IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 川崎重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-エネルギー供給システム 図1
  • 特許-エネルギー供給システム 図2
  • 特許-エネルギー供給システム 図3
  • 特許-エネルギー供給システム 図4
  • 特許-エネルギー供給システム 図5
  • 特許-エネルギー供給システム 図6
  • 特許-エネルギー供給システム 図7
  • 特許-エネルギー供給システム 図8
  • 特許-エネルギー供給システム 図9
  • 特許-エネルギー供給システム 図10
  • 特許-エネルギー供給システム 図11
  • 特許-エネルギー供給システム 図12
  • 特許-エネルギー供給システム 図13
  • 特許-エネルギー供給システム 図14
  • 特許-エネルギー供給システム 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】エネルギー供給システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/28 20060101AFI20240118BHJP
   B64C 27/08 20230101ALI20240118BHJP
   B64U 50/30 20230101ALI20240118BHJP
   H02J 15/00 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
H02J3/28
B64C27/08
B64U50/30
H02J15/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022511854
(86)(22)【出願日】2021-03-17
(86)【国際出願番号】 JP2021010893
(87)【国際公開番号】W WO2021200170
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2020066217
(32)【優先日】2020-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】近藤 恒幾
(72)【発明者】
【氏名】坂川 佳司
(72)【発明者】
【氏名】袴田 和英
(72)【発明者】
【氏名】花光 明
(72)【発明者】
【氏名】谷村 和彦
【審査官】杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-091638(JP,A)
【文献】特開平05-076145(JP,A)
【文献】特開2008-245454(JP,A)
【文献】特開2010-148350(JP,A)
【文献】特開2020-082935(JP,A)
【文献】特表2012-505629(JP,A)
【文献】登録実用新案第3163946(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2020/0070680(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 55/00
B64C 27/08
B64U 50/30
H02J 3/28
H02J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象地域内に設置され、再生可能エネルギーを用いて発電する第1発電設備と化石燃料を用いて発電する第2発電設備とを含む送電系統と、
前記送電系統から電力が伝送され、前記対象地域内の需要家へ電力を供給する送配電系統と、
貨物を輸送する輸送機能と外部に電力を供給する電力供給機能とを有する移動体と、
前記送電系統、前記送配電系統及び前記移動体を管理する管理システムと、を備え、
前記送電系統は、
前記第1発電設備の発電によって生じた電力を、第1送電側変電設備を経由して前記送配電系統へ伝送する第1送電線と、
前記第2発電設備の発電によって生じた電力を、第2送電側変電設備を経由して前記送配電系統へ伝送する第2送電線と、を含み、
前記移動体は、前記第1送電線に接続可能であり、
前記管理システムは、前記送電系統の供給電力量と前記送配電系統の需要電力量とを予測し、前記供給電力量が前記需要電力量を下回る場合、前記移動体の前記電力供給機能を利用して、前記移動体から前記送配電系統へ電力を供給させる電力調整処理を行う、エネルギー供給システム。
【請求項2】
前記対象地域内に設置され、水を電気分解して水素を製造する水素製造設備を更に備え、
前記管理システムは、前記送電系統の前記供給電力量が前記送配電系統の前記需要電力量を上回る場合、余剰電力を前記送電系統から前記水素製造設備へ伝送させる余剰電力対応処理を行う、請求項1に記載のエネルギー供給システム。
【請求項3】
前記移動体は、機体と、前記機体に搭載されるエンジンと、前記機体に搭載され、前記電力供給機能を実現するための発電機と、前記輸送機能の実現のために貨物を収納可能な収納部と、を有した無人飛行体である、請求項1又は2に記載のエネルギー供給システム。
【請求項4】
前記管理システムは、前記対象地域の災害発生時において前記送配電系統に停電が生じた場合に、前記無人飛行体から前記特定の需要家に電力を供給する災害対応処理を行い、
前記災害対応処理は、前記対象地域の防災拠点に指定された特定の需要家へ前記無人飛行体を所定の飛行経路に沿って飛行させ、前記無人飛行体の前記発電機から前記特定の需要家の構内に設置された構内系統へ電力を供給させる処理である、請求項3に記載のエネルギー供給システム。
【請求項5】
前記送配電系統の停電中に前記構内系統に交流電力を供給可能な独自電源が前記特定の需要家に存在する場合、前記管理システムは、前記災害対応処理時に、前記独自電源と前記発電機とが同期して前記構内系統へ交流電力を供給するための基準電圧及び基準周波数を前記特定の需要家に送信する、請求項4に記載のエネルギー供給システム。
【請求項6】
前記無人飛行体は、撮像部と、前記管理システムとの間でデータ通信を行う通信部と、離陸及び着陸を含む飛行の制御を行う飛行制御部と、を更に有し、
前記飛行制御部は、
前記災害対応処理の開始に伴い前記管理システムから送信された前記飛行経路及び離陸許可信号が前記通信部により受信されるのに応じて、前記エンジンを始動させて出発拠点から前記機体を離陸させる離陸制御を行い、
離陸後においては、前記飛行経路に沿って前記特定の需要家へ前記機体を飛行させる飛行制御を行い、
前記飛行制御により前記機体が前記特定の需要家の上空に到着すると、前記機体を前記特定の需要家に着陸させる着陸制御を行い、
前記着陸制御は、所定の着陸予定場所周辺を前記撮像部に撮像させて当該撮像による周辺画像を前記通信部を介して前記管理システムへ送信させると共に、前記管理システムからの着陸許可信号を受信すると前記機体を前記特定の需要家に着陸させて前記エンジンを停止させる制御である、請求項4又は5に記載のエネルギー供給システム。
【請求項7】
前記無人飛行体は、撮像部と、前記管理システムとの間でデータ通信を行う通信部と、離陸及び着陸を含む飛行の制御を行う飛行制御部と、を更に有し、
前記飛行制御部は、
前記災害対応処理の開始に伴い前記管理システムから送信された前記飛行経路が前記通信部により受信されるのに応じて、前記エンジンを始動させて出発拠点から前記機体を離陸させる離陸制御を行い、
離陸後においては、前記飛行経路に沿って前記特定の需要家へ前記機体を飛行させる飛行制御を行い、
前記飛行制御により前記機体が前記特定の需要家の上空に到着すると、前記機体を前記特定の需要家に着陸させる着陸制御を行い、
前記着陸制御は、所定の着陸予定場所周辺を前記撮像部に撮像させて当該撮像による周辺画像を前記通信部を介して前記管理システムへ送信させると共に、前記周辺画像に基づき前記着陸予定場所への着陸の支障の有無を判定し、支障が無い場合には前記機体を前記特定の需要家に着陸させて前記エンジンを停止させる制御である、請求項4又は5に記載のエネルギー供給システム。
【請求項8】
前記飛行制御部は、前記着陸制御において前記着陸予定場所への着陸に支障が有ることが確認された場合には、
前記周辺画像に基づいて、前記着陸予定場所からの距離が所定の許容範囲内で且つ着陸に支障が無い着陸候補場所を探索し、
前記着陸候補場所が発見されたときには、当該着陸候補場所に前記機体を着陸させて前記エンジンを停止させ、
前記着陸候補場所が発見されなかったときには、前記出発拠点に戻る方向に前記機体を飛行させると共に、前記機体を前記出発拠点に着陸させて前記エンジンを停止させる、請求項7に記載のエネルギー供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広域自治体等の対象地域の地域電力系統を構成するエネルギー供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、災害時等において防災拠点へ電力を供給する手段として、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを用いた発電設備の送配電系統への連系が拡大している。しかし、再生可能エネルギーを用いた発電設備は、出力が変動するため、安定して電力を供給することが難しい。
【0003】
例えば特許文献1には、平常時において防災拠点に自然エネルギー電源を設け、災害時には、防災拠点の構内系統を送配電系統から切り離すとともに、構内系統に災害時負荷と可搬形の電力調整設備を接続する災害時対応電力供給システムが開示されている。
【0004】
特許文献1では、電力調整設備として蓄電池やエンジン発電機を用いているが、これらは、発電に特化した設備であるため、設備利用効率が低いという課題がある。さらに、災害時に発電機を確実に作動させるためには定期的な点検が必要であるため、発電機の設置数が多い場合や設置地域が広範囲に及ぶ場合には維持管理コストが多大なものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4719709号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、送配電系統への電力供給の安定化を図ることが可能であると共に、設備利用効率の向上を図ることが可能なエネルギー供給システムを提供することにある。
【0007】
本発明の一の局面に係るエネルギー供給システムは、対象地域内に設置され、再生可能エネルギーを用いて発電する第1発電設備と化石燃料を用いて発電する第2発電設備とを含む送電系統と、前記送電系統から電力が伝送され、前記対象地域内の需要家へ電力を供給する送配電系統と、貨物を輸送する輸送機能と外部に電力を供給する電力供給機能とを有する移動体と、前記送電系統、前記送配電系統及び前記移動体を管理する管理システムと、を備える。前記送電系統は、前記第1発電設備の発電によって生じた電力を、第1送電側変電設備を経由して前記送配電系統へ伝送する第1送電線と、前記第2発電設備の発電によって生じた電力を、第2送電側変電設備を経由して前記送配電系統へ伝送する第2送電線と、を含む。前記移動体は、前記第1送電線に接続可能である。前記管理システムは、前記送電系統の供給電力量と前記送配電系統の需要電力量とを予測し、前記供給電力量が前記需要電力量を下回る場合、前記移動体の前記電力供給機能を利用して、前記移動体から前記送配電系統へ電力を供給させる電力調整処理を行う。
【0008】
このエネルギー供給システムによれば、再生可能エネルギーを用いた第1発電設備の出力変動などに伴って送電系統の供給電力量が送配電系統の需要電力量を下回り、送配電系統への電力供給不足が生じた場合には、移動体の電力供給機能を利用して、当該移動体から送配電系統へ電力を供給することができる。このように、移動体の電力供給機能を利用して、当該移動体を調整電源として活用することにより、送配電系統への電力供給の安定化を図ることが可能となる。一方、送電系統から送配電系統への電力供給不足が生じていない場合には、移動体の輸送機能を利用して、移動体に貨物を輸送させることができる。つまり、移動体は、送配電系統への電力供給不足が生じた場合の電力供給に特化した設備ではなく、通常時は貨物を輸送する設備として有効活用される。これにより、調整電源としての活用が可能な移動体の利用効率の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るエネルギー供給システムが構成する地域電力系統を示す図である。
図2】エネルギー供給システムに備えられる移動体の一例を示す無人飛行体を上方から見た平面図である。
図3】無人飛行体の側面図である。
図4】無人飛行体の制御系を示すブロック図である。
図5】エネルギー供給システムに備えられる管理システムの機能構成を示すブロック図である。
図6】管理システムが行う電力調整処理及び余剰電力対応処理を説明するためのフローチャートである。
図7】管理システムが行う災害対応処理を説明するためのフローチャートである。
図8】災害対応処理の詳細を示すサブルーチンの前半部である。
図9】災害対応処理の詳細を示すサブルーチンの後半部である。
図10】無人飛行体の着陸制御の詳細を示すサブルーチンである。
図11】電力調整処理に従って無人飛行体から送配電系統に電力が供給される様子を示す図である。
図12】災害対応処理に従って無人飛行体が管理拠点から離陸するときの様子を示す図である。
図13】災害対応処理に従って無人飛行体が飛行し、着陸予定場所の上空に到着したときの様子を示す図である。
図14】災害対応処理に従って無人飛行体が着陸予定場所に着陸し、無人飛行体から特定需要家の構内系統に電力が供給される様子を示す図である。
図15】着陸予定場所に障害物が存在することに応じて無人飛行体が着陸候補場所に着陸し、その状態で、無人飛行体から特定需要家の構内系統に電力が供給される様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係るエネルギー供給システムについて説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係るエネルギー供給システム1の構成を示す図である。エネルギー供給システム1は、対象地域の地域電力系統を構成するシステムである。対象地域は、例えば広域自治体である。広域自治体は、市区町村などの複数の基礎自治体を包括編成した広域的な自治体であり、都道府県、或いは、複数の都道府県を合わせた広域的な道州制が適用された自治体である。
【0012】
エネルギー供給システム1は、送電系統2と、対象地域内の各需要家4へ電力を供給する送配電系統3と、外部電力系統5と、対象地域内の管理拠点6に設置された管理システム7と、移動体としての無人飛行体8と、を備える。
【0013】
送電系統2は、対象地域内に設置された第1発電設備21、第2発電設備22、第1送電側変電設備23、第2送電側変電設備24、第1送電線25、及び第2送電線26を含む。
【0014】
第1発電設備21は、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを用いて発電する発電設備である。第2発電設備22は、化石燃料を用いて発電する発電設備である。対象地域内には、1又は2以上の複数の第1発電設備21及び第2発電設備22がそれぞれ設置されている。第1送電側変電設備23は、第1発電設備21によって発電された電気の電圧や周波数の変換を行う変電設備である。第2送電側変電設備24は、第2発電設備22によって発電された電気の電圧や周波数の変換を行う変電設備である。第1送電線25は、第1送電側変電設備23と送配電系統3との間に接続される送電線であり、第2送電線26は、第2送電側変電設備24と送配電系統3との間に接続される送電線である。
【0015】
送電系統2においては、第1発電設備21の発電によって生じた電力が、第1送電側変電設備23を経由して第1送電線25から送配電系統3へ伝送され、第2発電設備22の発電によって生じた電力が、第2送電側変電設備24を経由して第2送電線26から送配電系統3へ伝送される。
【0016】
送配電系統3は、送電系統2から電力が伝送され、対象地域内の各需要家4,4A,4Bへ電力を供給する系統である。送配電系統3は、第1配電側変電設備31、第2配電側変電設備32、及び配電線33を含む。
【0017】
第1配電側変電設備31には第1送電線25が接続される。第1配電側変電設備31は、当該第1送電線25を通じて伝送される電気の電圧や周波数の変換を行う変電設備である。第2配電側変電設備32には第2送電線26が接続される。第2配電側変電設備32は、当該第2送電線26を通じて伝送される電気の電圧や周波数の変換を行う変電設備である。配電線33は、第1配電側変電設備31及び第2配電側変電設備32と各需要家4,4A,4Bとの間に接続される配電線である。
【0018】
送配電系統3は、送電系統2から伝送された電力を、第1配電側変電設備31、第2配電側変電設備32、及び配電線33を通じて各需要家4,4A,4Bへ配電する。
【0019】
ここで、送配電系統3から電力が供給される各需要家4,4A,4Bについて説明する。需要家4は、送配電系統3から供給される電力を消費する負荷を備えた、一般的な家屋やビル、工場などである。需要家4Aは、対象地域に風水害や地震などの災害が発生したときに、防災の拠点となる防災拠点に指定された特定の需要家である。以下では、「特定需要家4A」と称する。特定需要家4Aは、例えば役場や避難所、医療施設、通信施設などである。対象地域内には、1又は2以上の複数の特定需要家4Aが存在する。需要家4Bは、対象地域内に設置された水素製造設備である。以下では、「水素製造設備4B」と称する。水素製造設備4Bは、送配電系統3から供給される電力によって稼動し、水を電気分解して水素を製造する設備である。対象地域内には、1又は2以上の複数の水素製造設備4Bが設置されている。
【0020】
外部電力系統5は、対象地域外に設置された外部の送配電系統である。外部電力系統5は、変電設備50、外部電力送電系統51を介して送配電系統3の配電線33に接続されている。このため、送配電系統3には、対象地域内に設置された送電系統2から電力が伝送されると共に、必要に応じて対象地域外に設置された外部電力系統5から電力が伝送される。
【0021】
無人飛行体8は、人や貨物を輸送する輸送機能と外部に電力を供給する電力供給機能とを有する、空路を移動経路とする移動体であり、一般的に「ドローン」や「マルチコプタ」と称される無人の飛行体である。エネルギー供給システム1は、輸送機能及び電力供給機能を有する移動体として、無人飛行体8以外に、陸路を移動経路とする移動体や、海路を移動経路とする移動体を備えていてもよい。また、エネルギー供給システム1に備えられる無人飛行体8の数は特に限定されるものではないが、輸送機能及び電力供給機能の効率的な利用を考慮すると、複数の無人飛行体8が備えられることが望ましい。無人飛行体8は、陸路を移動経路とする移動体のように交通渋滞や道路網の遮断等による通行止めの影響を受けず、また、海路を移動経路とする移動体のように臨海部での移動に制約されない。
【0022】
図2及び図3は無人飛行体8の構成を示す図であり、図2が無人飛行体8を上方から見た平面図、図3が無人飛行体8の側面図である。本実施形態の無人飛行体8は、上方から見た平面視で約7m四方の大型の無人飛行体である。無人飛行体8は、機体81と、当該機体81に搭載されるエンジン82、発電機83、燃料タンク84、インバータ85、バッテリー86、コンバータ87、モーター88及びプロペラ89と、を備える。
【0023】
機体81は、上方から見た平面視で矩形枠状のメインフレーム811と、メインフレーム811の内側において当該メインフレーム811に支持されるサブフレーム812とを含む。メインフレーム811の上面には、所定の間隔を隔てて複数のモーター88が取り付けられており、各モーター88にプロペラ89が連結されている。図2に示す例では、メインフレーム811の上面に8個のモーター88が取り付けられ、それらの各モーター88にプロペラ89が連結される。サブフレーム812は、エンジン82、発電機83、燃料タンク84、インバータ85、バッテリー86及びコンバータ87が搭載される搭載部8121と、無人飛行体8の輸送機能を実現するために人や貨物を収納可能とした収納部8122と、無人飛行体8の着陸時において地面等に接する脚部8123と、を有する。
【0024】
無人飛行体8においては、燃料タンク84に貯留された燃料でエンジン82が駆動され、当該エンジン82の駆動力を動力源として発電機83が発電を行う。発電機83は、無人飛行体8の電力供給機能を実現するためのものである。無人飛行体8の飛行時においては、発電機83で発電された交流電力はコンバータ87で直流電力に変換されてバッテリー86に貯留される。このバッテリー86に貯留された直流電力は必要に応じてインバータ85で交流電力に逆変換されて、モーター88に供給される。これにより、モーター88が回転し、そのモーター88の回転に応じてプロペラ89が回転して、無人飛行体8の飛行が可能となる。
【0025】
図4のブロック図に示すように、無人飛行体8は、飛行制御部9と、計測器91と、センサ92と、撮像部93と、通信部94と、を更に備える。飛行制御部9、計測器91、センサ92、撮像部93及び通信部94は、サブフレーム812の適宜位置に設けられる。
【0026】
計測器91は、機体81の重力軸に対する傾斜角度を計測するジャイロセンサと、機体81から地上に向けて超音波を送ることで得られる反射波に基づいて地上からの高度を計測する高度計と、衛星群から得た受信信号に基づいて機体81の位置を計測するGPS受信機と、を有する。つまり、計測器91は、無人飛行体8の飛行時において、ジャイロセンサで飛行姿勢を計測し、高度計で地上からの高度を計測し、GPS受信機で飛行位置を計測する。計測器91の計測結果は、飛行制御部9に入力される。センサ92は、機体81の周囲の障害物等の有無を検出するセンサである。センサ92は、無人飛行体8の離陸時において機体81の周囲の障害物等の有無を検出し、無人飛行体8の飛行時において機体81の飛行方向前方の障害物等の有無を検出する。センサ92の検出結果は、飛行制御部9に入力される。撮像部93は、機体81の下方を撮像する撮像カメラである。撮像部93は、無人飛行体8の着陸時において機体81の下方を撮像して画像を取得する。撮像部93により取得された画像は、飛行制御部9に入力される。通信部94は、後記の管理拠点6に設置される管理システム7との間でデータ通信を行う。
【0027】
飛行制御部9は、通信部94と管理システム7との間のデータ通信を監視し、計測器91の計測結果、センサ92の検出結果、及び撮像部93の画像データに基づいて、無人飛行体8の離陸及び着陸を含む飛行の制御を行う。飛行制御部9の制御の詳細については後述する。
【0028】
図1に示すように、対象地域内の管理拠点6には、管理システム7が設置されている。管理拠点6は、無人飛行体8を含む移動体が待機し、移動する際の出発拠点でもある。無人飛行体8を含む移動体の待機場所を管理拠点6に集約することにより、無人飛行体8等の維持管理のコスト低減が可能である。管理拠点6には、第1送電線25から分岐した管理拠点送電線61が接続されている。管理拠点6に待機した状態での無人飛行体8の電力供給機能を利用する場合には、無人飛行体8の発電機83で発電された電力が管理拠点送電線61を通じて送配電系統3へ伝送される。対象地域内における管理拠点6の数は、特に限定されるものではなく、1つの拠点であってもよいし、2以上の複数の拠点であってもよい。また、対象地域内における管理拠点6の配置場所は、無人飛行体8の電力供給機能を利用するときの電力供給の適性を示す電力供給適性や、対象地域の災害発生時にその災害の回避の適性を示す災害回避適性などを考慮して選定されるのが望ましい。例えば、前記電力供給適性は、対象地域内に設置された第1発電設備21からの離間距離、第1発電設備21に繋がる第1送電線25の送電容量などによって決まる。
【0029】
管理システム7は、送電系統2、送配電系統3及び無人飛行体8を管理するシステムである。管理システム7は、図5のブロック図に示すように、演算処理部71と、情報入出力部72と、管理側通信部73と、データベース74とを含む。
【0030】
なお、管理システム7は、対象地域内に設置される必要はなく、その機能の全て、もしくはその一部が対象地域外にあってもよい。例えば、対象地域外の中央省庁や県庁、クラウドサーバなどからの指令信号を管理拠点6に向けて送信されてもよい。
【0031】
情報入出力部72は、対象地域における災害発生の指標となる災害指標情報の入力や、特定需要家4Aから送信される各種情報の入力を受け付ける。前記災害指標情報は、降水量、河川水位、潮位、風速、地震の震度などの情報や、気象警戒情報、道路網の遮断状況を示す情報などを含む。また、情報入出力部72は、管理拠点6や特定需要家4Aにおいて無人飛行体8の電力供給機能が利用されるときに、当該無人飛行体8の取り扱いに関する指示内容を示す指示情報を出力する。この指示情報の詳細については後述する。
【0032】
管理側通信部73は、無人飛行体8の通信部94との間でデータ通信を行う。
【0033】
データベース74は、送電系統2の供給電力量を予測するための指標となる供給電力指標データと、送配電系統3の需要電力量を予測するための指標となる需要電力指標データとを記憶する記憶部である。前記供給電力指標データは、送電系統2の供給電力量に関する季節、時間帯及び気象変化ごとの過去のデータや、電力取引市場で開示される外部電力系統5の電力需給計画及び契約済みの購入電力量を示すデータ、第1発電設備21及び第2発電設備22のメンテナンス計画、整備状況、事故情報、故障発生確率などに基づく発電量を示すデータ、を含む。前記需要電力指標データは、送配電系統3の需要電力量に関する季節、曜日、時間帯、催事、宿泊施設や飲食店の予約状況、携帯端末位置情報、気象変化ごとの過去のデータなどを含む。
【0034】
なお、データベース74は、必ずしも管理拠点6の記憶部に記憶する必要はなく、クラウドサーバにあってもよい。
【0035】
演算処理部71は、送電系統2、送配電系統3及び無人飛行体8を管理するための各種の演算処理を行う。演算処理部71は、機能構成として、エネルギー需給監視部711と、電力調整処理部712と、余剰電力対応処理部713と、災害判定部714と、災害対応処理部715とを有する。演算処理部71の演算処理について、図6図10を参照して説明する。図6は演算処理部71による電力調整処理及び余剰電力対応処理を説明するためのフローチャートであり、図7図10は演算処理部71による災害対応処理を説明するためのフローチャートである。
【0036】
まず、図6のフローチャートを用いて電力調整処理及び余剰電力対応処理について説明する。図6に示す処理がスタートすると、エネルギー需給監視部711は、データベース74に記憶される前記供給電力指標データに基づいて送電系統2の供給電力量Qsを予測すると共に(ステップS1)、データベース74に記憶される前記需要電力指標データに基づいて送配電系統3の需要電力量Qdを予測する(ステップS2)。なお、エネルギー需給監視部711は、予測した送配電系統3の需要電力量に基づいて、各需要家4などに電力価格を通知するための通知データを出力するように構成されていてもよい。各需要家4においては、通知データで示される電力価格を確認することによって、電力需要の抑制を図るなどの対策を講じることができる。
【0037】
次いで、エネルギー需給監視部711は、前記ステップS1,S2の予測結果に基づいて、送電系統2の供給電力量Qsが送配電系統3の需要電力量Qdを下回るか否かを判定する(ステップS3)。
【0038】
前記ステップS3でYESと判定されて供給電力量Qsが需要電力量Qdを下回ることが確認された場合、電力調整処理部712は、無人飛行体8の電力供給機能を利用して、無人飛行体8の発電機83から送配電系統3へ電力を供給させる電力調整処理を行う(ステップS4)。具体的に、電力調整処理部712は、図11に示すように、無人飛行体8が管理拠点6に待機した状態において、電力調整指示情報AS1を情報入出力部72から出力させる。電力調整指示情報AS1は、管理拠点6において無人飛行体8の電力供給機能の利用が可能であることを示す指示情報である。管理拠点6の作業員は、電力調整指示情報AS1を認識することによって、管理拠点6において無人飛行体8の電力供給機能の利用が可能であることを把握することができる。この場合、作業員によって、無人飛行体8の発電機83と管理拠点送電線61との間に所定の電力ケーブル83Aが接続され、その後、無人飛行体8のエンジン82の駆動を開始させる作業が行われる。これにより、エンジン82の駆動力を動力源として発電機83が発電を行い、その発電により生じた電力が無人飛行体8から送配電系統3へ供給される。なお、無人飛行体8は、電力ケーブル83Aの接続を検知し、エンジン82を自動で駆動させるように構成されていてもよい。
【0039】
このように、再生可能エネルギーを用いた第1発電設備21の出力変動などに伴って送電系統2の供給電力量が送配電系統3の需要電力量を下回り、送配電系統3への電力供給不足が生じた場合には、無人飛行体8の電力供給機能を利用して、当該無人飛行体8から送配電系統3へ電力を供給することができる。無人飛行体8の電力供給機能を利用して、当該無人飛行体8を調整電源として活用することにより、送配電系統3への電力供給の安定化を図ることが可能となる。一方、送電系統2から送配電系統3への電力供給不足が生じていない場合には、無人飛行体8の輸送機能を利用して、無人飛行体8に人や貨物を輸送させることができる。つまり、無人飛行体8は、送配電系統3への電力供給不足が生じた場合の電力供給に特化した設備ではなく、通常時は人や貨物を輸送する設備として有効活用される。これにより、調整電源としての活用が可能な無人飛行体8の利用効率の向上を図ることが可能となる。
【0040】
なお、電力調整処理部712は、送配電系統3への電力供給不足が生じたとき、外部電力系統5から電力不足分を調達する場合のエネルギーコストと、無人飛行体8の電力供給機能を利用する場合のエネルギーコストとを算出すると共に、無人飛行体8の輸送機能を利用する場合の輸送コストと、他の輸送手段による輸送コストとを算出するように構成されていてもよい。この場合、電力調整処理部712は、算出したエネルギーコストと輸送コストの総額が最も小さくなるように、無人飛行体8の輸送機能及び電力供給機能の利用態様を決定する。
【0041】
一方、前記ステップS3でNOと判定された場合、エネルギー需給監視部711は、送電系統2の供給電力量Qsが送配電系統3の需要電力量Qdを上回るか否かを判定する(ステップS5)。
【0042】
前記ステップS5でYESと判定されて供給電力量Qsが需要電力量Qdを上回ることが確認された場合、余剰電力対応処理部713は、余剰電力を送電系統2から水素製造設備4Bへ伝送させる余剰電力対応処理を行う。これにより、余剰電力を利用して、水素製造設備4Bにおいて水素を製造することができる。水素製造設備4Bで製造された水素は、例えば、燃料電池発電設備の燃料として活用することができる。
【0043】
次に、図7図10のフローチャートを用いて災害対応処理について説明する。図7に示す処理がスタートすると、災害判定部714は、情報入出力部72に入力される前記災害指標情報に基づいて、対象地域内で災害が発生したか否かを判定する(ステップS11)。
【0044】
前記ステップS11でYESと判定されて対象地域内での災害発生が確認された場合、災害判定部714は、送配電系統3が停電しているか否かを判定する(ステップS12)。
【0045】
前記ステップS12でYESと判定されて送配電系統3の停電が確認された場合、災害判定部714は、特定需要家4Aに電力を供給する必要があるか否かを判定する(ステップS13)。具体的に、災害判定部714は、送配電系統3の停電が所定時間を超えて継続したとき、又は、送配電系統3の停電復旧予想時間が所定時間を超えたときに、特定需要家4Aに対し災害対応のための電力供給が必要であると判断する。なお、災害判定部714は、管理側通信部73を介して中央省庁や県庁などの外部からの指令信号を受けて災害が発生したと判断してもよい。
【0046】
前記ステップS13でYESと判定された場合、つまり、対象地域内での災害発生と、送配電系統3の停電と、特定需要家4Aへの電力供給の必要性とがいずれも確認された場合、災害対応処理部715は、災害対応処理を行う(ステップS14)。すなわち、災害対応処理部715は、災害対応処理として、特定需要家4Aへ無人飛行体8を飛行させると共に、当該無人飛行体8の発電機83から特定需要家4Aの構内に設置された構内系統4A1へ電力を供給させる(図12図14参照)。これにより、送配電系統3に停電が生じた場合に、無人飛行体8から特定需要家4Aの構内系統4A1へ電力を供給することができる。また、対象地域の災害発生時には、特定需要家4Aの周辺において例えば道路網が遮断されて孤立状態となる可能性がある。このような場合であっても、移動経路を空路とする無人飛行体8であれば、特定需要家4Aへ移動することができ、当該特定需要家4Aの構内系統4A1へ電力を供給することができる。さらに、無人飛行体8の収納部8122に生活物資等の貨物を収納し、その状態で無人飛行体8が特定需要家4Aへ移動することにより、生活物資や医薬品その他種々の物資を輸送することも可能である。
【0047】
災害対応処理部715による災害対応処理と、その災害対応処理に応じた飛行制御部9による無人飛行体8の制御について、以下に具体的に説明する。
【0048】
図8及び図9は、前記ステップS14の災害対応処理の詳細を示すサブルーチンである。本図に示す処理がスタートすると、災害対応処理部715は、特定需要家4Aへの災害対応の電力供給が必要である旨を通知するための災害通知信号を管理側通信部73から無人飛行体8へ送信させる(ステップS21)。管理拠点6に複数の無人飛行体8が待機している場合には、全ての無人飛行体8に対して前記災害通知信号が送信される。
【0049】
送信された災害通知信号は、無人飛行体8の通信部94によって受信される。当該受信に応じて、無人飛行体8の飛行制御部9は、図12に示すように、離陸前におけるセンサ92による機体81の周囲の検出結果を示す離陸前検出データBS1と、燃料タンク84の燃料残量を示す残燃料データBS2とを、通信部94から管理システム7へ送信させる(ステップS22)。
【0050】
送信された離陸前検出データBS1及び残燃料データBS2は、管理側通信部73によって受信される。当該受信に応じて、災害対応処理部715は、特定需要家4Aへ飛行させる無人飛行体8を選定する(ステップS23)。この際、災害対応処理部715は、離陸前検出データBS1に基づいて、機体81の周囲に障害物等が無いものを、離陸に支障が無い無人飛行体8であると判断する。なお、離陸に支障が無い無人飛行体8であることの判断は、管理システム7の管理者が離陸前検出データBS1を参照して行ってもよい。
【0051】
さらに、災害対応処理部715は、残燃料データBS2で示される燃料残量が飛行用の燃料と災害対応発電用の燃料の合計を下回らず、且つ、管理拠点6を離陸してから特定需要家4Aへ到着するまでの所要時間が所定時間を超えないものを、特定需要家4Aへ飛行させる無人飛行体8として選定する。なお、前記飛行用の燃料とは、管理拠点6と特定需要家4Aとの間を往復飛行するために必要な燃料であり、災害対応発電用の燃料とは、特定需要家4Aへの電力供給時の発電に必要な燃料である。なお、特定需要家4Aにおける燃料備蓄量が十分に確保されている場合には、燃料残量が管理拠点6から特定需要家4Aへの往路分に必要な燃料を有する無人飛行体8が選定されてもよい。
【0052】
ここで、無人飛行体8の発電機83から特定需要家4Aの構内系統4A1へ電力を供給する際に、インバータが必要とされる場合がある。例えば、発電機83による発電電力の電圧と、構内系統4A1で使用可能な電圧とが異なる場合があり、このような場合には特定需要家4Aにおいてインバータが用意される必要がある。ただし、全ての特定需要家4Aに当該インバータが用意されるとは限らない。そこで、特定需要家4Aにおける当該インバータの有無を示す情報をデータベース74に予め登録しておくことが望ましい。これにより、管理拠点6の作業員は、データベース74に登録された当該情報に基づき、特定需要家4Aに前記インバータが存在するか否かを無人飛行体8の飛行前に確認することができる。確認の結果、特定需要家4Aに前記インバータが存在しないことが判明した場合、前記作業員は、無人飛行体8に前記インバータを搭載する。これにより、無人飛行体8が特定需要家4Aに到着した後の電力供給を円滑に進めることができる。
【0053】
前記ステップS23において特定需要家4Aへ飛行させる無人飛行体8の選定が完了すると、災害対応処理部715は、管理拠点6から特定需要家4Aまでの飛行経路を示す飛行経路データAS2(図12)及び離陸許可信号を、管理側通信部73から選定された無人飛行体8へ送信させる(ステップS24)。なお、選定された無人飛行体8が電力調整処理部712による電力調整処理に利用されている場合には、災害対応処理部715は、当該無人飛行体8の電力調整処理に対応した利用を停止させ、飛行経路データAS2及び離陸許可信号の送信によって特定需要家4Aへの飛行を優先させる。
【0054】
送信された飛行経路データAS2及び離陸許可信号は、無人飛行体8の通信部94によって受信される。当該受信に応じて、無人飛行体8の飛行制御部9は、図12に示すように、エンジン82を始動させて管理拠点6から機体81を離陸させる離陸制御を行う(ステップS25)。具体的に、飛行制御部9は、始動されたエンジン82の駆動力を動力源として発電機83に発電を行わせ、その発電された電力によりモーター88を回転させる。すると、当該モーター88によりプロペラ89が回転駆動され、無人飛行体8が離陸する。離陸後においては、飛行制御部9は、計測器91の計測結果及びセンサ92の検出結果を監視しつつ、飛行経路データAS2で示される飛行経路に沿って特定需要家4Aへ機体81を飛行させる飛行制御を行う(ステップS26)。
【0055】
次いで、飛行制御部9は、無人飛行体8が特定需要家4Aの上空に到着したか否かを判定し(ステップS27)、到着が確認された時点で、無人飛行体8の着陸制御を行う(ステップS28)。
【0056】
図10は、前記ステップS28の着陸制御の詳細を示すサブルーチンである。本図に示す制御がスタートすると、飛行制御部9は、図13に示すように、特定需要家4Aの構内又はその付近に設定された所定の着陸予定場所4A2の周辺を撮像部93に撮像させると共に(ステップS41)、当該撮像による周辺画像の画像データBS3を通信部94から管理システム7へ送信させる(ステップS42)。さらに、飛行制御部9は、前記周辺画像データBS3に基づき着陸予定場所4A2への着陸に支障が有るか否か判定する(ステップS43)。なお、着陸の支障の有無の判定は、飛行制御部9ではなく管理システム7が行ってもよい。
【0057】
前記ステップS43でNOと判定されて着陸予定場所4A2への着陸に支障が無いことが確認された場合、飛行制御部9は、着陸の許可を要請する着陸許可要請信号BS4を通信部94から管理システム7へ送信させる(ステップS44)。
【0058】
無人飛行体8から送信された周辺画像データBS3及び着陸許可要請信号BS4は、管理側通信部73によって受信される。当該受信に応じて、管理システム7の管理者は、着陸許可要請信号BS4に応答する着陸許可信号AS3を送信すべき旨の指示を入力する。この指示を受けて、災害対応処理部715は、着陸許可信号AS3を管理側通信部73から無人飛行体8へ送信させる。無人飛行体8の飛行制御部9は、送信された着陸許可信号AS3が通信部94によって受信されたか否かを判定し(ステップS45)、受信が確認された時点で、着陸予定場所4A2に機体81を着陸させ(ステップS46)、その後エンジン82を停止させる(ステップS47)。
【0059】
以上説明した通り、飛行制御部9は、災害対応処理部715による災害対応処理の一環として、無人飛行体8を離陸させる離陸制御(S25)、飛行経路データAS2で示される飛行経路に沿って無人飛行体8を飛行させる飛行制御(S26)、及び無人飛行体8を着陸させる着陸制御(S28)を実行する。無人飛行体8は、飛行制御部9の制御によって、離陸及び着陸を含む飛行を自動で行うことができる。
【0060】
ここで、対象地域で発生した災害によっては、特定需要家4Aの着陸予定場所4A2に浸水や障害物OBの落下などの被害が生じることがある(図15参照)。このような被害が生じているとき、飛行制御部9は、周辺画像データBS3に基づき着陸予定場所4A2への着陸に支障が有ると判定する(前記ステップS43でYES)。すると、飛行制御部9は、着陸予定場所4A2からの距離が所定の許容範囲内にあり且つ着陸に支障が無い着陸候補場所4ASを探索し(ステップS48)、その探索によって着陸候補場所4ASが発見されたか否かを判定する(ステップS49)。
【0061】
前記ステップS49でYESと判定されて着陸候補場所4ASが発見されたことが確認された場合、飛行制御部9は、前記ステップS44,S45と同様に管理システム7との間で着陸許可要請信号及び着陸許可信号を送受信した後、当該着陸候補場所4ASに機体81を着陸させ(ステップS50)、その後エンジン82を停止させる(ステップS51)。
【0062】
一方、前記ステップS49でNOと判定されて着陸候補場所4ASが発見されなかったことが確認された場合、飛行制御部9は、管理拠点6に戻る方向に機体81を飛行させる(ステップS53)。当該飛行に伴い機体81が管理拠点6の上空に到着すると、飛行制御部9は、機体81を管理拠点6に着陸させ(ステップS54)、その後エンジン82を停止させる(ステップS55)。
【0063】
以上のような着陸制御によって無人飛行体8が着陸予定場所4A2又は着陸候補場所4ASに着陸した後の処理を、図9に戻って説明する。着陸予定場所4A2又は着陸候補場所4ASへの着陸後、災害対応処理部715は、災害対応指示情報AS4(図14)を情報入出力部72から出力させる(ステップS29)。災害対応指示情報AS4は、特定需要家4Aにおいて無人飛行体8の電力供給機能の利用が可能であることを示す指示情報である。災害対応指示情報AS4は、情報入出力部72から特定需要家4Aへ伝送される。特定需要家4Aの作業員は、災害対応指示情報AS4を認識することによって、特定需要家4Aにおいて無人飛行体8の電力供給機能の利用が可能であることを把握することができる。なお、対象地域の災害発生時において特定需要家4Aに無人飛行体8が着陸した場合には、当該無人飛行体8の電力供給機能の利用が可能であることを事前にルール化しておいてもよい。この場合、情報入出力部72からの災害対応指示情報AS4の出力は省略される。
【0064】
特定需要家4Aの作業員は、着陸予定場所4A2又は着陸候補場所4ASに着陸した無人飛行体8の発電機83と構内系統4A1との間に所定の電力ケーブル83Aを接続し、その後、無人飛行体8のエンジン82の駆動を開始させる作業を行う。これにより、エンジン82の駆動力を動力源として発電機83が発電を行い、その発電により生じた電力が無人飛行体8から構内系統4A1へ供給される(ステップS30)。なお、無人飛行体8は、電力ケーブル83Aの接続を検知し、エンジン82を自動で駆動させるように構成されていてもよい。
【0065】
ここで、特定需要家4Aには、送配電系統3の停電中に構内系統4A1に電力を供給することが可能な独自電源が存在する場合がある。このような独自電源としては、再生可能エネルギーを用いた発電設備や、災害対策用に用意された蓄電池を挙げることができる。このような独自電源が特定需要家4Aに存在する場合、発電機83から構内系統A1への電力供給は、次のような手順で行われることが望ましい。
【0066】
まず、災害対応処理部715は、データベース74を参照して、構内系統4A1に接続される前記独自電源(再生可能エネルギーを用いた発電設備又は蓄電池等)が特定需要家4Aに存在するか否かを判定する。この判定によって前記独自電源の存在が確認された場合、災害対応処理部715は、前記独自電源と発電機83とが同期して構内系統4A1へ電力を供給し得るようにするための基準電圧及び基準周波数を、管理側通信部73から特定需要家4Aへ送信させる。これを受けて、特定需要家4Aの前記独自電源は、自身が供給する交流電力の電圧及び周波数を、前記基準電圧及び前記基準周波数に一致する値に調整する。このように前記独自電源に電圧及び周波数を調整させる処理は、特定需要家4Aに備わる制御システムが行ってもよいし、管理システム7(災害対応処理部715)が行なってもよい。
【0067】
無人飛行体8から構内系統4A1への電力供給中において、飛行制御部9は、燃料タンク84の燃料残量を監視する。具体的に、飛行制御部9は、燃料タンク84の燃料残量が所定の警告値を下回ったか否かを判定し(ステップS31)、下回ったことが確認された時点で、燃料残量が少ない旨を示す残燃料警告情報を通信部94から管理システム7へ送信させる(ステップS32)。
【0068】
管理側通信部73が前記残燃料警告情報を受信すると、災害対応処理部715は、特定需要家4Aに保管される燃料の保管量を示す燃料保管量情報を、情報入出力部72を介して取得する(ステップS33)。災害対応処理部715は、前記燃料保管量情報が示す燃料の保管量が所定の警告値を下回ったか否かを判定し(ステップS34)、下回ったことが確認された時点で、管理拠点6に待機している他の無人飛行体8の輸送機能を利用して、当該他の無人飛行体8に燃料を特定需要家4Aへ輸送させる(ステップS35)。これにより、特定需要家4Aに対する燃料補給が可能となる。なお、燃料保管量情報は、管理側通信部73を介して外部に送信されてもよく、外部装置が各地域の燃料保管量情報を集中的に管理してもよい。
【0069】
また、無人飛行体8は、前記残燃料警告情報を特定需要家4Aの作業員に知らせるための表示灯などの報知機構を備えていてもよい。この場合、特定需要家4Aの作業員は、構内系統4A1への電力供給中の無人飛行体8における燃料残量が少なくなったことを把握することができ、これに応じて特定需要家4Aに保管される燃料を無人飛行体8に補充することができる。
【0070】
管理システム7においては、災害判定部714は、送配電系統3の停電が復旧されたか否かを判定する(ステップS36)。ここでYESと判定されて停電の復旧が確認された場合、つまり特定需要家4Aに対する災害対応のための電力供給が不要になったことが確認された場合、災害対応処理部715は、災害対応のための電力供給の終了を指令する終了指令信号を管理側通信部73から無人飛行体8へ送信させる(ステップS37)。無人飛行体8の飛行制御部9は、送信された終了指令信号が通信部94によって受信されたか否かを判定し(ステップS38)、受信が確認された時点で、エンジン82を停止させて災害対応のための電力供給を終了させる(ステップS39)。このように、無人飛行体8は、飛行制御部9の制御によって、災害対応の電力供給の終了を自動で行うことができる。
【0071】
無人飛行体8のエンジン82の停止後に、発電機83と構内系統4A1との間の電力ケーブル83Aの接続の切り離し作業が、特定需要家4Aの作業員によって行われる。この切り離し作業の終了後において、飛行制御部9は、特定需要家4Aから管理拠点6までの飛行に必要な燃料の量を算出し、その算出値の情報を前記報知機構などによって特定需要家4Aの作業員に知らせるように構成されていてもよい。この場合、特定需要家4Aの作業員は、無人飛行体8が管理拠点6へ戻るのに必要な燃料を当該無人飛行体8に補充することができる。その後、飛行制御部9は、無人飛行体8の特定需要家4Aからの離陸時の離陸制御、特定需要家4Aから管理拠点6までの飛行時の飛行制御、及び管理拠点6への着陸時の着陸制御を実行する。これにより、無人飛行体8は、特定需要家4Aから管理拠点6へ自動で戻る。
【0072】
[まとめ]
上述した具体的実施形態には以下の構成を有する発明が主に含まれている。
【0073】
本発明の一の局面に係るエネルギー供給システムは、対象地域内に設置され、再生可能エネルギーを用いて発電する第1発電設備と化石燃料を用いて発電する第2発電設備とを含む送電系統と、前記送電系統から電力が伝送され、前記対象地域内の需要家へ電力を供給する送配電系統と、貨物を輸送する輸送機能と外部に電力を供給する電力供給機能とを有する移動体と、前記送電系統、前記送配電系統及び前記移動体を管理する管理システムと、を備える。前記管理システムは、前記送電系統の供給電力量と前記送配電系統の需要電力量とを予測し、前記供給電力量が前記需要電力量を下回る場合、前記移動体の前記電力供給機能を利用して、前記移動体から前記送配電系統へ電力を供給させる電力調整処理を行う。
【0074】
このエネルギー供給システムによれば、再生可能エネルギーを用いた第1発電設備の出力変動などに伴って送電系統の供給電力量が送配電系統の需要電力量を下回り、送配電系統への電力供給不足が生じた場合には、移動体の電力供給機能を利用して、当該移動体から送配電系統へ電力を供給することができる。このように、移動体の電力供給機能を利用して、当該移動体を調整電源として活用することにより、送配電系統への電力供給の安定化を図ることが可能となる。一方、送電系統から送配電系統への電力供給不足が生じていない場合には、移動体の輸送機能を利用して、移動体に貨物を輸送させることができる。つまり、移動体は、送配電系統への電力供給不足が生じた場合の電力供給に特化した設備ではなく、通常時は貨物を輸送する設備として有効活用される。これにより、調整電源としての活用が可能な移動体の利用効率の向上を図ることが可能となる。
【0075】
上記のエネルギー供給システムは、前記対象地域内に設置され、水を電気分解して水素を製造する水素製造設備を更に備えていてもよい。この場合、前記管理システムは、前記送電系統の前記供給電力量が前記送配電系統の前記需要電力量を上回る場合、余剰電力を前記送電系統から前記水素製造設備へ伝送させる余剰電力対応処理を行うことが好ましい。
【0076】
この態様では、余剰電力を利用して、水素製造設備において水素を製造することができる。水素製造設備で製造された水素は、例えば、燃料電池発電設備の燃料として活用することができる。
【0077】
上記のエネルギー供給システムにおいて、前記移動体は、機体と、前記機体に搭載されるエンジンと、前記機体に搭載され、前記電力供給機能を実現するための発電機と、前記輸送機能の実現のために貨物を収納可能な収納部と、を有した無人飛行体であってもよい。
【0078】
この態様では、無人飛行体は、空路を移動経路とする移動体である。このような無人飛行体は、陸路を移動経路とする移動体のように交通渋滞や道路網の遮断等による通行止めの影響を受けず、また、海路を移動経路とする移動体のように臨海部での移動に制約されない。
【0079】
上記のエネルギー供給システムにおいて、前記管理システムは、前記対象地域の災害発生時において前記送配電系統に停電が生じた場合に、前記無人飛行体から前記特定の需要家に電力を供給する災害対応処理を行うものであってもよい。前記災害対応処理は、好ましくは、前記対象地域の防災拠点に指定された特定の需要家へ前記無人飛行体を所定の飛行経路に沿って飛行させ、前記無人飛行体の前記発電機から前記特定の需要家の構内に設置された構内系統へ電力を供給させる処理である。
【0080】
この態様では、対象地域の災害発生時において送配電系統に停電が生じた場合には、無人飛行体の発電機から防災拠点に指定された特定の需要家の構内系統へ電力を供給することができる。また、対象地域の災害発生時には、特定の需要家の周辺において例えば道路網が遮断されて孤立状態となる可能性がある。このような場合であっても、移動経路を空路とする無人飛行体であれば、特定の需要家へ移動することができ、当該特定の需要家の構内系統へ電力を供給することができる。さらに、無人飛行体の収納部に生活物資等の貨物を収納し、その状態で無人飛行体が特定の需要家へ移動することにより、生活物資等を輸送することも可能である。
【0081】
前記送配電系統の停電中に前記構内系統に交流電力を供給可能な独自電源が前記特定の需要家に存在する場合がある。この場合、前記管理システムは、前記災害対応処理時に、前記独自電源と前記発電機とが同期して前記構内系統へ交流電力を供給するための基準電圧及び基準周波数を前記特定の需要家に送信することが好ましい。
【0082】
この態様では、特定の需要家に備わる独自電源に対し、無人飛行体の発電機と同期して構内系統へ電力を供給させることができる。
【0083】
上記のエネルギー供給システムにおいて、前記無人飛行体は、撮像部と、前記管理システムとの間でデータ通信を行う通信部と、離陸及び着陸を含む飛行の制御を行う飛行制御部と、を更に有していてもよい。この場合、前記飛行制御部は、前記災害対応処理の開始に伴い前記管理システムから送信された前記飛行経路及び離陸許可信号が前記通信部により受信されるのに応じて、前記エンジンを始動させて出発拠点から前記機体を離陸させる離陸制御を行い、離陸後においては、前記飛行経路に沿って前記特定の需要家へ前記機体を飛行させる飛行制御を行い、前記飛行制御により前記機体が前記特定の需要家の上空に到着すると、前記機体を前記特定の需要家に着陸させる着陸制御を行うことが好ましい。前記着陸制御は、詳しくは、所定の着陸予定場所周辺を前記撮像部に撮像させて当該撮像による周辺画像を前記通信部を介して前記管理システムへ送信させると共に、前記管理システムからの着陸許可信号を受信すると前記機体を前記特定の需要家に着陸させて前記エンジンを停止させる制御である。
【0084】
また、前記飛行制御部は、前記災害対応処理の開始に伴い前記管理システムから送信された前記飛行経路が前記通信部により受信されるのに応じて、前記エンジンを始動させて出発拠点から前記機体を離陸させる離陸制御を行い、離陸後においては、前記飛行経路に沿って前記特定の需要家へ前記機体を飛行させる飛行制御を行い、前記飛行制御により前記機体が前記特定の需要家の上空に到着すると、前記機体を前記特定の需要家に着陸させる着陸制御を行うものであってもよい。前記着陸制御は、詳しくは、所定の着陸予定場所周辺を前記撮像部に撮像させて当該撮像による周辺画像を前記通信部を介して前記管理システムへ送信させると共に、前記周辺画像に基づき前記着陸予定場所への着陸の支障の有無を判定し、支障が無い場合には前記機体を前記特定の需要家に着陸させて前記エンジンを停止させる制御である。
【0085】
この態様では、無人飛行体は飛行制御部を有し、この飛行制御部は、無人飛行体の離陸時の離陸制御、所定の飛行経路に沿った飛行時の飛行制御、及び着陸時の着陸制御を実行する。無人飛行体は、飛行制御部の制御によって、離陸及び着陸を含む飛行を自動で行うことができる。
【0086】
上記のエネルギー供給システムにおいて、前記飛行制御部は、前記着陸制御において前記着陸予定場所への着陸に支障が有ることが確認された場合には、前記周辺画像に基づいて、前記着陸予定場所からの距離が所定の許容範囲内で且つ着陸に支障が無い着陸候補場所を探索し、前記着陸候補場所が発見されたときには、当該着陸候補場所に前記機体を着陸させて前記エンジンを停止させ、前記着陸候補場所が発見されなかったときには、前記出発拠点に戻る方向に前記機体を飛行させると共に、前記機体を前記出発拠点に着陸させて前記エンジンを停止させるものであってもよい。
【0087】
対象地域の災害発生時においては、特定の需要家の着陸予定場所に浸水や障害物落下などの被害が生じる可能性がある。この場合、着陸予定場所への無人飛行体の着陸に支障が生じ得る。そこで、無人飛行体は、飛行制御部の制御によって、着陸に支障が無い着陸候補場所を自動で探索し、当該着陸候補場所が発見されたときにはその場所に自動で着陸する一方、着陸候補場所が発見されなかったときには出発拠点に戻って自動で着陸する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15