(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】生産指標表示方法および生産管理装置
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20240119BHJP
H05K 13/02 20060101ALI20240119BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
H05K13/02 Z
(21)【出願番号】P 2022092744
(22)【出願日】2022-06-08
(62)【分割の表示】P 2018173173の分割
【原出願日】2018-09-18
【審査請求日】2022-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】竹原 裕起
(72)【発明者】
【氏名】山崎 琢也
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/203533(WO,A1)
【文献】特開平09-035103(JP,A)
【文献】特開2020-046789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
H05K 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを搬送して生産作業を行う複数の生産設備が連結した生産ラインにおいて複数の品種の製品を生産する生産能力を示す生産指標を表示する生産指標表示方法であって、
所定期間に生産が計画される複数の前記品種毎に、生産時間と品種の切り替え時間とに基づく第1の生産指標を算出し、
前記第1の生産指標と前記所定期間に生産が計画される複数の前記品種毎の前記生産時間を併せて表示し、
複数の前記品種毎の前記生産時間は、前記生産時間の長さに応じた複数の矩形の形状で表示
し、
複数の前記矩形の形状の間の時間は、前記生産時間の段取り作業時間または段取り作業の着手を待機している待機時間で表わされる、生産指標表示方法。
【請求項2】
複数の前記品種毎の前記生産時間に基づく第2の生産指標を算出し、
前記第2の生産指標を、前記第1の生産指標と合わせて表示する、請求項1に記載の生産指標表示方法。
【請求項3】
前記生産ラインはフロアにおいて複数存在し、
前記生産ラインを複数備えたフロア全体の第1の生産指標の平均値および第2の生産指標の平均値を合わせて表示する、請求項
2に記載の生産指標表示方法。
【請求項4】
前記生産時間は、ワークが隣の前記生産設備に搬送されるのを待つ第1の待機時間が含まれる、請求項1から
3のいずれか1項に記載の生産指標表示方法。
【請求項5】
ワークを搬送して生産作業を行う複数の生産設備が連結した生産ラインにおいて複数の品種の製品を生産する生産能力を示す生産指標を表示する生産管理装置であって、
所定期間に生産が計画される複数の前記品種毎に、生産時間を算出する生産時間算出部と、
複数の前記品種毎に、前記生産時間と品種の切り替え時間とに基づく第1の生産指標を算出する生産指標算出部と、
前記第1の生産指標と前記所定期間に生産が計画される複数の前記品種毎の前記生産時間を併せて表示する表示部と、を備え、
前記表示部は、複数の前記品種毎の前記生産時間を、前記生産時間の長さに応じた複数の矩形の形状で表示
し、
複数の前記矩形の形状の間の時間は、前記生産時間の段取り作業時間または段取り作業の着手を待機している待機時間で表わされる、生産管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産ラインにおいて複数の品種の製品を生産する生産指標を表示する生産指標表示方法および生産管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に部品を実装した実装基板などの製品を複数の生産設備で搬送しながら生産する生産ラインでは、複数の品種の製品が生産されるように生産計画が作成される。生産計画を作成するにあたって製品の生産に要するサイクルタイムが算出され、そのサイクルタイムを用いて生産計画が作成される。特許文献1には、生産ラインを構成する各生産設備のサイクルタイムを取得して、ボトルネックとなる生産設備のサイクルタイムを超えないようにその他の生産設備を構成した生産計画を作成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複数の品種の製品を連続的に生産する場合は、生産設備の稼働を停止させて生産設備の構成を変更する品種の切り替えが必要な品種もあり、精度の高い生産計画を作成するためには、品種の切り替え時間等の製品を生産する時間以外の時間も考慮した生産計画を作成するための生産指標が必要であるという課題があった。
【0005】
そこで本発明は、より実生産に近い生産指標を提供することができる生産指標表示方法および生産管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の生産指標表示方法は、ワークを搬送して生産作業を行う複数の生産設備が連結した生産ラインにおいて複数の品種の製品を生産する生産能力を示す生産指標を表示する生産指標表示方法であって、所定期間に生産が計画される複数の前記品種毎に、生産時間と品種の切り替え時間とに基づく第1の生産指標を算出し、前記第1の生産指標と前記所定期間に生産が計画される複数の前記品種毎の前記生産時間を併せて表示し、複数の前記品種毎の前記生産時間は、前記生産時間の長さに応じた複数の第1形状で表示する。
【0007】
本発明の生産管理装置は、ワークを搬送して生産作業を行う複数の生産設備が連結した生産ラインにおいて複数の品種の製品を生産する生産能力を示す生産指標を表示する生産管理装置であって、所定期間に生産が計画される複数の前記品種毎に、生産時間を算出する生産時間算出部と、複数の前記品種毎に、前記生産時間と品種の切り替え時間とに基づく第1の生産指標を算出する生産指標算出部と、前記第1の生産指標と前記所定期間に生産が計画される複数の前記品種毎の前記生産時間を併せて表示する表示部と、を備え、前記表示部は、複数の前記品種毎の前記生産時間を、前記生産時間の長さに応じた複数の第1形状で表示する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、より実生産に近い生産指標を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施の形態の部品実装システムの構成説明図
【
図2】本発明の一実施の形態の部品実装システムが備える部品実装ラインの構成説明図
【
図3】本発明の一実施の形態の部品実装システムが備える部品実装ラインにおける生産時間の説明図
【
図4】本発明の一実施の形態の部品実装システムが備える部品実装装置における待機時間の説明図
【
図5】本発明の一実施の形態の管理コンピュータ(生産管理装置)の構成を示すブロック図
【
図6】本発明の一実施の形態の管理コンピュータ(生産管理装置)が備える表示部に表示された生産指標表示画面の一例を示す図
【
図7】本発明の一実施の形態の生産指標表示方法のフローを示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を用いて、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。以下で述べる構成、形状等は説明のための例示であって、部品実装システム、部品実装ライン、印刷装置、部品実装装置の仕様に応じ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において対応する要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図2では、紙面右側を基板搬送方向の上流側、紙面左側を基板搬送方向の下流側と称し、紙面下側を前側、紙面上側を後側と称する。
【0011】
まず
図1を参照して、部品実装システム1の構成を説明する。部品実装システム1は、フロアFに配置された4本の部品実装ラインL1~L4が有線または無線による通信ネットワーク2によって接続され、管理コンピュータ3によって管理される構成となっている。各部品実装ラインL1~L4は、後述するように部品実装装置を含む複数の生産設備を連結して構成され、基板に部品を実装した実装基板を製造する機能を有している。なお、部品実装システム1が備える部品実装ラインは4本である必要はなく、1本、2本、3本及び5本以上でも良い。
【0012】
次に
図2を参照して、部品実装ラインL1~L4の詳細な構成を説明する。部品実装ラインL1~L4は同様の構成をしており、以下、部品実装ラインL1について説明する。部品実装ラインL1は、上流側から下流側に向けて配置された基板供給装置M1F,M1R、印刷装置M2、部品実装装置M3、部品実装装置M4、基板振分け装置M5、リフロー装置M6F,M6R、基板回収装置M7F,M7Rを通信ネットワーク2によって接続し、全体が管理コンピュータ3によって制御される構成となっている。
【0013】
印刷装置M2、部品実装装置M3、部品実装装置M4、基板振分け装置M5は、基板4を搬送する前側の搬送レーン5Fおよび後側の搬送レーン5Rを備えている。印刷装置M2、部品実装装置M3、部品実装装置M4、基板振分け装置M5において、前側の搬送レーン5Fは隣接する装置の前側の搬送レーン5Fと互いに連結されており、後側の搬送レーン5Rは隣接する装置の後側の搬送レーン5Rと互いに連結されている。
【0014】
図2において、前側の基板供給装置M1Fが備える搬送レーン5Fは、印刷装置M2の前側の搬送レーン5Fと連結されている。後側の基板供給装置M1Rが備える搬送レーン5Rは、印刷装置M2の後側の搬送レーン5Rと連結されている。基板供給装置M1F,M1Rは、複数のワークである基板4を収納するラック等の収納部を含む供給機構6を備えており、供給機構6によって収納部から取り出した基板4を下流側の装置に供給する基板供給作業を実行する。すなわち、前側の基板供給装置M1Fは印刷装置M2の前側の搬送レーン5Fに基板4を供給し、後側の基板供給装置M1Rは印刷装置M2の後側の搬送レーン5Rに基板4を供給する。
【0015】
印刷装置M2は、前側の搬送レーン5Fを含んで構成される前側の印刷機構7Fと、後側の搬送レーン5Rを含んで構成される後側の印刷機構7Rを備えている。2つの印刷機構7F,7Rは、それぞれ上流側から搬入された基板4の電極にマスクを介して半田を印刷(堆積)する半田印刷作業を実行する。なお、印刷機構7F,7Rは、ディスペンサによって基板4に半田を堆積する構成でもよい。印刷装置M2において、生産する実装基板(製品)の品種が変更される際は、作業者によるマスクの交換などの段取り作業が行われる。
【0016】
また、部品実装ラインL1が備える2つの印刷機構7F,7Rは、2つの印刷機構7F,7Rを有する印刷装置M2で構成される構成に限定されることはない。例えば、1つの印刷機構を備える印刷装置を2台背面合わせで配置して、それぞれ前側の搬送レーン5Fおよび後側の搬送レーン5Rに連結する構成で実現してもよい。
【0017】
図2において、部品実装装置M3,M4は、前側の搬送レーン5Fの前側と後側の搬送レーン5Rの後側に、部品供給部8をそれぞれ備えている。部品供給部8には、基板搬送方向に並ぶ複数のテープフィーダ9がセットされている。テープフィーダ9は、キャリアテープに保持された部品をピッチ送りして、実装ヘッド10F,10Rによるピックアップ位置まで供給する。
【0018】
実装ヘッド10F,10Rは、図示省略するヘッド移動機構によって水平方向に移動して、それぞれ部品供給部8から供給された部品を吸着ノズルによりピックアップして前側の搬送レーン5Fまたは後側の搬送レーン5Rの実装作業位置に位置決めされた基板4に実装する。すなわち、実装ヘッド10F,10Rは、並行に配置されたワーク(基板4)を搬送する複数のレーン(前側の搬送レーン5F、後側の搬送レーン5R)と、複数のレーンに搬送されるワークに対して生産作業(部品実装作業)を行う作業手段である。このように、部品実装装置M3,M4は、半田が堆積された基板4(ワーク)に部品を実装ヘッド10F,10Rで実装する。
【0019】
実装ヘッド10F,10Rによる部品実装作業は、部品実装装置M3,M4が備える制御部によって制御され、生産する実装基板の品種に応じて独立実装モード、交互実装モードなど複数のモードで実行される。独立実装モードでは、前側の実装ヘッド10Fは前側の搬送レーン5Fの実装作業位置に位置決めされた基板4に部品を実装し、後側の実装ヘッド10Rは後側の搬送レーン5Rの実装作業位置に位置決めされた基板4に部品を実装する。独立実装モードでは、各実装ヘッド10F,10Rが基板4に部品を実装するタイミングは互いに独立であり、部品実装作業における各実装ヘッド10F,10Rの移動距離も短いため、部品実装の作業効率が高いという特徴がある。
【0020】
交互実装モードでは、前側の搬送レーン5Fの実装作業位置に位置決めされた基板4または後側の搬送レーン5Rの実装作業位置に位置決めされた基板4のいずれか一つに対して、前側の実装ヘッド10Fと後側の実装ヘッド10Rが交互に部品を実装する。交互実装モードでは、一方の実装ヘッド10F,10Rがテープフィーダ9の部品を吸着している間に、他方の実装ヘッド10F,10Rが基板4に部品を実装することで、作業効率の向上を図ることができる。また、一方の搬送レーン5F,5Rで基板4の搬送をしている間に、他方の搬送レーン5F,5Rの実装作業位置に位置決めされた基板4に対する部品実装を行うことで、作業効率の向上を図ることができる。
【0021】
なお、交互実装モードでは、一方の搬送レーン5F,5Rに位置決めされた基板4に対する部品実装が行われている間に、他方の搬送レーン5F,5Rにおいて次に実装作業の対象となる基板4の位置決めが完了すると、次の基板4は一方の搬送レーン5F,5Rに位置決めされた基板4に対する部品実装が終了するまで待機する必要がある。すなわち、作業手段(実装ヘッド10F,10R)が複数のレーン(前側の搬送レーン5F、後側の搬送レーン5R)のうちの一のレーンに搬送されたワーク(基板4)に対して生産作業を行っている間に、複数のレーンのうちの他のレーンに搬送されたワークが作業手段による生産作業を待つ作業待機時間Tw(第2の待機時間)が発生する。
【0022】
部品実装装置M3,M4において、生産する実装基板の品種が変更される際は、作業者によるテープフィーダ9の交換、吸着ノズルの交換などの段取り作業が行われる。なお、変更後の実装基板に実装される部品を供給するテープフィーダ9が既に部品供給部8にセットされている場合は、段取り作業時のテープフィーダ9の交換を省略することができる。また、部品実装ラインL1が備える部品実装装置M3,M4は2台である必要はなく、1台、又は3台以上でも良い。
【0023】
図2において、基板振分け装置M5は、部品実装装置M4の前側の搬送レーン5Fから基板4を受け取って前側のリフロー装置M6Fの搬送レーン5Fに受け渡す基板通過機構を備えている。また、基板振分け装置M5は、部品実装装置M4の後側の搬送レーン5Rから受け取った基板4を後側(矢印a)に移動させて後側のリフロー装置M6Rの搬送レーン5Rに受け渡す基板振分け機構を備えている。
【0024】
基板振分け装置M5は、上流側の部品実装装置M4と下流側のリフロー装置M6F,M6Rの搬送レーン5F,5Rの位置のずれを吸収して基板4を搬送する装置である。そのため、部品実装装置M4とリフロー装置M6F,M6Rの搬送レーン5F,5Rの位置が同じ場合は、基板振分け装置M5を使用することなく部品実装装置M4とリフロー装置M6F,M6Rの搬送レーン5F,5Rを直接連結してもよい。
【0025】
図2において、リフロー装置M6F,M6Rは、基板4を上流側から下流側に搬送しながら部品が搭載された基板4を加熱して半田を融解させた後に固化させて部品を基板4に半田付けするリフロー機構11を備えている。前側のリフロー装置M6Fが備える搬送レーン5Fは、前側の基板回収装置M7Fが備える搬送レーン5Fと連結されている。後側のリフロー装置M6Rが備える搬送レーン5Rは、後側の基板回収装置M7Rが備える搬送レーン5Rと連結されている。
【0026】
基板回収装置M7F,M7Rは、複数の基板4を収納するラック等の収納部を含む回収機構12を備えており、上流側の装置が搬出する基板4を受け取って回収機構12によって収納部に回収する基板回収作業を実行する。すなわち、前側の基板回収装置M7Fは前側のリフロー装置M6Fが搬出した基板を回収し、後側の基板回収装置M7Rは後側のリフロー装置M6Rが搬出した基板4を回収する。このように、部品実装ラインL1~L4は、ワーク(基板4)を搬送して生産作業を行う複数の生産設備が連結した生産ラインである。
【0027】
次に、
図2~
図4を参照しながら、部品実装ラインL1において実装基板を生産する手順について説明する。まず、部品実装ラインL1において基板4の両面に部品を実装した両面実装基板を生産する例を説明する。
図3は、部品実装ラインL1における実装基板の生産を時系列で示している。以下、部品実装ラインL1における前側の搬送レーン5FをレーンL1F、後側の搬送レーン5RをレーンL1Rと称す。
【0028】
図3において、まず部品実装ラインL1では、品種aaの両面実装基板(ロットA)を生産するための段取り作業が行われる。具体的には、印刷装置M2におけるマスクの交換、部品実装装置M3,M4におけるテープフィーダ9の交換、吸着ノズルの交換、リフロー装置M6F,M6Rにおける加熱条件の変更などが実行される。前の品種から品種aaへの切り替えに要する品種の切り替え時間を段取り作業時間Tc1と称す。段取り作業によって、前側のレーンL1Fにおいて基板4の表面側に部品を実装し、後側のレーンL1Rにおいて基板4の裏面側に部品を実装する準備が完了する。
【0029】
品種aaの両面実装基板の生産では、まず作業者は、前側の基板供給装置M1Fの収納部に表面側を上に向けた複数の基板4を収納する。以下、表面側を上に向けた基板4をロットA_Tと称する。ロットA_Tの基板4がセットされると、前側の基板供給装置M1Fは基板4を下流側の印刷装置M2に供給し、印刷装置M2は前側の印刷機構7Fによって基板4の表面側に半田を印刷(堆積)する。次いで部品実装装置M3,M4は、交互実装モードにより前側の搬送レーン5Fに位置決めされた基板4の表面側に部品を実装する。
【0030】
次いで基板振分け装置M5を介して前側のリフロー装置M6Fに基板4が搬送されて、前側のリフロー装置M6Fによって部品が半田付けされる。次いで前側の基板回収装置M7Fの収納部に表面側に部品が半田付けされた基板4が回収される。前側のレーンL1Fでは、前側の基板供給装置M1Fの収納部が空になると、作業者はロットA_Tの基板4を収納部にセットする。このように、前側のレーンL1FではロットA_Tの基板4の表面側に部品が半田付けされて、前側の基板回収装置M7Fの収納部に順次収納される。
【0031】
図3において、前側の基板回収装置M7Fの収納部に所定数(例えば10枚)の基板4が回収されると、作業者は回収された基板4を後側の基板供給装置M1Rまで運び(矢印b)、後側の基板供給装置M1Rの収納部に基板4の裏面側を上に向けて収納する。以下、裏面側を上に向けた基板4をロットA_Bと称する。なお、前側の基板回収装置M7Fから後側の基板供給装置M1Rまで、自動搬送装置が基板4を搬送してもよい。
【0032】
ロットA_Bの基板4がセットされると、後の基板供給装置M1Rは基板4を下流側の印刷装置M2に供給し、印刷装置M2は後側の印刷機構7Rによって基板4の裏面側に半田を印刷(堆積)する。次いで部品実装装置M3,M4は基板4の裏面側に部品を実装し、後側のリフロー装置M6Rによって部品が半田付けされる。次いで後側の基板回収装置M7Rの収納部に両面に部品が半田付けされた基板4(両面実装基板)が回収される。作業者は、後側の基板回収装置M7Rの収納部に所定数の基板4が回収されると、収納部より基板4を取り出す。
【0033】
このように、部品実装ラインL1の前側のレーンL1F(一のレーン)で基板4(ワーク)に対する表面側への部品の実装(第1の生産作業)が行われ、部品実装ラインL1の後側のレーンL1R(他のレーン)で基板4(ワーク)に対する裏面側への部品の実装(第2の生産作業)が行われる。
【0034】
図3において、部品実装ラインL1におけるロットAの基板4の両面への部品実装作業に要する生産時間Tpaは、前側の基板供給装置M1Fに最初の基板4がセットされてから、後側の基板回収装置M7Rに両面に部品が実装された最後の基板4が回収せれるまでの時間である。すなわち、生産時間Tpaは、複数のレーンL1F,L1Rのうちのいずれかで生産作業が開始されてから、複数のレーンL1F,L1Rの全てで生産作業が終了するまでの時間である。
【0035】
図4は、品種aaの両面実装基板の生産における部品実装装置M3における部品実装作業の詳細を示している。前側の搬送レーン5Fにおいて基板4uの表面側に交互実装モードにより部品実装作業(以下、単に「実装T」と称する。)が実行されている間に、後側の搬送レーン5Rには、前側のレーンL1Fにおいて表面側に部品が実装された基板4aが裏面側を上に向けて実装作業位置まで搬入される。基板4uの実装Tが終了すると、後側の搬送レーン5Rにおいて基板4aの裏面側に対する交互実装モードによる部品実装作業(以下、単に「実装B」と称する。)が開始される。
【0036】
すなわち、基板4aが実装作業位置に位置決めされてから基板4uの実装Tが終了するまで、基板4a(ワーク)が実装ヘッド10F,10R(作業手段)による実装B(生産作業)の開始を待つ作業待機時間Tw1(第2の待機時間)が発生する。基板4aの実装Bの間に、前側の搬送レーン5Fでは基板4uの搬出と次の基板4vの搬入が実行される。基板4aの実装Bが終了すると、基板4vの実装Tが開始される。すなわち、基板4vの搬入後、作業待機時間Tw2後に基板4vの実装Tが開始される。
【0037】
図4において、基板4vの実装Tの間に、後側の搬送レーン5Rでは基板4aの搬出と次の基板4bの搬入が実行され、作業待機時間Tw3後に基板4bの実装Bが開始される。一方、基板4vの実装Tが終了した時点で、下流側の部品実装装置M4の前側の搬送レーン5Fには部品実装作業中、エラー処理中、搬出待機中などの理由により前の基板4uが残っている。そのため、基板4vは下流の搬送レーン5Fが搬入可能になるまで待機する搬出待機時間Tt1(第1の待機時間)が発生する。すなわち、ワーク(基板4)が隣の生産設備(部品実装装置M4)に搬送されるのを待つ第1の待機時間(搬出待機時間Tt1)が発生する。
【0038】
部品実装装置M3の前側の搬送レーン5Fでは、基板4vの実装Tが終了してから搬出待機時間Tt1後から基板4vの搬出と次の基板4wの搬入が実行される。部品実装装置M3の後側の搬送レーン5Rでは、基板4bの実装Bが終了した時点で下流側の部品実装装置M4の後側の搬送レーン5Fに基板4aがあるため、搬出待機時間Tt2後に基板4bの搬出と次の基板4cの搬入が開始される。基板4cの搬入が終了した時点で、基板4wの実装Tが実行中であるため、作業待機時間Tw4後に基板4cの実装Bが開始される。
【0039】
このように、部品実装ラインL1における品種aaの生産時間Tpaには、ワーク(基板4)が隣の生産設備に搬送されるのを待つ第1の待機時間(搬出待機時間Tt)と、作業手段(実装ヘッド10F,10R)が複数のレーンL1F,L1Rのうちの一のレーンに搬送されたワークに対して生産作業(実装T、実装B)を行っている間に、複数のレーンL1F,L1Rのうちの他のレーンL1F,L1Rに搬送されたワークが作業手段による生産作業を待つ第2の待機時間(作業待機時間Tw)が含まれる。
【0040】
図3において、部品実装ラインL1では、品種aaの生産が終了すると、段取り作業時間Tc2の段取り作業が実行されて、前側のレーンL1Fで品種bbの実装基板(ロットB)、後側のレーンL1Rで品種ccの実装基板(ロットC)の生産が実行される。品種bbの部品実装作業に要する生産時間Tpbと品種ccの部品実装作業に要する生産時間Tpcには、品種aaの生産時間Tpaと同様に第1の待機時間(搬出待機時間Tt)と第2の待機時間(作業待機時間Tw)が含まれている。
【0041】
次に
図5を参照して、管理コンピュータ3の構成について説明する。管理コンピュータ3は、処理部20、記憶装置である生産計画記憶部24、ライン情報記憶部25、算出情報記憶部26の他、入力部27、表示部28を備えている。処理部20はCPUなどのデータ処理装置であり、内部処理部として生産時間算出部21、生産指標算出部22、表示処理部23を備えている。なお、管理コンピュータ3は、ひとつのコンピュータで構成する必要はなく、複数のデバイスで構成してもよい。例えば、記憶装置の全てもしくは一部をサーバを介してクラウドに備えてもよい。
【0042】
入力部27は、キーボード、タッチパネル、マウスなどの入力装置であり、操作コマンドやデータ入力時などに用いられる。表示部28は液晶パネルなどの表示装置であり、各記憶部が記憶する各種データを表示する他、入力部27による操作のための操作画面、生産指標表示画面などの各種情報を表示する。
【0043】
図5において、生産計画記憶部24には、生産計画情報24a、品種情報24b、段取り作業情報24cなどが記憶されている。生産計画情報24aには、生産される実装基板のロット毎に、生産する品種を特定する情報、生産枚数、実装基板を生産する部品実装ラインL1~L4を特定する情報、生産順序などを含む生産計画が記憶されている。
【0044】
品種情報24bには、生産される実装基板の品種毎に、基板4に実装される部品の部品種、実装位置など部品実装作業に必要な情報などが記憶されている。例えば、品種情報24bには、品種毎に基板4に実装される部品数(実装点数)、部品実装作業のモード(独立実装モード、交互実装モード)が含まれている。段取り作業情報24cには、予め生産順序、実装される部品の部品種などに基づいて決められた生産する品種を切り替える段取り作業の計画、予測される段取り作業時間Tc(品種の切り替え時間)などが記憶されている。
【0045】
図5において、ライン情報記憶部25には、ライン構成情報25a、生産設備情報25bなどが記憶されている。ライン構成情報25aには、各部品実装ラインL1~L4を構成する生産設備の種類、連結された順番などの生産ラインの構成に関する情報が記憶されている。生産設備情報25bには、部品実装ラインL1~L4を構成する生産設備の種類別に、生産作業における作業毎の所要時間など生産に要する時間に関する情報が記憶されている。例えば、生産設備情報25bには、各生産設備における基板4の搬入時間、搬出時間、印刷装置M2における基板1枚あたりの印刷時間、部品実装装置M3,M4における部品1個あたりの実装時間の他、部品実装装置M3,M4における吸着ミスなど生産作業が中断される工程の発生確率などが記憶されている。
【0046】
算出情報記憶部26には、実装時間情報26a、待機時間情報26b、生産時間情報26c、生産指標情報26dなどが記憶されている。生産時間算出部21は、内部処理部として実装時間算出部21a、待機時間算出部21bを備えている。実装時間算出部21aは、生産計画情報24a、品種情報24b、ライン構成情報25a、生産設備情報25bに基づいて、品種毎に基板(製品)1枚あたりの実装時間(生産作業時間)を算出して実装時間情報26aとして算出情報記憶部26に記憶させる。
【0047】
待機時間算出部21bは、生産計画情報24a、品種情報24b、ライン構成情報25a、生産設備情報25bに基づいて、各品種の基板4毎に待機時間(搬出待機時間Tt、作業待機時間Tw)を算出して待機時間情報26bとして算出情報記憶部26に記憶させる。待機時間算出部21bは、生産装置で発生する作業の中断、前の装置における基板4の搬送待ちなど、所定の頻度で発生する事象も発生確率に基づいてシミュレーションして待機時間を算出する。
【0048】
生産時間算出部21は、生産計画情報24aに含まれる生産枚数、実装時間情報26a、待機時間情報26b、生産設備情報25bに含まれる基板4の搬入時間、搬出時間に基づいて、所定期間に生産が計画される複数の品種毎に、生産時間Tpを算出して生産時間情報26cとして算出情報記憶部26に記憶させる。
【0049】
図5において、生産指標算出部22は、生産時間情報26cに含まれる生産時間Tp、段取り作業情報24cに含まれる段取り作業時間Tc(品種の切り替え時間)に基づいて、複数の品種毎に製品を生産する生産能力を示す予測生産指標(第1の生産指標)を算出して生産指標情報26dとして算出情報記憶部26に記憶させる。予測生産指標は、実際の製品の生産で発生する生産作業以外の段取り作業、待機時間など生産以外の時間を考慮した生産能力を示す指標であり、1時間当たりに基板4に実装される部品数(実装点数)で表される。具体的には、予測生産指標は、実装基板(製品)に実装される部品数にロットの生産枚数を掛けた総実装部品数を生産時間Tpと段取り作業時間Tcの和で除して算出される。
【0050】
また、生産指標算出部22は、実装時間情報26aに含まれる基板(製品)1枚あたりの実装時間(生産作業時間)に基づいて、段取り作業時間Tcや待機時間を含まない理想的な理想生産指標(第2の生産指標)を算出して生産指標情報26dとして算出情報記憶部26に記憶させる。すなわち生産指標算出部22は、所定期間に生産が計画される複数の品種毎に、待機時間を含まない生産時間Tpに基づく理想生産指標(第2の生産指標)を算出する。なお、生産指標として待機時間を含む生産時間Tpに基づく第3の生産指標を用いてもよい。
【0051】
図5において、表示処理部23は、生産計画情報24a、生産指標情報26dに基づいて、部品実装ラインL1~L4(生産ライン)毎に所定期間の予測生産指標の平均値、理想生産指標の平均値、理想生産指標の平均値に対する予測生産指標の平均値の比率、部品実装ラインL1~L4の予測生産指標の平均値と理想生産指標の平均値の合計値(フロア合計)などを算出して、表示部28に生産指標表示画面として表示させる。すなわち、表示部28は、第1の生産指標(予測生産指標)、第2の生産指標(理想生産指標)、第1の生産指標の平均値、第2の生産指標の平均値、生産ライン毎の第1の生産指標の平均値と、生産ライン毎の第1の生産指標の平均値の合計値などを表示する。
【0052】
ここで
図6を参照して、表示部28に表示された生産指標表示画面30の例について説明する。生産指標表示画面30には、フロアFで生産される実装基板のロット毎の生産時間TpをフロアFに配置された部品実装ラインL1~L4のレーン毎に時系列で表示する生産時間表示領域31、部品実装ラインL1~L4毎のライン平均の生産指標を表示するライン平均表示領域32、生産指標のフロア合計を表示するフロア合計表示領域33が含まれている。生産時間表示領域31に表示された矩形はロット毎の生産時間Tpを表しており、矩形の間は段取り作業時間Tcまたは部材待ちなどで段取り作業の着手を待機している時間を表している。
【0053】
ライン平均表示領域32には、部品実装ラインL1~L4毎に予測生産指標(第1の生産指標)の平均値、理想生産指標(第2の生産指標)の平均値、理想生産指標の平均値に対する予測生産指標の平均値の比率が表示されている。フロア合計表示領域33には、予測生産指標(第1の生産指標)の平均値、理想生産指標(第2の生産指標)の平均値のフロア合計(部品実装ラインL1~L4の合計)と、フロア全体の理想生産指標の平均値に対する予測生産指標の平均値の比率が表示されている。このように、表示部28は、第2の生産指標(理想生産指標)の平均値を第1の生産指標(予測生産指標)の平均値と比較して表示する。
【0054】
次に
図7のフローに沿って、生産ライン(部品実装ラインL1~L4)において複数の品種の製品(実装基板)を生産する生産能力を示す生産指標を表示する生産指標表示方法について説明する。まず、管理コンピュータ3(生産管理装置)において、実装時間算出部21aは品種毎に基板4(製品)1枚あたりの実装時間(生産作業時間)を算出して実装時間情報26aとして記憶し、待機時間算出部21bは基板4毎に待機時間(搬出待機時間Tt、作業待機時間Tw)を算出して待機時間情報26bとして記憶させる(ST1)。
【0055】
次いで生産時間算出部21は、実装時間情報26a、待機時間情報26bに基づいて、ロット毎(品種毎)に生産時間Tpを算出して生産時間情報26cとして記憶させる(ST2:生産時間算出工程)。次いで生産指標算出部22は、生産時間情報26cに基づいて、所定期間に生産が計画される複数の品種毎に、生産時間Tpと段取り作業時間Tc(品種の切り替え時間)とに基づく予想生産指標(第1の生産指標)、生産時間Tpに基づく理想生産指標(第2の生産指標)を算出して生産指標情報26dとして記憶させる(ST3:生産指標算出工程)。
【0056】
次いで表示処理部23は、生産ライン毎の第1の生産指標の平均値と、生産ライン毎の前記第1の生産指標の平均値の合計値を算出し、第2の生産指標の平均値を第1の生産指標の平均値と比較して表示する生産指標表示画面30を表示部28に表示させる(ST4:生産指標表示工程)。これによって、より実生産に近い生産指標(予測生産指標)を表示部28に表示させて管理者に提供することができる。
【0057】
なお、特定ロットに対する生産ライン毎の第1の生産指標と、第2の生産指標と、第2の生産指標を第1の生産指標と比較した比較値とを生産指標表示画面30に表示させてもよい。また、両面実装基板のロットであれば、表側と裏側の合計とともにそれぞれ分けて、第1の生産指標、第2の生産指標、第2の生産指標を第1の生産指標と比較した比較値とを生産指標表示画面30に表示させてもよい。
【0058】
上記説明したように、本実施の形態の管理コンピュータ3は、所定期間に生産が計画される複数の品種毎に、生産時間Tpを算出する生産時間算出部21と、複数の品種毎に、生産時間Tpと品種の切り替え時間(段取り作業時間Tc)とに基づく第1の生産指標(予測生産指標)を算出する生産指標算出部22と、第1の生産指標を表示する表示部28と、を備え、ワーク(基板4)を搬送して生産作業(部品実装作業)を行う複数の生産設備が連結した生産ライン(部品実装ラインL1~L4)において複数の品種の製品(実装基板)を生産する生産能力を示す生産指標を表示する生産管理装置である。これによって、より実生産に近い生産指標(予測生産指標)を表示部28に表示させて管理者に提供することができる。
【0059】
以上、本発明の一実施の形態を基に説明した。この実施の形態は、生産ラインで生産される製品の種類、組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。例えば生産ラインは、生産物である電子機器を組み立てる組立ラインであっても、生産物である食品加工製品を製造する食品加工ラインであってもよい。
【0060】
なお、ライン平均表示領域32における部品実装ラインL1~L4毎に予測生産指標(第1の生産指標)の平均値、理想生産指標(第2の生産指標)の平均値、理想生産指標の平均値に対する予測生産指標の平均値の比率は、生産時間表示領域31に表示される全てのロットの平均値であっても、表示されていない過去のロットを含む平均値であっても、作業者による選択やあらかじめ設定された任意のロットの平均値であってもよい。
【0061】
また、ライン平均表示領域32の各部品実装ラインL1~L4の平均値に入力デバイスでカーソルを合わせたり、タッチしたり、クリックしたりすることで、対象のロットを表す矩形の色をその他のロットを表す矩形の色と変えてもよい。また、各実装ラインのうち、予測値と理想値との差異が最も小さいライン平均表示領域32と予測値と理想値との差異が最も大きいライン平均表示領域32の色を変えてもよい。このようにすることで、作業者の視認性がよくなる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の生産指標表示方法および生産管理装置は、より実生産に近い生産指標を提供することができるという効果を有し、部品を基板に実装する分野において有用である。
【符号の説明】
【0063】
3 管理コンピュータ(生産管理装置)
4,4a~4c,4u~4w 基板(ワーク)
10F,10R 実装ヘッド
L1~L4 部品実装ライン(生産ライン)
M2 印刷装置(生産装置)
M3,M4 部品実装装置(生産装置)
Tc1,Tc2 段取り作業時間(品種の切り替え時間)
Tpa~Tpc 生産時間
Tt1,Tt2 搬出待機時間(第1の待機時間)
Tw1~Tw4 作業待機時間(第2の待機時間)