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特許7422237変異型LysEを含む微生物、およびこれを利用したL-アミノ酸生産方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】変異型LysEを含む微生物、およびこれを利用したL-アミノ酸生産方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/31 20060101AFI20240118BHJP
   C12N 15/10 20060101ALI20240118BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240118BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240118BHJP
   C12P 13/04 20060101ALI20240118BHJP
   C12P 13/08 20060101ALI20240118BHJP
   C12P 13/10 20060101ALI20240118BHJP
   C07K 14/34 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
C12N15/31 ZNA
C12N15/10 200Z
C12N15/63 Z
C12N1/21
C12P13/04
C12P13/08 A
C12P13/10 B
C07K14/34
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022543765
(86)(22)【出願日】2021-02-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-27
(86)【国際出願番号】 KR2021001793
(87)【国際公開番号】W WO2021162459
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-07-19
(31)【優先権主張番号】10-2020-0017559
(32)【優先日】2020-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【微生物の受託番号】KCCM  KCCM12641P
(73)【特許権者】
【識別番号】507406611
【氏名又は名称】シージェイ チェルジェダン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ジェウォン
(72)【発明者】
【氏名】シム,ジヒュン
(72)【発明者】
【氏名】パク,サン・ミン
(72)【発明者】
【氏名】ベ,ヒュン・ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ビュン,ヒョ・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】シン,ヨン・ウク
(72)【発明者】
【氏名】イ,ハン・ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イム,ボラム
(72)【発明者】
【氏名】ジュン,ム・ヨン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,ユン・ジュン
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-166592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00- 15/90
C12P 1/00- 41/00
C12N 1/00- 7/08
C07K 1/00- 19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列でN-末端から65番目アミノ酸であるアスパラギンが他のアミノ酸で置換された、ポリペプチド。
【請求項2】
前記65番目アミノ酸であるアスパラギンがグルタミン酸、アルギニン、バリン、リジン、ヒスチジン、ロイシン、アラニン、フェニルアラニン、アスパラギン酸、イソロイシン、トリプトファン、プロリン、システイン、チロシン、セリン、スレオニン、メチオニン、グルタミン、またはグリシンで置換された、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
L-アミノ酸排出体の機能を有する、請求項1または2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
請求項1または2に記載のポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項5】
配列番号4の核酸配列で表現される、請求項4に記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
請求項4に記載のポリヌクレオチドを含む、組換えベクター。
【請求項7】
請求項1に記載のポリペプチド、これをコードするポリヌクレオチド、または前記ポリヌクレオチドを含む組換えベクターを含む、L-アミノ酸生産微生物であって、
前記微生物は、コリネバクテリウム属微生物またはエシェリキア属微生物である、L-アミノ酸生産微生物。
【請求項8】
前記ポリペプチドは、L-アミノ酸排出体の機能を有するものである、請求項7に記載のL-アミノ酸生産微生物。
【請求項9】
前記ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、前記微生物と同種微生物に由来のものである、請求項7に記載のL-アミノ酸生産微生物。
【請求項10】
前記微生物は、コリネバクテリウム・グルタミカムまたは大腸菌である、請求項7に記載のL-アミノ酸生産微生物。
【請求項11】
非変形の微生物と比較してL-アミノ酸排出能または生産能が増加した、請求項7~10のいずれか一項に記載のL-アミノ酸生産微生物。
【請求項12】
前記L-アミノ酸は、L-リジン、L-アルギニン、またはこれらの組み合わせである、請求項7~10のいずれか一項に記載のL-アミノ酸生産微生物。
【請求項13】
請求項7~10のいずれか一項に記載のL-アミノ酸生産微生物を培地で培養する段階を含む、L-アミノ酸の生産方法。
【請求項14】
前記培養する段階の後に、前記培養された微生物、培地、またはこれらの全てからL-アミノ酸を回収する段階、を追加的に含む、請求項13に記載のL-アミノ酸の生産方法。
【請求項15】
前記L-アミノ酸は、L-リジン、L-アルギニン、またはこれらの組み合わせである、請求項13に記載のL-アミノ酸の生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願らとの相互引用
本出願は、2020年2月13日付大韓民国特許出願第10-2020-0017559号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
変異型LysEを含む微生物、およびこれを利用したL-アミノ酸生産方法が提供される。前記変異型LysEは、野生型と比較してL-アミノ酸排出能および/または生産能を向上させるものであり得る。
【背景技術】
【0003】
コリネバクテリウム(Corynebacterium)属微生物は、L-アミノ酸の生産に多く利用されているグラム陽性の微生物である。L-アミノ酸、特にL-リジンは、動物飼料、ヒトの医薬品および化粧品産業に使用されており、主にコリネバクテリウム菌株を利用した発酵により生成されている。
【0004】
コリネバクテリウム属菌株を利用したL-アミノ酸の製造方法を改善するために、多くの試みが行われている。その中で組換えDNA技術を利用して特定の遺伝子を破壊させたり減衰発現させることによってL-アミノ酸を生産するコリネバクテリウム菌株を改良しようとする研究がなされている。また、それぞれのL-アミノ酸生合成に関する遺伝子を増幅させてL-アミノ酸生成に及ぼす効果を分析してL-アミノ酸生産のコリネバクテリウム菌株を改良するための研究が行われてきている。また、他のバクテリア由来の外来遺伝子を導入する試みもある。
【0005】
このような努力にも拘らず、L-アミノ酸のような有用物質の生産能を向上させる技術の開発は依然として要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一例は、変異型リジン排出体を提供する。例えば、前記変異型リジン排出体は、配列番号1のアミノ酸配列でN-末端から65番目アミノ酸であるアスパラギン(Asn、N)が他のアミノ酸で置換されたポリペプチドであり得る。前記ポリペプチドは、L-アミノ酸(例、L-リジン、L-アルギニン、これらの組み合わせなど)排出体の機能を有するものであり得る。
【0007】
他の例は、前記ポリペプチド(変異型リジン排出体)をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0008】
他の例は、前記ポリヌクレオチドを含む組換えベクターを提供する。
【0009】
他の例は、前記ポリペプチド、これをコードするポリヌクレオチド、または前記ポリヌクレオチドを含む組換えベクターを含む、組換え微生物を提供する。前記組換え微生物は、L-アミノ酸排出能および/または生産能を有するか、または非変形の微生物と比較して増加したL-アミノ酸排出能および/または生産能を有するものであり得る。
【0010】
他の例は、前記組換え微生物またはL-アミノ酸生産微生物を培養する段階を含む、L-アミノ酸生産方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書で提供される一例は、コリネバクテリウム属微生物のリジン生産能に対する遺伝子変異の影響を確認し、これを利用した菌株改良と関連した技術を提供する。一般的にリジン生産能の増加のためには、菌株が有するリジン生産収率を向上させるか、または時間当たりリジン生産量(生産性)を増加させる方法がある。その一環で、生合成を経て生成されたリジンを排出する機能を有する膜蛋白質であるL-リジン排出体蛋白質を改良してリジン生産収率および/または生産性を向上させ得ることを提案する。本明細書で提供される一例は、前記L-リジン排出体蛋白質および/またはこれをコードするlysE遺伝子を改良してL-アミノ酸(例、L-リジン、L-アルギニン、これらの組み合わせなど)の排出能が向上した菌株を開発することと関連した技術を提供する。
【0012】
一例は、変異型リジン排出体を提供する。例えば、前記変異型リジン排出体は、配列番号1のアミノ酸配列でN-末端から65番目アミノ酸であるアスパラギン(Asn、N)が他のアミノ酸で置換されたポリペプチドであり得る。前記ポリペプチドは、L-アミノ酸(例、L-リジン、L-アルギニン、これらの組み合わせなど)排出体機能を有するものであり得る。
【0013】
他の例は、前記ポリペプチド(変異型リジン排出体)をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0014】
他の例は、前記ポリヌクレオチドを含む組換えベクターを提供する。前記組換えベクターは発現ベクターとして使用することができる。
【0015】
他の例は、前記ポリペプチド、これをコードするポリヌクレオチド、または前記ポリヌクレオチドを含む組換えベクターを含む、組換え微生物を提供する。前記組換え微生物は、L-アミノ酸排出能および/または生産能を有するか、または非変形の微生物と比較して増加したL-アミノ酸排出能および/または生産能を有するものであり得る。
【0016】
他の例は、前記組換え微生物またはL-アミノ酸生産微生物を培養する段階を含む、L-アミノ酸生産方法を提供する。
【0017】
前記L-アミノ酸は、L-リジン、L-アルギニン、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0018】
前記微生物は、コリネバクテリウム属またはエシェリキア属微生物であり得る。
【0019】
以下、より詳しく説明する。
【0020】
本明細書において、リジン排出体(Lysine exporter protein;LysE)は、膜透過蛋白質のうちの一つで、細胞内で生合成された産物、例えば、L-リジンのようなL-アミノ酸を細胞外に排出する作用をする蛋白質を意味し得る。一例において、前記リジン排出体蛋白質は、コリネバクテリウム属菌株、例えば、コリネバクテリウム・グルタミカムに由来するものであり得る。一具体例において、前記リジン排出体蛋白質は、配列番号1で表現されるものであり得る。
【0021】
前記変異型リジン排出体は、前述したリジン排出体にアミノ酸置換突然変異が誘導されたポリペプチドであり得る。一例において、前記変異型リジン排出体は、配列番号1のアミノ酸配列でN-末端から65番目アミノ酸であるアスパラギン(N)が他のアミノ酸で置換されたもの(e.g., 配列番号1のアミノ酸配列でN-末端から65番目アミノ酸であるアスパラギンが他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列で表現されるもの)であり得る。より具体的に、前記変異型リジン排出体は、配列番号1のアミノ酸配列でN-末端から65番目アミノ酸であるアスパラギン(N)がグルタミン酸(E)、グリシン(G)、アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T)、システイン(C)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、メチオニン(M)、プロリン(P)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)、アスパラギン酸(D)、グルタミン(Q)、ヒスチジン(H)、リジン(K)、またはアルギニン(R)で置換されたものであり得る。一具体例において、前記変異型リジン排出体は、配列番号3で表現されるポリペプチド(65番目アミノ酸であるアスパラギン(N)がグルタミン酸(E)で置換)であり得るが、これに制限されるのではない。このように変異が誘導されたポリペプチドは、L-アミノ酸(例、L-リジン、L-アルギニン、これらの組み合わせなど)排出体機能を有するものであり得る。
【0022】
本明細書において、用語「L-アミノ酸生産微生物」は、L-アミノ酸排出能および/または生産能を有する微生物に前述したようなリジン排出体変異が導入されることによって前記微生物が増加したL-アミノ酸排出能および/または生産能を有する場合および/またはL-アミノ酸排出能および/または生産能を有していない微生物に前記リジン排出体変異が導入されることによって前記微生物がL-アミノ酸排出能および/または生産能を有するようになる場合を意味するために使用され得る。本明細書で「微生物」は、単細胞バクテリアを含むもので、「細胞」と混用され得る。
【0023】
前記L-アミノ酸は、L-リジン、L-アルギニン、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0024】
一例において、前記微生物は、L-アミノ酸(例えば、L-リジン、L-アルギニン、またはこれらの組み合わせ)排出能および/または生産能を有する全ての微生物から選択されたものであり得る。一例において、前記微生物は、自然にL-アミノ酸排出能および/または生産能を有する微生物またはL-アミノ酸排出能および/または生産能がないかまたは顕著に少ない親株に変異が導入されてL-アミノ酸排出能および/または生産能を有する微生物であり得る。
【0025】
一具体例において、前記微生物は、自然にL-アミノ酸排出能および/または生産能を有する微生物またはL-アミノ酸排出能および/または生産能がないかまたは顕著に少ない親株に変異が導入されてL-アミノ酸排出能および/または生産能を有する全てのコリネバクテリウム属(genus Corynebacterium)微生物、エシェリキア属微生物の中で選択された1種以上であり得る。前記コリネバクテリウム属微生物は、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、コリネバクテリウム・アムモニアゲネス(Corynebacterium ammoniagenes)、 ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)、ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)、コリネバクテリウム・サーモアミノゲネス(Corynebacterium thermoaminogenes)、コリネバクテリウム・エフィシエンス(Corynebacterium efficiens)などを含むことができるが、必ずしもこれに限定されるのではない。より具体的には、前記コリネバクテリウム属微生物は、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)であり得る。前記エシェリキア属菌株は、大腸菌(Escherichia coli)であり得る。
【0026】
一例において、リジン排出体の変異が導入されたL-アミノ酸生産微生物は、同種の非変形の微生物と比較して、L-アミノ酸排出能および/または生産能が増加したものであり得る。前記非変形の微生物は、リジン排出体変異が導入されていない同種の微生物または導入される前の微生物を意味し得る。
【0027】
本明細書において、リジン排出体変異が導入される前の微生物を前記リジン排出体変異が導入されてL-アミノ酸排出能および/または生産能が増加したり、L-アミノ酸排出能および/または生産能が付与された「L-アミノ酸生産微生物」と区別するために、前記リジン排出体変異が導入される前の微生物を宿主微生物または親株と表現することができる。
【0028】
本明細書において、「リジン排出体変異の導入」は、宿主微生物に前述の変異型リジン排出体が導入される全ての操作を意味し得る。
【0029】
前記「リジン排出体変異が導入されたL-アミノ酸生産微生物」は、(1)前述した変異型リジン排出体、例えば、配列番号1のアミノ酸配列でN-末端から65番目アミノ酸であるアスパラギン(N)が他のアミノ酸で置換されたポリペプチド、(2)これをコードするポリヌクレオチド、または(3)前記ポリヌクレオチドを含む組換えベクターを含んで、L-アミノ酸排出能および/または生産能が増加したり、L-アミノ酸排出能および/または生産能が付与された微生物であり得る。
【0030】
前記変異型リジン排出体、例えば、配列番号1のアミノ酸配列でN-末端から65番目アミノ酸であるアスパラギン(N)が他のアミノ酸で置換されたポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはこれを含む組換えベクターを含む微生物は、
(i)自己の遺伝体(genome)に加えて、前記ポリヌクレオチドまたは前記組換えベクターを追加的に含むか、および/または
(ii)内在のリジン排出体コード遺伝子(例えば、LysE遺伝子)であって、前記ポリヌクレオチドを含むものを意味し得る。
【0031】
前記(ii)「内在のリジン排出体コード遺伝子(例えば、LysE遺伝子)であって、前記ポリヌクレオチドを含む」とは、(a)前記ポリヌクレオチドが内在のリジン排出体コード遺伝子(例えば、LysE遺伝子)を代替して含まれる(挿入される)か、および/または(b)内在のリジン排出体暗号化遺伝子(例えば、LysE遺伝子)が遺伝子編集(gene editing)技術により前記ポリヌクレオチドの核酸配列(つまり、変異型リジン排出体のコード核酸配列)を有するように変移されることを意味するものであり得る。
【0032】
一例において、前記リジン排出体またはこれをコードする遺伝子は。宿主微生物由来(内在)のものまたはこれと異なる微生物由来(外来)のものであり得る。
【0033】
一具体例において、前記L-アミノ酸生産微生物は、配列番号1のアミノ酸配列でN-末端から65番目アミノ酸であるアスパラギン(N)がグルタミン酸(E)、グリシン(G)、アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T)、システイン(C)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、メチオニン(M)、プロリン(P)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)、アスパラギン酸(D)、グルタミン(Q)、ヒスチジン(H)、リジン(K)、およびアルギニン(R)からなる群より選択されたアミノ酸で置換されたアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドおよび/またはこれを含む組換えベクターを含む微生物であり得る。より具体的に、前記L-アミノ酸生産微生物は、配列番号1のアミノ酸配列でN-末端から65番目アミノ酸であるアスパラギン(N)がグルタミン酸(E)で置換されたアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドおよび/またはこれを含む組換えベクターを含むものであり得、より具体的に、配列番号3のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドおよび/またはこれを含む組換えベクターを含むコリネバクテリウム属微生物、例えば、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)であり得る。例えば、前記L-アミノ酸生産微生物は、寄託番号KCCM12641Pであるものであり得る。
【0034】
本明細書において、ポリヌクレオチド(「遺伝子」と混用され得る)またはポリペプチド(「蛋白質」と混用され得る)が「特定の核酸配列またはアミノ酸配列を含む、または特定の核酸配列またはアミノ酸配列で表現される」とは、前記ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが前記特定の核酸配列またはアミノ酸配列からなるか、これを必須で含むことを意味し得、前記ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの本来の機能および/または目的とする機能を維持する範囲で前記特定の核酸配列またはアミノ酸配列に変異(欠失、置換、変形、および/または付加)が加えられた「実質的に同等な配列」を含むもの(または前記変異を排除しないもの)と解釈され得る。
【0035】
一例において、本明細書で提供される核酸配列またはアミノ酸配列は、これらの本来の機能または目的とする機能を維持する範囲で通常の突然変異誘発法、例えば指向性進化法(direct evolution)および/または部位特異突然変異法(site-directed mutagenesis)などにより変形されたものを含むことができる。一例において、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが「特定の核酸配列またはアミノ酸配列を含む、前記配列からなる、または表現される」とは、前記ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが(i)前記特定の核酸配列またはアミノ酸配列からなるか、またはこれを必須で含むか、または(ii)前記特定の核酸配列またはアミノ酸配列と60%以上、70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.5%以上、または99.9%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるか、これを必須で含み、本来の機能および/または目的とする機能を維持することを意味し得る。本明細書において、前記本来の機能は、リジン排出体機能(アミノ酸配列の場合)、または前記リジン排出体機能を有する蛋白質をコードする機能(核酸配列の場合)であり得、前記目的とする機能は、微生物のL-アミノ酸(例えば、L-リジン、L-アルギニン、またはこれらの組み合わせ)排出能および/または生産能を増加させたり付与した機能を意味し得る。
【0036】
本明細書に記載された核酸配列は、コドンの縮退性(degeneracy)により前記蛋白質(リジン排出体)を発現させようとする微生物で好まれるコドンを考慮して、コーディング領域から発現する蛋白質のアミノ酸配列および/または機能を変化させない範囲内でコーディング領域に多様な変形が行われ得る。
【0037】
本出願で用語、「相同性(homology)」または「同一性(identity)」は、二つの与えられたアミノ酸配列または塩基配列間の関連した程度を意味し、百分率で表示され得る。相同性および同一性の用語は、時々相互交換的に利用され得る。
【0038】
保存された(conserved)ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの配列相同性または同一性は、標準配列アルゴリズムにより決定され、使用されるプログラムにより確立されたデフォルトギャップペナルティが共に利用され得る。実質的に、相同性を有するか(homologous)または同一な(identical)配列は、一般的に配列全体または全体-長さの少なくとも約50%、60%、70%、80%または90%により中間またはストリンジェントな条件(stringent conditions)でハイブリダイズすることができる。ハイブリダイズは、ポリヌクレオチドで一般コドンまたはコドン縮退性を考慮したコドンを含有するポリヌクレオチドも含まれることが自明である。
【0039】
任意の二つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列が相同性、類似性または同一性を有するか否かは、例えば、Pearson et al (1988)[Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85] 2444でのようなデフォルトパラメータを利用して「FASTA」プログラムのような公知のコンピュータアルゴリズムを利用して決定され得る。または、EMBOSSパッケージのニードルマンプログラム(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite, Rice et al., 2000, Trends Genet. 16: 276-277)(バージョン5.0.0または以降のバージョン)で行われるような、ニードルマン-ブンシュ(Needleman-Wunsch)アルゴリズム(Needleman and Wunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48: 443-453)が使用されて決定され得る(GCGプログラムパッケージ(Devereux, J., et al, Nucleic Acids Research 12: 387 (1984)), BLASTP, BLASTN, FASTA (Atschul, [S.] [F.,] [ET AL, J MOLEC BIOL 215]: 403 (1990); Guide to Huge Computers, Martin J. Bishop, [ED.,] Academic Press, San Diego,1994,および[CARILLO ETA/.](1988) SIAM J Applied Math 48: 1073を含む)。例えば、国立生物工学情報データベースセンターのBLAST、またはClustalWを利用して相同性、類似性または同一性を決定することができる。
【0040】
ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの相同性、類似性または同一性は、例えば、Smith and Waterman, Adv. Appl. Math (1981) 2:482に公知されたとおり、例えば、Needleman et al. (1970), J Mol Biol. 48:443のようなGAPコンピュータプログラムを利用して配列情報を比較することによって決定され得る。要約すれば、GAPプログラムは、二つの配列のうち、より短いものにおける記号の全体数で、類似の配列された記号(つまり、ヌクレオチドまたはアミノ酸)の数を割った値で定義することができる。GAPプログラムのためのデフォルトパラメータは(1)2進法比較マトリックス(同一性のために1、そして非同一性のために0の値を含有する)およびSchwartz and Dayhoff, eds., Atlas Of Protein Sequence And Structure, National Biomedical Research Foundation, pp. 353-358 (1979)により開示されたとおり、Gribskov et al(1986) Nucl. Acids Res. 14: 6745の加重された比較マトリックス(またはEDNAFULL(NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)置換マトリックス);(2)各ギャップのための3.0のペナルティおよび各ギャップで各記号のための追加の0.10ペナルティ(またはギャップ開放ペナルティ10、ギャップ延長ペナルティ0.5;および3末端ギャップのための無ペナルティを含むことができる。
【0041】
また、任意の二つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列が相同性、類似性または同一性を有するか否かは定義されたストリンジェントな条件下でサザンハイブリダイゼーション実験により配列を比較することによって確認することができ、定義される適切なハイブリダイゼーション条件は当該技術範囲内であり、当業者によく知られた方法(例えば、J. Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory press, Cold Spring Harbor, New York, 1989; F.M. Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc., New York)で決定され得る。
【0042】
前記ポリヌクレオチドまたはベクター導入は、公知の形質転換方法を当業者が適切に選択して行われ得る。本明細書において、用語「形質転換」は、標的蛋白質(リジン排出体)をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを宿主微生物内に導入して宿主細胞内で前記ポリヌクレオチドがコードする蛋白質が発現することができるようにすることを意味する。形質転換されたポリヌクレオチドは、宿主微生物内で発現さえできれば、宿主微生物の染色体内に挿入されて位置するかまたは染色体外に位置するかに関係なしにこれら全てを含むことができる。また、前記ポリヌクレオチドは、標的蛋白質をコーディングするDNAおよび/またはRNAを含む。前記ポリヌクレオチドは、宿主微生物内に導入されて発現できるものであれば、その導入される形態は制限がない。例えば、前記ポリヌクレオチドは、独自的に発現するのに必要な全ての要素を含む遺伝子構造体である発現カセット(expression cassette)の形態で宿主微生物に導入され得る。前記発現カセットは、通常前記ポリヌクレオチドに作動可能に連結されているプロモーター(promoter)、転写終結信号、リボソーム結合部位および/または翻訳終結信号などの発現調節要素を含むことができる。前記発現カセットは、自己複製が可能な発現ベクターの形態であり得る。また、前記ポリヌクレオチドは、それ自体の形態で宿主細胞に導入されて宿主細胞で発現に必要な配列と作動可能に連結されているものであってもよい。前記で用語「作動可能に連結」されたものとは、発現調節要素が目的蛋白質(リジン排出体)をコードするポリヌクレオチドの転写調節(例、転写開始)を行うことができるように発現調節要素(例、プロモーター)とポリヌクレオチドが機能的に連結されていることを意味し得る。作動可能な連結は、当業界の公知の遺伝子組換え技術を利用して行うことができ、例えば、通常の部位-特異的DNA切断および連結により行われ得るが、これに制限されない。
【0043】
前記ポリヌクレオチドを宿主微生物に形質転換する方法は、核酸を細胞(微生物)内に導入する如何なる方法でも遂行可能であり、宿主微生物により当該分野で公知の形質転換技術を適切に選択して行うことができる。前記公知の形質転換方法としと電気穿孔法(electroporation)、リン酸カルシウム(CaPO)沈澱法、塩化カルシウム(CaCl)沈澱法、マイクロインジェクション法(microinjection)、ポリエチレングリコール(PEG)沈澱法(polyethylene glycol-mediated uptake)、DEAE-デキストラン法、陽イオンリポソーム法、リポフェクション(lipofection)、酢酸リチウム-DMSO法などを例示することができるが、これに制限されるのではない。
【0044】
前記ポリヌクレオチドの宿主細胞遺伝体(染色体)内挿入または宿主細胞内在遺伝子(例えば、LysE遺伝子)が変異型リジン排出体をコードするようにする変異導入は、公知の方法を当業者が適切に選択して行うことができ、例えば、RNA-ガイドエンドヌクレアーゼシステム(RNA-guided endonuclease system;例えば、(a)RNA-ガイドエンドヌクレアーゼ(例、Cas9蛋白質など)、そのコード遺伝子、または前記遺伝子を含むベクター;および(b)ガイドRNA(例、single guide RNA(sgRNA)など)、そのコードDNA、または前記DNAを含むベクターを含む混合物(例えば、RNA-ガイドエンドヌクレアーゼ蛋白質とガイドRNAの混合物など)、複合体(例えば、リボ核酸融合蛋白質(RNP)、組換えベクター(例えば、RNA-ガイドエンドヌクレアーゼコード遺伝子およびガイドRNAコードDNAを共に含むベクターなど)などからなる群より選択された一つ以上)を使用して行うことができるが、これに制限されるのではない。
【0045】
他の例は、変異型リジン排出体、例えば、配列番号1のアミノ酸配列でN-末端から65番目アミノ酸であるアスパラギン(Asn、N)が他のアミノ酸で置換されたポリペプチド、そのコードポリヌクレオチドまたは前記ポリヌクレオチドを含む組換えベクターを微生物に導入(形質転換)させる段階を含む、前記微生物のL-アミノ酸排出能および/または生産能増加方法または前記微生物にL-アミノ酸排出能および/または生産能付与方法を提供する。
【0046】
前記変形リジン排出体、ポリヌクレオチド、および微生物は前述したとおりである。
【0047】
本明細書において、用語「ベクター」は、適した宿主内で目的蛋白質を発現させることができるように適した調節配列に作動可能に連結された前記目的蛋白質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列を含有するDNA製造物を意味する。前記調節配列は、転写を開始できるプロモーター、転写を調節するための任意のオペレーター配列、適したmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、および/または転写および/または解読の終結を調節する配列を含むことができる。ベクターは、適当な宿主微生物内に形質転換された後、宿主微生物のゲノム(遺伝体)と関係なく発現したり、宿主微生物のゲノム内に統合され得る。
【0048】
本明細書で使用可能なベクターは、宿主細胞内で複製可能なものであれば特に限定されず、通常使用される全てのベクターの中で選択され得る。通常使用されるベクターの例としては、天然状態または組換えられた状態のプラスミド、コスミド、ウイルス、バクテリオファージなどが挙げられる。例えば、前記ベクターとして、ファージベクターまたはコスミドベクターとしてpWE15、M13、MBL3、MBL4、IXII、ASHII、APII、t10、t11、Charon4A、およびCharon21Aなどを使用することができ、プラスミドベクターとしてpBR系、pUC系、pBluescriptII系、pGEM系、pTZ系、pCL系およびpET系などを使用することができる。具体的には、pDZ、pACYC177、pACYC184、pCL、pECCG117、pUC19、pBR322、pMW118、pCC1BACベクターなどを例示することができるが、これに制限されない。
【0049】
本明細書で使用可能なベクターは、公知の発現ベクターおよび/またはポリヌクレオチドの宿主細胞染色体内挿入用ベクターであり得る。前記ポリヌクレオチドの宿主細胞染色体内挿入は、当業界に知られた任意の方法、例えば、相同組換えにより行われ得るが、これに限定されない。前記ベクターは、前記染色体内挿入の有無を確認するための選別マーカ(selection marker)を追加的に含むことができる。前記選別マーカは、ベクターに形質転換された細胞を選別、つまり、前記ポリヌクレオチドの挿入有無を確認するためのものであり、薬物耐性、栄養要求性、細胞毒性剤に対する耐性または表面蛋白質の発現のような選択可能表現型を付与した遺伝子の中で選択して使用することができる。選択剤(selective agent)が処理された環境では選別マーカを発現する細胞だけが生存したり他の表現形質を示すため、形質転換された細胞を選別することができる。
【0050】
他の例は、前記L-アミノ酸生産微生物を培地で培養する段階を含む、L-アミノ酸の生産方法を提供する。前記方法は、前記培養する段階の後に、前記培養した微生物、培地、またはこれらの全てからL-アミノ酸を回収する段階を追加的に含むことができる。
【0051】
前記方法において、前記微生物を培養する段階は、特にこれに制限されないが、公知の回分式培養方法、連続式培養方法、流加格式培養方法などにより行うことができる。この時、培養条件は、特にこれに制限されないが、塩基性化合物(例:水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたはアンモニア)または酸性化合物(例:リン酸または硫酸)を使用して適正pH(例えば、pH5~9、具体的にはpH6~8、最も具体的にはpH6.8)を調節することができ、酸素または酸素-含有ガス混合物を培養物に導入させて好気性条件を維持することができる。培養温度は20~45℃、または25~40℃を維持することができ、約10~160時間培養することができるが、これに制限されるのではない。前記培養により生産されたL-アミノ酸(例、L-リジン、L-アルギニン、またはこれらの組み合わせ)は培地中に分泌されたり細胞内に残留することができる。
【0052】
前記培養に使用可能な培地は、微生物培養に通常使用される培地の中で選択され得る。一例において、前記培地は、炭素供給源として糖および炭水化物(例:グルコース、スクロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、モラセス、デンプンおよびセルロース)、油脂および脂肪(例:大豆油、ヒマワリ種子油、ピーナッツ油およびココナッツ油)、脂肪酸(例:パルミチン酸、ステアリン酸およびリノレン酸)、アルコール(例:グリセロールおよびエタノール)、有機酸(例:酢酸)などからなる群より選択された1種以上を個別的に使用したりまたは2種以上を混合して使用することができるが、これに制限されない。窒素供給源としては、窒素-含有有機化合物(例:ペプトン、酵母抽出液、肉汁、麦芽抽出液、とうもろこし浸漬液、 大豆粕粉およびウレア)、無機化合物(例:硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウムおよび硝酸アンモニウム)などからなる群より選択された1種以上を個別的に使用したりまたは2種以上を混合して使用することができるが、これに制限されない。リン供給源としてリン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、これに相応するナトリウム含有塩などからなる群より選択された1種以上を個別的に使用したりまたは2種以上を混合して使用することができるが、これに制限されない。また、前記培地は、その他金属塩(例:硫酸マグネシウムまたは硫酸鉄)、アミノ酸、および/またはビタミンなどのような必須成長-促進物質を含むことができる。
【0053】
前記L-アミノ酸(例、L-リジン、L-アルギニン、またはこれらの組み合わせ)を回収する段階は、培養方法により当該分野に公知の適した方法を利用して培地、培養液、または微生物から目的とするアミノ酸を収集するものであり得る。例えば、前記回収する段階は、遠心分離、ろ過、陰イオン交換クロマトグラフィー、結晶化、HPLCなどから選択された一つ以上の方法で行うことができる。前記方法は、前記回収する段階の前、同時、または後に、精製段階を追加的に含むことができる。
【発明の効果】
【0054】
リジン生産菌株の内在的lysE遺伝子に変異を導入することによって、前記リジン生産菌株のL-アミノ酸(例、L-リジン、L-アルギニン、またはこれらの組み合わせ)生産能を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、これは例示的なものに過ぎず、本発明の範囲を制限しようとすることでない。下記に記載された実施例は、発明の本質的な要旨を逸脱しない範囲で変形可能であることは当業者に自明である。
【0056】
実施例1:lysE遺伝子ORF内変異導入用ベクターライブラリーの作製
L-リジン排出体の排出能が向上した酵素を探索するために、lysE変異型遺伝子を獲得するための目的で下記の方法でライブラリーを作製した。
【0057】
GenemorphII Random Mutagenesis Kit(Stratagene)を使用し、lysE遺伝子(711 bp;配列番号2)を含むDNA断片のkb当たり0-4.5個の変異を導入した。コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032(WT)の遺伝体DNAを鋳型とし、下記表1の配列番号5および6のプライマーを利用してError-prone PCRを行った。WT菌株(ATCC13032)の遺伝体DNA(500ng)、プライマー(それぞれ125ng)、Mutazyme II reaction buffer(1×)、dNTP mix(40mM)、およびMutazyme II DNA polymerase(2.5U)を含む反応液を94℃で2分間変性後、94℃で1分変性、56℃で1分アニーリング、72℃で30秒重合を30回繰り返した後、72℃で10分間重合反応を行った。このような過程で確保された遺伝子断片を、制限酵素BamHI-HF(NEB)を37℃で1時間反応および37℃でCIP(NEB)酵素30分処理後に取得したpECCG117ベクター(大韓民国登録特許第0057684号)と連結し、大腸菌DH5αに形質転換してカナマイシン(25mg/l)が含まれているLB固体培地に塗抹した。
【0058】
形質転換されたコロニー20種を選別した後、プラスミドを獲得し、塩基配列を分析した結果、0.5mutations/kb頻度で互いに異なる位置に変異が導入されたことを確認した。最終的に約10,000個の形質転換された大腸菌コロニーを取ってplasmidprep kit(QIAGEN)を利用してプラスミドを抽出し、これをp117-lysE(mt)ライブラリーと命名した。またスクリーニングで対照区として使用するためにpECCG117ベクターに野生型lysEが導入されたベクターを作製した。配列番号5および6を使用してPCRを行って野生型lysE遺伝子断片を準備し、前記のような方法でp117-lysE(WT)ベクターを作製した。PCR条件は、94℃で2分間変性後、94℃で1分変性、56℃で1分アニーリング、72℃で30秒重合を30回繰り返した後、72℃で10分間重合反応を行った。
【0059】
前記使用されたプライマーの核酸配列を下記の表1に整理した。
【0060】
【表1】
【0061】
実施例2:ベクターライブラリー導入菌株の作製およびスクリーニング
野生型のコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032でlysE遺伝子が欠損された菌株を作製するために、lysE遺伝子を欠損するためのベクターを作製した。具体的に、lysE遺伝子の5’および3’末端に位置したDNA断片(各600bp)がpDZベクター(US 9109242 B2)に連結された形態の組換えベクターを作製した。lysE遺伝子の塩基配列(配列番号2)に基づいてプライマー配列番号7および8およびこれらからそれぞれ600bp離れた位置でプライマー配列番号9および10をそれぞれ合成した(表2参照)。
【0062】
コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032の遺伝体DNAを鋳型として配列番号7および9のプライマーを使用してPCRを行い、lysE遺伝子の5’末端遺伝子断片を準備した。同様な方法で、配列番号8および10のプライマーを利用してPCRを行い、lysE遺伝子の3’末端に位置した遺伝子断片を準備した。前記PCRは94℃で2分間変性後、94℃で1分変性、56℃で1分アニーリング、72℃で30秒重合を30回繰り返した後、72℃で10分間重合反応を行って進行した。増幅されたDNA断片をQuiagen社のPCR Purification kitを使用して精製した後、ベクター作製のための挿入DNA断片として使用した。
【0063】
一方、制限酵素XbaIで処理した後、65℃で20分間熱処理したpDZベクター(US9109242 B2)と前記PCRを通じて増幅して準備された挿入DNA断片をInfusion Cloning Kitを使用して連結した後、大腸菌DH5αに形質転換し、カナマイシン(25mg/l)が含まれているLB固体培地に塗抹した。プライマー配列番号7および8を利用したPCRを通じて目的とする遺伝子が挿入されたベクターに形質転換されたコロニーを選別した後、通常知られたプラスミド抽出法を利用してプラスミドを獲得し、これをpDZ-ΔlysEと命名した。
【0064】
前記使用されたプライマーの核酸配列を下記の表2に整理した。
【0065】
【表2】
【0066】
前記作製されたベクターpDZ-ΔlysEをコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032に電気パルス法(Van der Rest et al., Appl. Microbiol. Biotecnol. 52:541-545, 1999)で形質転換して相同染色体の組換えによりlysE遺伝子が欠損された菌株を作製した。このようにlysE遺伝子が欠損された菌株をコリネバクテリウム・グルタミカム13032::ΔlysEと命名した。
【0067】
前記13032::ΔlysEを対象として実施例1で作製されたp117-lysE(mt)ライブラリーを電気パルス法で形質転換し、カナマイシン(25mg/l)が含まれている複合平板培地に塗抹して約1000個のコロニーを確保した。対照区を作製するために13032::ΔlysEにp117-lysE(WT)ベクターを同じ方法で形質転換してコロニーを確保した。
【0068】
<複合平板培地(pH7.0)>
ブトウ糖10g、ペプトン10g、牛肉エキス(Beef extract) 5g、酵母抽出物5g、ブレインハートインフュージョン(Brain Heart Infusion) 18.5g、NaCl 2.5g、尿素2g、Sorbitol 91g、寒天20g(蒸溜水1リットル基準)
【0069】
前記確保された対照区である13032::ΔlysE_p117(lysE(WT))と13032::ΔlysE_p117(lysE(mt))ライブラリーをそれぞれ400ul種培地が含まれている96-Deep Well Plate-Dome(Bioneer)に接種し、plate shaking incubator(TAITEC)で32℃、12000rpm条件で約12hr培養した。
【0070】
<種培地(pH7.0)>
ブトウ糖20g、ペプトン10g、酵母抽出物5g、尿素1.5g、KHPO 4g、KHPO 8g、MgSO・7H2O 0.5g、ビオチン100μg、チアミンHCl1000μg、カルシウム-パントテン酸2000μg、ニコチンアミド2000μg(蒸溜水1リットル基準)
【0071】
培養された約1000個のコロニーをL-リジン塩酸塩100g/Lが含まれている複合平板培地に連続希釈してMIC(minimum inhibitory concentration)試験した時、比較対象菌株に比べて有意にMIC値が高くなった9個のコロニーを獲得することができた。各コロニーを2次スクリーニングした。各コロニーを400ul種培地が含まれている96-Deep Well Plate-Dome(Bioneer)に接種し、plate shaking incubator(TAITEC)で32℃、12000rpm条件で約12hr培養した。また2次スクリーニング段階では最終的に培養したコロニーの初期OD(optical density)値を同一に合わせてL-リジン塩酸塩100g/Lが含まれている複合平板培地に連続希釈してMIC試験を進行した。これによって野生型lysE遺伝子が導入された比較対象菌株に比べて顕著にMIC値が高くなった1種に対して13032::lysE(mt)と命名して追加実験を進行した。
【0072】
実施例3:変異型lysE遺伝子の塩基配列の確認
実施例2で選別された菌株13032::lysE(mt)に挿入された遺伝子の配列を確認するために、表3の配列番号11と12のプライマーを利用してPCRを行って遺伝子断片を増幅した。PCR条件は実施例1と同様に進行し、増幅されたDNA断片をGeneAll Expin GEL SV kit(Seoul、KOREA)を利用して獲得し、塩基配列分析を進行した。
【0073】
前記使用されたプライマーの核酸配列を下記の表3に整理した。
【0074】
【表3】
【0075】
増幅された遺伝子の塩基配列を分析した結果、13032::lysE(mt)菌株は、lysE遺伝子ORF開始コドンから下位193~195番目塩基配列が既存のAATからGAAに変わり、野生型アミノ酸配列(配列番号1)のN末端から65番目アミノ酸であるアスパラギンがグルタメートで置換された形態のL-リジン排出体変異体をコードする変異型lysE遺伝子を含むことを確認した。
【0076】
実施例4:変異型LysE遺伝子導入ベクターの作製および菌株の作製
実施例3で確認した変異であるN65Eを導入するために組換えベクターを次のような方法で作製した。まず、WT菌株(ATCC13032)から抽出した遺伝体DNAを鋳型としてlysE遺伝子(配列番号2)の193~195番目位置で前後に(upstream and downstream)それぞれ約600bp離れた位置の5’断片および3’断片に制限酵素XbaI認識部位を挿入した表4の配列番号13および14のプライマーを合成した。またこれらからそれぞれ600bp離れた位置で塩基置換変異を導入するためのプライマー配列番号15および16を合成した。
【0077】
前記使用されたプライマーの核酸配列を下記の表4に整理した。
【0078】
【表4】
【0079】
具体的に、lysE遺伝子の5’および3’末端に位置したDNA断片が(各600bp)pDZベクター(US 9109242 B2)に連結された形態の組換えベクターを作製した。WT菌株の遺伝体DNAを鋳型としてプライマー配列番号13および15を利用してPCRを行い、lysE遺伝子の5’末端遺伝子断片(lysE遺伝子の5’末端に位置)を準備した。PCRは94℃で2分間変性後、94℃で1分変性、56℃で1分アニーリング、72℃で30秒重合を30回繰り返した後、72℃で10分間重合反応を行って進行した。同様な方法で配列番号14および16を利用してPCRを行ってlysE遺伝子の3’末端遺伝子断片(lysE遺伝子の3’末端に位置)を準備した。増幅されたDNA断片をQuiagen社のPCR Purification kitを使用して精製した後、ベクター作製のための挿入DNA断片として使用した。
【0080】
一方、制限酵素XbaIで処理した後、65℃で20分間熱処理したpDZベクターと前記PCRを通じて増幅した挿入DNA断片をInfusion Cloning Kitを使用して連結した後、大腸菌DH5αに形質転換した。前記菌株をカナマイシン(25mg/l)が含まれているLB固体培地に塗抹した。プライマー配列番号13および14を利用したPCRを通じて目的とした遺伝子が挿入されたベクターに形質転換されたコロニーを選別した後、通常知られたプラスミド抽出法を利用してプラスミドを獲得した。前記プラスミドはpDZ-lysE(N65E)と命名した。
【0081】
作製されたベクターpDZ-lysE(N65E)をリジンを生産するコリネバクテリウム・グルタミカムKCCM11016P菌株(大韓民国登録特許第10-0159812号)に電気パルス法で形質転換した。このようにlysE遺伝子に異種性塩基置換変異が導入された菌株をKCCM11016P::lysE(N65E)と命名した。
【0082】
実施例5:LysE(N65E)変異株に対するL-リジン生産能の分析
前記実施例4で作製された菌株KCCM11016P::lysE(N65E)と親株KCCM11016P(N65)を次のような方法で培養してOD(optical density)、L-リジン生産収率および糖消耗速度を測定した。まず、種培地25mlを含有する250mlコーナーバッフルフラスコに各菌株を接種し、30℃で20時間、200rpmで振とう培養した。その後、生産培地24mlを含有する250mlコーナーバッフルフラスコに1mlの種培養液を接種して32℃で72時間、200rpmで振とう培養した。前記種培地と生産培地の組成はそれぞれ下記のとおりであり、培養結果は表5のとおりである。
【0083】
<種培地(pH7.0)>
ブトウ糖20g、ペプトン10g、酵母抽出物5g、尿素1.5g、KHPO 4g、KHPO 8g、MgSO・7HO 0.5g、ビオチン100μg、チアミンHCl1000μg、カルシウム-パントテン酸2000μg、ニコチンアミド2000μg(蒸溜水1リットル基準)
【0084】
<生産培地(pH7.0)>
ブトウ糖90g、(NHSO 30g、大豆蛋白質20g、サトウダイコン由来糖蜜20g、KHPO 1.1g、MgSO・7HO 1.2g、ビオチン2mg、チアミン塩酸塩10mg、カルシウム-パントテン酸10mg、ニコチンアミド30mg、MnSO 20mg、FeSO 20mg、ZnSO 1mg、CuSO 1mg、CaCO 30g(蒸溜水1リットル基準)。
【0085】
【表5】
【0086】
lysE変異導入株であるKCCM11016P::lysE(N65E)菌株は、親株KCCM11016Pに比べて糖消耗速度が類似し、ODが小幅減少し、L-リジン生産収率が約12.1%増加することを確認することができた。最終的に実施例2で確認されたlysE(N65E)の変異がL-リジン排出体の排出能を向上させる変異と確認された。このようにリジン生産能の増加を示したKCCM11016P::lysE(N65E)菌株(「Corynebacterium glutamicum CM03-1012」と命名)を2019年12月13日付で大韓民国ソウル特別市西大門区弘済洞に所在する韓国微生物保存センターに寄託してKCCM12641Pの寄託番号が付与された。
【0087】
実施例6:lysE遺伝子が65番目アミノ酸であるアスパラギンがグルタメート以外の他のアミノ酸で置換された配列をコードする菌株の作製
配列番号1のアミノ酸配列で65番目アミノ酸の位置の、野生型が有するアスパラギンおよび実施例5でその効果が検証されたグルタメートを除いた他のアミノ酸への置換を試みた。このような18種の異種性アミノ酸置換変異をコードする塩基置換変異を導入するために、次のような方法でそれぞれの組換えベクターを作製した。
【0088】
WT菌株(ATCC13032)から抽出した遺伝体DNAを鋳型としてlysE遺伝子の193~195番目の位置で前後にそれぞれ約600bp離れた位置の5’断片および3’断片に塩基置換変異を導入するためのプライマー配列番号17~52を合成した(表6)。具体的に、lysE遺伝子の5’および3’末端に位置したDNA断片(各600bp)がpDZベクター(US 9109242 B2)に連結された形態の組換えベクターを作製した。WT菌株の遺伝体DNAを鋳型として配列番号13および17のプライマーを利用してPCRを行い、lysE遺伝子の5’末端に位置する遺伝子断片を準備した。PCRは94℃で2分間変性後、94℃で1分変性、56℃で1分アニーリング、72℃で30秒重合を30回繰り返した後、72℃で10分間重合反応を行って進行した。同様な方法で配列番号14および18を利用してPCRを行い、lysE遺伝子の3’末端に位置する遺伝子断片を準備した。増幅されたDNA断片をQuiagen社のPCR Purification kitを使用して精製した後、ベクター作製のための挿入DNA断片として使用した。
【0089】
一方、制限酵素XbaIで処理した後、65℃で20分間熱処理したpDZベクターと前記PCRを通じて増幅した挿入DNA断片をInfusion Cloning Kitを使用して連結した後、大腸菌DH5αに形質転換した。前記菌株をカナマイシン(25mg/l)が含まれているLB固体培地に塗抹した。プライマー配列番号13および14を利用したPCRを通じて目的とした遺伝子が挿入されたベクターに形質転換されたコロニーを選別した後、通常知られたプラスミド抽出法を利用してプラスミドを獲得した。前記プラスミドはpDZ-lysE(N65G)と命名した。同様な方法でプライマー配列番号13および19、14および20を利用してpDZ-lysE(N65A)、プライマー配列番号13および21、14および22を利用してpDZ-lysE(N65V)、プライマー配列番号13および23、14および24を利用してpDZ-lysE(N65L)、プライマー配列番号13および25、14および26を利用してpDZ-lysE(N65I)、プライマー配列番号13および27、14および28を利用してpDZ-lysE(N65F)、プライマー配列番号13および29、14および30を利用してpDZ-lysE(N65P)、プライマー配列番号13および31、14および32を利用してpDZ-lysE(N65M)、プライマー配列番号13および33、14および34を利用してpDZ-lysE(N65W)、プライマー配列番号13および35、14および36を利用してpDZ-lysE(N65S)、プライマー配列番号13および37、14および38を利用してpDZ-lysE(N65T)、プライマー配列番号13および39、14および40を利用してpDZ-lysE(N65Q)プライマー配列番号13および41、14および42を利用してpDZ-lysE(N65Y)、プライマー配列番号13および43、14および44を利用してpDZ-lysE(N65C)、プライマー配列番号13および45、14および46を利用してpDZ-lysE(N65D)、プライマー配列番号13および47、14および48を利用してpDZ-lysE(N65H)、プライマー配列番号13および49、14および50を利用してpDZ-lysE(N65K)、およびプライマー配列番号13および51、14および52を利用してpDZ-lysE(N65R)を作製した。
【0090】
前記使用されたプライマーの核酸配列を表6に整理した。
【0091】
【表6】
【0092】
それぞれ作製されたベクターをリジンを生産するコリネバクテリウム・グルタミカムKCCM11016P菌株(大韓民国登録特許第10-0159812号)に電気パルス法で形質転換した。このようにlysE遺伝子に異種性塩基置換変異が導入された菌株18種は、KCCM11016P::lysE(N65G)、KCCM11016P::lysE(N65A)、KCCM11016P::lysE(N65V)、KCCM11016P::lysE(N65L)、KCCM11016P::lysE(N65I)、KCCM11016P::lysE(N65F)、KCCM11016P::lysE(N65VP)、KCCM11016P::lysE(N65M)、KCCM11016P::lysE(N65W)、KCCM11016P::lysE(N65S)、KCCM11016P::lysE(N65T)、KCCM11016P::lysE(N65Q)、KCCM11016P::lysE(N65Y)、KCCM11016P::lysE(N65C)、KCCM11016P::lysE(N65D)、KCCM11016P::lysE(N65H)、KCCM11016P::lysE(N65K)、およびKCCM11016P::lysE(N65R)とそれぞれ命名した。
【0093】
実施例7:lysE変異株に対するL-リジン生産能の分析
親株KCCM11016P(N65)、実施例4で作製されたKCCM11016P::lysE(N65E)菌株および実施例6で作製された18種の菌株を実施例5のような方法で培養して、OD、L-リジン生産収率および糖消耗速度を測定して、その結果を下記表7に示した。
【0094】
【表7】
【0095】
実施例5で選別されたlysE変異導入株であるKCCM11016P::lysE(N65E)菌株は、親株KCCM11016Pに比べて糖消耗速度が類似し、ODが小幅減少し、L-リジン生産収率が約15.7%増加することを確認することができた。また追加的に評価された実施例6で作製された18種の菌株は、KCCM11016Pに比べて糖消耗速度が類似し、ODが類似または小幅減少し、L-リジン生産収率の減少なしに最大約21.7%増加することを確認することができた。したがって、lysEの65番目アスパラギンの位置がL-リジン排出能の向上に重要な役割を果たすと解釈される。
【0096】
実施例8:選別されたlysE変異株のL-リジン生産能の分析
L-リジンを生産する他の菌株でも前記のlysE遺伝子変異体に対する効果を確認するためにL-リジンを生産する他の菌株であるコリネバクテリウム・グルタミカムKCCM10770P(N65)(US 9109242 B2)に実施例3で選別されたlysE(N65E)変異以外にアミノ酸の特性別に3種の変異を追加して、総4種の変異を導入した。実施例4(pDZ-lysE(N65E))と実施例6(pDZ-lysE(N65K)、pDZ-lysE(N65Q)、およびpDZ-lysE(N65L))で作製された総4種のベクターを電気パルス法でコリネバクテリウム・グルタミカムKCCM10770P菌株に導入してKCCM10770P::lysE(N65E)、KCCM10770P::lysE(N65K)、KCCM10770P::lysE(N65Q)、およびKCCM10770P::lysE(N65L)の総4種の菌株を作製した。これら菌株4種および親株KCCM10770Pを実施例5のような方法で培養してOD、L-リジン生産収率および糖消耗速度を測定して下記表8に示した。
【0097】
【表8】
【0098】
表8の結果のように、リジン生産菌株KCCM10770P(親株)から実施例5で選別された配列番号1の65番目アミノ酸がグルタミン酸で置換された変異を導入した場合、親株に比べて糖消耗速度が類似し、ODが増加しながらL-リジン生産収率が約160.3%増加することを確認することができた。また追加的に導入した3種の変異も親株に比べて糖消耗速度が類似し、ODが増加しながらL-リジン生産収率が約3.8%~17.9%増加することを確認することができた。親株によりODの変化量とL-リジン生産収率の増加幅は異なるが、実施例7で確認したようにlysEの65番目アスパラギンの位置がL-リジン排出能の向上に重要な役割を果たすと解釈される。
【0099】
実施例9:選別されたLysE変異株のL-アルギニン生産能の分析
前記変異型L-リジン排出体のL-アルギニンに対する排出能を確認するために実施例4で作製されたpDZ-lysE(N65E)ベクターをL-アルギニンを生産するコリネバクテリウム・グルタミカムKCCM10741P(N65)菌株(US 8034602 B2)に電気パルス法で形質転換した。このようにlysE遺伝子に異種性塩基置換変異が導入された菌株をKCCM10741P::lysE(N65E)と命名した。親株KCCM10741Pおよび作製されたKCCM10741P::lysE(N65E)菌株を次のような方法で培養してOD、アルギニン生産収率および糖消耗速度を測定した。まず、種培地25mlを含有する250mlコーナーバッフルフラスコに各菌株を接種し、30℃で20時間、200rpmで振とう培養した。その後、生産培地24mlを含有する250mlコーナーバッフルフラスコに1mlの種培養液を接種して32℃で72時間、200rpmで振とう培養した。前記種培地と生産培地の組成はそれぞれ下記のとおりであり、培養結果は表9のとおりである。
【0100】
<種培地(pH7.0)>
ブトウ糖20g、ペプトン10g、酵母抽出物5g、尿素1.5g、KHPO 4g、KHPO 8g、MgSO・7HO 0.5g、ビオチン100μg、チアミンHCl1mg、カルシウム-パントテン酸2mg、ニコチンアミド2mg(蒸溜水1リットル基準)
【0101】
<生産培地(pH7.0)>
ブトウ糖60g、硫酸アンモニウム30g、KHPO 1g、MgSO・7HO 2g、CSL(とうもろこし浸漬液)15g、NaCl 10g、酵母抽出物5g、ビオチン100mg(蒸溜水1リットル基準)。
【0102】
【表9】
【0103】
表9の結果のように、lysE変異導入株であるKCCM10741P::lysE(N65E)菌株は、親株KCCM10741Pに比べてODおよび糖消耗速度が類似し、L-アルギニン生産能が約11.8%増加することを確認した。これによって、lysE(N65E)の変異がL-リジンだけでなく、L-アルギニンの排出能を向上させる変異と確認された。
【0104】
以上、本明細書で開示されるそれぞれの説明および実施形態は、それぞれの異なる説明および実施形態にも適用され得る。本明細書で開示された多様な要素の可能な全ての組み合わせが本明細書で提案される発明の範疇に属する。また、下記に記述する具体的な叙述により本明細書の発明の範疇が制限されるとはいえず、当該技術分野の通常の知識を有する者が本明細書に記載された特定様態に対する多数の等価物を認知したり確認できる限り、このような等価物は本明細書で提案される発明に含まれると意図される。
【配列表】
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