(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】光ファイバユニット及び光ファイバユニット製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/44 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
G02B6/44 371
G02B6/44 391
(21)【出願番号】P 2022533895
(86)(22)【出願日】2021-06-22
(86)【国際出願番号】 JP2021023658
(87)【国際公開番号】W WO2022004498
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2020114330
(32)【優先日】2020-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 典明
(72)【発明者】
【氏名】鯰江 彰
(72)【発明者】
【氏名】大里 健
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-052692(JP,A)
【文献】特開2014-211526(JP,A)
【文献】特開2014-228687(JP,A)
【文献】特開2012-208225(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0250347(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間欠連結型の複数の光ファイバテープを備え、
少なくとも1つの前記光ファイバテープは、第1光ファイバと、前記第1光ファイバよりも長い第2光ファイバとを含む複数の光ファイバを有しており、
前記第1光ファイバと前記第2光ファイバとを連結する連結部の長手方向の間隔をbとし、前記第1光ファイバに対する前記第2光ファイバの線長差をc%とし、テープ幅方向における前記光ファイバの間隔をYとしたとき、
且つ
c<0.05
であ
り、
前記第2光ファイバは、前記光ファイバテープの前記テープ幅方向に対して非対称的に配置され、
第1の光ファイバテープと、第2の光ファイバテープとがテープ面を対向させて配置されており、
前記第1の光ファイバテープ及び前記第2の光ファイバテープを前記長手方向から見たときに、前記第1の光ファイバテープにおける前記第2光ファイバの前記テープ幅方向における配置と、前記第2の光ファイバテープにおける前記第2光ファイバの前記テープ幅方向における配置と、が異なることを特徴とする光ファイバユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の光ファイバユニットであって、
複数の前記光ファイバテープを束ねるバンドル材を備えることを特徴とする光ファイバユニット。
【請求項3】
第1光ファイバと、前記第1光ファイバよりも長い第2光ファイバとを含む複数の光ファイバを有する間欠連結型の光ファイバテープであって、前記第1光ファイバと前記第2光ファイバとを連結する連結部の長手方向の間隔をbとし、前記第1光ファイバに対する前記第2光ファイバの線長差をc%とし、テープ幅方向における前記光ファイバの間隔をYとしたとき、
且つ
c<0.05
であ
り、
前記第2光ファイバは、前記光ファイバテープの前記テープ幅方向に対して非対称的に配置される間欠連結型の光ファイバテープを用意すること、及び、
第1の光ファイバテープと、第2の光ファイバテープとがテープ面を対向させて配置させつつ、前記第1の光ファイバテープ及び前記第2の光ファイバテープを前記長手方向から見たときに、前記第1の光ファイバテープにおける前記第2光ファイバの前記テープ幅方向における配置と、前記第2の光ファイバテープにおける前記第2光ファイバの前記テープ幅方向における配置と、を異ならせて、前記第2光ファイバを有する前記光ファイバテープを含む複数の間欠連結型の光ファイバテープを集合すること
を行う光ファイバユニット製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバユニット及び光ファイバユニット製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数本の光ファイバを束ねた光ファイバの集合体を光ファイバユニットとして、光ファイバケーブルを構成する技術が知られている。その際、光ファイバの束に粗巻き糸(バンドル材)を巻き付けることにより、光ファイバの束がバラバラになることを抑制しつつ、バンドル材の色によって光ファイバユニットを識別する方法が一般的である。例えば、特許文献1には、複数枚の光ファイバテープを束ねてバンドル化して光ファイバユニットを形成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数枚の光ファイバテープを束ねて光ファイバユニットを構成する場合、特許文献1に記載のように、複数枚の光ファイバテープは、積層させた状態(複数枚の光ファイバテープを重ね合わせた状態)で束ねられていることがある。但し、特許文献1に記載のように、複数枚の光ファイバテープを積層させた状態で束ねた光ファイバユニットを用いて光ケーブルを構成した場合、光ケーブルに負荷(例えば曲げや温度変化など)が加わったときに、特定の光ファイバに負荷が集中してしまい、伝送損失が増大するおそれがある。
【0005】
本発明は、特定の光ファイバに負荷が集中することを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、間欠連結型の複数の光ファイバテープを備え、少なくとも1つの前記光ファイバテープは、第1光ファイバと、前記第1光ファイバよりも長い第2光ファイバとを含む複数の光ファイバを有しており、前記第1光ファイバと前記第2光ファイバとを連結する連結部の長手方向の間隔をbとし、前記第1光ファイバに対する前記第2光ファイバの線長差をc%とし、テープ幅方向における前記光ファイバの間隔をYとしたとき、
且つ
c<0.05
であることを特徴とする光ファイバユニットである。
【0007】
本発明の他の特徴については、後述する明細書及び図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、特定の光ファイバに負荷が集中することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1Aは、光ケーブル1の説明図である。
図1Bは、光ファイバユニット2の説明図である。
【
図2】
図2A及び
図2Bは、間欠連結型の光ファイバテープ7の説明図である。
図2Bは、線長差を有する光ファイバを含む間欠連結型の光ファイバテープ7の説明図である。
【
図3】
図3は、光ファイバユニット2を製造するユニット製造装置20の説明図である。
【
図4】
図4Aは、比較例の複数の光ファイバテープ7の断面形状の説明図である。
図4Bは、本実施形態の積層状態が崩れた状態における複数の間欠連結型の光ファイバテープ7の断面形状の説明図である。
【
図5】
図5は、第2光ファイバ8Bの変形量Xの説明図である。
【
図6】
図6は、間欠連結型の光ファイバテープ7の一例の上面図である。
【
図7】
図7A~
図7Cは、間欠連結型の光ファイバテープ7の別の例の上面図である。
【
図8】
図8は、線長差cと、光ケーブルの伝送損失との関係を示すグラフである。
【
図9】
図9Aは、ファイバピッチYが0.25mmの場合の長さbと線長差cとの関係を示す表である。
図9Bは、ファイバピッチYが0.20mmの場合の長さbと線長差cとの関係を示す表である。
【
図10】
図10Aは、第2光ファイバ8Bの配置と、光ファイバテープ7の湾曲の説明図である。
図10Bは、第2光ファイバ8Bが非対称的に配置された2枚の光ファイバテープのテープ面を対向させた様子を長手方向から見た説明図である。
【
図11】
図11は、光ファイバ8の長さにばらつきがある場合の第2光ファイバ8Bの変形量Xの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
後述する明細書及び図面の記載から、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0011】
間欠連結型の複数の光ファイバテープを備え、少なくとも1つの前記光ファイバテープは、第1光ファイバと、前記第1光ファイバよりも長い第2光ファイバとを含む複数の光ファイバを有しており、前記第1光ファイバと前記第2光ファイバとを連結する連結部の長手方向の間隔をbとし、前記第1光ファイバに対する前記第2光ファイバの線長差をc%とし、テープ幅方向における前記光ファイバの間隔をYとしたとき、
且つ
c<0.05
であることを特徴とする光ファイバユニットが明らかとなる。このような光ファイバユニットによれば、特定の光ファイバに負荷が集中することを抑制することができる。
【0012】
また、複数の前記光ファイバテープを束ねるバンドル材を備えることが望ましい。これにより、バンドル材によって複数の光ファイバテープを束ねて光ファイバユニットを構成することができる。
【0013】
また、前記第2光ファイバは、前記光ファイバテープの前記テープ幅方向に対して非対称的に配置されていることが望ましい。これにより、積層状態を崩した状態で複数の光ファイバテープを集合させ易くなる。
【0014】
第1の光ファイバテープと、第2の光ファイバテープとがテープ面を対向させて配置されており、前記第1の光ファイバテープ及び前記第2光ファイバテープを前記長手方向から見たときに、前記第1の光ファイバテープにおける前記第2の光ファイバの前記テープ幅方向における配置と、前記第2の光ファイバテープにおける前記第2光ファイバの前記テープ幅方向における配置と、が異なることが望ましい。これにより、更に、積層状態を崩した状態で複数の光ファイバテープを集合させ易くなる。
【0015】
第1光ファイバと、前記第1光ファイバよりも長い第2光ファイバとを含む複数の光ファイバを有する間欠連結型の光ファイバテープであって、前記第1光ファイバと前記第2光ファイバとを連結する連結部の長手方向の間隔をbとし、前記第1光ファイバに対する前記第2光ファイバの線長差をc%とし、テープ幅方向における前記光ファイバの間隔をYとしたとき、
且つ、c<0.05である間欠連結型の光ファイバテープを用意すること、及び、前記第2光ファイバを有する前記光ファイバテープを含む複数の間欠連結型の光ファイバテープを集合することを行う光ファイバユニット製造方法が明らかとなる。このような光ファイバユニット製造方法によれば、特定の光ファイバに負荷が集中することを抑制することができる。
【0016】
===第1実施形態===
<光ケーブル1の構成>
図1Aは、光ケーブル1の説明図である。
【0017】
光ケーブル1は、光ファイバ8を収容したケーブルである。本実施形態の光ケーブル1は、光ファイバ8を収容する溝(スロット)が形成されたスロットロッドを有さない光ケーブルであり、いわゆるスロットレス型の光ケーブルである。本実施形態の光ケーブル1は、複数の光ファイバユニット2と、外被3とを有する。なお、光ケーブル1は、ここではスロットレス型の光ケーブルであるが、スロットロッドを有するスロット型の光ケーブルでも良い。但し、後述する光ファイバユニット2は、スロットレス型の光ケーブル1に用いられた場合に特に有効である。
【0018】
光ファイバユニット2は、複数の光ファイバ8を束ねた構造体である。本実施形態の光ケーブル1は、複数の光ファイバユニット2を備えている。光ファイバユニット2の詳しい構造については後述する。複数の光ファイバユニット2は、押え巻きテープ5によって覆われた状態で外被3の内側に収容されている。複数の光ファイバユニット2は、一方向又はSZ状に撚られた状態で外被3の内側に収容されていても良い。押え巻きテープ5の内側には、複数の光ファイバユニット2の他に、介在物が収容されていても良い。例えば、押え巻きテープ5の内側、外側、或いは両方に、介在物として吸収材が収容されても良い。また、押え巻きテープ5が吸水テープで構成されていても良い。また、押え巻きテープ5が無くても良いし、介在物が無くても良い。なお、
図1は光ケーブル1の概念図であり、複数の光ファイバユニット2が規則正しく整然と配置されており、光ファイバユニット2同士の境界が周方向又は径方向に沿っている。但し、実際には、光ファイバユニット2の断面形状は不規則な形であり、光ファイバユニット2同士の境界は湾曲している。
【0019】
外被3は、複数の光ファイバユニット2(及び押え巻きテープ5)を被覆する部材である。外被3の外形は、断面が略円形状である。本実施形態では、外被3の内側に、複数の光ファイバユニット2を包んだ押え巻きテープ5が収容されている。また、外被3には、テンションメンバ4が埋設されている。外被3には、テンションメンバ4の他に他の部材(例えばリップコードなど)が埋設されていても良い。
【0020】
図1Bは、光ファイバユニット2の説明図である。
光ファイバユニット2は、複数の光ファイバ8を束ねた構造体である。本実施形態の光ファイバユニット2は、複数の光ファイバ8がバンドル材10で束ねられている。但し、光ファイバユニット2は、バンドル材10を用いずに、例えば撚り合わせることで複数の光ファイバ8を束ねた構造でも良い。バンドル材10は、光ファイバ8の外周上に巻き付けられており、これにより複数の光ファイバ8が束ねられてバラバラにならないようになっている。本実施形態の光ファイバユニット2は、複数枚の間欠連結型の光ファイバテープ7を束ねて構成されている。
【0021】
図2A及び
図2Bは、間欠連結型の光ファイバテープ7の説明図である。以下の説明では、複数の光ファイバ8の並ぶ方向を「テープ幅方向」と呼び、光ファイバ8の長手方向とテープ幅方向とに対して垂直な方向を「テープ厚さ方向」と呼ぶことがある。なお、光ファイバテープ7のテープ面は、光ファイバ8の長手方向とテープ幅方向に平行な方向となる。
間欠連結型の光ファイバテープ7は、複数(ここでは12本)の光ファイバ8を並列させて間欠的に連結した光ファイバテープ7である。隣接する2心の光ファイバ8は、連結部9Aによって連結されている。隣接する2心の光ファイバ8間には、複数の連結部9Aが長手方向に間欠的に配置されている。また、複数の連結部9Aは、長手方向及びテープ幅方向に2次元的に間欠的に配置されている。隣接する2心の光ファイバ8間の連結部9A以外の領域は、非連結部9Bになっている。非連結部9Bでは、隣接する2心の光ファイバ8同士は拘束されていない。光ファイバテープ7は、テープ幅方向に対して柔軟に変形可能であり、多数の光ファイバ8を高密度に束ねることが可能である。
【0022】
図2Bは、線長差を有する光ファイバ8Bを含む間欠連結型の光ファイバテープ7の説明図である。
図2Bに示す光ファイバテープ7は、第1光ファイバ8Aと、第1光ファイバ8Aよりも長い第2光ファイバ8Bとを含む複数の光ファイバ8を有する。第2光ファイバ8Bは、第1光ファイバ8Aに対して線長差を有する光ファイバとなる。複数の光ファイバのうち、第2光ファイバ8Bに隣接する光ファイバ(第2光ファイバ8Bと連結部9Aを介して連結された光ファイバ)のことを第1光ファイバ8Aと呼ぶが、ここでは第2光ファイバ8B以外の光ファイバは第1光ファイバ8Aと同じ長さであるため、第2光ファイバ8B以外の光ファイバに対して符号8Aをつけて説明することがある。なお、第2光ファイバ8B以外の光ファイバ8の長さは互いに異なっていても良い(後述)。第2光ファイバ8Bは、第1光ファイバ8Aよりも長いため、
図2Bに示すように、テープ面から浮き上がるように変形することになる。
【0023】
本実施形態の光ファイバユニット2を構成する複数の光ファイバテープ7の少なくとも1つは、
図2Bに示すような線長差を有する第2光ファイバ8Bを含む間欠連結型の光ファイバテープである。なお、本実施形態の光ファイバユニット2を構成する複数の光ファイバテープ7の全てが、
図2Bに示すような第2光ファイバ8Bを含む間欠連結型の光ファイバテープであっても良い。
【0024】
間欠連結型の光ファイバテープ7は、図に示したものに限られるものではない。例えば、連結部9Aの配置を変更しても良い(後述:
図5A~
図5D参照)。また、間欠連結型の光ファイバテープ7を構成する光ファイバ8の数を変更しても良い。また、第2光ファイバの数は、1本に限られず、2本以上でも良い。また、後述するように、隣り合う複数(例えば2本)の光ファイバを一組とし、複数の組を並列させて、隣り合う組の隣接する光ファイバ8を連結部9Aで間欠的に連結しても良い(
図7C参照)。また、間欠的に配置される連結部9Aの配置パターンは、一定のパターンでなくても良い。
【0025】
バンドル材10は、複数の光ファイバ8を束ねる部材である。バンドル材10は、複数の光ファイバ8を結束可能な部材であり、例えば糸状、紐状又はテープ状の部材である。バンドル材10は、光ファイバ8の束の外周上に巻き付けられている。図中の光ファイバユニット2は、2本のバンドル材10によって光ファイバ8を束ねているが、光ファイバユニット2のバンドル材10は、1本でも良いし、2本以上でも良い。また、光ファイバユニット2がバンドル材10を備えていなくても良い。
【0026】
バンドル材10は、高融点材料と低融点材料との複合材で構成されており、交点で熱融着されている。但し、バンドル材10は、複合材ではなく、単一材料によって構成されてもよい。例えば、高融点材料もしくは低融点材料のいずれかによって構成されていてもよいし、2本のバンドル材10の材質が異なってもよい。また、バンドル材10同士を熱融着する代わりに、接着剤により接合しても良い。また、バンドル材10の交点を接合していなくても良い。
【0027】
2本のバンドル材10は、
図1Bに示すように、光ファイバ8の束に対してそれぞれSZ状に巻き付けられている。つまり、それぞれのバンドル材10は、接合部15において巻き付け方向を反転させつつ、光ファイバ8の束の外周の半周分ずつ巻き付けられている。但し、バンドル材10の巻き付け方法は、これに限られるものではない。例えば、1本のバンドル材10が光ファイバ8の束の外周に螺旋状に巻き付けられても良い。また、2本のバンドル材10が光ファイバ8の束の外周にそれぞれ逆方向に螺旋状に巻き付けられても良い。本実施形態では、2本の紐状のバンドル材10により複数の光ファイバテープ7を束ねて光ファイバユニット2が構成されているが、光ファイバユニット2の構成は、これに限られるものではない。例えば、複数の光ファイバ8の束の外周上にテープ状のバンドル材10を包むように巻き付けることによって、光ファイバユニット2が構成されても良い。例えば、バンドル材10が押さえ巻きテープで構成されても良い。また、バンドル材10は、例えばルースチューブ、タイトバッファーチューブなどのチューブで構成されても良い。バンドル材10は、光ファイバ8の束の外形に追従するように取り付けられるため、光ファイバ8の束の外形を保持することができる(この結果、積層状態を崩した状態(後述)で複数の光ファイバテープ7を保持することができる)。
【0028】
図3は、光ファイバユニット2を製造するユニット製造装置20の説明図である。
ユニット製造装置20は、複数のテープ供給部30と、集合部40と、ユニット形成部100とを有する。
【0029】
テープ供給部30は、間欠連結型の光ファイバテープ7を供給する装置(供給源)である。例えば、テープ供給部30は、予め間欠連結型の光ファイバテープ7が巻き回されたドラム(又はボビン)で構成されている。なお、テープ供給部30は、間欠連結型の光ファイバテープ7の製造装置で構成されてもよい。本実施形態では、複数のテープ供給部30から集合部40へ間欠連結型の光ファイバテープ7がそれぞれ供給されることになる。本実施形態では、少なくとも1つのテープ供給部30は、
図2Bに示すような第2光ファイバ8Bを含む間欠連結型の光ファイバテープ7を集合部40へ供給する。
【0030】
集合部40は、複数の光ファイバテープ7を集合する装置である。後述するように、本実施形態の集合部40は、積層状態を崩した状態で複数の光ファイバテープ7を集合させる。本実施形態では、積層状態の崩れた状態の複数の間欠連結型の光ファイバテープ7が集合部40からバンドル取付部50へ供給されることになる。
【0031】
ユニット形成部100は、複数の光ファイバテープ7をバンドル材10で束ねた光ファイバユニット2を形成する装置である。本実施形態では、ユニット形成部100において、積層状態の崩れた状態の複数の光ファイバテープ7にバンドル材10が巻き付けられることによって、積層状態の崩れた状態の複数の光ファイバテープ7で構成された光ファイバユニット2が形成されることになる。なお、積層状態の崩れた状態の複数の光ファイバテープ7については後述する。ユニット形成部100は、バンドル取付部50と、バンドル接合部60とを有する。但し、バンドル材10の接合を行わない場合、ユニット形成部100は、バンドル接合部60を備えず、バンドル取付部50を備えるだけでも良い。
【0032】
バンドル取付部50は、複数の間欠連結型の光ファイバテープ7の束の外周にバンドル材10を取り付ける装置である。本実施形態では、バンドル取付部50は、2本のバンドル材10をSZ状に巻き付けることになる。但し、バンドル取付部50は、バンドル材10をSZ状に巻き付けるものに限られず、例えばバンドル材10を一方向に螺旋状に巻き付けても良い。また、バンドル材がテープ状の場合には、バンドル取付部50は、複数の光ファイバテープ7の束を包むようにバンドル材を巻き付けても良い。また、バンドル材がチューブの場合には、チューブとなる樹脂を光ファイバテープ7の束の外周に押出成型しても良い。ここでは、バンドル取付部50は、複数の光ファイバテープ7の束の外周にバンドル材10をSZ状に巻き付けることによって、複数の光ファイバテープ7の束の外周に2本のバンドル材10の交点を形成しつつ、複数の間欠連結型の光ファイバテープ7及びバンドル材10をバンドル接合部60へ供給する。なお、
図3において、バンドル取付部50とバンドル接合部60との間にバンドル材10の交点が複数形成されているが、バンドル取付部50とバンドル接合部60との間隔は、バンドル材10の交点の長手方向の間隔よりも短くてもよい。
【0033】
バンドル接合部60は、バンドル材10を接合する装置である。本実施形態のバンドル接合部60は、筒状のヒーターで構成されている。筒状のヒーターの内壁面が加熱面になっている。複数の間欠連結型の光ファイバテープ7及びバンドル材10が、筒状のヒーターの内側を通過するときに、2本のバンドル材10の交点が融着接合され、接合部15が形成される。これにより、
図1Bに示す光ファイバユニット2が製造されることになる。なお、バンドル接合部60は、熱融着によりバンドル材10を接合する代わりに、接着剤によりバンドル材10を接合しても良い。また、ユニット形成部100がバンドル接合部60を備えず、バンドル材10が接合されなくても良い。
【0034】
なお、このように製造された複数の光ファイバユニット2が束ねられるとともに、押え巻きテープ5に巻き回され、押出成型装置において押え巻きテープ5の外側に外被3となる溶融樹脂が押出成型されることによって、光ケーブル1が製造されることになる。
【0035】
<光ファイバユニット2の断面形状について>
まず比較例の光ファイバユニットの断面形状について説明した後、本実施形態の光ファイバユニット2の断面形状について説明する。
【0036】
図4Aは、比較例の光ファイバユニット2の複数の光ファイバテープ7の断面形状の説明図である。比較例では、6枚の間欠連結型の光ファイバテープ7が積層された状態でバンドル材10(
図4Aでは不図示)によって束ねられている。比較例では、光ファイバテープ7は、テープ幅方向に対して曲げられておらず、テープ面が平坦である。また、それぞれの光ファイバテープ7の平坦なテープ面は、互いに平行になっており、それぞれの光ファイバテープ7のテープ面が揃っている。つまり、比較例では、6枚の光ファイバテープ7が規則的に積層されている。
【0037】
図4Aに示す比較例の場合、光ケーブルが曲がったときに、特定の光ファイバ8に負荷が集中するおそれがある。例えば、図中のN1-N1面を中立面として光ファイバユニット2が曲げられた場合、図中の1番目の光ファイバテープ7又は6番目の光ファイバテープ7(積層状態の端の光ファイバテープ7)を構成する光ファイバ8に引張応力又は圧縮応力が集中し、他の光ファイバ8に応力が分散し難くなる。また、図中の各光ファイバテープ7のN2-N2面を中立面として光ファイバユニット2が曲げられた場合、図中の1番ファイバ又は12番ファイバ(光ファイバテープ7の両端の光ファイバ8)に引張応力又は圧縮応力が集中し、他の光ファイバ8に応力が分散し難くなる。このように特定の光ファイバ8に負荷が集中して他の光ファイバ8に負荷を分散させ難い状況下では、負荷の集中する光ファイバ8の伝送損失が増大し、この結果、最大伝送損失(複数の光ファイバ8の伝送損失のうちの最大の伝送損失)が増大する。このため、特定の光ファイバ8に負荷が集中しないことが望ましい。
【0038】
図4Bは、本実施形態の複数の間欠連結型の光ファイバテープ7の断面形状の説明図である。本実施形態では、
図4Bに示すように、複数の光ファイバテープ7の積層状態を崩した状態で、光ファイバユニット2を構成している。これにより、特定の光ファイバ8に負荷が集中することを抑制し、光ケーブル1(又は光ファイバユニット2)の最大伝送損失を抑制している。なお、積層状態を崩した状態とは、
図4Aに示す積層状態と比べて、少なくとも1つの光ファイバテープ7の相対的な位置関係が異なっている状態を意味する。このため、本実施形態では、全ての光ファイバテープ7が
図4Aに示す積層状態と比べて異なる位置でなくても良く、例えば
図4Bに示すように、或る光ファイバテープ7が
図4Aに示す積層状態と比べて同じ位置であっても許容される(別の光ファイバテープ7が
図4Aに示す積層状態と比べて異なる位置にあれば良い)。
図4Aに示す積層状態と比べて少なくとも1つの光ファイバテープ7の相対的な位置関係が異なっていれば、
図4Aに示す場合と比べて、特定の光ファイバ8に負荷が集中することを抑制でき、光ケーブル1(又は光ファイバユニット2)の最大伝送損失を抑制できる。
【0039】
本実施形態では、少なくとも1つのテープ供給部30は、
図2Bに示すような第2光ファイバ8Bを含む間欠連結型の光ファイバテープ7を集合部40へ供給する。また、集合部は、
図2Bに示すような間欠連結型の光ファイバテープ7を含む複数の間欠連結型の光ファイバテープ7を集合させる。
図2Bに示すように、第2光ファイバ8Bは、第1光ファイバ8Aよりも長いため、第1光ファイバ8Aにより構成されるテープ面から浮き上がるように変形しているため、第2光ファイバ8Bによって、別の光ファイバテープ7の姿勢が崩され、この結果、積層状態が崩れた状態で複数の光ファイバテープ7が集合する。これにより、本実施形態では、
図4Bに示すように、複数の光ファイバテープ7の積層状態を崩した状態で、光ファイバユニット2を構成することができる。
【0040】
<線長差について>
図5は、第2光ファイバ8Bの変形量Xの説明図である。
図5は、第2光ファイバ8Bの非連結部9Bにおける光ファイバテープ7の断面の説明図である。
【0041】
第2光ファイバ8Bは、第1光ファイバ8Aよりも長いため、第2光ファイバ8Bの非連結部9Bでは、隣接する第1光ファイバ8Aに対して浮き上がるように変形している。
図5では、第2光ファイバ8Bの中心をO2とし、第2光ファイバ8Bに隣接する第1光ファイバ8Aの中心をO1とし、第2光ファイバ8Bに隣接する2つの第1光ファイバ8Aの中心O1の中点をO’としている。中点O’は、第2光ファイバ8Bを連結する連結部9Aが形成された位置での断面における第2光ファイバ8Bの中心の位置に相当する。また、中点O’は、中心O1からテープ幅方向に延ばした線と、中心O2からテープ厚さ方向に延ばした線との交点に相当する。そこで、図中の中心O2と中点O’との距離を変形量X(mm)とする。また、テープ幅方向における光ファイバ8の間隔をファイバピッチY(mm)とする。図中の中点O’と中心O1との距離もファイバピッチYに相当する。また、図に示すように、中点O’と中心O2を結ぶ線と中心O1と中心O2とを結ぶ線との角度(角O’-O2-O1)をθ(度)とする。
【0042】
本実施形態では、テープ面から浮き上がっている第2光ファイバ8Bによって、別の光ファイバテープ7(不図示;
図5の光ファイバテープの上側に重ねられる光ファイバテープ)の姿勢を崩し、これにより、積層状態を崩した状態で複数の光ファイバテープ7を集合させている。このように第2光ファイバ8Bによって別の光ファイバテープ7の姿勢を崩すためには、第2光ファイバ8Bが少なくとも光ファイバ1本分以上に突出している必要がある。つまり、第2光ファイバ8Bによって別の光ファイバテープ7の姿勢を崩すためには、第2光ファイバ8Bの変形量Xは、ファイバピッチYよりも大きいことが必要である(言い換えると、角度θは45度未満であることが必要である)。そこで、X>Yになるための条件について検討する。
【0043】
図6は、間欠連結型の光ファイバテープ7の一例の上面図である。
【0044】
間欠連結型の光ファイバテープ7には、長手方向に所定の繰り返しピッチPで複数の連結部9Aが周期的に形成されている。1周期分のピッチPの範囲において、全ての光ファイバ8(第1光ファイバ8A、第2光ファイバ8Bを含む)は連結部9Aによって連結されている。1周期分のピッチPの範囲において、連結区間91(91A~91D)と非連結区間92とが形成されている。連結区間91は、連結部9Aが存在する区間である。非連結区間92は、連結部9Aが存在しない区間である。ここでは、1周期分のピッチPの範囲に4つの連結区間91(91A~91D)と、4つの非連結区間92が長手方向に交互に形成されている。但し、後述するように、連結区間91や非連結区間92の数は、これに限られるものではない。ここでは、1つの連結区間91には、テープ幅方向に2~3個の連結部9Aが形成されている。但し、後述するように、連結区間91における連結部9Aの数は、これに限られるものではない。ここでは、
図6に示すように、或る1周期分のピッチPの範囲における4つの連結区間91を、左から順に第1連結区間91A、第2連結区間91B、第3連結区間91C、第4連結区間91Dと呼ぶ。
【0045】
図6に示す第2光ファイバ8Bは、第1連結区間91Aの連結部9Aと、第4連結区間91Dの連結部9Aとによって隣接する第1光ファイバ8Aと連結されている。言い換えると、第2光ファイバ8Bは、第1連結区間91Aの連結部9Aと第4連結区間91Dの連結部9Aとの間の非連結部9Bによって、第1光ファイバ8Aに対して拘束されていない状態であるため、第1光ファイバ8Aに対してテープ厚さ方向(テープ面に垂直な方向)に変形可能である。そこで、第2光ファイバ8Bが第1光ファイバ8Aに対して変形可能な領域の長さを示す値として、第1光ファイバ8Aと第2光ファイバ8Bとを連結する連結部9Aの長手方向の間隔をb(mm)とする。ここでは、
図6に示すように、第1連結区間91Aの連結部9Aと第4連結区間91Dの連結部9Aとの長手方向の間隔が長さb(mm)となる。なお、図中の長さb’に示す領域においても、第2光ファイバ8Bは第1光ファイバ8Aに拘束されていないが、このように、第1光ファイバ8Aと第2光ファイバ8Bとを連結する連結部9Aの長手方向の間隔が2種類以上存在する場合には、最も長い間隔に基づいて長さbが定められる。なお、
図6に示すように、長さbの領域は、連結区間91(ここでは第2連結区間91B及び第3連結区間91C)を跨がることがある。
【0046】
図7A~
図7Cは、間欠連結型の光ファイバテープ7の別の例の上面図である。
【0047】
図7Aに示す間欠連結型の光ファイバテープ7の場合、1周期分のピッチPの範囲に2つの連結区間91(第1連結区間91A及び第2連結区間91B)と、2つの非連結区間92が長手方向に交互に形成されている。第1連結区間91Aの複数の連結部9Aと、第2連結区間91Bの複数の連結部9Aは、テープ幅方向に互い違いに配置されている。このように、1周期分のピッチPの範囲における連結区間91(又は非連結区間92)の数は、4に限られるものではなく、2でも良いし、それ以外の数(例えば3)でも良い。
【0048】
図7Bに示す間欠連結型の光ファイバテープ7の場合、1周期分のピッチPの範囲に1つの連結区間91(及び1つの非連結区間92)が形成されている。このように、1周期分のピッチPの範囲における連結区間91(又は非連結区間92)の数は、複数に限られるものではなく、1つでも良い。
【0049】
図7Cに示す間欠連結型の光ファイバテープ7の場合、長手方向に連続して連結されている2連の光ファイバ8の対(ファイバ対81)を複数(ここでは6対)備えており、隣接するファイバ対の間が間欠的に連結部9Aで連結されている。ここでは、間欠連結型の光ファイバテープ7は、5対の第1光ファイバ8Aのファイバ対81Aと、1対の第2光ファイバ8Bのファイバ対81Bとを備えている。このように、2連のファイバ対81が間欠的に連結されることによって、間欠連結型の光ファイバテープ7が構成されても良い。
【0050】
図7A~
図7Cに示す間欠連結型の光ファイバテープ7の場合、第1光ファイバ8Aと第2光ファイバ8Bとを連結する連結部9Aの長手方向の間隔b(mm)は、それぞれの図に示す領域の長さを示す値となる。なお、
図7Cに示す間欠連結型の光ファイバテープ7の場合、或る第2光ファイバ8Bは、ファイバ対を構成する別の第2光ファイバ8Bを介して間接的に第1光ファイバ8Aと連結されるため、第1光ファイバ8Aと第2光ファイバ8Bとを連結する連結部9Aの長手方向の間隔b(mm)は、
図7Cに示すように定められる。なお、
図5に示す変形量Xは、第1光ファイバ8Aと第2光ファイバ8Bとを連結する連結部9Aの長手方向の間隔b(mm)の領域の中間点で最大となる。
【0051】
次に、第1光ファイバ8Aに対する第2光ファイバ8Bの線長差をc(%)とする。ここで、第2光ファイバ8Bは第1光ファイバ8Aよりも長いので、線長差c(%)は、第2光ファイバ8Bが第1光ファイバ8Aよりもc%長いことを意味する。例えば、間欠連結型の光ファイバテープ7を所定の長さで切り取った後に単心分離し、第1光ファイバ8Aの長さがL1、第2光ファイバ8Bの長さがL2の場合、線長差c(%)は、次式の通りである。
【0052】
c(%)=100×(L2-L1)/L1
【0053】
上記のように、第1光ファイバ8Aと第2光ファイバ8Bとを連結する連結部9Aの長手方向の間隔をbとし、第1光ファイバ8Aに対する第2光ファイバ8Bの線長差をc%としたとき、長さbの領域の中間点における第2光ファイバ8Bの変形量Xは、長さb及び線長差cに基づいて、次式のように示される。
【0054】
【0055】
ここで、第2光ファイバ8Bによって別の光ファイバテープ7の姿勢を崩すためには、第2光ファイバ8Bの変形量X(
図5参照)は、ファイバピッチYよりも大きい必要があり(X>Y)、角度θ(
図5参照)は45度未満である必要がある。このため、第2光ファイバ8Bによって別の光ファイバテープ7の姿勢を崩すための条件は、次の通りである。
【0056】
【0057】
なお、上式(数2)に基づいて、X>Yになるための間隔b、線長差cの条件は、次式のように導き出される。
【0058】
【0059】
【0060】
ところで、線長差cが大きくなると、線長差に起因して第2光ファイバ8Bの伝送損失が増大するため、光ケーブルの最大伝送損失が増大する。
図8は、線長差cと、光ケーブルの伝送損失との関係を示すグラフである。ここでは、
図1Aに示す構成の1728心の光ケーブル(ケーブルA)及び3456心の光ケーブル(ケーブルB)を作成した。線長差cを異ならせた光ケーブルを作成し、-30℃/+70℃のサイクルでの損失温度特性評価において1550nmの測定波長における損失増分(初期状態での伝送損失と温度特性試験での伝送損失の最大値との差)を測定した。GR-20の規格において損失増分が0.15dB/km以下であることが規定されているのに対し、図中のグラフに示す通り、線長差cが0.05%のとき、損失増分はGR-20で規定された損失増分の範囲内である。このため、線長差cは、0.05%未満であることが望ましい(c<0.05)。
【0061】
したがって、上記の通り、第1光ファイバ8Aと第2光ファイバ8Bとを連結する連結部9Aの長手方向の間隔をbとし、第1光ファイバ8Aに対する第2光ファイバ8Bの線長差をc%とし、テープ幅方向における光ファイバ8の間隔(ファイバピッチ)をYとしたとき、線長差cは、前述の条件式(数4)を満たし、且つ、c<0.05であることが望ましい。これにより、第2光ファイバ8Bによって別の光ファイバテープ7の姿勢を崩すことができ、積層状態を崩した状態で複数の光ファイバテープ7を集合させることができるため、特定の光ファイバ8に負荷が集中することを抑制することが可能になる。
【0062】
なお、既に説明したように、本実施形態では、テープ面から浮き上がっている第2光ファイバ8Bによって、別の光ファイバテープ7の姿勢を崩している。このため、第2光ファイバ8Bは、テープ幅方向の端部ではなく、テープ幅方向の端部よりも内側に配置されることが望ましい。
【0063】
図9Aは、ファイバピッチYが0.25mmの場合の長さbと線長差cとの関係を示す表である。通常、光ファイバテープ7のファイバピッチYは0.25mmである。表に示すように、ファイバピッチYが0.25mmの場合には、第1光ファイバ8Aと第2光ファイバ8Bとを連結する連結部9Aの長手方向の間隔bは、15.8mmよりも大きい必要がある(長さbが15.8mm以下の場合、前述の条件式(数4)又はc<0.05の少なくとも一方の条件を満たすことができなくなる)。
【0064】
図9Bは、ファイバピッチYが0.20mmの場合の長さbと線長差cとの関係を示す表である。表に示すように、ファイバピッチYが0.20mmの場合には、第1光ファイバ8Aと第2光ファイバ8Bとを連結する連結部9Aの長手方向の間隔bは、12.7mmよりも大きい必要がある。
【0065】
図10Aは、第2光ファイバ8Bの配置と、光ファイバテープ7の湾曲の説明図である。断面を白丸で示した光ファイバは、第1光ファイバ8Aである。断面を黒丸で示した光ファイバは、第2光ファイバ8Bであり、第1光ファイバ8Aよりも長い。
【0066】
第2光ファイバ8Bが、光ファイバテープ7のテープ幅方向に対して非対称的に配置されている場合、第2光ファイバ8Bの線長差に起因して、光ファイバテープ7が湾曲する。例えば、
図10Aに示すように、第2光ファイバ8Bが光ファイバテープ7の左側に偏るように非対称的に配置されている場合には、図中の点線で示すように、光ファイバテープ7の左側面が凸になるように光ファイバテープ7が湾曲する傾向を有する。このような湾曲する傾向を有する光ファイバテープ7を他の光ファイバテープ7とともにバンドル材10で束ねると、湾曲傾向を有する光ファイバテープ7が長手方向に沿うように矯正され、光ファイバテープ7のテープ面がうねるように変形し、これにより、積層状態を崩した状態で複数の光ファイバテープ7を集合させ易くなる。このため、第2光ファイバ8Bは、光ファイバテープ7のテープ幅方向に対して非対称的に配置されていることが望ましい。
【0067】
図10Bは、第2光ファイバ8Bが非対称的に配置された2枚の光ファイバテープ7を長手方向から見た説明図である。2枚の光ファイバテープ7のテープ面を対向させつつ集合させるとき、一方の光ファイバテープ7における第2光ファイバ8Bのテープ幅方向における配置と、他方の光ファイバテープ7における第2光ファイバ8Bのテープ幅方向における配置とを異ならせることが望ましい。例えば、
図10Bに示すように、第2光ファイバ8Bが左側に偏るように非対称的に配置された光ファイバテープ7と、第2光ファイバ8Bが右側に偏るように非対称的に配置された光ファイバテープ7とを互いのテープ面を対向させつつ集合させることが望ましい。これにより、逆方向に湾曲する傾向を有する複数の光ファイバテープ7をバンドル材10で束ねたときに、2枚の光ファイバテープ7のテープ面が逆方向にうねるように変形するため、積層状態を更に崩した状態で複数の光ファイバテープ7を集合させ易くなる。
【0068】
===補足===
<線長差cの測定方法について>
上記の説明では、間欠連結型の光ファイバテープ7を所定の長さで切り取った後に単心分離し、第1光ファイバ8Aの長さをL1とし、第2光ファイバ8Bの長さをL2とし、第1光ファイバ8Aに対する第2光ファイバ8Bの線長差をc(%)=100×(L2-L1)/L1として求めている。このように線長差c(%)を測定する場合、まず、光ファイバテープ7を一定の長さα(mm)で切り取り、切り取った光ファイバテープ7の連結部9Aを分離することによって、光ファイバテープ7を構成する複数の光ファイバ8を1本ずつ分離する。次に、分離した各光ファイバ8の長さβ(mm)を測定する。光ファイバテープ7がN本の光ファイバ8で構成されている場合、i番目(i=1,2,・・・N)の光ファイバ8の光ファイバ8の長さをβiとする。そして、m番目の光ファイバが第1光ファイバ8Aとなり、n番目(n=m-1又はn=m+1)の光ファイバが第2光ファイバ8Bとなる場合には、線長差c(%)は、c(%)=100×(βn-βm)/βmとして求めることができる。
【0069】
このような測定方法の場合、線長差c(%)を正確に測定するためには、線長差c(%)の測定のために切り取る光ファイバテープ7の長さα(mm)は長い方が望ましい。また、上記の通り、本実施形態の線長差cは0.05%未満であるため、線長差c(%)を小数第2位まで正確に測定できることが望ましい。切り取った光ファイバテープ7が10m以上あれば、1本ずつ分離した各光ファイバ8の長さβ(mm)を1mmの単位まで測定することによって、線長差c(%)を小数第2位まで測定可能である。このため、線長差c(%)の測定のために切り取る光ファイバテープ7の長さα(mm)は、10m以上であることが望ましい。
【0070】
また、一定の長さα(mm)の光ファイバテープ7を切り取るとき、切り取った光ファイバテープ7の中に少なくとも1周期分のピッチP(mm)の範囲が含まれている必要がある。このため、線長差c(%)の測定のために切り取る光ファイバテープ7の長さα(mm)は、ピッチP(mm)の2倍よりも大きいことが望ましい。すなわち、α>2×Pであることが望ましい。
【0071】
一方、上記の測定方法では、長さα(mm)の間での平均的な線長差を求めているので、第2光ファイバ8Bが第1光ファイバ8Aに対して変形可能な領域(第2光ファイバ8Bが第1光ファイバ8Aに拘束されていない領域;
図6の長さbに相当する領域)における線長差c(%)を間接的に求めていることになる。但し、線長差c(%)は、このような測定方法に限られるものではない。例えば、第2光ファイバ8Bが第1光ファイバ8Aに対して変形可能な領域(
図6の長さbに相当する領域)における第1光ファイバ8A及び第2光ファイバ8Bを直接測定し、この領域における第1光ファイバ8Aの長さをL1とし、この領域における第2光ファイバ8Bの長さをL2として、線長差をc(%)=100×(L2-L1)/L1として求めても良い。これにより、第2光ファイバ8Bが第1光ファイバ8Aに対して変形可能な領域(
図6の長さbに相当する領域)における線長差c(%)を直接的に求めることができる。
【0072】
<ファイバピッチYの測定方法について>
ファイバピッチYの測定方法は、例えば次の通りである。まず、間欠連結型の光ファイバテープ7の一端を固定し、他端に100g程度の錘を取り付けることによって光ファイバテープ7に張力をかけた状態にする。光ファイバテープ7に張力をかけた状態でテープ面に垂直な方向からテープ面をカメラで撮影する。撮影された光ファイバテープ7の画像上には、光ファイバテープ7を構成する複数の光ファイバ8が長手方向に沿って並列している。そこで、撮影された光ファイバテープ7の画像上の光ファイバのコア同士の間隔(テープ幅方向の間隔)をファイバピッチYとして測定する。なお、ファイバピッチYの測定方法は、これに限られるものではない。
<長さbの測定方法について>
第2光ファイバ8Bが第1光ファイバ8Aに対して変形可能な領域の長さb(
図6、
図7A~
図7C参照)の測定方法は、例えば次の通りである。まず、間欠連結型の光ファイバテープ7の一端を固定し、他端に100g程度の錘を取り付け、光ファイバテープ7に張力をかけた状態にする。光ファイバテープ7に張力をかけた状態でテープ面に垂直な方向からテープ面をカメラで撮影する。なお、長さbの測定の際には、光ファイバテープ7に張力をかけた状態で光ファイバテープ7を撮影するときに、光ファイバテープ7を載置台に載置することが望ましい。撮影された光ファイバテープ7の画像上には、光ファイバテープ7を構成する複数の光ファイバ8が長手方向に沿って並列している。そこで、撮影された光ファイバテープ7の画像上において、第1光ファイバ8Aと第2光ファイバ8Bとを連結する2つの連結部9Aの内側の縁部同士の間隔(連結部9Aの長手方向の間隔)を、前述の長さbとして測定する。なお、
図6に示すように、第1光ファイバ8Aと第2光ファイバ8Bとを連結する連結部9Aの長手方向の間隔が2種類以上存在する場合には、図中の短い方の間隔b’ではなく、最も長い間隔を測定し、その測定結果を長さbとする。
【0073】
<第1光ファイバ8A及び第2光ファイバ8Bについて>
図2B示す光ファイバテープ7では、第2光ファイバ8B以外の光ファイバは第1光ファイバ8Aと同じ長さであった。但し、光ファイバテープ7を構成する複数の光ファイバの長さは、それぞれ異なる長さであっても良い。
【0074】
光ファイバテープ7を構成する光ファイバの長さにばらつきがある場合には、光ファイバテープ7を構成する複数の光ファイバのうちの少なくともいずれかの隣接する2本の光ファイバにおいて、短い方の光ファイバを第1光ファイバ8Aとし、長い方の光ファイバ(第1光ファイバ8Aと隣接する光ファイバ)を第2光ファイバ8Bとしたときに、第1光ファイバ8Aに対する第2光ファイバ8Bの線長差をc(%)が、前述の線長差cの条件(数4に示す条件式、且つ、c<0.05)を満たしていれば良い。また、前述の線長差cの条件(数4に示す条件式、且つ、c<0.05)を満たす第2光ファイバ8Bは、1本に限られず、2本以上存在しても良い。
【0075】
図11は、光ファイバ8の長さにばらつきがある場合の第2光ファイバ8Bの変形量Xの説明図である。
図11は、第2光ファイバ8Bの非連結部9Bにおける光ファイバテープ7の断面の説明図である。
【0076】
線長差cが前述の条件(数4に示す条件式、且つ、c<0.05)を満たす場合、第1光ファイバ8Aに対する第2光ファイバ8Bの変形量Xは、ファイバピッチYよりも大きくなる(言い換えると、図中の角度θは45度未満になる)。このため、線長差cが、前述の条件(数4に示す条件式、且つ、c<0.05)を満たす場合には、第2光ファイバ8Bが第1光ファイバ8Aに対して、少なくとも光ファイバ1本分以上に突出する。これにより、テープ面から浮き上がっている第2光ファイバ8Bによって、別の光ファイバテープ7(不図示;
図11の光ファイバテープの上側に重ねられる光ファイバテープ)の姿勢を崩すことができ、これにより、積層状態を崩した状態で複数の光ファイバテープ7を集合させることができる。
【0077】
なお、
図11では、第2光ファイバ8Bの中心をO2とし、第2光ファイバ8Bの図中右側に隣接する第1光ファイバ8Aの中心をO1とし、中心O1からテープ幅方向に延ばした線と、中心O2からテープ厚さ方向に延ばした線との交点を点O’としている。既に説明した通り、本実施形態では、点O’と中心O2を結ぶ線と中心O1と中心O2とを結ぶ線との角度(角O’-O2-O1)をθ(度)としたとき、角度θは45度未満になる。これにより、第2光ファイバ8Bが第1光ファイバ8A(第2光ファイバ8Bの右側に隣接する光ファイバ)に対して、少なくとも光ファイバ1本分以上に突出する。
【0078】
また、本実施形態では、仮に第2光ファイバ8Bの図中左側に隣接する光ファイバを第1光ファイバ8Aとし、その中心をO1として、角O’-O2-O1をθ(度)としたときにも、角度θが45度未満になることが望ましい。つまり、第2光ファイバ2Bの一方に隣接する光ファイバ8を第1光ファイバ8Aとした場合にも、他方に隣接する光ファイバ8を第1光ファイバ8Aとした場合にも、第1光ファイバ8Aに対する第2光ファイバ8Bの線長差cが前述の条件(数4に示す条件式、且つ、c<0.05)を満たすことが望ましい。これにより、第2光ファイバ8Bが両側に隣接する光ファイバ8(第1光ファイバ8A)に対して、少なくとも光ファイバ1本分以上に突出する。これにより、第2光ファイバ8Bによって、別の光ファイバテープ7(不図示;
図11の光ファイバテープの上側に重ねられる光ファイバテープ)の姿勢を更に崩し易くなる。
【0079】
===その他の実施形態===
上述の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更・改良され得ると共に、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。また、上述の各実施形態が適宜組み合わせられてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 光ケーブル、2 光ファイバユニット、
3 外被、4 テンションメンバ、5 押え巻きテープ、
7 光ファイバテープ、8 光ファイバ、
8A 第1光ファイバ、8B 第2光ファイバ、
9A 連結部、9B 非連結部、
91 連結区間、92 非連結区間、
10 バンドル材、15 接合部、
20 ユニット製造装置、30 テープ供給部、
40 集合部、
50 バンドル取付部、60 バンドル接合部、
100 ユニット形成部