(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】端末装置の位置を特定するシステム
(51)【国際特許分類】
G08B 25/04 20060101AFI20240118BHJP
G01S 5/02 20100101ALI20240118BHJP
H04W 4/029 20180101ALI20240118BHJP
H04W 84/06 20090101ALI20240118BHJP
G08B 21/10 20060101ALI20240118BHJP
B64C 27/08 20230101ALI20240118BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20240118BHJP
B64F 3/02 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
G08B25/04 K
G01S5/02 A
H04W4/029
H04W84/06
G08B21/10
B64C27/08
B64C39/02
B64F3/02
(21)【出願番号】P 2022102087
(22)【出願日】2022-06-24
【審査請求日】2022-06-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】藤井 輝也
【審査官】大橋 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-083243(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0318607(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0043872(US,A1)
【文献】国際公開第2017/094842(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0233964(US,A1)
【文献】特開2015-092776(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0217952(US,A1)
【文献】特開2015-189321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 21/00-25/00
H04W 4/00-99/00
B64C 1/00-39/00
B64D 1/00-47/00
B64F 3/00
B64U 50/30
G01S 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動通信の端末装置の位置を特定するシステムであって、
移動通信の端末装置の通信を中継する主ドローンに搭載された無線中継装置と、前記無線中継装置と基地局との通信を中継する地上に設置された地上中継装置と、移動通信網又は他の通信網に設けられた情報処理装置と、前記主ドローン及び前記無線中継装置で消費される電力を地上の電力供給装置から供給するように前記主ドローンに接続された主ドローン給電ケーブルと、前記主ドローンと前記地上の電力供給装置との間で前記主ドローン給電ケーブルを係留するケーブル係留部を具備する複数の補助ドローンと、を備え、
前記無線中継装置は、
地上方向に指向性を有する指向性アンテナと、
人工衛星からGNSS信号を受信するGNSS受信装置と、
前記情報処理装置と通信する通信装置と、
地上の対象エリアの上空を飛行しながら、前記指向性アンテナから地上方向に向けて電波を送信し、前記GNSS受信装置で受信したGNSS信号に基づいて得られた前記無線中継装置の位置情報を前記情報処理装置に送信するように制御する制御装置と、を有し、
前記情報処理装置は、
前記無線中継装置が前記対象エリアの上空を飛行した飛行時間帯において前記無線中継装置から送信された電波を受信した前記端末装置の受信電力又は受信品質の測定結果に関する受信測定情報及び時刻情報を取得する測定情報取得部と、
前記飛行時間帯において前記無線中継装置から前記無線中継装置の位置情報及び時刻情報を受信する位置情報受信部と、
前記無線中継装置の位置情報及び時刻情報と前記受信測定情報及び時刻情報とに基づいて、前記対象エリアにおける前記端末装置の位置を推定する位置推定部と、を有し、
前記複数の補助ドローンはそれぞれ、前記地上の電力供給装置に接続された1本の補助ドローン給電ケーブルを前記補助ドローンで分岐して電力が供給され、
前記複数の補助ドローンそれぞれにおける前記ケーブル係留部は、前記主ドローン及び前記補助ドローンの少なくとも一方の移動に伴って前記主ドローン給電ケーブルが支持された状態で通過可能に構成され、
前記複数の補助ドローンのうち前記主ドローンに近い先頭の補助ドローンにおける前記ケーブル係留部は、前記主ドローン給電ケーブルの前記主ドローンと前記先頭の補助ドローンとの間のケーブル長を可変とする機構を備える、
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項
1のシステムにおいて、
前記主ドローン給電ケーブルは、電力供給線と光ファイバーとを統合した1本のケーブルであり、
前記光ファイバーを介して、前記地上中継装置と前記無線中継装置とを接続し、前記端末装置と前記基地局との間の通信を中継する信号を伝送する、
ことを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動通信の端末装置の位置を特定するシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、人工衛星からGPS(全地球測位システム)等のGNSS(全球測位衛星システム)の信号の電波を受信して位置情報を取得した端末装置から位置情報を受信するシステムが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、遭難者救助支援装置と遭難者が所持する携帯電話とにより構成された遭難者救助支援システムが開示されている。遭難者が所持する携帯電話は、GPS衛星からGPS信号を受信し、受信したGPS信号から自携帯電話の位置を計算し、その位置情報を遭難者救助支援装置に送信する。遭難者救助支援装置は、遭難者が所持する携帯電話の位置情報を捜索者側(のパソコン等)に転送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のシステムでは、遭難者が持つ端末装置(携帯電話)が雪や土砂などに深く埋まってGNSS信号(GPS信号)を受信できない状態や端末装置のGNSS信号受信機能がOFFに設定されている状態(以下「GNSS非受信状態」という。)にある場合、端末装置から位置情報を受信して端末装置の位置を特定できない、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るシステムは、移動通信の端末装置の位置を特定するシステムである。このシステムは、移動通信の端末装置の通信を中継する主ドローンに搭載された無線中継装置(子機)と、前記無線中継装置(子機)と基地局との通信を中継する地上に設置された地上中継装置(親機)と、移動通信網又は他の通信網に設けられた情報処理装置と、前記主ドローン及び前記無線中継装置(子機)で消費される電力を地上の電力供給装置から供給するように前記主ドローンに接続された主ドローン給電ケーブルと、を備える。以下では特に断らない限り無線中継装置(子機)を「無線中継装置」と呼ぶことにする。
【0007】
前記無線中継装置は、地上方向に指向性を有する指向性アンテナと、人工衛星からGNSS信号を受信するGNSS受信装置と、前記情報処理装置と通信する通信装置と、地上の対象エリアの上空を飛行しながら、前記指向性アンテナから地上方向に向けて電波を送信し、前記GNSS受信装置で受信したGNSS信号に基づいて得られた前記無線中継装置の位置情報を前記情報処理装置に送信するように制御する制御装置と、を有する。前記情報処理装置は、前記無線中継装置が前記対象エリアの上空を飛行した飛行時間帯において前記無線中継装置から送信された電波を受信した前記端末装置の受信電力又は受信品質の測定結果に関する受信測定情報及び時刻情報を取得する測定情報取得部と、前記飛行時間帯において前記無線中継装置から前記無線中継装置の位置情報及び時刻情報を受信する位置情報受信部と、前記無線中継装置の位置情報及び時刻情報と前記受信測定情報及び時刻情報とに基づいて、前記対象エリアにおける前記端末装置の位置を推定する位置推定部と、を有する。
【0008】
前記システムにおいて、前記主ドローンと前記地上の電力供給装置との間で前記主ドローン給電ケーブルを係留するケーブル係留部を具備する補助ドローンを、更に備えてもよい。
【0009】
前記システムにおいて、前記補助ドローンの前記ケーブル係留部は、前記主ドローン及び前記補助ドローンの少なくとも一方の移動に伴って前記主ドローン給電ケーブルが支持された状態で移動可能に構成され、前記主ドローン給電ケーブルの前記主ドローンと前記補助ドローンとの間のケーブル長を可変とする機構を備えてもよい。
【0010】
前記システムにおいて、前記補助ドローンで消費される電力を地上の電力供給装置から供給するように前記補助ドローンに接続された補助ドローン給電ケーブルを、前記主ドローン給電ケーブルとは別に備えてもよい。
【0011】
前記システムにおいて、前記補助ドローンを複数備えてもよい。ここで、前記主ドローン給電ケーブルが1本であり、前記複数の補助ドローンそれぞれにおける前記ケーブル係留部は、前記補助ドローンの移動に伴って前記1本の主ドローン給電ケーブルを通過させて前記主ドローンと前記補助ドローンとの間のケーブル長を可変とする機構を備え、前記複数の補助ドローンごとに主ドローン給電ケーブルとは別の補助ドローン給電ケーブルにより電力が供給されてもよい。
また、各補助ドローンは各補助ドローンに備えている前記ケーブル係留部により、各補助ドローン給電ケーブルにおいて補助ドローン間のケーブル長を可変とする機構を備えてもよい。
また、複数の補助ドローンは共通の一本の補助ドローン給電ケーブルを有し、各補助ドローンで分岐して各々の補助ドローンに給電してもよい。
【0012】
前記システムにおいて、前記補助ドローンを複数備え、前記複数の補助ドローンはそれぞれ、前記主ドローン給電ケーブルを前記補助ドローンで分岐して電力が供給されてもよい。
【0013】
前記システムにおいて、前記補助ドローンを複数備え、前記複数の補助ドローンはそれぞれ、前記地上の電力供給装置に接続された複数の補助ドローン給電ケーブルを介して電力が個別供給され、前記複数の補助ドローンのうち前記主ドローンに近い先頭の補助ドローンにおける前記ケーブル係留部は、前記主ドローン及び前記補助ドローンの少なくとも一方の移動に伴って前記主ドローン給電ケーブルが支持された状態で通過可能に構成され、前記主ドローン給電ケーブルの前記主ドローンと前記先頭の補助ドローンとの間のケーブル長を可変とする機構を備え、前記複数の補助ドローンのうち先頭以外の補助ドローンにおける前記ケーブル係留部は、前記主ドローン及び前記補助ドローンの少なくとも一方の移動に伴って前記主ドローン給電ケーブルが支持された状態で通過可能に構成され、前記主ドローン給電ケーブルの前記主ドローンと前記先頭以外の補助ドローンとの間のケーブル長を可変とし、前記補助ドローンの移動に伴ってより先頭側に位置する他の補助ドローンに電力を供給する他の補助ドローン給電ケーブルが支持された状態で通過可能に構成され、前記他の補助ドローン給電ケーブルの前記先頭側の他の補助ドローンと前記先頭以外の補助ドローンとの間のケーブル長を可変とする機構を備えてもよい。
【0014】
前記システムにおいて、前記補助ドローンを複数備え、前記複数の補助ドローンはそれぞれ、前記地上の電力供給装置に接続された1本の補助ドローン給電ケーブルを前記補助ドローンで分岐して電力が供給され、前記複数の補助ドローンそれぞれにおける前記ケーブル係留部は、前記主ドローン及び前記補助ドローンの少なくとも一方の移動に伴って前記主ドローン給電ケーブルが支持された状態で通過可能に構成され、前記主ドローン給電ケーブルの前記主ドローンと前記先頭の補助ドローンとの間のケーブル長を可変とする機構を備えてもよい。
【0015】
前記システムにおいて、前記主ドローン給電ケーブルは、電力供給線と光ファイバーとを統合した1本のケーブルであり、前記光ファイバーを介して、前記地上中継装置(親機)と前記無線中継装置(子機)とを接続し、前記端末装置と前記基地局との間の通信を中継する信号を伝送してもよい。
【0016】
前記システムにおいて、前記端末装置の位置を推定するプログラムには、機械学習を用いて作成された学習済モデルを含んでもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、移動通信の端末装置がGNSS信号の非受信又は受信不可の状態であっても、端末装置の現在位置を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態に係るドローン無線中継システムを用いた端末位置特定システムの概略構成の一例を示す説明図。
【
図2】(a)及び(b)は、実施形態に係る端末位置特定システムにおける携帯端末の位置推定の原理を示す説明図。
【
図3】実施形態に係る位置特定対象の携帯端末における電源の間欠ON/OFF動作の一例を示す説明図。
【
図4】実施形態に係るドローン無線中継装置のビームカバーエリアと滞在時間との関係の一例を示す説明図。
【
図5】参考例に係るドローンの一飛行当たりの探索エリアとバッテリー交換との関係を示す説明図。
【
図6】実施形態に係る端末位置特定システムにおけるドローン無線中継装置、サーバ及び携帯端末の主要な構成の一例を示すブロック図。
【
図7】実施形態に係るドローン無線中継システムを用いた端末位置特定システムの概略構成の他の例を示す説明図。
【
図8】(a)及び(b)はそれぞれ、ドローン無線中継装置における給電ケーブルの重量の負荷及び地上の障害物との干渉を示す説明図。
【
図9】実施形態に係る補助ドローンを備えたドローン無線中継システムの概略構成の一例を示す説明図。
【
図10】(a)及び(b)はそれぞれ、補助ドローンの係留位置及び飛行高度の調整の一例を示す説明図。
【
図11】(a)及び(b)はそれぞれ、補助ドローンへの電力供給方法の一例を示す説明図。
【
図12】実施形態に係る補助ドローンを備えたドローン無線中継システムの概略構成の他の例を示す説明図。
【
図13】実施形態に係る複数の補助ドローンを備えたドローン無線中継システムの概略構成の一例を示す説明図。
【
図14】実施形態に係る複数の補助ドローンを備えたドローン無線中継システムの概略構成の他の例を示す説明図。
【
図15】実施形態に係る複数の補助ドローンを備えたドローン無線中継システムの概略構成の更に他の例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
本書に記載された実施形態に係るシステムは、移動通信のユーザ装置や移動局等の端末装置(以下「携帯端末」という。)がGPS非受信状態にある場合に、ドローン搭載無線中継装置(以下「ドローン無線中継装置」という。)のGPS位置情報と携帯端末の受信電力又は受信品質の測定結果の情報だけで、雪、土砂、土壌、瓦礫などに埋もれた携帯端末の位置を推定して特定することができるシステムである。
【0020】
ドローン無線中継装置は、例えば、台風、地震などの災害発生箇所や雪崩などの遭難発生箇所等の対象エリアの上空に位置するように停止飛行(ホバリング)させ、移動通信網などの通信網と対象エリアの携帯端末との通信を中継する臨時又は緊急時のリピータ(子機)又は基地局(eNodeB)として機能させることができる。これにより、例えば、災害発生箇所での携帯電話やスマートフォンなどの通信を早期に復旧させたり、遭難発生箇所で遭難者の携帯電話やスマートフォンなどの通信を中継して遭難者の捜索や救助を支援したりすることができる。
【0021】
特に、本実施形態のシステムでは、地上から有線の給電ケーブルを介して上空のドローン無線中継装置に電力を供給することにより長時間の連続した探索が可能である。更に、給電ケーブルを補助ドローンに係留して持ち上げることにより、給電ケーブルがビルなどの障害物で切断されてドローン無線中継装置が墜落することを回避できるとともに、給電ケーブルが長い場合でもドローン無線中継装置(主ドローン)にかかる給電ケーブルの重量を補助ドローンに分散させて低減することができる。
【0022】
また、遭難者が持つGPS搭載携帯端末がサービスエリア外(圏外エリア)にいた場合、本実施形態のドローン無線中継システムを用いてその携帯端末を圏内エリア化して、GPS搭載携帯端末のGPS情報(位置情報)を捜索側に通知することができる。
【0023】
なお、以下の実施形態では、携帯端末の位置の推定に携帯端末の受信電力の測定結果の情報を用いているが、携帯端末の受信品質の測定結果の情報を用いてもよい。また、ドローン無線中継装置で受信した携帯端末から送信された電波の受信電力の測定結果の情報を用いてもよい。
【0024】
図1は、実施形態に係るドローン無線中継システム1を用いた端末位置特定システム2の概略構成の一例を示す説明図である。本実施形態の端末位置特定システム2は、ドローン無線中継システム1と、端末位置特定の情報処理を行う情報処理装置としてのサーバ81と、を含む。サーバ81は、例えば単体又は複数のコンピュータ装置で構成され、移動通信網80、又は、移動通信網80と通信可能な他の通信網に設けられている。端末位置特定システム2は、所定のアプリケーションプログラム(以下「探索支援アプリケーション」という。)が起動した位置特定対象(探索対象)の端末装置(「ユーザ装置」、「移動局」ともいう。)としての携帯端末40を含んでもよい。
【0025】
端末位置特定システム2は、オペレータがサーバ81にアクセスするときに操作するコンピュータ装置などからなるコンソール装置85を含んでもよい。コンソール装置85は、移動通信網80又は他の通信網を介してサーバ81と通信することができる。コンソール装置85は、通信網を介さずにサーバ81に直接接続されたものであってもよい。
【0026】
図1において、本実施形態に係るドローン無線中継システム1は、地上に設置、又は地上に位置する車両である自動車(無線中継車)50に搭載された地上中継装置である第1無線中継局としての網側中継局(以下「親機」又は「リピータ親機」という。)20と、ドローン無線中継装置(以下、省略して「ドローン」ともいう。)10に搭載された第2無線中継局としての中継局(以下、「子機」又は「リピータ子機」という。)12と、を備える。
【0027】
親機20及び子機12は、非再生周波数変換型の無線中継リピータであり、通信オペレータ(通信事業者)の移動通信網80のコアネットワークそれぞれに接続されたマクロセル基地局などの固定基地局30と、通信オペレータに対応する携帯端末40との間の無線通信を中継する。この無線中継により、固定基地局30のセルの圏外エリア(サービスエリア外)に臨時にセル400を形成して圏内化することできる。
【0028】
親機20は、固定基地局30との間の中継対象の第1周波数(中継対象周波数)F1(下り信号)及びF1'(上り信号)の無線信号と、子機12との間の第2周波数(中間周波数)F2(下り信号)及びF2'(上り信号)の無線信号とを中継する周波数変換型の無線中継装置である。親機20は、固定基地局30向けの第1アンテナ201と、子機12向けの第2アンテナ202とを有する。
【0029】
子機12が搭載されたドローン無線中継装置10は、地上から所定高度(例えば100~150m)の上空に滞在するように飛行制御される。ドローン無線中継装置10は、GNSSとしてのGPSの人工衛星60からの電波を受信して自装置の位置情報を取得する測位機能を有する。ドローン無線中継装置10の測位機能は、GPS以外の他のGNSSの人工衛星の電波を受信して行ってもよい。
【0030】
子機12は、親機20向けのフィーダリンク用アンテナ(以下「FLアンテナ」ともいう。)110Fと、臨時のセル400に位置する携帯端末40向けのサービスリンク用アンテナ(以下「SLアンテナ」ともいう。)110Sと、位置不明の携帯端末40の位置を推定する端末探索に用いる狭ビーム指向性アンテナ(以下「探索アンテナ」ともいう。)110Tと、を有する。
【0031】
探索アンテナ110Tは、ドローン無線中継装置10が基本姿勢を維持して飛行しているときに地上方向へ指向性を有するようにドローン本体に取り付けられる。探索アンテナ110Tは、地上方向の電波強度を強い指向性ビーム特性を有し、その指向性ビームBのビーム幅がSLアンテナ110Sのビーム幅よりも狭い。SLアンテナ及び探索アンテナ110Tから送受信される電波の周波数はF1(下り信号)及びF1'(上り信号)である。
【0032】
なお、SLアンテナ110Sを探索アンテナ110Tとして兼用してもよい。この場合、携帯端末40の無線通信を中継するときはサービスリンク用のビーム幅にし、携帯端末40の位置を特定する端末探索を行うときはサービスリンク用のビーム幅よりも狭いビーム幅にするように、携帯端末40のSLアンテナ110Sのビーム幅を切り替える制御を行ってもよい。
【0033】
子機12は、親機20との間の第2周波数(中間周波数)F2/F2'の無線信号と、携帯端末40との間の第1周波数(中継対象周波数)F1/F1'の無線信号とを中継する周波数変換型の無線中継装置である。
【0034】
親機20及び子機12それぞれにおいて、第1周波数(中継対象周波数)F1/F1'及び第2周波数(中間周波数)F2/F2'は、親機20で送受信される無線信号どうしの回り込み干渉及び子機12で送受信される無線信号どうしの回り込み干渉が発生しないように互いに異なる周波数である。
【0035】
中継局12は、リピータ(子機)の機能のほか、基地局(eNodeB)の機能を有してもよい。また、ドローン無線中継装置10は、ドローン本体フレームに設けられた子機12、FLアンテナ110F、SLアンテナ110S、探索アンテナ110Tなどのほか、ドローン飛行制御装置、モータ駆動のプロペラ等を備える。ドローン飛行制御装置は、例えば、外部からの飛行制御信号を受信する通信部により遠隔制御、又は自律制御により各プロペラの回転駆動を制御する制御部と、バッテリー等を有する電源部とを備える。
【0036】
上記構成のシステムにおいて、携帯端末40が雪や土砂などに深く埋まってGNSS信号としてのGPS信号を受信できない状態や携帯端末40のGPS信号受信機能がOFFに設定されている状態(以下「GPS非受信状態」という。)にある場合、携帯端末40から位置情報を受信して携帯端末40の位置を特定できない。
【0037】
本実施形態の端末位置特定システム2では、ドローン無線中継システム1とサーバ81と携帯端末40で起動されている探索支援アプリケーションとが連携することにより、携帯端末40がGPS非受信状態であっても携帯端末40の現在位置を推定して特定することができるようにしている。
【0038】
なお、携帯端末40の探索支援アプリケーションは、常時起動した状態にしておいてもよいし、携帯端末40がGPS非受信状態になったときに自動起動するようにしてもよい。
【0039】
図2(a)及び(b)は、実施形態に係る端末位置特定システム2における携帯端末40の位置推定の原理を示す説明図である。
図2(a)は、携帯端末40が雪、土砂、土壌などに埋まっている地面Gの上空を、ドローン無線中継装置10が矢印Aの水平方向に飛行している様子を例示している。携帯端末40は瓦礫に埋まっていてもよい。図示の例において、ドローン無線中継装置10は、上空の探索アンテナ110Tから対象エリアTAの地面Gに向けて地上方向に所定ビームBの電波Stを送信している。ビームBの電波Stは所定のフットプリントCのサイズで地面Gに到達する。
【0040】
図2(b)は、携帯端末40が埋まっている対象エリアTAの地面Gの上空を一方向(x軸方向)にドローン無線中継装置10が飛行しながら地上方向に電波Stを送信しているときに携帯端末40が電波Stを受信して測定した受信電力Eの変化の一例を示すグラフである。
【0041】
ドローン無線中継装置10は、狭ビーム指向性である探索アンテナ110Tを地上方向に向けていることから、ドローン無線中継装置10が送信した電波Stの電界強度は、ドローン無線中継装置10の真下が最も強く、ドローン無線中継装置10の真下に携帯端末40が位置するときに携帯端末40が測定する受信電力Eが最も高くなる。携帯端末40の受信電力Eの測定値が最も高くなるときに、その携帯端末40の真上方向にドローン無線中継装置10が位置していることになる。すなわち、携帯端末40の受信電力Eの測定値が最も高くなったときの携帯端末40の位置とドローン無線中継装置10の位置(xp,yp)は同じであり、そのドローン無線中継装置10のGPSで測位したGPS位置情報(飛行位置(xp,yp))を、携帯端末40の位置と推定することができる。
【0042】
上記構成の端末位置特定システム2において、例えば遭難者の携帯端末40が基地局のセルの圏外となった場合、バッテリーの消費を削減するために通信できる基地局の探索を連続的に行わずに、
図3に示すように携帯端末40は一定時間(ΔT)毎に一定の時間(Δt)の間だけ基地局の電波の有無のチェックを行う。その間に通信可能な電波を見つけることができなければ、携帯端末40はまた一定時間(ΔT)受信を休止する。このように圏外となった携帯端末40は、一定周期のΔt以外の時間は電波の有無のチェックをしない。
【0043】
従って、
図4に示すようにドローン無線中継装置10の中継局(子機)12は携帯端末40が少なくとも基地局の電波の有無のチェックを行う上記一定時間(ΔT)以上の間は同一場所にとどまって電波を送受信する必要がある。例えばΔTを120秒(2分)とすると、ドローン無線中継装置10の中継局(子機)12は、120秒以上は同一場所にとどまり、電波の送受信を行う必要がある。ドローン無線中継装置10の中継局(子機)12は、ドローンに搭載した中継局(無線中継器)12は埋まった方向に電波を放射することから、中継局(子機)12がとどまる1回あたりの探索エリアは狭くその領域をΔD(例えば10m)四方とすると、一回の飛行において搭載バッテリー130でΔD四方の領域からなる探索エリアを何か所探索できるかが重要となる。
【0044】
図5は、参考例に係るドローン11の一飛行当たりの探索エリア152(1),152(2)とバッテリー交換との関係を示す説明図である。
図5の一飛行探索エリア152(1),152(2)のそれぞれにおいて、ドローン11は所定の飛行ルートRを間欠的に飛行し、ΔD四方の探索エリア151の中央部(図中の黒丸の位置)に所定時間とどまっているときに地上に向けて電波を放射する。
【0045】
一般に、ドローンは、搭載されているバッテリーで動作し、連続飛行時間はドローンの積載重量(ペイロード)やバッテリーに依存するが20分~30分程度である。例えば、ドローンの連続飛行時間を20分、ΔTを120秒(2分)とした場合、10(=20分/2分)箇所の探索ごとに、
図5に示すように、(1)探索位置からドローン11の出発位置(バッテリー交換位置)に戻って、(2)バッテリー130を交換し、(3)次の捜索場所に戻る必要があり、(1)~(3)の捜索以外にも探索場所への往復の移動時間も要することから、捜索場所が広い場合には探索を完了するための時間が大幅に増加することが懸念される。
【0046】
そこで、本実施形態の端末位置特定システム2では、土壌や瓦礫等の中にある携帯端末40の位置特定を長時間、効率的に行うため、ドローン無線中継装置(ドローン本体及び子機)10への電力を、DC電源13として搭載したバッテリー130からではなく、
図1に示すように地上の電力供給装置としての電源装置90から有線の給電ケーブル95を介して連続的に電力を給電する有線給電探索ドローン無線中継システム1を用いている。給電ケーブル95は、例えば数十m~数百m(例えば100m~300m)程度の長さを有するケーブルである。
【0047】
図1のシステムは、地上の電源装置(電力供給装置)90から給電ケーブル(有線電力ケーブル)でドローン無線中継装置(ドローン本体及び子機)10に電力を連続的に供給する有線給電探索ドローン無線中継システム(有線給電ドローン)である。例えば、直流の数100Vの電圧で数KWの電力をドローン及びドローン無線中継装置10に連続的に供給することから、バッテリーが不要であり、その交換も必要としない。そのため、バッテリーの交換場所へ戻る必要もないことから、その往復時間、バッテリー取り換え時間も不要であり、探索時間の大幅な削減が期待できる。
【0048】
図6は、実施形態に係る端末位置特定システム2におけるドローン無線中継装置10、サーバ81及び携帯端末40の主要な構成の一例を示すブロック図である。
図6において、ドローン無線中継装置10は、前述の中継局(子機)12と、GNSS受信装置としてのGPS受信機101と、通信装置としての通信モジュール102と、制御装置103と、電力供給装置である直流(DC)電源13とを有する。
【0049】
GPS受信機101は、GPSの複数の人工衛星60からの電波を受信して自装置であるドローン無線中継装置10の現在位置(例えば、緯度、経度及び高度)の情報を算出する。通信モジュール102は、例えば移動通信の端末装置である携帯端末(ユーザ装置、移動局)の機能を有する携帯通信モジュールであり、基地局30及び移動通信網80を介してサーバ81と通信することができる。
【0050】
制御装置103は、例えばCPU等のプロセッサやメモリ等で構成され、予め組み込まれた又は通信網を介してダウンロードした所定のプログラムコードからなる制御プログラムを実行することにより、データ処理を行ったり各部を制御したりする。本実施形態において、制御装置103は、地上の対象エリアTAの全体にわたって対象エリアTAの上空を飛行しながら、探索アンテナ110Tから地上G方向に向けて電波Stを送信し、GPS受信機101で受信したGNSS信号としてのGPS信号に基づいて得られたドローン無線中継装置10の位置情報(例えば緯度及び経度)を周期的(一定時間間隔毎)にサーバ81に送信するように制御する。
【0051】
DC電源13は、電力供給線を含む所定長の給電ケーブル95の一端部が接続されている。給電ケーブル95の他端部は地上の電源装置90に接続されている。DC電源13は、電源装置90から給電ケーブル95を介して電力を受ける受電機能を有し、電源装置90から受けた電力を所定電圧又は所定電流に変換して各部に供給することができる。
【0052】
DC電源13は、充電可能なバッテリーを有してもよい。例えば、電源装置が故障して電源装置90から電力を受けることができない場合、DC電源13は、バッテリーから各部に所定電圧又は所定電流の電力を供給してもよい。また、バッテリーは電源装置90から受けた電力で充電してもよい。
【0053】
携帯端末40は、移動通信システムの端末装置(携帯端末、ユーザ装置、移動局)としての通常の構成を有するほか、受信測定部としての受信電力測定部401と、受信測定情報送信部としての受信電力情報送信部402と、制御装置403とを有する。
【0054】
受信電力測定部401は、ドローン無線中継装置10から送信された狭ビームの送信電波Stの受信電力Eを測定する。受信電力情報送信部402は、前記受信電力Eの測定結果を含む受信電力情報を、ドローン無線中継装置10の子機12、親機20、基地局30及び移動通信網80を介してサーバ81に送信する。
【0055】
制御装置403は、例えばCPU等のプロセッサやメモリ等で構成され、予め組み込まれた又は通信網を介してダウンロードした所定のプログラムコードからなる探索支援アプリケーションのプログラムを実行することにより、データ処理を行ったり各部を制御したりする。本実施形態において、制御装置403は、サーバ81からの情報要求に応じて、又は自律的に所定のタイミングあるいは周期的(一定時間間隔毎)に、受信電力測定部401で測定した受信電力Eの測定結果を含む受信電力情報をサーバ81に送信するように制御する。
【0056】
サーバ81は、例えば単数又は複数のコンピュータ装置で構成され、情報受信部811と、情報記録部812と、位置推定部813と、地図上に受信電力や特定した位置を表示する画像生成部814と、外部アクセス処理部815とを備える。
【0057】
情報受信部811は、ドローン無線中継装置10が対象エリアTAの上空を飛行した飛行時間帯について、ドローン無線中継装置10からドローン無線中継装置10のGPS位置情報及び時刻情報を受信し、携帯端末40から受信測定情報としての受信電力情報及び時刻情報を受信する。
【0058】
情報記録部812は、前記飛行時間帯について、ドローン無線中継装置10の位置情報及び携帯端末40の受信電力情報のそれぞれと、対応する時刻情報とを互いに関連付けて記録する。
【0059】
時刻情報は、例えばドローン無線中継装置10がGPS位置情報を取得したときの時刻情報(タイムスタンプ)であり、携帯端末40が受信電力を測定したときの時刻情報(タイムスタンプ)である。
【0060】
また、情報記録部812に記録するドローン無線中継装置10の位置情報は、ドローン無線中継装置10のGPS位置情報でもよいし、GPS位置情報に基づいて算出した、対象エリアTAに定義した直交座標系における原点を基準にした相対距離の位置情報(x,y)であってもよい。また、情報記録部812に記録する情報は、前記飛行時間帯における複数の時刻のそれぞれについて、同時刻に対応するドローン無線中継装置10の位置情報(x,y)と受信測定情報(E)を結合した受信測定データとしての受信電力データ(x,y,E)であってもよい。
【0061】
位置推定部813は、ドローン無線中継装置10の位置情報と受信電力情報と時刻情報とに基づいて、対象エリアTAにおける携帯端末40の位置を推定する。例えば、位置推定部813は、前記飛行時間帯における複数の時刻に対応する複数組の受信電力データ(x,y,E)に基づいて、受信電力Eが最大となるドローン無線中継装置10の位置(xp、yp)を検出し、そのドローン無線中継装置10の位置(xp、yp)を携帯端末40の位置として推定する。
【0062】
画像生成部814は、前記飛行時間帯における複数の時刻に対応する複数組のドローン無線中継装置10の位置情報(x,y)及び受信電力(E)に基づいて、平面地図上のドローン無線中継装置10の位置(x,y)におけるz軸方向に受信電力(E)を3次元的に表示した地図画像を生成する。画像生成部814が生成する画像は、平面地図上のドローン無線中継装置10の位置(x,y)の色相、彩度若しくは明度を受信電力(E)に応じて変化させた地図画像であってもよい。
【0063】
外部アクセス処理部815は、オペレータが操作する外部のコンソール装置85からサーバ81へのアクセスを処理する。オペレータはコンソール装置85を操作することにより、携帯端末40の探索を要求したり、携帯端末40の位置の表示を含む平面地図の画像をサーバ81から受信して表示したりすることができる。
【0064】
図7は、実施形態に係るドローン無線中継システム1を用いた端末位置特定システム2の概略構成の他の例を示す説明図である。なお、
図7において、前述の
図1と共通する部分については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0065】
図7のドローン無線中継システム1は、ドローン無線中継装置10の中継局(リピータ子機)12と地上側の自動車(無線中継車)50に搭載されたリピータ親機20との通信を、光ファイバー95Bを用いたROF(Radio on Fiber)で行うことにより、同一周波数の電波の回り込み干渉を防止できるとともに中継用周波数を必要としない有線給電ドローン無線中継システムである。
【0066】
図7の例では、同一の給電ケーブル95内に電力供給線95Aと光ファイバー95Bとが収容されている。なお、電力供給線95A及び光ファイバー95Bは別々のケーブルに収容してもよく、電力供給線95Aのケーブルと光ファイバー95Bのケーブルを束ねてもよい。
【0067】
ドローン無線中継装置10は、中継局(リピータ子機)12に接続されて光ファイバー95Bを介して下り及び上りの光信号を送受信するROF通信のためのROF装置14を備える。また、地上側のリピータ親機20には、光ファイバー95Bを介してドローン無線中継装置10との間で下り及び上りの光信号を送受信するROF通信のためのROF装置203が接続されている。ROF装置14及びROF装置203はそれぞれ、例えば、電子信号を光信号に変換するE/O変換部、光信号を電気信号に変換するO/E変換部等を有する。
【0068】
図7において、親機20で受信した無線中継電波を、ROF装置203を用いて子機12に光信号で送信する。具体的には、親機20で受信した電波の電気信号を光信号に変換し(E/O変換)、光ファイバー95Bにより子機12に伝送する。ドローン無線中継装置10では、光ファイバー95Bで受信した光信号を電気信号に変換し(O/E変換)、変換後の電気信号の電波を子機12から送信する。
【0069】
図7のドローン無線中継システム1では、親機20と子機12との間の無線中継波F2,F2'が不要となり、親機及び子機においてF2,F2'対応の無線中継装置及びアンテナが不要となり、小型化及び軽量化が図れる。
【0070】
次に、本実施形態のドローン無線中継装置10と地上の電源装置90との間で給電ケーブル(以下「主ドローン給電ケーブル」ともいう。)を支持可能な補助ドローンを備えるドローン無線中継システム1について説明する。
【0071】
図8(a)及び
図8(b)はそれぞれ、ドローン無線中継装置10における給電ケーブル95の重量の負荷及び地上の障害物との干渉を示す説明図である。
本実施形態のドローン無線中継システム1において、ビルや家屋が倒壊した現場で給電ケーブル95が接続されたドローン無線中継装置10を運用すると、捜索現場の上空に向かう途中に
図8(b)に示すように家屋やビルの倒壊物、倒壊した木々等の障害物75があり、それらに給電ケーブル95が引っ掛かったりすることから、ドローン無線中継装置10の飛行への障害となる。また、障害物75に給電ケーブル95が引っ掛かったりすると、給電ケーブル95が切断され、ドローン無線中継装置10が墜落する可能性もある。
【0072】
特に、給電ケーブル95が長い場合(例えば、100mよりも長い200m~300mの長さの場合)は、
図8(a)に示すように給電ケーブル95の重量Wがドローン無線中継装置10への負荷となり、ドローン無線中継装置10が安定して飛行できなくなるおそれもある。
【0073】
そこで、以下に示すように、(i)ドローン無線中継装置(以下「主ドローン」ともいう。)10の負荷になる給電ケーブル(以下「主ドローン給電ケーブル」ともいう。)95の重量を分散し、(ii)主ドローン給電ケーブル95が途中の障害物75に引っ掛からないように制御できるように、補助ドローン70を組み合わせた有線給電探索ドローン無線中継システムを構成してもよい。
【0074】
図9は、実施形態に係る補助ドローン70を備えたドローン無線中継システム(主ドローン)1の概略構成の一例を示す説明図である。なお、
図9において、前述の
図1と共通する部分については同じ符号を付し、説明を省略する(後述の
図10~
図15においても同様)。また、
図9の給電ケーブル95のうち第1のケーブル部分951は、電源装置90と補助ドローン70との間に掛け渡されたケーブル部分であり、第2のケーブル部分952は、補助ドローン70と主ドローン10の間に掛け渡されたケーブル部分である。また、補助ドローン70は、その補助ドローンの各部に電力を供給する電源装置としての直流(DC)電源73を備えている。
【0075】
図9のドローン無線中継システム1では、補助ドローン70を用意して主ドローン給電ケーブル95の途中を補助ドローン70の係留部72に係留し、次の(1)の制御及び給電ケーブル95の重量Wの分散を行う。
(1)途中に障害物75がある場合は、主ドローン給電ケーブル95が障害物75に引っ掛からないように補助ドローン70の飛行高度(図中の矢印E方向の高度)を制御する。
(2)給電ケーブル95の先頭に位置する主ドローン10にかかる給電ケーブル95の重量Wを分散する。
【0076】
なお、先頭の主ドローン10は無線中継のための中継局(子機)12等を搭載しており、給電ケーブル95を搭載するための重量(ペイロード)に制限があるが、補助ドローン70の搭載重量は給電ケーブル95の重量だけであり、補助ドローン70に給電ケーブルを搭載するための重量は先頭の主ドローン10に比べて大きい。
【0077】
図10(a)及び
図10(b)はそれぞれ、補助ドローン70の係留位置及び飛行高度の調整の一例を示す説明図である。例えば、
図10(a)に示すように、給電ケーブル95の第2のケーブル部分952の全体にかかる重量Wを、補助ドローン70側の重量W1と先頭の主ドローン10側の重量W2とに分散する。このように主ドローン10への給電ケーブル95の重量の分散を適宜行うために、補助ドローン70の係留位置や飛行高度を適宜変更する。
図10(b)の例では、補助ドローン70の高度を上げ、併せて係留位置をずらして、先頭の主ドローン10への給電ケーブル95(第2のケーブル部分952)の重量W1を低減している。
【0078】
図11(a)及び
図11(b)はそれぞれ、補助ドローン70への電力供給方法の一例を示す説明図である。補助ドローン70への電力供給も長時間の飛行を補助するため、先頭の主ドローン10と同様に給電ケーブルを用いる。
【0079】
図11(a)の例では、先頭の主ドローン10への給電ケーブル95を、補助ドローン70のケーブル係留部72における分岐点で分岐して、同一の給電ケーブル95を用いて補助ドローン70へ電力を供給する。同一の給電ケーブル95を用いることで1本の給電ケーブルで実現できる。但し、分岐点が補助ドローン70となることから先頭の主ドローン10と補助ドローン70との間で給電ケーブルの長さを変更できない。
【0080】
図11(b)の例では、先頭の主ドローン10への給電ケーブル95を補助ドローン70のケーブル係留部72で分岐するが、補助ドローン70のケーブル係留部72には給電ケーブル95を左右に移動させて通過させるケーブル移動機構を設け、先頭の主ドローン10と補助ドローン70との間の給電ケーブル長(第2のケーブル部分952の長さ)を可変にする。これにより、先頭の主ドローン10への給電ケーブル95の重量を補助ドローン70との間で適宜分散できることから、給電ケーブル長が長くても、主ドローン10への給電ケーブル95の重量を低減できる。但し、本構成では、移動する給電ケーブル95から補助ドローン70へ電力を供給するために、例えば、上記ケーブル移動機構にスリップリングのような電源供給機構を取り付ける必要がある。一般に、スリップリングは非常に高価であり、また、そのスリップリングの重量も無視できない。
【0081】
図12は、実施形態に係る補助ドローン70を備えたドローン無線中継システム1の概略構成の他の例を示す説明図である。
図12の例では、補助ドローン70への電力供給も長時間の飛行を補助するため、先頭の主ドローン10と同様に給電ケーブル96を用いる。
図12の電力供給方法は、先頭の主ドローン10と補助ドローン70との間の給電ケーブル長を可変とすることができるとともに、補助ドローン70のケーブル係留部におけるケーブル移動機構にスリップリングのような高価な機構を用いない方法である。
【0082】
図12に示すように先頭の主ドローン10への電力供給と補助ドローン70への電力供給を互いに異なる2本の給電ケーブル(主ドローン給電ケーブル95と補助ドローン給電ケーブル96)を用いる。補助ドローン70のケーブル係留部72は主ドローン給電ケーブル95を図中の左右方向(横方向)に移動させて通過させるケーブル移動機構を有し、主ドローン給電ケーブル95は補助ドローン70で通過させる。従って、先頭の主ドローン10に接続される主ドローン給電ケーブル95を途中で分岐しないため、補助ドローン70のケーブル係留部72に設けたケーブル移動機構にはスリップリングのような電源供給機構は不要として、先頭の主ドローン10と補助ドローン70との間の給電ケーブル長(第2のケーブル部分952の長さ)を可変とすることができる。補助ドローン70へ電力を供給する補助ドローン給電ケーブル96を必要とするが、主ドローン給電ケーブル95の重量を主ドローン10と補助ドローン70との間で適宜分散できることから、主ドローン給電ケーブル95の給電ケーブル長が長くても、主ドローン10への給電ケーブルの重量を低減できる。
【0083】
図13は、実施形態に係る複数の補助ドローン70(1),70(2)を備えたドローン無線中継システム1の概略構成の一例を示す説明図である。なお、
図13の例では、補助ドローン70の数が2であるが、3以上であってもよい(後述の
図14及び
図15においても同様)。
【0084】
図13に示すように、補助ドローンの数を2又は3以上に増大することにより、先頭の主ドローン10に掛かる主ドローン給電ケーブル95の重量を分散することができることから、主ドローン給電ケーブル95を更に長くできるので、捜索範囲の拡大が図れる。但し、主ドローン給電ケーブル95を各補助ドローン70(1),70(2)で分岐して各補助ドローン70(1),70(2)に電力が供給されるように、例えば複数の補助ドローン70(1),70(2)のそれぞれのケーブル係留部72のケーブル移動機構にスリップリングのような電源供給機構を取り付ける必要がある。
【0085】
図14は、実施形態に係る複数の補助ドローン70(1),70(2)を備えたドローン無線中継システム1の概略構成の他の例を示す説明図である。
図14の構成例において、複数の補助ドローン70(1),70(2)はそれぞれ、地上の電源装置90に接続された複数の補助ドローン給電ケーブル96(1),96(2)を介して電力が個別供給される。
【0086】
また、複数の補助ドローン70(1),70(2)のうち主ドローン10に近い先頭の補助ドローン70(2)におけるケーブル係留部72は、主ドローン10及び補助ドローン70(2)の少なくとも一方の移動に伴って主ドローン給電ケーブル95が支持された状態で左右方向(横方向)に移動して通過可能に構成され、主ドローン給電ケーブル95の主ドローン10と先頭の補助ドローン70(2)との間のケーブル長を可変とするケーブル移動機構を搭載する。
【0087】
また、複数の補助ドローン70(1),70(2)のうち先頭以外の補助ドローン70(1)におけるケーブル係留部72は、主ドローン10及び補助ドローン70(1)の少なくとも一方の移動に伴って主ドローン給電ケーブル95が支持された状態で左右方向(横方向)に移動して通過可能に構成され、主ドローン給電ケーブル95の主ドローン10と先頭以外の補助ドローン70(1)との間のケーブル長を可変とするケーブル移動機構を搭載する。更に、この補助ドローン70(1)のケーブル係留部72は、補助ドローン70(1),70(2)の少なく一方の移動に伴ってより先頭側に位置する他の補助ドローン70(2)に電力を供給する他の補助ドローン給電ケーブル96(2)が支持された状態で左右方向(横方向)に移動して通過可能に構成され、他の補助ドローン給電ケーブル96(2)の先頭側の他の補助ドローン70(2)と先頭以外の補助ドローン70(1)との間のケーブル長を可変とするケーブル移動機構も搭載する。
【0088】
図14に示すように、主ドローン給電ケーブル95を通過させるケーブル移動機構を有した補助ドローン70の数を2又は3以上に増大することにより、先頭の主ドローン10に掛かる主ドローン給電ケーブル95の重量を分散することができることから、主ドローン給電ケーブル95を長くできるので、捜索範囲の拡大が図れる。また、複数の補助ドローン70(1),70(2)のそれぞれのケーブル係留部72に主ドローン給電ケーブル95を通過させるケーブル移動機構を用いることで、構成が簡易であり、低コスト化が図れる。
【0089】
図15は、実施形態に係る複数の補助ドローン70(1),70(2)を備えたドローン無線中継システム1の概略構成の更に他の例を示す説明図である。
図15の構成例において、複数の補助ドローン70(1),70(2)はそれぞれ、地上の電源装置90に接続された1本の補助ドローン給電ケーブル96を各補助ドローン70(1),70(2)で分岐して電力が供給される。また、複数の補助ドローン70(1),70(2)それぞれにおけるケーブル係留部72は、主ドローン10及び補助ドローン70(1),70(2)の少なくとも一方の移動に伴って主ドローン給電ケーブル95が支持された状態で左右方向(横方向)に移動して通過可能に構成され、主ドローン給電ケーブル95の主ドローン10と先頭の補助ドローン70(2)との間のケーブル長を可変とするケーブル移動機構を搭載する。
【0090】
図15に示すように、先頭の主ドローン10へ電力を供給する1本の主ドローン給電ケーブル95に関しては、主ドローン10と補助ドローン70(1),70(2)それぞれとの間の給電ケーブル長を可変とするために、前述の
図12及び
図14に示すように主ドローン給電ケーブル95を図中の左右方向(横方向)に移動させて通過させるケーブル移動機構を各補助ドローン70(1),70(2)のケーブル係留部72に搭載して主ドローン10へ電力を給電する。一方、各補助ドローン70(1),70(2)へは、
図11(a)及び
図13に示すように1本の補助ドローン給電ケーブル96を先頭の補助ドローン以外の各補助ドローン(図示の例では、電源装置90側の第1の補助ドローン70(1))で分岐して、同一の1本の補助ドローン給電ケーブル96を用いて各補助ドローン70(1),70(2)へ電力を供給する。これにより、各補助ドローン70(1),70(2)にかかる補助ドローン給電ケーブル96の重量を低減できる。
【0091】
図15の例によれば、先頭の主ドローン10に掛かる主ドローン給電ケーブル95の重量を分散することができることから、主ドローン給電ケーブル95を長くできるので、捜索範囲の拡大が図れる。また、各補助ドローンへ電力を供給する補助ドローン給電ケーブル96を一本とすることで、補助ドローン給電ケーブル96の軽量化が図れる。
【0092】
以上、本実施形態によれば、地上から有線の給電ケーブル95でドローン無線中継装置(主ドローン)10に電力を給電する有線給電探索型のドローン無線中継システム1であるため、長時間の連続した捜索が可能である。
特に、本実施形態によれば、ビルや家屋が倒壊した災害現場で有線給電探索型のドローン無線中継システム1を運用した場合に、家屋やビルの倒壊物等の障害物75があっても、その障害物75に給電ケーブル95が引っ掛かったりすることを回避できることから、給電ケーブル95が障害物75により切断してドローン無線中継装置10が墜落するような危険を回避できる。
また、本実施形態によれば、先頭の主ドローン10へ電力を供給する主ドローン給電ケーブル95の重量を主ドローン10と補助ドローン70との間で適宜分散できることから、主ドローン給電ケーブル95のケーブル長が長くても、主ドローン10にかかる主ドローン給電ケーブル95の重量を低減できる。
また、本実施形態によれば、補助ドローン70の「ケーブル移動機構」に主ドローン給電ケーブル95を通過させる「ケーブル移動機構」を用いることで、「ケーブル移動機構」にスリップリングのような電源供給機構が不要であり、構成が簡易であり、低コスト化が図れる。
【0093】
また、本実施形態によれば、移動通信の携帯端末(端末装置)40がGPS非受信状態であっても、携帯端末40の現在位置を推定して特定することができる。
また、本実施形態によれば、携帯端末40がGPS非受信状態の場合に、ドローン無線中継装置10のGPS位置情報と携帯端末40の受信電力Eの測定結果だけで携帯端末40の位置を推定(特定)できる。
また、移動通信の携帯端末40の受信電力Eの測定は携帯端末40が通常有する機能であり、新たな測定機能は不要である。
更に、ドローン無線中継装置10のドローンは飛行制御用に一般にGPS受信機を有しているので、GPS受信機の追加機能は不要である。
【0094】
また、本発明は、携帯端末(端末装置)40の位置を特定する捜索を長時間にわたって連続して行うことができるシステムを提供できるため、持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」の達成に貢献できる。
【0095】
なお、本明細書で説明された処理工程並びに中継局、無線中継装置、端末装置(携帯端末、ユーザ装置、移動局)、サーバ及び基地局における基地局装置の構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0096】
ハードウェア実装については、実体(例えば、中継局、無線中継装置、端末装置、サーバ及び基地局における基地局装置、コンピュータ装置、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0097】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、上記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0098】
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であればよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
【0099】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。
【符号の説明】
【0100】
10 :ドローン無線中継装置(ドローン搭載無線中継装置、主ドローン)
12 :子機(中継局)
13 :DC電源
20 :親機
30 :固定基地局
40 :携帯端末(端末装置)
50 :自動車(無線中継車)
60 :人工衛星
70、70(1)、70(2) :補助ドローン
72 :ケーブル係留部
73 :DC電源
75 :障害物
80 :移動通信網
81 :サーバ
85 :コンソール装置
90 :電源装置(地上の電力供給装置)
95 :給電ケーブル(主ドローン給電ケーブル)
95A :電力供給線
95B :光ファイバー
96 :給電ケーブル(補助ドローン給電ケーブル)
110F :FLアンテナ(フィーダリンク用アンテナ)
110S :SLアンテナ(サービスリンク用アンテナ)
110T :探索アンテナ(狭ビーム指向性アンテナ)