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特許7422186沸騰水炉用運転始動/運転停止水素注入システムおよびその方法
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  • 特許-沸騰水炉用運転始動/運転停止水素注入システムおよびその方法 図1
  • 特許-沸騰水炉用運転始動/運転停止水素注入システムおよびその方法 図2
  • 特許-沸騰水炉用運転始動/運転停止水素注入システムおよびその方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】沸騰水炉用運転始動/運転停止水素注入システムおよびその方法
(51)【国際特許分類】
   G21D 1/00 20060101AFI20240118BHJP
   G21D 3/08 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
G21D1/00 X
G21D3/08 X
G21D1/00 W
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022110005
(22)【出願日】2022-07-07
(62)【分割の表示】P 2020026392の分割
【原出願日】2013-12-09
(65)【公開番号】P2022125296
(43)【公開日】2022-08-26
【審査請求日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】13/724,474
(32)【優先日】2012-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508177046
【氏名又は名称】ジーイー-ヒタチ・ニュークリア・エナジー・アメリカズ・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】GE-HITACHI NUCLEAR ENERGY AMERICAS, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】ウィテカー,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ゴンザガ,アンジェロ
(72)【発明者】
【氏名】シュー,ポール
(72)【発明者】
【氏名】トラン,ルオン
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-149764(JP,A)
【文献】国際公開第97/037358(WO,A1)
【文献】特開平08-122491(JP,A)
【文献】特開2006-029940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21D 1/00
G21D 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒界応力腐食割れ(IGSCC)を軽減するために少なくとも1つの第1の沸騰水炉(BWR)支援システムに水素を注入する方法であって、
少なくとも1つの水素源を、原子炉運転始動モード、原子炉運転停止モード、または前記原子炉運転始動モードおよび前記原子炉運転停止モードの両者中に運転中であるとともに炉水流動を受ける前記少なくとも1つの第1のBWR支援システムに、前記原子炉運転始動モード、または前記原子炉運転停止モードのうちの少なくとも1つの期間中に流体的に接続する工程と、
前記少なくとも1つの水素源から前記少なくとも1つの第1のBWR支援システムへ水素流を向ける工程と、
前記少なくとも1つの第1のBWR支援システムの運転圧力に基づいて前記少なくとも1つの第1のBWR支援システムに対する前記水素流の圧力を調節する工程と、を含み、
前記水素流の前記圧力を調節する工程は、
前記少なくとも1つの水素源と前記少なくとも1つの第1のBWR支援システムとの間に設けられる水素昇圧器を使用して前記水素流の前記圧力を昇圧するように前記水素流を圧縮する工程と、
前記水素昇圧器において前記水素流の第1の圧力を、また、前記少なくとも1つの第1のBWR支援システムに対する水素注入点において前記水素流の少なくとも1つの第2の圧力を測定する工程と、
前記第1の圧力および前記少なくとも1つの第2の圧力に基づき自動流れ制御機構の使用を介して、前記水素昇圧器を通して前記少なくとも1つの第1のBWR支援システムに向かって流れる前記水素流の流量を自動的に制御する工程とを含む、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの第1のBWR支援システムが、炉水浄化(RWCU)戻り管路および給水再循環管路のうちの1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水素流の圧力を調節する前記工程は、前記少なくとも1つの第1のBWR支援システムに対する前記水素注入点における前記水素流の圧力を、前記原子炉運転始動モード、前記原子炉運転停止モード、または前記原子炉運転始動モードおよび前記原子炉運転停止モードの両者中に変化するとともに前記少なくとも1つの第2の圧力に対応する、前記少なくとも1つの第1のBWR支援システムの運転圧力に整合させる工程を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記水素昇圧器がインライン油圧駆動昇圧器およびインライン空気圧駆動昇圧器のうちの1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記水素昇圧器が前記水素流の圧力を7.58MPaGまでの可変圧力に昇圧するように構成される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記自動流れ制御機構が前記水素昇圧器よりも低圧クラスである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記自動流れ制御機構は、少なくとも1つの空気作動弁を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記水素昇圧器における前記水素流の前記第1の圧力を測定する前記工程は、前記水素昇圧器の直前および前記水素昇圧器の直後のうちの少なくともいずれかの位置で前記第1の圧力を測定する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の圧力を前記少なくとも1つの第2の圧力と比較する工程をさらに含み、
前記水素流の前記流量を自動的に制御する前記工程は、前記第1の圧力を前記少なくとも1つの第2の圧力と比較する工程にさらに基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
原子炉運転始動モード、または原子炉運転停止モード中に稼働する少なくとも1つの第1のBWR支援システムと、
前記少なくとも1つの第1のBWR支援システムに流体的に接続され、少なくとも1つの水素源、自動流れ制御部を含む流れ制御装置、圧力制御装置を備えた水素注入システムと、
を備え、
前記圧力制御装置が、
水素昇圧器において水素流の第1の圧力を、また、前記少なくとも1つの第1のBWR支援システムに対する水素注入点において前記水素流の少なくとも1つの第2の圧力を測定し、
前記第1の圧力および前記少なくとも1つの第2の圧力に基づき前記自動流れ制御部の使用を介して、前記水素昇圧器を通して前記少なくとも1つの第1のBWR支援システムに向かって流れる前記水素流の圧力および流量を自動的に制御する、
ように構成される、システム。
【請求項11】
原子炉運転始動モード、および原子炉運転停止モード中に稼働する少なくとも1つの第1のBWR支援システムと、
前記少なくとも1つの第1のBWR支援システムに流体的に接続され、少なくとも1つの水素源、自動流れ制御部を含む流れ制御装置、圧力制御装置を備えた水素注入システムと、
を備え、
前記圧力制御装置が、
水素昇圧器において水素流の第1の圧力を、また、前記少なくとも1つの第1のBWR支援システムに対する水素注入点において前記水素流の少なくとも1つの第2の圧力を測定し、
前記第1の圧力および前記少なくとも1つの第2の圧力に基づき前記自動流れ制御部の使用を介して、前記水素昇圧器を通して前記少なくとも1つの第1のBWR支援システムに向かって流れる前記水素流の圧力および流量を自動的に制御する、
ように構成される、システム。
【請求項12】
前記少なくとも1つの第1のBWR支援システムが、炉水浄化(RWCU)戻り管路および給水再循環管路のうちの1つである、請求項10または11に記載のシステム。
【請求項13】
前記水素昇圧器がインライン油圧駆動昇圧器およびインライン空気圧駆動昇圧器のうちの1つである、請求項10または11に記載のシステム。
【請求項14】
前記少なくとも1つの水素源を、前記少なくとも1つの第1のBWR支援システムに流体的に接続する工程は、前記原子炉運転始動モードおよび前記原子炉運転停止モードの期間中に行われる、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
例示の実施形態は、一般に原子力の沸騰水炉(BWR)に関し、さらに詳細には原子炉運転始動および運転停止の期間中に原子炉支援システムの中に水素を注入するシステムおよびその方法に関する。このシステムは、運転始動モードおよび運転停止モードに亘って変化する支援システムの運転圧力に整合させるために可変圧力(約1100psigの高圧を含む)で水素を供給できる。
【背景技術】
【0002】
従来、水素水化学(HWC)システム1(図1参照)が、凝縮液昇圧器ポンプの吸水管または給水ポンプの吸水管(注入点2参照)で沸騰水炉(BWR)の給水システムに水素を注入する。これらの位置で水素を注入することによって、再循環配管および原子炉内部における粒界応力腐食割れ(IGSCC)の低減を促進する。具体的には、水素を注入すると、原子炉のコア部分の水素および酸素の放射性分解性の純生産量が下がって溶解酸素が低減する。
【0003】
従来のHWCシステム1は、水素の液体貯蔵タンク(圧縮器および蒸発器付き)またはボトルであり得る水素源4を有する。また、水素源は電解生成されてもよい。水素が、一連のバルブを貫流する前に、水素フィルタ6で濾過されてもよく、該一連のバルブには、圧力制御弁8、過流逆止弁11、遮断弁10、および逃し弁12がある。従来の水素注入点2に水素が排出される水素注入モジュール16に入る前に、水素が空気作動式制御弁14を用いて隔離されてもよい。システム1全体で保守および安全目的にパージ連結70が一般に用いられる。
【0004】
従来の水素注入点2は、凝縮液昇圧器ポンプの吸水管(85~160psig)および給水ポンプの吸水管(400~650psig)などの(原子炉に対して)低圧系に位置する注入点である。これら低圧系のポンプは完全な原子炉運転始動または運転停止(原子炉SCRAMなどの緊急な原子炉運転停止を含む)の最中に稼働しないので、水素は、したがって運転始動および運転停止中にこれら従来の位置で注入されず、そのため再循環配管および/または原子炉内部へ効率的な輸送の水素溶解がされない。IGSCCの腐食が低動作温度(原子炉運転始動中、約200~450°F/約5%出力までの昇温)でさらに優勢になるので、運転始動モードおよび運転停止モード中の原子炉(および原子炉支援システム)の危険性がより高まり、その結果、原子炉運転始動モードおよび運転停止モード中に従来の注入点2へ水素を注入できなくなることによって引き起こされる影響は甚大である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭54-126894号公報
【発明の概要】
【0006】
例示の実施形態は、原子炉運転始動および運転停止の期間中に水素をBWR原子炉支援システムに注入する運転始動/運転停止水素注入システム(およびそれに係る方法)を提供する。
【0007】
原子炉が運転始動モードおよび運転停止モードを循環するため、非常に大きな温度および圧力の変化(原子炉昇温およびクールダウンの結果として)を原子炉(および原子炉支援システム)が受けるので、水素注入システムが、これら支援システムの何れの期間での運転圧力にも整合し得る可変圧力の水素を供給する。水素注入システムが潜在的に高圧でも運転される原子炉支援システムに水素を供給するので、水素注入システムが水素圧力を従来のHWCシステムに標準的に関連する圧力レベル以上に昇圧してもよい。
【0008】
例示の実施形態における上記および他の特徴および有利な点は、添付の図面を参照して例示の実施形態を詳細に説明することでさらに明らかになるであろう。添付の図面は例示の実施形態を説明するものであって、意図した特許請求の範囲を限定するものと解釈されない。添付の図面は、そうと明示しないかぎり正確な縮尺図として解釈されない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】従来の水素水化学(HWC)システムの配管計装(P&ID)図である。
図2】例示の実施形態に係る運転始動/運転停止水素注入システムのP&ID図である。
図3】例示の実施形態に係る運転始動/運転停止水素注入システムの製造および使用の方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここに例示の実施形態を詳細に開示する。しかしながら、ここに開示する特定の構造お
よび機能の詳細は例示の実施形態を説明する目的のための代表例に過ぎない。さらに、例示の実施形態は様々な代替の形態で実施してもよいし、単にここで説明する実施形態に限定するものと解釈されない。
【0011】
したがって、例示の実施形態が様々な変形および代替の形態が可能であるが、これらの実施形態を図面における例示を通して示し本明細書で詳細に説明する。しかしながら、開示される特定の形態に例示の実施形態を限定する意図はなく、反対に、例示の実施形態の範囲内にある全ての変形、等価、および代替を例示の実施形態が含むものと解釈される。図の説明全体に亘って類似の番号は類似の構成要素を指す。
【0012】
様々な構成要素を説明するために第1、第2などの用語が本明細書で用いられるが、これら構成要素がこれらの用語に限定されるものでないことは理解されよう。これら用語は、1つの構成要素を別の構成要素から区別するために用いられるに過ぎない。たとえば、例示の実施形態の範囲から乖離しない範囲で、第1の構成要素が第2の構成要素と付されてもよいし、同様に第2の構成要素が第1の構成要素と付されてもよい。「および/または」の用語が、本明細書で用いられるように、1つまたは複数の関連の列記する品目の何れかおよび全ての組み合わせを含む。
【0013】
構成要素が別の構成要素に「接続される」または「連結される」と表現される場合、該構成要素が他の構成要素に直接に接続もしくは連結されてもよく、または仲介の構成要素が存在してもよいことは理解されよう。対照的に、別の構成要素に「直接に接続される」または「直接に連結される」と表現された場合、仲介の構成要素は存在しない。構成要素間の関係を説明するために使用される他の言葉も同様に解されるべきである(たとえば、「その間に」対「直接にその間に」、「隣接する」対「直接に隣接する」など)。
【0014】
本明細書で用いられる用語法は特定の実施形態を説明することだけを目的とするものであり、例示の実施形態を限定するものでない。内容がそうでないことを明示しないかぎり、本明細書で用いられるように、単数形の「a」、「an」、および「the」は複数形も含むものとする。さらに、用語「comprises」、「comprising」、「includes」、および/または「including」は、本明細書で用いられる場合、表した特徴、整数、ステップ、動作、構成要素、および/または部品の存在を特定するが、1つまたは複数の他の機能、整数、ステップ、動作、構成要素、部品、および/またはこれらの群の存在または追加を排除するものでないことが理解されよう。
【0015】
また、代替の実施において、記載の機能/動作が図に記述された順でなく発生する場合があることが理解される。たとえば、連続して示す2つの図が、関連した機能/動作に従って、実質的に同時に実際に実施されてもよいし、時には反対の順で実行されてもよい。
【0016】
図2は、例示の実施形態に係る運転始動/運転停止水素注入システム30のP&ID図である。システムが1つまたは複数の水素源を有する。たとえば、任意の専用水素ガス源32が水素注入システム30に設けられてもよい。専用水素ガス源32が小さい水素ガスボトル、水素ガストラック、または水素収容の液体貯蔵であってもよい。専用水素ガス源32の代替として(または、専用水素ガス源32に加えて)、既存のHWCシステム1に接続することができる連結20が設けられてもよい(たとえば、HWCシステム1に空気作動式バルブ14の上流か下流で、およびプラント壁の内側または外側で接続され得る図1の任意の連結点20参照)。
【0017】
既存のHWCシステム1と運転始動/運転停止水素注入システム30との間の連結20が水素を供給するのに用いられる場合、流量制御装置が連結20に設けられてもよい。たとえば、圧力制御弁34、圧力トランスミッタ36、局所流れ表示器38、流れ制御弁4
0、および空気作動式弁42が連結管路20に設けられて、既存のHWCシステム1から運転始動/運転停止水素注入システム30の中に流入する水素流量および圧力を制御してもよい。また、遮断弁44が設けられて、水素注入システム30への水素流を遮断してもよい。
【0018】
既存のHWCシステム1と運転始動/運転停止水素注入システム30との間の連結を用いるどうか、または水素注入システム30用に専用水素ガス源32を用いるかどうかに関わらず、水素フィルタ46が設けられて、何れの水素の加圧の前に水素ガスを濾過してもよい。
【0019】
水素注入システム30が、水素注入点50へ注入される水素の圧力を大きく昇圧することができる水素ガス昇圧器48をさらに有してもよい。水素ガス昇圧器48が油圧または空気駆動(空気式)でよく、また約0psig~約1100psigの広い圧力範囲の何れかの水素圧力まで昇圧可能であってもよい。水素ガス昇圧器48を設けることで、水素注入システム30が原子炉運転始動および/または運転停止状態中に炉水流を受ける原子炉支援システム(炉水の酸素濃度が比較的高いとき約1100psigの潜在的に高い運転圧力および約200°F程度の動作温度)に水素を供給することができる(原子炉「運転停止」には原子炉緊急停止、昇温/スタンバイ、および/または昇温/運転停止モードが含まれる)。水素注入点50には、たとえば、BWRの炉水浄化(RWCU)戻り管路または給水再循環管路などの原子炉支援システムにおける注入点が含まれてもよい。これら原子炉支援システム例が原子炉運転始動および/または運転停止中に炉水流を受け、また、原子炉が運転始動および/または運転停止を循環するためにこれらシステムが広い範囲の圧力を受けるので、これらの例示の到達点に適切な水素圧力に上げるのに水素ガス昇圧器48が特に頻繁に設けられる。
【0020】
水素ガス昇圧器48が流れ制御機構(圧力制御弁34、圧力トランスミッタ36、流れ表示器38、流れ制御弁40および空気作動式弁42の何れか1つを含む)の下流に配置され、そうすることで、流れ制御装置が低圧クラス(よってより廉価)で済む。水素ガス昇圧器48が、プラントサービスエア56連結を介して空気圧で動作してもよい。圧力制御弁58が用いられて、水素ガス昇圧器48に入るサービスエアの圧力を制御してもよい。空気フィルタが用いられて、入口空気を濾過してもよい。サービスエア遮断弁62a/62bが、空気入口管路に設けられて、空気入口管路を閉じてもよい(たとえば水素ガス昇圧器48の点検のため)。水素ガス昇圧器48が、空気流れ制御弁72を有して、昇圧器への空気流をスロットルで調整し、昇圧器48からの水素圧力を実質的に上げてもよい。流れ制御弁72が、自動または手動で制御されてもよい。
【0021】
追加のフレキシビリティのためにシステム遮断弁54a~54gが多く設けられて、システム30の所望部分を流れる水素流を管理してもよい。たとえば、比較的低圧を必要とするシステムへ水素が注入される際には、水素ガス昇圧器48は不要としてもよい。そのような状況では、従来の水素源4(図1)が用いられて水素を注入点50に供給する場合、遮断弁54c、54e、および54fを閉じて、一方で遮断弁54dおよび54gを開くことができる。別法では、専用水素ガス源32が用いられて、遮断弁54b、54e、および54fを閉じ(水素ガス昇圧器48をバイパスし)、遮断弁54a、54c、54d、および54gを開くことによって、低圧水素を注入点50の水素に供給してもよい。
【0022】
より高圧な水素の供給が求められる場合、遮断弁54bを開き、それによって(開いた遮断弁54c経由の)水素源4、または(開いた遮断弁54a経由の)水素源32からの水素を水素ガス昇圧器48へ入れることができる。水素ガス昇圧器48を出た水素は、遮断弁54e、54fおよび54gを経由して水素注入点50へ向かうことができる。
【0023】
局所圧力表示器64a~64cが設けられて、システム内の水素および/またはサービスエアの運転圧力を確認してもよい。特に、高圧水素注入点50の場合、逆止弁66を水素注入管路50に設けて、高圧システムからの流体が水素注入システムへ逆流しないことを確実にしてもよい。
【0024】
運転始動/運転停止水素注入システム30が便宜上2つの分離のスキッド30a/30bに設けられてよく、その場合、比較的低圧力水素装置が主に1つのスキッド30aに設けられ、比較的高圧力水素装置が主に別のスキッド30bに設けられる。
【0025】
安全逃し弁68が水素ガス昇圧器48に設けられて、水素ガス昇圧器48が過加圧になり得るときに水素を(通気管路52へ)逃してもよい。また、システム30全体に保守および安全目的のためにパージ連結70が設けられてもよい。
【0026】
図3は、例示の実施形態に係る運転始動/運転停止水素注入システム30を製造する、およびそれを使用する方法のフローチャートである。方法には、少なくとも1つの水素源を、原子炉運転始動および/または運転停止の期間中に運転中のBWR原子炉支援システムへ流体的に接続するステップS80が含まれ得る。これは、たとえば、水素源とBWR原子炉支援システムとの間に配管またはチュービングすることで達成される。運転始動および/または運転停止中に「動作中」とされる支援システムとは、原子炉が始動および停止する期間中にシステム全体に炉水流動を供給するシステムに関することであることが理解されよう(これによって、注入される水素に輸送媒体が提供され、次いで運転始動モードおよび/または運転停止モード中に再循環配管および/または原子炉内部へ輸送される)。
【0027】
方法には、水素流を、少なくとも1つの水素源から原子炉支援システムへ向けるステップS82がさらに含まれ得る。これは、たとえば、水素源と原子炉支援システムの間に位置する配管/チュービングの弁連結を開くことで達成され得る。弁を開くのはPLC60(図2参照)などのコントローラを介して達成され得る。
【0028】
方法には、少なくとも1つの水素源から原子炉支援システムへの水素流の圧力を、原子炉支援システムの運転圧力に基づいて調節するステップS84が含まれ得る。具体的には、原子炉が運転始動モードおよび/または運転停止モードを循環する間に運転圧力が変化し得るという了解の下、水素流の圧力が原子炉支援システムの運転圧力と整合するように調節され得る。水素流の圧力の調節がPLC60(図2参照)などのコントローラを介して達成され、水素注入点50に向かう水素の圧力を調節するために、水素注入点50での測定圧力を(たとえば)圧力トランスミッタ36または圧力表示器64cでの測定圧力と比較する。
【0029】
水素注入システム1がプログラマブルロジックコントローラ(PLC)および/またはデータ取得システム60を備えることができ、(所要の注入点50の圧力の測定に基づいて)水素を注入点50へ供給するための速度および圧力を決定するのに用いられてもよい。したがって、PLCおよび/またはデータ取得システム60が、低圧および高圧のスキッド30a/30b両方に示される制御ハードウェアに接続されてもよい(図2に示す連結が全てとは限らない)。また、PLCおよび/またはデータ取得システム60が、水素注入システム30内の水素ガス昇圧器48および任意のシステムバルブを制御してもよい。
【0030】
以上のように例示の実施形態を説明したが、同様のものが多様に変わり得るのは明らかである。そのような変形は例示の実施形態の意図した精神および範囲から逸脱するものと解釈されないし、当業者に明白であるそのような全ての修正は次の特許請求の範囲内に含
まれることが意図される。
【符号の説明】
【0031】
1 水素水化学(HWC)システム
20 連結
30 水素注入システム
30a/30b スキッド
32 水素源、水素ガス源
34 圧力制御弁
36 圧力トランスミッタ
38 流れ表示器
40 流れ制御弁
42 空気作動式弁
44 遮断弁
46 水素フィルタ
48 水素ガス昇圧器
50 水素注入点
54a~54g 遮断弁
56 サービスエア
60 プログラマブルロジックコントローラ(PLC)
62a/62b サービスエア遮断弁
64a~64c 圧力表示器
66 逆止弁
68 安全逃し弁
70 パージ連結
72 流れ制御弁
図1
図2
図3