(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】断熱シートおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
F16L 59/02 20060101AFI20240119BHJP
B32B 5/28 20060101ALI20240119BHJP
C01B 33/16 20060101ALI20240119BHJP
【FI】
F16L59/02
B32B5/28 A
C01B33/16
(21)【出願番号】P 2020556692
(86)(22)【出願日】2019-10-04
(86)【国際出願番号】 JP2019039323
(87)【国際公開番号】W WO2020100460
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2018214768
(32)【優先日】2018-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019028980
(32)【優先日】2019-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】吉井 孝拓
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 里佳子
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/022241(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/110055(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/221687(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/157784(WO,A1)
【文献】特開2014-237910(JP,A)
【文献】国際公開第2017/159438(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/100897(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/029997(WO,A1)
【文献】特開2018-140554(JP,A)
【文献】特開2016-047979(JP,A)
【文献】特開2016-112757(JP,A)
【文献】特開2017-144640(JP,A)
【文献】特開2014-035042(JP,A)
【文献】特開2014-035041(JP,A)
【文献】特開2002-265286(JP,A)
【文献】国際公開第2015/045211(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/176216(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第1850502(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108136750(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/02
B32B 5/28
C01B 33/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を有する複数の繊維シートを準備するステップと、
前記複数の繊維シートを重ねて前記複数の繊維シートを互いに複数の接合領域で接合することにより、前記複数の繊維シートを含む繊維材を形成するステップと、
前記繊維材の前記複数の繊維シートの前記内部空間にシリカキセロゲルを
含浸するステップと、
前記繊維材の前記複数の接合領域の間の非接合領域において前記複数の繊維シートの間にスペースを形成した状態で前記含浸されたシリカキセロゲルを疎水化するステップと、
を含む、断熱シートの製造方法。
【請求項2】
前記複数の接合領域での前記断熱シートの厚さは前記非接合領域での前記断熱シートの厚さより小さい、請求項1に記載の断熱シートの製造方法。
【請求項3】
前記繊維材の前記複数の繊維シートの間にスペーサを設けることにより前記複数の繊維シートの間に前記スペースを形成するステップをさらに含む、請求項1または2に記載の断熱シートの製造方法。
【請求項4】
前記含浸されたシリカキセロゲルを疎水化する前記ステップの後で、前記繊維材の前記複数の繊維シートの間から前記スペーサを除くステップをさらに含む、請求項3に記載の断熱シートの製造方法。
【請求項5】
前記繊維材の両面に2つの保護フィルムを設けるステップと、
前記2つの保護フィルムを前記複数の接合領域と接合する、または前記2つの保護フィルムを互いに接合することにより、前記繊維材と前記疎水化されたシリカキセロゲルとを前記2つの保護フィルムで覆うステップと、
をさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の断熱シートの製造方法。
【請求項6】
第1の断熱材と、
前記第1の断熱材の下面に対向する上面と、前記第1の断熱材の両端部に接合領域で接合された両端部とを有する第2の断熱材と、
を備え、
前記第1の断熱材は、第1の繊維シートと、前記第1の繊維シートに含浸された第1のシリカキセロゲルとを有し、
前記第2の断熱材は、第2の繊維シートと、前記第2の繊維シートに
含浸された第2のシリカキセロゲルとを有し、
前記第1の断熱材に加えられた5MPaの圧力に対する前記第1の断熱材の圧縮率は15%以上であり、
前記第2の断熱材に加えられた5MPaの圧力に対する前記第2の断熱材の圧縮率は10%以下であり、
前記第1の繊維シートの両端部は前記第2の繊維シートの両端部と前記接合領域でそれぞれ接合されている、断熱シート。
【請求項7】
前記第2の断熱材の下面に対向する上面と、前記第2の断熱材の前記両端部に接合された両端部とを有する第3の断熱材をさらに備え、
前記第3の断熱材は、第3の繊維シートと、前記第3の繊維シートに含浸された第3のシリカキセロゲルとを有し、
前記第3の断熱材に加えられた5MPaの圧力に対する前記第3の断熱材の圧縮率は15%以上であり、
前記第3の繊維シートの両端部は前記第2の繊維シートの前記両端部と前記接合領域で接合されている、請求項6に記載の断熱シート。
【請求項8】
前記断熱シートは互いに反対側の2つの長辺を有する長方形状を有し、
前記接合領域は前記長方形状の前記2つの長辺にそれぞれ位置する、請求項6に記載の断熱シート。
【請求項9】
内部空間を有する第1の繊維シートの両端部を、内部空間を有する第2の繊維シートの両端部に接合領域で接合することにより、前記第1の繊維シートと前記第2の繊維シートとを含む繊維材を形成するステップと、
前記第1の繊維シートの前記内部空間に第1のシリカキセロゲルを含浸するステップと、
前記第2の繊維シートの前記内部空間に第2のシリカキセロゲルを含浸するステップと、
前記含浸された第1のシリカキセロゲルと前記含浸された第2のシリカキセロゲルとを疎水化するステップと、
を含み、
前記第1の繊維シートと前記含浸された第1のシリカキセロゲルとは第1の断熱材を構成し、
前記第2の繊維シートと前記含浸された第2のシリカキセロゲルとは第2の断熱材を構成し、
前記第1の断熱材に加えられた5MPaの圧力に対する前記第1の断熱材の圧縮率が15%以上であり、
前記第2の断熱材に加えられた5MPaの圧力に対する前記第2の断熱材の圧縮率が10%以下である、断熱シートの製造方法。
【請求項10】
前記第1の繊維シートと前記第2の繊維シートとはガラス繊維からなり、
前記第1の繊維シートの厚さ1mm当たりの目付量は前記第2の繊維シートの厚さ1mm当たりの目付量よりも小さい、請求項9に記載の断熱シートの製造方法。
【請求項11】
前記含浸された第1のシリカキセロゲルと前記含浸された第2のシリカキセロゲルとを疎水化する前記ステップは、前記接合領域の間の非接合領域において前記第1の繊維シートと前記第2の繊維シートとの間にスペースを形成した状態で前記含浸された第1のシリカキセロゲルと前記含浸された第2のシリカキセロゲルとを疎水化するステップを含む、請求項9に記載の断熱シートの製造方法。
【請求項12】
前
記繊維材の前記第1の繊維シートと前記第2の繊維シートとの間にスペーサを設けることにより前記第1の繊維シートと前記第2の繊維シートとの間に前記スペースを形成するステップをさらに含む、請求項11に記載の断熱シートの製造方法。
【請求項13】
前記含浸された第1のシリカキセロゲルと前記含浸された第2のシリカキセロゲルとを疎水化する前記ステップの後で、前
記繊維材の前記第1の繊維シートと前記第2の繊維シートとの間から前記スペーサを除くステップをさらに含む、請求項12に記載の断熱シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱対策として用いられる断熱シートおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年省エネルギー化が大きくさけばれているが、その実現方法として機器の保温によりエネルギー効率を向上させるものもある。この保温を実現するために、断熱効果に優れた断熱シートが求められている。そのため、繊維シートにシリカキセロゲルを担持させることにより空気よりも熱伝導率を低くした断熱材を用いることがある。このような構成を有する従来の断熱シートは、例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
近年省エネルギー化の要求が増加しているが、その実現方法として機器の保温によりエネルギー効率を向上させるものがある。また複数個の電池セルを組み合わせた二次電池では、ひとつの電池セルが高温になった場合に隣の電池セルに影響を与えないため、電池セル間を断熱したいという要望もある。これらの対策として電池セルの間に断熱効果に優れた断熱シートを設けることがある。このような用途の従来の断熱シートは、例えば、特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-136859号公報
【文献】国際公開第2018/003545号
【発明の概要】
【0005】
内部空間を有する複数の繊維シートを準備する。複数の繊維シートを重ねて複数の繊維シートを互いに複数の接合領域で接合することにより、複数の繊維シートを含む繊維材を形成する。繊維材の複数の繊維シートの内部空間にシリカキセロゲルを含浸する。繊維材の複数の接合領域の間の非接合領域において複数の繊維シートの間にスペースを形成した状態で含浸されたシリカキセロゲルを疎水化する。
【0006】
この製造方法により、面方向の力に対しても強く、所定の厚さが得られる断熱材を得ることができる。
【0007】
別の断熱材は、第1の断熱材と、第1の断熱材の下面に対向してかつ第1の断熱材の両端部に接合領域で接合された両端部を有する第2の断熱材を備える。第1の断熱材は、第1の繊維シートと、第1の繊維シートに含浸された第1のシリカキセロゲルとを有する。第2の断熱材は、第2の繊維シートと、第2の繊維シートに含浸された第2のシリカキセロゲルとを有する。第1の断熱材に加えられた5MPaの圧力に対する第1の断熱材の圧縮率は15%以上である。第2の断熱材に加えられた5MPaの圧力に対する第2の断熱材の圧縮率は10%以下である。第1の繊維シートの両端部は第2の繊維シートの両端部と接合領域でそれぞれ接合されている。
【0008】
この断熱材は、電池セルが発熱しかつ膨張した場合に他の電池セルに影響を与えることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】
図1Aは実施の形態1における断熱シートの斜視図である。
【
図2】
図2は実施の形態1における断熱シートの製造方法を示す断面図である。
【
図3】
図3は実施の形態1における断熱シートの製造方法を示す斜視図である。
【
図4】
図4は実施の形態1における断熱シートの製造方法を示す断面図である。
【
図5】
図5は実施の形態1における断熱シートの他の製造方法を示す上面図である。
【
図6A】
図6Aは実施の形態1における他の断熱シートの上面図である。
【
図6B】
図6Bは実施の形態1におけるさらに他の断熱シートの上面図である。
【
図7】
図7は実施の形態1におけるさらに他の断熱シートの断面図である。
【
図8】
図8は実施の形態1におけるさらに他の断熱シートの断面図である。
【
図9】
図9は実施の形態2における断熱シートの断面図である。
【
図10】
図10は実施の形態2における断熱シートの斜視図である。
【
図12】
図12は実施の形態2における断熱シートの製造方法を示す断面図である。
【
図13】
図13は実施の形態2における断熱シートの製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態1)
図1Aと
図1Bはそれぞれ実施の形態1における断熱シート501の斜視図と上面図である。
図1Cは
図1Bに示す断熱シート501の線IC-ICにおける断面図である。
【0011】
断熱シート501は、断熱材51と、断熱材51の両端部51a、51bに接合領域12a、12bでそれぞれ接合する両端部151a、151bを有する断熱材151とを備える。断熱材51、151は積層方向D1で重ねられている。両端部51a、51bは積層方向D1に直角の方向D2で互いに反対側に位置する。両端部151a、151bは方向D2で互いに反対側に位置する。したがって、接合領域12a、12bは方向D2で互いに反対側に位置する。
【0012】
断熱材51,151はシート形状を有する。断熱材51は、繊維シート11と、繊維シート11に含浸されたシリカキセロゲル21とを有する。具体的には、繊維シート11は、内部空間11qが間に設けられるように互いに絡む繊維11pよりなる。シリカキセロゲル21は、繊維シート11の内部空間11qに含浸されている。同様に、断熱材151は、繊維シート111と、繊維シート111に含浸されたシリカキセロゲル21とを有する。繊維シート111は、内部空間11qが間に設けられるように互いに絡む繊維11pよりなる。シリカキセロゲル21は、繊維シート111の内部空間11qに含浸されている。
【0013】
断熱シート501の製造方法を以下に説明する。
図2と
図3はそれぞれ断熱シート501の製造方法を示す断面図と斜視図である。接合領域12a、12bで互いに接合された繊維シート11、111は繊維材101を構成する。
図2と
図3は繊維材101を示す。
【0014】
まず、内部空間11qを有する繊維シート11、111を準備する。繊維シート11、111は、平均繊維太さ約10μmのポリエチレンテレフタレート(以下PETと記す)の繊維11pからなり、繊維シート11、111の体積のうち内部空間11qの体積の占める割合は約90%である。繊維シート11、111はそれぞれ約1.5mmの厚みを有し、積層方向D1から見て約80mm×150mmの矩形状を有する(
図1B参照)。
【0015】
次に
図2と
図3に示すように、繊維シート11、111を積層方向D1に重ねて、積層方向D1と方向D2との直角の方向D3に延びる両辺に沿って幅約3mmにわたって接合領域12a、12bで接合して繊維材101を形成する。繊維11pがPETのような熱可塑性樹脂よりなる場合、熱プレスを行うことにより、繊維シート11、111を接合領域12a、12bで溶着させることができる。このようにすることにより、接合領域12a、12bでの繊維材101の厚さは約0.2mmとなり、接合領域12に挟まれた非接合領域22での繊維材101の厚さは約3mmとなっている。接合領域12a、12bでは繊維シート11、111は互いに接合されて固定されており変位できない。非接合領域22では繊維シート11、111は互いに変位可能である。
【0016】
なお繊維11pがガラス繊維等の溶融しにくい材料よりなる場合、厚さ約1mm、幅約3mmのPET等の熱可塑性樹脂からなるシートを繊維シート11、111の間に挟んで、熱プレスを行い、溶融させた熱可塑性樹脂を繊維シート11、111にしみこませることにより繊維シート11、111を接合することができる。この場合も、接合領域12a、12bでの繊維材101の厚さを非接合領域22での繊維材101の厚さよりも小さくすることができる。また、3枚以上の繊維シート11でも、同様に積層方向D1で重ねて接合領域12a、12bで互いに接合した繊維材101を得ることができる。
【0017】
次にシリカキセロゲル21を繊維シート11、111の内部空間11qに含浸するための準備を行う。シリカキセロゲル21の材料として高モル珪酸水溶液に触媒として濃塩酸を添加してシリカゾル溶液を調整する。このシリカゾル溶液に繊維材101を浸漬して繊維シート11、111の内部空間11qにシリカゾル溶液を含浸させる。繊維シート11、111に内部空間11qの割合が大きいものを用いることにより、繊維シート11、111の厚さにかかわらず繊維シート11、111の内部までシリカキセロゲル21を充填することができる。なお、繊維シート11、111にシリカゾル溶液を滴下あるいは印刷等の方法でシリカキセロゲル21を含浸させても良い。繊維シート11、111にシリカゾル溶液を含浸した状態で約15分放置し、シリカゾル溶液がゲル化するのを待つ。シリカゾル溶液のゲル化が確認できたらプレスして、ゲル化したシリカゾル溶液が含浸された繊維材101の厚みを均一にする。厚みは、ロールプレス等の方法で均一化してもよい。厚みを均一にした繊維材101を容器に入れ、温度約85℃、湿度約85%設定の恒温恒湿槽に約3時間保管し、シリカ二次粒子を成長させて、ゲル骨格構造を強化する。このようにして繊維シート11、111の内部空間11qにシリカキセロゲル21を含浸する。
【0018】
次に含浸されたシリカキセロゲル21を疎水化する。シリカキセロゲル21を
含浸した繊維シート11、111(繊維材101)を12Nの塩酸に約1時間浸漬し、ゲルと塩酸を反応させる。そのあと疎水化処理の第二段階として、シリル化剤とアルコールの混合溶液からなるシリル化液に浸漬させて約55℃の恒温槽にて約2時間保管する。この際に、シリル化剤とアルコールの混合溶液が浸透する。反応が進行し、トリメチルシロキサン結合が形成し始めるとゲルを含有した繊維シート11、111から塩酸水が外部に排出されるシリカ処理が進行する。シリル化処理が終了したら、約150℃の恒温槽にて約2時間乾燥して、
図1Aから
図1Cに示す断熱シート501を得る。
【0019】
図4は断熱シート501の製造方法を示す断面図であり、上述の疎水化処理での繊維材101を示す。繊維シートの内部空間にシリカキセロゲルを
含浸した状態では、内部空間がシリカキセロゲルで充填されているため、塩酸またはシリル化液等の疎水化のための溶液に浸漬したときに、繊維シートの1枚の厚さが例えば2mmを超えるように大きくなりすぎると、その溶液が十分に繊維シートの内部まで浸透しにくくなる。これに対して実施の形態では、接合領域12a、12bに挟まれた非接合領域22において繊維シート11、111の間にスペース14を設けた状態で浸漬してシリル化処理を行う。スペース14は、例えば
図4に示すように、非接合領域22において繊維シート11、111の間にスペーサ13a、13bを入れることで形成することができる。スペーサ13a、13bは疎水化処理の前に挿入される。スペーサ13a、13bは方向D3(
図3参照)に細長く延びる棒形状を有する。あるいは、接合領域12a、12bの間の距離が小さくなるように接合領域12a、12bを互いに寄せることによりスペース14を形成することができる。スペース14の積層方向D1での幅は1枚の繊維シート11(111)の厚さの半分以上の所定の厚さとすることが望ましい。以上のようにすることにより、断熱シート501が厚くなっても、繊維シート1枚当たりの厚さを上述の所定の厚さ以下にすることにより、繊維材101に
含浸されたシリカキセロゲル21全体を疎水化することができ、信頼性の高い断熱シート501を得ることができる。
図1Bに示すように、断熱シート501の矩形状は方向D3に延びる互いに反対側の2つの長辺と、方向D2に延びる互いに反対側の2つの短辺とを有する。繊維シート11、111の端部11a、111aが、2つの長辺のうちの一方の長辺に位置する接合領域12aで互いに接合され、端部11b、111bが、2つの長辺のうちの他方の長辺に位置する接合領域12bで互いに接合されている。したがって、積層方向D1に直角の面方向の力に対しても大きい強度を有する断熱シート501を得ることができる。なおシリカキセロゲル21は、ゲルが乾燥した状態の広義のキセロゲルであり、通常の乾燥だけでなく、超臨界乾燥、凍結乾燥等の方法によって得られたものでもよい。スペーサ13a、13bは疎水化処理の前に挿入される。
【0020】
シリカキセロゲルは吸湿すると壊れやすいため、吸湿しないように疎水化しておく必要がある。一方断熱シートの断熱性はその厚さに比例する。そのためより大きな断熱性を得ようとすると断熱シートを厚くする必要がある。そのため繊維シートを厚くしておく方法があるが、繊維シートが厚くなりすぎると中心部分のシリカキセロゲルまで十分に疎水化することが難しくなり、信頼性に欠けるものとなる。そのため所定の厚さに作成した必要枚数の断熱材を重ねて保護フィルムで覆うことで等価的に厚い断熱シートを得ることができるが、断熱材どうしを接合できないので、この断熱シートは面方向の力に対して弱くなる。
【0021】
実施の形態1における断熱シート501は、上記のように、積層方向D1に直角の面方向の力に対しても大きい強度を有する。
【0022】
図5は、実施の形態1における断熱シート501の他の製造方法を示す上面図である。
図2から
図4に示す製造方法では、個々の繊維シート11、15に接合領域12a、12bを設けてシリカキセロゲル21の
含浸および疎水化を行っている。
図5に示す製造方法では、大判の繊維シート11(111)に接合領域12a、12bを合せた幅をそれぞれ有する複数の接合領域12を設け、接合領域12に挟まれた非接合領域22の繊維シート11、111の間にスペース14(
図4参照)を形成した状態でシリカキセロゲル21を疎水化する。その後、方向D2に延びる直線L1と、方向D3に延びる直線L2で繊維シート11、111(繊維材101)を切断することにより、複数の断熱シート501を得る。直線L2は接合領域12に沿って接合領域12を通っている。繊維シート11、111(繊維材101)を直線L2で切断することにより、互いに隣りあう断熱シート501での接合領域12a、12bに接合領域12を分割する。
【0023】
図6Aは実施の形態1における他の断熱シート502の上面図である。
図6Aにおいて、
図1Aから
図1Cに示す断熱シート501と同じ部分には同じ参照番号を付す。断熱シート502では、断熱シート501の矩形状の2つの長辺に位置する接合領域12a、12bに加えて、繊維シート11、111の端部11c、111cは矩形状の2つの短辺のうちの一方の短辺に位置する接合領域12cで互いに接合している。接合領域12cは接合領域12a、12bに繋がっている。矩形状の2つの短辺のうち他方の短辺では接合領域は無く、繊維シート11は繊維シート111に接合されていない。接合領域12a、12b、12cがない他の短辺から繊維シート11、111の間にスペーサ13a、13bを入れることによりスペース14を形成してシリカキセロゲル21を疎水化する。
【0024】
図6Bは実施の形態1におけるさらに他の断熱シート503の上面図である。
図6Bにおいて、
図6Aに示す断熱シート502と同じ部分には同じ参照番号を付す。断熱シート503では、接合領域12a、12b、12cに加えて、繊維シート11、111の端部11d、111dは矩形状の2つの短辺のうちの他方の短辺に位置する接合領域12dで互いに接合している。接合領域12dは接合領域12a、12bから離れている。他方の短辺において接合領域12dと接合領域12aとの間と、接合領域12dと接合領域12bとの間とでは、繊維シート11は繊維シート111に接合されていない。接合領域12dと接合領域12aとの間から繊維シート11、111の間にスペーサ13aとを入れ、接合領域12dと接合領域12bとの間から繊維シート11、111の間にスペーサ13bとを入れることによりスペース14を形成してシリカキセロゲル21を疎水化する。
【0025】
図7は実施の形態1におけるさらに他の断熱シート504の断面図である。
図7において、
図1Aから
図1Cに示す断熱シート501と同じ部分には同じ参照番号を付す。疎水化されたシリカキセロゲル21は断熱材51、151(繊維シート11、111)の表面から粉となって落ちしやすい。断熱シート504では、断熱材51、151が保護フィルム15a、15bで覆われている。断熱材の厚さが大きくなると端面での段差が大きくなるため、接合領域を含まない断熱シートでは、シリカキセロゲルの粉が保護フィルムに付着した状態で断熱材から剥離しやすくなる。これに対して実施の形態1における断熱シート504では、両端部に設けられた接合領域12a、12bに保護フィルム15a,15bを直接溶着あるいは接着することで断熱材51、151から保護フィルム15a、15bが剥離しにくくなり、信頼性を向上させることができる。
【0026】
図8は実施の形態1におけるさらに他の断熱シート505の断面図である。
図8において、
図7に示す断熱シート504と同じ部分には同じ参照番号を付す。断熱シート505では、接合領域12a、12bの外側で保護フィルム15a、15bが互いに接合されている。接合領域12a、12bでの断熱材51、151の厚さが非接合領域22での断熱材51、151の厚さよりも小さいので、断熱材51、151が厚い場合でも段差が緩和され、信頼性を向上させることができる。
【0027】
(実施の形態2)
図9は実施の形態2における断熱シート701の断面図である。
図10は断熱シート701の斜視図である。
図9は、
図10に示す断熱シート701の線9-9における断面を示す。
【0028】
断熱シート701は、積層方向D1に積層された断熱材211、212、311を備える。断熱材212は、下面212dと、断熱材211の下面211dに対向する上面212cとを有する。断熱材212は、断熱材211の両端部211a、211bに接合領域215a、215bでそれぞれ接合された両端部212a、212bを有する。第3の断熱材311は断熱材212の下面212dに対向する上面311cを有する。断熱材311は、断熱材212の両端部212a、212bに接合領域215a、215bでそれぞれ接合された両端部311a、311bを有する。断熱材211、212、311の端部211a、212a、311aと断熱材211、212、311の端部211b、212b、311bとはそれぞれ積層方向D1に直角の方向D2に配列されている。断熱シート701は約80mm×150mmの矩形状を有する。接合領域215a、215bは、矩形状の2つの長辺にそれぞれ位置する。実施の形態2において、接合領域215a、215bの方向D2における幅は約3mmである。断熱材211は、繊維シート213と、繊維シート213に含浸されたシリカキセロゲル221とを有する。具体的には、繊維シート213は、内部空間211qが間に設けられるように互いに絡む繊維211pよりなる。シリカキセロゲル221は、繊維シート213の内部空間211qに含浸されている。実施の形態2では、繊維シート213の厚さは約1mmであり、繊維211pは例えばガラス繊維よりなる。断熱材212は、繊維シート214と、繊維シート214に含浸されたシリカキセロゲル221とを有する。具体的には、繊維シート214は、内部空間211qが間に設けられるように互いに絡む繊維211pよりなる。シリカキセロゲル221は、繊維シート214の内部空間211qに含浸されている。実施の形態2では、繊維シート214の厚さは約1mmであり、繊維211pはガラス繊維よりなる。断熱材311は、繊維シート313と、繊維シート313に含浸されたシリカキセロゲル221とを有する。具体的には、繊維シート313は、内部空間211qが間に設けられるように互いに絡む繊維211pよりなる。シリカキセロゲル221は、繊維シート313の内部空間211qに含浸されている。実施の形態2では、繊維シート313の厚さは約1mmであり、繊維211pは例えばガラス繊維よりなる。
【0029】
断熱材211、311に加えられた5MPaの圧力に対する断熱材211、311の圧縮率は約18%である。断熱材212に加えられた5MPaの圧力に対する断熱材212の圧縮率は約8%である。このように、断熱材211、212、311に加えられた同じ圧力に対する断熱材211、311の圧縮率は断熱材212の圧縮率より大きい。ここで圧縮率P1は、圧力を加える前の断熱材の初期厚みT0と、圧力を加えた状態での断熱材の厚さT1とにより、P1=(T0-T1)/T0で求められる。実施の形態2では、圧縮率P1の値をパーセントで表示する。
【0030】
図11は実施の形態2における機器801の断面図である。機器801は、電池セル801a、801bと、電池セル801a、801bの間に配置された断熱シート701とを備える。機器801では、電池セル801a、801bの膨張による圧力は断熱材211、311で吸収される。すなわち、電池セル801a、801bは膨張すると圧力を加えて断熱シート701を圧縮する。断熱材211、212、311に加えられたこの圧力に対する断熱材211、311の圧縮率は断熱材212の圧縮率より大きいので、断熱材211、311は断熱材212よりも大きく圧縮される。これにより、圧力は断熱材211、311で大きく吸収されて、断熱材212には大きく影響しない。これにより電池セル801a、801bのうちひとつの電池セル801aのみが高温になった場合には圧縮されていない断熱材212で断熱することができ、他の電池セル801bに熱の影響を与えることを防止することができる。
【0031】
断熱材211、212、311は、繊維シート213、214、313の状態で接合されていることが望ましい。断熱材211、212、311の状態では表面にシリカキセロゲル221が露出しているので、大きな接合強度を得ることが難しい。そのため、繊維シート213、214、313が接合していることが望ましい。このようにすることにより積層方向D1に直角の面方向の断熱材211、212、311のずれを抑制することができる。
【0032】
断熱シート701が長方形状を有する場合、少なくとも2つの長辺で断熱材211、212、311が互いに接合していることが望ましい。これにより、面方向へのずれ防止の効果をより発揮させることができる。
【0033】
繊維シート213、214、313がポリエチレンテレフタレート(以下PETと記す)のような熱可塑性樹脂よりなる場合には、熱溶着により繊維シート213、214、313を互いに接合することにより断熱材211、212、311を互いに接合することができる。また、繊維シート213、214、313がガラス繊維のような溶融しにくい材料よりなる場合は、液状の接着剤を用いて繊維シート213、214、313を互いに接合することにより断熱材211、212、311を互いに接合することができる、あるいは熱可塑性樹脂シートを挟んで加熱して熱可塑性樹脂を溶融させ、繊維シート213、214、313の内部空間211qに含浸させることによって繊維シート213、214、313を互いに接合することにより断熱材211、212、311を互いに接合することができる。
【0034】
次に実施の形態2における断熱シート701の製造方法について説明する。
図12と
図13は断熱シート701の製造方法を示す断面図である。
【0035】
内部空間211qを有する繊維シート213、214、313を準備する。繊維シート213、214、313はそれぞれ、厚さ約1mm、大きさ約80mm×150mmの矩形状を有し、平均繊維太さ約φ2μmの互いに絡み合う繊維211pよりなる。実施の形態2において繊維211pはガラス繊維よりなる。繊維シート213、313の厚さ1mm当たりの目付量を約127g/m2であり、繊維シート214の厚さ1mm当たりの目付量を約180g/m2である。このように、繊維シート213、313の厚さ1mm当たりの目付量は、繊維シート214の厚さ1mm当たりの目付量より小さい。
【0036】
次に、繊維シート214の上面214cに繊維シート213を重ね、下面214dに繊維シート313を重ね、長手方向であるD3の両長辺に沿って幅約3mmにわたって接合することにより、接合領域215a、215bを形成し、
図12に示す繊維材601を得る。接合領域215a、215bでは繊維シート213、214、313は互いに固定されて変位しない。接合領域215a、215bの間の非接合領域222では繊維シート213、214、313は互いに固定されておらず、互いに変位することができる。繊維シート213、214、313を互いに接合する方法としては、繊維シート213、214の端部213a、214aの間に厚さ約1mm、幅約3mmのPET等の熱可塑性樹脂からなるシートを挟み、繊維シート213、214の端部213b、214bの間に同様の
熱可塑性樹脂からなるシートを挟み、繊維シート214、313の端部214a、313aの間に同様の
熱可塑性樹脂からなるシートを挟み、繊維シート214、313の端部214b、313bの間に同様の
熱可塑性樹脂からなるシートを挟んで、熱プレスを行い、溶融させた熱可塑性樹脂を繊維シート213、214、313にしみこませることにより繊維シート213、214、313を互いに接合する。
【0037】
次にシリカキセロゲル221を繊維シート213、214、313の内部空間211qに含浸する準備を行う。シリカキセロゲル221の材料として20%の水ガラス原料に触媒として炭酸エステルを添加してシリカゾル溶液を調整する。このシリカゾル溶液に、互いに接合された繊維シート213、214、313よりなる繊維材601を浸漬して繊維シート213、214、313の内部空間211qにシリカゾル溶液を含浸させる。繊維シート213、214、313に内部空間211qの割合が大きいものを用いることにより、繊維シート213、214、313の厚さにかかわらず内部までシリカゾル溶液を充填することができる。シリカゾル溶液を含浸した状態で約1分放置し、ゲル化するのを待つ。ゲル化が確認できたら繊維材601をプレスして厚みを均一にするよう調整する。ロールプレス等の方法を用いて繊維材601の厚みを調整してもよい。ゲル化したシリカゾル溶液が含浸されて厚みを調整した繊維材601をフィルムに挟んだ状態で大気中に約1時間放置し、シリカ二次粒子を成長させて、ゲル骨格構造を強化する。このようにして繊維シート213、214、313の内部空間211qにシリカキセロゲル221を含浸する。
【0038】
次にシリカキセロゲル221を含浸した繊維シート213、214、313(繊維材601)を約30分水洗する。次にシリカキセロゲル221を疎水化する。シリカキセロゲル221を含浸した繊維シート213、214、313を6Nの塩酸に約30分浸漬し、ゲル221と塩酸を反応させる。そのあと疎水化処理の第二段階として、シリル化剤とアルコールの混合溶液からなるシリル化液に繊維材601を浸漬させた後、約55℃の恒温槽にて約2時間保管する。この際に、シリル化剤とアルコールの混合溶液が繊維材601に浸透する。反応が進行し、トリメチルシロキサン結合が形成し始めるとゲル221を含有した繊維シート213、214、313(繊維材601)から塩酸水が外部に排出される。シリル化処理が終了したら、約150℃の恒温槽にて約2時間繊維材601を乾燥して、
図9に示す断熱シート701を得る。
【0039】
繊維シート213、214、313の内部空間211qにシリカキセロゲルを含浸した状態では、塩酸またはシリル化液等の疎水化のための溶液に浸漬したときに、全体の厚さが例えば2mmを超えるように繊維材601が厚くなりすぎると、疎水化のための溶液が十分に繊維材601の特に繊維シート214の内部まで浸透しにくくなる。これに対して実施の形態2では、疎水化処理の際には、接合領域215a、215bに挟まれた非接合領域222において1の繊維シート213、214の間にスペース216を形成し、かつ繊維シート214、313の間にスペース218を形成した状態で浸漬してシリル化を行う。実施の形態2では、
図13に示すように、非接合領域222において、繊維シート213、214の端部213a、214aの間にスペーサ217aを入れ、繊維シート213、214の端部213b、214bの間にスペーサ217bを入れ、繊維シート214、313の端部214a、313aの間にスペーサ219aを入れ、繊維シート214、313の端部214b、313bの間にスペーサ219bを入れた状態で繊維材601を浸漬することで、スペース216、218を形成する。スペーサ217a、217b、219a、219bは方向D3に細長く延びる棒形状を有する。あるいは接合領域215a、215bの間の距離が小さくなるように接合領域215a、215bを互いに近づけることによりスペース216、218を作りながら繊維材601を浸漬してもよい。スペース216、218の積層方向D1での厚みは繊維シート213、214、313の厚さのうちの1つの半分以上とすることが望ましい。以上のようにすることにより、シリカキセロゲル221全体を疎水化することができ、信頼性の高い断熱シート701を得ることができる。さらに繊維シート213、214、313が、矩形状の2つの長辺に位置する接合領域215a、215bで互いに接合されているので、断熱シート701は面方向の力に対しても強い。
【0040】
スペース216に挿入されているスペーサ217a、217bのうち、スペーサ217aはスペーサ217bに比べて接合領域215aに近く、スペーサ217bはスペーサ217aに比べて接合領域215bに近い。スペーサ217aの径はスペーサ217bの径より大きい。スペース218に挿入されているスペーサ219a、219bのうち、スペーサ219aはスペーサ219bに比べて接合領域215aに近く、スペーサ219bはスペーサ219aに比べて接合領域215bに近い。スペーサ219aの径はスペーサ219bの径より小さい。すなわち、スペース216の接着領域215aに繋がる部分216aの積層方向D1の幅は、スペース216の接着領域215bに繋がる部分216bの積層方向D1の幅より大きい。スペース218の接着領域215aに繋がる部分218aの積層方向D1の幅は、スペース218の接着領域215bに繋がる部分218bの積層方向D1の幅より小さい。スペース216の接着領域215aに繋がる部分216aの積層方向D1の幅は、スペース218の接着領域215aに繋がる部分218aの積層方向D1の幅より大きい。スペース216の接着領域215bに繋がる部分216bの積層方向D1の幅は、スペース218の接着領域215bに繋がる部分218bの積層方向D1の幅より小さい。このように、複数のスペースのそれぞれスペース内に挿入される2つのスペーサの径の大きさの関係を複数のスペースの互いに隣り合うスペースで交互に逆にすることで、繊維材601全体の厚みを大きくせずにスペースを大きくすることができる。
【0041】
なおシリカキセロゲル221は、ゲルが乾燥した状態の広義のキセロゲルであり、通常の乾燥だけでなく、超臨界乾燥、凍結乾燥等の方法によって得られたものでもかまわない。
【0042】
実施の形態2において、繊維シート213、313の厚さ1mm当たりの目付量を約127g/m
2とし、繊維シート214の厚さ1mm当たりの目付量を約180g/m
2としている。すなわち、繊維シート213、313の厚さ1mm当たりの目付量を、繊維シート214の厚さ1mm当たりの目付量より小さくしている。厚さ1mm当たりの目付量が小さくなると単位面積当たりの重量が減るということを示し、繊維シートの全体の体積に対する内部空間211qの体積の割合が大きくなる。したがって目付量の小さな繊維シートにシリカキセロゲル221の間の空間も増えて、所定の圧力を加えた場合の圧縮率が大きくなる。そのため目付量の異なる繊維シートを重ねて同時にシリカキセロゲル221を含浸させることにより、厚さ方向で圧縮率の異なる断熱材を得ることができる。実施の形態2では、断熱材211、311に加えられた5MPaの圧力に対する断熱材211、311の圧縮率が約18%であり、断熱材212に加えられた5MPaの圧力に対する断熱材212の圧縮率が約8%となっている。すなわち、断熱材211、311に加えられたある圧力に対する断熱材211、311の圧縮率は、断熱材212に加えられた同じ圧力に対する断熱材212の圧縮率より大きい。断熱材211、311に加えられた5MPaの圧力に対する断熱材211、311の圧縮率を15%以上とし、断熱材212に加えられた5MPaの圧力に対する断熱材212の圧縮率を10%以下とすることにより、
図11に示す機器801において断熱シート701を電池セル801a、801b間に配置することにより、電池セル801a、801bの膨張による圧力は断熱材211、311で吸収し、例えばひとつの電池セル801aが高温になった場合には圧縮されていない断熱材212で断熱することができ、隣の電池セル801bに影響を与えることを防止することができる。
【0043】
二次電池の寿命末期には、電池セル内部に発生したガス等により電池セルの中央部分が膨張する。均一な密度でシリカキセロゲルを繊維シートに担持させた断熱シートは、断熱シートが硬すぎると電池セルの膨張を十分に吸収できず、逆に柔らかすぎると圧縮されることによって断熱性が劣化する。したがって、1つの電池セルが高温になった場合に隣の電池セルに影響を与えてしまう可能性がある。
【0044】
実施の形態2における機器801では、上記のように、例えばひとつの電池セル801aが高温になった場合には圧縮されていない断熱材212で断熱することができ、隣の電池セル801bに影響を与えることを防止することができる。
【0045】
実施の形態において、「上面」「下面」等の方向を示す用語は繊維シート等の断熱材の構成部材の相対的な位置関係でのみ決まる相対的な位置を示し、鉛直方向等の絶対的な方向を示すものではない。
【符号の説明】
【0046】
11 繊維シート
12a 接合領域
12b 接合領域
13a スペーサ
13b スペーサ
14 スペース
15a 保護フィルム
15b 保護フィルム
101 繊維材
111 繊維シート
211 断熱材
212 断熱材
213 繊維シート
214 繊維シート
215a 接合領域
215b 接合領域
216 スペース
217a,217b スペーサ
218 スペース
219a,219b スペーサ
311 断熱材
313 繊維シート
601 繊維材