたオイルは、溝部230a~230eにそれぞれ流れ込み、拡散する。
【0060】
また、溝部230は、2つの窪み部220を連結するように形成してもよい。例えば
図6に示すように、溝部230aは、頂部211の窪み部220aと第1の傾斜部210Bに形成された窪み部220bとを連結させている。これにより、頂部211の窪み部220aに滴下されたオイルは、溝部230aを介して窪み部220bに流れ込むことができる。
【0061】
さらに、溝部230aから溝部231a、231bが枝分かれしており、溝部231a、231bそれぞれからも溝部が枝分かれしている。これにより、オイルが広範囲に拡散される。溝部230aから枝分かれした溝部231a、231bの分岐角度は鋭角であり、溝部230aから溝部231a、231bへ、オイルがスムーズに流れる。また、窪み部220bには、本体部210の左端212b側に向かって延びる溝部232a、232b、232cが連通している。オイルを窪み部220bに滴下すると、窪み部220bのオイルは溝部232a、232b、232cへ拡散する。
【0062】
このように、窪み部220に滴下されたオイルは、連通する溝部230を流れ、本体部210の表面215にて拡散されていく。本体部210の表面215に広範囲にわたって溝部230を形成することで、オイルの芳香をより拡散させることができる。
【0063】
本実施形態に係る芳香拡散器200は、例えば、本体部210となる板ガラスを曲げた後、サンドブラスト処理、エッチング処理、ウォータージェット、レーザ加工等により本体部210の表面215に窪み部220及び溝部230を加工することにより製造することができる。
【0064】
芳香拡散器200において、曲面を有する本体部210の窪み部220に滴下されたオイルは、窪み部220から複数の溝部230に拡散する。これにより、オイル液面の表面積が増大し、駆動のために電源を必要とする送風機やヒーター、超音波振動発生装置等を設けることなくオイルの芳香を効率よく空間へ拡散させることができる。
【0065】
また、オイルが滴下される窪み部220を本体部210の表面215に複数点在させることにより、それぞれの窪み部220に滴下するオイルの量が少量であっても、効果的にオイルの表面積を拡大させることができるため、芳香を効果的に拡散させることができる。このように、本実施形態に係る芳香拡散器200を用いればオイルの使用量を節約でき、特に比較的高価なエッセンシャルオイル(精油)を使用する際の節約効果は大きくなる。さらに、オイルが滴下される窪み部120を複数点在させることによって、一度の芳香浴において、オイルの滴下とオイルが広がる様子を視覚的に複数回楽しむこともできる。
【0066】
さらに、本体部210をガラス材により形成することで、水洗によりオイルを容易に除去できるため、芳香拡散器200を恒久的に、かつ、衛生的に、使用することができる。また、本体部210をガラス材により形成することで爽やかな外観とすることができる。
【実施例】
【0067】
厚さ6mmの板ガラスを加熱により曲率半径300mmの曲面となるように曲げ加工を施し、幅100mm、弦幅200mmに調整した。その後、サンドブラストによって板ガラスの凸面側の表面に、窪み部及び溝部を形成し、
図1~
図4に示したような芳香拡散器100を製造した。溝部は、幅2mm、深さ2mmとし、直線の溝を組み合わせてオイルの流路とした。この流路に重なるように、オイルを滴下する区部を7か所点在させて設けた。窪み部の形状は、直径8mm、深さ2mmの円形とした。オイルを窪み部に1滴滴下すると、オイルは滴下直後に流路である溝部を通って拡散し、オイルの芳香は十分に良く拡散した。
【0068】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0069】
例えば、上記実施形態では、本体部全体が1つの湾曲部である、または、本体部が2つの湾曲部を有する芳香拡散器を示したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、本体部は2つ以上の湾曲部を有していてもよい。また、本体部の曲面の形状は、上記実施形態にて示した形状に限定されず、例えば半球状であってもよく、複合的な曲率を有する形状(すなわち、弧の位置によって曲率が変化する形状)等であってもよい。さらに、上記実施形態では、本体部は一方向(X方向)にのみ曲率の変化を有する形状であったが、本発明はかかる例に限定されず、複数方向に曲率の変化を有するような曲面を有するものであってもよい。例えば、本体部は、円錐の側面部分の一部の形状を有するものであってもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、長方形の板ガラスを長手方向に曲げ加工して本体部を形成したが、本発明はかかる例に限定されない。曲げ加工前の板ガラスの平面形状は特に限定されず、例えば、正方形、円形等であってもよい。
【0071】
さらに、上記実施形態において、本体部には曲げガラス板を用いたが、本実施形態は係る例に限定されず、他の透光性部材を用いてもよい。例えば、本体部として、吹きガラスを用いてもよい。球状の吹きガラスを切断することで曲面を有する本体部を形成することができる。また、上述したように、本体部はアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の樹脂であってもよい。このような透光性部材を本体部に用いる場合にも、上記実施形態と同様に芳香拡散器を構成することができ、同様の機能及び効果を有することができる。なお、ガラス材は、樹脂よりも衛生的で耐久性に優れ、傷が付きにくい。一方、樹脂は、ガラス材よりも加工が容易であり、形状の自由度が高い。さらに、本体部は、透明部材であってもよく、すりガラスや乳白色アクリル樹脂のような半透明部材、不透明部材であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、エッセンシャルオイル(精油)またはアロマオイル(香油)のディフューザーとして適用可能であり、電源を使用せずに芳香を効率よく空間へ拡散させることができる。本発明に係る芳香拡散器は、例えば、家庭での個人的な使用から、ホテルの居室やオフィス等の比較的狭い空間で使用されるアロマディフューザーとして活用が期待される。
【符号の説明】
【0073】
100、200 芳香拡散器
110、210 本体部
111、211 頂部
112a、212a (本体部の)右端
112b、212b (本体部の)左端
115、215 表面
117、217 底面
120、220 窪み部
130、230 溝部
210A 第1の湾曲部
210B 第1の傾斜部
210C 第2の湾曲部
210D 第2の傾斜部
213 谷部