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▶ インディアン・モーターサイクル・インターナショナル・エルエルシーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】車両用バックギア・システム
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/28 20060101AFI20240118BHJP
   F16H 3/44 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
F16H61/28
F16H3/44 Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022525293
(86)(22)【出願日】2020-10-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-11
(86)【国際出願番号】 US2020057942
(87)【国際公開番号】W WO2021087101
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】62/927,356
(32)【優先日】2019-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505125314
【氏名又は名称】インディアン・モーターサイクル・インターナショナル・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100211236
【弁理士】
【氏名又は名称】道下 浩治
(72)【発明者】
【氏名】シモネッタ,コーリー・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ケラー,ダスティン・ディー
(72)【発明者】
【氏名】エルズワース,アンドリュー・ジェイ
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0102752(US,A1)
【文献】特開2009-243561(JP,A)
【文献】特開2014-149021(JP,A)
【文献】特開昭62-178440(JP,A)
【文献】特開2016-114230(JP,A)
【文献】特開2015-194213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/28
F16H 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後退を有効にする方法であって、
後退信号をユーザインタフェースで発信することと、
前記後退信号を制御モジュールに連通することと、
車両速度を決定することと、
変速ギア位置を決定することと、
クラッチレバーを開口及び閉鎖する量に対応するクラッチレバー信号を発信することと、
前記車両速度及び前記変速ギア位置に応答して、バックギアをドライブ・スプロケット・アセンブリに係合することと、
前記クラッチレバーを開口又は閉鎖する前記量に基づいた前記クラッチレバー信号に応答して、前記ドライブ・スプロケット・アセンブリの速度を変更することとを含む、方法。
【請求項2】
前記後退信号を発信することは、押しボタン・ユーザインタフェースに応答して前記後退信号を発信することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記後退信号を発信することは、タッチスクリーン・ユーザインタフェースに応答して前記後退信号を発信することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記変速ギア位置を決定することは、第1のギアに対応する前記変速ギア位置を決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記バックギアを係合することは、リングギアの内径及び固定ギアの外径を係合する第1の位置と、中間ギアが、前記リングギアの前記内径及び前記固定ギアの前記外径を係合しない第2の位置との間で前記中間ギアを動かすことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記中間ギアを動かすことは、前記中間ギアを動かすために前記バックギアを動かすことを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記バックギアを係合することは、遊星キャリアと係合させるためにリングギアの歯を軸方向に動かすことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記リングギアの歯を軸方向に動かすことは、前記遊星キャリアを後退フォークで軸方向に動かすことを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記バックギアが係合されている間、スロットルレバーが前記車両を作動することを解除することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
車両速度を決定することは、前記車両速度がゼロであることを決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ドライブ・スプロケット・アセンブリと、
クラッチレバーの開口及び閉鎖する量に対応するクラッチレバー信号を発信する前記クラッチレバーと、
後退信号を発信するユーザインタフェースと、
車輪速度信号を発信する車輪速度センサと、
変速位置信号を発信する変速位置センサと、
前記後退信号、前記車輪速度信号及び前記変速位置信号を受信する車両の車両制御モジュールであって、前記車両制御モジュールは、前記後退信号、前記車輪速度信号及び前記変速位置信号に応答してバックギアをドライブ・スプロケットに係合し、前記クラッチレバーの開口又は閉鎖の前記量に基づいた前記クラッチレバー信号に応答して、前記ドライブ・スプロケット・アセンブリの速度を変更する、車両制御モジュールとを含む、システム。
【請求項12】
前記ドライブ・スプロケット・アセンブリは、リングギアの内径及び固定ギアの外径を係合する第1の位置と、中間ギアが、前記リングギアの前記内径及び前記固定ギアの前記外径を係合しない第2の位置との間で可動の前記中間ギアを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記ドライブ・スプロケット・アセンブリは、第1のカバーと係合する、又はリングギアの歯と係合するように動く遊星キャリアを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記車両制御モジュールは、前記バックギアが係合されている間、スロットルレバーが前記車両を作動することを解除する、請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
前記車輪速度信号はゼロに対応し、前記変速位置信号は第1のギアに対応する、請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
車両用のドライブ・スプロケット・アセンブリであって、
変速出力シャフトに対して軸端面を含む第1のカバーと、
前記変速出力シャフトに固定された固定ギアであって、前記固定ギアは、第1の外径及び前記変速出力シャフトを受領する第1の内径を含む、固定ギアと、
複数の軸方向に延在する第1の歯を含む中間ギアと
複数の遊星ギア、第1の複数の凹部、及び第2の複数の軸方向に延在する歯を含む、遊星キャリアとを含み、
作動の第1の方向では、前記中間ギアの前記第1の歯は、前記遊星キャリア上の前記第1の複数の凹部を係合し、
作動の第2の方向では、前記遊星キャリアの前記第2の複数の軸方向に延在する歯は、前記第1のカバーの前記軸端面内の第2の複数の凹部を係合する、ドライブ・スプロケット・アセンブリ。
【請求項17】
前記遊星キャリアを軸方向に動かすアクチュエータを更に含む、請求項16に記載のドライブ・スプロケット・アセンブリ。
【請求項18】
前記アクチュエータは、油圧式又は電気式である、請求項17に記載のドライブ・スプロケット・アセンブリ。
【請求項19】
後退フォークは、前記アクチュエータに作動可能に結合され、前記遊星キャリアを前記軸方向に動かす、請求項18に記載のドライブ・スプロケット・アセンブリ。
【請求項20】
前記第2の複数の軸方向に延在する歯は、前記遊星キャリアの軸端から延在し、前記第1の複数の凹部は、前記遊星キャリアの半径方向縁部上に配列される、請求項19に記載のドライブ・スプロケット・アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年10月29日に出願された米国仮特許出願第62/927,356号明細書の利益を主張する。上記出願の開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、車両方向の制御に関し、より詳細にはオートバイの後退方向を制御することに関する。
【背景技術】
【0003】
本章は、必ずしも先行技術ではない本開示に関する背景情報を提供する。
【0004】
オートバイはエンジン・アセンブリを含む。エンジン・アセンブリは、オートバイを前進方向に運転するように動力を発生するために燃料の使用で作動される。自動車と違い、オートバイは、典型的にはバックギアを持たない。
【0005】
オートバイの設計は、益々複雑で重くなっている。後退方向の作動を提供する方法を提供することは、オートバイの操縦性能を増加させるはずである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本章は、本開示の概略を提供し、その全範囲又はその特徴の全ての包括的開示ではない。
【0007】
本開示の一態様では、車両の後退を有効にする方法は、ユーザインタフェースで後退信号を発信することと、後退信号を制御モジュールに連通することと、車両速度を決定することと、変速ギア位置を決定することと、車両速度及び変速ギア位置に応答して、バックギアをドライブ・スプロケット・アセンブリに係合することと、クラッチレバーに応答してドライブ・スプロケット・アセンブリを制御することとを含む。
【0008】
本開示の別の態様では、システムは、ドライブ・スプロケット・アセンブリと、クラッチレバーと、後退信号をユーザインタフェースで発信するユーザインタフェースと、車輪速度信号を発信する車輪速度センサと、変速位置信号を発信する変速位置センサと、後退信号、車輪速度信号及び変速位置信号を受信する車両制御モジュールとを含む。車両制御モジュールは、後退信号、車輪速度及び変速ギア位置に応答してバックギアをドライブ・スプロケットに係合し、クラッチレバーに応答してドライブ・スプロケット・アセンブリを制御する。
【0009】
本開示の尚別の態様では、ドライブ・スプロケット・アセンブリは、変速出力シャフトに固定された固定ギアを含む。固定ギアは、第1の外径及び変速出力シャフトを受領する第1の内径を有する。リングギアは、第2の内径及び第2の外径を有する。システムは、中間ギア及び複数の遊星ギアを更に含む。作動の第1の方向では、中間ギアは、第1の外径及び第2の内径を係合する。作動の第2の方向では、複数の遊星ギアは、第1の外径及び第2の内径から係脱し、遊星ギアを第1の外径及び第2の内径と係合するように軸方向に中間ギアをずらす。
【0010】
適用性の更なる領域は、本明細書に提供された記載から明らかになろう。本発明の概要における記載及び具体例は、例示目的のみを意図し、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】車両の前側及び左側を示すオートバイの斜視図である。
図1B】車両の後側及び右側を示すオートバイの斜視図である。
図2】後退係合システムのブロック概略図である。
図3A】ドライブ・スプロケット・アセンブリの第1の例のギアセットの平面図である。
図3B】前進又は通常作動におけるドライブ・スプロケット・アセンブリの斜視図である。
図3C】作動の後退モードにおけるドライブ・スプロケット・アセンブリの斜視図である。
図3D】ドライブ・スプロケット・アセンブリの第2の例の側面図である。
図3E】ドライブ・スプロケット・アセンブリの第2の例の分解図である。
図3F】ドライブ・スプロケット・アセンブリの第2の例の遊星キャリア及び遊星ギアの部分分解図である。
図3G】第2の例の内部カバーの内側の斜視図である。
図3H】前進又は通常作動におけるドライブ・スプロケット・アセンブリの第2の例の断面図である。
図3I】作動の後退モードにおけるドライブ・スプロケット・アセンブリの第2の例の断面図である。
図4】後退に係合するための方法の流れ図である。
図5A】後退係合のユーザインタフェースを示す第1の画面表示である。
図5B】後退モードに係合するように車両操作者に指示を提供する画面表示である。
図5C】後退モードをクラッチレバーで制御する指示を提供する画面表示である。
図6】前進及び後退モードを係合するために、ドライブ・スプロケット・アセンブリ内でギアセットを有効にするための方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に例について、添付図面を参照してより完全に記載される。以下の記載はオートバイの適用のいくつかの例を含むが、本明細書における特徴はあらゆる適切な車両、全地形対応車、特定用途車、モペッド、スクータ、その他に適用されてもよいことが理解される。以下に開示された例は、包括的である又は本開示を以下の詳細な記載に開示された厳密な形に限定することを意図するものではない。むしろ例は、当業者がそれらの教示を利用してもよいように選択されて記載されている。
【0013】
次に図1A及び図1Bを参照すると、車両10が示されている。この例における車両10は、二輪車両である。示された二輪車両10は、ツーリング型オートバイである。
【0014】
車両10は、前輪14及び後輪16を含む車両構成要素を支持するために使用される枠12を含む。車輪14は、操縦するために第1のフォークを通してハンドルバー18に結合される。後輪16は、この例では後輪16に回転力を提供するために使用されるパワートレイン・アセンブリ20に結合される。当然のことながら、車両上の車輪の全ての車輪又は選択された数個の車輪は、パワートレイン・アセンブリ20に結合されてもよい。
【0015】
パワートレイン・アセンブリ20は、エンジン22及び変速機24を含む。パワートレイン・アセンブリ20は、エンジン22から廃棄物排気を除去する排気管26も含んでもよい。
【0016】
ドライブ・スプロケット・アセンブリ28は、変速機24の出力部を後輪16に連結するために使用される。一部の車両では、ドライブ・スプロケット・アセンブリ28は、スプロケット・カバー30によって隠されることがある。ドライブ・スプロケット・アセンブリ28の詳細は、以下に更に詳細に提供される。
【0017】
表示パネル34は、様々な情報を車両の運転者に提供するために使用されてもよい。表示パネル34は、様々な機能をユーザインタフェースに提供するタッチスクリーンを含んでもよい。車両の後退作動に関する表示パネル34は、以下に更に詳細に記載される。
【0018】
車両10は、前輪14から後輪16に延在する車両10の前進方向に延在する、長手方向軸36も有する。
【0019】
また枠12は、座席アセンブリ40を支持するためにも使用されてもよい。座席アセンブリ40は、運転者着座位置42及び乗員着座位置44を含むことができる。この例では、運転者着座位置42及び乗員着座位置44は、座席アセンブリ40の単体構造の一部であり、その構造では乗員着座位置44は運転者着座位置より(運転中の道路に対して)高い。他の種類の車両では、運転者位置42及び乗員位置44は、2つの別個の座席に分離されてもよい。別法として、単一の運転者座席のみが存在してもよい。
【0020】
図1Bに最もよく示されたように、車両10は、クラッチレバー50及びスロットルレバー52を含む。クラッチレバー50は、クラッチ(以下では68)を係合及び係脱するために使用され、クラッチは、次に変速機24からエンジン22を係脱及び係合する。
【0021】
次に図2を参照すると、システムのブロック概略図が記述されている。この例では、車両制御モジュール60が記述されている。車両制御モジュール60は、車両の様々な機能を制御するための1つ又は複数の回路であってもよい。車両制御モジュール60は、車両10の後退方向などの運転方向を制御することを含む、様々なステップを実行するようにプログラムされるマイクロプロセッサであってもよい。車両制御モジュール60は、様々な機能を実行するようにプログラムされる複数のモジュール又はプロセッサから形成されてもよい。車両制御モジュール60は、ユーザインタフェース62に結合される。ユーザインタフェース62は、タッチスクリーン上の1つのボタン、複数のボタン又は仮想ボタンであってもよい。当然のことながら、仮想ボタンと目立たないボタンの様々な組み合わせが使用されてもよい。ユーザインタフェース62のボタンが仮想ボタンである時に、ユーザインタフェース62及び表示パネル34が組み合わされてもよい。表示パネル34上に表示された画面の例が、以下に提供される。
【0022】
車両制御モジュール60は、エンジン22、変速機24、及びドライブ・スプロケット・アセンブリ28の作動と連通し、エンジン22、変速機24、及びドライブ・スプロケット・アセンブリ28の作動を制御する。以下により詳細に記載されるように、車両制御モジュール60はアクチュエータ64を制御し、アクチュエータ64は、次いでドライブ・スプロケット・アセンブリ28を制御する。以下により詳細に記載されるように、アクチュエータ64は、車両操作モードを前進方向の作動から後退方向の作動に変えるため、及び逆も同様に、ドライブ・スプロケット・アセンブリ28内で1つ又は複数のギアの動きを制御するために使用される。
【0023】
車両制御モジュール60は、スロットル制御モジュール66とも連通してもよい。スロットル制御モジュール66は、電子スロットル制御モジュールとも呼ばれることがある。スロットル制御モジュール66は、独立型モジュール又は車両制御モジュール60に組み込まれたモジュールであってもよい。スロットル制御モジュール66は、スロットルレバー52からの入力に基づいてエンジン速度を制御する。スロットルレバー52は、機械的デバイス又は電子デバイスであってもよい。スロットルレバー52は、車両操作者によって所望されたエンジン速度量に対応するスロットル信号を最良に発信し得る。
【0024】
車輪速度センサ46は、車両制御モジュール60に結合される。車輪速度センサ46は、速度を従動輪16で感知する。車輪速度センサ46は、従動輪上に置かれた歯車を含む車輪速度センサ、及び速度ベース信号を車両制御モジュール60に提供するホール効果センサの多くの異なる種類の1つであってもよい。
【0025】
エンジン22及び変速機24は一緒にクラッチ68と結合される。クラッチ68は、機械的、電気機械的又は電子的アクチュエータであってもよい。クラッチ68は、クラッチが電子クラッチである時に、クラッチレバー50に応答して車両制御モジュールによって制御されてもよい。クラッチ50が機械的クラッチである時に、クラッチレバー50及びクラッチ68は、点線によって表示されたように一緒に直接結合されてもよい。
【0026】
変速機24は、変速位置信号を発信するために使用される位置センサ70を含む。変速位置信号は、変速機の位置に対応する。変速機24は複数のギアを含む。この例では、車両10は、第1のギア及び複数の他のギアを含む。ギアはセレクタ72によって選択される。セレクタ72は、足操作型レバー、指操作型レバー又はノブであってもよい。またセレクタ72は、ユーザインタフェース62を通して作動される押しボタンセレクタであってもよい。当然のことながら、手動式セレクタと仮想セレクタの組み合わせが、車両内に実装されてもよい。
【0027】
変速機24は、ドライブ・スプロケット・アセンブリ28に結合される変速出力シャフト74を有する。変速出力シャフト74は、同じ方向に回転する。ドライブ・スプロケット・アセンブリ28は、以下により詳細に記載されるように、車両の前進及び後退方向を変えるために使用される。
【0028】
次に図3A図3Cを参照すると、ドライブ・スプロケット・アセンブリ28が、更に詳細に例示されている。ドライブ・スプロケット・アセンブリ28は、変速機24の変速出力シャフト74を受領する。変速出力シャフト74は、固定ギア76の内径内に受領される。ギア76は変速出力シャフト74と共に回転し、その外周に配列された複数の歯78を有する。固定ギア76は、変速出力シャフト74と同心である。固定ギア76は、変速出力シャフト74と同心である外径を有する。
【0029】
ドライブ・スプロケット・アセンブリ28は、その上に配列された歯82を有する外径を有するリングギア80も含む。歯82は、後輪16を駆動するために使用されるチェーン84を受領する大きさである。リングギア80は、その中に歯86を有する内径も有する。この例では、歯のピッチは、リングギア80の外径上の歯82のピッチよりはるかに大きい。
【0030】
固定ギア76とリングギア80の内径との間に、車両の所望のモードに依存して2つの異なる選択肢が存在する。中間ギアは、固定ギア76の外径に対応する内径、及びリングギア80の内径に対応する外径を同じ方向に有する。中間ギア88が固定ギア76とリングギア80との間に係合される時に、固定ギアはリングギア80と1:1の割合で回転する。固定ギア76の歯78は、中間ギア88の内径上の溝90に対応することに留意されたい。中間ギア88の外径上の溝92は、歯86のピッチに直接対応する。
【0031】
中間ギア88は、前進又は通常方向に係合する。後退方向が望ましい時に、複数の遊星ギア94は、固定ギア76の外径とリングギア80の内径との間に係合し、中間ギア88は係脱される。この例では、6つの遊星ギア94が例示されている。歯96は、リングギア80の内径上の歯86と固定ギア76の外径との間に係合する。中間ギア88及び遊星ギア94が係脱した場合に、リングギア80は軸受98上で自由に回転することに留意されたい。遊星ギア94の中心線100は、変速出力シャフト74、固定ギア76、中間ギア88及びリングギア80と同軸である。バネ102は、抵抗力を中間ギア88に軸方向に提供する。
【0032】
図3Bに最もよく示されたように、遊星ギア94は係合されないので、遊星ギア94は、簡単にするために示されていない。図3Bに例示された例では、中間ギア88は、リングギア80が変速出力シャフト74及び固定ギア76と一緒に動くように、固定ギア76及びリングギア80の両方を係合する。
【0033】
後退方向が望ましい時に、遊星ギア94は、変速出力シャフト74に対して軸方向に動き、中間ギアの係合をずらすので、中間ギアはもはや固定ギア76をリングギア80の内径に結合させない。図3Cでは、遊星ギア94は、リングギア80を変速出力シャフト74及び固定ギア76と反対の回転方向に動かす。こうして変速出力シャフト74は、通常又はフォーマット運転作動と同じ方向に回転し続けるが、遊星ギアはリングギア80を反対方向に回転させる。リングギア80が反対方向に動く時に、チェーン84も反対方向に動くことにより、後輪16は後退又は反対方向に動く。例示されていないが、中間ギア88は、オートバイの変速機ケースの枠に固定されるので、中間ギア88はこの状態では回転しない。
【0034】
次に図3D図3Iを参照すると、後退ドライブ・スプロケット・アセンブリ28’の第2の例が記述されている。この例では、リングギア80である中間ギアが例示されている。リングギア80は、そこから延在する歯110を有する。歯110は、車両の変速機と反対のシャフト74の端部に向かって軸方向に延在する。例示されたように、歯の数は9つである。しかし他の数の歯が提供されてもよい。最終的に歯110は、遊星キャリア112を係合及び係脱するために使用される。具体的には、9つの凹部114は、遊星キャリア112の周囲に例示されている。遊星キャリア112は、遊星ギア94を運ぶために使用される。遊星キャリア112は、ナット・カウンタシャフト116によってシャフト74に固定される。バネ118は、抵抗力を提供するためにナット・カウンタシャフト116の外周に配置される。太陽ギア124も遊星キャリア112と関連付けられる。軸受126は、太陽ギア24と固定ギア76との間に配列される。
【0035】
後退フォーク128は、クラッチレバーの制御下で遊星キャリア112を軸方向に動かすために使用される。システムは、システムをオートバイ又は車両に装着するために使用される装着カバー130も含んでもよい。カバー136は、後退フォーク128を受領するためのスロット138を有する。こうして後退フォーク128は、組立後に内部カバー136と遊星キャリア112との間に配列される。カバー136は、上に例示されたスプロケット・カバー30に概して対応する。リングギア80はその外面の周囲に配列された歯82を有することにも留意されたい。歯82は、車両の後輪を駆動させるためのチェーン、ドライブ・ベルト又は他の可撓性ドライブ部材を係合するために使用されてもよい。
【0036】
図3Fに最もよく示されたように、遊星キャリア112は、凹部114及び軸方向歯140の両方を有する。この例では、5つの軸方向歯140は、半径方向に延在する表面142から延在する。軸方向歯140は、後退作動中にカバー136内で凹部144を係合するために使用される。
【0037】
作動中、前進方向は図3Hに最もよく例示されている。図3Hでは、遊星キャリア112は、シャフト74の端部75から遠ざけられている。すなわちシャフト74の端部75は、変速機24などの駆動源から離れて配列されている。後退フォーク128は、遊星キャリア112の凹部114が歯110を係合するように、遊星キャリア112を軸方向内方に動かす。この手法で、軸方向歯140は、内部カバーの凹部144を係合しないので、遊星キャリアはシャフトと同じ方向に回転して、それにより最終的にリングギア80がシャフト74と同じ方向に動く。
【0038】
次に図3Iを参照すると、中間ギアの歯110は、遊星キャリア112の凹部114から係脱されている。この手法で、遊星ギア94は太陽ギア124を係合し、リングギア80を回転シャフト74と反対又は後退方向に回転させる。
【0039】
次に図4を参照すると、車両を後退方向に作動するための方法が記述されている。ステップ410では、後退モードはユーザインタフェースで選択される。次に図5Aも参照すると、表示パネル34上に表示された表示画面510が記述されている。この例では、仮想ボタン512はタッチスクリーン上に表示されている。しかし後退ボタンは、上に記載されたように、目立たないボタンとしてユーザインタフェース62内に提供されてもよい。後退ボタンがユーザインタフェースで選択された後、後退選択信号がステップ412で発信される。後退選択信号は、車両制御モジュール60に連通される。車両制御モジュール60は、ステップ416で図5Bに示されたように第2の表示画面にプロンプトする。ステップ416は、表示パネル34上に第2の表示画面520を発生する。表示パネル34は、後退モードに入る指示522を提供してもよい。この例では、後退モードは車両を停止すること、及び車両を第1のギアに置くことによって達成されることがある。車両を停止することは、車輪16で測定する前進又は後退速度がない車輪速度センサ46に対応する。
【0040】
ステップ418では、速度及び変速機が第1のギアに入っているかどうかを判定する。上記のように、車輪速度センサ46は、車輪速度を決定するために使用され、変速位置センサ70は、変速機24が入っているギアに対応する位置信号を発信する。速度がゼロではなく、変速機が第1のギアに入っていない時、ステップ416は表示画面520を発生する。図5Bに例示された表示画面520が提供されてもよい。しかし一方又は他方が満たされないと表示されることがある。すなわち速度はゼロではない、又は変速機は第1のギアに入っていないことのいずれかが、別個の表示画面で別途提供されてもよい。
【0041】
速度がゼロに等しく、変速機が第1のギアに入っている時、図5Cに例示された表示画面530が提供されてもよい。この例では、スロットルを表示するためのインジケータが無効にされ、後退は有効であり、速度をクラッチレバー50で制御する指示が提供されてもよい。ステップ422では、ステップ418の後にスロットルが無効にされる。すなわちスロットルレバー52は、変速機24を駆動するためにエンジン22を有効にするためにもはや使用されない。車両制御モジュール60は、こうしてステップ422でスロットルを無効にする。スロットルからのスロットル信号は、車両制御モジュール60によって無視されてもよい。
【0042】
ステップ424では、中間ギアは、固定ギア76及びリングギア80の両方の係合から外される。すなわち遊星ギア94は、中間ギア88を軸方向に押して係合から外す。
【0043】
ステップ426では、クラッチレバー50は、後退速度を増加又は低減するために使用される。クラッチレバー50は、クラッチレバー50の開口又は閉鎖する量に対応する信号を発信してもよい。車両制御モジュール60は、クラッチ50からクラッチレバー信号を受信し、エンジン22の出力を制御し、エンジン22は、次いで変速機24の変速出力シャフト74を回転させる。ドライブ・スプロケット・アセンブリ28は、それ故に後退方向に作動する。
【0044】
次に図6を参照すると、ドライブ・スプロケット・アセンブリ28を作動するための方法が記述されている。ステップ610では、前進方向は、図4で上に記載されたように選択される。ステップ612では、中間ギアは、変速出力シャフトをリングギアに係合させる。ステップ614では、モータ及び変速機並びに変速出力シャフト74が、それに応じて前進方向に進む。ステップ616では、後退が無効にされているかどうかを判定する。後退が無効にされている場合、バックギアはステップ618で軸方向に動かされる。ステップ620では、中間ギアは、リングギアを固定ギアから係脱するために押される。ステップ622では、バックギアは、固定ギア及びリングギアを結合する。ステップ624では、変速出力シャフト74が回転すると、車輪16及びリングギアは、変速出力シャフト74の回転方向から反対方向に回転する。
【0045】
作動中に、オートバイ又は他の種類の車両は、本システムを使用してもよい。上に記載されたドライブ・スプロケット・アセンブリ28は、従来のチェーン・ドライブ・スプロケットに取って代わって使用されてもよい。車両制御モジュールは、上に記載されたようにバックギアを制御し、前進方向を係脱するように容易に再プログラムできる。スプロケット・カバー30は、典型的なドライブ・スプロケットに比べて、ドライブ・スプロケット・アセンブリ28の奥行が大きいことに起因して置換されてもよい。
【0046】
前述は、例示及び説明目的で提供されている。これは、本開示を網羅又は限定することを意図するものではない。具体例の個々の要素又は特徴は、概してその具体例に限定されないが、適用可能であれば相互に交換可能であり、明確に示され又は記載されていない場合であっても、選択された例に使用することができる。また具体例の個々の要素又は特徴は、様々な方法で変えられてもよい。このような変形は、本開示からの逸脱とみなされるべきではなく、そのような修正は全て本開示の範囲内に含まれることが意図される。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図4
図5A
図5B
図5C
図6