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特許7422317照明装置、照明システム、制御装置、及び制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】照明装置、照明システム、制御装置、及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 47/155 20200101AFI20240119BHJP
   H05B 47/16 20200101ALI20240119BHJP
   A61M 21/02 20060101ALI20240119BHJP
【FI】
H05B47/155
H05B47/16
A61M21/02 H
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022060045
(22)【出願日】2022-03-31
(62)【分割の表示】P 2018032286の分割
【原出願日】2018-02-26
(65)【公開番号】P2022095790
(43)【公開日】2022-06-28
【審査請求日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】P 2017228514
(32)【優先日】2017-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】姫野 徹
(72)【発明者】
【氏名】松林 容子
(72)【発明者】
【氏名】原田 和樹
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-357591(JP,A)
【文献】特表2009-530763(JP,A)
【文献】特開2002-336357(JP,A)
【文献】特表2017-522693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 47/155
H05B 47/16
A61M 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1色度の第1光を発する第1光源、及び前記第1色度に対して20~30ステップのマクアダム楕円領域外で、白色ポイントに近づく第2色度を有する第2光を発する第2光源を含む複数の光源と、
前記少なくとも前記第1光、及び前記第2光の一方の出力を時間的に変化させる制御部と、を備え、
前記制御部は、前記複数の光源が発する光を合算した合算光の色度を、前記第1色度と、前記第2色度との間で0.03~0.3Hzの変動周波数で連続的に反復して変化させ、
前記複数の光源は、前記合算光を発する
照明装置。
【請求項2】
前記第1色度に対して、前記第2色度は、JIS Z8110-1995で定義される白色の基本色名領域円の外側にある
請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記第2色度は、等エネルギー白色点の色度よりも、マクアダム楕円において少なくとも3ステップだけ前記第1色度に近い
請求項1又は2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記第1色度に対して、前記第2色度は、
楕円式:中心座標(0.333,0.333)、長半径a(0.047)、短半径b(0.019)、長軸のx軸に対する傾きθ(deg)(59)
で定義される白色の基本色名領域円の外側にある
請求項1に記載の照明装置。
【請求項5】
前記第1色度に対して、前記第2色度は、
楕円式:中心座標(0.333,0.333)、長半径a(0.059)、短半径b(0.024)、長軸のx軸に対する傾きθ(deg)(59)
で定義される白色の基本色名領域円の外側にある
請求項1に記載の照明装置。
【請求項6】
前記第1色度に対して、前記第2色度は、
楕円式:中心座標(0.333,0.333)、長半径a(0.070)、短半径b(0.025)、長軸のx軸に対する傾きθ(deg)(59)
で定義される白色の基本色名領域円の外側にある
請求項1に記載の照明装置。
【請求項7】
前記合算光の強度において、前記第1色度における前記強度が前記第2色度における前記強度よりも大きい
請求項1から6のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項8】
時間に対する前記色度の変化割合において、前記第1色度近傍での前記変化割合が前記第2色度近傍での前記変化割合より大きい
請求項1から7のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項9】
時間に対する前記合算光の強度の変化割合は、前記第1色度近傍での前記変化割合が前記第2色度近傍での前記変化割合より大きい
請求項1から8のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項10】
前記第1色度と前記第2色度との間で連続的に反復して変化させる周期が、単調に増加する
請求項1から9のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項11】
前記第1色度を選択できる入力手段を有した
請求項1から10のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項12】
時刻t1で、前記第1色度よりも刺激純度の低い第2色度との間で連続的に反復して変化させる周期が第1周期T1であり、刺激純度の差が第1差D1であり、
時刻t1と異なる時刻t2で、前記第1色度よりも刺激純度の低い第2色度との間で連続的に反復して変化させる周期が第2周期T2であり、刺激純度の差が第2差D2であるとき、
第1周期T1<第2周期T2なら、第1差D1>第2差D2である
請求項1から11のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項13】
前記時刻t1及び前記時刻t2がt1<t2であるとき、
前記第1周期及び前記第2周期は、T1<T2を満たし、
前記第1差及び前記第2差は、D1>D2を満たす
請求項12に記載の照明装置。
【請求項14】
前記時刻t1及び前記時刻t2がt1<t2であるとき、
前記第1周期及び前記第2周期は、T1>T2を満たし、
前記第1差及び前記第2差は、D1<D2を満たす
請求項12に記載の照明装置。
【請求項15】
前記合算光の刺激純度が高いほど、前記合算光の強度は大きい
請求項1から13のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項16】
請求項1に記載の第1照明装置と、
請求項1に記載の第2照明装置と、
を備える照明システムであって、
前記第2照明装置は、前記合算光の色度を連続的に反復して変化させるタイミングに関連付けられた信号を、前記第1照明装置から受け取る受信機を有し、
前記第2照明装置の前記制御部は、前記受け取られた信号に応答して前記合算光の色度を連続的に反復して変化させる
照明システム。
【請求項17】
少なくとも第1光源によって発せられる第1色度の第1光、及び第2光源によって発せられ、前記第1色度に対して20~30ステップのマクアダム楕円領域外で、白色ポイントに近づく第2色度を有する第2光の一方の出力を時間的に変化させる制御信号を発生する制御部と、前記制御信号に応じて前記第1光源及び前記第2光源の少なくとも1つを駆動する駆動部とを備え、
前記制御部は、前記第1光及び前記第2光を含む合算した合算光の色度を、前記第1色度と、前記第2色度との間で0.03~0.3Hzの変動周波数で連続的に反復して変化させ、
前記合算光は、前記第1光源及び前記第2光源を含む複数の光源により発せられる
制御装置。
【請求項18】
少なくとも第1光源によって発せられる第1色度の第1光、及び第2光源によって発せられ、前記第1色度に対して20~30ステップのマクアダム楕円領域外で、白色ポイントに近づく第2色度を有する第2光の一方の出力を時間的に変化させる制御方法であって、
前記第1光及び前記第2光を含む合算した合算光の色度を、第1色度と、前記第2色度との間で0.03~0.3Hzの変動周波数で連続的に反復して変化させるステップを含み、
前記合算光は、前記第1光源及び前記第2光源を含む複数の光源により発せられる
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、照明装置と、照明に用いられる制御装置及び制御方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸リズムに近い周波数で照明光の輝度を変化させることによって、ユーザが呼吸のリズムを整えるのを容易にする方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3978334号明細書
【文献】特許第4125001号明細書
【文献】特許第4142944号明細書
【文献】特許第4237997号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし上述の背景技術では、単色光の明滅又は単色から他の単色への変化が用いられているに過ぎない。従来の技術では無彩色の光が用いられていない。そのためユーザが息を吐く時に無彩色の光からグレーをイメージし、リラックスするということを実現しにくいという課題がある。この課題は本願の発明者らが見出したものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ある実施形態では、照明装置は、少なくとも第1光を発する第1光源、及び前記第1光と異なる色度を有する第2光を発する第2光源を含む複数の光源と、前記少なくとも前記第1光、及び前記第2光の一方の出力を時間的に変化させる制御部と、を備え、前記制御部は、前記複数の光源が発する光を合算した合算光の色度を、第1色度と、前記第1色度よりも刺激純度の低い第2色度との間で連続的に反復して変化させる。
【0006】
ある実施形態では、照明システムは、前記照明装置である第1照明装置と、前記照明装置である第2照明装置と、を備え、前記第2照明装置は、前記合算光の色度を連続的に反復して変化させるタイミングに関連付けられた信号を、前記第1照明装置から受け取る受信機を有し、前記第2照明装置の前記制御部は、前記受け取られた信号に応答して前記合算光の色度を連続的に反復して変化させる。
【0007】
ある実施形態では、制御装置は、少なくとも第1光源によって発せられる第1光、及び第2光源によって発せられる第2光の一方の出力を時間的に変化させる制御信号を発生する制御部と、前記制御信号に応じて前記第1光源及び前記第2光源の少なくとも1つを駆動する駆動部とを備え、前記制御部は、前記第1光及び前記第2光を含む合算した合算光の色度を、第1色度と、前記第1色度よりも刺激純度の低い第2色度との間で連続的に反復して変化させる。
【0008】
ある実施形態では、制御方法は、少なくとも第1光源によって発せられる第1光、及び第2光源によって発せられる第2光の一方の出力を時間的に変化させる制御方法であって、前記第1光及び前記第2光を含む合算した合算光の色度を、第1色度と、前記第1色度よりも刺激純度の低い第2色度との間で連続的に反復して変化させるステップを含む。
【発明の効果】
【0009】
単色光から無彩色光への変化を利用した呼吸リズムを整えるための照明装置、照明システム、制御装置、及び制御方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】照明装置のブロック図である。
図2】第1光と第2光との間で変化する合算光の色度変化を示す図である。
図3】ユーザの補色残像の違和感を低減するのに好ましい色度の変化を示す図である。
図4】ある実施形態における光源の合算光の、第1色度及び第2色度の間での色度変化を示す図である。
図5】ある実施形態における光源の合算光の、第1色度及び第2色度の間での色度変化を示す図である。
図6】ある実施形態における光源の合算光の、第1色度及び第2色度の間での色度変化を示す図である。
図7】光源の合算光の色度と第2色度との色度差変化を示す図である。
図8】制御部の構造を示すブロック図である。
図9】色度変化を光源の出力に与える処理のアルゴリズムを示すフロー図である。
図10】合算光の刺激純度の周期的変化の振幅及び周期を表す図である。
図11】合算光の刺激純度の周期的変化の振幅及び周期を表す図である。
図12】合算光の刺激純度の周期的変化の振幅及び周期を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
概要
図1は、照明装置100のブロック図である。照明装置100は、入力装置110、制御装置120、及び光源130を含む。制御装置120は、制御部122及び駆動部124を含む。
【0012】
照明装置100は、直接照明又は間接照明、及びそれらの組み合わせを実現する。直接照明は、例えば、シーリングライト、ダウンライトである。間接照明は、例えば、コファー照明、コーニス照明、及びコーブ照明、並びにこれらの組み合わせである。照明装置100は、光源130の光の色度の時間的ゆらぎにより、ユーザにリラックス感を与えたり、呼吸の繰り返しのリズムを合わせやすくしたりする。照明装置100は、典型的には屋内のユーザがリラックスしようとしている近傍に配置される。
【0013】
入力装置110は、ユーザが選んだ照明装置100の動作パラメータを制御部122に伝える。そのような動作パラメータは、例えば、照明装置100のオン、オフや、照明装置100の光の色度の時間的変化の周期を表す。入力装置110は、例えば、機械的又は電子的なスイッチである。入力装置110は、照明装置100の筐体上に設けられてもよく、照明装置100とは別個の筐体に設けられてもよい。前者の場合、入力装置110は、制御部122とは筐体内に設けられた配線で結合される。後者の場合、入力装置110は、制御部122とは無線で結合される。無線での結合は、例えば、赤外光又は電磁波による動作パラメータの伝送によって実現される。
【0014】
制御部122は、光源130から放射される光の色度を時間的に変化させる制御信号を発生し、駆動部124に送る。制御部122は、例えば、プロセッサ及びメモリで実現され、後述の制御方法を実現する。
【0015】
駆動部124は、制御部122から制御信号を受け取り、光源130を駆動する。駆動部124は、制御信号に基づいて、光源130から放射される光の色度を時間的に変化させる。駆動部124は、例えば、パルス幅変調(PWM)によって光源130の出力を変化させる。
【0016】
光源130は、例えば、発光ダイオード(LED)である。ある実施形態では、光源130は、複数のグループのLED群を含む。図1の実施形態では、光源130は、第1光源132及び第2光源134を含む。第1光源132が第1光を発し、第2光源134が第2光を発するとする。本実施形態では、第2光は、第1光と異なる色度を有する。
【0017】
制御部122は、少なくとも第1光及び第2光の一方の出力を時間的に変化させることによって、第1光源132が発する第1光及び第2光源134が発する第2光を合算した合算光の色度を、第1色度と、第1色度よりも刺激純度の低い第2色度との間で連続的に反復して変化させる。第1色度は有彩色であり、第2色度は無彩色、又は第1色度よりは無彩色に近い色である。この構成により、照明装置100は、ユーザが有彩色と無彩色との間で色度が変化する光源130に合わせて呼吸を整えることができるという効果を有する。「連続的」とは、ヒトの目に連続的である認識できる程度であればよく、認識できない程度の不連続点を含んでもよい。「反復」とは、例えば色度の変化が複数回、繰り返されることを意味する。
【0018】
第1光源132及び第2光源134は、例えば、R(赤)W(白)、G(緑)W、B(青)W、RG、YB等のうちの一つの組み合わせの第1光及び第2光を発する。例えば、第1光源132は、Rの第1光を発し、第2光源134は、Wの第2光を発する。
【0019】
光源130は、3つのグループのLED群(第1光源、第2光源、及び第3光源)を含んでもよい。この場合、第1光源、第2光源、及び第3光源は、例えばR(主波長λd:610 nm)、G(主波長λd:530 nm)、B(主波長λd:450 nm)をそれぞれ発する。
【0020】
光源130は、4つのグループのLED群(第1光源、第2光源、第3光源、及び第4光源)を含んでもよい。この場合、第1光源、第2光源、第3光源、及び第4光源は、例えばR、G、B、及びWを発する。代替として、第1光源、第2光源、第3光源、及び第4光源は、例えばR(主波長λd:620 nm)、Y(黄)(主波長λd: 570 nm)、G(主波長λd:525 nm)、B(主波長λd:460 nm)をそれぞれ発する。
【0021】
照明装置100は、入力装置110、制御装置120、及び光源130を含んでもよいが、入力装置110を含まなくてもよい。この場合は、入力装置110は、別個の要素として実現される。さらに制御装置120だけを筐体に設け、光源130を外付けにして実現してもよい。
【0022】
図2は、第1光と第2光との間で変化する合算光の色度変化200を示す図である。点201は、等エネルギー白色を表す。領域202は、JIS Z 8110-1995 色の表示方法-光源色の色名にて定義される基本色名「白」の領域を表す。制御部122は、合算光210が例えば第1光の第1色度211と第2光の第2色度212との間を連続的に往復するよう変化させる。すなわち合算光210は、第1色度211から第2色度212へと変化し、再び第1色度211へ戻る。第1色度211から第2色度212への変化において、典型的には色度は連続的に変化する。色度の連続的な変化は、ユーザのリラックス効果を改善するために好ましい。この例では、第1光の第1色度211は青い光であり、第2光の第2色度212は白ではない薄い青い光である。ユーザは、合算光210が第1色度211(有彩色)の近傍で吸気を行い、第2色度212(無彩色)の近傍で呼気を行う。よって、知覚的無彩色(呼気)と、有彩色(吸気)との間で繰り返して変化させることで、違和感なく呼吸リズムを同調させることができる。つまり色変化による呼吸リズムの誘導を実現できる。
【0023】
有彩色の光から無彩色の光への変化を利用してユーザをリラックスさせることは、従来、知られておらず本発明者らが新たに見出した知見である。本明細書では、無彩色とは彩度がゼロである場合には限定されず、有彩色に比べて十分に彩度をユーザに感じさせない色をいう。
【0024】
合算光210は、青系の色には限定されず、任意の適切な色であり得る。例えば合算光220が第1光の第1色度221と第2光の第2色度222との間を連続的に往復するよう変化させられてもよい。この場合、第1色度221はオレンジ色の光であり、第2色度222は白ではない薄いオレンジ色の光である。
【0025】
以下の説明では第1光の第1色度として点211を、第2光の第2色度として図2の点212を例として用いるが、青い系統の色度には限定されず、任意の適切な色度が用いられ得る。
【0026】
第2光212が点201に十分に近い領域に入ると、ユーザは、第1光211の補色残像(無彩色光における補色残像)を感じることがある。これはユーザが呼吸のリズムを光源130に合わせる時の妨げになり得る。本願発明者らは、このような補色残像による違和感を課題として見出した。例えば第1色度212に対して、第2色度212は、JIS Z8110-1995で定義される白色の基本色名領域円202の外側にある。ここでJIS Z8110-1995で定義される白色の基本色名領域円202は、マクアダム楕円25ステップとして定義され、楕円式:中心座標(0.3333,0.3333)、長半径a(0.058675)、短半径b(0.02405)、長軸のx軸に対する傾きθ(deg)(58.984)によって規定される。このように光源130が発する合算光210の色度を変化させれば、ユーザが感じる補色残像の違和感を低減できるという効果がある。
【0027】
他の実施形態では、第2色度212は、等エネルギー白色点201の色度よりも、マクアダム楕円において少なくとも3ステップだけ第1色度211に近い。この方法によっても、第1光211から第2光212への変化が遅い速度の場合は、ユーザの補色残像の違和感を低減できる。
【0028】
ゆらぎ変動
以下に有彩色(赤、緑、青の3色)を起点に,無彩色(等エネルギー白色、約5500K)へとゆらぎ変動させた際の補色を感じ始める色度と、無彩色(白色)を感じ始める色度とを求める。色度は表1の通りであり、注視点の輝度は30cd/m2の一定で、変動周波数は約0.03Hz(33秒周期)、0.1Hz(10秒周期)、0.3Hz(3.3秒周期)の3水準である。刺激純度とは,JIS Z 8113 照明用語-03073で定義され,ここではパーセント表示として100倍した値で表記する.
【0029】
【表1】
【0030】
簡易検討実験は、以下のように行う。
【0031】
1.被験者をゆらぎ変動させた状態に順応(5分程度)させる。
【0032】
2.実験者は被験者に有彩色点を起点にスタートの合図を出す。
【0033】
3.被験者は,無彩色へと向かって変動する途中で(1)補色を感じ始めた時点をボタン押下にて回答する。
【0034】
4.各色に対して,上記2、3を繰り返し、平均値を基に閾値色度を算出する。反復は8回程度行う。
【0035】
表2は実験結果を示す。
【0036】
【表2】
【0037】
以上から、周波数が高くなると補色ポイントが白色点に近づくことが分かる。
【0038】
また刺激純度3水準に対して、同様に補色知覚色度を被験者に回答させた。実験は、被験者2名に対して、光色(3水準):赤(主波長λd:615 nm)、緑(主波長λd:505 nm)、青(主波長λd:465 nm)、純度(3水準):32~99、周波数:0.1 Hz、強度(注視点の輝度):30 cd/m2の条件で行った。表3は、提示有彩色色度を示し、表4は、補色を感じ始めた色度の実験結果を示す。
【0039】
【表3】
【0040】
【表4】
【0041】
以上から、純度が低くなると補色ポイントが白色点に近づくことがわかる。マクアダム楕円で補色知覚色度は、緑の場合は30ステップであり、赤の場合は25ステップであり、青の場合は20ステップの領域である。よって、20~30ステップのマクアダム楕円領域外で、白色ポイントに近づく色度を終点とするのが好ましい。
【0042】
有彩色及び無彩色間での色度変化
図3は、ユーザの補色残像の違和感を低減するのに好ましい色度の変化300を示す図である。表2~表4の検討結果から色によって補色を感じ始める色度には差異があることがわかる。図3において点301は、等エネルギー白色を表す。例えば赤の場合は、第1色度(有彩色)及び第2色度(無彩色)は、範囲310の中で変化させられ得る。緑の場合は、第1色度(有彩色)及び第2色度(無彩色)は、範囲320の中で変化させられ得る。青の場合は、第1色度(有彩色)及び第2色度(無彩色)は、範囲330の中で変化させられ得る。いずれの場合も第2色度があまり点301に近すぎるとユーザに補色残像の違和感を与えることになり得る。すなわち、第2色度は、等エネルギー白色の点301の近傍の、後述する所定の領域には含まれないことが、ユーザに補色残像の違和感を与えにくくするためには好ましい。
【0043】
色度の管理には、色差感覚に最も合致する指標として、マクアダム楕円(MacAdam ellipses)が用いられる(例えばIEC 60082 Annex D Chromaticity co-ordinatesを参照)。ある実施形態においては、第1色度211に対して、第2色度212は、楕円式:中心座標(0.333,0.333)、長半径a(0.047)、短半径b(0.019)、長軸のx軸に対する傾きθ(deg)(59)で定義される白色の基本色名領域円の外側にある。この領域は、マクアダム楕円で20ステップに相当する。これによりユーザが感じる補色残像の違和感を低減できる。
【0044】
さらに好ましくは、第1色度211に対して、第2色度212は、楕円式:中心座標(0.333,0.333)、長半径a(0.059)、短半径b(0.024)、長軸のx軸に対する傾きθ(deg)(59)で定義される白色の基本色名領域円の外側にある。この領域は、マクアダム楕円で25ステップに相当する。これによりユーザが感じる補色残像の違和感をさらに低減できる。
【0045】
最も好ましくは、第1色度211に対して、第2色度212は、楕円式:中心座標(0.333,0.333)、長半径a(0.070)、短半径b(0.025)、長軸のx軸に対する傾きθ(deg)(59)で定義される白色の基本色名領域円の外側にある。この領域は、マクアダム楕円で30ステップに相当する。これにより全ての色について、ユーザが感じる補色残像の違和感をさらに低減できる。
【0046】
図4は、ある実施形態における光源130の合算光の、第1色度及び第2色度の間での色度変化400を示す図である。点401は、等エネルギー白色を表し、領域402は、例えば、上述のマクアダム楕円である。第1光源132は、第1色度410の光を発し、第2光源134は、第2色度420の光を発する。ここで第2光源134の光の強度を固定し(制御せず)、第1光源132の光の強度を変化させる(制御する)。光源130が全体として発する合算光は、第1色度415から第2色度420の範囲内で連続的に変化させることができる。例えば、第1光源132の光の強度が最大のとき、合算光は第1色度415であり、第1光源132の光の強度がゼロのとき、合算光は第2色度420である。このような構成により、2つの光源のうち1つを制御することなく、有彩色と無彩色との間で合算光を変化させることができる。すなわち時間的に変化させる光源は、最低1つあれば、色度座標上に示される第1光の色度と第2光の色度とを結ぶ直線上において、合成光の色度を移動させることができる。
【0047】
図5は、ある実施形態における光源130の合算光の、第1色度及び第2色度の間での色度変化500を示す図である。点501は、等エネルギー白色を表し、領域502は、例えば、上述のマクアダム楕円である。第1光源132は、第1色度510の光を発し、第2光源134は、第2色度520の光を発する。ここで第1光源132の光の強度を固定し(制御せず)、第2光源134の光の強度を変化させる(制御する)。光源130が全体として発する合算光は、第1色度510から第2色度515の範囲内で連続的に変化させることができる。例えば、第2光源134の光の強度がゼロのとき、合算光は第1色度510であり、第2光源134の光の強度が最大のとき、合算光は第2色度515である。このような構成により、2つの光源のうち1つを制御することなく、有彩色と無彩色との間で合算光を変化させることができる。
【0048】
図6は、ある実施形態における光源130の合算光の、第1色度及び第2色度の間での色度変化600を示す図である。図6において光源130は、第1光源~第3光源の3つの光源を有する。点601は、等エネルギー白色を表し、領域602は、例えば、上述のマクアダム楕円である。第1光源は、色度610の光を発し、第2光源は、色度620の光を発し、第3光源は、色度630の光を発する。ここで第1光源~第3光源の光の強度を変化させる(制御する)。光源130が全体として発する合算光は、第1色度615から第2色度616の範囲内で連続的に変化させることができ、第1色度625から第2色度626の範囲内で連続的に変化させることができ、さらに第1色度635から第2色度636に変化させることもできる。このような構成により、3つの光源の発する光の第1色度610、第2色度620、及び第3色度630が成す三角形の領域の中の有彩色と無彩色との間で合算光を変化させることができ気分により第1色度を選択することも可能となる。
【0049】
例えばある実施形態においては、ユーザは、第1色度として、615、625、及び635のうちから1つを選択し、入力装置110に入力する。入力装置110は、ユーザが選択した第1色度(例えば615)を受け取る。この場合、光源130は、選択された第1色度615から第2色度616の範囲内で連続的に変化する合算光を発することができる。これにより照明装置100は、ユーザが選択した色度変化を実現できる。
【0050】
ある実施形態においては、合算光の強度において、第1色度における強度が第2色度における強度よりも大きい。これにより無彩色側である第2色度が暗く感じられ、ユーザのリラックス効果を改善できる。
【0051】
ある実施形態においては、時間に対する色度の変化割合において、第1色度近傍での変化割合が第2色度近傍での変化割合より大きい。ユーザが色度変化に敏感な無彩色側である第2色度近傍での変化を少なくすることによって、ユーザのリラックス効果を改善できる。
【0052】
ある実施形態においては、時間に対する合算光の強度の変化割合は、第1色度近傍での変化割合が第2色度近傍での変化割合より大きい。これによりユーザが光の強度変化に敏感な無彩色側である第2色度近傍での変化を少なくすることによって、ユーザのリラックス効果を改善できる。
【0053】
合算光の「強度」とは、本来的には光源の光束(視感度曲線が施されている)を指す。場合によっては合算光の「強度」は、照明装置の発光面(グローブ、カバー等)、または壁の照射面等の輝度を指すこともある。本開示では、これらを総称して単に強度と呼ぶ。
【0054】
図7は、光源130の合算光の色度と第2色度との色度差変化700を示す図である。色度差変化700は、合算光の色度が第1色度と等しいときに最大値をとり、そのとき色度差は、第1色度と第2色度との差分である。色度差変化700は、合算光の色度が第2色度と等しいときに最小値をとり、そのとき色度差は0である。第1色度から第2色度へ変化し、再び第2色度から第1色度へ戻る第1周期をT1とし、順次、第2周期をT2とし、第3周期をT3とする。このときT1<T2<T3である。すなわち第1色度と第2色度との間で連続的に反復して変化する周期が、単調に増加する。平常時の呼吸の周期は約2秒から6秒である。これに対して深呼吸は、約10秒である。したがって例えばT1=1秒から始め、第n周期Tn(nは正の整数)=10秒まで、色度変化の周期を単調に増加するよう制御することによって、ユーザに対するリラックス効果を改善できる。
【0055】
ハードウェア
図8は、制御部122の構造を示すブロック図である。制御部122は、プロセッサ810、メモリ820、及び入出力部830を含む。プロセッサ810は、例えば図2に示すような色度変化を光源130の出力に与える処理を実行する。メモリ820は、プロセッサ810によって実行される処理に用いられる命令及びパラメータを格納する。入出力部830は、プロセッサ810の出力に基づいて制御を生成し、駆動部124に出力する。入出力部830は、プロセッサ810の中に組み込まれていてもよい。
【0056】
制御部122と駆動部124とが一つの要素(例えば半導体チップ)として実現されてもよい。代替として制御部122と駆動部124とが一つの筐体内に設けられてもよい。
【0057】
ソフトウェア
図9は、本開示による色度変化(例えば色度変化200)を光源130の出力に与える処理のアルゴリズム900を示すフロー図である。910において、プロセッサ810は、入出力部830からデータを受け取る。このデータは、例えば、ユーザが入力装置110に入力した照明装置100の動作モードを示すデータである。920において、プロセッサ810は、メモリ820から色度変化に関するデータを受け取る。930において、プロセッサ810は、受け取られたデータに基づいて駆動部124に制御信号を出力する。必要に応じ、制御が930から910に戻ることによって、アルゴリズム900を繰り返し実行してもよい。
【0058】
本開示における装置、システム、又は方法の主体は、コンピュータ(例えば制御部122)を備えている。このコンピュータがプログラム(例えばアルゴリズム900)を実行することによって、本開示における装置、システム、又は方法の主体の機能が実現される。コンピュータは、プログラムに従って動作するプロセッサを主なハードウェア構成として備える。プロセッサは、プログラムを実行することによって機能を実現することができれば、その種類は問わない。プロセッサは、半導体集積回路(IC)、又はLSI(large scale integration)を含む一つ又は複数の電子回路で構成される。複数の電子回路は、一つのチップに集積されてもよいし、複数のチップに設けられてもよい。複数のチップは一つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に備えられていてもよい。プログラムは、コンピュータが読み取り可能なROM、光ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的記録媒体に記録される。プログラムは、記録媒体に予め格納されていてもよいし、インターネット等を含む広域通信網を介して記録媒体に供給されてもよい。
【0059】
合算光の刺激純度の周期的変化
図10は、合算光の刺激純度の周期的変化の振幅及び周期を表す図である。図10で縦軸は刺激純度を、横軸は時間を表す。期間aにおいて、刺激純度の最大値及び最小値の差(単に「刺激純度の差」ともいう)はDaであり、刺激純度の変化の周期はTaである。期間bにおいて、刺激純度の最大値及び最小値の差はDbであり、刺激純度の変化の周期はTbである。ある実施形態において制御部122は、合算光の刺激純度を例えば図10のように変化させる。
【0060】
ある実施形態において、刺激純度の変化の周期及び差について、Ta<TbならDa>Dbが成り立つ。すなわち、刺激純度の変化の周期がより長い期間においては、刺激純度の差はより小さい。人間の目は、刺激純度の変化の周期が長いと目の色順応がより進むので、周期が短い場合と比較して補色を感じやすい。周期により色変化の幅を制御することで、色変化を与えつつ補色知覚の発生を防ぎ、より効果的な呼吸リズムの補助を実現できる。
【0061】
刺激純度の最小値は、等エネルギー白色(無彩色)であり得る。刺激純度の最大値は、単色光(有彩色)であり得る。周期的変化の波形(パターン)は、図10に示されるサイン波が好ましいが、これには限定されない。周期的変化の波形は、例えば、矩形波や三角波であっても、刺激純度増加方向と減少方向での変化率が同じでなくてもよい。
【0062】
図10での期間aから期間bへの変化のように、合算光の刺激純度の変化は、時間経過に伴い、周期がより長く刺激純度の差がより小さくなる方向への単調な変化であり得る。このような変化により、ユーザの心理状態は、平常時の状態からよりリラックスした状態(睡眠状態を含む)へと誘導され得る。
【0063】
しかし合算光の刺激純度の変化は、これには限定されず、例えば、図10とは逆の期間bから期間aへの変化のように、時間経過に伴い、周期が短く刺激純度の差が大きくなる方向への単調な変化であってもよい。このような変化により、ユーザの心理状態は、リラックスした状態から平常時の状態へと誘導され得る。
【0064】
合算光の刺激純度の変化は、期間aから期間bへ変化し、その後、再び期間bから期間aへと戻り、以後、これを繰り返してもよい。
【0065】
図11は、合算光の刺激純度の周期的変化の振幅及び周期を表す図である。図11で縦軸は刺激純度を、横軸は時間を表す。ある実施形態において制御部122は、合算光の刺激純度を例えば図11のように変化させる。
【0066】
図11の時刻の早いものから順に周期をT1、T2、T3、T4、…とすると、図11において、周期は、T1≦T2≦T3≦T4…を満たし、刺激純度の差は、D1≧D2≧D3≧D4…を満たす。すなわち周期は単調に増加し、刺激純度の差は単調に減少する。ここで「単調に増加する」、及び「単調に減少する」とは、局所的に値が変化しない(例えばT1=T2、D1=D2)場合も含む。図11の合算光の刺激純度の周期的変化によれば、ユーザの心理状態は、平常時の状態からよりリラックスした状態へと誘導され得る。
【0067】
図12は、合算光の刺激純度の周期的変化の振幅及び周期を表す図である。図12で縦軸は刺激純度を、横軸は時間を表す。ある実施形態において制御部122は、合算光の刺激純度を例えば図12のように変化させる。図12において、周期Tiは、ヒトの呼吸にふさわしい範囲の値をとる。例えば、周期Tiは、最小値として約3秒を、最大値として約12秒をとり得る。
【0068】
上述のさまざまな実施形態において、合算光の刺激純度が高い(第1色度に近い)ほど、合算光の強度は大きいように、制御部122は光源130を制御する。合算光の強度が大きいと吸気し易く感じるので、このような制御により、ユーザは、合算光の変化をより自然なものとして感じることができる。
【0069】
ある実施形態においては、2つの照明装置100(第1照明装置及び第2照明装置という)を備える照明システムを実現できる。このとき、第2照明装置は、合算光の色度を連続的に反復して変化させるタイミングに関連付けられた信号を、第1照明装置から受け取る受信機を有する。第2照明装置の制御部122は、受け取られた信号に応答して合算光の色度を連続的に反復して変化させる。このような構成により、複数の照明装置100を同期させて用いることができる。
【0070】
上に説明されてきたものには、本発明のさまざまな例が含まれる。本発明を記載する目的では、要素や手順の考えられるあらゆる組み合わせを記載することは当然のことながら不可能であるが、当業者なら本発明の多くのさらなる組み合わせおよび順列が可能であることがわかるだろう。したがって本発明は、特許請求の範囲の精神および範囲に入るそのような改変、変更および変形例を全て含むよう意図される。
【符号の説明】
【0071】
100 照明装置
120 制御装置
122 制御部
124 駆動部
130 光源
132 第1光源
134 第2光源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12