(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】キャップ
(51)【国際特許分類】
B65D 47/08 20060101AFI20240119BHJP
【FI】
B65D47/08 100
(21)【出願番号】P 2020015243
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000220206
【氏名又は名称】東京ライト工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】植平 庄治
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 元
(72)【発明者】
【氏名】市川 悟
【審査官】田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-198297(JP,A)
【文献】特開2000-302152(JP,A)
【文献】特開2016-190660(JP,A)
【文献】特開2019-038597(JP,A)
【文献】国際公開第2013/021802(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第3992107(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器口部に装着されるキャップ本体と、ヒンジを介して前記キャップ本体にヒンジ結合された蓋体とを備えたキャップであって、
前記キャップ本体は、
前記容器口部の外壁面に嵌合される胴部と、
前記容器口部の内壁面に嵌合される円筒状主嵌合壁部と、
前記容器口部と連通する吐出通路を有する円筒状案内部と、を備え
前記蓋体は、被冠時に前記胴部と前記円筒状主嵌合壁部との間のキャップ本体に当接するように、前記蓋体の天面部の下壁面から垂設される円筒状下降規制部を有し、
前記キャップ本体の前記胴部の、前記ヒンジとの結合部を除く外周上縁
部は、前記胴部の径方向外側下方に傾斜する傾斜面
であり、
前記蓋体は、被冠時に前記傾斜面に非接触である非接触下面を備えることを特徴とするキャップ。
【請求項2】
前記蓋体の、前記キャップ本体への被冠時、前記非接触下面と前記傾斜面との間に隙間が形成され、該隙間の寸法が0.3mm以上1.0mm以下であることを特徴とする請求項1に記載のキャップ。
【請求項3】
前記傾斜面の形成範囲は、前記キャップ本体の中心軸を中心とする中心角度250°以上の範囲に形成され、前記非接触下面の形成範囲は、前記蓋体の中心軸を中心とする中心角度250°以上の範囲に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の容器口部に装着されるキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、容器の容器口部に装着されるキャップとして、容器口部に装着されるキャップ本体と、ヒンジを介してキャップ本体に連結される蓋体とを備えるキャップが知られている。そのようなキャップにおいて、例えば、特許文献1には、キャップ本体に蓋体を被冠させた際、キャップ本体の筒状上端面に垂れた付着する内容物の飛散を防ぐキャップが開示されている。このキャップは、キャップ本体の上面に、吐出口から垂れた内容物を収容する収容溝を形成し、収容溝に内容物を溜めることで、キャップ本体に蓋体を被冠させた際の内容物の飛散を防ぐように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された発明では、内容物が収容溝に充満した状態で、キャップ本体に蓋体を被冠させたとき、収容溝に溜まった内容物が飛散する虞がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、蓋体を閉じた際、キャップ本体の周縁上に残存する内容物の飛散を防ぐことができるキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明は、容器口部に装着されるキャップ本体と、ヒンジを介して前記キャップ本体にヒンジ結合された蓋体とを備えたキャップであって、前記キャップ本体は、前記容器口部の外壁面に嵌合される胴部と、前記容器口部の内壁面に嵌合される円筒状主嵌合壁部と、前記容器口部と連通する吐出通路を有する円筒状案内部と、を備え、前記蓋体は、被冠時に前記胴部と前記円筒状主嵌合壁部との間のキャップ本体に当接するように、前記蓋体の天面部の下壁面から垂設される円筒状下降規制部を有し、前記キャップ本体の前記胴部の、前記ヒンジとの結合部を除く外周上縁部は、前記胴部の径方向外側下方に傾斜する傾斜面であり、前記蓋体は、被冠時に前記傾斜面に非接触である非接触下面を備えることを特徴とするものである。
【0007】
請求項1に記載の発明では、蓋体の下面は、被冠時に傾斜面に非接触である非接触下面を有すため、キャップ本体に蓋体が被冠したとき、円筒状下降規制部がキャップ本体に当接して、蓋体の下降を止め、蓋体の下面(非接触下面)がキャップ本体の上端面に接触されない。これにより、キャップ本体の周縁上に内容物が付着されていても、内容物が飛散しにくくなる。また、胴部には、その外周上縁部に、胴部の径方向外側下方に向かって傾斜する傾斜面を形成することで、内容物が胴部の上端面に付着しても、内容物が傾斜面に沿って垂れ落ちるため、キャップ本体に蓋体を被冠した際に生じる飛散を抑制することができる。
さらに、蓋体には、胴部と円筒状主嵌合壁部との中間のキャップ本体に当接するように、蓋体の天面部の下壁面から垂設された円筒状下降規制部を設けることで、キャップ本体に蓋体を被冠したとき、円筒状下降規制部の先端がキャップ本体の上面に接触することにより、キャップ本体と蓋体との周縁間の間隔を維持することができ、蓋体の閉位置を規制し、かつ、打栓時や物流時の蓋体の座屈を防ぐことができる。
【0008】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した発明において、前記蓋体の、前記キャップ本体への被冠時、前記非接触下面と前記傾斜面との間に隙間が形成され、該隙間の寸法が0.3mm以上1.0mm以下であることを特徴とするものである。
【0009】
本項に係るキャップは、キャップ本体に蓋体が被冠したとき、非接触下面と傾斜面との間に隙間が形成されるため、非接触下面がキャップ本体の上端面に接触されない。これにより、キャップ本体の上端面に内容物が付着されていても、内容物の飛散を防ぐことができる。
【0010】
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載した発明において、前記傾斜面の形成範囲は、前記キャップ本体の中心軸を中心とする中心角度250°以上の範囲に形成され、前記非接触下面の形成範囲は、前記蓋体の中心軸を中心とする中心角度250°以上の範囲に形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
本項に係るキャップは、傾斜面の形成範囲がキャップ本体の中心軸を中心とする中心角度250°以上の範囲に形成されることで、より広い範囲で内容物を垂れ落とすことができ、キャップ本体の上端面に付着される内容物の残量をより減らすことができる。さらに、非接触下面の形成範囲が蓋体の中心軸を中心とする中心角度250°以上の範囲に形成されることで、キャップ本体に蓋体が被冠した際、その範囲で、蓋体5の胴部の下面が環状水平壁部の上面に接触しないため、内容物の飛散をより確実に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のキャップによれば、蓋体を閉じた際、キャップ本体の周縁上に残存する内容物の飛散を防ぐことができるキャップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る、容器の容器口部にキャップが装着された状態の概略正面図である。
【
図2】
図1に示すキャップ及び容器の概略側面図であり、(a)はキャップの蓋体が閉じた状態の図であり、(b)はキャップの蓋体が開いた状態の図である。
【
図5】
図3に示すキャップ本体の主キャップ体及び蓋体を示し、(a)は平面図、(b)は下面図である。
【
図6】
図3に示すキャップ本体の中栓を示し、(a)は平面図、(b)はは下面図である。
【
図7】
図3に示すキャップ本体の逆止弁を示し、(a)は平面図、(b)は下面図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る、容器の容器口部にキャップが装着された状態の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の第1実施形態に係るキャップの構成を
図1~
図7に基づいて詳細に説明する。
本発明の第1実施形態に係るキャップ1Aは、内部に逆止弁を有するものであり、容器2の容器口部3に打栓により装着される。キャップ1Aは、内容物の吐出孔25を有するキャップ本体4と、キャップ本体4にヒンジ6を介して連結される蓋体5とから概略構成される。
【0015】
まず、キャップ1Aを被冠する容器2について、
図1~3を参照して説明する。
容器2は、例えば胴部7が変形復元し易いものであり、その内部には液状内容物が充填される。この内容物は、例えば、醤油、ポン酢、ソース、オリーブオイル等、液垂れし易い液状内容物が挙げられる。容器2は、その胴部7を圧搾するなどして内圧を加えることで内容物を吐出させるタイプのものである。容器口部3は、略円筒状に形成される。なお、容器2は、外容器と内容器とからなる二重容器(剥離容器と言われるものも含む)を含む。内容器は、その内部に内容物が充填されると共に内容物の減少に伴いしぼみ変形する可撓性を有するものである。内容器の減容形状を保持するために外容器と内容器との間には外気が吸入されるように構成される。
【0016】
容器2は、
図3に示すように、胴部7と、胴部7から連続して形成される容器口部3とから構成される。容器口部3は、全体として口細円筒状に形成され、有底円筒状の胴部7から連続して形成される。容器口部3は、外径が相違する複数の口部(段部)が軸方向に沿って連続して構成される。具体的には、容器口部3は、上端に配置され軸方向に延びる大径口部60と、大径口部60から下方に配置され、その外径が大径口部60より小径で軸方向に延びる小径口部61と、小径口部61から下方に配置され、その外径が大径口部60より大径で軸方向に延びる最大径口部62とを備えている。また、上端に位置する大径口部60と小径口部61とは、大径口部60から連続して下方に向かって次第に縮径する縮径口部63により接続される。小径口部61と最大径口部62とは、小径口部61から連続して下方に向かって次第に拡径する拡径口部64により接続される。最大径口部62の下方には、連続して、最大径口部62より小径で、大径口部60より大径の、軸方向に延びる支持口部65が形成される。支持口部65と胴部7との間には、小径口部61と略同径の凹状口部66が形成される。なお、容器口部3にキャップ1Aを打栓する際、凹状口部66の外周部位が、打栓機(図示略)にて把持される。
【0017】
次に、キャップ1Aの構成について、
図3~
図7を参照して説明する。
キャップ1Aは、キャップ本体4と、蓋体5とからなり、開蓋した状態において、容器2の胴部7を圧搾して容器2に内圧を加え、適量の内容物を吐出した直後(内圧を解除したとき)、使用者が手でキャップ1Aを操作することなく容器2内を逆止弁12により密封するものである。
【0018】
キャップ本体4は、
図3を参照して、概略、容器口部3に打栓される円筒状の主キャップ体11と、主キャップ体11の環状壁部10(後述参照)の上方に配置され、弁部36が吐出孔25周辺の環状弁座26から離脱または着座して吐出孔25を開閉する逆止弁12と、主キャップ体11の円筒状主嵌合壁部19(後述参照)の上部と嵌合し、逆止弁12の上方に配置され、吐出孔25と連通し、吐出孔25からの内容物を吐出する吐出通路41を有する中栓13とから構成される。
【0019】
主キャップ体11は、ポリプロピレン等の合成樹脂から成形され、胴部18と、胴部18の内側に同心状に配置される円筒状主嵌合壁部19と、円筒状主嵌合壁部19の内壁面から一体的に径方向中心に向かって斜め上方に延び、径方向中央部に吐出孔25を有する環状壁部10と、胴部18の上端と円筒状主嵌合壁部19の上端とを接続する環状水平壁部20と、環状水平壁部20の下面であって、胴部18と円筒状主嵌合壁部19との間には同心状に垂設された円筒状副嵌合壁32と、から構成される。円筒状主嵌合壁部19の外周面と容器口部3の小径口部61の内周面とが当接して密封を維持する。胴部18には、蓋体5がキャップ本体4に被冠されている状態時、使用者の指が蓋体5の把持部54に引掛けやすいように、ヒンジ6との結合部の反対側の外壁面に舌状の凹部27が形成されている(
図1参照)。凹部27は、その形成範囲、すなわち、キャップ本体4の中心軸C1を中心とする中心角度θ2が略90°である(
図5参照)。胴部18の外周上縁部には、ヒンジ6との結合部を除く部分(すなわち、ヒンジ6の反対側)に、胴部18の径方向外側下方に傾斜する傾斜面30が形成されている。傾斜面30の傾斜角度θ1は、略30°であり(
図4参照)、傾斜面30の形成範囲、すなわち、キャップ本体4の中心軸C1を中心とする中心角度θ3が略250°以上(第1実施形態では、略300°(
図5参照))である。なお、凹部27の中心角度θ2は、60°~180°であってもよい。傾斜面30の傾斜角度θ1及び中心角度θ3は、内容物の粘度や表面張力等を考慮して適宜変更してもよい。胴部18の下部内壁面には、突条係止部21が形成され、容器口部3の最大径口部62と係合する。円筒状主嵌合壁部19と胴部18との間には、容器口部3を嵌合する環状空間22が形成される。
【0020】
円筒状主嵌合壁部19の下部内壁面には、その周方向全域から一体的に環状壁部10が径方向中心に向かって斜め上方に延びている。環状壁部10は截頭円錐状を呈している。環状壁部10と円筒状主嵌合壁部19の内壁面とにより上方を開放した空間24が形成される(
図3参照)。環状壁部10の径方向中心部には略円形状の吐出孔25が開口される。吐出口25は、容器口部3内と連通される。吐出孔25の周辺に環状弁座26が形成される。環状弁座26は、倒立円錐状面28に形成される。
【0021】
環状水平壁部20の上面には、その外周部に上方に突起する環状突起部17が形成される。円筒状主嵌合壁部19の上部内壁面には、周方向に沿って環状に延びる環状嵌合凹部23が形成される。環状突起部17には、その外壁面に周方向に沿って環状に延びる突条係止部31が形成される。
【0022】
逆止弁12は、
図3及び
図7に示すように、主キャップ体11を成形する合成樹脂よりも高弾性であるポリエチレンエラストマー等の材料から成形され、主キャップ体11の円筒状主嵌合壁部19の内壁面に当接する円筒状支持部34と、円筒状支持部34の内壁面から一体的に径方向中心に向かって延びる複数の弾性片35と、各弾性片35の先端部に一体的に接続され、吐出孔25を開閉する弁部36と、各弾性片35の間に設けられ、吐出孔25からの内容物が流通する複数の流通孔37とから構成される。
【0023】
各弾性片35は、円筒状支持部34の上部内壁面から径方向中心に向かって、且つ斜め下方にやや湾曲して延びている。第1実施形態では、弾性片35は、周方向に90°ピッチで4箇所形成され、各弾性片35間に流通孔37が90°ピッチで4箇所形成される(
図7参照)。また、各弾性片35の先端部が弁部36の外周部の上縁に一体的に接続される。弁部36は、ドーム状を呈し、詳しくは、平面視形状が円形状で、上方へ向う凸状の湾曲壁部で構成される。弁部36の外周部は、環状弁座26(倒立円錐状面28)に着座するように倒立円錐状面29に形成される(
図3参照)。
【0024】
中栓13は、
図3及び
図6に示すように、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂から成形され、逆止弁12の上方に配置されるように、主キャップ本体11の上部に嵌合される。中栓13は、円盤状の水平壁部43と、その外周下面に形成された、主キャップ体11の円筒状主嵌合壁部19に嵌合される円筒状支持部40と、円筒状支持部40の内側の水平壁部43に形成され、内部に吐出通路41を有する円筒状案内部42と、から構成される。水平壁部43には、円筒状支持部40の外周面から径方向に突設される環状鍔部43aが形成される。円筒状支持部40は、逆止弁12を構成する円筒状支持部34の上方に配置される。円筒状支持部40の外壁面には、周方向に延びる環状突条部44が形成され、キャップ本体4の環状嵌合凹部23と係合して密封を維持する。中栓13の円筒状支持部40の周壁部の厚みと、逆止弁12の円筒状支持部34の周壁部の厚みとは略同一に構成する。円筒状案内部42は、水平壁部43の上面の径方向中央部から立設されている。
【0025】
蓋体5は、
図3及び
図5に示すように、ポリプロピレン等の合成樹脂から成形され、主キャップ体11の胴部18にヒンジ6を介して一体的に接続されている。蓋体5は、ヒンジ6を介して主キャップ体11の胴部18の外壁面に接続される円筒状の胴部50と、胴部50の上端の周方向全域に一体的に接続される天面部51と、天面部51の下面から垂設され、胴部50の内側に同心円状に配置された円筒状下降規制部55と、から構成される。
【0026】
胴部50の下面は、段差を形成する形態をなしている。具体的には、胴部50の下面は、
図2(b)に示すように、蓋体5をキャップ本体4に被冠した際、主キャップ本体11の環状水平壁部20の上面に当接する第1下面57と、主キャップ本体11の環状水平壁部20の上面に接触しない第2下面56(非接触下面)と、第1下面57と第2下面56とをつなぐ段差部58とを備える。第1実施形態では、第1下面57から第2下面56の段差高さ寸法B(すなわち、段差部58の高さ寸法、
図2(b)参照)は、0.3mm以上1.0mm以下に設定されている(第1実施形態では、段差高さ寸法Bは、0.5mmである)。ここで、蓋体5をキャップ本体4に被冠することで、胴部18の傾斜面30との間に隙間D(
図4参照)が形成されるようになる。第1実施形態では、傾斜面30の基部との間の隙間Dの寸法が0.3mm以上1.0mm以下に設定されている(第1実施形態では、隙間Dの寸法は、0.5mmである)。第1下面57は、ヒンジ6と連結される側の下面に設けられる。第2下面56は、胴部18の傾斜面30に対向する胴部50の下面に設けられている。第2下面56の形成範囲、すなわち、蓋体5の中心軸C2を中心とする中心角度θ4は、略250°以上である(第1実施形態では、中心角度θ4は、略300°である(
図5参照))。天面部51の径方向中央部には、キャップ本体4を構成する中栓13の円筒状案内部42の上端内部に緊密に嵌合する円筒状栓部52が垂設される。円筒状栓部52は、中栓13の水平壁部43を貫通するように延びている(
図3参照)。天面部51の下面には、胴部50寄りに、胴部18と円筒状主嵌合壁部19との間に位置にするように、環状の円筒状下降規制部55が垂設される。胴部50の下部内壁面には、周方向に環状に延びる突条係止部53が形成される。胴部50の、ヒンジ6側と反対側の外周壁面には、胴部18の凹部27に被さるように、使用者が把持する把持部54が形成されている(
図1参照)。なお、第2下面56の中心角度θ4、段差高さ寸法B及び隙間Dの寸法は、内容物の粘度や表面張力等を考慮して適宜変更してもよい。
【0027】
次に、第1実施形態に係るキャップ1Aの作用を説明する。
内容物を吐出させるときには、まず、蓋体5を開いて、キャップ本体4の中栓13を外部に露出させる。
次に、中栓13の吐出通路41が下方を向くように容器1を傾けて吐出姿勢にした状態で、容器2の胴部7を圧搾して容器2に内圧を加えると、容器2の内圧が逆止弁12の弁部36の下壁面全域に作用することで、逆止弁12の各弾性片35が屈曲するように弾性変形して、弁部36の外周部(倒立円錐状面29)が環状壁部10の吐出孔25周辺の環状弁座26(倒立円錐状面28)から離脱される。この結果、環状壁部10の吐出孔25が開放されて、適量の内容物が容器口部3内から吐出孔25、逆止弁12の各流通孔37及び中栓13の吐出通路41を経て外部に吐出される。
【0028】
その後、容器2の胴部7への圧搾を止めると、容器2への内圧が解除されるために、逆止弁12の各弾性片35が復元して、弁部36の外周部(倒立円錐状面29)が環状壁部10の吐出孔25周辺の環状弁座26(倒立円錐状面28)に着座して、弁部36により環状壁部10の吐出孔25が閉塞される。これにより、容器2内が密封状態となる。
【0029】
次に、ヒンジ6を折り曲げて蓋体5を、キャップ本体4の上方から覆うように被せれば、蓋体5の胴部50に設けた突条係止部53が、下降しながらキャップ本体4(主キャップ体11)の環状水平壁部20に設けた突条係止部31を乗り越えるように係合すると共に、蓋体5の天面部51に設けた円筒状栓部52が、キャップ本体4の中栓13を構成する円筒状案内部42の上端内部に緊密に嵌合される。このとき、キャップ本体4の環状水平壁部20の外周縁部に内容物が付着していても、蓋体5の第2下面56が主キャップ体11の外周縁部に接触しないので、内容物の飛散が防止される。また、内容物は、胴部18の傾斜面30に沿って垂れ落ちるため、環状水平壁部20の外周縁部に付着しにくくなっている。
【0030】
そして、蓋体5をキャップ本体4に被冠することで、キャップ本体4内(中栓13と、逆止弁12及び環状壁部10との間)への異物の混入を抑制すると共に、容器1内を二重で密封することができる。しかも、キャップ本体4内は蓋体5により密封されているので、環状壁部10上の空間24に内容物が若干残存したとしても、その内容物が酸化しにくくなる。
【0031】
上記構成を有する第1実施形態のキャップ1Aによれば、次のような作用効果を得ることができる。
主キャップ本体11に蓋体5を被冠したとき、キャップ本体4の環状水平壁部20の外周縁部に内容物が付着していても、円筒状下降規制部55が環状水平壁部20に当接した位置で、突条係止部53と突条係止部31とが係合するので、蓋体5の下端面(第2下面56)が環状水平壁部20の外周縁部に接触せず、内容物の飛散を防ぐことができる。
【0032】
また、内容物が環状水平壁部20の外周縁部に付着したとしても、胴部18の傾斜面30によって、内容物が垂れ落ちる。これにより、環状水平壁部20の外周縁部に内容物が残りにくくなり、内容物が残ったとしても、環状水平壁部20の外周縁部に内容物の付着量が少なく、隙間Dを形成したことで、主キャップ本体11に蓋体5を被冠したときに生じる内容物の飛散を抑制することができる。
【0033】
さらに、蓋体5を被冠したとき、主キャップ体11と蓋体5との周縁に隙間が生じても、円筒状下降規制部55が環状水平壁部20に当接されるので、内容物の飛散を防止する隙間Dを維持することができる。また、円筒状下降規制部55と環状水平壁部20との当接位置が、容器2の容器口部3の大径口部60の略上部に位置しているので(
図3及び
図4参照)、蓋体5の被冠時に生じる蓋体5(円筒状下降規制部55)の被冠衝撃を受けることができる。
【0034】
胴部18の傾斜面30の中心角度θ3が250°以上であるため、より広い範囲で内容物を垂れ落とすことができ、キャップ本体4の上端面に付着される内容物の残量をより減らすことができる。さらに、第2下面56の中心角度θ4が250°以上とすることで、キャップ本体4に蓋体5が被冠した際、その範囲で、蓋体5の胴部50の下面が環状水平壁部20の上面に接触しないため、内容物の飛散をより確実に防ぐことができる。
【0035】
次に、本発明の第2実施形態に係るキャップ1Bについて、
図8を参照して説明する。なお、以下の説明において、上記第1実施形態のキャップ1Aに対して、同様の部分には同じ参照符号を用いて、異なる部分についてのみ詳細に説明する。
【0036】
第2実施形態に係るキャップ1Bは、第1実施形態のキャップ1Aに対して、蓋体5及び主キャップ体11の一部構造が相違し、かつ、逆止弁12及び中栓13を備えていない点で相違しており、他の構造は同一である。
具体的には、
図8に示すように、蓋体5の円筒状下降規制部55は、蓋体5の被冠時、胴部50寄りに、胴部18と円筒状主嵌合壁部19との間に位置にするように、天面部51の下面から垂設されている。
主キャップ体11は、胴部18と、環状水平壁部71と、環状水平壁部71の下面から垂設され、円筒状副嵌合壁32の内側に同心状に配置される円筒状主嵌合壁部19と、から構成される。環状水平壁部71は、略中央部に、内部に吐出通路75を有する円筒状案内部73が立設されている。円筒状主嵌合壁部19は、その先端の外周壁面がR面取りされている。
なお、略中央部に設けられた、吐出通路75を有する円筒状案内部73と円筒状栓部52の位置を、ヒンジ6から離れる方向に寄せることで、目的の箇所に吐出し易くなる。
【0037】
本発明の第2実施形態に係るキャップ1Bによると、主キャップ本体11に蓋体5を被冠したとき、キャップ本体4の環状水平壁部20の外周縁部に内容物が付着していても、円筒状下降規制部55が環状水平壁部20に当接した位置で、突条係止部53と突条係止部31とが係合するので、蓋体5の下端面(第2下面56)が環状水平壁部20の外周縁部に非接触となる。これにより、上述の第1実施形態に係るキャップ1Aと同様の作用効果を奏するものとなる。
【0038】
なお、第1及び第2実施形態に係るキャップ1A、1Bにおいて、主キャップ本体11の胴部18には、その外周上縁部に傾斜面30が形成されているが、曲面であってもよい。
【0039】
また、第1及び第2実施形態に係るキャップ1A、1Bにおいて、キャップ本体4が容器2の容器口部3に打栓により装着されているが、主キャップ本体11の胴部18の内面に雌ネジを設け、容器口部3の外周面に雄ネジを設けて、ネジ嵌合によって、キャップ本体4(主キャップ本体11)と容器2とを嵌合させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1A,1B…キャップ、2…容器、3…容器口部、4…キャップ本体、5…蓋体、6…ヒンジ、18…胴部、19…円筒状主嵌合壁部、31…突条係止部、30…傾斜面、41…吐出通路、42,73…円筒状案内部、51…天面部、53…突条係止部、55…円筒状下降規制部、56…第2下面(非接触下面)