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特許7422269スパッタリングターゲット材及び酸化物半導体の製造方法
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  • 特許-スパッタリングターゲット材及び酸化物半導体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】スパッタリングターゲット材及び酸化物半導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20240118BHJP
   C23C 14/08 20060101ALI20240118BHJP
   C04B 35/453 20060101ALI20240118BHJP
   C01G 35/00 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
C23C14/34 A
C23C14/08 K
C04B35/453
C01G35/00 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023521468
(86)(22)【出願日】2023-01-16
(86)【国際出願番号】 JP2023000904
(87)【国際公開番号】W WO2023145498
(87)【国際公開日】2023-08-03
【審査請求日】2023-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2022013648
(32)【優先日】2022-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺村 享祐
(72)【発明者】
【氏名】白仁田 亮
(72)【発明者】
【氏名】徳地 成紀
【審査官】本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102420289(CN,A)
【文献】特開2012-151469(JP,A)
【文献】特開2013-070010(JP,A)
【文献】特表2010-530634(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0260497(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58
H01L 21/00-21/98
H01L 29/00-29/96
C01G 35/00-35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インジウム(In)元素、亜鉛(Zn)元素及びタンタル(Ta)元素を含む酸化物から構成され、
各元素の原子比が式(1)ないし(3)の全てを満たし、
0.1≦(In+Ta)/(In+Zn+Ta)<0.4 (1)
0.6<Zn/(In+Zn+Ta)≦0.9 (2)
0.001≦Ta/(In+Zn+Ta)<0.014 (3)
相対密度が95%以上であり、
抗折強度が100MPa以上である、スパッタリングターゲット材。
【請求項2】
バルク抵抗率が25℃において100mΩ・cm以下である、請求項1に記載のスパッタリングターゲット材。
【請求項3】
相対密度が98%以上である、請求項1又は2に記載のスパッタリングターゲット材。
【請求項4】
インジウム(In)元素、亜鉛(Zn)元素及びタンタル(Ta)元素並びに不可避微量元素からなる酸化物から構成される、請求項1又は2に記載のスパッタリングターゲット材。
【請求項5】
相対密度が98%以上であり、
インジウム(In)元素、亜鉛(Zn)元素及びタンタル(Ta)元素並びに不可避微量元素からなる酸化物から構成される、請求項1又は2に記載のスパッタリングターゲット材。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のスパッタリングターゲット材を用いた酸化物半導体の製造方法であって、
前記酸化物半導体が、
インジウム(In)元素、亜鉛(Zn)元素及びタンタル(Ta)元素を含む酸化物から構成され、
各元素の原子比が式(1)ないし(3)の全てを満たすように製造された、酸化物半導体の製造方法。
0.1≦(In+Ta)/(In+Zn+Ta)<0.4 (1)
0.6<Zn/(In+Zn+Ta)≦0.9 (2)
0.001≦Ta/(In+Zn+Ta)<0.014 (3)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスパッタリングターゲット材に関する。また本発明は、該スパッタリングターゲット材を用いた酸化物半導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイ(以下「FPD」ともいう。)に使用される薄膜トランジスタ(以下「TFT」ともいう。)の技術分野においては、FPDの高機能化に伴い、従来のアモルファスシリコンに代わってIn-Ga-Zn複合酸化物(以下「IGZO」ともいう。)に代表される酸化物半導体が注目されており、実用化が進んでいる。IGZOは、高い電界効果移動度と低いリーク電流を示すという利点を有する。近年ではFPDの更なる高機能化が進むに従い、IGZOが示す電界効果移動度よりも更に高い電界効果移動度を示す材料が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1及び2には、インジウム(In)元素及び亜鉛(Zn)元素と任意の元素XからなるIn-Zn-X複合酸化物によるTFT用の酸化物半導体が提案されている。同文献によればこの酸化物半導体は、In-Zn-X複合酸化物からなるターゲット材を用いたスパッタリングによって形成される。
【0004】
また、FPDの一つであるフレキシブルディスプレイが、幅広い応用展開が可能であるとして近年注目されている。フレキシブルディスプレイを構成する重要な部材の一つとして、柔軟性のある基材が挙げられ、中でもプラスチックフィルムが、薄く、軽量であり、しかも柔軟性に優れることから適している。しかしプラスチックフィルムは耐熱性に課題がある。基板上にTFTを形成するためには、成膜後に、電気特性改善のためにポストアニール処理が求められるところ、プラスチックフィルムのような耐熱性の低い基板を用いた場合にはポストアニール処理を低温で行う必要がある。しかしIGZOからなる膜を、低温でポストアニール処理すると、当該膜が低抵抗化を起こし、半導体として機能させることが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】US2013/270109A1
【文献】US2014/102892A1
【発明の概要】
【0006】
特許文献1及び2に記載の技術においては、ターゲット材を粉末焼結法によって製造している。しかし粉末焼結法によって製造されるターゲット材は一般に相対密度が低く、そのことに起因して異常放電が発生しやすく、また異常放電時にターゲット材に亀裂が生じやすい。その結果、高性能のTFTを製造することに支障を来す場合がある。
【0007】
また、プラスチックフィルムのような耐熱性の低い基板上にTFTを形成するためには、成膜後に、電気特性改善のためにポストアニール処理を行う必要がある。しかし、例えばIGZOからなる膜を、250℃未満の低温でポストアニール処理すると、当該膜が低抵抗化を起こし、半導体として機能させることが難しくなる。
したがって本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得るスパッタリングターゲット材及び酸化物半導体の製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、インジウム(In)元素及び亜鉛(Zn)元素を主たる元素として含む酸化物において、当該亜鉛(Zn)の含有量を増大させるとともに微量のタンタル(Ta)元素を含有させ、かつ相対密度を高くすることによって、上述した異常放電を抑制することができるとともに、250℃未満の低温で行ったポストアニール処理によっても半導体として機能させ得る酸化物半導体が得られることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、インジウム(In)元素、亜鉛(Zn)元素及びタンタル(Ta)元素を含む酸化物から構成され、
各元素の原子比が式(1)ないし(3)の全てを満たし、
0.1≦(In+Ta)/(In+Zn+Ta)<0.4 (1)
0.6<Zn/(In+Zn+Ta)≦0.9 (2)
0.001≦Ta/(In+Zn+Ta)<0.014 (3)
相対密度が95%以上である、スパッタリングターゲット材を提供するものである。
【0010】
また本発明は、上記のスパッタリングターゲット材を用いた酸化物半導体の製造方法であって、
前記酸化物半導体が、
インジウム(In)元素、亜鉛(Zn)元素及びタンタル(Ta)元素を含む酸化物から構成され、
各元素の原子比が式(1)ないし(3)の全てを満たすように製造された、酸化物半導体の製造方法
0.1≦(In+Ta)/(In+Zn+Ta)<0.4 (1)
0.6<Zn/(In+Zn+Ta)≦0.9 (2)
0.001≦Ta/(In+Zn+Ta)<0.014 (3)
を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明のスパッタリングターゲット材を用いて製造された薄膜トランジスタの構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明はスパッタリングターゲット材(以下「ターゲット材」ともいう。)に関するものである。本発明のターゲット材は、インジウム(In)元素、亜鉛(Zn)元素及びタンタル(Ta)元素を含む酸化物から構成されるものである。本発明のターゲット材は、これを構成する金属元素としてIn、Zn及びTaを含むものであるが、本発明の効果を損なわない範囲で、これらの元素の他に、意図的に又は不可避的に、微量元素を含んでいてもよい。微量元素としては、例えば後述する有機添加物に含まれる元素やターゲット材製造時に混入するボールミル等のメディア原料が挙げられる。本発明のターゲット材における微量元素としては、例えばFe、Cr、Ni、Al、Si、W、Zr、Na、Mg、K、Ca、Ti、Y、Ga、Sn、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Nb、Sr及びPb等が挙げられる。それらの含有量は本発明のターゲット材が含むIn、Zn及びTaを含む酸化物の合計質量に対して、各々通常100質量ppm(以下「ppm」ともいう。)以下であることが好ましく、より好ましくは80ppm以下、更に好ましくは50ppm以下である。これらの微量元素の合計量は500ppm以下であることが好ましく、300ppm以下であることがより好ましくは、100ppm以下であることが更に好ましい。本発明のターゲット材に微量元素が含まれる場合は、合計質量には微量元素の質量も含まれる。
【0013】
本発明のターゲット材は好適には、上述した酸化物を含む焼結体から構成されている。かかる焼結体及びスパッタリングターゲット材の形状に特に制限はなく、従来公知の形状、例えば平板型及び円筒形などを採用することができる。
【0014】
本発明のターゲット材は、これを構成する金属元素、すなわちIn、Zn及びTaの原子比が特定の範囲であることが、該ターゲット材から形成される酸化物半導体素子の性能が向上する点から好ましい。
具体的には、In及びTaに関しては以下の式(1)で表される原子比を満たすことが好ましい。
0.1≦(In+Ta)/(In+Zn+Ta)<0.4 (1)
Znに関しては以下の式(2)で表される原子比を満たすことが好ましい。
0.6<Zn/(In+Zn+Ta)≦0.9 (2)
Taに関しては以下の式(3)で表される原子比を満たすことが好ましい。
0.001≦Ta/(In+Zn+Ta)<0.014 (3)
【0015】
In、Zn及びTaの原子比が前記の式(1)ないし(3)の全てを満たすことで、本発明のターゲット材を用いスパッタリングによって形成された酸化物薄膜を有する半導体素子は、250℃未満の低温で行ったポストアニール処理によっても高い電界効果移動度、低いリーク電流及び0Vに近いしきい電圧を示すものとなる。これらの利点を一層顕著なものとする観点から、In及びTaに関しては下記の式(1-2)ないし(1-5)を満たすことが更に好ましい。
0.12≦(In+Ta)/(In+Zn+Ta)≦0.38 (1-2)
0.14≦(In+Ta)/(In+Zn+Ta)≦0.35 (1-3)
0.16≦(In+Ta)/(In+Zn+Ta)≦0.31 (1-4)
0.20≦(In+Ta)/(In+Zn+Ta)≦0.30 (1-5)
【0016】
前記と同様の観点から、Znに関しては下記の式(2-2)ないし(2-5)を満たすことが更に好ましく、Taに関しては下記の式(3-2)ないし(3-5)を満たすことが更に好ましい。
【0017】
0.62≦Zn/(In+Zn+Ta)≦0.88 (2-2)
0.65≦Zn/(In+Zn+Ta)≦0.86 (2-3)
0.69≦Zn/(In+Zn+Ta)≦0.84 (2-4)
0.70≦Zn/(In+Zn+Ta)≦0.80 (2-5)
0.0015≦Ta/(In+Zn+Ta)≦0.013 (3-2)
0.002<Ta/(In+Zn+Ta)≦0.012 (3-3)
0.0025≦Ta/(In+Zn+Ta)≦0.010 (3-4)
0.003≦Ta/(In+Zn+Ta)≦0.009 (3-5)
【0018】
本発明のターゲット材に含まれる各金属の割合は、例えばICP発光分光測定によって測定される。
【0019】
本発明のターゲット材は、In、Zn及びTaの原子比に加えて、相対密度が高いことによっても特徴付けられる。詳細には、本発明のターゲット材はその相対密度が好ましくは95%以上という高い値を示すものである。このような高い相対密度を示すことで、本発明のターゲット材を用いてスパッタリングを行う場合、パーティクルの発生を抑制することが可能となるので好ましい。この観点から、本発明のターゲット材はその相対密度が97%以上であることが更に好ましく、98%以上であることが一層好ましく、99%以上であることが更に一層好ましく、100%以上であることが特に好ましく、100%超であることがとりわけ好ましい。このような相対密度を有する本発明のターゲット材は、後述する方法によって好適に製造される。相対密度は、アルキメデス法に従い測定される。具体的な測定方法は後述する実施例において詳述する。
【0020】
本発明のターゲット材は強度が高いことによっても特徴付けられる。詳細には、本発明のターゲット材はその抗折強度が好ましくは100MPa以上という高い値を示すものである。このような高い抗折強度を示すことで、本発明のターゲット材を用いてスパッタリングを行う場合、スパッタリング中に意図せず異常放電が起こっても、ターゲット材に亀裂が生じにくくなるので好ましい。この観点から本発明のターゲット材は、その抗折強度が105MPa以上であることが更に好ましく、110MPa以上であることが一層好ましい。なお、抗折強度の上限は、ターゲット材の靭性等の観点から、例えば300MPaであることが好ましい。このような抗折強度を有する本発明のターゲット材は、後述する方法によって好適に製造される。抗折強度は、JIS R1601に準拠して測定される。具体的な測定方法は後述する実施例において詳述する。
【0021】
本発明のターゲット材はバルク抵抗率が低いことによっても特徴付けられる。バルク抵抗率が低いことは、該ターゲット材を用いてDCスパッタリングが可能となる点から有利である。この観点から、本発明のターゲット材はそのバルク抵抗率が25℃において100mΩ・cm以下であることが好ましく、50mΩ・cm以下であることがより好ましく、30mΩ・cm以下であることが更に好ましく、20mΩ・cm以下であることが一層好ましく、15mΩ・cm以下であることが更に一層好ましく、12mΩ・cm以下であることが特に好ましく、10mΩ・cm以下であることがとりわけ好ましく、5mΩ・cm以下であることが殊更好ましい。なお、バルク抵抗率は低いほど好ましく下限値は特に定めるものではないが、通常0.01mΩ・cm以上である。このようなバルク抵抗率を有する本発明のターゲット材は、後述する方法によって好適に製造される。バルク抵抗率は、直流四探針法によって測定される。具体的な測定方法は後述する実施例において詳述する。
【0022】
本発明のターゲット材は、上述したとおりIn、Zn及びTaを含む酸化物から構成されている。この酸化物は、Inの酸化物、Znの酸化物又はTaの酸化物であり得る。あるいはこの酸化物は、In、Zn及びTaからなる群から選択される任意の2種以上の元素の複合酸化物であり得る。複合酸化物の具体的な例としては、In-Zn複合酸化物、Zn-Ta複合酸化物、In-Ta複合酸化物、In-Zn-Ta複合酸化物等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0023】
本発明のターゲット材においては、SEMによる倍率200倍での断面観察において、同一面内におけるIn/Zn原子比率が均質であることが好ましい。In/Zn原子比率が均質であるとスパッタリングにより薄膜を形成した際、組成に偏りがなく、膜特性が変化することがないため好ましい。
【0024】
In/Zn原子比率の均質状態の評価は、エネルギー分散型X線分光法(以下「EDX」ともいう)によって行う。ターゲット材断面において無作為に選んだ倍率200倍、437.5μm×625μmの範囲から、EDXによって視野全体のIn/Zn原子比率を得る。続いて同視野を縦4×横4の均等に分割し、各分割視野でのIn/Zn原子比率を得る。各分割視野でのIn/Zn原子比率と視野全体のIn/Zn原子比率の差の絶対値を、視野全体のIn/Zn原子比率で除し、100を乗じた値を分散率(%)と定義し、分散率の大小に基づきIn/Zn原子比率の均質の程度を評価する。分散率がゼロに近いほどIn/Zn原子比率が均質であることを意味する。16箇所での分散率の最大値が10%以下であることが好ましく、8%以下であることが更に好ましく、6%以下であることが一層好ましく、4%以下であることが更に一層好ましく、3%以下であることが特に好ましく、2%以下であることがとりわけ好ましい。
【0025】
次に、本発明のターゲット材の好適な製造方法について説明する。本製造方法においては、ターゲット材の原料となる酸化物粉を所定の形状に成形して成形体を得て、この成形体を焼成することで、焼結体からなるターゲット材を得る。成形体を得るには、当該技術分野においてこれまで知られている方法を採用することができる。特に鋳込み成形法又はCIP成形法を採用することが、緻密なターゲット材を製造し得る点から好ましい。
【0026】
鋳込み成形法はスリップキャスト法とも呼ばれる。鋳込み成形法を行うには先ず、原料粉末と有機添加物とを含有するスラリーを、分散媒を用いて調製する。
【0027】
前記の原料粉末としては酸化物粉末又は水酸化物粉末を用いることが好適である。酸化物粉末としては、In酸化物の粉末、Zn酸化物の粉末、及びTa酸化物の粉末を用いる。In酸化物としては例えばInを用いることができる。Zn酸化物としては例えばZnOを用いることができる。Ta酸化物の粉末としては例えばTaを用いることができる。
【0028】
In酸化物の粉末、Zn酸化物の粉末及びTa酸化物の粉末の使用量は、目的とするターゲット材におけるIn、Zn及びTaの原子比が、上述した範囲を満たすように調整することが好ましい。
【0029】
原料粉末の粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積50容量%における体積累積粒径D50で表して、0.1μm以上1.5μm以下であることが好ましい。この範囲の粒径を有する原料粉末を用いることで、相対密度の高いターゲット材を容易に得ることができる。
【0030】
前記の有機添加物は、スラリーや成形体の性状を好適に調整するために用いられる物質である。有機添加物としては、例えばバインダ、分散剤及び可塑剤等を挙げることができる。バインダは、成形体の強度を高めるために添加される。バインダとしては、公知の粉末焼結法において成形体を得るときに通常使用されるバインダを使用することができる。バインダとしては、例えばポリビニルアルコールを挙げることができる。分散剤は、スラリー中の原料粉末の分散性を高めるために添加される。分散剤としては、例えばポリカルボン酸系分散剤、ポリアクリル酸系分散剤を挙げることができる。可塑剤は、成形体の可塑性を高めるために添加される。可塑剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)及びエチレングリコール(EG)等を挙げることができる。
【0031】
原料粉末及び有機添加物を含有するスラリーを作製する際に使用する分散媒には特に制限はなく、目的に応じて、水、及びアルコール等の水溶性有機溶媒から適宜選択して使用することができる。原料粉末及び有機添加物を含有するスラリーを作製する方法には特に制限はなく、例えば、原料粉末、有機添加物、分散媒及びジルコニアボールをポットに入れ、ボールミル混合する方法が使用できる。
【0032】
このようにしてスラリーが得られたら、このスラリーを型に流し込み、次いで分散媒を除去して成形体を作製する。用いることができる型としては、例えば金属型や石膏型、加圧して分散媒除去を行う樹脂型などが挙げられる。
【0033】
一方、CIP成形法においては、鋳込み成形法において用いたスラリーと同様のスラリーを噴霧乾燥して乾燥粉末を得る。得られた乾燥粉末を型に充填してCIP成形を行う。
【0034】
このようにして成形体が得られたら、次にこれを焼成する。上述のように、本製造方法においては、原料粉末をすべて混合した後に焼成を行う。このこととは対照的に、従来技術、例えば特許文献2に記載の技術では、In粉とTa粉とを混合した後に焼成を行い、次いで得られた焼成粉とZnO粉とを混合して再び焼成を行っている。この方法では事前に焼成を実施することによって粉末を構成する粒子が粗粒となってしまい、相対密度の高いターゲット材を得ることが容易でない。
【0035】
これに対して本製造方法では、好ましくは、In酸化物の粉末、Zn酸化物の粉末及びTa酸化物の粉末をすべて常温で混合、成形した後、焼成を行っているので、相対密度の高い緻密なターゲット材が容易に得られる。成形体の焼成は一般に酸素含有雰囲気中で行うことができる。特に大気雰囲気中で焼成することが簡便である。焼成温度は1200℃以上1600℃以下であることが好ましく、1300℃以上1500℃以下であることが更に好ましく、1350℃以上1450℃以下であることが一層好ましい。焼成時間は、1時間以上100時間以下であることが好ましく、2時間以上50時間以下であることが更に好ましく、3時間以上30時間以下であることが一層好ましい。昇温速度は5℃/時間以上500℃/時間以下であることが好ましく、10℃/時間以上200℃/時間以下であることが更に好ましく、20℃/時間以上100℃/時間以下であることが一層好ましい。
【0036】
成形体の焼成においては、焼成過程においてInとZnとの複合酸化物、例えばZnInの相が生成する温度を一定時間維持することが、焼結の促進及び緻密なターゲット材の生成の観点から好ましい。ZnInの相が生成する際に体積拡散が進み緻密化が促進されることから、ZnInの相を確実に生成させることが好ましい。このような観点から、焼成の昇温過程において、温度を1000℃以上1250℃以下の範囲で一定時間維持することが好ましく、1050℃以上1200℃以下の範囲で一定時間維持することが更に好ましい。維持する温度は、必ずしもある特定の一点の温度に限られるものではなく、ある程度の幅を有する温度範囲であってもよい。具体的には、1000℃以上1250℃以下の範囲から選ばれるある特定の温度をT(℃)とするとき、1000℃以上1250℃以下の範囲に含まれる限り、例えばT±10℃であってもよく、好ましくはT±5℃であり、より好ましくはT±3℃であり、更に好ましくはT±1℃である。この温度範囲を維持する時間は、好ましくは1時間以上40時間以下であり、更に好ましくは2時間以上20時間以下である。
【0037】
このようにして得られたターゲット材は、研削加工などにより、所定の寸法に加工することができる。これを基材に接合することでスパッタリングターゲットが得られる。このようにして得られたスパッタリングターゲットは、酸化物半導体の製造に好適に用いられる。例えばTFTの製造に、本発明のターゲット材を用いることができる。図1には、TFT素子の一実施形態が模式的に示されている。
【0038】
同図に示すTFT素子1は、基材10の一面に形成されている。基材10の一面にはチャネル層20、ソース電極30及びドレイン電極31が配置されており、これを覆うようにゲート絶縁膜40が形成されている。ゲート絶縁膜40上には、ゲート電極50が配置されている。そして最も上部に保護層60が配置されている。この構造を有するTFT素子1において、例えばチャネル層20が、酸化物半導体層から構成されている。この構造を有するTFT素子1において、例えばチャネル層20の形成を、本発明のターゲット材を用いて行うことができる。その場合、チャネル層20は、インジウム(In)元素、亜鉛(Zn)元素及びタンタル(Ta)元素を含む酸化物から構成されたものとなり、インジウム(In)元素、亜鉛(Zn)元素及びタンタル(Ta)の原子比は、上述した式(1)を満たすものとなる。また、上述した式(2)及び(3)を満たすものとなる。
なお、チャネル層20を形成する際の酸素濃度は、例えば10体積%以上40体積%以下であることが好ましく、12体積%以上37体積%以下であることがより好ましく、15体積%以上35体積以下であることが更に好ましい。
【0039】
スパッタリング法によって酸化物半導体層が形成されたら、該酸化物半導体層をアニール処理することが好ましい。アニール処理の目的は、該酸化物半導体層に所期の性能を付与することにある。この目的のために、アニール処理の温度は20℃以上250℃未満であることが好ましく、20℃以上200℃以下であることが更に好ましく、20℃以上180℃以下であることが一層好ましく、20℃以上150℃以下であることがより一層好ましい。またアニール処理の温度は50℃以上であってもよく、また80℃以上であってもよい。アニール処理の時間は、1分以上180分以下であることが好ましく、2分以上120分以下であることが更に好ましく、3分以上60分以下であることが一層好ましい。アニールの雰囲気は、大気圧を含む酸素雰囲気などであることが好ましい。
酸化物半導体層に対するアニール処理は、該酸化物半導体層の形成直後に行うことができる。あるいは、酸化物半導体層を形成した後に更に別の層を一又は二以上形成し、その後にアニール処理を行ってもよい。
【0040】
本発明のターゲット材から形成された酸化物半導体素子はアモルファス構造を有することが、該素子の性能向上の点から好ましい。
【0041】
なお、ターゲット材から形成される酸化物半導体素子の電界効果移動度の値が大きいことは、酸化物半導体素子であるTFT素子の伝達特性が良好となることに起因するFPDの高機能化の点から好ましい。詳細にはターゲット材から形成される酸化物半導体素子を備えたTFTは、その電界効果移動度(cm/Vs)が、1cm/Vs以上であることが好ましく、2cm/Vs以上であることが更に好ましく、3cm/Vs以上であることがより好ましく、5cm/Vs以上であることが一層好ましく、10cm/Vs以上であることが更に一層好ましく、20cm/Vs以上であることがより一層好ましく、30cm/Vs以上であることが特に好ましい。電界効果移動度の値は大きければ大きいほど、FPDの高機能化の点から好ましいが、電界効果移動度が200cm/Vs程度に高ければ、十分に満足すべき程度の性能が得られる。
【実施例
【0042】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
【0043】
〔実施例1〕
平均粒径D50が0.6μmであるIn粉末と、平均粒径D50が0.8μmであるZnO粉末と、平均粒径D50が0.6μmであるTa粉末とを、ジルコニアボールによってボールミル乾式混合して、混合原料粉末を調製した。各粉末の平均粒径D50は、マイクロトラックベル株式会社製の粒度分布測定装置MT3300EXIIを用いて測定した。測定の際、溶媒には水を使用し、測定物質の屈折率2.20で測定した。各粉末の混合比率は、InとZnとTaとの原子比が、以下の表1に示す値となるようにした。
【0044】
混合原料粉末が調製されたポットに、混合原料粉末に対して0.2質量%のバインダと、混合原料粉末に対して0.6質量%の分散剤と、混合原料粉末に対して20質量%の水とを加え、ジルコニアボールによってボールミル混合してスラリーを調製した。
【0045】
調製されたスラリーを、フィルターを挟んだ金属製の型に流し込み、次いでスラリー中の水を排出して成形体を得た。この成形体を焼成して焼結体を作製した。焼成は酸素濃度が20体積%である雰囲気中、焼成温度1400℃、焼成時間8時間、昇温速度50℃/時間、降温速度50℃/時間で行った。焼成の途中、1100℃を6時間維持してZnInの生成を促進させた。
【0046】
このようにして得られた焼結体を切削加工し、幅210mm×長さ710mm×厚さ6mmの酸化物焼結体(ターゲット材)を得た。切削加工には#170の砥石を使用した。
【0047】
〔実施例2ないし5〕
実施例1において、InとZnとTaとの原子比が、以下の表1に示す値となるように各原料粉末を混合した。これ以外は実施例1と同様にしてターゲット材を得た。
【0048】
〔比較例1〕
平均粒径D50が0.6μmであるIn粉末と、平均粒径D50が0.6μmであるTa粉末とを、In元素とTa元素の合計に対するIn元素の原子比〔In/(In+Ta)〕が0.983となるように混合した。混合物を湿式ボールミルに供給し、12時間混合粉砕した。
得られた混合スラリーを取り出し、濾過、乾燥した。この乾燥粉を焼成炉に装入し、大気雰囲気中、1000℃で5時間熱処理した。
以上により、In元素とTa元素を含有する混合粉を得た。
【0049】
この混合粉に、平均粒径D50が0.8μmであるZnO粉末を、原子比〔In/(In+Zn)〕が0.296となるように混合した。混合粉を湿式ボールミルに供給し、24時間混合粉砕して、原料粉末のスラリーを得た。このスラリーを、濾過、乾燥及び造粒した。
得られた造粒物をプレス成形し、更に、2000kgf/cmの圧力を加えて冷間静水圧プレスで成形した。
成形体を焼成炉に装入し、大気圧、酸素ガス流入条件で、1400℃、12時間の条件で焼成し焼結体を得た。室温から400℃までは昇温速度は0.5℃/分とし、400~1400℃までは1℃/分とした。降温速度は1℃/分とした。
これら以外は実施例1と同様にしてターゲット材を得た。
【0050】
〔比較例2〕
平均粒径D50が0.6μmであるIn粉末と、平均粒径D50が0.6μmであるTa粉末とを、In元素とTa元素の合計に対するIn元素の原子比〔In/(In+Ta)〕が0.975となるように混合した。混合物を湿式ボールミルに供給し、12時間混合粉砕した。
得られた混合スラリーを取り出し、濾過、乾燥した。この乾燥粉を焼成炉に装入し、大気雰囲気中、1000℃で5時間熱処理した。
以上により、In元素とTa元素を含有する混合粉を得た。
【0051】
この混合粉に、平均粒径D50が0.8μmであるZnO粉末を、原子比〔In/(In+Zn)〕が0.196となるように混合した。混合粉を湿式ボールミルに供給し、24時間混合粉砕して、原料粉末のスラリーを得た。このスラリーを、濾過、乾燥及び造粒した。これ以外は比較例1と同様にしてターゲット材を得た。
【0052】
実施例及び比較例で得られたターゲット材に含まれる各金属の割合を、ICP発光分光測定によって測定した。InとZnとTaとの原子比が、表1に示す原料比と同一であることを確認した。
【0053】
〔評価1〕
実施例及び比較例で得られたターゲット材について、相対密度、抗折強度、及びバルク抵抗率を以下の方法で測定した。
【0054】
〔相対密度〕
ターゲット材の空中質量を体積(ターゲット材の水中質量/計測温度における水比重)で除し、下記式(i)に基づく理論密度ρ(g/cm)に対する百分率の値を相対密度(単位:%)とした。
・・・(i)
(式中Ciはターゲット材の構成物質の含有量(質量%)を示し、ρiはCiに対応する各構成物質の密度(g/cm)を示す。)
本発明の場合、ターゲット材の構成物質の含有量(質量%)は、In、ZnO、Taと考え、例えば
C1:ターゲット材のInの質量%
ρ1:Inの密度(7.18g/cm
C2:ターゲット材のZnOの質量%
ρ2:ZnOの密度(5.60g/cm
C3:ターゲット材のTaの質量%
ρ3:Taの密度(8.73g/cm
を式(i)に適用することで理論密度ρを算出できる。
Inの質量%、ZnOの質量%、Taの質量%は、ICP発光分光測定によるターゲット材の各元素の分析結果から求めることができる。
【0055】
〔抗折強度〕
島津製作所製のオートグラフ(登録商標)AGS-500Bを用いて測定した。ターゲット材から切り出した試料片(全長36mm以上、幅4.0mm、厚さ3.0mm)を用い、JIS-R-1601(ファインセラミックスの曲げ強度試験方法)の3点曲げ強さの測定方法に従って測定した。
【0056】
〔バルク抵抗率〕
三菱ケミカル製のロレスタ(登録商標)HP MCP-T410を用いて、JIS規格の直流四探針法によって測定した。加工後のターゲット材の表面にプローブ(直列四探針プローブ TYPE ESP)を当接させ、AUTO RANGEモードで測定した。測定箇所はターゲット材の中央付近及び四隅の計5か所とし、各測定値の算術平均値をそのターゲット材のバルク抵抗率とした。
【0057】
〔評価2〕
実施例及び比較例のターゲット材を用いて、異常放電の評価を行った。DCマグネトロンスパッタ装置(真空器械工業株式会社製 ハイレートスパッタ装置)、排気系クライオポンプ及びロータリーポンプを用い、以下の条件でDCスパッタリングを行った。
到達真空度:1×10-5[Pa]
スパッタ圧力:0.50[Pa]
アルゴンガス流量:32[cc]
酸素ガス流量:8[cc]
投入電力:3[W/cm
時間:48時間
異常放電の発生回数は、アーキングカウンター(型式:μArc Moniter MAM Genesis MAM データコレクター Ver.2.02(LANDMARK TECHNOLOGY社製))を用い、以下のように評価した。
A:50回未満
B:50回以上
【0058】
〔評価3〕
実施例及び比較例のターゲット材を用いて、図1に示すTFT素子1をフォトリソグラフィー法により作製した。
TFT素子1の作製においては、基材10としてポリエチレンナフタレートフィルム(東洋紡株式会社製テオネックス(登録商標))(ガラス転移点:155℃)を用いた。基材10上に、ソース電極30及びドレイン電極31としてMo薄膜を、DCスパッタリング装置を用いて成膜し、上述の方法で得られたターゲット材を使用して、下記の条件でスパッタリング成膜を行い、厚さ約30nmのチャネル層20を成膜した。
・成膜装置:DCスパッタリング装置トッキ株式会社製SML-464
・到達真空度:1×10-4Pa未満
・スパッタガス:Ar/O混合ガス
・スパッタガス圧:0.4Pa
・Oガス濃度:以下の表1に示すとおり。
・基板温度:室温
・スパッタリング電力:3W/cm
【0059】
次に、ゲート絶縁膜40としてSiOx薄膜を下記の条件で成膜した。
・成膜装置:プラズマCVD装置サムコ株式会社製PD-2202L
・成膜ガス:SiH/NO/N混合ガス
・成膜圧力:110Pa
・基板温度:150℃
次に、ゲート電極50としてMo薄膜を、前記DCスパッタリング装置を用いて成膜した。
保護層60として、SiOx薄膜を、前記プラズマCVD装置を用いて成膜した。最後に、150℃でアニール処理を実施した。アニール処理の時間は60分とした。このようにしてTFT素子1を製造した。
【0060】
得られたTFT素子1におけるチャネル層20の組成がターゲット材の組成と同じであることを、本発明者はX線光電子分光法(XPS:X-Ray Photoelectron Spectroscopy)によって確認している(以下の実施例及び比較例についても同じである。)。XPSは、試料表面にX線を照射することで生じる光電子エネルギーを測定し、試料の構成元素と、その電子状態を分析できる測定方法である。したがって、表1に示す各元素の組成は、チャネル層20とターゲット材とで同一である。
【0061】
このようにして得られたTFT素子1について、ドレイン電圧Vd=5Vでの伝達特性の測定を行った。測定した伝達特性は、電界効果移動度μ(cm/Vs)、SS(Subthreshold Swing)値(V/dec)及びしきい電圧Vth(V)である。伝達特性は、Agilent Technologies株式会社製Semiconductor Device Analyzer B1500Aによって測定した。測定結果を表1に示す。なお表に示していないが、各実施例で得られたTFT素子1のチャネル層20がアモルファス構造であることをXRD測定によって本発明者は確認している。
電界効果移動度とは、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)動作の飽和領域において、ドレイン電圧を一定としたときのゲート電圧に対するドレイン電流の変化から求めたチャネル移動度のことであり、値が大きいほど伝達特性が良好である。
SS値とは、しきい電圧近傍でドレイン電流を1桁上昇させるのに必要なゲート電圧のことであり、値が小さいほど伝達特性が良好である。
しきい電圧とは、ドレイン電極に正電圧をかけ、ゲート電極に正負いずれかの電圧をかけたときにドレイン電流が流れ、1nAとなった場合の電圧であり、値が0Vに近いことが好ましい。詳細には、-2V以上であることが更に好ましく、-1V以上であることが一層好ましく、0V以上であることが更に一層好ましい。また、3V以下であることが更に好ましく、2V以下であることが一層好ましく、1V以下であることが更に一層好ましい。具体的には、-2V以上3V以下であることが更に好ましく、-1V以上2V以下であることが一層好ましく、0V以上1V以下であることが更に一層好ましい。
【0062】
【表1】
【0063】
表1に示す結果から明らかなとおり、各実施例で得られたターゲット材を用いて製造されたTFT素子は、150℃の低温で行ったポストアニール処理によっても伝達特性が優れていることが分かる。
【0064】
〔評価3〕
実施例1及び比較例1で得られたターゲット材について、上述した方法でIn/Zn原子比率の分散率を測定した。その結果を以下の表2に示す。
【0065】
【表2】
【0066】
表2に示すとおり、実施例1では16箇所の分散率が最大でも3.9%であり、In/Zn原子比率が均質であることが裏付けられた。これに対して、比較例1で得られたターゲット材は、In/Zn原子比率が不均質であることが分かる。
なお、表には示していないが実施例2ないし5で得られたターゲット材についても、16箇所の分散率が最大でも10%以下であったことを本発明者は確認している。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のスパッタリングターゲットは、フラットパネルディスプレイ(FPD)に使用される薄膜トランジスタ(TFT)の技術分野において好適に用いることができる。また、従来のIGZOでは250℃以上の高温でのポストアニール処理が必要であったが、本発明では250℃未満の低温でのポストアニール処理でも、半導体として機能させることができる。そのため、製造に必要なエネルギーを削減可能であるため、天然資源の持続可能な管理、効率的な利用、及び脱炭素(カーボンニュートラル)を達成することにつながる。
図1