(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/70 20180101AFI20240119BHJP
F24F 3/14 20060101ALI20240119BHJP
F24F 3/044 20060101ALI20240119BHJP
F24F 6/16 20060101ALI20240119BHJP
F24F 5/00 20060101ALI20240119BHJP
F24F 11/74 20180101ALI20240119BHJP
F24F 11/80 20180101ALI20240119BHJP
F24F 110/10 20180101ALN20240119BHJP
F24F 110/30 20180101ALN20240119BHJP
【FI】
F24F11/70
F24F3/14
F24F3/044
F24F6/16
F24F5/00 K
F24F11/74
F24F11/80
F24F110:10
F24F110:30
(21)【出願番号】P 2020112212
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2023-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】岸本 如水
(72)【発明者】
【氏名】福本 将秀
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-063899(JP,A)
【文献】特開平5-248690(JP,A)
【文献】特開2018-173200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00-11/89
F24F 3/14
F24F 3/044
F24F 6/00-6/18
F24F 5/00
F24F 110/10
F24F 110/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外から空気を導入可能に構成された空調室と、
前記空調室に設置され、前記空調室の空気を温調する空調機と、
前記空調室に設置され、前記空調機によって温調された空気を加湿する加湿装置と、
前記空調室の空気を前記空調室とは独立した複数の屋内空間に搬送する複数の搬送ファンと、
前記空調機、前記加湿装置、及び前記搬送ファンを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、屋内の空気の温度を目標温度に温調するために、前記空調機によって前記目標温度よりも高い温度である第一温度に昇温した前記空調室の空気を用いる温調制御を行う際、前記屋内の空気の湿度が目標湿度以上となっている場合には、前記屋内の空気の温度が上昇して前記目標温度に到達すると、前記空調機によって前記空調室の空気を前記第一温度よりも低い温度である第二温度に温調する第一制御を行うとともに、前記屋内の空気の湿度が前記目標湿度未満である場合には、前記屋内の空気の温度が上昇して前記目標温度に到達すると、前記空調機によって前記空調室の空気を前記第一温度に維持して温調する第二制御を行うように制御することを特徴とする空調システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記第二制御を行う場合には、前記搬送ファンによって前記屋内空間に搬送する送風量を、前記屋内の空気の温度が前記目標温度に到達した際に設定されていた第一送風量から、前記第一送風量よりも少ない風量である第二送風量に減少させることを特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記屋内の空気の温湿度を取得して前記制御部に送信する温湿度センサをさらに備え、
前記制御部は、前記温湿度センサからの温湿度に関する情報に基づいて、前記空調機に対して前記屋内の空気の温度を前記目標温度に温調する温調制御を行うとともに、前記加湿装置に対して前記屋内の空気の湿度を前記目標湿度に加湿する調湿制御を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記加湿装置は、前記空調機によって温調された空気を装置内に導入する遠心ファンと、前記遠心ファンによって導入された空気に対して遠心破砕によって微細化した水を含ませて放出する加湿部と、を有して構成されることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の空間を空調する空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住居に対して全館空調機での空調が行なわれている。また、省エネルギー住宅需要の高まりと規制強化に伴い、高断熱・高気密住宅が増加していくことが予想されており、その特徴に適した空調システムが要望されている。
【0003】
こうした空調システムとして、複数の空間(居室)等における空気の温湿度が目標温湿度となるように、複数の空間等から空調室に搬送されてくる空気を、空調室内において所定の温湿度に空調した上で、複数の空間等のそれぞれに搬送する全館空調システムが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の全館空調システムでは、空調室内に設置された空調機(エアコンディショナー)によって空調室内の空気の温度を温調制御し、同じく空調室内に設置された加湿器によって空調室内の空気の湿度を加湿制御している。特に、冬季において利用される加湿器は、空調機の熱源により昇温した空気を利用することが可能なため、空調室内の空気に対する加湿量を増加させることができる。しかしながら、複数の空間(居室)等における空気の温度が目標温度となった場合には、空調機の熱源が停止したり、熱量を下げたりするなどして空調室内の空気の温度が下がるため、加湿器では、空調室内の空気に対する加湿量が減少することになる。このため、従来の全館空調システムでは、複数の空間(居室)等における空気の湿度が目標湿度に到達するまでの時間が長くなってしまうことがある。つまり、従来の全館空調システムでは、加湿器の加湿性能が空調機の熱源の動作によって変化してしまい、加湿器による加湿制御が安定しないという課題がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、空調機による温調制御と連動した加湿装置による加湿制御を行うことが可能な空調システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するため、本発明に係る空調システムは、屋内外から空気を導入可能に構成された空調室と、空調室に設置され、空調室の空気を温調する空調機と、空調室に設置され、空調機によって温調された空気を加湿する加湿装置と、空調室の空気を空調室とは独立した複数の屋内空間に搬送する複数の搬送ファンと、空調機、加湿装置、及び搬送ファンを制御する制御部と、を備える。そして、制御部は、屋内の空気の温度を目標温度に温調するために、空調機によって目標温度よりも高い温度である第一温度に昇温した空調室の空気を用いる温調制御を行う。そして、その際、屋内の空気の湿度が目標湿度以上となっている場合には、屋内の空気の温度が上昇して目標温度に到達すると、空調機によって空調室の空気を第一温度よりも低い温度である第二温度に温調する第一制御を行うとともに、屋内の空気の湿度が目標湿度未満である場合には、屋内の空気の温度が上昇して目標温度に到達すると、空調機によって空調室の空気を第一温度に維持して温調する第二制御を行うように制御することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、空調機による温調制御と連動した加湿装置による加湿制御を行うことが可能な空調システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態1に係る空調システムの接続概略図である。
【
図2】
図2は、空調システムを構成する加湿装置の概略断面図である。
【
図3】
図3は、空調システムのシステムコントローラの概略機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、空調処理手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、空調処理手順における温調優先制御モードでの処理手順を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、空調処理手順における調湿優先制御モードでの処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の空調システムは、屋内外から空気を導入可能に構成された空調室と、空調室に設置され、空調室の空気を温調する空調機と、空調室に設置され、空調機によって温調された空気を加湿する加湿装置と、空調室の空気を空調室とは独立した複数の屋内空間に搬送する複数の搬送ファンと、空調機、加湿装置、及び搬送ファンを制御する制御部と、を備える。そして、制御部は、屋内の空気の温度を目標温度に温調するために、空調機によって目標温度よりも高い温度である第一温度に昇温した空調室の空気を用いる温調制御を行う。そして、その際、屋内の空気の湿度が目標湿度以上となっている場合には、屋内の空気の温度が上昇して目標温度に到達すると、空調機によって空調室の空気を第一温度よりも低い温度である第二温度に温調する第一制御を行うとともに、屋内の空気の湿度が目標湿度未満である場合には、屋内の空気の温度が上昇して目標温度に到達すると、空調機によって空調室の空気を第一温度に維持して温調する第二制御を行うように制御することを特徴とするものである。
【0011】
こうした構成によれば、加湿装置による加湿制御と連動した空調機による温調制御(第一制御または第二制御)が行われるので、空調機の温調制御に起因した加湿装置の加湿能力(加湿量)の低下を抑制でき、空調システムとしての加湿性能を安定化させることができる。つまり、加湿装置には、空調機によって第一温度に昇温した空気が継続して導入されるので、従来の空調システムと比較して、空調室内の空気に対する加湿量を増加させることができ、空調室内の空気の湿度を効率よく目標湿度に到達させることができる。この結果、居室に対して効率よく温調と調湿を行うことが可能な空調システムとすることができる。
【0012】
また、本発明の空調システムでは、制御部は、第二制御を行う場合には、搬送ファンによって屋内空間に搬送する送風量を、屋内の空気の温度が目標温度に到達した際に設定されていた第一送風量から、第一送風量よりも少ない風量である第二送風量に減少させることが好ましい。これにより、第二制御においては、搬送ファンによって屋内に搬送される空気の量が減少するので、空調室の空気の温度を第一温度に維持することに伴う屋内の空気の温度の上昇(屋内の空気の温度が目標温度よりも高くなる現象)を抑制しつつ、目標湿度に向けて加湿装置による加湿制御を行うことができる。
【0013】
また、本発明の空調システムでは、屋内の空気の温湿度を取得して制御部に送信する温湿度センサをさらに備える。そして、制御部は、温湿度センサからの温湿度に関する情報に基づいて、空調機に対して屋内の空気の温度を目標温度に温調する温調制御を行うとともに、加湿装置に対して屋内の空気の湿度を目標湿度に加湿する調湿制御を行うようにしてもよい。これにより、屋内の空気の温湿度変化に追随して、空調機による温調制御および加湿装置による調湿制御を行うことができるので、屋内空間における快適性を向上させることができる。
【0014】
また、本発明の空調システムでは、加湿装置は、空調機によって温調された空気を装置内に導入する遠心ファンと、遠心ファンによって導入された空気に対して遠心破砕によって微細化した水を含ませて放出する加湿部とを有して構成されることが好ましい。こうした構成によれば、遠心ファンによって加湿装置内に空気を導入するので、搬送ファンによって空調室から搬送される空気量に依存せず、空調室内の空気に対する加湿量を調整することができる。
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。また、実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0016】
(実施の形態1)
まず、
図1を参照して、本実施の形態1に係る空調システム20について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係る空調システム20の接続概略図である。
【0017】
空調システム20は、複数の搬送ファン3(搬送ファン3a,3b)と、熱交換気扇4と、複数のダンパー5(ダンパー5a,5b)と、複数の循環口6(循環口6a,6b,6c,6d)と、複数の居室排気口7(居室排気口7a,7b,7c,7d)と、複数の居室給気口8(居室給気口8a,8b,8c,8d)と、居室温度センサ11(居室温度センサ11a,11b,11c,11d)と、居室湿度センサ12(居室湿度センサ12a,12b,12c,12d)と、エアコンディショナー(空調機)13と、加湿装置16と、集塵フィルタ17と、入出力端末19と、システムコントローラ14(空調システムコントローラに該当)と、を備えて構成される。
【0018】
空調システム20は、建物の一例である一般住宅1内に設置される。一般住宅1は、複数(本実施の形態では4つ)の居室2(居室2a,2b,2c,2d)に加え、居室2と独立した少なくとも1つの空調室18を有している。ここで一般住宅1(住宅)とは、居住者がプライベートな生活を営む場として提供された住居であり、一般的な構成として居室2にはリビング、ダイニング、寝室、個室、子供部屋等が含まれる。また空調システム20が提供する居室にトイレ、浴室、洗面所、脱衣所等を含んでもよい。
【0019】
ここで居室2aには、循環口6a、居室排気口7a、居室給気口8a、居室温度センサ11a、居室湿度センサ12a、システムコントローラ14、及び入出力端末19が設置されている。また、居室2bには、循環口6b、居室排気口7b、居室給気口8b、居室温度センサ11b、及び居室湿度センサ12bが設置されている。また、居室2cには、循環口6c、居室排気口7c、居室給気口8c、居室温度センサ11c、及び居室湿度センサ12cが設置されている。また、居室2dには、循環口6d、居室排気口7d、居室給気口8d、居室温度センサ11d、及び居室湿度センサ12dが設置されている。
【0020】
一方、空調室18には、搬送ファン3a、搬送ファン3b、ダンパー5a、ダンパー5b、エアコンディショナー13、集塵フィルタ17、及び加湿装置16が設置されている。より詳細には、空調室18内を流れる空気の流通経路の上流側から、エアコンディショナー13、集塵フィルタ17、加湿装置16、搬送ファン3(搬送ファン3a、3b)、ダンパー5(ダンパー5a、5b)の順にそれぞれ配置されている。
【0021】
空調室18では、各居室2から循環口6を通って搬送された空気(屋内の空気)と、熱交換気扇4により取り込まれて熱交換された外気(屋外の空気)とが混合される。空調室18の空気は、空調室18内に設けられたエアコンディショナー13及び加湿装置16によって温度及び湿度がそれぞれ制御され、すなわち空調されて、居室2に搬送すべき空気が生成される。空調室18にて空調された空気は、搬送ファン3により、各居室2に搬送される。ここで、空調室18は、エアコンディショナー13、加湿装置16、及び集塵フィルタ17などが配置でき、各居室2の空調をコントロールできる一定の広さを備えた空間を意味するが、居住空間を意図するものではなく、基本的に居住者が滞在する部屋を意味するものではない。
【0022】
各居室2の空気は、循環口6により空調室18へ搬送される他、居室排気口7により熱交換気扇4を通して熱交換された後、屋外へ排出される。空調システム20は、熱交換気扇4によって各居室2から内気(屋内の空気)を排出しつつ、屋内に外気(屋外の空気)を取り込むことで、第1種換気方式の換気が行われる。熱交換気扇4の換気風量は、複数段階で設定可能に構成されており、その換気風量は、法令で定められた必要換気量を満たすように設定される。
【0023】
熱交換気扇4は、内部に給気ファン及び排気ファン(図示せず)を有して構成され、各ファンを動作させることによって、内気(屋内の空気)と外気(屋外の空気)との間で熱交換しながら換気する。この際、熱交換気扇4は、熱交換した外気を空調室18に搬送する。
【0024】
搬送ファン3は、空調室18の壁面(底面側の壁面)に設けられている。そして、空調室18の空気は、搬送ファン3によって搬送ダクトを介して居室給気口8から居室2に搬送される。より詳細には、空調室18の空気は、搬送ファン3aによって一般住宅1の一階に位置する居室2a及び居室2bにそれぞれ搬送されるとともに、搬送ファン3bによって一般住宅1の二階に位置する居室2c及び居室2dにそれぞれ搬送される。なお、各居室2の居室給気口8に接続される搬送ダクトは、それぞれ独立して設けられる。
【0025】
ダンパー5は、搬送ファン3から各居室2に空気を搬送する際、ダンパー5の開度を調整することによって各居室2への送風量を調節する。より詳細には、ダンパー5aは、一階に位置する居室2a及び居室2bへの送風量を調整するとともに、ダンパー5bは、二階に位置する居室2c及び居室2dへの送風量を調整する。
【0026】
各居室2(居室2a~2d)の空気の一部は、それぞれ対応する循環口6(循環口6a~6d)によって、循環ダクトを介して空調室18に搬送される。ここで、循環口6により搬送される空気は、搬送ファン3によって空調室18から各居室2に搬送される風量(給気風量)と、熱交換気扇4によって居室排気口7から屋外に排気される風量(排気風量)の差分だけ、循環空気として自然に空調室18に搬送される。なお、空調室18と各居室2とを接続する循環ダクトは、それぞれ独立して設けられてもよいが、循環ダクトの一部である複数の支流ダクトを途中より合流させて1つの循環ダクトに統合した後、空調室18に接続するようにしてもよい。
【0027】
各循環口6(循環口6a~6d)は、上述の通り、各居室2(居室2a~2d)から空調室18に屋内の空気を搬送するための開口である。
【0028】
各居室排気口7(居室排気口7a~7d)は、上述の通り、各居室2(居室2a~2d)から熱交換気扇4に屋内の空気を搬送するための開口である。
【0029】
各居室給気口8(居室給気口8a~8d)は、上述の通り、空調室18から各居室2(居室2a~2d)に空調室18内の空気を搬送するための開口である。
【0030】
居室温度センサ11(居室温度センサ11a~11d)は、対応する居室2(居室2a~2d)それぞれの居室温度(室内温度)を取得して、システムコントローラ14に送信するセンサである。
【0031】
居室湿度センサ12(居室湿度センサ12a~12d)は、対応する居室2(居室2a~2dそれぞれの居室湿度(室内湿度)を取得して、システムコントローラ14に送信するセンサである。
【0032】
エアコンディショナー13は、空調機に該当するものであり、空調室18の空調を制御する。エアコンディショナー13は、空調室18の空気の温度が設定温度(空調室目標温度)となるように、空調室18の空気を冷却又は加熱する。ここで、設定温度には、ユーザによって設定された目標温度(居室目標温度)と居室温度との温度差から必要熱量を算出して、その結果に基づいた温度に設定される。本実施の形態では、設定温度には、各居室2の空気の温度を、目標温度にまでより早く温調するために、少なくとも目標温度よりも高い温度である第一温度に設定される。
【0033】
加湿装置16は、空調室18内のエアコンディショナー13の下流側に位置しており、各居室2の空気の湿度(居室湿度)が、ユーザによって設定された目標湿度(居室目標湿度)よりも低い場合に、その湿度が目標湿度となるように、空調室18の空気を加湿する。また、ここで扱う湿度は、それぞれ相対湿度で示されるが、所定の変換処理にて絶対湿度として扱ってもよい。この場合、居室2の湿度を含めて空調システム20での取り扱い全体を絶対湿度として取り扱うのが好ましい。
【0034】
集塵フィルタ17は、空調室18内に導入される空気中に浮遊する粒子を捕集する集塵フィルタである。集塵フィルタ17は、循環口6を通して空調室18内に搬送された空気中に含まれる粒子を捕集することで、搬送ファン3によって屋内に供給する空気を清浄な空気にする。
【0035】
システムコントローラ14は、空調システム20全体を制御するコントローラである。システムコントローラ14は、熱交換気扇4、搬送ファン3、ダンパー5、居室温度センサ11、居室湿度センサ12、エアコンディショナー13、加湿装置16のそれぞれと、無線通信により通信可能に接続されている。なお、システムコントローラ14は、請求項の「制御部」に相当する。
【0036】
また、システムコントローラ14は、居室温度センサ11及び居室湿度センサ12により取得された各居室2それぞれの居室温度及び居室湿度と、居室2a~2d毎に設定された目標温度(居室目標温度)及び目標湿度(居室目標湿度)等に応じて、空調機としてのエアコンディショナー13、加湿装置16、搬送ファン3の風量、及びダンパー5の開度を制御する。なお、搬送ファン3の風量は、ファンごとに個別に制御してもよい。
【0037】
これにより、空調室18にて空調された空気が、各搬送ファン3及び各ダンパー5に設定された風量で各居室2に搬送される。よって、各居室2の居室温度及び居室湿度が、目標温度(居室目標温度)及び目標湿度(居室目標湿度)となるように制御される。
【0038】
ここで、システムコントローラ14と、熱交換気扇4、搬送ファン3、ダンパー5、居室温度センサ11、居室湿度センサ12、エアコンディショナー13、及び加湿装置16とが、無線通信で接続されることにより、複雑な配線工事を不要とすることができる。ただし、これら全体を、又は、システムコントローラ14とこれらの一部を、有線通信により通信可能に構成してもよい。
【0039】
入出力端末19は、システムコントローラ14と無線通信により通信可能に接続され、空調システム20を構築する上で必要な情報の入力を受け付けてシステムコントローラ14に記憶させたり、空調システム20の状態をシステムコントローラ14から取得して表示したりするものである。入出力端末19は、携帯電話、スマートフォン、タブレットといった携帯情報端末が例として挙げられる。
【0040】
なお、入出力端末19は、必ずしも無線通信によりシステムコントローラ14と接続される必要はなく、有線通信により通信可能にシステムコントローラ14と接続されてもよい。この場合、入出力端末19は、例えば、壁掛のリモートコントローラにより実現されるものであってもよい。
【0041】
次に、
図2を参照して、加湿装置16の構成について説明する。
図2は、空調システム20を構成する加湿装置16の概略断面図である。
【0042】
加湿装置16は、空調室18内のエアコンディショナー13の下流側に位置しており、空調室18内の空気を遠心水破砕によって加湿するための装置である。加湿装置16は、空調室18内の空気を吸い込む吸込口31と、加湿した空気を空調室18内に吹き出す吹出口32と、吸込口31と吹出口32との間に設けられた風路と、この風路に設けられた液体微細化室33と、を備えている。
【0043】
吸込口31は、加湿装置16の外枠を構成する筐体の上面に設けられ、吹出口32は、筐体の側面に設けられている。液体微細化室33は、加湿装置16の主要部であり、遠心水破砕方式によって水の微細化を行うところである。
【0044】
具体的には、加湿装置16は、回転モータ34と、回転モータ34によって回転する回転軸35と、遠心ファン36と、筒状の揚水管37と、貯水部40と、第一エリミネータ41、第二エリミネータ42と、を備えている。
【0045】
揚水管37は、液体微細化室33の内側において回転軸35に固定され、回転軸35の回転に合わせて回転しながら、鉛直方向下方に備えた円形状の揚水口から水を汲み上げる。より詳細には、揚水管37は、逆円錐形の中空構造となっており、鉛直方向下方に円形状の揚水口を備えるとともに、揚水管37の上方であって逆円錐形の天面中心に、鉛直方向に向けて配置された回転軸35が固定されている。回転軸35が、液体微細化室33の鉛直方向上方に位置する回転モータ34と接続されることで、回転モータ34の回転運動が回転軸35を通じて揚水管37に伝導され、揚水管37が回転する。
【0046】
揚水管37は、逆円錐形の天面側に、揚水管37の外面から外側に突出するように形成された複数の回転板38を備えている。複数の回転板38は、上下で隣接する回転板38との間に、回転軸35の軸方向に所定間隔を設けて、揚水管37の外面から外側に突出するように形成されている。回転板38は、揚水管37とともに回転するため、回転軸35と同軸の水平な円盤形状が好ましい。なお、回転板38の枚数は、目標とする性能あるいは揚水管37の寸法に合わせて適宜設定されるものである。
【0047】
また、揚水管37の壁面には、揚水管37の壁面を貫通する複数の開口39が設けられている。複数の開口39のそれぞれは、揚水管37の内部と、揚水管37の外面から外側に突出するように形成された回転板38の上面とを連通する位置に設けられている。
【0048】
遠心ファン36は、揚水管37の鉛直方向上方に配置され、空調室18から装置内に空気を取り込むためファンである。遠心ファン36は、揚水管37と同じく回転軸35に固定されており、回転軸35の回転に合わせて回転することで、液体微細化室33内に空気を導入する。
【0049】
貯水部40は、揚水管37の鉛直方向下方において、揚水管37が揚水口より揚水する水を貯水する。貯水部40の深さは、揚水管37の下部の一部、例えば揚水管37の円錐高さの三分の一から百分の一程度の長さが浸るような深さに設計されている。この深さは、必要な揚水量に合わせて設計できる。また、貯水部40の底面は、揚水口に向けてすり鉢状に形成されている。貯水部40への水の供給は、給水部(図示せず)により行われる。
【0050】
第一エリミネータ41は、空気が流通可能な多孔体であり、液体微細化室33の側方(遠心方向の外周部)に設けられ、遠心方向に空気が流通するように配置されている。第一エリミネータ41では、揚水管37の開口39から放出された水滴が衝突することで、水滴を微細化させるとともに、液体微細化室33を通過する空気に含められた水のうち水滴を捕集する。これにより、加湿装置16内を流れる空気には、気化された水のみが含まれるようになる。
【0051】
第二エリミネータ42は、第一エリミネータ41の下流側に設けられ、鉛直方向上方に空気が流通するように配置されている。第一エリミネータ41もまた、空気が流通可能な多孔体であり、第一エリミネータ41を通過した空気が衝突することで、第一エリミネータ41を通過する空気に含められた水のうち水滴を捕集する。これにより、微細化された水滴を二つのエリミネータによって二重に捕集することで、粒径の大きな水滴をより精度よく捕集することができる。
【0052】
次に、加湿装置16における加湿(水の微細化)の動作原理を説明する。
【0053】
次に、
図2を参照して、加湿装置16における加湿(水の微細化)の動作原理を説明する。なお、
図2では、装置内での空気の流れと水の流れをそれぞれ矢印で示している。
【0054】
まず、加湿装置16の動作を開始すると、回転モータ34により回転軸35を第一回転数R1で回転させ、遠心ファン36によって、吸込口31から空調室18の空気の吸い込みが開始される。そして、回転軸35の第一回転数R1での回転に合わせて揚水管37が回転する。そして、破線矢印で示す水の流れのように、その回転によって生じる遠心力により、貯水部40に貯水された水が揚水管37によって汲み上げられる。ここで、回転モータ11(揚水管37)の第一回転数R1は、例えば、空気の送風量及び空気への加湿量に応じて、2000rpm~5000rpmの間に設定される。揚水管37は、逆円錐形の中空構造となっているため、回転によって汲み上げられた水は、揚水管37の内壁を伝って上部へ揚水される。そして、揚水された水は、揚水管37の開口39から回転板38を伝って遠心方向に放出され、水滴として飛散する。
【0055】
回転板38から飛散した水滴は、第一エリミネータ41に囲まれた空間(液体微細化室33)を飛翔し、第一エリミネータ41に衝突し、微細化される。一方、液体微細化室33を通過する空気は、実線矢印で示す空気の流れのように、第一エリミネータ41によって破砕(微細化)された水を含みながら第一エリミネータ41の外周部へ移動する。そして、第一エリミネータ41から第二エリミネータ42に至る風路内を空気が流れる過程で、気流の渦が生じ、水と空気とが混合する。そして、水を含んだ空気は、第二エリミネータ42を通過する。これにより、加湿装置16は、吸込口31より吸い込んだ空気に対して加湿を行い、吹出口32より加湿された空気を吹き出すことができる。
【0056】
なお、微細化される液体は水以外でもよく、例えば、殺菌性あるいは消臭性を備えた次亜塩素酸水等の液体であってもよい。
【0057】
次に、
図3を参照して、システムコントローラ14の各機能について説明する。
図3は、空調システム20のシステムコントローラ14の概略機能ブロック図である。
【0058】
システムコントローラ14は、
図3に示すように、居室目標温湿度取得部51、空調制御部52、空調機制御部53、回転モータ制御部54、風量制御部55、及び記憶部56を備える。
【0059】
居室目標温湿度取得部51は、入出力端末19により居室2全体に共通して設定された居室目標温度及び居室目標湿度(以下、居室目標温湿度とも呼ぶ)を取得する。居室目標温度は、下限を最低温度で、上限を最高温度で定義される所定の温度範囲として設定される。居室目標湿度は、下限を最低湿度で、上限を最高湿度で定義される所定の湿度範囲として設定される。ここで、居室目標温度以上の温度とは、上限の最高温度以上の温度であることを意味し、居室目標温度より小さい温度とは、下限の最低温度よりも小さい温度を意味する。居室目標湿度についても同様である。なお、本実施の形態では、居室目標温度及び居室目標湿度をユーザが設定可能としているが、あらかじめ空調システム20に固定値として設定されていてもよい。居室目標温湿度取得部51により取得され、あるいはあらかじめ設定された最高温度及び最低温度と、最高湿度及び最低湿度は、記憶部56に記憶される。
【0060】
空調制御部52は、温湿度差算出部57と、制御条件決定部58とを備える。
【0061】
温湿度差算出部57は、居室目標温湿度取得部51により取得され、あるいはあらかじめ設定された居室目標温度と、居室温度センサ11が取得した居室温度との差分(温度差)と、居室目標温湿度取得部51により取得され、あるいはあらかじめ設定された居室目標湿度と、居室湿度センサ12が取得した居室湿度との差分(湿度差)を居室2ごとに算出する。
【0062】
制御条件決定部58は、温湿度差算出部57によって居室2ごとに算出された温度差と湿度差に基づいて、エアコンディショナー13、加湿装置16、搬送ファン3、及びダンパー5の制御条件を決定する。
【0063】
つまり、空調制御部52は、居室目標温湿度取得部51からの居室目標温湿度に関する情報と、各センサ(居室温度センサ11、居室湿度センサ12)からの居室温湿度に関する情報とによって出される温度差及び湿度差に関する情報に基づいて、エアコンディショナー13、加湿装置16、搬送ファン3、及びダンパー5の出力を決定する。
【0064】
空調機制御部53は、空調室18内にエアコンディショナー13の運転モード、吹き出し温度及び送風量を、空調制御部52にて決定された制御方法に基づいて制御する。
【0065】
回転モータ制御部54は、加湿装置16に設けられた回転モータ34の回転数をコントロールすることで、空調制御部52にて決定された制御条件に基づいて空調室18内に設けられた加湿装置16の加湿量を制御する。
【0066】
風量制御部55は、居室2に対応して設けられた搬送ファン3の送風量及びダンパー5の開度を、空調制御部52にて決定された制御条件に基づいて制御する。
【0067】
記憶部56は、居室目標温湿度取得部51により取得され、あるいはあらかじめ設定された所定の温度範囲、すなわち最高温度および最低温度と、湿度範囲、すなわち最高湿度及び最低湿度を記憶する、いわゆるメモリである。また、その他システムコントローラ14による制御に数値などの情報の記憶が必要な場合にも記憶部56が利用される。
【0068】
次に、
図4~
図6を参照して、システムコントローラ14により実行される空調処理について説明する。
図4は、空調処理手順を示すフローチャートである。
図5は、空調処理手順における温調優先制御モードでの処理手順を示すフローチャートである。
図6は、空調処理手順における調湿優先制御モードでの処理手順を示すフローチャートである。ここでは、日本の冬季における空調処理を想定するので、空調システム20では、エアコンディショナー13は居室2の空気の温度を上昇させつつ、加湿装置16による加湿を行う状況となる。
【0069】
空調システム20では、一般的な全館空調システムと同じように、熱交換気扇4は常時換気運転を行っており、空調処理を行っていない場合でも、搬送ファン3は第三送風量に設定され、ダンパー5は第三開度で設定されて送風を行っている(ステップS11)。ここで、第三送風量とは、住宅において法令で定められた必要換気量を満たす風量であり、熱交換気扇4によって空調室18内に給気された空気を搬送ファン3によって居室2に搬送する。また、第三開度とは、例えば、全開に設定される。なお、熱交換気扇4のみを運転している際には、エアコンディショナー13及び加湿装置16は運転を停止している。
【0070】
ユーザが空調処理を実行すると、まず、システムコントローラ14は、入出力端末19にて設定された居室目標温湿度(居室目標温度及び居室目標湿度)を取得して記憶部56に記憶する(ステップS12)。ここで、居室目標温湿度とは、ユーザが心地よいと感じる温湿度であり、すべての居室に共通する温湿度である。
【0071】
居室目標温湿度を取得すると、空調制御部52は、各居室2に設置された居室温度センサ11及び居室湿度センサ12から居室温湿度に関する情報を取得する(ステップS13)。続いて、空調制御部52は、温湿度差算出部57を用いて、取得した居室目標温湿度に関する情報と居室温湿度に関する情報から目標に対する温度差及び湿度差をそれぞれ算出する(ステップS14)。
【0072】
そして、制御条件決定部58は、算出した温度差及び湿度差に基づいて、空調室18の空気に対する空調室目標温湿度(空調室目標温度及び空調室目標湿度)を特定する(ステップS15)。ここでは、空調室目標温度は、居室目標温度よりも高い温度である第一温度に設定され、空調室目標湿度は、居室目標湿度よりも高い湿度である第一湿度に設定される。
【0073】
そして、空調制御部52は、特定した空調室目標温湿度に基づいて、エアコンディショナー13、加湿装置16、搬送ファン3、及びダンパー5の制御条件を決定して、それぞれ実行させる(ステップS16)。
【0074】
具体的には、空調機制御部53は、空調制御部52からの制御条件に基づいて、エアコンディショナー13の運転動作を開始させ、空調室18内の空気の温度が空調室目標温度(第一温度)となるように温調を実行させる。回転モータ制御部54は、空調制御部52からの制御条件に基づいて、回転モータ34の回転動作を開始させ、空調室18の空気の湿度が空調室目標湿度(第一湿度)となるように、第一回転数R1(2000rpm~5000rpm)で回転させる。風量制御部55は、空調制御部52からの制御条件に基づいて、搬送ファン3の風量及びダンパー5の開度を、第一送風量及び第一開度にそれぞれ変更させる。なお、第一開度は、居室2の空気の温度と居室目標温度との間の温度差に応じて設定され、例えば、温度差が大きければ広げるように設定され、温度差が小さければ狭くするように設定される。
【0075】
そして、空調運転中に、制御条件が変更されたステップ(ここではステップS16)を起点とした所定時間Tが経過した場合(ステップS17のYes)には、空調制御部52は、各居室2に設置された居室温度センサ11及び居室湿度センサ12から新たに居室温湿度に関する情報を取得する(ステップS18)。一方、所定時間Tが経過していない場合(ステップS17のNo)には、空調制御部52は、空調運転をそのままの制御条件で継続させる(ステップS17に戻る)。ここで、所定時間Tは、居室温度センサ11及び居室湿度センサ12における居室温湿度の取得サイクル時間であり、例えば、5分に設定される。
【0076】
次に、空調制御部52は、取得した居室温湿度のうち、居室湿度が居室目標湿度以上であるか否かを判断する(ステップS19)。その結果、居室湿度が居室目標湿度以上となっている場合には、空調制御部52は、空調運転を温調優先制御モードM1に移行する(ステップS30)。一方、居室温度が居室目標温度に達していない場合には、空調制御部52は、空調運転を調湿優先制御モードM2に移行する(ステップS40)。
【0077】
ここで、温調優先制御モードM1は、エアコンディショナー13による温調制御が加湿装置16による調湿制御の影響を受けずに実行されるモードである。調湿優先制御モードM2は、エアコンディショナー13による温調制御が加湿装置16による調湿制御の影響を受けて実行されるモードである。
【0078】
続いて、温調優先制御モードM1では、空調制御部52は、取得した居室温湿度のうち、居室温度が居室目標温度以上であるか否かを判断する(ステップS31)。その結果、居室温度が居室目標温度以上となっている場合(ステップS31のYes)には、空調制御部52は、エアコンディショナー13の制御条件を変更して実行させる。具体的には、空調機制御部53は、空調制御部52からの新たな制御条件に基づいて、空調室18内の空気の温度が新たな空調室目標温度(第二温度)となるように温調を実行させる。そして、次のステップS34を実行する。
【0079】
ここで、第二温度は、第一温度よりも低い温度である。第二温度は、居室温度を居室目標範囲内で維持するために必要な温度であることが好ましい。なお、第一温度から第二温度にするのは、例えば、エアコンディショナー13の温調動作を停止させることで実現される。
【0080】
一方、居室温度が居室目標温度以上となっていない場合(ステップS31のNo)には、空調制御部52は、エアコンディショナー13の制御条件を変更せず、空調機制御部53は、エアコンディショナー13に対して第一温度に温調する動作を維持して実行させる。そして、次のステップS34を実行する。
【0081】
続いて、ステップS34では、空調制御部52は、取得した居室温湿度のうち、居室湿度が居室目標湿度を超えているか否かを判断する。その結果、居室湿度が居室目標湿度を超えている場合には(ステップS34のYes)には、空調制御部52は、加湿装置16の制御条件を変更して実行させる。具体的には、回転モータ制御部54は、空調制御部52からの新たな制御条件に基づいて、回転モータ34の回転動作を変更させ、空調室18の空気の湿度が新たな空調室目標湿度(第二湿度)となるように、第二回転数R2(0rpm~2000rpm)で回転させる。風量制御部55は、空調制御部52からの新たな制御条件に基づいて、搬送ファン3の風量及びダンパー5の開度を、第一送風量及び第一開度のままの状態を維持する(ステップS35)。そして、ステップS17に戻る。なお、ステップS17では、所定時間Tは、制御条件が変更されたステップ(ここではステップS35)を起点として計時される。
【0082】
一方、居室湿度が居室目標湿度を超えていない場合には(ステップS34のNo)には、空調制御部52は、加湿装置16の制御条件を変更せず、回転モータ制御部54は、回転モータ34の回転動作(第一回転数R1)を維持する。また、風量制御部55は、搬送ファン3の風量及びダンパー5の開度を、第一送風量及び第一開度のままの状態を維持する(ステップS36)。そして、ステップS17に戻る。なお、ステップS17では、所定時間Tは、制御条件が変更されたステップ(ここではステップS36)を起点として計時される。
【0083】
温調優先制御モードM1では、以上のようにして空調運転が実行される。
【0084】
次に、調湿優先制御モードM2では、ステップS19での判定に基づいて、加湿装置16の制御条件を変更せず、第一湿度に調湿する動作を維持して実行させる。具体的には、回転モータ制御部54は、回転モータ34の回転動作を変更させずに、空調室18の空気の湿度が第一湿度となるように、第一回転数R1(2000rpm~5000rpm)で回転させる(ステップS41)。
【0085】
次に、空調制御部52は、ステップS18において取得した居室温湿度のうち、居室温度が居室目標温度以上であるか否かを判断する(ステップS42)。その結果、居室温度が居室目標温度以上となっている場合(ステップS42のYes)には、空調制御部52は、エアコンディショナー13の制御条件を変更せず、空調機制御部53は、エアコンディショナー13に対して第一温度に温調する動作を維持して実行させる。そして、風量制御部55は、搬送ファン3の風量及びダンパー5の開度を、第二送風量及び第二開度に変更する(ステップS43)。なお、ステップS42とステップS44での処理が、請求項の「第二制御」に相当する。
【0086】
ここで、第二送風量は、第一送風量よりも少ない風量である。これにより、空調室18内の第一温度に温調された空気が、空調室18外に排出されにくくなるため、空調室18内の空気に対する加湿量を増加させることができる。また、第二開度は、第一開度と同じく、居室2の空気の温度と居室目標温度との間の温度差に応じて設定され、例えば、温度差が大きければ広げるように設定され、温度差が小さければ狭くするように設定される。そして、ステップS17に戻る。なお、ステップS17では、所定時間Tは、制御条件が変更されたステップ(ここではステップS43)を起点として計時される。
【0087】
一方、居室温度が居室目標温度以上となっていない場合(ステップS42のNo)には、空調制御部52は、エアコンディショナー13の制御条件を変更せず、空調機制御部53は、エアコンディショナー13に対して第一温度に温調する動作を維持して実行させる。そして、風量制御部55は、搬送ファン3の風量及びダンパー5の開度を、第一送風量及び第一開度のままの状態を維持する。そして、ステップS17に戻る。なお、ステップS17では、所定時間Tは、制御条件が変更されたステップ(ここではステップS44)を起点として計時される。
【0088】
調湿優先制御モードM2では、以上のようにして空調運転が実行される。
【0089】
本実施の形態に係る空調システム20では、以上の一連の処理により、居室2における居室温湿度が居室目標温湿度に到達するよう制御する。
【0090】
空調システム20を、従来の全館空調システムのように温調制御した場合、居室2における居室温度が居室湿度よりも先に居室目標(居室目標温度)に到達すると、不要なエネルギー消費を避けるために、エアコンディショナー13を停止したり、加熱量を下げたりする温調制御がなされる。これにより、空調室18内の空気の温度が第一温度から下がることになる。なお、本実施の形態では、こうした温度が下がる状況を、エアコンディショナー13が第一温度より低い温度である第二温度に温調するとした。この結果、加湿装置では、空調室内の空気に対する加湿量が減少することになり、居室2における空気の湿度が居室目標湿度に到達するまでの時間が長くなってしまうことになる。
【0091】
一方、本実施の形態に係る空調システム20では、居室2における居室温度が居室湿度よりも先に居室目標(居室目標温度)に到達しても、エアコンディショナー13を停止したり、加熱量を下げたりする温調制御を行わず、第一温度での温調を維持するようになっている。これにより、空調室18内の空気に対する加湿量が減少するのを抑制することができ、空調室18内の空気の湿度を効率よく居室目標湿度に到達させることができる。
【0092】
以上、実施の形態1に係る空調システム20によれば、以下の効果を享受することができる。
【0093】
(1)空調システム20では、居室2の空気の温度を居室目標温度に温調するために、エアコンディショナー13によって居室目標温度よりも高い温度である第一温度(空調室目標温度)に昇温した空調室18の空気を用いる温調制御を行う。そして、その際、居室2の空気の湿度が居室目標湿度以上となっている場合には、居室2の空気の温度が上昇して居室目標温度に到達すると、エアコンディショナー13によって空調室18の空気を第一温度よりも低い温度である第二温度に温調する第一制御を行うとともに、居室2の空気の湿度が居室目標湿度未満である場合(居室目標湿度以上となっていない場合)には、居室2の空気の温度が上昇して居室目標温度に到達すると、エアコンディショナー13によって空調室18の空気を第一温度に維持して温調する第二制御を行うように制御した。
【0094】
これにより、加湿装置16による加湿制御と連動したエアコンディショナー13による温調制御(第一制御または第二制御)が行われるので、エアコンディショナー13の温調制御に起因した加湿装置16の加湿能力(加湿量)の低下を抑制でき、空調システム20としての加湿性能を安定化させることができる。つまり、加湿装置16には、エアコンディショナー13によって第一温度に昇温した空気が継続して導入されるので、従来の空調システムと比較して、空調室18内の空気に対する加湿量を増加させることができ、空調室18内の空気の湿度を効率よく空調室目標湿度に到達させることができる。この結果、居室2に対して効率よく温調と調湿を行うことが可能な空調システム20とすることができる。
【0095】
(2)空調システム20では、第二制御を行う場合には、搬送ファン3によって屋内空間に搬送する送風量を、居室2の空気の温度が居室目標温度に到達した際に設定されていた第一送風量から、第一送風量よりも少ない風量である第二送風量に減少させるよう構成した。これにより、第二制御においては、搬送ファン3によって居室2に搬送される空気の量が減少するので、空調室18の空気の温度を第一温度に維持することに伴う居室2の空気の温度の上昇(居室2の空気の温度が居室目標温度よりも高くなる現象)を抑制しつつ、居室目標湿度に向けて加湿装置16による加湿制御を行うことができる。
【0096】
(3)空調システム20では、居室2の空気の温湿度を取得してシステムコントローラ14に送信する居室温度センサ11と居室湿度センサ12を備え、システムコントローラ14は、居室温度センサ11及び居室湿度センサ12からの居室温湿度に関する情報に基づいて、エアコンディショナー13に対して居室2の空気の温度を居室目標温度に温調する温調制御を行うとともに、加湿装置16に対して居室2の空気の湿度を居室目標湿度に加湿する調湿制御を行うよう構成した。これにより、居室2の空気の温湿度変化に追随して、エアコンディショナー13による温調制御及び加湿装置16による調湿制御を行うことができるので、屋内空間における快適性を向上させることができる。
【0097】
(4)空調システム20では、加湿装置16を、エアコンディショナー13によって温調された空気を装置内に導入する遠心ファン36と、遠心ファン36によって導入された空気に対して遠心破砕によって微細化した水を含ませて放出する加湿部(液体微細化室33)とを有する構成とした。これにより、遠心ファン36によって加湿装置16内に空気を導入するので、搬送ファン3によって空調室18から搬送される空気量に依存せず、空調室18内の空気に対する加湿量を調整することができる。
【0098】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、上記実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
【0099】
本実施の形態に係る空調システム20では、居室2の空気の温度を居室目標温度に温調するために、エアコンディショナー13によって空調室18の空気を居室目標温度よりも高い温度である第一温度(空調室目標温度)に昇温した空気を用いる温調制御を行ったが、これに限られない。例えば、システムコントローラ14は、空調室目標温湿度(特に空調室目標温度)を居室目標温湿度(特に居室目標温度)と一致させて制御するようにしてもよい。このようにしても同様の効果を享受することができる。
【0100】
また、本実施の形態に係る空調システム20では、空調室18内に、空調室18の空気の温度を検出する空調室温度センサと、空調室18の空気の湿度を検出する空調室湿度センサとを設けてもよい。これにより、空調室18内の温湿度を、設定された空調室温湿度にするために温調及び調湿の制御をより高精度に、且つ、確実に行うことができる。
【0101】
また、本実施の形態に係る空調システム20では、居室2における居室温度が居室湿度よりも先に居室目標(居室目標温度)に到達しても、エアコンディショナー13を停止したり、加熱量を下げたりする温調制御を行わず、第一温度での温調を維持するようにしたが、居室温度が居室目標温度の上限の最高温度を超える場合には、エアコンディショナー13を停止したり、加熱量を下げたりする温調制御(空調室18の空気を第一温度よりも低い温度である第二温度に温調する制御)を行うことが好ましい。これにより、屋内空間における快適性が低下するのを抑制することができる。
【0102】
また、本実施の形態では、居室として示しているが、居室は必ずしも人が居る必要はなく、一つの空間として捉えることができる。つまり、廊下あるいはキッチンもある程度区切られているのであれば1つの空間として捉えることができ、1つの居室に該当する。
【0103】
また、本実施の形態に係る空調システム20は、戸建て住宅あるいはマンション等の複合住宅に適用可能である。ただし、空調システム20を複合住宅に適用する場合には、1つのシステムが世帯単位に対応するものであり、各世帯を1つの居室とするものではない。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明に係る空調システムは、複数の空間(居室)等に供給する空気を効率よく空調制御することが可能なものとして有用である。
【符号の説明】
【0105】
1 一般住宅
2、2a、2b、2c、2d 居室
3、3a、3b 搬送ファン
4 熱交換気扇
5、5a、5b ダンパー
6、6a、6b、6c、6d 循環口
7、7a、7b、7c、7d 居室排気口
8、8a、8b、8c、8d 居室給気口
11、11a、11b、11c、11d 居室温度センサ
12、12a、12b、12c、12d 居室湿度センサ
13 エアコンディショナー
14 システムコントローラ
16 加湿装置
17 集塵フィルタ
18 空調室
19 入出力端末
20 空調システム
31 吸込口
32 吹出口
33 液体微細化室
34 回転モータ
35 回転軸
36 遠心ファン
37 揚水管
38 回転板
39 開口
40 貯水部
41 第一エリミネータ
42 第二エリミネータ
51 居室目標温湿度取得部
52 空調制御部
53 空調機制御部
54 回転モータ制御部
55 風量制御部
56 記憶部
57 温湿度差算出部
58 制御条件決定部