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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】非常停止システム
(51)【国際特許分類】
   G05B 9/02 20060101AFI20240119BHJP
【FI】
G05B9/02 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022141156
(22)【出願日】2022-09-06
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 隆行
(72)【発明者】
【氏名】小原 啓史
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-088080(JP,A)
【文献】特開2001-318719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第2の設備と連結部により連結されて稼働する第1の設備が備える非常停止システムであって、
第1の非常停止ボタンと、前記第2の設備との連結を検出する検出スイッチを含む第1の安全回路、を備え、
前記第1の安全回路は、前記第2の設備が連結されると、前記第2の設備が備える第2の非常停止ボタンを含む第2の安全回路と前記連結部を介して接続され、前記検出スイッチにより前記第1の非常停止ボタンに加えて前記第2の非常停止ボタンによる操作も有効となり、前記第2の設備が連結されていない場合は、前記検出スイッチにより前記第1の非常停止ボタンによる操作が有効となる、非常停止システム。
【請求項2】
前記第1の安全回路は、前記第2の設備が連結されると、前記検出スイッチにより前記第1の非常停止ボタンと前記第2の非常停止ボタンが前記連結部を介して直列に接続される、請求項1に記載の非常停止システム。
【請求項3】
前記第1の安全回路は、前記第2の設備が連結されていない場合は、前記検出スイッチにより前記連結部が短絡される、請求項1に記載の非常停止システム。
【請求項4】
前記第1の安全回路は、前記検出スイッチが前記第2の設備の連結を検出してからの第1の期間は、前記第2の安全回路の状態に依存せずに前記第1の非常停止ボタンによる操作が有効となるオフディレイ回路を備える、請求項に記載の非常停止システム。
【請求項5】
前記第1の期間は、前記第2の設備が連結されてから、前記第2の安全回路において前記第2の非常停止ボタンによる操作が有効となるのに必要な時間よりも長い、請求項に記載の非常停止システム。
【請求項6】
前記第2の非常停止ボタンによる操作が有効となるのに必要な時間は、前記第2の安全回路が備える第2のセンサ回路の起動処理に要する時間である、請求項に記載の非常停止システム。
【請求項7】
前記検出スイッチは、前記第2の安全回路が前記第1の安全回路から切り離されるよりも先に、前記第2の設備の切り離しを検出する、請求項からのいずれかに記載の非常停止システム。
【請求項8】
前記第1の設備は、前記第1の設備に電力を供給する電力源を備え、
前記電力源は、前記第2の設備が連結されると、前記連結部を介して前記第2の設備にも電力を供給し、
前記第2の設備に電力が供給されている状態で、前記第1の非常停止ボタンまたは前記第2の非常停止ボタンが操作されると、前記第2の設備の第2の駆動回路への電力の供給が遮断される、請求項に記載の非常停止システム。
【請求項9】
前記電力源は、前記第2の設備に複数の経路で電力を供給し、
前記第2の設備に電力が供給されている状態で、前記第1の非常停止ボタンまたは前記第2の非常停止ボタンが操作されても、前記第2の安全回路への電力の供給は遮断されない、請求項に記載の非常停止システム。
【請求項10】
前記第1の設備は、前記第1の設備に電力を供給する電力源を備え、
前記電力源は、前記第2の設備が連結されると、前記連結部を介して前記第2の設備にも電力を供給し、
前記第2の設備に電力が供給されている状態で、前記第1の非常停止ボタンまたは前記第2の非常停止ボタンが操作されると、前記第1の設備の第1の駆動回路への電力の供給も遮断される、請求項に記載の非常停止システム。
【請求項11】
前記第2の設備に電力が供給されている状態で、前記第1の非常停止ボタンまたは前記第2の非常停止ボタンが操作されても、前記第1の安全回路への電力の供給は遮断されない、請求項10に記載の非常停止システム。
【請求項12】
前記第1の安全回路は冗長化されている、請求項1に記載の非常停止システム。
【請求項13】
前記第1の安全回路と前記第2の安全回路は冗長化されている、請求項に記載の非常停止システム。
【請求項14】
前記第1の安全回路は、
第1のセンサ回路と、
前記第1のセンサ回路により開閉される第1のセンサ回路スイッチと、を備え、
前記第1の安全回路は、前記第2の設備が連結されていない場合は、前記検出スイッチにより前記第1のセンサ回路による前記第1のセンサ回路スイッチの操作が有効となる、請求項1に記載の非常停止システム。
【請求項15】
前記第2の安全回路は、
第2のセンサ回路と、
前記第2のセンサ回路により開閉される第2のセンサ回路スイッチと、を備え、
前記第1の安全回路は、前記第2の設備が連結されると、前記検出スイッチにより前記第2のセンサ回路による前記第2のセンサ回路スイッチの操作が有効となる、請求項に記載の非常停止システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、他の設備が連結される設備の非常停止システムに関する。
【背景技術】
【0002】
基板に部品を実装する部品実装装置などの可動部を備える設備では、作業者が誤って可動中の可動部に触れてケガをすることを防止し、また、設備に異常が発生した場合の設備保全を目的とした安全機構として、可動部などを強制的に停止させる非常停止スイッチが設けられている(例えば、特許文献1)。特許文献1には、一列に配置された複数の部品実装装置の配列に沿って移動する作業装置(自動交換装置)を有し、作業装置が備える監視部(センサ)が監視エリア内への人の侵入を検出すると作業装置が備える移動モータを非常停止させ、また、人が操作可能な位置に設けられた非常停止スイッチが操作されると作業装置への給電をカットして作業装置を非常停止させるシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-119578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1を含む従来技術では、部品実装装置と作業装置が連結されて一体化した状態で電力の供給が開始されるためシステム起動後に非常スイッチと監視部の非常停止機能が制限されることはないが、起動済みの設備に休止中の他の設備を挿抜して一体的に使用するシステムの場合には、次のような問題点があった。すなわち、休止中の他の設備を起動済みの設備に連結して電力が供給されるようになっても、他の設備のセンサ回路などの起動処理が完了するまでの時間は、起動済みの設備の非常停止スイッチと監視部の非常停止機能が正常に機能しないといういう課題があり、単独で使用する場合でも、他の設備と連結して使用する場合でも、設備を適切に非常停止させるためには、さらなる改善の余地があった。
【0005】
そこで本発明は、単独で使用する場合でも、他の設備と連結して使用する場合でも、設備を適切に非常停止させることができる非常停止システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の非常停止システムは、第2の設備と連結部により連結されて稼働する第1の設備が備える非常停止システムであって、第1の非常停止ボタンと、前記第2の設備との連結を検出する検出スイッチを含む第1の安全回路、を備え、前記第1の安全回路は、前記第2の設備が連結されると、前記第2の設備が備える第2の非常停止ボタンを含む第2の安全回路と前記連結部を介して接続され、前記検出スイッチにより前記第1の非常停止ボタンに加えて前記第2の非常停止ボタンによる操作も有効となり、前記第2の設備が連結されていない場合は、前記検出スイッチにより前記第1の非常停止ボタンによる操作が有効となる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、単独で使用する場合でも、他の設備と連結して使用する場合でも、設備を適切に非常停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施の形態の無人搬送車と被搬送ロボットの斜視図
図2】(a)(b)本発明の一実施の形態の無人搬送車と被搬送ロボットの構成説明図
図3】本発明の一実施の形態の無人搬送車と被搬送ロボットの制御系の構成を示すブロック図
図4】本発明の一実施の形態の非常停止システムが備える第1の安全回路において第1のセンサ回路が起動する前の状態を示す説明図
図5】本発明の一実施の形態の非常停止システムが備える第1の安全回路において第1のセンサ回路の起動処理が完了した状態を示す説明図
図6】本発明の一実施の形態の非常停止システムが備える第1の安全回路において第1の非常停止ボタンが押された状態を示す説明図
図7】本発明の一実施の形態の非常停止システムが備える第1の安全回路が有する無人搬送車センサが障害を検出した状態を示す説明図
図8】本発明の一実施の形態の非常停止システムが備える第1の安全回路に第2の安全回路が接続される前の状態を示す説明図
図9】本発明の一実施の形態の非常停止システムが備える第1の安全回路に第2の安全回路が接続された直後の状態を示す説明図
図10】本発明の一実施の形態の非常停止システムが備える第1の安全回路に接続された第2の安全回路において第2のセンサ回路の起動処理が完了した状態を示す説明図
図11】本発明の一実施の形態の非常停止システムが備える第1の安全回路に第2の安全回路が接続されて第1の期間が経過した後の状態を示す説明図
図12】本発明の一実施の形態の非常停止システムが備える第1の安全回路に接続された第2の安全回路において第2の非常停止ボタンが押された状態を示す説明図
図13】本発明の一実施の形態の非常停止システムが備える第1の安全回路に接続された第2の安全回路が有する被搬送ロボットセンサが障害を検出した状態を示す説明図
図14】本発明の一実施の形態の非常停止システムが備える第1の安全回路から第2の安全回路が切り離される途中の状態を示す説明図
図15】本発明の一実施の形態の非常停止システムが備える第1の安全回路に第2の安全回路が接続される際のタイミング図
図16】本発明の一実施の形態の非常停止システムが備える第1の安全回路から第2の安全回路が切り離される際のタイミング図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を用いて、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。以下で述べる構成、形状等は説明のための例示であって、無人搬送車、被搬送ロボット、非常停止システムの仕様に応じ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において対応する要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
まず、図1図2を参照して、無人搬送車10と被搬送ロボット20の概要について説明する。図2(a)は、連結前の無人搬送車10と被搬送ロボット20を示している。図2(b)は、連結後の無人搬送車10と被搬送ロボット20を示している。
【0011】
図1において、無人搬送車10は、先頭部にLiDARやステレオカメラなど物体までの距離を測定可能な無人搬送車センサ11を備えている。無人搬送車10は、運行管理装置(図示省略)などから送信される指示に従い、無人搬送車センサ11により自己位置と周囲の安全を認識しながら生産ラインのフロア内を自走し、被搬送ロボット20を指示された設備や場所に搬送する。被搬送ロボット20は、内部に生産ラインの設備で使用される部材を収容し、設備に連結されると収容する部材を設備に引き渡す機能を有している。
【0012】
なお、無人搬送車10(第1の設備)は、被搬送ロボット20を連結して搬送する搬送手段の一例であり、作業者が搭乗する搬送車であってもよい。また、被搬送ロボット20(第2の設備)は無人搬送車10(第1の設備)に連結されるものであればよく、生産ラインの設備に接続されなくてもよい。
【0013】
図2において、無人搬送車10は、後部に無人搬送車連結部12を備えている。被搬送ロボット20は、先頭部に被搬送ロボット連結部21を備えている。無人搬送車10と被搬送ロボット20は、無人搬送車連結部12と被搬送ロボット連結部21により相互に連結される。無人搬送車連結部12と被搬送ロボット連結部21は、電気信号や電力を伝達するインターフェースである複数のコネクタC(図3参照)を備えている。また、無人搬送車連結部12と被搬送ロボット連結部21は、無人搬送車10と被搬送ロボット20を物理的に結合する連結機構(図示省略)を備えている。このように、無人搬送車連結部12と被搬送ロボット連結部21は、無人搬送車10(第1の設備)と被搬送ロボット20(第2の設備)を連結する連結部Jを構成する。
【0014】
図2において、無人搬送車10は、後部に無人搬送車連結部12との連結を検出する検出ボタン13A,13Bを備えている。この例では、無人搬送車10は、無人搬送車連結部12を挟んで2つの検出ボタン13A,13Bを備えている。被搬送ロボット20は、後部にLiDARやステレオカメラなど物体までの距離を測定可能な被搬送ロボットセンサ22を備えている。被搬送ロボット20を連結した無人搬送車10は、無人搬送車センサ11の他に被搬送ロボットセンサ22によって取得した情報も加えて自己位置と周囲の安全を認識しながら自走する。
【0015】
無人搬送車10は、単独で走行中に無人搬送車センサ11が障害物などを検出すると非常停止する。また、無人搬送車10と被搬送ロボット20は、連結されて走行中に無人搬送車センサ11または被搬送ロボットセンサ22が障害物などを検出すると非常停止する。なお、無人搬送車10と被搬送ロボット20が備える無人搬送車センサ11と被搬送ロボットセンサ22は、それぞれ1つに限定されることはない。例えば、無人搬送車10は、単独で走行中に後部や側方を認識する無人搬送車センサをさらに備える構成であってもよい。また、被搬送ロボット20は、生産ラインの設備に接続された状態で、前側や側方の安全を認識する被搬送ロボットセンサをさらに備える構成であってもよい。
【0016】
図1図2において、無人搬送車10の上面には、作業者などが無人搬送車10を非常停止させるための第1の非常停止ボタン14が配置されている。無人搬送車10が単独で、または、被搬送ロボット20を連結して走行中に第1の非常停止ボタン14が操作(押下)されると、無人搬送車10は非常停止する。
【0017】
被搬送ロボット20の前面には、第2の非常停止ボタン23が配置されている。第2の非常停止ボタン23は、被搬送ロボット20が無人搬送車10と連結されている状態では、第1の非常停止ボタン14と同様に無人搬送車10を非常停止させる機能を有する。また、第2の非常停止ボタン23は、生産ラインの設備に接続された状態では、接続された設備を非常停止させる機能を有する。
【0018】
なお、図1図2に示す第1の非常停止ボタン14と第2の非常停止ボタン23の配置位置は一例であり、走行中または稼働中の無人搬送車10や、無人搬送車10に連結された被搬送ロボット20に対して、作業者などが容易に操作できる位置であればよい。
【0019】
次に、図3を参照して、無人搬送車10と被搬送ロボット20の制御系の構成について説明する。無人搬送車10は、第1の安全回路30、バッテリなどの電力源15、遮断回路16、第1の駆動回路17を備えている。被搬送ロボット20は、第2の安全回路40、第2の駆動回路24を備えている。第1の安全回路30と第2の安全回路40は、連結部J(無人搬送車連結部12と被搬送ロボット連結部21)の複数のコネクタCを介して相互に接続される。
【0020】
第1の安全回路30には、電力源15から電力が直接供給される。第1の駆動回路17には、遮断回路16を介して電力源15から電力が供給される。第2の安全回路40には、コネクタCを介して無人搬送車10の電力源15から電力が供給される。被搬送ロボット20の第2の駆動回路24には、遮断回路16とコネクタCを介して無人搬送車10の電力源15から電力が供給される。第1の駆動回路17は、無人搬送車10を走行させるモータなどを駆動する電圧や電流を制御する回路である。第2の駆動回路17は、被搬送ロボット20を走行させるモータなどを駆動する電圧や電流を制御する回路である。
【0021】
図3において、第1の安全回路30は、第1のセンサ回路31を備えている。第1のセンサ回路31は、無人搬送車センサ11を含む各種のセンサを制御する回路である。第1のセンサ回路31に電力が供給され、無人搬送車センサ11などを使用可能な状態にする起動処理が終了すると、第1のセンサ回路31から起動処理完了信号が送信され、第1のセンサ回路スイッチ33が閉じる(図5参照)。第2の安全回路40は、第2のセンサ回路41を備えている。第2のセンサ回路41は、被搬送ロボットセンサ22を含む各種のセンサを制御する回路である。第2のセンサ回路41に電力が供給され、被搬送ロボットセンサ22などを使用可能な状態にする起動処理が終了すると、第2のセンサ回路41から起動処理完了信号が送信され、第2のセンサ回路スイッチ42が閉じる(図10参照)。
【0022】
遮断回路16は、第1の安全回路30からの電力遮断信号を受信すると、電力源15からの電力供給を遮断する。すなわち、第1の安全回路30から電力遮断信号が送信されると、第1の駆動回路17への電力供給が遮断される。さらに、被搬送ロボット20が連結されている場合は、第2の駆動回路24への電力供給も遮断される。
【0023】
このように、第1の安全回路30と遮断回路16は、被搬送ロボット20(第2の設備)と連結部Jにより連結されて稼働する無人搬送車10(第1の設備)が備える非常停止システムSである。また、無人搬送車10(第1の設備)は、無人搬送車10(第1の設備)に電力を供給する電力源15を備えている。さらに、電力源15は、被搬送ロボット20(第2の設備)が連結されると、連結部Jを介して被搬送ロボット20(第2の設備)にも電力を供給する。非常停止システムSは、非常停止状態が発生する(非常停止ボタンが操作される)と、電力遮断信号を送信して被搬送ロボット20(第2の設備)の第2の駆動回路24への電力の供給を遮断する。
【0024】
また、電力源15は、被搬送ロボット20(第2の設備)に遮断回路16を経由する経路と、経由しない経路の複数の経路で電力を供給する。この構成により、非常停止システムSでは、被搬送ロボット20に電力が供給されている状態で非常停止状態(非常停止ボタンの操作、センサによる障害の検出)が発生しても、第1の安全回路30と第2の安全回路40への電力の供給は遮断されない。すなわち、被搬送ロボット20に電力が供給されている状態で、第1の非常停止ボタン14または第2の非常停止ボタン23が操作されても、第1の安全回路30と第2の安全回路40への電力の供給は遮断されない。これにより、非常停止状態から脱すると直ぐに通常動作状態に復帰することができる。
【0025】
次に、図4を参照して、第1の安全回路30の構成について説明する。第1の安全回路30は、第1のセンサ回路31、セーフティリレーユニット32、第1のセンサ回路スイッチ33、第1の非常停止ボタン14、第1の非常停止スイッチ34、検出スイッチ35A,35B、オフディレイ回路36A,36Bを備えている。
【0026】
セーフティリレーユニット32は、4つの端子I1~I4を備えている。セーフティリレーユニット32の端子I1と端子I4の間、および、端子I2と端子I3の間が短絡状態となると、第1の安全回路30による非常停止有効な状態となる。非常停止が有効な状態で端子I1と端子I4の間、または、端子I2と端子I3の間のいずれかが短絡状態から開状態に変化すると、セーフティリレーユニット32は遮断回路16に電力遮断信号を送信する(非常停止)。すなわち、第1の安全回路30は、端子I1と端子I4の間の回路(以下、「A系統の回路」などと称する。)と、端子I2と端子I3の間の回路(以下、「B系統の回路」などと称する。)の少なくともいずれかが開状態になると、非常停止状態が発生したと判断する。
【0027】
図4において、第1のセンサ回路31は、起動処理が完了すると、通常時開状態の第1のセンサ回路スイッチ33を閉状態にする。また、第1のセンサ回路31は、起動後に無人搬送車センサ11が障害を検出すると、第1のセンサ回路スイッチ33を開状態にする。第1のセンサ回路スイッチ33は、A系統の第1のセンサ回路スイッチ33aと、B系統の第1のセンサ回路スイッチ33bを備えている。通常時閉状態の第1の非常停止スイッチ34は、第1の非常停止ボタン14の操作(押下)により開状態となる。第1の非常停止スイッチ34は、A系統の第1の非常停止スイッチ34aと、B系統の第1の非常停止スイッチ34bを備えている。
【0028】
通常時閉状態の検出スイッチ35A,35Bは、検出ボタン13A,13Bの操作(押下)により開状態となる。検出スイッチ35Aは、A系統の検出スイッチ35Aaと、オフディレイ回路36Aを起動する起動スイッチ35Abを備えている。検出スイッチ35Bは、B系統の検出スイッチ35Baと、オフディレイ回路36Bを起動する起動スイッチ35Bbを備えている。
【0029】
図4において、オフディレイ回路36A,36Bは、起動スイッチ35Ab,35Bbにより起動されると閉状態となり、起動スイッチ35Ab,35Bbから起動されなくなると所定の時間後に開状態となる。オフディレイ回路36Aは、A系統のディレイスイッチ36Aaを備えている。オフディレイ回路36Bは、B系統のディレイスイッチ36Baを備えている。
【0030】
A系統の回路には、第1のセンサ回路スイッチ33a、第1の非常停止スイッチ34a、検出スイッチ35Aaが直列に接続されている。また、A系統の回路には、検出スイッチ35Aaと並列にディレイスイッチ36Aaが接続されている。B系統の回路には、第1のセンサ回路スイッチ33b、第1の非常停止スイッチ34b、検出スイッチ35Baが直列に接続されている。また、B系統の回路には、検出スイッチ35Baと並列にディレイスイッチ36Baが接続されている。このように、第1の安全回路30は、A系統とB系統の2重の回路で冗長化(2重化)されている。また、第1の安全回路30は、第1の非常停止ボタン14と、被搬送ロボット20(第2の設備)との連結を検出する検出スイッチ35A,35Bを含む。
【0031】
次に、図4~7を参照して、第1の安全回路30の機能について説明する。図4は、無人搬送車10の電源を投入した直後で、第1のセンサ回路31の起動処理が完了する前の第1の安全回路30を示している。すなわち、第1のセンサ回路31の起動処理が完了していないため、第1のセンサ回路スイッチ33は開状態である。この状態では、A系統の回路とB系統の回路は開状態であり、第1の非常停止ボタン14による操作の有無に関わらず、非常停止時と同様に第1の駆動回路17への電源供給が遮断される。
【0032】
図5は、第1のセンサ回路31の起動処理が完了した後の第1の安全回路30を示している。すなわち、第1のセンサ回路31が起動することにより、第1のセンサ回路スイッチ33が閉状態となっている。また、被搬送ロボット20は接続されておらず、検出ボタン13A,13Bが操作前の状態であるため、検出スイッチ35A,35Bは閉状態である。また、オフディレイ回路36A,36Bも閉状態である。この状態では、A系統の回路とB系統の回路は閉状態であり、第1の非常停止ボタン14による操作と第1のセンサ回路31による非常停止が有効である。
【0033】
このように、第1の安全回路30は、被搬送ロボット20(第2の設備)が連結されていない場合は、検出スイッチ35A,35Bまたはオフディレイ回路36A,36Bにより第1の非常停止ボタン14による操作と、第1のセンサ回路31による第1のセンサ回路スイッチ33の操作が有効となる。
【0034】
図6は、第1の非常停止ボタン14による操作と第1のセンサ回路31による非常停止が有効な状態で(図5)、第1の非常停止ボタン14が操作(押下)された第1の安全回路30を示している。すなわち、第1の非常停止ボタン14の操作(矢印a)により、第1の非常停止スイッチ34が開状態となっている。これにより、A系統の回路とB系統の回路が開状態となり、セーフティリレーユニット32から遮断回路16に電力遮断信号が送信され、電力源15からの第1の駆動回路17への電源供給が遮断(非常停止)される。
【0035】
図7は、第1の非常停止ボタン14による操作と第1のセンサ回路31による非常停止が有効な状態で(図5)、第1のセンサ回路31に含まれる無人搬送車センサ11が障害を検出した後の第1の安全回路30を示している。すなわち、第1のセンサ回路31により第1のセンサ回路スイッチ33が開状態となっている。これにより、A系統の回路とB系統の回路が開状態となり、セーフティリレーユニット32から遮断回路16に電力遮断信号が送信され、電力源15からの第1の駆動回路17への電源供給が遮断(非常停止)される。
【0036】
次に、図8を参照して、第2の安全回路40の構成について説明する。第2の安全回路40は、第2のセンサ回路41、第2のセンサ回路スイッチ42、第2の非常停止ボタン23、第2の非常停止スイッチ43を備えている。第2の安全回路40は、連結部Jが備える複数(ここでは4つ)のコネクタCを介して第1の安全回路30と接続される。第2の安全回路40の第2のセンサ回路スイッチ42と第2の非常停止スイッチ43は、第1の安全回路30と接続されると、第1の安全回路30の第1のセンサ回路スイッチ33と第1の非常停止スイッチ34と一体化して、A系統の回路とB系統の回路を構成する。
【0037】
第2のセンサ回路41は、起動処理が完了すると第2のセンサ回路スイッチ42を閉状態にする。また、第2のセンサ回路41は、起動後に被搬送ロボットセンサ22が障害を検出すると、第2のセンサ回路スイッチ42を開状態にする。第2のセンサ回路スイッチ42は、A系統の第2のセンサ回路スイッチ42aと、B系統の第2のセンサ回路スイッチ42bを備えている。通常時閉状態の第2の非常停止スイッチ43は、第2の非常停止ボタン23の操作により開状態となる。第2の非常停止スイッチ43は、A系統の第2の非常停止スイッチ43aと、B系統の第2の非常停止スイッチ43bを備えている。
【0038】
次に、図8~13、図15を参照して、第1の安全回路30と、第1の安全回路30に接続される第2の安全回路40の機能について説明する。図8は、被搬送ロボット20が無人搬送車10に接続される前の第1の安全回路30と第2の安全回路40の状態を示している(図15の時刻T0)。すなわち、第1の安全回路30は、図5に示す第1の非常停止ボタン14による操作と第1のセンサ回路31による非常停止が有効な状態である。また、被搬送ロボット20には電源が供給されておらず、第2の安全回路40の第2のセンサ回路41は起動前で第2のセンサ回路スイッチ42は開状態である。
【0039】
図9は、被搬送ロボット20が無人搬送車10に接続された直後の状態を示している(図15の時刻T1)。すなわち、被搬送ロボット20の第2の安全回路40と第2の駆動回路24に、連結部JのコネクタCを介して無人搬送車10の電力源15から電力が供給される(図3参照)。また、連結部JのコネクタCを介して第2の安全回路40は第1の安全回路30と接続される。しかし、第2の安全回路40では第2のセンサ回路41の起動処理が完了しておらず、第2のセンサ回路スイッチ42は開状態である。
【0040】
また、第1の安全回路30では、検出ボタン13A,13Bの操作(矢印b)により検出スイッチ35A,35Bは開状態となっているが、オフディレイ回路36A,36Bは閉状態である。そのため、A系統の回路とB系統の回路は、第1の安全回路30内で閉状態となっている。この状態では、第1の非常停止ボタン14による操作と第1のセンサ回路31による非常停止のみが有効である。
【0041】
図10は、被搬送ロボット20が無人搬送車10に接続された後、第2のセンサ回路41の起動処理が完了した後に(図15の時刻T2)、第2のセンサ回路スイッチ42が閉状態となった第1の安全回路30と第2の安全回路40を示している(図15の時刻T3)。すなわち、第2のセンサ回路41が起動することにより、第2のセンサ回路スイッチ42が閉状態となっている。一方、第1の安全回路30のオフディレイ回路36A,36Bは、まだ、閉状態が保持されている。そのため、A系統の回路とB系統の回路は、第1の安全回路30内で閉状態となっている。この状態では、第1の非常停止ボタン14による操作と第1のセンサ回路31による非常停止のみが有効である。
【0042】
図11は、被搬送ロボット20が無人搬送車10に接続され、検出ボタン13A,13Bの操作により起動スイッチ35Ab,35Bbによりオフディレイ回路36A,36Bがオフとなってから所定の時間(第1の期間T41)が経過した第1の安全回路30と第2の安全回路40を示している(図15の時刻T4)。すなわち、第1の安全回路30のオフディレイ回路36A,36Bは開状態になっている。
【0043】
これにより、A系統の回路には、第1のセンサ回路スイッチ33a、第1の非常停止スイッチ34a、第2のセンサ回路スイッチ42a、第2の非常停止スイッチ43aが直列に接続される。また、B系統の回路には、第1のセンサ回路スイッチ33b、第1の非常停止スイッチ34b、第2のセンサ回路スイッチ42b、第2の非常停止スイッチ43bが直列に接続される。この状態では、第1の非常停止ボタン14による操作と第1のセンサ回路31による非常停止に加えて、第2の非常停止ボタン23の操作と第2のセンサ回路41による非常停止も有効である。このように、連結された第1の安全回路30と第2の安全回路40は、A系統とB系統の2重の回路で冗長化(2重化)されている。
【0044】
図12は、第1の非常停止ボタン14と第2の非常停止ボタン23による操作および第1のセンサ回路31と第2のセンサ回路41による非常停止が有効な状態で(図15の時刻T4以降)(図11)、第2の非常停止ボタン23が操作(押下)された第1の安全回路30と第2の安全回路40を示している。すなわち、第2の非常停止ボタン23の操作(矢印c)により第2の非常停止スイッチ43が開状態となる。これにより、A系統の回路とB系統の回路が開状態となり、セーフティリレーユニット32から遮断回路16に電力遮断信号が送信され、電力源15からの第1の駆動回路17と第2の駆動回路24への電源供給が遮断(非常停止)される。
【0045】
図13は、第1の非常停止ボタン14と第2の非常停止ボタン23による操作および第1のセンサ回路31と第2のセンサ回路41による非常停止が有効な状態で(図15の時刻T4以降)(図11)、第2のセンサ回路41に含まれる被搬送ロボットセンサ22が障害を検出した後の第1の安全回路30と第2の安全回路40を示している。すなわち、第2のセンサ回路41により第2のセンサ回路スイッチ42が開状態となっている。これにより、A系統の回路とB系統の回路が開状態となり、セーフティリレーユニット32から遮断回路16に電力遮断信号が送信され、電力源15からの第1の駆動回路17、第2の駆動回路24への電源供給が遮断(非常停止)される。
【0046】
このように、第1の安全回路30は、被搬送ロボット20(第2の設備)が連結されると、被搬送ロボット20(第2の設備)が備える第2の非常停止ボタン23を含む第2の安全回路40と連結部J(複数のコネクタC)を介して接続され、検出スイッチ35A,35Bにより第2の非常停止ボタン23による操作と第2のセンサ回路41による非常停止も有効となる(図11~13)。また、第1の安全回路30は、検出スイッチ35A,35Bが被搬送ロボット20(第2の設備)の連結を検出してからの第1の期間T41(図15参照)は、第2の安全回路40の状態に依存せずに第1の非常停止ボタン14による操作と第1のセンサ回路31による非常停止が有効となるオフディレイ回路36A,36Bを備える(図9図10)。
【0047】
第1の期間T41は、被搬送ロボット20(第2の設備)が連結されてから、第2の安全回路40において第2の非常停止ボタン23による操作と第2のセンサ回路41による非常停止が有効となるのに必要な時間(起動処理時間T31)よりも長い。具体的には、起動処理時間T31(図15参照)は、被搬送ロボット20(第2の設備)が備えるセンサ回路(第2のセンサ回路41)の起動処理に要する時間である。
【0048】
被搬送ロボット20(第2の設備)に無人搬送車10(第1の設備)の電力源15から電力が供給されている状態(第1の期間T41経過後)で、第1の非常停止ボタン14または第2の非常停止ボタン23が操作されると、無人搬送車10(第1の設備)の第1の駆動回路17と被搬送ロボット20(第2の設備)の第2の駆動回路24への電力の供給が遮断(非常停止)される(図12)。また、第1の期間T41経過後に、第2のセンサ回路41に含まれる被搬送ロボットセンサ22が障害を検出すると、第1の駆動回路17と第2の駆動回路24への電力の供給が遮断(非常停止)される(図13)。
【0049】
次に、図14図16図8を参照して、第1の安全回路30から第2の安全回路40が切り離される際の第1の安全回路30と第2の安全回路40の機能について説明する。図14は、無人搬送車10から被搬送ロボット20を切り離す作業を開始した直後の第1の安全回路30と第2の安全回路40の状態を示している(図16の時刻T5)。ここで、検出スイッチ35A,35Bは、第2の安全回路40が第1の安全回路30から切り離されるよりも先に、被搬送ロボット20(第2の設備)の切り離しを検出するように、検出ボタン13A,13Bの配置や形状、連結部JやコネクタCの構造が設計されている。
【0050】
すなわち、連結部JのコネクタCを介して第2の安全回路40は第1の安全回路30と接続されているものの、検出ボタン13A,13Bの操作(矢印d)により検出スイッチ35A,35Bは閉状態となっている。また、オフディレイ回路36A,36Bも起動されて閉状態となっている。そのため、A系統の回路とB系統の回路は、第1の安全回路30内で閉状態である。この状態では、第1の非常停止ボタン14による操作と第1のセンサ回路31による非常停止のみが有効であり、第2の非常停止ボタン23による操作と第2のセンサ回路41による非常停止は無効である。
【0051】
このように、第1の安全回路30は、検出ボタン13A,13Bの操作により検出スイッチ35A,35Bが閉状態になると、第2の安全回路40と接続されていても、第2の安全回路40と接続されていない場合と同じ状態となる(図8参照)。
【0052】
上記説明したように、本実施の形態の非常停止システムSは、第2の設備(被搬送ロボット20)と連結部Jにより連結されて稼働する第1の設備(無人搬送車10)が備える非常停止システムSであって、第1の非常停止ボタン14と、第2の設備との連結を検出する検出スイッチ35A,35Bを含む第1の安全回路30、を備えている。そして、第1の安全回路30は、第2の設備が連結されていない場合は、検出スイッチ35A,35Bにより第1の非常停止ボタン14による操作が有効となる。これによって、他の設備と連結して使用する場合でも、設備を適切に非常停止させることができる。
【0053】
なお、上記では他の設備(第2の設備)として被搬送ロボット20を、他の設備が連結される設備(第1の設備)として無人搬送車10を例に、本実施の形態の非常停止システムSを説明したが、非常停止システムSは、この組み合わせに限定されることはない。例えば、第1の設備は、生産ラインに固定された生産設備であってもよい。また、第1の設備に第2の設備が連結された状態で、さらに第2の設備に第3の設備を連結する構成であってもよい。その場合、第2の設備の第2の安全回路40は、第1の安全回路30と同様に、第3の設備との連結を検出する検出スイッチ、オフディレイ回路を備える構成となる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
単独で使用する場合でも、他の設備と連結して使用する場合でも、設備を適切に非常停止させることができる非常停止システムを提供する。
【符号の説明】
【0055】
10 無人搬送車(第1の設備)
14 第1の非常停止ボタン
15 電力源
20 被搬送ロボット(第2の設備)
23 第2の非常停止ボタン
30 第1の安全回路
35A、35B 検出スイッチ
36A,36B オフディレイ回路
40 第2の安全回路
J 連結部
S 非常停止システム
T41 第1の期間
【要約】
【課題】単独で使用する場合でも、他の設備と連結して使用する場合でも、設備を適切に非常停止させることができる非常停止システムを提供する。
【解決手段】第2の設備と連結部Jにより連結されて稼働する第1の設備が備える非常停止システムは、第1の非常停止ボタン14と、第2の設備との連結を検出する検出スイッチ35A,35Bを含む第1の安全回路30を備えている。そして、第1の安全回路30は、第2の設備が連結されていない場合は、検出スイッチ35A,35Bにより第1の非常停止ボタン14による操作が有効となる。
【選択図】図8
図1
図2
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図10
図11
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