(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】オーディオ用リップルフィルター回路
(51)【国際特許分類】
H02M 7/06 20060101AFI20240119BHJP
【FI】
H02M7/06 Z
(21)【出願番号】P 2022102232
(22)【出願日】2022-06-08
【審査請求日】2022-07-23
(73)【特許権者】
【識別番号】505088330
【氏名又は名称】出川 三郎
(72)【発明者】
【氏名】出川 三郎
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-274492(JP,A)
【文献】特開昭60-226774(JP,A)
【文献】特開2008-301546(JP,A)
【文献】特開昭60-026465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源を直流に変換し正極を端子1に、負極を端子2に入力し、端子1に接続された接続点P1と端子2に接続された接続点P2間にコンデンサC1を接続し、接続点P1と接続点P11を接続し、接続点P11と接続点P12の間にチョークコイルL1と抵抗R1を並列接続し、接続点P12と接続点P3の間に、ショットキ・バリア・ダイオードのアノード側を接続点P12にカソード側を、接続点P3に接続したLCM回路を接続し、接続点P3と接続点P4の間にコンデンサC2を接続し、接続点P4は接続点P2に接続し、接続点P3は直流出力端子3に接続し直流の正極、接続点P4は端子4に接続し直流の負極を出力することを特徴とするオーディオ用リップルフイルター回路
【請求項2】
前記LCM回路はショットキ・バリア・ダイオードを1個接続若しくは複数個並列接して構成されたことを特徴とする請求項1に記載のオーディオ用リップルフイルター回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、直流電源オーディオ用リップルフィルター回路の、チョークコイルの位相遅れで発生する負荷電流遅れと電流不足、直流電源に重畳する整流ノイズを吸収する回路に関する。
【背景技術】
【0002】
真空管アンプの高圧電源にはリップルフィルター回路は不可欠である、従来の回路は大きなインダクタンスH、直流抵抗成分であるDCRもおおきくなってしまう、オーディオ電源では小さいDCR、低い電源インピーダンスが要求される、具体的には、図示省略した半波整流,両波整流、ブリッジ整流回路の出力を、
図3端子1、2間に入力される。
上記
図3の回路は、P1とP2間にコンデンサC1を、P1とP3間にチョークコイルL1を、P3とP4間にコンデンサC2が接続される。端子3,4には、
端子1,2間の入力電圧に対し位相の遅れた電流波形が出力される。
図3に示す回路が従来の
オーディオ用リップルフィルター回路である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-288180号公報
【文献】特開平07-131318号公報
【文献】特開平01-202157号公報
【文献】特開昭56-145735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図3の従来回路では、整流後の電流は、端子1から入りコンデンサC1にチャージ、チョークL1を通りコンデンサC2にチャージ出力端子3を経て、負荷に出力されている。
【0005】
端子1入力される直流成分には、後述するチョークコイルの位相遅れによる電流の低減が、交流の半サイクルごとに、数ミリセカンドの時間で発生している、さらに、整流回路が整流時に発生するノイズは何の対策もされず、音声信号に重畳しているのが現状である。
【0006】
上記の回路においてチョークL1とC2はつながっているため、チョークコイルL1の位相遅れ電流はコンデンサC2の充電電圧より、チョークコイルL1の電圧が低くなった時、コンデンサC2から負荷に流れる電流が減り、チョークコイルL1側に流れ、負荷電流がその間低減する現象が発生している。
【0007】
一般的なアンプでは不都合なく動作するが、高級志向真空管アンプでは、直流負荷電流の不足と、電源ノイズが再生音に影響を与え著しく品質が損なわれているのが現状である。
特に高級真空管アンプにはリップルノイズをなくすため、改良された、オーディオ用リップルフィルター回路は必要不可欠である
【課題を解決するための手段】
【0008】
交流電源を直流に変換し正極を端子1に、負極を端子2に入力し、端子1に接続された接続点P1と端子2に接続された接続点P2間にコンデンサC1を接続し、接続点P1と接続点P11を接続し、接続点P11と接続点P12の間にチョークコイルL1と抵抗R1を並列接続し、接続点P12と接続点P3の間に、ショットキ・バリア・ダイオードのアノード側を接続点P12にカソード側を、接続点P3に接続したLCM回路を接続し、接続点P3と接続点P4の間にコンデンサC2を接続し、接続点P4は接続点P2に接続し、接続点P3は直流出力端子3に接続し直流の正極、接続点P4は端子4に接続し直流の負極を出力することを特徴とするオーディオ用リップルフイルター回路
【0009】
前記LCM回路はショットキ・バリア・ダイオードを1個接続若しくは複数個並列接して構成されたことを特徴とする請求項1に記載のオーディオ用リップルフィルター回路。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上記のように構成したので、概略以下のような顕著な効果を奏する。
(1)接続点P11に入力された直流の脈流の電圧はチョークコイルL1の作用により、位相が遅れて接続点P12に出力される。一方接続点P11に接続された抵抗R1に入力された直流の脈流の電圧は、位相が遅れることなく接続点P12に出力される。
その結果、接続点P12には、脈流のピーク値は位相の遅れたチョークコイルL1の値と接続点P11に入力された電圧と同相の抵抗R1の出力値が合成されるので、合成された直流出力は大幅に改善され、リップルの低減と負荷電流増加が図れる。真空管アンプでは電源インピーダンスが下がることで、従来回路より中低域の音の厚みなど、音の輪郭の向上が顕著になる。
【0011】
(2)接続点P12の出力は、厳密には未だリップル成分が残存している。リップル成分残存している状態で、ショットキ・バリア・ダイオードからなるLCM回路を通してコンデンサC2に充電される。コンデンサC2の充電電圧はリップルのピーク値で充電される。次いでリップルのピーク値から谷に移行するときは、接続点P12ではコンデンサC2の電圧よりも下がるのでコンデンサC2から接続点P12の方向に逆流しようとする。しかし、ショットキ・バリア・ダイオードからなるLCM回路によって阻止される。この結果、負荷に供給される出力端子には、電流低減がなくなる。
【0012】
(3)LCM回路はショットキ・バリア・ダイオードからなり、接続点P3から接続点P12へ流れようとする電流をショットキ・バリア・ダイオードが阻止する役目と、とともにコンデンサ、LCM回路、コンデンサのπ型回路フィルターは整流回路で発生したノイズを吸収する作用をする。また、複数個ショットキ・バリア・ダイオードを使用することでVFが下がる効果が図れる。
【0013】
ここで、LCM回路を含まないπ型回路フィルターで、ノイズの除去についてフーリエ解析した結果を
図5に示す。縦軸にノイズ電圧100μV~100V、横軸に周波数200Hz/DIV示す。整流した直流がコンデンサC1を通過したノイズ波形を見ると、50Hzで30v、100Hzで200mvのノイズが残存している。
【0014】
次に、LCM回路を有するπ型回路フィルターで、ノイズの除去についてフーリエ解析した結果を
図5に示す。コンデンサC1とC2の間にLCM回路を挿入すると、グラフに示すように50Hzで250μV、100Hzで300μVになり、LCM回路によってノイズが各段に改善される効果が認められる。
【0015】
上記2つの効果により、負荷がオーディオ機器の場合、負荷電流の低減が無くなり、再生音が途切れることなく、且つリップルも低減された直流を負荷に供給するので、クリアな再生音が実現でき、付加価値を高めた今までにない高品質の画期的なオーディオ機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本願発明の
オーディオ用リップルフィルター回路全体図である。
【
図3】従来技術のリップルフィルター回路図である。
【
図4】従来のπ型フィルター回路フーリエ解析グラフ
【
図5】本願のπ型フィルター回路フーリエ解析グラフ
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示す回路が本発明の
オーディオ用リップルフィルター回路である。端子1、2間に商用電源交流から整流された直流が入力される。接続点P1とP2間にコンデンサC1接続点P11とP12間に、チョークコイルL1と抵抗R1が並列接続される。本願実施例では、チョークコイルL1の直流抵抗成分をDCR(単位オーム)と抵抗R1(単位オーム)の関係を、DCR≦R1とした。本実施例では、DCR=4オーム、R1=8オームとした。
その結果、接続点P12には、脈流のピーク値は位相の遅れたチョークコイルL1の値と接続点P11に入力された電圧と同相の抵抗R1の出力値が合成されるので、リップルノイズが低減される。
【0018】
図2に示す
LCM回路の構成は、ショットキ・バリア・ダイオード複数個並列接続し、アノード側を接続点P12に、カソード側を接続点P3にそれぞれ接続。
本願実施例では、大電流のショットキ・バリア・ダイオード順方向電流30アンペア、順方向電圧0.3ボルトの素子を6個並列接続した。
大電流のショットキ・バリア・ダイオードを6個並列接続したことによりVFは1/6となり限りなく作り付けVFに近づき、電源インピーダンスを下げられる。リップルフィルター回路全体の順方向抵抗成分を低くし、負荷に十分な電力を供給できる。この結果、負荷に供給される出力端子には、電流低減がなくなり、再生音が途切れることなく、クリアな再生音が実現できる。
【0019】
尚、本願実施例として複数のショットキ・バリア・ダイオードを並列接続した例を述べたが、本願オーディオ用リップルフィルター回路のコストを勘案し、漏れ電流は小さく、アバランシェ特性を有し、耐圧はコンデンサC1の充電電圧VC1とコンデンサC2の充電電圧VC2は、VC1>VC2なので脈流分の電圧に相当する耐圧があればよい。現存の製造上理論限界値30Vを満たすショットキ・バリア・ダイオードであれば、LCM回路の構成はショットキ・バリア・ダイオード1個でもよい。
【符号の説明】
【0020】
1 整流回路(+)からの入力端子
2 整流回路(-)からの入力端子
3 直流(+)出力端子
4 直流(-)出力端子
C1 コンデンサ
C2 コンデンサ
LCM ショットキ・バリア・ダイオード1個若しくは複数個並列体
SBD1・SBD2・SBDn ショットキ・バリア・ダイオード