(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】ファン制御システム、ファンシステム、有効成分発生システム、ファン制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H02P 29/20 20160101AFI20240119BHJP
【FI】
H02P29/20
(21)【出願番号】P 2020086341
(22)【出願日】2020-05-15
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川崎 基資
(72)【発明者】
【氏名】平井 康一
(72)【発明者】
【氏名】伊東 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】裏谷 豊
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-072388(JP,A)
【文献】特開2017-099112(JP,A)
【文献】特開2003-219698(JP,A)
【文献】特開昭61-106079(JP,A)
【文献】特開平07-222480(JP,A)
【文献】特開2014-059105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽根を含むロータ、ステータ、及び潤滑剤を含浸した含浸軸受を有し、前記含浸軸受にて前記ロータを回転可能に保持するファンモータを制御するファン制御システムであって、
第1の回転数で前記ファンモータが動作するように前記ファンモータに電気信号を与える第1モードと、
前記第1の回転数より低回転となる第2の回転数で前記ファンモータが動作するように前記ファンモータに電気信号を与える第2モードと、を含む複数の制御モードの中から制御モードを選択する制御部を備え、
前記制御部は、前記ファンモータの始動後であって前記第1モードを選択するまでの期間に前記第2モードを選択する機能を有
し、
前記複数の制御モードは、前記第2の回転数より高回転となる第3の回転数で、かつ前記ファンモータの始動に必要な最低トルクである始動トルク以上のトルクで前記ファンモータが動作するように、前記ファンモータに電気信号を与える第3モードを含み、
前記制御部は、前記ファンモータの始動後であって前記第2モードを選択するまでの期間に前記第3モードを選択する機能を更に有する、
ファン制御システム。
【請求項2】
前記第2モードでは、前記始動トルク未満であって、かつ前記始動後の前記ファンモータにおける前記ロータの回転の維持に必要な最低トルクである維持トルク以上のトルクで前記ファンモータを動作させる、
請求項1に記載のファン制御システム。
【請求項3】
前記第1モードと前記第3モードとは、前記ファンモータに与える電気信号が同一である、
請求項1又は2に記載のファン制御システム。
【請求項4】
前記第2モードでは、前記ファンモータの始動に必要な最低トルクである始動トルク以上のトルクで前記ファンモータを動作させる、
請求項1に記載のファン制御システム。
【請求項5】
前記制御部が前記第1モードを開始するための判定条件は、前記ファンモータの始動後の経過時間に関する時間条件を含む、
請求項1~4のいずれか1項に記載のファン制御システム。
【請求項6】
前記制御部が前記第1モードを開始するための判定条件は、前記含浸軸受の温度に関する温度条件を含む、
請求項1~5のいずれか1項に記載のファン制御システム。
【請求項7】
前記制御部の前記第2モードを選択する機能の有効及び無効を切り替える切替部を更に備え、
前記切替部は、少なくとも前記ファンモータの周囲温度に関する環境情報に基づいて、前記第2モードを選択する機能を無効にする、
請求項1~6のいずれか1項に記載のファン制御システム。
【請求項8】
前記電気信号は、前記ファンモータに印加する直流電圧である、
請求項1~7のいずれか1項に記載のファン制御システム。
【請求項9】
前記ファンモータは、有効成分を発生する放電部を含む有効成分発生システムにおいて、前記有効成分を放出するための気流を発生する送風部として用いられ、
前記放電部での前記有効成分の単位時間当たりの発生量は、前記第2モードの選択中には前記第1モードの選択中よりも少ない、
請求項1~8のいずれか1項に記載のファン制御システム。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のファン制御システムと、
前記ファンモータと、を備える、
ファンシステム。
【請求項11】
請求項10に記載のファンシステムと、
有効成分を発生する放電部と、を備え、
前記ファンモータは、前記有効成分を放出するための気流を発生する、
有効成分発生システム。
【請求項12】
羽根を含むロータ、ステータ、及び潤滑剤を含浸した含浸軸受を有し、前記含浸軸受にて前記ロータを回転可能に保持するファンモータを制御するファン制御方法であって、
第1の回転数で前記ファンモータが動作するように前記ファンモータに電気信号を与える第1モードと、
前記第1の回転数より低回転となる第2の回転数で前記ファンモータが動作するように前記ファンモータに電気信号を与える第2モードと、を含む複数の制御モードの中から制御モードを選択可能であって、
前記ファンモータの始動後において、前記第1モードを選択するまでの期間に前記第2モードを選択する処理を有し、
前記複数の制御モードは、前記第2の回転数より高回転となる第3の回転数で、かつ前記ファンモータの始動に必要な最低トルクである始動トルク以上のトルクで前記ファンモータが動作するように、前記ファンモータに電気信号を与える第3モードを含み、
前記ファンモータの始動後であって前記第2モードを選択するまでの期間に前記第3モードを選択する処理を更に有する、
ファン制御方法。
【請求項13】
請求項12に記載のファン制御方法を、1以上のプロセッサに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般にファン制御システム、ファンシステム、有効成分発生システム、ファン制御方法及びプログラムに関する。より詳細には、本開示は、潤滑剤を含浸した含浸軸受を有するファンモータを制御するファン制御システム、ファンシステム、有効成分発生システム、ファン制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、含浸軸受(ポーラス状の軸受け)と、含浸軸受に挿通されて回転可能に保持される軸と、を備えるファンモータ(DCブラシレスモータファン)が記載されている。ファンモータは、軸に固定され、永久磁石及び羽根(フィン)を有するロータを、更に備えている。このファンモータにおいて、含浸軸受は、金属粉末を焼結して成形されており、潤滑剤(潤滑オイル)を含浸(含油)するための空隙(ポーラス)を有している。
【0003】
この種のファンモータにおいては、含浸軸受に含浸された潤滑剤が、含浸軸受と軸との間の潤滑作用を実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したようなファンモータでは、含浸軸受における潤滑剤の含浸量が適正量を下回るような場合に、例えば、低温環境等の特殊な環境下において潤滑剤の収縮に起因した異音等の不具合が発生する可能性がある。
【0006】
本開示は上記事由に鑑みてなされており、特殊な環境下においても異音等の不具合が生じにくいファン制御システム、ファンシステム、有効成分発生システム、ファン制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係るファン制御システムは、ファンモータを制御するファン制御システムである。前記ファンモータは、羽根を含むロータ、ステータ、及び潤滑剤を含浸した含浸軸受を有し、前記含浸軸受にて前記ロータを回転可能に保持する。前記ファン制御システムは、第1モードと、第2モードと、を含む複数の制御モードの中から制御モードを選択する制御部を備える。前記第1モードは、第1の回転数で前記ファンモータが動作するように前記ファンモータに電気信号を与える制御モードである。前記第2モードは、前記第1の回転数より低回転となる第2の回転数で前記ファンモータが動作するように前記ファンモータに電気信号を与える制御モードである。前記制御部は、前記ファンモータの始動後であって前記第1モードを選択するまでの期間に前記第2モードを選択する機能を有する。前記複数の制御モードは、前記第2の回転数より高回転となる第3の回転数で、かつ前記ファンモータの始動に必要な最低トルクである始動トルク以上のトルクで前記ファンモータが動作するように、前記ファンモータに電気信号を与える第3モードを含む。前記制御部は、前記ファンモータの始動後であって前記第2モードを選択するまでの期間に前記第3モードを選択する機能を更に有する。
【0008】
本開示の一態様に係るファンシステムは、前記ファン制御システムと、前記ファンモータと、を備える。
【0009】
本開示の一態様に係る有効成分発生システムは、前記ファンシステムと、有効成分を発生する放電部と、を備える。前記ファンモータは、前記有効成分を放出するための気流を発生する。
【0010】
本開示の一態様に係るファン制御方法は、ファンモータを制御するファン制御方法であって、第1モードと、第2モードと、を含む複数の制御モードの中から制御モードを選択可能である。前記ファンモータは、羽根を含むロータ、ステータ、及び潤滑剤を含浸した含浸軸受を有し、前記含浸軸受にて前記ロータを回転可能に保持する。前記第1モードは、第1の回転数で前記ファンモータが動作するように前記ファンモータに電気信号を与える制御モードである。前記第2モードは、前記第1の回転数より低回転となる第2の回転数で前記ファンモータが動作するように前記ファンモータに電気信号を与える制御モードである。前記ファン制御方法は、前記ファンモータの始動後において、前記第1モードを選択するまでの期間に前記第2モードを選択する処理を有する。前記複数の制御モードは、前記第2の回転数より高回転となる第3の回転数で、かつ前記ファンモータの始動に必要な最低トルクである始動トルク以上のトルクで前記ファンモータが動作するように、前記ファンモータに電気信号を与える第3モードを含む。前記ファン制御方法は、前記ファンモータの始動後であって前記第2モードを選択するまでの期間に前記第3モードを選択する処理を更に有する。
【0011】
本開示の一態様に係るプログラムは、前記ファン制御方法を、1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、特殊な環境下においても異音等の不具合が生じにくい、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るファン制御システムを含む有効成分発生システムの概略ブロック図である。
【
図2】
図2Aは、同上のファン制御システムにて制御されるファンモータの概略断面図である。
図2B及び
図2Cは、同上のファンモータの含浸軸受の断面の模式図である。
【
図3】
図3は、同上のファン制御システムからファンモータに与えられる電気信号を示すグラフである。
【
図4】
図4Aは、同上の有効成分発生システムの斜視図である。
図4Bは、同上の有効成分発生システムを別の方向から見た斜視図である。
【
図5】
図5は、同上の有効成分発生システムの分解斜視図である。
【
図6】
図6Aは、同上の有効成分発生システムのケース及び内部部品を示す分解斜視図である。
図6Bは、
図6Aの領域Z1を拡大した概略斜視図である。
【
図7】
図7は、同上のファン制御システムの動作を示すフローチャートである。
【
図8】
図8A及び
図8Bは、実施形態1の変形例に係るファン制御システムからファンモータに与えられる電気信号を示すグラフである。
【
図9】
図9は、実施形態2に係るファン制御システムからファンモータに与えられる電気信号を示すグラフである。
【
図10】
図10は、実施形態2の変形例に係るファン制御システムからファンモータに与えられる電気信号を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態1)
(1)概要
以下、本実施形態に係るファン制御システム10、ファンシステム100及び有効成分発生システム1の概要について、
図1~
図3を参照して説明する。
【0015】
本実施形態に係る有効成分発生システム1は、放電部21を備えており、放電部21にて有効成分を発生する。本実施形態では、放電部21は、放電電極211(
図6B参照)及び対向電極212(
図6B参照)を有し、放電電極211と対向電極212との間に電圧が印加されることにより放電が生じる。本開示でいう「有効成分」は、放電部21での放電により生成される成分であって、一例として、OHラジカルを含んだ帯電微粒子液、OHラジカル、O
2ラジカル、マイナスイオン、プラスイオン、オゾン又は硝酸イオン等を意味する。これらの有効成分は、除菌、脱臭、保湿、保鮮又はウイルスの不活化にとどまらず、様々な場面で有用な効果を奏する基となる。
【0016】
本実施形態に係る有効成分発生システム1は、放電部21を含む内部部品2(
図5参照)に加えて、ケース3(
図5参照)を備えている。ケース3は、有効成分発生システム1の外郭を構成し、ケース3内に内部部品2が収容されることで、ユニット化された有効成分発生システム1が構成される。ケース3には、有効成分を放出するための放出口31(
図5参照)と、ケース3内に空気を取り込むための給気口32(
図5参照)と、が形成されている。そして、本実施形態では、内部部品2はファンモータ22(
図5参照)を更に含んでいる。ファンモータ22は、給気口32から放出口31に向けて流れる気流(風)を発生する送風部として機能する。これにより、給気口32からケース3内に取り込まれた空気が、放出口31からケース3外に放出されることになる。放電部21で発生した有効成分は、このような送風部としてのファンモータ22が発生する気流に乗って、放出口31からケース3の外部に放出される。
【0017】
ところで、本実施形態においては、ファンモータ22は、
図2Aに示すように、ロータ101、ステータ102及び含浸軸受103を有している。ロータ101は、羽根104を含んでいる。含浸軸受103は、潤滑剤105(
図2B及び
図2C参照)を含浸している。一例として、含浸軸受103は、金属粉末を焼結して成形されており、潤滑剤105を含浸するための空隙(ポーラス)を有している。このファンモータ22は、含浸軸受103にてロータ101を回転可能に保持している。この構成では、含浸軸受103に含浸された潤滑剤105が、含浸軸受103とロータ101との間の潤滑作用を実現する。
【0018】
本実施形態に係るファン制御システム10は、上述したような含浸軸受103を有するファンモータ22を制御対象として、制御対象であるファンモータ22を制御するシステムである。すなわち、ファン制御システム10は、羽根104を含むロータ101、ステータ102、及び潤滑剤105を含浸した含浸軸受103を有し、含浸軸受103にてロータ101を回転可能に保持するファンモータ22を制御する。ファン制御システム10は、第1モードと、第2モードと、を含む複数の制御モードの中から制御モードを選択する制御部11を備える。第1モードは、第1の回転数でファンモータ22が動作するようにファンモータ22に電気信号(
図3の例では第1電圧V1)を与える制御モードである。第2モードは、第1の回転数より低回転となる第2の回転数でファンモータ22が動作するようにファンモータ22に電気信号(
図3の例では第2電圧V2)を与える制御モードである。制御部11は、ファンモータ22の始動後であって第1モードを選択するまでの期間(
図3の例では期間T2)に第2モードを選択する機能(以下、「アイドリング機能」という)を有する。
【0019】
この構成によれば、制御部11のアイドリング機能により、ファンモータ22の始動後であって第1モードを選択するまでの期間に第2モードが選択される。そのため、第1の回転数でファンモータ22が動作する前に、第1の回転数より低回転となる第2の回転数でファンモータ22が動作する。したがって、例えば、低温環境等の特殊な環境下においても、第2の回転数でファンモータ22が動作する間に含浸軸受103が温められることになり、潤滑剤105の収縮に起因した異音等の不具合が発生しにくくなる。
【0020】
また、本実施形態に係るファン制御システム10は、ファンモータ22と共に、ファンシステム100を構成する。言い換えれば、本実施形態に係るファンシステム100は、ファン制御システム10と、ファンモータ22と、を備える。ファン制御システム10は、ファンモータ22に電気信号を与えることにより、ファンモータ22を制御する。つまり、ファンモータ22は、ファン制御システム10からの電気信号を受けて動作する。
【0021】
また、本実施形態に係るファンシステム100は、有効成分を発生する放電部21と共に、有効成分発生システム1を構成する。言い換えれば、本実施形態に係る有効成分発生システム1は、ファンシステム100と、放電部21と、を備える。放電部21は、有効成分を発生する。ファンモータ22は、有効成分を放出するための気流を発生する。つまり、有効成分発生システム1においては、送風部としてのファンモータ22が発生する気流に乗って、放電部21で発生した有効成分をケース3の外部に効率的に放出することができる。
【0022】
(2)詳細
以下、本実施形態に係るファン制御システム10、ファンシステム100及び有効成分発生システム1の詳細について、
図1~
図7を参照して説明する。
【0023】
(2.1)定義
本開示でいう「含浸」は、例えば、多数の隙間(空隙)を有する多孔質構造又は繊維質構造の物体に、液状又はゲル状の流体を浸み込ませることで、物体の隙間に液状又はゲル状の流体が保持された状態を意味する。つまり、潤滑剤105を含浸する含浸軸受103は、一例として、金属粉末を焼結して成形されており、潤滑剤105を含浸するための多数の隙間を有する多孔質構造である。このような含浸軸受103に、液状又はゲル状の潤滑剤105を浸み込ませることで、含浸軸受103の多数の隙間に潤滑剤105が保持された状態とすることができる。この状態を、含浸軸受103が潤滑剤105を含浸した状態という。
【0024】
また、本開示でいう「ゲル状」は、液体と固体との中間の性質を有する状態を意味し、液相と固相との2つの相からなるコロイド(colloid)の状態を含む。例えば、分散媒が液相であって、分散質が液相であるエマルション(emulsion)、分散質が固相であるサスペンション(suspension)等の、ゲル(gel)又はゾル(sol)と呼ばれる状態が「ゲル状」に含まれる。また、分散媒が固相であって、分散質が液相である状態も、「ゲル状」に含まれる。つまり、含浸軸受103に含浸される潤滑剤105は、温度と圧力が一定ならば体積は一定であって、定まった形状を持たない流体としての性質を持つ物体である。言い換えれば、含浸軸受103に含浸される潤滑剤105は、気体以外の流体(流動体)である。ここでいう「流体」は、ニュートン流体と非ニュートン流体との両方を含む。本実施形態では一例として、合成油又は鉱物油等の潤滑油(オイル)からなる液状の潤滑剤105が含浸軸受103に含浸されている。
【0025】
本開示でいう「電気信号」は、電気的に情報を伝える信号全般を意味し、搬送波の振幅、周波数又は位相等を変化させる(変調する)ことによって、情報を伝送する信号だけでなく、例えば、電圧又は電流の大きさによって情報を伝送する信号等も含む。また、電気信号には、デジタル信号及びアナログ信号の両方が含まれる。本実施形態では一例として、ファン制御システム10がファンモータ22の制御に用いる電気信号は、ファンモータ22に印加される直流電圧である。つまり、ファンモータ22に印加される直流電圧からなる電気信号は、電圧の大きさによって情報を伝送することができ、その電圧の大きさを変化させることで、ファンモータ22の制御が可能となる。
【0026】
また、本開示でいう「一体」は、複数の要素(部位)について物理的に一体として取り扱うことができる態様を意味する。つまり、複数の要素が一体である、とは、複数の要素が一つにまとまっており、1つの部材のように扱うことができる態様にあることを意味する。この場合において、複数の要素は、一体成形品のように一体不可分の関係にあってもよいし、又は、別々に作成された複数の要素が、例えば、かしめ接合、接着、溶着又はねじ固定等により機械的に結合されていてもよい。一例として、後述の風路部材5に含まれる上流ブロックと下流ブロックとは、適宜の態様で一体化されていればよい。
【0027】
以下では一例として、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸の3軸を設定し、特に、ケース3の長手方向に沿った軸を「X軸」とし、ケース3と蓋体4(
図4A参照)とが組み合われる方向に沿った軸を「Z軸」とする。「Y軸」は、これらX軸及びZ軸のいずれとも直交し、ケース3の短手方向に沿った軸である。さらに、放出口31から有効成分が放出される向きを、X軸の正の向きと規定し、蓋体4から見たケース3側を、Z軸の正の向きと規定する。また、Z軸の正の向きから見た状態を、以下では「平面視」ともいう。X軸、Y軸、及びZ軸は、いずれも仮想的な軸であり、図面中の「X」、「Y」、「Z」を示す矢印は、説明のために表記しているに過ぎず、いずれも実体を伴わない。また、これらの方向は有効成分発生システム1の使用時の方向を限定する趣旨ではない。
【0028】
以下では一例として、有効成分発生システム1が車載用である場合を想定する。つまり、有効成分発生システム1は、例えば、ダッシュボード等の内側に配置され、車載用の空調設備のダクトに有効成分を放出し、空調設備の吹出し口を利用して有効成分を車内に放出する等の態様で、使用される。
【0029】
(2.2)全体構成
まず、本実施形態に係る有効成分発生システム1の全体構成について、
図1、
図4A~
図6Bを参照して説明する。
【0030】
本実施形態に係る有効成分発生システム1は、
図1に示すように、ファンシステム100と、有効成分を発生する放電部21と、を備えている。ファンシステム100は、ファン制御システム10と、ファンモータ22と、を備えている。ファンシステム100に含まれるファンモータ22は、有効成分発生システム1においては、有効成分を放出するための気流を発生する送風部として機能する。
【0031】
さらに、上述した通り、本実施形態に係る有効成分発生システム1は、放電部21を含む内部部品2に加えて、ケース3を備えている。ケース3は、有効成分を放出するための放出口31を有する箱状に形成されている。また、本実施形態に係る有効成分発生システム1は、内部部品2及びケース3に加えて、蓋体4、緩衝体41(
図5参照)及び風路部材5を更に備えている。
【0032】
蓋体4は、ケース3に接合される。ケース3は、放出口31とは別に開口部33(
図5参照)を有する。蓋体4は、ケース3との間に内部部品2を収容した状態で、開口部33を塞ぐようにケース3と接合される。すなわち、ケース3は、一面(Z軸に直交する一面)が開口部33として開口した箱状に形成されている。蓋体4は、ケース3と接合されて開口部33を塞ぐことにより、ケース3と共に有効成分発生システム1の外郭を構成する。内部部品2は、ケース3と蓋体4とで囲まれたケース3の内部空間に収容されることになる。これにより、内部部品2は、開口部33からケース3内に組み付けられた状態で、開口部33から露出しないように蓋体4で覆われることになる。
【0033】
本実施形態では、ケース3は、底板35と、周壁36と、フランジ部37と、を有している。周壁36は、底板35の外周縁からZ軸の負の向きに向けて突出する。そして、底板35のうち、Z軸の負の向きを向いた面、つまり周壁36にて囲まれた面が、ケース3の底面310(
図6A参照)となる。フランジ部37は、周壁36の先端から外側に張り出している。ケース3はフランジ部37にて蓋体4と接合される。
【0034】
本実施形態においては、ケース3は、金属体30を有する。金属体30は、内部部品2のうち少なくとも放電部21を包囲する。金属体30は、互いに異なる方向に向けられた隣接する2面の間の角部に、シームレス部301を有する。
【0035】
本開示でいう「シームレス部」は、互いに異なる方向に向けられた隣接する2面の間の角部において、隣接する2面間を継ぎ目なく連結する部位を意味する。つまり、シームレス部301は、角部において、隣接する2面間の隙間の少なくとも一部を埋めることで、隣接する2面間を継ぎ目なく連続させる。シームレス部301は、隣接する2面間の隙間の少なくとも一部を埋めるように、隙間を小さくするような構成であればよく、隙間を完全に埋め尽くす構成と、隙間の一部のみを埋める構成との両方を含む。つまり、シームレス部301は、金属体30の角部において隣接する2面間の隙間を小さくするように、隙間の少なくとも一部を塞ぐ構成であればよい。そのため、本実施形態に係る有効成分発生システム1においては、シームレス部301があるものの、金属体30における互いに異なる方向に向けられた隣接する2面の間の角部に、僅かな隙間又は孔があってもよい。
【0036】
ここでは、金属板に絞り加工(角筒絞り加工)が施されることにより、箱状のケース3が形成されている。このように形成されるケース3では、底板35と周壁36との間の角部については勿論のこと、平面視において四隅に位置する周壁36における4つの角部についても、継ぎ目は生じない。言い換えれば、本実施形態では、少なくとも周壁36のうちの互いに異なる方向に向けられた隣接する2面間の角部の隙間は、シームレス部301にて完全に埋められている。よって、ケース3の底面310を囲む周壁36は、底面310の周方向において、継ぎ目なく連続的する一枚の金属板にて構成される。
【0037】
本実施形態に係る有効成分発生システム1によれば、少なくとも放電部21は、ケース3の金属体30にて包囲されているので、放電部21での放電時に発生する電磁ノイズに対して、金属体30がシールドとして機能する。しかも、金属体30は、互いに異なる方向に向けられた隣接する2面の間の角部に、シームレス部301を有するシームレス構造であるので、シームレス部301により、隣接する2面の間の角部の隙間から漏れ出る電磁ノイズを低減することが可能である。
【0038】
本実施形態では、ケース3は導電性の金属板にて形成されている。そのため、ケース3全体が金属製の金属体30となる。また、蓋体4についても、ケース3と同様に導電性の金属板にて形成されている。そのため、蓋体4全体が金属製となる。よって、内部部品2は、金属製の部材(ケース3及び蓋体4)で囲まれた空間に収容されることになる。内部部品2は、ケース3内においてケース3に対して固定されている。内部部品2は、ねじ71及びナット72にて、回路基板230が固定部61に固定されることによって、ケース3の底面310に固定される。つまり、ケース3は、回路基板230をケース3の底面310に固定する固定部61を有している。
【0039】
また、ケース3は、支持部62を更に有している。支持部62は、内部部品2に含まれる回路基板230を支持する機能を有している。本実施形態では、周壁36のうち、Y軸方向において互いに対向する一対の内側面に、一対の支持部62が設けられている。一対の支持部62は、一対の内側面のうちの互いに対向する部位から、互いに近づく向きに突出する。
【0040】
また、ケース3は、規制部63を更に有している。規制部63は、ケース3の底面310と回路基板230との間に位置する。規制部63は、底面310に近づく向きの回路基板230の移動を規制する機能を有している。本実施形態では、周壁36のうち、Y軸方向において互いに対向する一対の内側面に、一対の規制部63が設けられている。一対の規制部63は、一対の内側面のうちの互いに対向する部位から、互いに近づく向きに突出する。
【0041】
蓋体4は、平面視において(Z軸の正の向きから見て)、X軸方向を長手方向とし、Y軸方向を短手方向とする長方形状に形成されている。蓋体4は、ケース3の放出口31の一部を塞ぐ第1閉塞片42、ケース3のコネクタ口34の一部を塞ぐ第2閉塞片43を有している。第1閉塞片42及び第2閉塞片43の各々は、蓋体4を構成する金属板の切り起こし部(切り曲げ部)からなる。また、蓋体4は、その長手方向(X軸方向)に延びるリブ44を有しており、リブ44にて補強されている。
【0042】
ここで、蓋体4は、長手方向の寸法が、ケース3よりも大きい。そして、蓋体4がケース3に接合された状態では、平面視において、少なくとも蓋体4の長手方向の両端部がケース3から外側にはみ出す。言い換えれば、蓋体4は、平面視において、ケース3の外周縁から外側に張り出した張出部45を有している。有効成分発生システム1は、蓋体4の張出部45が、取付対象物(本実施形態では車両)に対して、例えば、ねじ固定されることによって、取付対象物に取り付けられる。
【0043】
緩衝体41は、蓋体4と内部部品2の一部との間に挟まれる。すなわち、ケース3と蓋体4とで囲まれたケース3の内部空間には、内部部品2と共に緩衝体41が収容される。本実施形態では、緩衝体41は、蓋体4におけるケース3との対向面に貼り付けられている。
【0044】
また、本実施形態では、緩衝体41は、内部部品2の一部であるファンモータ22と蓋体4との間に挟まれるように配置される。すなわち、内部部品2は、上述したように、有効成分を放出口31からケース3の外部に出力するための気流を発生する送風部として、ファンモータ22を含んでいる。そして、緩衝体41は少なくともファンモータ22に接触する。
【0045】
そのため、内部部品2の一部であるファンモータ22は、蓋体4に対して直接的に接触するのではなく、ファンモータ22と蓋体4との間には緩衝体41が介在することになる。緩衝体41は、弾性を有しており、一例として、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)フォーム等のクッション材からなる。よって、ケース3に蓋体4が接合された状態において、蓋体4と内部部品2の一部であるファンモータ22との間で緩衝体41が圧縮され、内部部品2が、緩衝体41の弾性力によりケース3の底面310(
図6A参照)側に押し付けられることになる。その結果、ケース3の底面310から離れる向きの内部部品2(特にファンモータ22)の移動及び内部部品2(特にファンモータ22)の振動等が抑制される。本実施形態では、特に、可動部を有するために機械的な振動を生じやすいファンモータ22に緩衝体41が接触するので、ファンモータ22で発生する機械的な振動を抑制しやすい。
【0046】
風路部材5は、ケース3内に収容される。すなわち、ケース3と蓋体4とで囲まれたケース3の内部空間には、内部部品2及び緩衝体41と共に風路部材5が収容される。本実施形態では、風路部材5は、蓋体4に固定された状態で、内部部品2と蓋体4との間に配置される。風路部材5は、ケース3の給気口32と放出口31との間に、気流(風)を通すための風路を形成する。つまり、風路部材5は、ケース3の内部空間を、気流を通すための空間と、それ以外の空間と、に区分けすることにより、ケース3内に風路を形成する。
【0047】
ここで、風路部材5で形成される風路の途中に、内部部品2のファンモータ22、及び放電部21が配置される。ファンモータ22は、風路内を通して給気口32から放出口31に向けて流れる気流(風)を発生する。放電部21は、本実施形態では、風路におけるファンモータ22の下流側、つまりファンモータ22と放出口31との間に配置されている。
【0048】
そのため、給気口32からケース3内に取り込まれた空気は、風路部材5にて形成される風路を通して、ケース3内を放出口31まで移動し、放出口31からケース3外に放出されることになる。そして、放電部21で発生した有効成分は、このようなファンモータ22が発生する気流に乗って、放出口31からケース3の外部に放出される。言い換えれば、風路における給気口32と放電部21との間には、送風部としてのファンモータ22が配置されており、放電部21で発生した有効成分は、ファンモータ22により押し出されて、ケース3の外部に放出される。
【0049】
風路部材5が形成する風路は、ファンモータ22の上流側となる給気風路、及びファンモータ22の下流側となる排気風路を含んでいる。つまり、給気風路は、ファンモータ22と給気口32との間をつなぎ、排気風路は、ファンモータ22と放出口31との間をつなぐ。風路部材5は、比較的効率よく有効成分がケース3の外部に放出されるように、空気(有効成分を含む)の流れをコントロールする。ここで、風路部材5は、上流ブロックと、下流ブロックと、を一体に有している。上流ブロックは、ファンモータ22から見て上流側となる給気風路を形成する。下流ブロックは、ファンモータ22から見て下流側となる排気風路を形成する。このように、風路部材5は、ケース3内に、給気風路及び排気風路を含み、気流を通すための風路を形成する。
【0050】
また、本実施形態では、風路部材5は合成樹脂製である。つまり、樹脂成型品からなる風路部材5が、金属板からなる蓋体4に対して固定される。風路部材5は、
図5に示すように、蓋体4に対して、例えば、熱かしめ等の手段により固定されている。つまり、風路部材5は、複数(ここでは3つ)のかしめ部55を有している。風路部材5は、蓋体4に形成された複数(ここでは3つ)のかしめ孔47に対して、これら複数のかしめ部55をかしめることにより、蓋体4の一面側(Z軸の正の側)に固定される。さらに、風路部材5は、有効成分を含む空気を放出するためのノズル51と一体に形成されている。すなわち、本実施形態に係る有効成分発生システム1は、ノズル51を備えており、ノズル51は風路部材5と一体化されている。ノズル51は、ケース3の放出口31内に配置されており、放出口31からケース3の外部に放出される空気は、ノズル51を通してケース3外に放出されることになる。
【0051】
(2.3)内部部品の構成
次に、内部部品2の構成について、
図5、
図6A及び
図6Bを参照して説明する。
【0052】
内部部品2は、放電部21及びファンモータ22に加えて、ファン制御システム10と、駆動回路23と、液体供給部24(
図6B参照)と、第2温度センサ28(
図6B参照)と、を更に含んでいる。
【0053】
放電部21は、
図6Bに示すように、放電電極211と、対向電極212と、を有している。放電部21は、電気絶縁性を有する合成樹脂製の保持ブロック213を更に有している。放電部21は、上述したように、放電電極211と対向電極212との間に電圧が印加されることにより、放電を生じさせる。
【0054】
放電電極211は、X軸に沿って延びる柱状の電極である。放電電極211は、少なくとも長手方向(X軸方向)の先端部211aが先細り形状に形成された針電極である。ここでいう「先細り形状」とは、先端が鋭く尖っている形状に限らず、先端が丸みを帯びた形状を含む。特に、
図6Bの例では、放電電極211の先端部211aは球状であって、先端部211aのうちの放電電極211側の半分(つまりX軸の正側の半球部分)が、丸みを帯びた先細り形状を成す。放電電極211は、一例として、チタン合金(Ti合金)等の導電性の金属材からなる。
【0055】
対向電極212は、放電電極211の先端部211aに対向するように配置されている。本実施形態では、対向電極212は、金属板からなり、放電電極211の先端部211aに対して、X軸の正の向きに離れた位置に配置されている。対向電極212の一部には、金属板を厚み方向(X軸方向)に貫通する貫通孔212aが形成されている。対向電極212は、この貫通孔212aの周縁から貫通孔212aの中心に向けて突出する複数(一例として4つ)の突出電極部212bを含んでいる。対向電極212は、一例として、チタン合金(Ti合金)等の導電性の金属材からなる。
【0056】
保持ブロック213は、放電電極211及び対向電極212を保持する。保持ブロック213は、一例として、熱かしめ等により、対向電極212と結合される。これにより、対向電極212は、保持ブロック213に保持される。放電電極211及び対向電極212が保持ブロック213に保持された状態では、放電電極211の中心軸の一方から見て、貫通孔212aの中心は、放電電極211の中心軸上に位置する。
【0057】
ファンモータ22は、有効成分を放出するための気流を発生する送風部として機能する。ファンモータ22は、上述したように、ロータ101及びステータ102を有している。ファンモータ22は、ファン制御システム10からの電気信号(本実施形態では直流電圧)を受けて、ロータ101を回転させるように動作する。ファンモータ22のロータ101が回転すると、ロータ101に含まれる羽根104の回転に伴って気流(風)が発生する。本実施形態では一例として、ファンモータ22は、ロータ101の回転軸に沿う気流を発生する軸流ファンである。ファンモータ22は、ロータ101の回転軸がX軸に平行となるように配置される。そのため、ファンモータ22は、X軸に沿って給気口32から放出口31に向けて、つまりX軸の正の向きに流れる気流を生じることになる。ファンモータ22について詳しくは「(2.5)ファンモータの構成」の欄で説明する。
【0058】
ファン制御システム10は、ファンモータ22を制御する。本実施形態では一例として、ファン制御システム10は、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを主構成とする。すなわち、マイクロコントローラのメモリに記録されたプログラムを、マイクロコントローラのプロセッサが実行することにより、ファン制御システム10の機能が実現される。プログラムはメモリにあらかじめ記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通して提供されてもよく、メモリカード等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。さらに、本実施形態では、ファン制御システム10は、ファンモータ22に電気信号としての直流電圧を印加することでファンモータ22を制御するので、直流電圧を変換するための電圧変換回路13(
図1参照)を備えている。ファン制御システム10について詳しくは「(2.6)ファン制御システムの構成」の欄で説明する。
【0059】
駆動回路23は、回路基板230と、トランス25等の種々の実装部品と、を含んでいる。トランス25等の実装部品は、回路基板230に実装されている。さらに、本実施形態では、駆動回路23を構成する実装部品(トランス25等)だけでなく、ファン制御システム10、放電部21、ファンモータ22及び液体供給部24についても、回路基板230に直接的又は間接的に実装されている。また、駆動回路23を外部回路と電気的に接続するためのコネクタ27についても、回路基板230に実装されている。ここでいう実装は、回路基板230に対する機械的かつ電気的な接続を意味する。つまり、実装部品(トランス25等)、ファン制御システム10、放電部21、ファンモータ22、液体供給部24及びコネクタ27は、例えば、はんだ付け又はコネクタ接続等の手段により、回路基板230に対して機械的かつ電気的に接続されている。本実施形態では、回路基板230に対するファンモータ22の機械的な接続は、ファンモータ22に設けた爪(フック)を回路基板230に引っ掛けるスナップフィットにより実現される。
【0060】
駆動回路23は、放電部21を駆動する回路である。つまり、駆動回路23は、放電部21を構成する放電電極211及び対向電極212間に印加電圧を印加することにより、放電部21にて放電を生じさせる回路である。本開示でいう「印加電圧」は、放電を生じさせるために、駆動回路23が放電電極211と対向電極212との間に印加する電圧を意味する。
【0061】
駆動回路23は、電源から電力供給を受けて、放電部21に印加する電圧(印加電圧)を生成する。ここでいう「電源」は、駆動回路23等に動作用の電力を供給する電源であって、一例として、数V~十数V程度の直流電圧を発生する電源回路である。駆動回路23は、例えば、トランス25にて、電源からの入力電圧を昇圧し、昇圧後の電圧を印加電圧として出力する。すなわち、駆動回路23では、放電部21に放電を生じさせるための高電圧(印加電圧)が、トランス25の二次側に生成される。
【0062】
ここで、駆動回路23は、基準電位点を含んでいる。基準電位点は、金属体30と電気的に接続されている。本実施形態では、基準電位点は、駆動回路23におけるグランドである。つまり、ケース3の金属体30が駆動回路23の基準電位点であるグランドに電気的に接続されることで、フレームグランドが実現される。
【0063】
そして、駆動回路23は、放電部21(放電電極211及び対向電極212)に対して電気的に接続されている。具体的には、駆動回路23におけるトランス25の二次側端子が、ハーネス26にて放電部21に電気的に接続されている。本実施形態では、駆動回路23は、放電電極211を負極(グランド)、対向電極212を正極として、放電電極211と対向電極212との間に高電圧を印加する。そのため、放電部21のうちの対向電極212に対してトランス25の二次側端子が接続され、放電電極211に対しては回路基板230に設定された基準電位点としてグランドが接続される。これにより、駆動回路23は、放電部21に対して、放電電極211を低電位側、対向電極212を高電位側とする高電圧を印加する。ここでいう「高電圧」とは、放電部21において、後述する全路破壊放電又は部分破壊放電が生じるように設定される電圧であればよく、一例として、ピークが6.0kV程度となる電圧である。全路破壊放電及び部分破壊放電について詳しくは「(2.4)有効成分発生システムの動作」の欄で説明する。
【0064】
液体供給部24は、放電電極211に液体を供給する。有効成分発生システム1では、放電部21で生じる放電によって液体を静電霧化する。すなわち、例えば、液体供給部24から供給される液体が放電電極211の表面に付着することで放電電極211に液体が保持されている状態において、放電部21に印加電圧が印加されることで放電部21にて放電が生じる。この構成では、放電部21で生じる放電のエネルギーにより、放電電極211に保持されている液体が、放電によって静電霧化される。本開示において、放電電極211に保持されている液体、つまり静電霧化の対象となる液体を、単に「液体」とも呼ぶ。
【0065】
液体供給部24は、放電電極211に対して静電霧化用の液体を供給する。液体供給部24は、一例として、ペルチェ素子を含み、ペルチェ素子にて放電電極211を冷却して放電電極211に結露水を発生させることで、液体を供給する。この液体供給部24では、駆動回路23からペルチェ素子に通電されることによって、ペルチェ素子と熱的に結合されている放電電極211を冷却する。このとき、空気中の水分が凝結して放電電極211の表面に結露水として付着する。すなわち、液体供給部24は、放電電極211を冷却して放電電極211の表面に液体としての結露水を生成する。この構成では、液体供給部24は、空気中の水分を利用して、放電電極211に液体(結露水)を供給できるため、有効成分発生システム1への液体の供給、及び補給が不要になる。
【0066】
また、第2温度センサ28は、ファンモータ22の周囲温度を直接的又は間接的に検知する。第2温度センサ28は、例えば、サーミスタからなる。有効成分発生システム1は、第2温度センサ28の検知結果を、ファン制御システム10に出力する。第2温度センサ28は、
図6Bに示すように、例えば、放電部21等と共に、回路基板230に実装されており、回路基板230の温度、又はケース3の内部空間の温度を検知することで、ファンモータ22の周囲温度を直接的に検知する。
【0067】
(2.4)有効成分発生システムの動作
以上説明した構成の有効成分発生システム1は、駆動回路23が以下のように動作することで、放電部21(放電電極211及び対向電極212)に放電を生じさせる。
【0068】
すなわち、駆動回路23の動作モードには、放電モードと、遮断モードとの2つのモードが含まれている。放電モードは、印加電圧を時間経過に伴って上昇させ、コロナ放電から進展して、放電電極211と対向電極212との間に、少なくとも一部において絶縁破壊された放電経路を形成して放電電流を生じさせるためのモードである。遮断モードは、放電部21を過電流状態として、放電電流を遮断するためのモードである。本開示でいう「放電電流」は、放電経路を通して流れる比較的大きな電流を意味しており、放電経路が形成される前のコロナ放電において生じる数μA程度の微小電流を含まない。本開示でいう「過電流状態」とは、放電により負荷が低下し、想定値以上の電流が放電部21に流れる状態を意味する。
【0069】
本実施形態では、駆動期間において、駆動回路23が放電モードと遮断モードとを交互に繰り返すように動作する。ここで、駆動回路23は、放電部21に印加する印加電圧の大きさを、駆動周波数にて周期的に変動させるように、駆動周波数にて放電モードと遮断モードとの切り替えを行う。本開示でいう「駆動期間」は、放電部21に放電を生じさせるように駆動回路23が動作する期間である。
【0070】
すなわち、駆動回路23は、放電電極211を含む放電部21に印加する電圧の大きさを一定値に保つのではなく、所定範囲内の駆動周波数にて、周期的に変動させる。駆動回路23は、印加電圧の大きさを周期的に変動させることにより、放電を間欠的に生じさせる。つまり、印加電圧の変動周期に合わせて、放電経路が周期的に形成され、放電が周期的に発生する。以下では、放電(全路破壊放電又は部分破壊放電)が生じる周期を「放電周期」ともいう。
【0071】
上述したような動作により、放電電極211に保持されている液体に作用する電気エネルギーの大きさが駆動周波数にて周期的に変動することになり、結果的に、放電電極211に保持されている液体が駆動周波数にて機械的に振動する。
【0072】
要するに、駆動回路23から、放電電極211を含む放電部21に電圧が印加されることにより、放電電極211に保持されている液体には、電界による力が作用して液体が変形する。特に、本実施形態では、放電電極211の先端部211aと対向する対向電極212と放電電極211との間に電圧が印加されるので、液体には、電界によって対向電極212側に引っ張られる向きの力が作用する。その結果、放電電極211の先端部211aに保持されている液体は、電界による力を受けて、放電電極211の中心軸に沿って(つまりX軸に沿って)対向電極212側に伸び、テイラーコーン(Taylor cone)と呼ばれる円錐状の形状を成す。テイラーコーンの状態から、放電部21に印加される電圧が小さくなれば、電界の影響によって液体に作用する力も小さくなり、液体が変形する。その結果、放電電極211の先端部211aに保持されている液体は、縮むことになる。
【0073】
そして、放電部21に印加される電圧の大きさが駆動周波数にて周期的に変動することにより、放電電極211に保持されている液体は、放電電極211の中心軸に沿って(つまりX軸に沿って)伸縮する。特に、テイラーコーンの先端部(頂点部)に電界が集中することで放電が発生するので、テイラーコーンの先端部が尖っている状態で絶縁破壊が生じる。よって、駆動周波数に合わせて放電(全路破壊放電又は部分破壊放電)が間欠的に発生する。
【0074】
すなわち、放電電極211に保持されている液体が電界による力を受けてテイラーコーンを形成すると、例えば、テイラーコーンの先端部(頂点部)と対向電極212との間に電界が集中しやすくなる。したがって、液体と対向電極212との間においては、比較的に高いエネルギーの放電が生じ、放電電極211に保持された液体に生じたコロナ放電を、更に高エネルギーの放電にまで進展させることができる。その結果、放電電極211と対向電極212との間には、少なくとも一部において絶縁破壊された放電経路を断続的に形成することが可能となる。
【0075】
これにより、放電電極211に保持されている液体が、放電によって静電霧化される。その結果、有効成分発生システム1では、OHラジカルを含有するナノメータサイズの帯電微粒子液が生成される。つまり、有効成分としての帯電微粒子水が放電部21にて発生する。生成された帯電微粒子液は、放出口31を通してケース3外に放出される。
【0076】
次に、放電形態としての全路破壊放電及び部分破壊放電について説明する。
【0077】
全路破壊放電は、コロナ放電から進展して一対の電極(放電電極211及び対向電極212)間の全路破壊に至ることで生じる放電形態である。つまり、全路破壊放電においては、放電電極211と対向電極212との間には、全体的に絶縁破壊された放電経路が生じる。
【0078】
本開示でいう「絶縁破壊」は、導体間を隔離している絶縁体(気体を含む)の電気絶縁性が破壊され、絶縁状態が保てなくなることを意味する。気体の絶縁破壊は、例えば、イオン化された分子が電場により加速されて他の気体分子に衝突してイオン化し、イオン濃度が急増して気体放電を起こすために生じる。
【0079】
一方、部分破壊放電は、コロナ放電から進展して一対の電極(放電電極211及び対向電極212)間に部分的に絶縁破壊された放電経路が形成される放電形態である。つまり、部分破壊放電においては、放電電極211と対向電極212との間には、部分的に絶縁破壊された放電経路が生じる。すなわち、部分破壊放電では、放電電極211と対向電極212との間には、全体的にではなく部分的(局所的)に、絶縁破壊された放電経路が形成される。このように、部分破壊放電においては、放電電極211と対向電極212との間に形成される放電経路は、全路破壊には至らず、部分的に絶縁破壊された経路である。
【0080】
ただし、本実施形態では、全路破壊放電及び部分破壊放電のいずれの放電形態であっても、一対の電極(放電電極211及び対向電極212)間での絶縁破壊が継続的に生じるのではなく、絶縁破壊が間欠的に発生する。そのため、一対の電極(放電電極211及び対向電極212)間に生じる放電電流についても、間欠的に発生する。
【0081】
すなわち、放電経路を維持するのに必要な電流容量を電源(駆動回路23)が有さない場合等においては、コロナ放電から絶縁破壊に進展した途端に一対の電極間に印加される電圧が低下し、放電経路が途切れて放電が停止する。ここでいう「電流容量」は、単位時間に放出可能な電流の容量である。このような放電の発生、及び停止が繰り返されることにより、放電電流が間欠的に流れることになる。このように、本実施形態に係る有効成分発生システム1での放電形態は、放電エネルギーの高い状態と放電エネルギーの低い状態とを繰り返す点において、絶縁破壊が継続的に発生する(つまり放電電流が継続的に発生する)グロー放電及びアーク放電とは相違する。
【0082】
そして、全路破壊放電又は部分破壊放電においては、コロナ放電と比較して大きなエネルギーでラジカル等の有効成分が生成され、コロナ放電と比較して2~10倍程度の大量の有効成分が生成される。このようにして生成される有効成分は、除菌、脱臭、保湿、保鮮、ウイルスの不活化にとどまらず、様々な場面で有用な効果を奏する基となる。
【0083】
また、部分破壊放電においては、全路破壊放電と比較しても、過大なエネルギーによる有効成分の消失を抑制でき、全路破壊放電と比較しても有効成分の生成効率の向上を図ることができる。すなわち、全路破壊放電では、その放電に係るエネルギーが高すぎるが故に、生成された有効成分の一部が消失して、有効成分の生成効率の低下につながる可能性がある。これに対して、部分破壊放電では、全路破壊放電と比較して放電に係るエネルギーが小さく抑えられるため、過大なエネルギーに晒されることによる有効成分の消失量を低減し、有効成分の生成効率の向上を図ることができる。
【0084】
さらに、部分破壊放電では、全路破壊放電に比較して電界の集中が緩められる。すなわち、全路破壊放電では、全路破壊された放電経路を通じて放電電極211及び対向電極212間には、瞬間的に大きな放電電流が流れ、その際の電気抵抗は非常に小さくなっている。これに対して、部分破壊放電では、電界の集中が緩められることで、部分的に絶縁破壊された放電経路の形成時に、放電電極211及び対向電極212間に瞬間的に流れる電流の最大値が、全路破壊放電に比べて小さく抑えられる。これにより、部分破壊放電では、全路破壊放電に比較して、窒化酸化物(NOx)の発生が抑制され、さらに電磁ノイズの発生も抑えられる。
【0085】
(2.5)ファンモータの構成
次に、本実施形態に係るファンモータ22の構成について、
図1~
図2Cを参照して説明する。
【0086】
ファンモータ22は、
図1に示すように、ドライバ227と、コイル222と、を備えている。ドライバ227は、ファン制御システム10からの電気信号を受けて、コイル222を駆動する。コイル222は、ドライバ227によって駆動され、ロータ101に回転力を与えてロータ101を回転させる。
【0087】
本実施形態では、ファンモータ22は、直流電圧が印加されることによって動作するDC(直流)ブラシレスモータを主構成とする。DCブラシレスモータを主構成とするファンモータ22は、入力(印加)される直流電圧の大きさに従って、ステータ102に含まれるコイル222を駆動することにより、永久磁石226(
図2A参照)を含むロータ101を回転させる。すなわち、このファンモータ22は、ステータ102のコイル222が発生する磁界を変化させることで、ロータ101の永久磁石226に回転力を与えて、ロータ101を回転させる。そのため、本実施形態では、ドライバ227は、例えば、半導体素子等を含み、ファン制御システム10から入力される電気信号としての直流電圧に応じて、コイル222に流す電流を制御することで、コイル222で発生する磁界を変化させる。
【0088】
本実施形態では、ファンモータ22は、入力(印加)される直流電圧の大きさに比例した回転数及びトルクで動作することと仮定する。つまり、ファン制御システム10からファンモータ22に印加される電気信号としての直流電圧が高くなれば、直流電圧の上昇に比例して、ドライバ227はファンモータ22の回転数を上昇させるように、コイル222を駆動する。反対に、ファン制御システム10からファンモータ22に印加される電気信号としての直流電圧が低くなれば、直流電圧の低下に比例して、ドライバ227はファンモータ22の回転数を低下させるように、コイル222を駆動する。
【0089】
図2Aは、ファンモータ22の構成を模式的に示す概略断面図である。すなわち、ファンモータ22は、ロータ101と、ステータ102と、含浸軸受103と、を有している。本実施形態では、ファンモータ22は、ドライバ227を更に有している。ここにおいて、ステータ102は、コイル222と、ハウジング223と、円筒部224と、を含んでいる。ロータ101は、羽根104と、シャフト225と、永久磁石226と、を含んでいる。
【0090】
ハウジング223は、箱状に形成されており、ファンモータ22の外郭を構成する。本実施形態では一例として、ハウジング223は、合成樹脂製であって、円筒部224と一体に成形されている。円筒部224は、ハウジング223の底面の中央部から突出している。ハウジング223の内部には、羽根104を含むロータ101、含浸軸受103、ドライバ227及びコイル222等が収容される。
【0091】
円筒部224は、ハウジング223の内部において、含浸軸受103を保持する。円筒部224は、その内側に含浸軸受103を収容することによって、含浸軸受103を保持している。円筒部224の内側には、含浸軸受103に加えて、潤滑剤105を含浸する不織布が収容されている。つまり、潤滑剤105は含浸軸受103のみならず、不織布にも含浸されている。そのため、不織布に含浸されている潤滑剤105を含浸軸受103が含浸することによって、円筒部224内に潤滑剤105を補給しなくても、含浸軸受103の潤滑剤105が枯渇しにくくなる。ただし、不織布はファンモータ22に必須ではなく、例えば、不織布が省略され、含浸軸受103の周囲に潤滑剤105を溜めるスペースがあってもよい。
【0092】
コイル222は、円環状に形成されており、円筒部224の周囲に配置されている。さらに、コイル222の周囲にはロータ101の永久磁石226が配置される。つまり、コイル222は、ロータ101の永久磁石226で囲まれた位置に配置されている。コイル222は、ステータ102の一部であるので、ハウジング223に対して相対的に移動しないよう固定されている。
【0093】
含浸軸受103は、円筒状の部品であって、円筒部224に挿入された状態で円筒部224に保持されている。含浸軸受103には、ロータ101のシャフト225が挿入されている。これにより、含浸軸受103は、ロータ101のシャフト225を回転可能に支持する。言い換えれば、ステータ102は、その円筒部224にて、含浸軸受103を介してロータ101を回転可能に支持する。ここで、ロータ101は、シャフト225の中心軸を回転軸として回転する。つまり、ロータ101の回転軸は、シャフト225の中心軸と一致する。
【0094】
羽根104は、シャフト225の先端部に対して機械的に結合されている。これにより、ロータ101がロータ101の回転軸(シャフト225の中心軸)を中心に回転することで、羽根104が回転する。本実施形態では、ファンモータ22は軸流ファンであるので、羽根104が回転することにより、ロータ101の回転軸(シャフト225の中心軸)に沿った気流が発生する。
【0095】
永久磁石226は、羽根104と共に、シャフト225の先端部に対して機械的に結合されている。永久磁石226は、羽根104で囲まれた位置に配置されている。永久磁石226は、一定の隙間を介してコイル222と対向するように、コイル222の周囲に配置されている。そのため、ロータ101は、永久磁石226にて、コイル222が発生する磁界の変化に応じた回転力を受け、ロータ101の回転軸(シャフト225の中心軸)を中心に回転する。
【0096】
また、本実施形態では、ファンモータ22は、第1温度センサ221(
図1参照)を更に有している。第1温度センサ221は、含浸軸受103の温度を直接的又は間接的に検知する。第1温度センサ221は、例えば、サーミスタからなる。ファンモータ22は、第1温度センサ221の検知結果を、ファン制御システム10に出力する。第1温度センサ221は、例えば、シャフト225の温度、又は円筒部224の内部空間の温度を検知することで、含浸軸受103の温度を間接的に検知する。
【0097】
ところで、含浸軸受103は、
図2B及び
図2Cに示すように、潤滑剤105を含浸する。
図2B及び
図2Cは、含浸軸受103の断面付近を模式的に表す要部の概略断面図である。本実施形態では一例として、含浸軸受103は、金属粉末を焼結して成形されており、潤滑剤105を含浸可能とする。つまり、含浸軸受103は、金属粉末の焼結体にて多数の隙間(空隙)を有する多孔質構造を実現し、その多数の隙間に潤滑剤105を含浸させた状態で使用される。含浸軸受103は、基本的には、毛細管現象によって多数の隙間に潤滑剤105を吸い込み、多数の隙間に潤滑剤105を保持した状態を維持する。本実施形態では一例として、潤滑剤105は合成油又は鉱物油等の潤滑油(オイル)からなる。そのため、含浸軸受103は、潤滑剤105としての油を含浸(含油)することになり、「含油軸受」ともいう。
【0098】
このような構成の含浸軸受103によれば、ロータ101の回転時には、シャフト225が回転することでポンプ作用が生じ、含浸軸受103に含浸されている潤滑剤105が含浸軸受103の表面にしみ出すことになる。さらに、潤滑剤105は、通常、正の熱膨張係数を持つので、シャフト225と含浸軸受103との間の摩擦にて生じる摩擦熱により、潤滑剤105が膨張することでも、含浸軸受103に含浸されている潤滑剤105は含浸軸受103の表面にしみ出す。このように、含浸軸受103に含浸されている潤滑剤105が含浸軸受103の表面にしみ出すことで、
図2Bに示すように、含浸軸受103の表面(内周面を含む)に潤滑剤105(オイル)による液膜(油膜)が形成される。その結果、潤滑剤105が、含浸軸受103とロータ101との間の潤滑作用を実現することになる。
【0099】
一方、ロータ101が停止すると、ポンプ作用が失われ、また摩擦熱も失われるので、潤滑剤105の温度が低下して潤滑剤105が収縮する。このとき、含浸軸受103は、毛細管現象によって多数の隙間に潤滑剤105を吸い込み、多数の隙間に潤滑剤105を保持した状態へと復帰する。このような動作を繰り返すことにより、含浸軸受103は、潤滑剤105の補給なしでも、潤滑作用を維持することが可能である。
【0100】
ただし、含浸軸受103を用いたファンモータ22では、含浸軸受103における潤滑剤105の含浸量が適正量を下回るような場合、例えば、低温環境等の特殊な環境下において、潤滑剤105が過度に収縮する可能性がある。
図2Cは、潤滑剤105が過度に収縮したときの含浸軸受103の状態を模式的に表している。
図2Cの例では、潤滑剤105が過度に収縮することで、含浸軸受103の断面を外周部と、外周部に囲まれる内部とに区分したときに、内部にのみ潤滑剤105が存在する状態にある。言い換えれば、含浸軸受103の表面(内周面を含む)付近には潤滑剤105が存在せず、含浸軸受103の表面から離れた部位(内部)に収縮した潤滑剤105が存在する。このような状態においては、含浸軸受103に含浸されている潤滑剤105が含浸軸受103の表面にしみ出しにくく、含浸軸受103の表面(内周面を含む)に潤滑剤105(オイル)による良好な液膜(油膜)が形成されにくい。
【0101】
したがって、含浸軸受103を用いたファンモータ22においては、このように潤滑剤105が過度に収縮した状態で駆動されると、潤滑剤105による良好な液膜が形成されず、含浸軸受103とシャフト225との間で摩擦が生じることがある。つまり、潤滑剤105を介さずに含浸軸受103とシャフト225とが直接的に接触した状態で、含浸軸受103に対してシャフト225が擦れながら動く「摺動」が生じると、摺動音等の異音が生じたり、振動が生じたり、損失が生じたりする可能性がある。
【0102】
(2.6)ファン制御システムの構成
次に、本実施形態に係るファン制御システム10の構成について、
図1及び
図3を参照して説明する。
【0103】
ファン制御システム10は、ファンモータ22に電気信号を与えることにより、ファンモータ22を制御する。ファン制御システム10は、
図1に示すように、制御部11と、切替部12と、電圧変換回路13と、を有している。本実施形態では、上述したように、ファン制御システム10は、マイクロコントローラを主構成としており、少なくとも制御部11及び切替部12の機能については、マイクロコントローラにて実現される。
【0104】
制御部11は、第1モードと、第2モードと、を含む複数の制御モードの中から制御モードを選択する。第1モードは、第1の回転数でファンモータ22が動作するようにファンモータ22に電気信号を与える制御モードである。第2モードは、第1の回転数より低回転となる第2の回転数でファンモータ22が動作するようにファンモータ22に電気信号を与える制御モードである。制御部11は、ファンモータ22の始動後であって第1モードを選択するまでの期間に第2モードを選択する機能(アイドリング機能)を有している。
【0105】
つまり、制御部11は、複数の制御モードの中から制御モードを選択する機能を有しており、選択中の制御モードに応じた電気信号をファンモータ22に与えるように動作する。例えば、制御部11が第1モードを選択している間は、制御部11は、第1の回転数でファンモータ22が動作するようにファンモータ22に電気信号を与える。一方、制御部11が第2モードを選択している間は、制御部11は、第2の回転数でファンモータ22が動作するようにファンモータ22に電気信号を与える。そして、制御部11は、アイドリング機能により、ファンモータ22の始動後であって第1モードを選択するまでの期間に第2モードを選択することで、ファンモータ22の始動直後の回転数を低く(第2の回転数に)抑えるように、ファンモータ22を制御する。
【0106】
本実施形態では、ファン制御システム10は、ファンモータ22に電気信号としての直流電圧を印加しており、直流電圧の大きさを変化させることで、ファンモータ22の制御を行っている。つまり、ファンモータ22の制御に用いられる電気信号は、ファンモータ22に印加する直流電圧である。そのため、第1モードにおいてファン制御システム10がファンモータ22に電気信号として印加する直流電圧と、第2モードにおいてファン制御システム10がファンモータ22に電気信号として印加する直流電圧とでは、電圧の大きさが異なる。
【0107】
ただし、ファン制御システム10は、ファンモータ22に与える電気信号によってファンモータ22を制御するのであって、ファンモータ22の回転数を直接的に決定するのではない。そして、ファンモータ22は、同じ電気信号(直流電圧)を与えても、所望の回転数に至るまでに時間を要し、さらに、例えば、ファンモータ22の個体差によっても回転数のばらつきが生じ得る。そのため、ファン制御システム10は、各制御モードにおいて、理想的には所望の回転数でファンモータ22が動作するように、決められた電気信号をファンモータ22に与えているに過ぎない。言い換えれば、制御部11は、制御モードごとに決められた電気信号をファンモータ22に与えるように、ファンモータ22に与える電気信号を制御モードによって切り替えることになる。
【0108】
本実施形態では、基本的には、ファンモータ22に印加される直流電圧の大きさに比例した回転数及びトルクでファンモータ22が動作するので、ファンモータ22に印加される直流電圧を、ファンモータ22の回転数に相当する値とみなすことができる。よって、第1モードにおいてファン制御システム10がファンモータ22に印加する直流電圧(第1電圧V1)は、第2モードにおいてファン制御システム10がファンモータ22に印加する直流電圧(第2電圧V2)に比べて高くなる(V1>V2)。
【0109】
要するに、第1モードは、あくまで第1の回転数でファンモータ22が動作するような電気信号をファンモータ22に与える制御モードであって、第1モードにおけるファンモータ22の回転数は必ずしも第1の回転数になるとは限らない。そのため、ファン制御システム10は、第1モードでは、理想的には第1の回転数でファンモータ22が動作するように設定された電気信号をファンモータ22に与えるのであって、このときの電気信号(直流電圧)を「第1電圧V1」と定義する。
【0110】
同様に、第2モードは、あくまで第2の回転数でファンモータ22が動作するような電気信号をファンモータ22に与える制御モードであって、第2モードにおけるファンモータ22の回転数は必ずしも第2の回転数になるとは限らない。そのため、ファン制御システム10は、第2モードでは、理想的には第2の回転数でファンモータ22が動作するように設定された電気信号をファンモータ22に与えるのであって、このときの電気信号(直流電圧)を「第2電圧V2」と定義する。
【0111】
本実施形態では、第1電圧V1はファンモータ22の定格電圧である。そのため、ファンモータ22は、第1電圧V1が印加されたときに、定格の回転数で動作する。一例として、第1電圧V1は6.0〔V〕以上10.0〔V〕以下の範囲で定められ、第2電圧V2は3.0〔V〕以上5.0〔V〕以下の範囲で定められる。そして、第1電圧V1が印加されたときのファンモータ22の回転数は、一例として、7000〔rpm〕以上10000〔rpm〕以下であると仮定する。対して、第2電圧V2が印加されたときのファンモータ22の回転数は、一例として、3500〔rpm〕以上5000〔rpm〕以下であると仮定する。
【0112】
また、制御部11は、アイドリング機能により、ファンモータ22の始動後であって第1モードを選択するまでの期間に、第2モードを選択するので、ある切替タイミングで第2モードから第1モードへの切り替えを行うことになる。つまり、制御部11のアイドリング機能によれば、制御部11は、ファンモータ22の始動後、まずは制御モードとして第2モードを選択し、その後、ある切替タイミングにおいて、選択する制御モードを第2モードから第1モードへと切り替える。ここで、第2モードから第1モードへの切替タイミングは、以下に説明する判定条件を満足することをもって決定される。つまり、制御部11は、第1モードを開始するための判定条件を満たすことをもって、切替タイミングを決定する。ここでは、判定条件を満たしたタイミングが切替タイミングとなる。
【0113】
本実施形態では、判定条件は、時間条件を含んでいる。時間条件は、ファンモータ22の始動後の経過時間に関して定められた条件である。一例として、第2モードの開始時点から所定のアイドリング時間(例えば、数十秒~数分程度)が経過することが、時間条件として定められる。この場合、制御部11は、第2モードを選択してファンモータ22を始動した後、アイドリング時間が経過した時点で、判定条件のうちの時間条件を満たすと判断し、制御モードを第2モードから第1モードに切り替える。要するに、本実施形態では、制御部11がアイドリング機能において第1モードを開始するための判定条件は、ファンモータ22の始動後の経過時間に関する時間条件を含む。
【0114】
また、本実施形態では、判定条件は、温度条件を含んでいる。温度条件は、含浸軸受103の温度に関して定められた条件である。一例として、含浸軸受103の温度が所定のアイドリング温度以上であることが、温度条件として定められる。この場合、制御部11は、第2モードを選択してファンモータ22を始動した後、含浸軸受103の温度がアイドリング温度まで上昇した時点で、判定条件のうちの温度条件を満たすと判断し、制御モードを第2モードから第1モードに切り替える。要するに、本実施形態では、制御部11がアイドリング機能において第1モードを開始するための判定条件は、含浸軸受103の温度に関する温度条件を含む。
【0115】
含浸軸受103の温度については、ファンモータ22の第1温度センサ221にて検知されている。そのため、制御部11は、温度条件については、ファンモータ22の第1温度センサ221の検知結果を受け、この検知結果に基づいて判断する。つまり、制御部11は、第1温度センサ221で検知される温度がアイドリング温度以上であれば、温度条件を満たすと判断する。また、ファンモータ22の始動後の経過時間については、例えば、ファン制御システム10に含まれるタイマ等で計測される。
【0116】
本実施形態では一例として、制御部11は、上述した時間条件と温度条件との論理和をとって判定条件とする。つまり、制御部11は、時間条件と温度条件とのいずれか一方を満たすことをもって、判定条件を満たすものと判断する。
【0117】
図3は、ファンモータ22の始動に際して、ファン制御システム10からファンモータ22に与えられる電気信号(直流電圧)を示すグラフである。
図3では、横軸が時間、縦軸が電圧を示す。すなわち、ファンモータ22に印加される直流電圧は、制御部11のアイドリング機能により、
図3に示すように変化する。
【0118】
要するに、制御部11は、アイドリング機能により、ファンモータ22の始動後であって第1モードを選択するまでの期間に第2モードを選択する。本実施形態では、制御部11は、ファンモータ22への通電を開始してファンモータ22を始動する時点t1において第2モードを選択し、その後、判定条件を満たした時点t2において第2モードから第1モードへと切り替える。つまり、
図3において、時点t1はファンモータ22の始動時であって、時点t2は時間条件と温度条件とのいずれか一方を満たす切替タイミングである。そのため、制御部11は、時点t1から時点t2までの期間T2には第2モードを選択し、時点t2以降の期間T1には第1モードを選択する。
【0119】
したがって、第2モードが選択される期間T2においては、第1の回転数より低回転となる第2の回転数でファンモータ22が動作するように、ファンモータ22には第2電圧V2が印加される。つまり、ファンモータ22の始動直後の期間T2では、ファンモータ22には、定格電圧である第1電圧V1に比較して低く抑えられた第2電圧V2が印加されることで、ファンモータ22の回転数は、定格の回転数に比べて低回転に抑えられる。
【0120】
一方、第1モードが選択される期間T1においては、第2の回転数より高回転となる第1の回転数でファンモータ22が動作するように、ファンモータ22には第1電圧V1が印加される。つまり、判定条件を満たした以降の期間T1では、ファンモータ22には、定格電圧である第1電圧V1が印加されることで、ファンモータ22の回転数は、定格である第1の回転数まで徐々に引き上げられる。
【0121】
ここにおいて、本実施形態では、第2モードでファンモータ22を始動するので、第2電圧V2は、ファンモータ22を始動させるために必要な最低電圧(以下、「最低始動電圧」という)V0以上である。よって、第2モードにおいてファンモータ22に印加される第2電圧V2は、第1電圧V1よりも低く、かつ最低始動電圧V0以上の範囲で設定される。つまり、本実施形態に係るファン制御システム10は、第2モードでは、ファンモータ22の始動に必要な最低トルクである始動トルク以上のトルクでファンモータ22を動作させる。
図3の例では、第2電圧V2は最低始動電圧V0よりも高く設定されている。
【0122】
切替部12は、制御部11のアイドリング機能(第2モードを選択する機能)の有効及び無効を切り替える。切替部12は、少なくともファンモータ22の周囲温度に関する環境情報に基づいて、アイドリング機能を無効にする。すなわち、本実施形態では、制御部11のアイドリング機能は、常に有効ではなく、切替部12にて無効化することが可能である。アイドリング機能が有効であれば、制御部11は、ファンモータ22の始動後であって第1モードを選択するまでの期間に第2モードを選択する。一方、アイドリング機能が無効であれば、制御部11は、ファンモータ22の始動時から第1モードを選択する。つまり、切替部12がアイドリング機能を無効にしている場合、制御部11は、第2モードを選択することなく、ファンモータ22の始動直後から第1モードを選択する。
【0123】
特に、切替部12は、ファンモータ22の周囲温度に関する環境情報に基づいてアイドリング機能を無効にするので、ファンモータ22の周囲温度が特定の条件を満たす場合にのみ、アイドリング機能を有効にして第2モードを選択させることが可能である。本実施形態では一例として、アイドリング機能を有効にする特定の条件は、ファンモータ22の周囲温度が閾値温度Tth1(一例として15℃)以下であることとする。そのため、切替部12は、ファンモータ22の始動に際して、ファンモータ22の周囲温度が閾値温度Tth1より高ければ、制御部11のアイドリング機能を無効にして、制御部11には、ファンモータ22の始動直後から第1モードを選択させる。
【0124】
ファンモータ22の周囲温度については、第2温度センサ28にて検知されている。そのため、切替部12は、アイドリング機能の有効/無効については、第2温度センサ28の検知結果を受け、この検知結果に基づいて判断する。つまり、切替部12は、ファンモータ22の始動に際して、第2温度センサ28で検知される温度が閾値温度Tth1以下であれば、制御部11のアイドリング機能を有効にする。
【0125】
電圧変換回路13は、ファンモータ22に印加する電気信号としての直流電圧の変換を行う。本実施形態に係るファン制御システム10は、第1モードでは第1電圧V1を、第2モードでは第2電圧V2を、それぞれファンモータ22に印加する。したがって、電圧変換回路13では、ファンモータ22に印加する直流電圧として、少なくとも第1電圧V1と第2電圧V2との2段階の電圧を出力可能となるように、電圧変換を行う。
【0126】
本実施形態では一例として、電圧変換回路13は、シリーズレギュレータ等のドロッパ方式の電源回路にて実現される。具体的には、電圧変換回路13は、制御部11からの制御信号に従って、ファンモータ22に印加する直流電圧を切り替える。ここで、電圧変換回路13は、制御部11が第1モードを選択しているときには、ファンモータ22に直流電圧として第1電圧V1を印加し、制御部11が第2モードを選択しているときには、ファンモータ22に直流電圧として第2電圧V2を印加する。上述したように第2電圧V2は第1電圧V1よりも低いので、少なくとも第2電圧V2の印加時には、電圧変換回路13は直流電圧の降圧を行う。
【0127】
(2.7)ファン制御システムの動作
次に、本実施形態に係るファン制御システム10の動作について、
図7のフローチャートを参照して説明する。
【0128】
ファン制御システム10は、ファン制御システム10への通電が行われなければ(S1:No)、動作を開始せず、ファン制御システム10への通電が行われることで(S1:Yes)、動作を開始する。
【0129】
ファン制御システム10への通電が開始すると(S1:Yes)、ファン制御システム10は、まず、ファンモータ22の周囲温度を取得する(S2)。このとき、ファン制御システム10は、第2温度センサ28からファンモータ22の周囲温度の検知結果を取得する。そして、ファン制御システム10は、切替部12にて、ファンモータ22の周囲温度に関する環境情報に基づいて、制御部11のアイドリング機能を有効にするか無効にするかを判断する(S3)。
【0130】
ファンモータ22の周囲温度が閾値温度Tth1以下であれば(S3:Yes)、切替部12は、制御部11のアイドリング機能を有効にする。そのため、周囲温度が閾値温度Tth1以下であれば(S3:Yes)、ファン制御システム10は、制御部11にて、第2モードを選択し(S4)、ファンモータ22に電気信号(直流電圧)として第2電圧V2を印加する(S5)。そして、ファン制御システム10は、判定条件を満たすか否かを制御部11にて判定し(S6)、判定条件を満たさなければ(S6:No)、第2電圧V2の印加(S5)を継続する。
【0131】
本実施形態では、判定条件は時間条件と温度条件とを含んでいる。そのため、例えば、第2モードを選択してファンモータ22を始動した時点(
図3の時点t1)から、所定のアイドリング時間が経過すると、制御部11は、時間条件により判定条件を満たすと判断する(S6:Yes)。あるいは、例えば、第2モードを選択してファンモータ22を始動した時点(
図3の時点t1)以降、含浸軸受103の温度が所定のアイドリング温度まで上昇すると、制御部11は、温度条件により判定条件を満たすと判断する(S6:Yes)。
【0132】
判定条件を満たすと(S6:Yes)、ファン制御システム10は、制御部11にて、第1モードを選択し(S7)、ファンモータ22に電気信号(直流電圧)として第1電圧V1を印加する(S8)。そして、ファン制御システム10は、ファン制御システム10への通電が終了しなければ(S9:No)、第1電圧V1の印加(S8)を継続する。
【0133】
ファン制御システム10への通電が終了すると(S9:Yes)、ファン制御システム10は、ファンモータ22への直流電圧の印加を含む一連の動作を終了する。
【0134】
図7のフローチャートは、ファン制御システム10の動作の一例に過ぎず、処理を適宜省略又は追加してもよいし、処理の順番が適宜変更されていてもよい。
【0135】
本実施形態に係るファン制御方法は、ファン制御システム10によって具現化される。つまり、上述したファン制御システム10の動作は、ファン制御方法に相当する。そのため、本実施形態に係るファン制御方法は、羽根104を含むロータ101、ステータ102、及び潤滑剤105を含浸した含浸軸受103を有し、含浸軸受103にてロータ101を回転可能に保持するファンモータ22を制御する。このファン制御方法は、第1モードと、第2モードと、を含む複数の制御モードの中から制御モードを選択可能である。第1モードは、第1の回転数でファンモータ22が動作するようにファンモータ22に電気信号(
図3の例では第1電圧V1)を与える制御モードである。第2モードは、第1の回転数より低回転となる第2の回転数でファンモータ22が動作するようにファンモータ22に電気信号(
図3の例では第2電圧V2)を与える制御モードである。ファン制御方法は、ファンモータ22の始動後において、第1モードを選択するまでの期間(
図3の例では期間T2)に第2モードを選択するアイドリング処理(
図7の処理「S4」~処理「S8」)を有する。
【0136】
また、本実施形態では、上記ファン制御方法を、マイクロコントローラ等においてプログラムにて具現化可能である。つまり、本実施形態に係るプログラムは、上記ファン制御方法を、1以上のプロセッサにて具現化するためのプログラムである。
【0137】
(3)作用
次に、本実施形態に係るファン制御システム10の作用について説明する。
【0138】
まず、常温(例えば25℃)の雰囲気においては、ファンモータ22の始動に際して、含浸軸受103の表面(内周面を含む)に潤滑剤105(オイル)による液膜(油膜)が形成される(
図2B参照)。したがって、潤滑剤105が、含浸軸受103とロータ101との間の潤滑作用を実現するため、ファンモータ22が始動直後から、第1の回転数で動作するように第1モードで制御されても、特に問題は生じない。本実施形態では、ファンモータ22の始動に際して、ファンモータ22の周囲温度が閾値温度Tth1より高ければ、切替部12がアイドリング機能を無効にする。そのため、常温(例えば25℃)の雰囲気下においては、ファン制御システム10は、ファンモータ22が始動直後から、第1の回転数で動作するように第1モードで制御する。
【0139】
一方、含浸軸受103における潤滑剤105の含浸量が適正量を下回るような場合、例えば、低温環境等の特殊な環境下において、含浸軸受103の表面に潤滑剤105による良好な液膜が形成されにくい(
図2C参照)。このような潤滑剤105が過度に収縮する状況においては、本実施形態に係るファン制御システム10は、切替部12が制御部11のアイドリング機能を有効にする。
【0140】
そして、制御部11のアイドリング機能によれば、ファンモータ22の始動後であって第1モードを選択するまでの期間に、第2モードが選択される。そのため、第1の回転数でファンモータ22が動作する前に、第1の回転数より低回転となる第2の回転数でファンモータ22が動作する。よって、ファンモータ22の始動直後には、ファンモータ22の回転数を低く抑えた状態でファンモータ22を動作させることができ、その間に、シャフト225と含浸軸受103との間の摩擦にて生じる摩擦熱等により、含浸軸受103が温められる。含浸軸受103が温まると、潤滑剤105が膨張して潤滑剤105の過度の収縮が緩和されるため、含浸軸受103に含浸されている潤滑剤105は含浸軸受103の表面にしみ出し、含浸軸受103の表面に潤滑剤105による良好な液膜が形成される。
【0141】
ここで、第2モードではファンモータ22の回転数は低く抑えられているため、潤滑剤105が過度に収縮した状態であっても、含浸軸受103に対してシャフト225が擦れながら動く「摺動」による不具合は生じにくい。つまり、第2モードでは、摺動が生じたとしても、ファンモータ22の回転数は第1の回転数より低回転に抑えられているため、摺動音等の異音が生じたり、振動が生じたり、損失が生じたりする不具合は生じにくい。結果的に、本実施形態に係るファン制御システム10によれば、潤滑剤105の収縮に起因した異音等の不具合が発生しにくくなる。
【0142】
さらに、本実施形態では、ファンモータ22は、有効成分発生システム1において、有効成分を放出するための気流を発生する送風部として用いられているところ、第2モードでは、有効成分の発生量も抑えられている。つまり、ファンモータ22は、冷却等の用途ではなく、有効成分を放出するための送風部として有効成分発生システム1に用いられるが、有効成分発生システム1にあっても、そもそも起動直後は有効成分が十分に発生しない。特に、本実施形態では、有効成分発生システム1の液体供給部24は、放電電極211に結露水を発生させることで液体を供給するので、起動後、雰囲気等によっては数十秒~数分程度の時間が経過するまでは、十分な量の有効成分は発生しない。ファン制御システム10が第2モードでファンモータ22を制御する期間は、このように有効成分の発生量が抑制された有効成分発生システム1の起動直後の期間と少なくとも一部が重複する。
【0143】
要するに、本実施形態では、ファンモータ22は、有効成分を発生する放電部21を含む有効成分発生システム1において、有効成分を放出するための気流を発生する送風部として用いられる。放電部21での有効成分の単位時間当たりの発生量は、アイドリング機能において第2モードの選択中には第1モードの選択中よりも少ない。したがって、本実施形態に係るファン制御システム10によれば、有効成分の発生量が少ない期間を利用して、ファンモータ22の回転数を低く抑えつつ、潤滑剤105の収縮に起因した異音等の不具合を発生しにくくすることができる。
【0144】
(4)変形例
実施形態1は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態1は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、本開示で参照する図面は、いずれも模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。以下、実施形態1の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0145】
実施形態1に係るファン制御システム10と同様の機能は、ファン制御方法、(コンピュータ)プログラム、又はプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化されてもよい。
【0146】
第2モードにおいてファンモータ22に印加される直流電圧(第2電圧V2)は、第1電圧V1よりも低く、かつ最低始動電圧V0以上の範囲で設定されていればよく、最低始動電圧V0より高い電圧に限らない。ただし、第2モードでファンモータ22に印加される直流電圧は、潤滑剤105が過度に収縮した状態であっても、摺動音等の異音、振動又は損失のような不具合が生じにくい回転数に、第2モードでのファンモータ22の回転数が抑制されるように設定される。例えば、第2電圧V2は、最低始動電圧V0と同値であってもよい。
【0147】
さらに、第2モードにおいてファンモータ22に印加される直流電圧は、制御部11が第2モードを選択している期間において、一定値(固定値)ではなく変化してもよい。例えば、
図8A及び
図8Bに示すように、直流電圧は、第2モードが選択されている期間T2において変化してもよい。
図8A及び
図8Bは、ファンモータ22の始動に際して、ファン制御システム10からファンモータ22に与えられる電気信号(直流電圧)を示すグラフである。
図8A及び
図8Bでは、横軸が時間、縦軸が電圧を示す。
【0148】
すなわち、
図8Aに示す変形例では、制御部11のアイドリング機能により、第2モードにおいてファンモータ22に印加される直流電圧は、ファンモータ22が始動する時点t1での電圧V2から、時間経過に伴って連続的に上昇する。そして、判定条件を満たした時点t2において、第2モードから第1モードへと切り替わるため、ファンモータ22に印加される直流電圧は、第1電圧V1に切り替わる。
【0149】
図8Bに示す変形例では、制御部11のアイドリング機能により、第2モードにおいてファンモータ22に印加される直流電圧は、ファンモータ22が始動する時点t1での電圧V2から、時間経過に伴って段階的(離散的)に上昇する。つまり、判定条件を満たした時点t2に至るまでの時点t3において、ファンモータ22に印加される直流電圧は、電圧V2から電圧V4へと非連続で切り替わる。そして、判定条件を満たした時点t2において、第2モードから第1モードへと切り替わるため、ファンモータ22に印加される直流電圧は、第1電圧V1に切り替わる。
【0150】
また、第1モードにおいてファンモータ22に印加される第1電圧V1は、第2電圧V2よりも高い範囲で設定されていればよく、ファンモータ22の定格電圧に限らない。
【0151】
本開示におけるファン制御システム10は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示におけるファン制御システム10としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0152】
また、ファン制御システム10の少なくとも一部の機能が、1つの筐体内に集約されていることはファン制御システム10に必須の構成ではない。ファン制御システム10の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。反対に、ファン制御システム10の全ての機能が、1つの筐体内に集約されていてもよい。
【0153】
有効成分発生システム1の用途は、車載用に限らず、例えば、住宅又はオフィス等で使用される冷蔵庫、洗濯機、ドライヤー、空気調和機、扇風機、空気清浄機、加湿器又は美顔器等に有効成分発生システム1が用いられてもよい。
【0154】
また、ファンモータ22がDC(直流)ブラシレスモータを主構成とすることは必須の構成ではなく、ファンモータ22は、例えば、ブラシ付きのDC(直流)モータ、又は、交流電圧が印加されることによって動作するAC(交流)モータ等であってもよい。ファンモータ22がACモータを主構成とする場合には、ファン制御システム10がファンモータ22に与える電気信号は、直流電圧ではなく交流電圧となる。そのため、ファン制御システム10は、電気信号としての交流電圧の振幅、周波数又は位相を変化させることで、ファンモータ22を制御してもよい。
【0155】
また、ファン制御システム10は、ファンモータ22を駆動するための電力とは別に、ファンモータ22に電気信号を与えてもよい。この場合、電気信号は、例えば、搬送波の振幅、周波数又は位相等を変化させる(変調する)ことで情報を伝送する通信用の信号であって、有線通信又は無線通信の適宜の通信手段によって、ファン制御システム10からファンモータ22に送信される。
【0156】
また、制御部11がアイドリング機能において第1モードを開始するための判定条件は、時間条件と温度条件との両方を含んでいなくてもよい。つまり、判定条件は、時間条件のみ、又は温度条件のみを含んでいてもよい。判定条件が時間条件のみを含む場合、含浸軸受103の温度によらず、時間条件を満たすことをもって、制御部11は、第1モードを開始する。判定条件が温度条件のみを含む場合、ファンモータ22の始動後の経過時間によらず、温度条件を満たすことをもって、制御部11は、第1モードを開始する。
【0157】
また、制御部11は、時間条件と温度条件との論理積をとって判定条件としてもよい。この場合、制御部11は、時間条件と温度条件との両方を満たすことをもって、判定条件を満たすものと判断する。
【0158】
また、第1温度センサ221は、ファンシステム100に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。第2温度センサ28についても同様に、有効成分発生システム1に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【0159】
また、第1温度センサ221は、シャフト225の温度、又は円筒部224の内部空間の温度を検知する構成に限らない。例えば、第1温度センサ221は、ハウジング223内に収容され、ハウジング223内の温度を検知することで、含浸軸受103の温度を間接的に検知してもよい。あるいは、第1温度センサ221は、例えば、含浸軸受103の温度を直接的に検知してもよい。
【0160】
また、第2温度センサ28は、回路基板230の温度、又はケース3の内部空間の温度を検知する構成に限らない。例えば、第2温度センサ28は、有効成分発生システム1とは別に設けられ、ケース3の外部の温度を検知することで、ファンモータ22の周囲温度を間接的に検知してもよい。あるいは、第2温度センサ28は、例えば、ファンモータ22に取り付けられることにより、ファンモータ22の周囲温度を直接的に検知してもよい。
【0161】
また、1つの温度センサが、第1温度センサ221と第2温度センサ28とで共用されていてもよい。すなわち、例えば、回路基板230に実装された1つの温度センサにて、含浸軸受103の温度とファンモータ22の周囲温度との両方を検知することにより、第1温度センサ221と第2温度センサ28とを、1つの温度センサで代用してもよい。
【0162】
また、第2モードから第1モードへの切替タイミングは、判定条件を満たしたタイミングに限らず、例えば、判定条件を満たしたタイミングから一定時間経過後であってもよい。この場合、判定条件を満たしてから一定時間経過後に第1モードが開始することになり、言い換えれば、判定条件を満たしてから実際に第1モードが開始するまでに、タイムラグを付与することができる。
【0163】
また、電圧変換回路13は、シリーズレギュレータ等のドロッパ方式の電源回路に限らず、例えば、降圧チョッパ回路等のスイッチング方式の電源回路にて実現されてもよい。
【0164】
また、放電電極211は及び対向電極212は、チタン合金(Ti合金)に限らず、一例として、銅タングステン合金(Cu-W合金)等の銅合金であってもよい。また、放電電極211は、先細り形状に限らず、例えば、先端が膨らんだ形状であってもよい。
【0165】
また、駆動回路23から放電部21に印加される高電圧は、6.0kV程度に限らず、例えば、放電電極211及び対向電極212の形状、又は放電電極211及び対向電極212間の距離等に応じて適宜設定される。
【0166】
また、内部部品2の固定構造は、実施形態1で説明した構造に限らない。例えば、固定部61への回路基板230の固定は、ねじ71及びナット72等の締結具を用いて実現される構成に限らず、例えば、かしめ接合、接着又はスナップフィット等により実現されてもよい。接着には、接着剤又は粘着テープ等を用いた接合を含む。
【0167】
また、液体供給部24は、有効成分発生システム1に必須の構成ではなく、適宜省略されていてもよい。この場合、放電部21は、放電電極211、及び対向電極212間に生じる放電(全路破壊放電又は部分破壊放電)によって、マイナスイオン等の有効成分を生成する。
【0168】
また、液体供給部24は、実施形態1のように放電電極211を冷却して放電電極211に結露水を発生させる構成に限らない。液体供給部24は、例えば、毛細管現象、又はポンプ等の供給機構を用いて、タンクから放電電極211に液体を供給する構成であってもよい。さらに、液体は、水(結露水を含む)に限らず、水以外の液体であってもよい。
【0169】
また、駆動回路23は、放電電極211を正極、対向電極212を負極(グランド)として、放電電極211と対向電極212との間に高電圧を印加するように構成されていてもよい。さらに、放電電極211と対向電極212との間に電位差(電圧)が生じればよいので、駆動回路23は、高電位側の電極(正極)をグランドとし、低電位側の電極(負極)をマイナス電位とすることで、放電部21にマイナスの電圧を印加してもよい。
【0170】
また、二値間の比較において、「以上」としているところは、二値が等しい場合、及び二値の一方が他方を超えている場合との両方を含む。ただし、これに限らず、ここでいう「以上」は、二値の一方が他方を超えている場合のみを含む「より大きい」と同義であってもよい。つまり、二値が等しい場合を含むか否かは、閾値等の設定次第で任意に変更できるので、「以上」か「より大きい」かに技術上の差異はない。同様に、「未満」においても「以下」と同義であってもよい。
【0171】
(実施形態2)
本実施形態に係るファン制御システム10は、制御部11が選択可能な複数の制御モードが第3モードを含む点で、実施形態1に係るファン制御システム10と相違する。以下、実施形態1と同様の構成については共通の符号を付して適宜説明を省略する。
【0172】
第3モードは、第2の回転数より高回転となる第3の回転数で、かつファンモータ22の始動に必要な最低トルクである始動トルク以上のトルクでファンモータ22が動作するように、ファンモータ22に電気信号を与える制御モードである。制御部11は、ファンモータ22の始動後であって第2モードを選択するまでの期間に第3モードを選択する機能(以下、「始動機能」という)を有する。要するに、制御部11は、始動機能により、ファンモータ22の始動後であって第1モードを選択するまでの期間に、第3モード、第2モードを、この順で選択するので、ある切替タイミングで第3モードから第2モードへの切替えを行うことになる。つまり、制御部11の始動機能によれば、制御部11は、ファンモータ22の始動後、まずは制御モードとして第3モードを選択し、その後、ある切替タイミングにおいて、選択する制御モードを第3モードから第2モードへと切り替える。ここで、第3モードから第2モードへの切替タイミングは、一例として、第3モードの開始時点から所定の始動時間(例えば、数十ミリ秒~数秒程度)が経過したタイミングとする。
【0173】
第3モードは、あくまで第3の回転数でファンモータ22が動作するような電気信号をファンモータ22に与える制御モードであって、第3モードにおけるファンモータ22の回転数は必ずしも第3の回転数になるとは限らない。そのため、ファン制御システム10は、第3モードでは、理想的には第3の回転数でファンモータ22が動作するように設定された電気信号をファンモータ22に与えるのであって、このときの電気信号(直流電圧)を「第3電圧V3」と定義する。
【0174】
本実施形態では、第3電圧V3は、第2モードでファンモータ22に印加される第2電圧V2よりも高く、かつ第1モードでファンモータ22に印加される第1電圧V1よりも低い電圧である。
【0175】
すなわち、本実施形態に係るファン制御システム10によれば、ファンモータ22に印加される直流電圧は、
図9に示すように変化する。
図9は、ファンモータ22の始動に際して、ファン制御システム10からファンモータ22に与えられる電気信号(直流電圧)を示すグラフである。
図9では、横軸が時間、縦軸が電圧を示す。
【0176】
要するに、制御部11は、始動機能により、ファンモータ22の始動時には、まず第3モードを選択する。本実施形態では、制御部11は、ファンモータ22への通電を開始してファンモータ22を始動する時点t0において第3モードを選択し、その後、始動時間が経過した時点t1において第3モードから第2モードへと切り替える。つまり、
図9において、時点t0はファンモータ22の始動時であって、時点t1は時点t0から始動時間が経過したタイミングである。そのため、制御部11は、時点t0から時点t1までの期間T3には第3モードを選択し、時点t1以降の期間T2には第2モードを選択する。
【0177】
したがって、第3モードが選択される期間T1においては、第2の回転数より高回転となる第3の回転数でファンモータ22が始動するように、ファンモータ22には第3電圧V3が印加される。つまり、ファンモータ22の始動のための期間T3では、ファンモータ22には、第2電圧V2よりも高い第3電圧V3が印加されることで、ファンモータ22の始動が容易になる。
【0178】
一方、第2モードが選択される期間T2においては、第3の回転数より低回転となる第2の回転数でファンモータ22が動作するように、ファンモータ22には第2電圧V2が印加される。つまり、ファンモータ22が始動した後の期間T2では、ファンモータ22には、第3電圧V3よりも低い第2電圧V2が印加されることで、ファンモータ22の回転数は、始動時の回転数に比べて低回転に抑えられる。その後の動作は、実施形態1に係るファン制御システム10と同様である。
【0179】
ここにおいて、本実施形態では、第3モードでファンモータ22を始動するので、第3電圧V3は、ファンモータ22を始動させるために必要な最低始動電圧V0以上である。一方、第2モードでは、既に始動したファンモータ22が停止しないように、ファンモータ22の回転を維持すればよいので、第2電圧V2は、始動済みのファンモータ22の回転を維持するために必要な最低電圧(以下、「最低維持電圧」という)V5以上である。つまり、最低維持電圧V5は、最低始動電圧V0よりも低い電圧である。始動済みのファンモータ22に印加される直流電圧が、最低維持電圧V5以上であればファンモータ22は回転を継続し、最低維持電圧V5未満になるとファンモータ22は停止する。
【0180】
本実施形態では、ファンモータ22の始動は第3モードで行われるので、第2電圧V2は、最低始動電圧V0よりも低く、かつ最低維持電圧V5以上の範囲で設定される。言い換えれば、第2モードでは、始動トルク未満であって、かつ始動後のファンモータ22におけるロータ101の回転の維持に必要な最低トルクである維持トルク以上のトルクでファンモータを動作させることになる。
図9の例では、第2電圧V2は、最低始動電圧V0よりも低く、かつ最低維持電圧V5よりも高く設定されている。
【0181】
実施形態2の変形例として、
図10に示すように、第3モードでファンモータ22に印加される第3電圧は、第1モードでファンモータ22に印加される第1電圧V1と同値であってもよい。つまり、本変形例では、第1モードと第3モードとは、ファンモータ22に与える電気信号が同一である。この場合、ファンモータ22の始動に際して、ファンモータ22に印加される直流電圧は、第3モードでは定格電圧である第1電圧V1となり、第2モードで第2電圧V2に低下した後、第1モードで第1電圧V1に復帰する。本変形例では、ファンモータ22に印加される直流電圧は、2段階の切替えができればよい。
【0182】
また、実施形態2の他の変形例として、第3モードにおいてファンモータ22に印加される直流電圧は、制御部11が第3モードを選択している期間において、一定値(固定値)ではなく変化してもよい。
【0183】
また、実施形態2において、第2モードにおいてファンモータ22に印加される直流電圧(第2電圧V2)は、最低始動電圧V0以上であってもよい。
【0184】
実施形態2で説明した種々の構成(変形例を含む)は、実施形態1で説明した種々の構成(変形例を含む)と適宜組み合わせて採用可能である。
【0185】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様に係るファン制御システム(10)は、ファンモータ(22)を制御するファン制御システム(10)である。ファンモータ(22)は、羽根(104)を含むロータ(101)、ステータ(102)、及び潤滑剤(105)を含浸した含浸軸受(103)を有し、含浸軸受(103)にてロータ(101)を回転可能に保持する。ファン制御システム(10)は、第1モードと、第2モードと、を含む複数の制御モードの中から制御モードを選択する制御部(11)を備える。第1モードは、第1の回転数でファンモータ(22)が動作するようにファンモータ(22)に電気信号を与える制御モードである。第2モードは、第1の回転数より低回転となる第2の回転数でファンモータ(22)が動作するようにファンモータ(22)に電気信号を与える制御モードである。制御部(11)は、ファンモータ(22)の始動後であって第1モードを選択するまでの期間に第2モードを選択する機能を有する。
【0186】
この態様によれば、制御部(11)の機能により、ファンモータ(22)の始動後であって第1モードを選択するまでの期間に第2モードが選択される。そのため、第1の回転数でファンモータ(22)が動作する前に、第1の回転数より低回転となる第2の回転数でファンモータ(22)が動作する。したがって、例えば、低温環境等の特殊な環境下においても、第2の回転数でファンモータ(22)が動作する間に含浸軸受(103)が温められることになり、潤滑剤(105)の収縮に起因した異音等の不具合が発生しにくくなる。
【0187】
第2の態様に係るファン制御システム(10)では、第1の態様において、複数の制御モードは、第3モードを含む。第3モードは、第2の回転数より高回転となる第3の回転数で、かつファンモータ(22)の始動に必要な最低トルクである始動トルク以上のトルクでファンモータ(22)が動作するように、ファンモータ(22)に電気信号を与える制御モードである。制御部(11)は、ファンモータ(22)の始動後であって第2モードを選択するまでの期間に第3モードを選択する機能を更に有する。
【0188】
この態様によれば、ファンモータ(22)の始動が容易になる。
【0189】
第3の態様に係るファン制御システム(10)では、第2の態様において、第2モードでは、始動トルク未満であって、かつ始動後のファンモータ(22)におけるロータ(101)の回転の維持に必要な最低トルクである維持トルク以上のトルクでファンモータ(22)を動作させる。
【0190】
この態様によれば、第2モードでは、ファンモータ(22)のトルクを始動トルク未満に落とすことができ、潤滑剤(105)の収縮に起因した異音等の不具合がより発生しにくくなる。
【0191】
第4の態様に係るファン制御システム(10)では、第2又は3の態様において、第1モードと第3モードとは、ファンモータ(22)に与える電気信号が同一である。
【0192】
この態様によれば、第1モードと第3モードとで異なる電気信号を用いる場合に比べて、回路構成を簡略化できる。
【0193】
第5の態様に係るファン制御システム(10)では、第1又は2の態様において、第2モードでは、ファンモータ(22)の始動に必要な最低トルクである始動トルク以上のトルクでファンモータ(22)を動作させる。
【0194】
この態様によれば、第2モードであっても、ファンモータ(22)を始動しやすくなる。
【0195】
第6の態様に係るファン制御システム(10)では、第1~5のいずれかの態様において、制御部(11)が第1モードを開始するための判定条件は、ファンモータ(22)の始動後の経過時間に関する時間条件を含む。
【0196】
この態様によれば、第2モードから第1モードへの切替えを、タイマ等の簡単な構成で実現できる。
【0197】
第7の態様に係るファン制御システム(10)では、第1~6のいずれかの態様において、制御部(11)が第1モードを開始するための判定条件は、含浸軸受(103)の温度に関する温度条件を含む。
【0198】
この態様によれば、第2モードから第1モードへの切替えを、一定時間ではなく含浸軸受(103)の温度に応じて実現でき、外乱に強くなる。
【0199】
第8の態様に係るファン制御システム(10)は、第1~7のいずれかの態様において、切替部(12)を更に備える。切替部(12)は、制御部(11)の第2モードを選択する機能の有効及び無効を切り替える。切替部(12)は、少なくともファンモータ(22)の周囲温度に関する環境情報に基づいて、第2モードを選択する機能を無効にする。
【0200】
この態様によれば、例えば、ファンモータ(22)の周囲温度が十分に高い場合等の第2モードを選択する機能が不要な状況で第2モードを選択する機能を無効にして、ファンモータ(22)の始動性を向上させることができる。
【0201】
第9の態様に係るファン制御システム(10)では、第1~8のいずれかの態様において、電気信号は、ファンモータ(22)に印加する直流電圧である。
【0202】
この態様によれば、ファンモータ(22)の制御が簡単になる。
【0203】
第10の態様に係るファン制御システム(10)では、第1~9のいずれかの態様において、ファンモータ(22)は、有効成分を発生する放電部を含む有効成分発生システムにおいて、有効成分を放出するための気流を発生する送風部として用いられる。放電部での有効成分の単位時間当たりの発生量は、第2モードの選択中には第1モードの選択中よりも少ない。
【0204】
この態様によれば、ファンモータ(22)の始動の際に第2モードでファンモータ(22)の回転数を低く抑えながらも、有効成分の発生への影響を小さく抑えることができる。
【0205】
第11の態様に係るファンシステムは、第1~10のいずれかの態様に係るファン制御システム(10)と、ファンモータ(22)と、を備える。
【0206】
この態様によれば、例えば、低温環境等の特殊な環境下においても、第2の回転数でファンモータ(22)が動作する間に含浸軸受(103)が温められることになり、潤滑剤(105)の収縮に起因した異音等の不具合が発生しにくくなる。
【0207】
第12の態様に係る有効成分発生システムは、第11の態様に係るファンシステムと、有効成分を発生する放電部と、を備える。ファンモータ(22)は、有効成分を放出するための気流を発生する。
【0208】
この態様によれば、例えば、低温環境等の特殊な環境下においても、第2の回転数でファンモータ(22)が動作する間に含浸軸受(103)が温められることになり、潤滑剤(105)の収縮に起因した異音等の不具合が発生しにくくなる。
【0209】
第13の態様に係るファン制御方法は、ファンモータ(22)を制御するファン制御方法であって、第1モードと、第2モードと、を含む複数の制御モードの中から制御モードを選択可能である。ファンモータ(22)は、羽根(104)を含むロータ(101)、ステータ(102)、及び潤滑剤(105)を含浸した含浸軸受(103)を有し、含浸軸受(103)にてロータ(101)を回転可能に保持する。第1モードは、第1の回転数でファンモータ(22)が動作するようにファンモータ(22)に電気信号を与える制御モードである。第2モードは、第1の回転数より低回転となる第2の回転数でファンモータ(22)が動作するようにファンモータ(22)に電気信号を与える制御モードである。ファン制御方法は、ファンモータ(22)の始動後において、第1モードを選択するまでの期間に第2モードを選択する処理を有する。
【0210】
この態様によれば、例えば、低温環境等の特殊な環境下においても、第2の回転数でファンモータ(22)が動作する間に含浸軸受(103)が温められることになり、潤滑剤(105)の収縮に起因した異音等の不具合が発生しにくくなる。
【0211】
第14の態様に係るプログラムは、第13の態様に係るファン制御方法を、1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。
【0212】
この態様によれば、例えば、低温環境等の特殊な環境下においても、第2の回転数でファンモータ(22)が動作する間に含浸軸受(103)が温められることになり、潤滑剤(105)の収縮に起因した異音等の不具合が発生しにくくなる。
【0213】
第2~10の態様に係る構成については、ファン制御システム(10)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0214】
10 ファン制御システム
11 制御部
12 切替部
22 ファンモータ
101 ロータ
102 ステータ
103 含浸軸受
104 羽根
105 潤滑剤