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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】水処理槽の更新方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/00 20230101AFI20240118BHJP
   B01D 21/00 20060101ALI20240118BHJP
   C02F 3/12 20230101ALI20240118BHJP
【FI】
C02F1/00 J
B01D21/00 D
B01D21/00 G
C02F3/12 B
C02F3/12 S
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022080524
(22)【出願日】2022-05-16
(62)【分割の表示】P 2018044686の分割
【原出願日】2018-03-12
(65)【公開番号】P2022105223
(43)【公開日】2022-07-12
【審査請求日】2022-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】三井 昌文
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-132087(JP,A)
【文献】特開2003-117578(JP,A)
【文献】特開平11-253942(JP,A)
【文献】特開2005-81273(JP,A)
【文献】特開2014-128765(JP,A)
【文献】特開2004-188255(JP,A)
【文献】特開2014-133206(JP,A)
【文献】特開2004-283637(JP,A)
【文献】特開2005-246310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00
1/44
3/12
E03F 1/00 - 11/00
B01D 21/00 - 21/34
61/00 - 71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈殿槽の前段に配置される曝気槽を更新するための方法であって、
既設の曝気槽に隣接する位置に仮設の曝気槽を設置する工程と、
前記仮設の曝気槽を前記沈殿槽に接続することで、前記既設の曝気槽から前記仮設の曝気槽に処理を切り替える工程と、
前記既設の曝気槽を更新する工程を備え、
前記仮設の曝気槽は、膜分離手段を有することを特徴とする、水処理槽の更新方法。
【請求項2】
前記仮設の曝気槽は、前記既設の曝気槽よりも小さいことを特徴とする、請求項1に記載の水処理槽の更新方法。
【請求項3】
前記仮設の曝気槽は、前記既設の曝気槽を更新後撤去されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の水処理槽の更新方法。
【請求項4】
前記仮設の曝気槽は、移動可能な架台に積載されることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の水処理槽の更新方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理槽の更新方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、排水処理においては複数の処理工程が行われ、水処理設備にはそれぞれの処理工程に適した水処理槽が設けられている。
例えば、排水処理の一つである凝集沈殿処理においては、原水に無機凝集剤を添加する反応槽、さらに高分子凝集剤を添加する凝集槽、凝集剤が添加された被処理水から固形物と被処理水に分離する凝集沈殿槽などの複数の水処理槽が設けられ、これらの水処理槽を介して排水処理が行われていく。このような排水処理においては、水処理設備全体として大型化するだけではなく、処理する原水の量が多量であること等から、水処理槽そのものが1つ1つの装置として大型化している。特に、数十年前に供用を開始したような水処理槽については、処理技術上、一定の処理レベルを達成するために装置を大型化する傾向が顕著であったといえる。
【0003】
例えば、特許文献1には、水処理槽の省スペース化を目的とし、凝集沈殿処理に係る複数の水処理槽をユニット化することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-87089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるように、新規の排水処理設備として、水処理槽を小型化することは知られている。一方、現在稼働している既設の水処理槽は、大型装置であると同時に、老朽化が著しいものが多い。また、近年の排水処理においてはより高度な処理を求められるため、既設の水処理槽の更新が大変重要となっている。しかしながら、更新の際に、新たに水処理槽を追加するための十分な設置スペースがない場合、水処理槽を長期間停止しなければ更新ができないという問題がある。例えば、山間部や工場密集地域など平坦で利用可能な敷地面積が少ない場所においては、十分な設置スペースを確保することは困難である。この際、複数の水処理槽からなる水処理設備においては、更新対象である1つの水処理槽が停止することで、更新予定のない他の水処理槽に係る排水処理もすべて停止しなければならないという問題も生じる。
【0006】
本発明の課題は、既設の水処理槽を更新するにあたって、水処理槽の水処理機能を停止することなく、水処理槽の更新を行うとともに、少ない設置スペースにおいても水処理槽の更新を可能とする水処理槽の更新方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、水処理槽の更新方法として、既設の水処理槽に隣接して仮設の水処理槽を設置し、これを切り替えてから既設の水処理槽の更新を行うことで、水処理機能を停止することなく水処理槽の更新を行うことが可能になることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の水処理槽の更新方法である。
【0008】
上記課題を解決するための本発明の水処理槽の更新方法は、水処理槽を更新するための方法であって、既設の水処理槽に隣接する位置に仮設の水処理槽を設置する工程と、既設の水処理槽から仮設の水処理槽に処理を切り替える工程と、既設の水処理槽を更新する工程を備えるという特徴を有する。
本発明の水処理槽の更新方法は、既設の水処理槽に隣接する位置に仮設の水処理槽を設置することで、設置スペースの少ない場所であっても代替となる水処理槽を設けることができ、仮設の水処理槽での処理に切り替えることで、水処理機能を停止することなく既設の水処理槽の更新が可能となる。
【0009】
また、本発明の水処理槽の更新方法の一実施態様としては、仮設の水処理槽は、既設の水処理槽よりも高負荷で処理が可能であるという特徴を有する。
この特徴によれば、仮設の水処理槽は既設の水処理槽よりも処理能力を高くすることで、既設の水処理槽の更新中においても、それまで既設の水処理槽で行っていた水処理能力を下げることなく、更新を行うことができる。
【0010】
また、本発明の水処理槽の更新方法の一実施態様としては、仮設の水処理槽は、既設の水処理槽よりも小さいという特徴を有する。
この特徴によれば、特に設置スペースの少ない箇所における水処理槽の更新であっても、対応が可能となる。
【0011】
また、本発明の水処理槽の更新方法の一実施態様としては、仮設の水処理槽は、既設の水処理槽を更新後撤去するという特徴を有する。
この特徴によれば、仮設の水処理槽を設置する際に、その後撤去することを前提に設置を行うことができる。これにより、設置場所として本来空間を空ける必要のある道路などに仮設の水処理槽を設置することも可能となる。また、水処理槽の設置に係る固定手段についても、常設の水処理槽と異なる簡易な手段を用いることも可能となる。
【0012】
また、本発明の水処理槽の更新方法の一実施態様としては、既設の水処理槽は、凝集沈殿槽又は曝気槽であるという特徴を有する。
この特徴によれば、水処理槽のうち、特に大型の水処理槽である凝集沈殿槽又は曝気槽を更新対象とすることで、従来更新が困難であった水処理槽についても、水処理機能を停止することなく更新が可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、既設の水処理槽を更新するにあたって、水処理槽の水処理機能を停止することなく、水処理槽の更新を行うとともに、少ない設置スペースにおいても水処理槽の更新を可能とする水処理槽の更新方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施態様に係る水処理槽の更新方法の工程説明図である。
図2】従来の水処理槽の更新方法の工程説明図である。
図3】本発明の第1の実施態様に係る仮設の水処理槽の一例を示す概略説明図である。
図4】本発明の第2の実施態様に係る水処理槽の更新方法の工程説明図である。
図5】本発明の第1の実施態様に係る仮設の水処理槽の一例を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る好適な実施態様について詳細に説明する。
なお、この実施態様は、本発明を限定するものではない。
【0016】
水処理槽は、水処理に係る公知の装置であれば特に種類は問わない。例えば、下水処理場、廃水処理場、食品工場、製薬工場等の有機性排水処理設備、メッキ工場等の無機性排水処理設備、浄水場等の上水処理設備等に利用される水処理槽である。より具体的には、沈砂地設備、沈殿池設備、曝気槽、好気反応槽、嫌気反応槽、オキシデーションディッチ槽、凝集槽、沈殿槽、汚泥濃縮槽、汚泥消化槽、貯留タンク、消毒設備等の排水処理設備などが挙げられる。
【0017】
[第1の実施態様]
図1は、本発明の第1の実施態様における水処理槽の更新方法を示す工程説明図である。図1(A)は、既設の水処理槽に隣接する位置に仮設の水処理槽を設置する工程、図1(B)は、既設の水処理槽から仮設の水処理槽に処理を切り替える工程、図1(C)は、既設の水処理槽を更新する工程を示すものである。
本実施態様に係る水処理設備100は、複数の水処理槽10を有している。ここで、水処理設備100を凝集沈殿処理設備とし、水処理槽10はそれぞれ反応槽10a、凝集槽10b、凝集沈殿槽10cとする。また、水処理設備100は、反応槽10a及び凝集槽10bに添加する凝集剤を貯留する凝集剤タンクTを備えている。ここで、更新対象となる水処理槽10′を凝集沈殿槽10cとした場合、凝集沈殿槽10cに隣接して仮設の水処理槽20を設けている。図1には、水処理設備100内における水処理槽10a~10cの配置例を示しており、仮設の水処理槽20についても配置例を示している。水処理槽10a、10b、10cは、それぞれラインL10、L11により接続されている。なお、図1中において、太線で示されたものはその工程で加えられた要素を示し、破線で示されたものはその工程で減らされた要素を示すものである。
【0018】
一方、図2は、従来の水処理設備110における水処理槽の更新方法を示す工程説明図である。図2(A)は、既設の水処理槽の配置例である。図2(B)及び図2(C)は、既設の水処理槽を更新する工程を示すものである。なお、本発明の水処理設備100と共通する構造については、同じ番号を付与し、説明を省略する
従来、水処理槽10を更新する場合、図2に示すように、更新対象となる水処理槽10′を一度解体して更地にし、新しい水処理槽30を設置する。あるいは、まったく別の敷地を探し、水処理設備110ごと更新するという手段がとられている。この場合、図2(B)に示すように、更新対象となる水処理槽10′を解体することで、水処理槽10′以外の水処理槽10a及び10bについても運転を停止することになる。
一方、本発明に係る水処理槽の更新方法においては、更新対象となる水処理槽10′に隣接して仮設の水処理槽20を設け、既設の水処理槽10′から仮設の水処理槽20に処理を切り替えることで、水処理設備100として水処理機能を停止することなく、既設の水処理槽を新しい水処理槽30に更新することが可能となるものである。
以下、水処理槽の更新に係るそれぞれの工程について説明する。
【0019】
図1(A)に示すように、まず、更新対象となる水処理槽10′(凝集沈殿槽10c)に隣接する位置に仮設の水処理槽20を設置する。このとき、図1(A)に示すように、仮設の水処理槽20は、既設の水処理槽10′よりも小さいことが好ましい。例えば、仮設の水処理槽20は、既設の水処理槽10′の1/2以下の面積で設置が可能なものとすることが好ましい。これにより、既設の水処理槽10′と同程度の規模の水処理槽を設置するだけのスペースが確保できない場合であっても、敷地内に仮設の水処理槽20を設置することが可能となる。また、この際、仮設の水処理槽20が敷地を超える大きさであっても、水処理設備100として運用に問題がないレベルであればよく、仮設の水処理槽20の大きさの上限については特に制限されない。
【0020】
また、仮設の水処理槽20としては、既設の水処理槽10′よりも高負荷で処理が可能であることが好ましい。仮設の水処理槽20として高負荷で処理が可能な水処理槽を用いることで、既設の水処理槽10′で行われていた水処理機能を低減させることなく、かつ装置を小型化することが可能となる。
【0021】
したがって、仮設の水処理槽20としては、既設の水処理槽10′の1/2以下の面積で設置が可能である高負荷処理槽を用いることが好ましい。このような仮設の水処理槽20の具体例としては、凝集沈殿槽としては、ディストリビュータを用いたディストリビューション式高速凝集沈殿槽やスラッジブランケット式超高速凝集沈殿槽などが挙げられる。
【0022】
仮設の水処理槽20の一例として、図3に、スラッジブランケット式超高速凝集沈殿槽の概略説明図を示す。
図3に示すように、本実施態様に係る仮設の水処理槽20としてのスラッジブランケット式超高速凝集沈殿槽は、処理槽1内に、被処理水Wを導入する被処理水導入部2と、被処理水W中のフロック(固形物)を捕捉し、フロックと処理水W1に分離するスラッジブランケット部3と、処理水W1の水質を測定する水質検知部4と、処理水W1を排出する処理水排出ラインL1を備え、スラッジブランケット部3上方には、処理水W1からなる清澄層Cが形成されている。
また、処理槽1は、スラッジブランケット部3を通過することにより凝集したフロックが、スラッジブランケット部3の上端を越流し、処理槽1の底部に沈殿して濃縮される濃縮部5を有し、濃縮部5に沈殿したフロック(汚泥)を系外に排出する汚泥排出ラインL2を設ける。なお、汚泥排出ラインL2には、汚泥を処理するための汚泥処理設備を設けるものとしてもよい(不図示)。
【0023】
処理槽1は、有底円筒状の外筒水槽11と、この外筒水槽11より小径でかつ高さも小さい有底円筒状の内筒水槽12とを備える。図3に示すように、内筒水槽12は、外筒水槽11の内側に、外筒水槽11と同心になるように立設されている。また、内筒水槽12の底部が外筒水槽11の底部から上方に所定長離隔しており、二重水槽構造を呈している。また、外筒水槽11及び内筒水槽12の軸線L上には、モーターMにより回転駆動するセンターシャフト13が配置されている。センターシャフト13は、ロータリージョイント14により内筒水槽12底部と接続されている。なお、外筒水槽11、内筒水槽12は円筒状に限定されず、角筒状であってもよい。
【0024】
被処理水導入部2は、被処理水Wを処理槽1内に導入するための導入管21と、導入管21から導入された被処理水Wを内筒水槽12内に供給するフィードパイプ22を備えている。
【0025】
図3に示すように、導入管21は、外筒水槽11の側壁を挿通して、槽外部に突き出しており、被処理水Wの供給源と接続する。なお、本実施態様においては、被処理水Wの供給源は、凝集槽10bである。ここで、導入管21には、既設の水処理槽10′の凝集沈殿槽10cに代わって凝集槽10bと接続するための接続部21aを設ける。接続部21aは、凝集槽10bから供給される被処理水Wを導入管21に導入可能なものであれば特に限定されない。例えば、凝集槽10bと凝集沈殿槽10cの間をつなぐ配管(ラインL11)を切断あるいは取り外して、凝集槽10b側のラインL11に嵌合するように導入管21をつなぐアタッチメントとして機能するものや、ラインL11と導入管21の間に切り替え弁を有する分岐管等を設けるものなどとすることが挙げられる。
【0026】
また、図3に示すように、フィードパイプ22は、導入管21と通水可能に連結しており、センターシャフト13の外側にセンターシャフト13を囲むように設けられている。本実施態様における固液分離装置は、外筒水槽11、内筒水槽12、センターシャフト13、フィードパイプ22の軸線は全て共通の軸線Lになっている。
【0027】
フィードパイプ22は、上下方向で上部22aと下部22bとに分けられており、上部と下部との間はラビリンス構造等のロータリージョイント23により接続されている。フィードパイプ22の上部22a側面に導入管21が接続されており、フィードパイプ22の下部22bには分散管24が設けられている。分散管24は内筒水槽12の下部に配置されるとともに、複数の被処理水吐出口24aが形成されている。センターシャフト13の回転とともにフィードパイプ22の下部が回転し、このとき、分散管24は被処理水吐出口24aを内筒水槽12の底部側に向けた状態で回転する。なお、フィードパイプ22の上端部は閉じられていてもよく、上方に向かって開放されていてもよい。
【0028】
被処理水導入部2から導入される被処理水Wは、固形物を含む排水であって、例えば有機性排水に凝集剤を混合したものである。本実施態様においては、凝集沈殿槽10cの上流側に、あらかじめ原水W0に凝集剤を混合する反応槽10a、凝集槽10bが設けられているため、凝集槽10bから供給される被処理水Wを導入管21に導入するものについて図3に例示しているが、これに限定されるものではない。例えば、原水W0と凝集剤を混合するために、導入管21に対して凝集剤を供給する凝集剤供給ラインを直接接続するものとし、本実施態様における仮設の水処理槽20に、凝集槽10bに係る機能について付設するものとしてもよい。
【0029】
混合される凝集剤としては、無機凝集剤及び有機高分子凝集剤が挙げられる。凝集剤は、無機凝集剤あるいは有機高分子凝集剤のみを用いるものであってもよく、無機凝集剤と有機高分子凝集剤を併用するものであってもよい。なお、無機凝集剤及び有機高分子凝集剤を併用する場合、無機凝集剤、有機高分子凝集体の順に被処理水Wに添加することが好ましい。これにより、安定したフロック形成が可能となる。
凝集剤の具体例としては、例えば、無機凝集剤としては、硫酸バンドやPAC等のAl系無機凝集剤や、ポリ硫酸鉄等のFe系無機凝集剤が挙げられる。あるいは、NaOH、Ca(OH)等のアルカリ又はHSO、HCl等の酸によるpH調整剤や、Ca、Al、Fe系化合物の添加や、酸化剤・還元剤の添加等により結晶を析出させるものとしてもよい。また、有機高分子凝集剤としては、ポリアミノアルキルメタクリレート、ポリエチレンイミン、ハロゲン化ポリジアリルアンモニウム、キトサン、尿素-ホルマリン樹脂等のカチオン性高分子凝集剤、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド部分加水分解物、部分スルホメチル化ポリアクリルアミド、ポリ(2-アクリルアミド)-2-メチルプロパン硫酸塩等のアニオン性高分子凝集剤、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド等のノニオン性高分子凝集剤、アクリルアミドとアミノアルキルメタクリレートとアクリル酸ナトリウムの共重合体等の両性高分子凝集剤が挙げられる。
【0030】
スラッジブランケット部3は、被処理水導入部から凝集剤を含む被処理水Wを導入し、凝集フロックを成長させた後、凝集フロックと処理水W1を分離するものである。
なお、分離された処理水W1は処理槽1上部に設けられた処理水排出ラインL1から系外に排出される。また、スラッジブランケット部3の上端から越流した凝集フロックは、スラッジブランケット部3の下部に設けられる濃縮部5に沈降し、処理槽1の底部に設けられた汚泥排出ラインL2を介して、系外に排出される。
【0031】
本実施態様におけるスラッジブランケット部3は、図3に示すように、処理槽1内の有底円筒状の内筒水槽12の内側領域を指すものである。スラッジブランケット部3は、フロック成長ゾーンZ1と、フロック成長ゾーンより上方に形成される分離ゾーンZ2とを有している。フロック成長ゾーンZ1は、被処理水導入部2により内筒水槽12内に流入する被処理水Wの上昇水流によって凝集フロックの流動層を形成している。また、分離ゾーンZ2は、凝集フロック(固形物)と処理水W1とを固液分離するものである。
【0032】
凝集剤を含む被処理水Wは内筒水槽12内の被処理水導入部の分散管24から内筒水槽12内の下部に一様に噴出され、この噴出する水流の撹拌力、剪断力等により混合されてフロックを形成していく。内筒水槽12内に形成されたフロックは内筒水槽12底部に堆積していくが、さらに供給される被処理水Wによりフロック成長ゾーンZ1内に流動層が形成されていく。被処理水Wに含まれる小さなフロックは、流動層を上昇する過程で先に生成されたフロックに接触して捕捉されることで、フロックの粒子径が大きく成長する。このように、被処理水Wはフロック成長ゾーンZ1を上昇しながらフロックを成長させる。
【0033】
ここで、フロックはその比重が水より大きいため、フロック成長ゾーンZ1の底部に堆積しようとするが、被処理水Wの連続供給により上昇する。被処理水Wがフロック成長ゾーンZ1を上昇する過程において、被処理水W中のフロックは成長してより大きく、かつ重くなるため、一定程度まで成長すると、上昇しなくなる。よって、図3に示すように、内筒水槽12の上部には、より大きく、かつ重くなったフロックが集まり、被処理水Wの上昇流による上昇力とフロックの沈降性(自重)が平衡状態となることで、フロック濃度が不連続に変化する仮想境界層Kが形成される。ここで、仮想境界層K及びその下方付近を分離ゾーンZ2とする。分離ゾーンZ2には、フロックが高濃度で保持されている。また、分離ゾーンZ2に集まったフロックの一部は、被処理水Wによる流動層により内筒水槽12の上端縁部から外筒水槽11側に越流する。なお、越流した凝集フロックは、比重が水よりも大きいため、自然に外筒水槽11の底部の濃縮部5に向けて沈降する。濃縮部5に沈降して堆積した凝集フロックは濃縮されて濃縮汚泥になり、外筒水槽11の底部に設けられた汚泥排出ラインL2から排出される。
【0034】
また、図3に示すように、スラッジブランケット部3を通過した処理水は、被処理水Wの上昇流によって上昇し、スラッジブランケット部3の上方に、処理水W1からなる清澄層Cが形成される。つまり、清澄層Cとスラッジブランケット部3との境界に仮想境界層Kが形成されている。清澄層Cの処理水W1は、外筒水槽11上部に設けられた処理水排出ラインL1を介して槽外に排出される。
【0035】
一方、濃縮部5に堆積した濃縮汚泥は、センターシャフト13の下端に設けられた濃縮汚泥掻き寄せ機51によって、汚泥排出ラインL2が設けられた外筒水槽11の底面中央に掻き寄せられる。なお、濃縮汚泥掻き寄せ機51は、センターシャフト13の回転に伴って回転し、外筒水槽11の底面中央部に濃縮汚泥を掻き寄せることができる構造であれば、特に限定されない。例えば、図3に示すように、センターシャフト13に対して垂直に掻き取り部材を設けるもの以外に、センターシャフト13に対して垂直に交差した支持体に複数の掻き取り部材を設けるものとしてもよく、曲面を有する掻き取り部材を槽上方から見た際にS字を形成するようにセンターシャフト13に設けるものとしてもよい。
【0036】
水質検知部4は、スラッジブランケット部3で固液分離された処理水Wの水質を測定するためのものである。
水質としては、濁度、色度、水温、pH、有機物濃度等を測定対象とすることが挙げられる。また、測定対象を検出するための検出器としては、濁度計、色度計、水温計、pH計、COD計、BOD計、TOD計、TOC計等が挙げられる。
【0037】
ここで、本実施態様における水処理設備100としての水処理機能を低下させることがないように、反応槽10a、凝集槽10bにおいて、凝集剤等の薬品使用量を多くして処理効率を高めるものとしてもよい。薬品使用量の増加によりコスト高につながることが考えられるが、仮設の水処理槽20による排水処理は一時的なものであるため、コスト高の影響は低く抑えることができる。このとき、仮設の水処理槽20に設けた水質検知部4の測定結果に基づき、反応槽10a、凝集槽10bにおける凝集剤の添加量を制御するための制御装置を設け、凝集剤の添加量を制御するものとすることが好ましい。これにより、凝集沈殿槽10cの更新中においても、仮設の水処理槽20において十分な処理効果を発揮することができる。
【0038】
図1(B)及び図3に示すように、仮設の水処理槽20の導入管21の接続部21aを、凝集槽10b側のラインL11と接続することで、既設の水処理槽10′から仮設の水処理槽20への処理の切り替えが行われる。処理の切り替え後、既設の水処理槽10′の更新作業を行う。その後、図1(C)に示すように、仮設の水処理槽20の導入管21の接続部21aをラインL11から取り外し、更新された水処理槽30を、凝集槽10bに再度接続する。
【0039】
また、図1(C)に示すように、既設の水処理槽10′の更新作業が終了した後、仮設の水処理槽20は撤去される。このため、仮設の水処理槽20の設置は、撤去することを前提にして行うことができる。これにより、設置場所として本来空間を空ける必要のある道路などに仮設の水処理槽20を設置することも可能となる。
【0040】
また、水処理槽の設置に係る固定手段についても、常設の水処理槽とは異なり、比較的簡易な手段を用いることも可能となる。
例えば、仮設の水処理槽20は、地面への固定手段を有し、かつ移動が可能な架台に積載されたものとしてもよい。これにより、既設の水処理槽10′の更新作業終了後、速やかに撤去することが可能となる。また、撤去された後、別の現場で再度利用することも可能となる。
また、仮設の水処理槽20は、その場で解体されるものであってもよい。この場合、移設先の手配などは不要となる。
【0041】
[第2の実施態様]
図4は、本発明の第2の実施態様の水処理槽の更新方法を示す工程説明図である。図4(A)は、既設の水処理槽に隣接する位置に仮設の水処理槽を設置する工程、図4(B)は、既設の水処理槽から仮設の水処理槽に処理を切り替える工程、図4(C)は、既設の水処理槽を更新する工程を示すものである。
本実施態様に係る水処理設備101として、好気性生物処理設備とし、水処理槽40はそれぞれ曝気槽40a、沈殿槽40b、汚泥濃縮槽40cとする。ここで、更新対象となる水処理槽40′を曝気槽40aとした場合、曝気槽40aに隣接して仮設の水処理槽50を設ける。図4には、水処理設備101内における水処理槽40の配置例を示しており、仮設の水処理槽50についても配置例を示している。水処理槽40a、40b、40cは、それぞれラインL12、L13により接続されている。なお、図4中において、太線で示されたものはその工程で加えられた要素を示し、破線で示されたものはその工程で減らされた要素を示すものである。
【0042】
仮設の水処理槽50の一例として、図5に、膜曝気槽の概略説明図を示す。
図5に示すように、本実施態様に係る仮設の水処理槽50としての膜曝気槽は、活性汚泥槽6内に、分離膜を備えた浸漬膜ユニット(膜分離手段)7が配置されており、浸漬膜ユニット7の下方には、曝気ラインL3に接続された曝気装置8が配置されている。曝気装置8は、曝気ガスを活性汚泥槽6内に供給する。
【0043】
このとき、活性汚泥中の好気性微生物は、被処理水W中の有機物を分解処理する。好気性微生物は、分解処理の過程で菌体外ポリマーを生成し、菌体外ポリマーを介して他の好気性微生物と結び付いてフロックを形成する。
【0044】
浸漬膜ユニット7は、フロック状の活性汚泥から処理水W1を選択的にろ過する。ろ過された処理水W1は、処理水回収ラインL4を介して、処理水貯槽9に貯留される。一方、余剰汚泥は、汚泥排出ラインL5を介して、沈殿槽40b又は汚泥濃縮槽40cに接続される。
【0045】
曝気装置8において、曝気ラインL3及びポンプPを介して放出された曝気ガスは、活性汚泥中の好気性微生物の活性化を促進するとともに、微生物浸漬膜ユニット7の分離膜に当接し、膜表面の付着物を洗浄する作用も奏する。
【0046】
なお、分離膜としては、逆浸透(RO)膜、限外ろ過(UF)膜、精密ろ過(MF)膜、中空糸(HF)膜などを適宜に用いることができる。
【0047】
図4(A)に示すように、まず、更新対象となる水処理槽40′(曝気槽40a)に隣接する位置に仮設の水処理槽50を設置する。
また、図4(B)及び図5に示すように、仮設の水処理槽50を汚泥排出ラインL5及びラインL12を介して沈殿槽40b又は汚泥濃縮槽40cと接続することで、既設の水処理槽40′から仮設の水処理槽50への処理の切り替えが行われる。なお、仮設の水処理槽50と水処理槽40b又は40cの接続や、既設の水処理槽40′から仮設の水処理槽50への処理の切り替えに係る具体的な構成については、特に限定されない。例えば、第1の実施態様における構成を用いることができる。処理の切り替え後、既設の水処理槽30′の更新作業を行う。
その後、図4(C)に示すように、仮設の水処理槽40の活性汚泥排出ラインL5を取り外し、更新された水処理槽60を、ラインL12により沈殿槽40bに再度接続する。
また、図4(C)に示すように、既設の水処理槽40′の更新作業が終了した後、仮設の水処理槽50は撤去される。なお、撤去に係る手段は特に限定されない。例えば、仮設の水処理槽50を移動可能な架台に積載するものを用いてもよく、その場で解体されるものであってもよい。
【0048】
上述したように、本実施態様における水処理槽の更新方法によって、凝集沈殿槽又は曝気槽のように従来更新が困難であった大型の水処理槽についても、水処理機能を停止することなく更新が可能となる。
【0049】
なお、上述した実施態様は水処理槽の更新方法の一例を示すものである。本発明に係る水処理槽の更新方法は、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る水処理槽の更新方法を変形してもよい。
【0050】
本実施態様において更新対象となる水処理槽は、凝集沈殿槽又は曝気槽に限定されない。例えば、凝集沈殿処理設備における反応槽や凝集槽を更新対象とするものであってもよい。また、好気性生物処理設備における沈殿槽や汚泥濃縮槽を更新対象とするものであってもよい。
【0051】
また、例えば、本実施態様の水処理設備を、嫌気性生物処理施設とし、更新対象となる水処理槽を固定床式又は流動床式の微生物充填槽とし、仮設の水処理槽として、UASB(Up flow Anaerobic Sludge Blanket)法に基づく水処理槽やEGSB(Expanded Granular Sludge Bed)に基づく水処理槽を用いるものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の水処理槽の更新方法は、老朽化や処理の高度化のため、既設の水処理槽を更新する場合の更新作業において好適に利用されるものである。特に、既設の水処理槽の更新のために、水処理槽を新設するだけの設置スペースを確保することが難しい場合において、特に好適に利用される。
【符号の説明】
【0053】
100,101 水処理設備、10,40 水処理槽、20,50 仮設の水処理槽,30,60 更新された水処理槽,10a 反応槽、10b 凝集槽、10c 凝集沈殿槽、40a 曝気槽、40b 沈殿槽、40c 汚泥濃縮槽、1 処理槽、11 外筒水槽、12 内筒水槽、13 センターシャフト、14 ロータリージョイント、2 被処理水導入部、21 導入管、21a 接続部、22 フィードパイプ、22a 上部、22b 下部、23 ロータリージョイント、24 分散管、24a 被処理水吐出口、3 スラッジブランケット部、4 水質検知部、5 濃縮部、51 濃縮汚泥掻き寄せ機、6 活性汚泥槽、7 浸漬膜ユニット、8 曝気装置、9 処理水貯槽、L1 処理水排出ライン、L2 汚泥排出ライン、L3 曝気ライン、L4 処理水回収ライン、L5 汚泥排出ライン、L10~L13 ライン、C 清澄層、K 仮想境界層、L 軸、M モーター、P ポンプ、T 凝集剤タンク、W 被処理水、W0 原水、W1 処理水、Z1 フロック成長ゾーン、Z2 分離ゾーン
図1
図2
図3
図4
図5