(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】混練機
(51)【国際特許分類】
B29B 7/48 20060101AFI20240119BHJP
B29B 7/66 20060101ALI20240119BHJP
B29B 7/80 20060101ALI20240119BHJP
【FI】
B29B7/48
B29B7/66
B29B7/80
(21)【出願番号】P 2020002415
(22)【出願日】2020-01-09
【審査請求日】2022-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 陵佑
(72)【発明者】
【氏名】棚橋 靖詔
(72)【発明者】
【氏名】榊原 城二
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 才己
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-061022(JP,U)
【文献】特開2002-187192(JP,A)
【文献】特開2005-007658(JP,A)
【文献】特開2013-173297(JP,A)
【文献】特開平06-126809(JP,A)
【文献】特開2018-039216(JP,A)
【文献】特開平04-363213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 7/30
B29C 48/395
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混練される材料が入れられるバレルと、
前記バレルに入れた前記材料を送るスクリューと、
前記バレルに入れた前記材料を混練するパドルと、
前記バレルに入れられた前記材料に生じる内部応力を調整する調整機構と、
を備え、
前記バレルは、前記材料が入れられる供給口と、混練後の前記材料を排出する排出口と、を有し、
前記調整機構は、リバース部を有し、
前記リバース部は、前記バレルに入れた前記材料を前記排出口から前記供給口に向かう方向に押圧するように構成され、
前記スクリューは、フォワード部を有し、
前記フォワード部は、前記バレルに入れた前記材料を前記供給口から前記排出口に向かう方向に押圧するように構成され、
前記調整機構は、前記リバース部を前記フォワード部に対して、独立して駆動させる駆動部を備え、
前記調整機構は、前記材料の混練開始から混練終了までの間において、前記内部応力を調整するように構成され、前記供給口よりも前記排出口に近い位置に配置されている、
混練機。
【請求項2】
混練される材料が入れられるバレルと、
前記バレルに入れた前記材料を送るスクリューと、
前記バレルに入れた前記材料を混練するパドルと、
前記バレルに入れられた前記材料に生じる内部応力を調整する調整機構と、
を備え、
前記バレルは、前記材料が入れられる供給口と、混練後の前記材料を排出する排出口と、を有し、
前記調整機構は、
前記スクリューの軸部にリバース部を有し、
前記リバース部は、前記バレルに入れた前記材料を前記排出口から前記供給口に向かう方向に押圧するように構成され、
前記調整機構は
、前記スクリューの軸方向に沿って、前記スクリュー、前記パドル及び前記リバース部を前記バレルに対して移動させて、前記リバース部と前記排出口との相対位置を調整することにより、
前記材料の混練開始から混練終了までの間において、前記内部応力を調整するように構成され
、前記供給口よりも前記排出口に近い位置に配置されている、
混練機。
【請求項3】
前記調整機構は、前記排出口が、前記スクリューの軸方向において、前記リバース部に対する位置を変える構造を更に備える、
請求項
1又は2に記載の混練機。
【請求項4】
前記調整機構は、前記排出口を開閉するシャッターを更に備える、
請求項
1~3のいずれか1項に記載の混練機。
【請求項5】
前記スクリューを2機備える、
請求項
1~4のいずれか1項に記載の混練機。
【請求項6】
前記バレルは、前記混練開始時には粉状の前記材料が入れられ、前記混練終了時には粉状の前記材料が粘度を有する溶融物にまで混練されるように構成されている、
請求項
1~5のいずれか1項に記載の混練機。
【請求項7】
前記バレルは、熱硬化性樹脂を含む
前記材料が入れられるように構成されている、
請求項
1~6のいずれか1項に記載の混練機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に混練機に関し、より詳細には、バレルと、スクリューと、パドルと、調整機構とを備える混練機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、多軸混練機が記載されている。この多軸混練機は、2本のスクリュを備え、2本のスクリュは第1の回転軸の周りを回転可能に形成されている。また多軸混練機は、一対のゲート棒を有し、一対のゲート棒は2本のスクリュを挟んで互いに対向して設けられ、第2の回転軸の周りを回転可能に形成されている。一対のゲート棒の各々は2つの凹部を有し、互いに対向する凹部によって2本のスクリュがそれぞれ貫通する空間部が形成されている。一対のゲート棒の各々は、スクリュとの間で形成される流路の面積が最小となる最小開度位置に回転したときにスクリュに面接触する第1の接触面と、シリンダの溝に嵌合する大径部と、2つの第2の回転軸の軸間距離の半分に等しくかつ大径部より小さい曲率半径を有する小径部と、を有している。一対のゲート棒の小径部同士が互いに接している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような混練機において、混練性能を向上させるために、混練機の途中にゲートを用いて流路を調整し、混練度(充填率)を変化させる事で安定した混練を実現しようとしている。しかしながら、混練される材料に熱硬化性樹脂が含まれている場合には、ゲートに付着した材料が熱により硬化して剥がれ、製品(成果物)に混ざってしまうことにより、品質不良を発生させてしまうことがある。
【0005】
本開示は、品質不良が生じにくい混練機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る混練機は、バレルと、スクリューと、パドルと、調整機構とを備える。前記バレルは、混練される材料が入れられる。前記スクリューは、前記バレルに入れた前記材料を送る。前記パドルは、前記バレルに入れた材料を混練する。前記調整機構は、前記バレルに入れられた前記材料に生じる内部応力を調整する。前記バレルは、前記材料が入れられる供給口と、混練後の前記材料を排出する排出口と、を有する。前記調整機構は、前記材料の混練開始から混練終了までの間において、前記内部応力を調整するように構成される。また前記調整機構は、前記供給口よりも前記排出口に近い位置に配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、品質不良が生じにくい、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1Aは、本実施形態に係る混練機の一実施形態を示す横断面図である。
図1Bは、本実施形態に係る混練機の一実施形態を示す縦断面図である。
【
図2】
図2Aは、本実施形態に係る混練機の一実施形態を示し、スクリューの一部の斜視図である。
図2Bは、本実施形態に係る混練機の一実施形態を示し、スクリューを構成するエレメントを示す正面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る混練機の一実施形態を示し、パドルの一部の斜視図である。
【
図4】
図4A~Dは、本実施形態に係る混練機の一実施形態を示し、パドルのパーツを示す正面図である。
【
図5】
図5A~Cは、本実施形態に係る混練機の実施形態1を示し、動作を説明する断面図である。
【
図6】
図6Aは、本実施形態に係る混練機の実施形態2を示す断面図である。
図6Bは、本実施形態に係る混練機の実施形態2を示し、一部の概略図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係る混練機の実施形態3を示す断面図である。
【
図8】
図8は、本実施形態に係る混練機の実施形態4を示す断面図である。
【
図9】
図9A~Cは、本実施形態に係る混練機の実験例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態1)
(1)概要
本実施形態に係る混練機1は、バレル2と、スクリュー3と、調整機構4とを備える(
図1A及び
図1B参照)。バレル2は、混練される材料Pが入れられる。スクリュー3は、バレル2に入れた材料Pを送る。パドル5は、バレル2に入れた材料Pを混練する。調整機構4は、バレル2に入れられた材料Pに生じる内部応力を調整する。バレル2は、材料Pが入れられる供給口21と、混練後の前記材料を排出する排出口22と、を有する。調整機構4は、材料Pの混練開始から混練終了までの間において、内部応力を調整するように構成される。また調整機構4は、供給口21よりも排出口22に近い位置に配置されている。
【0010】
このような構成により、本実施形態に係る混練機1は、材料Pの混練開始から混練終了までの間で、材料Pがパドル5で混練されることで生じる内部応力を、調整機構4で変化させながら材料Pを混練することができる。したがって、混練時に材料Pの温度を上昇させなくても、調整機構4で材料Pの内部応力を大きくすることにより、混練性能を向上させることができる。よって、材料Pの温度上昇による硬化が進みにくくなり、製品の品質不良が生じにくくなる。
【0011】
特許文献1のように、混練機の途中にゲートを用いて流路を調整し、混練度(充填率)を変化させる事で安定した混練を実現しようとしている。材料の混練の可否は、材料に対する十分に高い充填率が必要であり、上記のようなゲートを用いて流路を絞る方式は一定の効果がある。しかしながら、混練される材料に熱硬化性樹脂が含まれている場合には、ゲートによって混練機の内部に稼働式の凹凸が出来るため、そこに付着した材料が熱により硬化した後、剥がれ、製品(成果物)に混ざってしまうことにより、品質不良を発生させてしまうことがある。またバレルの温度を上げることで、材料を混練することもできるが、材料に熱硬化性樹脂が含まれている場合には、バレルの温度を上げると反応が進んでしまうため、なるべく低温度で混練したいという要望がある。
【0012】
本実施形態に係る混練機1では、調整機構4により、バレル2に入れられた材料Pの密度を増加させて(充填率を大きくして)、材料Pに生じる内部応力を増加させることによって、低い温度でも材料Pを混練することができる。また材料Pの組成や形態などによっては、混練に必要な内部応力(材料密度)の設定で一律に混練した場合、バレル2から排出(吐出)されずに、バレル2内で固まって、製品が得にくい場合がある。そこで、混練開始と混練終了との間で材料密度をコントロールすることが好ましい。本実施形態では、調整機構4は、材料Pの混練開始から混練終了までの間において、内部応力を調整するように構成されているため、混練中における材料密度(内部応力)のコントロールが可能となる。すなわち、例えば、混練開始時は混練機1のモータートルクが上昇し(内部応力が上昇し)、混練が終了すると混練機1のモータートルクが下がる(内部応力が下降する)、というようなトルク管理が可能である。
【0013】
また混練機1がパドル5を備える場合、継続的な使用により、パドルの摩耗量が増加し、従来では混練が難しくなる場合があったが、本実施形態では、調整機構4により材料密度(充填率)を上げることにより、摩耗量が大きいパドル5でも混練が可能となる。
【0014】
また、材料Pの内部応力を大きくする調整機構4が供給口21よりも排出口22に近い位置に配置されているため、バレル2の内部で材料Pが反応して硬化した場合であっても、調整機構4で排出口22から供給口21に向かって、硬化した材料Pを押圧して排出口22から排出されにくくすることができ、硬化した材料Pが製品に混入しにくくなる。
【0015】
(2)詳細
(2.1)構成
本実施形態に係る混練機1は、バレル2と、スクリュー3と、パドル5と、調整機構4とを備える(
図1A及び
図1B参照)。本実施形態に係る混練機1は、スクリュー3及びバレル5を2機備える。すなわち、混練機1は2軸混練機である。混練機1はスクリュー3及びパドル5を1機備える単軸混練機であってもよいし、スクリュー3及びパドル5を3機以上備える多軸混練機であってもよい。
【0016】
バレル2は、混練される材料Pが入れられる容器であって、バレル2は、混練される材料Pが入れられる空間部23を内部に有している。バレル2は、スクリュー3の軸方向Xに沿って延びている。バレル2は、供給口21と排出口22とを有している。供給口21は、バレル2の空間部23に材料Pを入れるための開口である。排出口22は混練後の材料Pを空間部23から排出する開口である。
【0017】
供給口21は、軸方向Xにおいて、バレル2の一端部の上面に設けられている。供給口21は、空間部23に連通するように、バレル2の上部を貫通している。バレル2は、供給口21の周囲にホッパー24を有している。
【0018】
排出口22は、軸方向Xにおいて、バレル2の他端部(供給口21がある方の端部と反対側の端部)の下面に設けられている。排出口22は、空間部23に連通するように、バレル2の底部を貫通している。
【0019】
スクリュー3は軸方向Xに沿って延びている。2機のスクリュー3はバレル2の空間部23に配置されている。2機のスクリュー3は軸方向Xと交差する方向に並んでいる。2機のスクリュー3は軸方向Xと直交する方向に並んでいることが好ましい。スクリュー3は、一方の端部がバレル2の外部に突出している。バレル2の外部に突出しているスクリュー3の端部は、排出口22よりも供給口21に近い方の端部である。バレル2の外部に突出しているスクリュー3の端部は、接続部33として駆動部40に接続されている。駆動部40はモータなどで構成され、軸方向Xを中心としてスクリュー3を回転させる。2機のスクリュー3は同じ方向に回転してもよいし、逆回転してもよい。また2機のスクリュー3は同じスピードで回転してもよし、異なるスピードで回転してもよい。
【0020】
スクリュー3は、フォワード部31を有している。さらにスクリュー3は、パドル5を有している。
【0021】
フォワード部31は、バレル2に入れた材料Pを供給口21から排出口22に向かう方向に送るように構成される。すなわち、フォワード部31は螺旋状の羽根部311を有し、材料Pを混練しながら供給口21から排出口22に向かう方向に押圧して送ることができる。
【0022】
リバース部32は、バレル2に入れた材料Pを排出口22から供給口21に向かう方向に送るように構成される。すなわち、リバース部32は螺旋状の羽根部311を有し、材料Pを混練しながら排出口22から供給口21に向かう方向に押圧して送ることができる。本実施形態に係る混練機1は、調整機構4としてリバース部32を備えている。
【0023】
パドル5は、混練機1の材料Pの混練性能を向上させるために設けられている。したがって、パドル5はフォワード部31及びリバース部32よりも材料Pに対するせん断力が大きく混練性能が高い。
【0024】
フォワード部31及びリバース部32は、エレメント35を備えている。フォワード部31及びリバース部32は、複数のエレメント35を軸部34に並べて取り付けて形成されている(
図2A参照)。軸部34は軸方向Xに沿って延びている。軸部34の後端は上記接続部33として形成されている。エレメント35は円筒状に形成されており、内側の空間に軸部34が差し込まれている(
図2A参照)。
【0025】
リバース部32は、エレメント36を備えている。リバース部32は、複数のエレメント36を軸部34に並べて取り付けて形成されている。エレメント36はエレメント35と同様に円筒状に形成されており、内側の空間に軸部34が差し込まれている。
【0026】
エレメント35は、外周面に羽根部311の一部が形成されている(
図2B参照)。フォワード部31を構成するエレメント35の羽根部311と、リバース部32を構成するエレメント36の羽根部311とは、螺旋の回転の向きが逆向きである。したがって、フォワード部31のエレメント35とリバース部32のエレメント36とが同じ方向に回転すると、フォワード部31の材料Pを送る方向と、リバース部32の材料Pを送る方向とが逆になる。
【0027】
エレメント35としては、軸方向Xにおける長さが異なる複数種を用いることができる(
図2B参照)。これにより、フォワード部31及びリバース部32のリードを調整することができる。ここで、リードとは、スクリュー3が1回転することにより送れる材料Pの量を意味する。エレメント35は軸方向Xにおける長さが長いほど、リードが大きくなる。したがって、スクリュー3は、軸方向Xに長いエレメント351を備える部分が、軸方向Xに短いエレメント352を備える部分に比べて、単位時間あたりの材料Pの送る量が多くなる。
【0028】
パドル5は、パーツ51を備えている。パドル5は、複数のパーツ51を軸部34に取り付けて形成されている(
図3参照)。パーツ51は、正面視において(軸方向Xから見て)、略正三角形状の外周部を有し、中央部には貫通孔52が設けられている(
図4A~D参照)。またパーツ51には、貫通孔52に連通する切欠部53が設けられている。切欠部53はパーツ51毎で位置が異なる。すなわち、例えば、
図4Aのパーツ51と
図4Bのパーツ51とを、外周を揃えて軸方向Xに重ね合わせた場合、各パーツ51の切欠部53は重ならず、互いに約30°ずれて位置する。同様に、
図4Bのパーツ51と
図4Cのパーツ51、
図4Cのパーツ51と
図4Dのパーツ51、及び
図4Dのパーツ51と
図4Aのパーツ51は、切欠部53は互いに約30°ずれている。
【0029】
パーツ51を軸部34に取り付ける場合、軸部34に表面に設けた突条部341に切欠部53を挿入する。突条部341は軸方向Xに沿って延びるように形成されている。したがって、切欠部53の位置が異なる複数のパーツ51を軸部34に取り付けると、複数のパーツ51の切欠部53の位置が突条部341により揃った状態となる。よって、複数のパーツ51は角度が異なった状態で軸部34に取り付けられる(
図3参照)。
【0030】
軸部34には、フォワード部31と、リバース部32と、パドル5とが軸方向Xに沿って並んで取り付けられている。フォワード部31は、第1のフォワード部31aと、第2のフォワード部31bと、第3のフォワード部31cを有している。第1のフォワード部31aは、第2のフォワード部31b及び第3のフォワード部31cで使用されているエレメント352よりも長いエレメント351を有している。第2のフォワード部31b及び第3のフォワード部31cのエレメント352は、第1のフォワード部31aで使用されているエレメント351よりも短い。
【0031】
第1のフォワード部31aは、第2のフォワード部31bよりもスクリュー3の後端側に位置する。第1のフォワード部31aは、第2のフォワード部31b、第3のフォワード部31c、パドル5及びリバース部32の中で、軸方向Xに沿った寸法が最も長い。第1のフォワード部31aは、軸方向Xに沿って延びるように形成されており、供給口21の下方の位置からバレル2の軸方向Xの略中央部の位置にまで連続して形成されている。第1のフォワード部31aの後方には接続部33が形成されている。
【0032】
第2のフォワード部31bは、軸方向Xにおいて、第1のフォワード部31aよりも前方に位置し、パドル5よりも後方に位置する。第2のフォワード部31bは、軸方向Xに沿って延びるように形成されている。
【0033】
パドル5は、軸方向Xにおいて、第2のフォワード部31bよりも前方に位置し、第3のフォワード部31cよりも後方に位置する。第3のフォワード部3cは、軸方向Xに沿って延びるように形成されている。
【0034】
第3のフォワード部31cは、軸方向Xにおいて、パドル5よりも前方に位置し、リバース部32よりも後方に位置する。第3のフォワード部31cは、軸方向Xに沿って延びるように形成されている。
【0035】
リバース部32は、軸方向Xにおいて、第3のフォワード部31cよりも前方に位置し、スクリュー3の前端に位置している。リバース部32は、軸方向Xに沿って延びるように形成されている。
【0036】
本実施形態に係る混練機1において、調整機構4は、材料Pの混練開始から混練終了までの間において、材料Pに生じる内部応力を調整するように構成されている。具体的には、調整機構4は、材料Pの混練開始から所定時間は材料Pに生じる内部応力を大きくし、材料Pの混練開始から所定時間経過後は材料Pに生じる内部応力を小さくする。ここで、「大きくする」とは、スクリュー3の回転で材料Pに生じる内部応力から更に内部応力を上昇させることを意味する。また「小さくする」とは、調整機構4で内部応力が大きくなっている材料Pの内部応力を、スクリュー3の回転で材料Pに生じる内部応力へと降下させることを意味する。
【0037】
本実施形態に係る混練機1において、調整機構4は、リバース部32と排出口22との相対位置を調整することにより、材料Pの内部応力を調整するように構成されている。具体的には、本実施形態に係る混練機1は、スクリュー3及びパドル5を軸方向Xに沿って移動させるように構成している。これにより、スクリュー3及びパドル5がバレル2に対して軸方向Xに移動することになり、この結果、リバース部32と排出口22との相対位置が調整される。なお、本実施形態に係る混練機1は、スクリュー3に対してバレル2を軸方向Xに沿って移動させるようにして形成してもよい。
【0038】
(2.2)動作
本実施形態に係る混練機1は、材料Pを混練する。材料Pは、例えば、樹脂を含んでいる。本実施形態に係る混練機1において、材料Pは、熱硬化性樹脂を含むことが好ましい。これにより、不良に硬化した材料Pが少ない製品が得やすくなる。材料Pは、例えば、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂などの熱硬化性樹脂を1種又は複数種含んでいることが好ましい。
【0039】
本実施形態に係る混練機1において、材料Pは、混練開始時には粉状であり、混練終了時には粘土状であることが好ましい。すなわち、材料Pは、混練機1による混練で粉状から粘土状に性状が変化する。これにより、搬送しやすい粉状の材料Pから成形しやすい粘土状の材料Pが得られる。粉体の材料Pの粒の大きさや形状は特に限定されない。粉体の材料Pはバレル2の空間部23に供給口21から入れることができ、パドル5で混練することができれば、大きさや形状は問わない。また混練後の粘土状の材料Pは、粉体のような粒がほとんど見られず、粉体よりも粘度を有する溶融物であることが好ましい。
【0040】
本実施形態に係る混練機1は、以下のようにして材料Pを混練する。
【0041】
まず、
図5Aのように、初期状態の混練機1では、リバース部32の一部が排出口22の上方に位置している。好ましくは、リバース部32と第3のフォワード部31cとの境界部分37が排出口22の上方に位置している。より好ましくは、軸方向Xにおける排出口22の略中央部の上方に境界部分37が位置する。
【0042】
次に、バレル2に混練される材料Pを投入する。混練される材料Pは粉状であり、供給口21から空間部23に入れられる。そして、駆動部40によりスクリュー3及びパドル5を回転させて、第1のフォワード部31a及び第2のフォワード部31bで材料Pをパドル5の方に送るとともに、パドル5で材料Pの混練を開始する。ここで、調整機構4により、材料Pに生じる内部応力が大きくなるように調整される。これにより、材料Pの温度を上昇させなくても、混練機1の混練性能を向上させることができ、材料Pの温度上昇による硬化が進みにくくなり、製品の品質不良が生じにくくなる。
【0043】
調整機構4により、材料Pに生じる内部応力が大きくなるように調整するにあたっては、
図5Bに示すように、軸方向Xに沿って、リバース部32が供給口21に近づく方向に、スクリュー3、パドル5及び駆動部40を移動させる。これにより、排出口22の全体の上方にリバース部32が位置することになる。よって、パドル5で混練された材料Pが排出口22に近づいても、リバース部32で供給口21の方に向かって押し返されることになる。したがって、空間部23での材料Pの密度が高くなって、材料Pに生じる内部応力が大きくなる。すなわち、材料Pは、第1のフォワード部31a及び第2のフォワード部31bで押圧される力と、リバース部32で押圧される力とで挟まれることで、内部応力が大きくなる。
【0044】
次に、材料Pが粘土状になるまで混練すると、
図5Cに示すように、リバース部32が供給口21から遠ざかる方向に、軸方向Xに沿って、スクリュー3、パドル5及び駆動部40を移動させる。これにより、初期状態と同じ状態となり、排出口22の上方にリバース部32の一部と第3のフォワード部31cの一部とが位置することになる。そして、混練された材料Pがスクリュー3の回転によりフォワード部31で押されて排出口22から排出される。
【0045】
上記のようにして得られた製品(混練された材料P)は、不良に硬化した材料Pの混入がほとんどなく、品質不良が生じにくい。
【0046】
(3)変形例
実施形態1は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態1は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0047】
材料Pは、熱硬化性樹脂を含んでいても含んでいなくてもよい。例えば、材料Pは熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。
【0048】
材料Pを混練している間に、材料Pを加熱して温度を上昇させてもよいし、加熱しないで温度を上昇させないようにしてもよい。材料Pを加熱する場合であっても、それほど高い温度にまでする必要はない。
【0049】
(実施形態2)
本実施形態に係る混練機1は、調整機構4の構成が実施形態1に係る混練機1と相違する。
【0050】
以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
【0051】
実施形態2で説明した構成は、実施形態1で説明した構成(変形例を含む)と適宜組み合わせて適用可能である。
【0052】
本実施形態に係る混練機1において、調整機構4は、リバース部32をフォワード部31に対して、独立して駆動させる駆動部42を備える(
図6A参照)。すなわち、スクリー3の第1のフォワード部31aと第2のフォワード部31bと第3のフォワード部31cは、一方の駆動部41で回転される。駆動部41は軸部34の後端に接続される。駆動部41はもう一方の駆動部42よりも供給口21に近い位置に配置されている。駆動部41は、もう一方の駆動部42とは独立してフォワード部31を回転する。パドル5も駆動部41で回転される。
【0053】
リバース部32は、もう一方の駆動部42で回転駆動される。駆動部42は軸部34の前端に接続される。駆動部42はもう一方の駆動部41よりも排出口22に近い位置に配置されている。駆動部42は、もう一方の駆動部41とは独立してリバース部32を回転する。
【0054】
スクリュー3は、フォワード部31とリバース部32とが、各々、独立して回転可能に形成されている。例えば、フォワード部31とリバース部32とは、互いに、空回りするように形成されている。具体的には、
図6Bに示すように、リバース部32の後端(供給口21側の端部)には挿入軸322が形成されている。また第3のフォワード部31cには、前端(排出口22側の端部)に開口する穴部312が形成されている。挿入軸322及び穴部312は、各々、軸方向Xに沿って延びて形成されている。そして、挿入軸322を穴部312に差し込むことにより、フォワード部31とリバース部32とが、接続される。
【0055】
本実施形態において、初期状態の混練機1では、リバース部32の一部が排出口22の上方に位置している。好ましくは、リバース部32と第3のフォワード部31cとの境界部分37が排出口22の上方に位置している。より好ましくは、軸方向Xにおける排出口22の略中央部の上方に境界部分37が位置する。
【0056】
次に、バレル2に混練される材料Pを投入する。混練される材料Pは粉状であり、供給口21から空間部23に入れられる。そして、駆動部41によりスクリュー3及びパドル5を回転させて、第1のフォワード部31a及び第2のフォワード部31bで材料Pをパドル5の方に送るとともに、パドル5で材料Pの混練を開始する。ここで、調整機構4により、材料Pに生じる内部応力が大きくなるように調整される。これにより、材料Pの温度を上昇させなくても、混練機1の混練性能を向上させることができ、材料Pの温度上昇による硬化が進みにくくなり、製品の品質不良が生じにくくなる。
【0057】
調整機構4により、材料Pに生じる内部応力が大きくなるように調整するにあたっては、リバース部32がフォワード部31よりも大きな出力で回転するように駆動部41及び42を駆動させる。これにより、リバース部32で材料Pが供給口21の方に押し戻されて排出口22の方に搬送されにくくなる。すなわち、パドル5で混練された材料Pが排出口22に近づいても、リバース部32で供給口21の方に向かって押し返されることになる。したがって、空間部23での材料Pの密度が高くなって、材料Pに生じる内部応力が大きくなる。すなわち、材料Pは、第1のフォワード部31a及び第2のフォワード部31bで押圧される力と、リバース部32で押圧される力とで挟まれることで、内部応力が大きくなる。
【0058】
次に、材料Pが粘土状になるまで混練すると、リバース部32がフォワード部31よりも小さな出力で回転するように駆動部41及び42を駆動させる。これにより、フォワード部31で材料Pが排出口22の方に押されて排出口22の方に搬送されやすくなる。そして、混練された材料Pがスクリュー3の回転によりフォワード部31で押されて排出口22から排出される。
【0059】
上記のようにして得られた製品(混練された材料P)は、不良に硬化した材料Pの混入がほとんどなく、品質不良が生じにくい。また、フォワード部31とリバース部32の各々の出力を独立して制御して調整しやすい。
【0060】
(実施形態3)
本実施形態に係る混練機1は、調整機構4の構成が実施形態1又は2に係る混練機1と相違する。
【0061】
以下、実施形態1又は2と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
【0062】
実施形態3で説明した構成は、実施形態1または2で説明した構成(変形例を含む)と適宜組み合わせて適用可能である。
【0063】
本実施形態に係る混練機1において、調整機構4は、排出口22が、スクリュー3の軸方向Xにおいて、リバース部32に対する位置を変える構造を更に備える。
【0064】
本実施形態に係るバレル2は、
図7に示すように、バレル本体201と、排出部材202とを備えている。バレル本体201は実施形態1及び2のバレル2とほぼ同様の構造を有するが、実施形態1及び2の排出口22の代わりに、排出口22のよりも軸方向Xの寸法が大きな調整孔203を備えている。調整孔203はバレル本体201の底面を貫通して形成されている。排出部材202は板状に形成され、スクリュー3とバレル本体201の底面との間に配置されている。排出部材202には厚み方向(上下方向)に貫通する排出口22が形成されている。軸方向Xにおいて、排出口22の寸法は調整孔203の寸法よりも小さい。排出部材202は、軸方向Xに沿って、移動可能に形成されているが、好ましくは、排出口22と調整孔203とが上下に重なる範囲内で、排出部材202は、軸方向Xに沿って、移動可能に形成されている。
【0065】
本実施形態において、初期状態の混練機1では、リバース部32の一部が排出口22の上方に位置している。好ましくは、リバース部32と第3のフォワード部31cとの境界部分37が排出口22の上方に位置している。より好ましくは、軸方向Xにおける排出口22の略中央部の上方に境界部分37が位置する。
【0066】
次に、バレル2に混練される材料Pを投入する。混練される材料Pは粉状であり、供給口21から空間部23に入れられる。そして、駆動部40によりスクリュー3及びパドル5を回転させて、第1のフォワード部31a及び第2のフォワード部31bで材料Pをパドル5の方に送るとともに、パドル5で材料Pの混練を開始する。ここで、調整機構4により、材料Pに生じる内部応力が大きくなるように調整される。これにより、材料Pの温度を上昇させなくても、混練機1の混練性能を向上させることができ、材料Pの温度上昇による硬化が進みにくくなり、製品の品質不良が生じにくくなる。
【0067】
調整機構4により、材料Pに生じる内部応力が大きくなるように調整するにあたっては、排出口22の全体の上方にリバース部32が位置するように、排出部材202を軸方向Xに沿って移動させる。すなわち、排出部材202は、排出口22が供給口21から遠ざかるように、軸方向Xに沿って移動する。言い換えると、排出部材202は、排出口22がフォワード部31から遠ざかるように、軸方向Xに沿って移動する。これにより、リバース部32で材料Pが供給口21の方に押し戻されて排出口22の方に搬送されにくくなる。すなわち、パドル5で混練された材料Pが排出口22に近づいても、リバース部32で供給口21の方に向かって押し返されることになる。したがって、空間部23での材料Pの密度が高くなって、材料Pに生じる内部応力が大きくなる。すなわち、材料Pは、第1のフォワード部31a及び第2のフォワード部31bで押圧される力と、リバース部32で押圧される力とで挟まれることで、内部応力が大きくなる。
【0068】
次に、材料Pが粘土状になるまで混練すると、排出口22の上方に境界部分37が位置するように、排出部材202を軸方向Xに沿って移動させる。すなわち、排出部材202は、排出口22が供給口21から近づくように、軸方向Xに沿って移動する。言い換えると、排出部材202は、排出口22がフォワード部31から近づくように、軸方向Xに沿って移動する。これにより、フォワード部31で材料Pが排出口22の方に押されて排出口22の方に搬送されやすくなる。そして、混練された材料Pがスクリュー3の回転によりフォワード部31で押されて排出口22から排出される。
【0069】
上記のようにして得られた製品(混練された材料P)は、不良に硬化した材料Pの混入がほとんどなく、品質不良が生じにくい。
【0070】
(実施形態4)
本実施形態に係る混練機1は、調整機構4の構成が実施形態1~3に係る混練機1と相違する。
【0071】
以下、実施形態1~3と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
【0072】
実施形態4で説明した構成は、実施形態1~3で説明した構成(変形例を含む)と適宜組み合わせて適用可能である。
【0073】
本実施形態に係る混練機1において、調整機構4は、排出口22を開閉するシャッター45を更に備える。バレル2は、実施形態1及び2と同様に形成されている。バレル2にはシャッター45が設けられている。シャッター45は排出口22の下方に配置されている。シャッター45は、軸方向Xに沿って、移動可能に形成されている。シャッター45が移動することにより、排出口22は開けられた状態と閉じられた状態とに変化する。
【0074】
本実施形態において、初期状態の混練機1では、リバース部32の一部が排出口22の上方に位置している。好ましくは、リバース部32と第3のフォワード部31cとの境界部分37が排出口22の上方に位置している。より好ましくは、軸方向Xにおける排出口22の略中央部の上方に境界部分37が位置する。
【0075】
次に、バレル2に混練される材料Pを投入する。混練される材料Pは粉状であり、供給口21から空間部23に入れられる。そして、駆動部40によりスクリュー3及びパドル5を回転させて、第1のフォワード部31a及び第2のフォワード部31bで材料Pをパドル5の方に送るとともに、パドル5で材料Pの混練を開始する。ここで、調整機構4により、材料Pに生じる内部応力が大きくなるように調整される。これにより、材料Pの温度を上昇させなくても、混練機1の混練性能を向上させることができ、材料Pの温度上昇による硬化が進みにくくなり、製品の品質不良が生じにくくなる。
【0076】
調整機構4により、材料Pに生じる内部応力が大きくなるように調整するにあたっては、排出口22の全体の下方にシャッター45が位置するように移動させる。これにより、シャッター45で排出口22が閉じられて、排出口22から材料Pが排出されにくくなり、リバース部32で材料Pが供給口21の方に押し戻されやすくなる。したがって、空間部23での材料Pの密度が高くなって、材料Pに生じる内部応力が大きくなる。すなわち、材料Pは、第1のフォワード部31a及び第2のフォワード部31bで押圧される力と、リバース部32で押圧される力とで挟まれることで、内部応力が大きくなる。
【0077】
次に、材料Pが粘土状になるまで混練すると、排出口22の下方から外れるように、シャッター45を軸方向Xに沿って移動させる。すなわち、排出口22が開けられるように、シャッター45が軸方向Xに沿って移動する。これにより、フォワード部31で材料Pが排出口22の方に押されて排出口22の方に搬送されやすくなる。そして、混練された材料Pがスクリュー3の回転によりフォワード部31で押されて排出口22から排出される。
【0078】
上記のようにして得られた製品(混練された材料P)は、不良に硬化した材料Pの混入がほとんどなく、品質不良が生じにくい。
【0079】
(実験例)
図9A、
図9B及び
図9Cに各々示す混練機1により、熱硬化性樹脂を含む材料Pの混練実験を行った。
図9Aは、実施形態1と同様の混練機1である。この混練機1を用いて調整機構4を作動させずに材料Pの混練を行った。すなわち、スクリュー3は軸方向Xに沿って移動させずに、境界部分37が排出口22の上方に位置した状態で、材料Pの混練をパドル5で行った。またバレル2を軸方向Xに沿って4等分した部分に区分し、混練に必要な各区分の温度を測定した。なお、バレル2の区分は、供給口21から排出口22に向かう方向において、区分2a、区分2b、区分2c、区分2dの順に並んでいる。
図9Aの混練機1の場合、区分2a及び区分2bが15℃で、区分2c及び区分2dが65℃で材料Pを混練することができた。
【0080】
図9Bは、
図9Aの混練機1からリバース部32を軸方向Xで短くして形成されている。すなわち、
図9Bの混練機1は
図9Aの混練機1に比べて、材料Pに生じる内部応力が小さい。
図9Bの混練機1の場合、区分2a及び区分2bが15℃で、区分2c及び区分2dが120℃で材料Pを混練することができた。
【0081】
図9Cは、
図9Bの混練機1に実施形態4と同様のシャッター45を設けて形成されている。すなわち、
図9Cの混練機1は
図9Bの混練機1に比べて、材料Pに生じる内部応力が大きい。
図9Cの混練機1の場合、区分2a及び区分2bが15℃で、区分2c及び区分2dが60℃で材料Pを混練することができた。
【符号の説明】
【0082】
1 混練機
2 バレル
21 供給口
22 排出口
3 スクリュー
31 フォワード部
32 リバース部
4 調整機構
41 駆動部
42 駆動部
45 シャッター
5 パドル
P 材料
X 軸方向